特許第6339985号(P6339985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6339985水中の二酸化塩素濃度を低減させる方法及び水中の二酸化塩素濃度を低減させる水処理剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339985
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】水中の二酸化塩素濃度を低減させる方法及び水中の二酸化塩素濃度を低減させる水処理剤
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/72 20060101AFI20180528BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   C02F1/72 Z
   C02F1/50 510A
   C02F1/50 520B
   C02F1/50 520F
   C02F1/50 520K
   C02F1/50 520L
   C02F1/50 520P
   C02F1/50 531M
   C02F1/50 560Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-175166(P2015-175166)
(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-39114(P2017-39114A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390016540
【氏名又は名称】内外化学製品株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515245022
【氏名又は名称】株式会社エム・テック
(74)【代理人】
【識別番号】100089406
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 宏
(72)【発明者】
【氏名】丸亀 和雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 恵右
(72)【発明者】
【氏名】岸 健一
(72)【発明者】
【氏名】本部 憲司
(72)【発明者】
【氏名】堀江 政夫
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−077004(JP,A)
【文献】 特開平07−265867(JP,A)
【文献】 特開昭56−025979(JP,A)
【文献】 特開2014−200704(JP,A)
【文献】 特開2004−244346(JP,A)
【文献】 特開2016−203155(JP,A)
【文献】 特開昭58−185404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50、
1/70 − 1/78
C01B 7/00 − 11/24
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化塩素含有水に、水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物と過酸化物とを、この順序若しくは逆の順序で又は同時に添加することを特徴とする、二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度を低減させる方法。
【請求項2】
水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物を、二酸化塩素含有水中の溶存マンガン濃度が少なくとも0.01mg/Lとなるように調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
過酸化物を、二酸化塩素含有水中の濃度が0.1〜10mg/Lとなるように添加する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
二酸化塩素含有水が、冷却水用に二酸化塩素で前処理された冷却水である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記冷却水が海水である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
過酸化物を含んでなることを特徴とする水処理剤と、水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物とを組み合わせて含んでなることを特徴とする、二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度を低減させるためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度を低減させる方法及び水中の二酸化塩素濃度を低減させる水処理剤に関する。より詳細には、本発明は、二酸化塩素含有水に溶存マンガンの存在下で過酸化物を添加することを特徴とする、二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度を低減させる方法、及び過酸化物を含んでなる、二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度を低減させる水処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プール水や浴場水・温泉水(特に循環水)には、消毒・殺菌(例えば、レジオネラ菌の殺菌)のために、塩素系薬剤(例えば、次亜塩素酸塩)が添加される。また、下水処理にも塩素系薬剤が用いられる。しかし、塩素系薬剤による処理では、環境汚染物質/発癌性物質とされるトリハロメタンが発生し得るという問題がある。
【0003】
更に、冷却水として利用される海水には、冷却水管路への海生生物(例えば、二枚貝やヒドロ虫類)の付着を防止して、冷却効率の低下や管路の閉塞を回避するために、塩素や過酸化物が注入される。
塩素は、処理対象の水のpHが高いほど殺生効果が発揮され難くなり、特に、海水のpH域では効果的な処理が難しいため高濃度の添加が必要となる。一方、利用した海水は再び海に戻されるので、海水中の海苔、貝類及び魚類へ影響する程度で塩素が残留しないように管理を行う必要がある。更に、塩素と海水中の有機物との反応生成物として、トリハロメタンが発生するという問題もある。
過酸化物は、塩素に比べて高濃度の注入が必要でありコストが高くなるという問題がある。また、海水放流水中に過酸化物が残留し、海生生物に悪影響を与える虞もある。
【0004】
上記のような問題を回避するため、近年、消毒薬・殺菌/殺生剤として、塩素や過酸化物に代えて二酸化塩素が利用されている。二酸化塩素は、pHの影響を受けずに強い殺生効果を有することから、低濃度で効果的な処理が可能である。トリハロメタンが発生することも無く、更にコストも低く抑えることが可能となる。
よって、今後、二酸化塩素は、上記したようなプール水や浴場水・温泉水、冷却水に対してのみならず、多くの状況(例えば、食品工場など)で消毒薬・殺菌/殺生剤としての使用が増えると考えられる。また、二酸化塩素は、漂白作用も有することから、(例えば、製紙工場などで)漂白剤として、従来の塩素系漂白剤に代えて用いられる場面も増すと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二酸化塩素が環境に及ぼし得る影響を考慮して、二酸化塩素を含有する水は、排出時に残留二酸化塩素濃度が所定量以下となるように管理を行う必要がある。
残留二酸化塩素濃度を低減させるには、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を使用する方法もあるが、残留二酸化塩素量の約4倍量以上の添加が必要なため高コストであり、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤自体による環境への影響が懸念される。
よって、低コストで環境への影響がより小さい代替法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、水中の二酸化塩素濃度が溶存マンガンの存在下に過酸化物により顕著に低減することを見出した。
したがって、本発明は、二酸化塩素含有水に溶存マンガンの存在下で過酸化物を添加することを特徴とする、二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度を低減させる方法を提供する。 また、本発明は、過酸化物を含んでなる、溶存マンガンの存在下での二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度を低減させる水処理剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、二酸化塩素含有水中の残留二酸化塩素濃度の低減を容易かつ低コストで行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】二酸化塩素を含む海水に、過酸化物と鉄イオン、銅イオン又は溶存マンガンを添加し、添加から所定の経過時間で二酸化塩素濃度を測定した結果を示すグラフである。
図2】二酸化塩素を予め注入した人工海水(炭酸ナトリウム水溶液)に、過酸化物及び溶存マンガンを種々の量で添加し、その5分後に測定した残留二酸化塩素濃度を示すグラフである。
図3】塩素を予め注入した人工海水に、過酸化物及び溶存マンガンを種々の量で添加し、その5分後に測定した残留塩素濃度を示すグラフである。
図4】二酸化塩素を予め注入した海水に、過酸化物及び溶存マンガンを種々の量で添加し、その5分後に測定した残留二酸化塩素濃度を示すグラフである。
図5】二酸化塩素及び過酸化物を予め添加した海水中の残留二酸化塩素濃度の経時的変化を示すグラフである。二酸化塩素及び過酸化物の添加から5分後、溶存マンガンを更に添加した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<水中の二酸化塩素濃度を低減させる方法>
本発明の二酸化塩素含有水中に、水溶液中の溶存マンガンを生じるマンガン化合物と、過酸化物とをこの順序若しくは逆の順序で又は同時に添加することを特徴とする、二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度を低減させる方法である
下記の実施例で示すように、過酸化物が水中の二酸化塩素濃度を低減させる効果は、溶存マンガンの存在下で増強されるので、本発明の方法に従えば、二酸化塩素濃度の低減に使用する過酸化物の量は少なくて済む。よって、本発明の方法は、水中の二酸化塩素濃度の低減を容易かつ低コストで実現できる。
【0010】
本発明の方法を用いて二酸化塩素濃度を低減させるに適切である二酸化塩素含有水は、二酸化塩素を含有する水であって、外部環境(例えば、海、河川、湖沼など)に排出される水であれば限定されず、例えば、二酸化塩素を漂白剤や消毒剤・殺菌/殺生剤として使用した後の廃液又は排出液であり得る。二酸化塩素含有水は、淡水であっても海水であってもよい。具体例としては、食品工場や製紙工場からの廃液、プールや浴場・温泉施設などの循環水系からの排出液、下水処理水、冷却水として用いた後の海水が挙げられる。本発明の方法を適用する前の二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度は、例えば0.5mg/L以上であり得る。
【0011】
溶存マンガンは、本発明の方法を適用する前の二酸化塩素含有水中に含まれていてもよい。このような例としては、例えば冷却水用に二酸化塩素で前処理された海水が挙げられる。よって、1つの実施形態において、二酸化塩素含有水は冷却水用に二酸化塩素で前処理された海水である。1つの好ましい実施形態において、二酸化塩素含有水は、溶存マンガンを少なくとも0.01mg/Lの濃度で含む海水である。ここで、本発明において、溶存マンガンについての濃度はマンガン換算量をいう。
本発明の方法において、溶存マンガンは、水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物を二酸化塩素含有水に添加することにより供給されてもよい。水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物としては、例えば、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガンが挙げられ、好ましくは硫酸マンガンである。
水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物は、1種類を単独で添加してもよいし、2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
【0012】
溶存マンガンは、二酸化塩素含有水中に、例えば、少なくとも0.01mg/Lの濃度で存在し得、好ましくは少なくとも0.05mg/Lの濃度で存在し得る。二酸化塩素含有水中の溶存マンガンの濃度の上限は、特に限定されないが、コストの観点から、1.0mg/Lであり得る。1つの実施形態において、水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物は、二酸化塩素含有水中の溶存マンガン濃度が、少なくとも0.01mg/Lとなるように添加され得る。1つの好適な実施形態では、マンガン化合物は、二酸化塩素含有水中の溶存マンガン濃度が、0.05〜0.1mg/Lとなるように添加され得る。
【0013】
過酸化物としては、例えば、過酸化水素、過ホウ酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩、過硝酸塩、過酢酸塩、過酸化塩、過酸化水素付加物が挙げられる。塩としては、アルカリ金属(好ましくはナトリム)塩、アルカリ土類金属(好ましくはカルシウム及びマグネシウム)塩又はアンモニウム塩であり得る。過酸化物は、1種類を単独で添加してもよいし、2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
過酸化物は、二酸化塩素含有水中に、例えば、濃度が0.1mg/L以上、好ましくは0.2mg/L以上となるように添加され得る。上限濃度は、特に限定されない。ここで、本発明において、過酸化物についての濃度はH換算量をいう。
【0014】
例えば、二酸化塩素が消毒剤・殺菌/殺生剤として使用される場合、コストの観点及び処理水が外部環境中に排出される際に残留し得る過酸化物が当該環境に及ぼし得る影響の観点から、10mg/Lであり得る。1つの実施形態において、過酸化物は、二酸化塩素含有水中の濃度が、0.1〜10mg/Lとなるように添加され得る。1つの好適な実施形態では、過酸化物は、二酸化塩素含有水中の濃度が、0.2〜5mg/Lとなるよう、より好適には0.4〜2mg/Lとなるように添加され得る。
本発明の方法に従って過酸化物の使用量を減少させることで、処理水中に過酸化物が高濃度で残留して外部環境(例えば、処理水が放出される河川水や海水など)に悪影響を及ぼす虞もなくなるか、小さくなる。
【0015】
二酸化塩素含有水が流水系である場合、二酸化塩素含有水への過酸化物の添加は、連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。1つの実施形態では、過酸化物及び必要な場合には水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物は、所定の量で連続的に添加され得る。別の1つの実施形態では、過酸化物及び必要な場合には水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物は、上流で測定した二酸化塩素濃度に応じた量で添加され得る。別の1つの実施形態では、過酸化物及び必要な場合には水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物は、より下流で測定した二酸化塩素濃度を考慮して決定した量で添加され得る。過酸化物及び水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物を添加する場合には、その一方の量のみを変化させてもよい。
【0016】
また、予め二酸化塩素含有水に注入された二酸化塩素の量を知り得るときは、過酸化物及び必要な場合には水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物は、当該二酸化塩素注入量に基づいて決定した量で添加してもよい。この場合、過酸化物及び必要な場合には水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物の量は、より下流で測定した二酸化塩素濃度も考慮して決定することができる。
【0017】
本発明の1つの具体的実施形態は、二酸化塩素含有水に、水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物と過酸化物とを、この順序若しくは逆の順序で又は同時に添加することを特徴とする、二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度を低減させる方法である。この実施形態において、二酸化塩素含有水が流水系である場合、水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物及び過酸化物の一方を上流側で添加し、他方を下流側で添加してもよい。
【0018】
本発明の別の1つの具体的実施形態は、二酸化塩素含有海水に、過酸化物を添加することを特徴とする、二酸化塩素含有海水中の二酸化塩素濃度を低減させる方法である。
この形態においては、海水中に既に溶存マンガンが存在しているが、必要に応じて、水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物を添加し得る。溶存マンガンを追加的に供給することで、使用する過酸化物の量を更に減少させることができる。
【0019】
本発明の方法を、その流路内への貝類等の海棲生物の付着を防止するために予め二酸化塩素で処理された海水を用いる冷却水に適用する場合には、最終的に海へ排出される際の(使用済みの)冷却水中の二酸化塩素濃度は、本発明の方法により容易かつ効率的に低減させることができるので、海水の処理に使用する二酸化塩素の濃度を高くすることができ、したがって冷却水の流路への貝類等の海棲生物の付着をより効率的に防止できるようになる。
【0020】
<水中の二酸化塩素濃度を低減させる水処理剤及びキット>
本発明に従う二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度を低減させる水処理剤は、過酸化物を含んでなることを特徴とする。
本発明の水処理剤は、1種類の過酸化物を単独で含んでいてもよいし、2種類以上の過酸化物を組み合わせて含んでいてもよい。過酸化物としては、イオン性過酸化物、例えば、過ホウ酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩、過硝酸塩、過酢酸塩、過酸化塩、過酸化水素付加物が挙げられる。塩としては、アルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩、より好ましくはナトリウム塩)、アルカリ土類金属塩(好ましくはカルシウム塩及びマグネシウム塩)又はアンモニウム塩であり得る。具体例は、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム及び過酸化尿素であり得る。過酸化物は、過酸化水素であり得、水溶液(例えば20〜60%溶液)の形態であり得る。
【0021】
本発明に従う二酸化塩素含有水中の二酸化塩素濃度を低減させるためのキットは、上記の水処理剤と、水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物とを組み合わせて含んでなることを特徴とする。
本発明のキットは、水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物の1種類を単独で含んでいてもよいし、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物は、例えば、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガンであり得、好ましくは硫酸マンガンである。
本発明のキットの使用に際して、水処理剤及び水溶液中で溶存マンガンを生じるマンガン化合物は、二酸化塩素含有水に、別々に添加してもよいし、予め混合した後に添加してもよい。
【実施例】
【0022】
以下、理解を容易にするため、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
下記の実験において、二酸化塩素は、HACH社製二酸化塩素計(DPD法,定量下限は0.04mg/L以下)で分析した。
【0023】
実験1
異なる遷移金属イオンの過酸化水素による二酸化塩素濃度低減効果に対する影響を調べた。
0.2mg/Lの二酸化塩素を含む海水に、45%過酸化水素1mg/Lと鉄イオン(塩化鉄(II)、0.025mg/L[鉄として])、銅イオン(塩化銅(II)、0.1mg/L[銅として])又は溶存マンガン(硫酸マンガン、0.025mg/L及び0.25mg/L[マンガンとして])を添加し、添加の2、7、12及び22分後にそれぞれ二酸化塩素濃度を測定した。また、45%過酸化水素1mg/Lのみを添加し、添加の2、6、11及び21分後にそれぞれ二酸化塩素濃度を測定した(blank)。結果を図1に示す。
図1から明らかなように、海水中の二酸化塩素の濃度は、過酸化水素により、溶存マンガンの存在下で、鉄イオン存在下及び銅イオンの存在下と比較して、顕著に低減した。
【0024】
以下の実験2〜5において、過酸化水素による二酸化塩素濃度低減効果が、溶存マンガン存在下で増強されることを示した。実験2及び3では、海水に含まれる塩素及び溶存マンガンの影響を排除するため、これらを含まない100mg/L炭酸ナトリウム水溶液(人工海水)に二酸化塩素を注入したものを二酸化塩素含有水として用いた。実験4及び5では、東京湾から採取した海水に二酸化塩素を注入したものを二酸化塩素含有水として用いた。
【0025】
実験2
100mg/Lの炭酸ナトリウム水溶液に、二酸化塩素又は塩素を1mg/Lとなるように注入した後、45%過酸化水素及び溶存マンガンを合計1mg/Lとなるように添加し(表1及び2を参照)、5分後の残留二酸化塩素濃度又は残留塩素濃度を測定した。結果を下記表1及び2に示す。表1及び2のデータより、二酸化塩素除去率を([添加した二酸化塩素濃度]−[残留二酸化塩素濃度])/[添加した二酸化塩素濃度]として求め、図2及び3に示す。図2及び3において、x軸は、[マンガン濃度]/([過酸化水素濃度]+[マンガン濃度])を表し、y軸は二酸化塩素除去率を表す。なお、溶存マンガンは硫酸マンガンとして添加した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
表1から明らかなように、溶存マンガンは単独で、5分後の残留二酸化塩素濃度には影響しなかったが、過酸化水素は単独で、5分以内に、残留二酸化塩素濃度を低減させた。
同様に、溶存マンガンは単独で、5分後の残留塩素濃度にも影響せず、過酸化水素は単独で、5分以内に、残留塩素濃度を低減させた(表2)。
表1及び特に図2から明らかなように、過酸化水素による二酸化塩素濃度低減効果は、溶存マンガンの存在下で、増強した。一方、過酸化水素による塩素濃度低減効果は、溶存マンガンの存在下で、増強しなかった(参考例2では、参考例3と比較して、過酸化水素の添加量の減少(1/2)に対応する程度の残存塩素濃度の減少が観察されたにすぎない)。
【0029】
実験3
人工海水(炭酸ナトリウム水溶液100mg/L)に、二酸化塩素を1mg/Lとなるように添加した後、45%過酸化水素0.5〜15mg/L及び溶存マンガンを0〜0.5mg/Lとなるように添加し(表3を参照)、5分後の二酸化塩素濃度を測定した。結果を下記表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
比較例3及び4が示すように、溶存マンガン不存在下では、高濃度の過酸化水素を使用しても、残留する二酸化塩素の濃度は比較的高いままである。一方、実施例及びが示すように、低濃度の溶存マンガンの存在下で、過酸化水素の二酸化塩素濃度低減効果は顕著に増強する。0.5mg/Lの溶存マンガンの存在下での0.5mg/Lの過酸化水素の二酸化塩素濃度低減効果及び0.05mg/Lの溶存マンガンの存在下での2.5mg/Lの過酸化水素の二酸化塩素濃度低減効果は、溶存マンガンの不存在下での15mg/Lの過酸化水素の二酸化塩素濃度低減効果に匹敵する。よって、溶存マンガンの存在により、残留二酸化塩素濃度を低減させるための過酸化水素の使用量は、顕著に減少する(0.05mg/L又は0.5mg/Lの溶存マンガンの存在下で過酸化水素の使用量は、溶存マンガンの不存在下のそれぞれ約1/30又は約1/6)。
【0032】
実験4:
東京湾から採取した海水に、二酸化塩素を1mg/Lとなるように注入した後、過酸化水素(45%)及び溶存マンガンを合計1mg/Lとなるように添加し(表4を参照)、5分後の残留二酸化塩素濃度を測定した。結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
表4のデータより、二酸化塩素除去率を([添加した二酸化塩素濃度]−[残留二酸化塩素濃度])/[添加した二酸化塩素濃度]として求め、図4に示す。図4におけるx軸及びy軸は図2及び3と同様である。
表4及び図4から明らかなように、過酸化水素による二酸化塩素濃度低減効果は、溶存マンガンの存在下で顕著に増強した。
なお、海水は溶存マンガンを含むので、過酸化水素を単独で添加しても、残留二酸化塩素濃度は有意に低減した。よって、二酸化塩素含有水が海水である場合には、過酸化水素の単独添加により、残留二酸化塩素濃度を有意に低減させることができる。
【0035】
実験5
東京湾の海水に、二酸化塩素1mg/L及び45%過酸化水素0.5mg/Lを添加し、5分後に溶存マンガン0.2mg/Lを更に添加した時の残留二酸化塩素濃度の推移を図5に示す。
二酸化塩素及び過酸化水素の注入直後から海水中の二酸化塩素濃度は徐々に低下し、5分後には約1/2になると推定される(3分後及び10分後の残留二酸化塩素濃度からの推定)。(海水中に含まれる溶存マンガンに追加して)マンガンを添加した2.5分後に、残留二酸化塩素は定量下限(0.04mg/L)以下となった。このことからも、溶存マンガンの存在が、過酸化水素による二酸化塩素濃度低減効果に顕著に影響することが理解できる。
図1
図2
図3
図4
図5