【実施例1】
【0012】
本発明であるスライド枠21を用いた吊り足場の組み立て方法について
図1−17を参照して説明する。ここでは、川27に架けられた鉄道橋24の上部に防風柵26を電車25の往来を制限することなく昼間に後付で設置するための鉄道橋24の側面に吊り下げられる、一列の踏板6を有する上足場10と二列の踏板6を有する下足場11を備えた吊り足場1の組み立て方法について説明する。
【0013】
スライド枠21を用いた吊り足場の組み立て方法は、準備工程と、搭載工程と、延設工程とからなる。
【0014】
準備工程は、
図1に示すように、鉄道橋24の側面の水平突出部24aに初期足場1aを設置する工程である。初期足場1aの設置方法は特に限定されるものでなく、従来の設置方法が採用できる。例えば、クレーン、はしご車、リフト等が例示できる。さらに川岸27aから足場を橋桁に向け組み上げ、スライド枠21の枠体22を搭載できる幅分の吊り足場を初期足場1aとしてまず組み上げる手法もある。ここでは、初期足場1aの形状は後述の延設足場1bと同一形状とした。すなわち、アンカーボルトで水平突出部24aに固定されるブラケット2に吊される足場である。
【0015】
搭載工程は、
図1に示すように、初期足場1a内にスライド枠21を設置する工程である。クレーンなどで吊り上げて初期足場1aに搭載してもよいし、初期足場1aに部材を搬入して、初期足場1a内で枠体22を組み立ててもよい。
【0016】
ここで、スライド枠21は、
図1に示すように、枠体22と固定具23からなる。枠体22は、略四角柱の辺部に位置する縦枠22a及び横枠22bで組み立てられ、前後端の中央部付近にはさらに縦枠22aを備え、同一面の縦枠22a間には棒をクロスさせた筋交い22cを配置して強度を確保する。
【0017】
さらに、枠体22には、後方端部には上方向に突出する突起22eと、前方側の底部に底板22dを備える。突起22eは、固定具23に係止され、足場内からの枠体22の滑落を防止する。枠体22は、底部にキャスターなどを設けることなく、枠であるので当節面積が小さく、人力でスライドさせることができる。
【0018】
固定具23は
、中支柱4及び前支柱5にクランプ23aで連結され、枠体22の過剰突出および脱落を防止する。枠体22のスライド突出の際、固定具23の位置を延設方向に移動する。
【0019】
延設工程は、
図2−
図18に示すように、スライド枠21を利用して初期足場1aに延設足場1bを連結し、さらに延設を繰り返し、延設足場1bを連結、伸長させていく。
【0020】
延設工程は、より詳しくは、張出足場形成工程と、ブラケット設置工程と、下さん延設工程と、支柱設置工程と、下奥足場形成工程と、下手前足場形成工程と、上足場形成工程とからなる。
【0021】
張出足場形成工程は、
図2−
図4に示すように、スライド枠21を初期足場1a又は初期足場1aに連結された延設足場1b或いはさら延設足場1bに延設された延設足場1bから足場の外側にスライドさせ部分的に突出させて一時的な張出足場21aを形成する工程である。ここでは、延設足場1bにさらに延設足場1bを連結する場面を説明する。
【0022】
枠体22を張り出させるため、固定具23の位置を
図2の位置に移動させ、クランプ23aで支柱に固定するとともに、固定具23に枠体22の突起22eが係止され、枠体22の脱落を防止する。枠体22は、底板22dが存在する部分まで突出させることができる。
図4に示すように、作業者は底板22dの上に位置して延設足場1bを組み立てていく。
【0023】
ブラケット設置工程は、
図5に示すように、張出足場21aにおいて鉄道橋24の側面の水平突出部24aにブラケット2をアンカーボルト2a、2bで固定する工程である。ブラケット2は、三角形状の枠で上部にクランプ2c、2dを備える。クランプ2c、2dに、上足場10の下さん3(布材)が連結される。水平突出部24aは、横方向に突出した部分で、水平突出部24aの下方は凹み24bとなっている。したがって、ここで紹介する吊り足場1は、踏板6が一列の上足場10、踏板二列の下足場11となる。
【0024】
下さん延設工程は、
図6に示すように、上足場10の二本の下さん3のそれぞれの一端の接続部3a(切込)をすでに組み立てられている柱のフランジに嵌め、接続部3aに内蔵されているクサビ3cでフランジと下さん3を連結固定するとともに、ブラケット2のクランプ2c、2dに、下さん3を固定する工程である。なお、足場材の組み立て、連結は、ここに示すものと異なる他の連結方式を採用しても当然かまわない。
【0025】
支柱設置工程は、
図7−
図8に示すように、下ブラケット4cを介して奥支柱4dを備える中支柱4を奥の下さん3の他端の接続部3bにフランジ4aを嵌めクサビ3dで連結固定するとともに奥支柱4dを水平突出部24aの下方の凹み24bに位置させ、その上部を水平突出部24aの底面に当接させ、前支柱5を手前の下さん3の他端の接続部3bにフランジ5aを嵌めクサビ3dで連結固定する工程である。
図7に示すように、足場設置作業時でも、電車25は通常運転可能である。
【0026】
下奥足場形成工程は、
図8−
図10に示すように、中支柱4及び前支柱5間に横棒9、9を渡し、前後の下ブラケット4cに踏板6の鈎6aを掛けて踏板6を渡し、下足場11の奥の下さん3、中さん8、手摺り7を組み立て済みの足場の対応する位置に連結固定して延設する工程である。接続部とフランジの接続は、下さん3と中支柱4と同様であり、以下の連結も同様である。
【0027】
下手前足場形成工程は、
図11−
図13に示すように、枠体22を組み立て済みの吊り足場内に引き戻し、下足場11の奥の踏板6に作業者が位置しながら、下足場11の手前の横棒9に踏板6の鈎6aを掛けて踏板6を渡し、下足場11の手前の下さん3、中さん8、手摺り7を組み立て済みの足場の対応する位置に連結固定して延設する工程である。
【0028】
上足場形成工程は、
図14−
図15に示すように、上足場10の横棒9に踏板6の鈎6aを掛けて踏板6を渡した後、上足場10の中さん8、手摺り7を延設する工程である。手摺り7に安全帯を連結して、組み立て時の作業者の脱落を防止するとよい。
【0029】
図16は、次の延設足場1bの連結組み立てのため、枠体22をスライドさせる準備として、固定具23を枠体22の最前部で固定している。そして、
図17では、
図3、4と同様に、枠体22をスライド突出させ、組み立てた足場の外に、一次的な張出足場21aを形成し、作業者が枠体22の底板22dの上で延設作業をする。
【0030】
次に、吊り足場1の上での目的の工事、作業について、
図18を参照して説明する。所望の位置にまで、初期足場1aから吊り足場1を延設したならば、或いは延設しながら、吊り足場1で目的の作業を行う。ここでは、巾木、垂直養生ネットを省略しているが、実際の作業では、作業時の脱落防止のためそれらを設置する。
【0031】
ここでは、川27に渡された鉄道橋24の側面の水平突出部24aに、川岸上部に設置した初期足場から、上一列、下二列の踏板6を備える吊り足場1を延設し、昼間、電車25の往来を止めることなく、鉄道橋24の上面端に防風柵26を設置することを目的としており、
図18では防風柵26の設置途中段階である。
【0032】
下足場11は上足場10の設置用であり、工事資材の搬入経路となる。上足場10は主に工事時の作業場所、電車往来時の退避場所となる。
【0033】
次に、本発明であるスライド枠を用いた吊り足場の撤去方法について
図19−32を参照して説明する。基本的に、組み立てのときと逆手順で吊り足場1の部品を、電車の往来を制限することなく、昼間に分解撤去する方法である。
【0034】
図19は、吊り足場1の組み立て完了後に、鉄道橋24に防風柵26の設置作業も完了したときの吊り足場1の端部の様子を示している。各足場材を撤去するため、枠体22の引き戻し、突出を利用する。
【0035】
先ず、固定具23を、
図19の位置から
図20の位置に移動し、クランプ23aで、中支柱4、前支柱5に固定し、1つの延設足場ユニットを除去したとき、枠体22が脱落しないようにする。そして、
図21に示すように、枠体22を1つの延設足場ユニット分、吊り足場1内に引き戻す。
【0036】
その後、
図22に示すように上足場10の手摺り7、中さん8を分解、撤去する。既存のフランジ、接続部クサビによる連結は、周知の手段で解除して、分解する。分解された足場材は、上下足場10、11を通り吊り足場1の外に搬出される。次に、
図23に示すように、上足場10の2枚の踏板6を分解、撤去する。
【0037】
次に、
図24に示すように、下足場11の手前の手摺り7、中さん8、下さん3を分解、撤去する。続いて、
図25に示すように、下足場11の手前の踏板6を撤去する。
【0038】
次に、
図26に示すように、枠体22を、下足場11の手前の踏板6を除去したスペースを底板で覆うように、スライドして押し出す。作業者は、底板22dの上で、足場材の分解、撤去作業を行う。
【0039】
次に、
図27に示すように、下足場11の奥の手摺り7、中さん8、下さん3、さらに手前と奥の踏板6の間の下さん3も分解、撤去する。続いて、下足場11の奥の踏板6を撤去する。
【0040】
次に、
図28に示すように、前支柱5を分解、撤去する。続いて、
図29に示すように、下ブラケット4cを介して連結した奥支柱4dとともに中支柱4を分解、撤去する。さらに、
図30に示すように、上足場10の下さん3を分解、撤去する。加えて、アンカーボルト2a、2bを外し、ブラケット2を撤去する。
【0041】
最後に、枠体22を吊り足場1内に引き入れ、
図19の位置となる。したがって、全て延設足場1bを撤去するためには、
図19から
図32を繰り返す。そして、延設足場1bの撤去か完了した後に、初期足場1aを従来の手法で撤去する。
【0042】
本発明は、多種多様な高所構造物に、初期足場を設置した後は、安全かつ簡易に吊り足場を延設でき、高所構造物の側面或いは上部で、各種目的の工事を、通行物があっても昼間に何らの規制をすることなく行うことができる。