特許第6339993号(P6339993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本スペリア社の特許一覧

<>
  • 特許6339993-鉛フリーはんだ合金 図000015
  • 特許6339993-鉛フリーはんだ合金 図000016
  • 特許6339993-鉛フリーはんだ合金 図000017
  • 特許6339993-鉛フリーはんだ合金 図000018
  • 特許6339993-鉛フリーはんだ合金 図000019
  • 特許6339993-鉛フリーはんだ合金 図000020
  • 特許6339993-鉛フリーはんだ合金 図000021
  • 特許6339993-鉛フリーはんだ合金 図000022
  • 特許6339993-鉛フリーはんだ合金 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339993
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】鉛フリーはんだ合金
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/26 20060101AFI20180528BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20180528BHJP
   C22C 13/02 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B23K35/26 310A
   C22C13/00
   C22C13/02
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-236930(P2015-236930)
(22)【出願日】2015年12月3日
(62)【分割の表示】特願2015-524557(P2015-524557)の分割
【原出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-129907(P2016-129907A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年6月1日
(31)【優先権主張番号】特願2014-94277(P2014-94277)
(32)【優先日】2014年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-4403(P2015-4403)
(32)【優先日】2015年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592025786
【氏名又は名称】株式会社日本スペリア社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 貴利
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−106280(JP,A)
【文献】 特開2014−217888(JP,A)
【文献】 特開2009−131903(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/131114(WO,A1)
【文献】 特開2011−251310(JP,A)
【文献】 特開2000−190090(JP,A)
【文献】 特開2014−8523(JP,A)
【文献】 特開2014−97532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
C22C 13/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cuが0.1〜2.0質量%、Niが0.01〜0.5質量%、Biが1.0(1.0を含まず)〜2.0質量%未満、Geが0.001〜1.0質量%、及び残部がSnであり、
0.005質量%のP、0.05質量%のCo、0.005質量%のTi、0.01質量%のAl、1質量%のAgのうち、少なくとも1つを更に含有することを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
【請求項2】
Sbが0.1〜5.0質量%、Inが0.1〜10.0質量%、及びGaが0.001〜1.0質量%から選択される1種又は2種以上添加したことを特徴とする請求項1記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項3】
Inを0.1質量%〜6質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の鉛フリーはんだ合金を用いることを特徴とするはんだ接合部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時劣化が少ない長期信頼性に優れた鉛フリーはんだ合金、及び当該はんだ合金を用いたはんだ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境負荷軽減のため、電子部品の接合材料として鉛フリーはんだが広く普及しており、Sn-Ag-Cu系はんだ合金やSn-Cu-Ni系はんだ合金はその代表的な組成である。
近年、Sn-Ag-Cu系はんだ合金及びSn-Cu-Ni系はんだ合金に加え、BiやIn、Sb等を添加した鉛フリーはんだ合金やSn-Zn系はんだ合金等の接合用途や特性に対応した鉛フリーはんだ合金が提案されている。
【0003】
とりわけ、接合部の機械的強度の向上や固相線温度を下げる目的で、BiやSb、Inを添加した鉛フリーはんだ合金が開示されている。
例えば、特許文献1では、Sn-Cu-Ni基本組成に0.01〜3重量%のBiを添加し、はんだの融点制御を容易にした鉛フリーはんだ合金が開示されている。
また、特許文献2では、Sn-Cu-Sb基本組成に1重量%以下の割合でBiを添加し、機械的強度を向上させた鉛フリーはんだ合金が開示されている。
そして、特許文献3では、SnにCu、Ni、及びBiを0.001〜5重量%添加し、接着強度の向上と固相線温度を下げる効果を有する鉛フリーはんだ合金が開示されている。
更に、出願人は、特許文献4に於いて、Sn-Bi共晶組成に一定量のNi及びCuを添加することにより、はんだ接合部及びはんだ接合界面に六方最密充填構造を有する金属間化合物を形成させて、はんだ接合時の強固な接合強度を有する鉛フリーはんだ合金を開示している。
【0004】
しかし、特許文献1〜特許文献4で開示されている技術には課題も残されており、例えば、特許文献1で開示されているはんだ合金組成にはCuの配合量が2〜5重量%と代表的な鉛フリーはんだ組成であるSn-Ag-Cu系はんだ合金やSn-Cu-Ni系はんだ合金よりも150℃以上高い温度である400℃を超えるはんだ付け温度が必要である。
また、特許文献2で開示されているはんだ合金組成は基本組成にSbが10重量%以上配合されているため、実施例にあるように固相線温度が230℃以上であり、特許文献1同様に従来の代表的な鉛フリーはんだ組成に比べ、高い温度でのはんだ付け工程が必要となる。
そして、特許文献3で開示されている技術は極細線はんだに限定したはんだ合金組成であり、種々のはんだ接合に対応するものではなく、汎用性に課題が残っている。
一方、特許文献4で開示されている技術は、接合界面にNiAs型結晶構造を有する金属間化合物を形成させることにより強固な接合を目的とした技術であり、配合するSn及びBiの比率が、Sn:Bi=76〜37原子量%:23〜63原子量%であり、共晶付近を対象としている。
更に、特許文献5で開示されている技術は、極低温で錫ペストの発生が防止され、かつ濡れ性及び耐衝撃性の良好なSn-Cu-Ni-Biからなるはんだ合金組成であり、当該発明の目的から、Cu配合量が0.5〜0.8質量%、Ni配合量が0.02〜0.04質量%、Bi配合量が0.1質量%以上、1質量%未満と限定された数値となっている。
【0005】
また、電子機器のはんだ接合部は、通常、電子機器が使用される場合は、はんだ接合部は通電された状態であり、はんだ接合部が高温にさらされる場合も生じる。
そこで、はんだ接合の信頼性には、はんだ接合時の接合強度は勿論のこと、高温に曝された場合での接合強度も重要になってくる。
ところが、特許文献1〜特許文献5で開示されている技術には高温で長時間曝された場合の接合強度に関して何らの示唆もない。
そして、電子機器の長期使用に十分に耐えられる高い信頼性を有するはんだ接合が可能な、且つ、はんだ接合に於いて汎用性のある鉛フリーはんだ合金が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−334384号公報
【特許文献2】特開2004−298931号公報
【特許文献3】特開2006−255762号公報
【特許文献4】特開2013−744号公報
【特許文献5】WO2009/131114公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、はんだ接合後の高温状態に於いても接合強度が低下せず、高い接合強度を維持すると共に高い信頼性を有し、汎用性のある鉛フリーはんだ合金及びはんだ接合部の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鉛フリーはんだ合金組成及び金属間化合物に着目して鋭意検討を重ねた結果、Sn-Cu-Niを基本組成とする鉛フリーはんだ合金に一定量のBiを添加することにより、はんだ接合部が高温に曝された状態に於いても接合強度の低下が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、Sn-Cu-Niを基本組成とし、Cuが0.1〜2.0質量%、Niが0.01〜0.5質量%、Biが1.0(1.0を含まず)〜2.0質量%未満、更にGeが0.001〜1.0質量%含有し、残部がSnである鉛フリーはんだ合金組成とすることによって、接合時は勿論のこと高温に長時間曝された状態でもはんだ接合部の接合強度が低下せず、接合強度を維持する高い信頼性を有するはんだ接合を可能とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、はんだ製品の使用方法や形態に限定されることのない汎用性のある鉛フリーはんだ合金であり、はんだ接合部が高温状態に長時間曝された場合でも接合強度が低下しないため、電子機器の接合は勿論のこと大電流が流れるはんだ接合部を有する機器や高温状態に曝される機器等に広く応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】試験結果を示すグラフである。
図2】表2の組成を有する各サンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
図3】表4の組成を有する各サンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
図4】Cuの添加量が異なるサンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
図5】Niの添加量が異なるサンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
図6】Geの添加量が異なるサンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
図7】Inの添加量が異なるサンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
図8】In変化サンプルの伸び率の測定結果をまとめたグラフである。
図9】添加元素が添加されたサンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について詳細に説明する。
従来、電子機器等のはんだ接合には、重要項目として、はんだ接合時の接合強度が挙げられており、はんだ接合時の接合強度を向上させたはんだ合金の開発や提供がなされている。
しかし、電子機器等に使用されるはんだ接合部は、電子機器の使用には特に電流が流れた状態になることや高温に曝される場合も多く、また、外部の環境によってはんだ接合部の温度上昇が加速される場合もあり、高温状態でのはんだ接合部の経時劣化を抑制することも、はんだ接合部の信頼性を高めるためには必要である。
一方、はんだ接合部の評価として、はんだ接合部を冷温状態及び高温状態に一定時間放置することを繰り返すヒートサイクル試験と言われる試験方法を用いて評価する方法が一般的に用いられているが、この方法は高温状態の後に冷温状態にて一定時間放置するため、高温状態のままで長時間放置するエージング試験の場合とは、試験後のはんだ接合部の状態が異なるとも知られている。
本発明は、実際の電子機器の使用実態に応じた状況の一例を示す環境である高温状態に連続してはんだ接合部が曝されることによる、はんだ接合部の接合強度の低下を抑制するはんだ合金組成に関する発明である。
【0013】
本発明は、Snが76.0〜99.5質量%、Cuが0.1〜2.0質量%、Niが0.01〜0.5質量%、Biが0.1〜5.0質量%を含有することを特徴とする鉛フリーはんだ合金であり、当該鉛フリーはんだ合金を用いたはんだ接合部である。
【0014】
また、Snが76.0〜99.5質量%、Cuが0.1〜2.0質量%、Niが0.01〜0.5質量%、Biが0.1〜5.0質量%を含有する基本組成に、Sbを0.1〜5.0質量%、Inを0.1〜10.0質量%、Geが0.001〜1.0質量%、及びGaが0.001〜1.0質量%から選択される1種又は2種以上添加することも可能である。
そして、本発明のSn-Cu-Ni-Biを基本組成とする鉛フリーはんだ合金には、本発明の効果を有する範囲に於いて、P、Co、Al、Ti、Ag等の元素を任意に添加することも可能である。
【0015】
上記Sn-Cu-Ni-Biを基本成分とするはんだ合金に、Sbを添加することによって、本発明の効果を有しながらはんだ接合部の機械的強度向上が相乗的に期待できる。
また、Inを添加した場合、CuやSbの含有量が1質量%を超えて当該はんだ合金に配合された場合でも、本発明の効果を有しながら固相線温度を下げる効果をも有し、電子機器に接合する電子部品等やはんだ付け作業の負荷低減効果が期待できる。
そして、GeやGaを添加した場合は、本発明の効果を有しながらはんだ接合部の酸化を抑制することや濡れ性の向上が可能となり、はんだ接合部の長期信頼性やはんだ接合特性を相乗的に向上することが期待できる。
【0016】
次に、本発明の効果について実験例を例示し、説明する。
本発明の鉛フリーはんだ合金について、以下に説明するエージング試験を行い評価した。
〔エージング試験〕
(方法)
1)表1に示す組成のはんだ合金を調製し、溶解させた後、10mm×10mmの断面を有するdog−bone形状の鋳型に鋳込み、測定用サンプルを作製する。
2)測定サンプルを150℃に500時間放置し、エージング処理を行う。
3)島津製作所製試験機AG-ISを用いて、エージング処理を行わないサンプルと行ったサンプルを、室温(20℃〜25℃)10mm/分の条件にて、各サンプルが切断するまで引っ張り、サンプルの引張強度を測定する。
(結果)
結果を図1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
図1に示すグラフは、左側がエージング未処理サンプルの測定結果を右側がエージング処理をしたサンプルの測定結果を其々示している。
本発明のサンプルは、No.2〜5であり、エージング処理を行った場合でも未処理品と比較しても引張強度の低下が少ないことがわかる。
これに対して、比較品であるサンプルNo.1及びサンプルNo.6〜9は、エージング未処理品に対してエージング処理品の引張強度の低下が著しい。
この結果から、Sn-Cu-Ni-Biを基本組成とする本発明の鉛フリーはんだ合金は、150℃という高温に500時間曝されながら、他の鉛フリーはんだ合金組成に比べて引張強度の低下が抑制されていることが明確にわかる。
【0019】
以下、Sn-Cu-Ni-Biの基本組成において、Biの添加量の変化に伴う引張強度の変化について詳しく説明する。より詳しくは、斯かる組成にBiを0質量%から6質量%まで添加したサンプルの引張強度の変化を測定した結果を基に説明する。
表2は、前記引張強度の測定に用いられたサンプルの組成を示す組成表である。
比較例(サンプルi:サンプル名をSN2)として、Biを配合しないSn-Cu-Ni組成も含む。また、Biを含有したサンプルを、サンプルii「サンプル名:+0.1Bi*」、サンプルiii「サンプル名:+0.5Bi*」、サンプルiv「サンプル名:+1.0Bi*」、サンプルv「サンプル名:+1.5Bi*」、サンプルvi「サンプル名:+2.0Bi*」、サンプルvii「サンプル名:+3.0Bi*」、サンプルviii「サンプル名:+4.0Bi*」、サンプルix「サンプル名:+5.0Bi*」及びサンプルx「サンプル名:+6.0Bi*」と称する。サンプルi〜xは夫々Biが0.1質量%、0.5質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、3.0質量%、4.0質量%、5.0質量%及び6.0質量%含まれている。
【0020】
表2のような組成を有するサンプルi〜xは、0016にて上述した方法により作製された。その後150℃にて、0時間及び500時間エージング処理を施した後、引張強度を測定した。
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
表3は、サンプルi〜xにおける測定結果を示す表である。表3の「A」は0時間エージング後の引張強度の測定結果であり、表3の「C」は500時間エージング後の引張強度の測定結果であり、強度変化率は500時間エージング後の引張強度の変化を「A」(0時間)を100として%にて示した結果である。また、図2はサンプルi〜xの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
【0024】
0時間及び500時間のエージング処理時間に対して、Biが添加されているサンプルii〜xは、Biが添加されていないサンプルiより高い引張強度を示していることが分かる。
また、Biの添加量が0.1質量%以上であるサンプルii〜xにおいては、Biが添加されていないサンプルiに対して、500時間のエージング処理の場合、該サンプルi以上の高い引張強度を表している。更にBiの添加量が1.0質量%から3.0質量%であるサンプルiv〜viiにおいては、強度変化率が98%以上であり、500時間エージング後の引張強度の変化率が極めて小さいこと、取分けサンプルv〜viiにおいては500時間エージング後の引張強度がエージングしなかった場合よりも向上していることがわかる。
一方、Bi添加量が6質量%のサンプルxに至ってはBi無添加サンプルiの引張強度の変化率85.2%を下回る71.8%となり、好ましい配合量とは言えない。
【0025】
そして、Sn-Cu-Ni-Biの基本組成にGeを添加した場合において、Biの添加量の変化に伴う引張強度の変化について詳しく説明する。より詳しくは、斯かる組成にBiを0質量%から6質量%まで添加したサンプルの引張強度の変化を測定した。
【0026】
表4は前記引張強度の測定に用いられたサンプルの組成を示す組成表である。図3に示しているように、サンプル1「SAC305」及びサンプル2「SN1」においては、Biが含まれておらず、サンプル3「+0.1Bi」、サンプル4「+0.5Bi」、サンプル5「+1.0Bi」、サンプル6「+1.5Bi」、サンプル7「+2.0Bi」、サンプル8「+3.0Bi」、サンプル9「+4.0Bi」、サンプル10「+5.0Bi」及びサンプル11「+6.0Bi」は、夫々Biが0.1質量%、0.5質量%、1質量%、1.5質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%及び6質量%含まれている。
【0027】
更に、サンプル1「SAC305」を除く他の全てのサンプルにおいては、Cu、Ni、及び、Geが夫々0.7質量%、0.05質量%、及び、0.006質量%含まれ、残部がSnである。また、サンプル1「SAC305」ではAg及びCuが夫々3質量%及び0.5質量%含まれており、残部がSnである。
【0028】
以下、説明の便宜上、サンプル1「SAC305」、サンプル2「SN1」、サンプル3「+10.1Bi」、サンプル4「+0.5Bi」、サンプル5「+1.0Bi」、サンプル6「+1.5Bi」、サンプル7「+2.0Bi」、サンプル8「+3.0Bi」、サンプル9「+4.0Bi質量%」、サンプル10「+5.0Bi」、サンプル11「+6.0Bi」を、夫々「サンプル1」、「サンプル2」、「サンプル3」、「サンプル4」、「サンプル5」、「サンプル6」、「サンプル7」、「サンプル8」、「サンプル9」、「サンプル10」、「サンプル11」と称する。
【0029】
【表4】
【0030】
表4のような組成を有するサンプル1〜11は上述した方法により作製された。作製されたサンプル1〜11に対して、150℃にて、0時間及び500時間エージング処理を施した後、上述した方法により引張強度を測定した。
【0031】
【表5】
【0032】
表5はサンプル1〜11における、測定結果を示す表である。表5の「A」は0時間エージング後の引張強度の測定結果であり、表5の「C」は500時間エージング後の引張強度の測定結果であり、強度変化率は500時間エージング後の引張強度の変化を%にて示した結果である。また、図3はサンプル1〜11の引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
【0033】
0時間及び500時間のエージング処理時間に対して、Biが添加されているサンプル3〜11は、Biが添加されていないサンプル2より高い引張強度を示していることが分かる。
また、Biの添加量が0.5質量%以上であるサンプル4〜11においては、Biが添加されておらず、Agが添加されているサンプル1に対して、500時間のエージング処理の場合、該サンプル1以上の引張強度を表している。更にBiの添加量が1.0質量%から3.0質量%であるサンプル5〜8においては、強度変化率が98%以上であり、500時間エージング後の引張強度の変化率が極めて少ないことがわかる。
従って、サンプル4〜11においては、Agを使用しないことからコストダウンを図ることができるうえ、引張強度の向上の効果を奏する。
【0034】
なお、サンプル3〜9においては、すなわち、Biの添加量が0.1質量%から4質量%に増加するにつれて、引張強度が高くなることが分かる。かつ、斯かるBi添加量の範囲においては、エージング処理がなかった場合と、500時間のエージング処理がされた場合とにおいて、引張強度に大きな差も見当たらない。
【0035】
一方、Biの添加量が5質量%以上であるサンプル10及び11においては、Biの添加量の増加の際、エージング処理がされていない場合の引張強度は高くなるものの、強度変化率が低下する傾向を見せており、特に6質量%に至ってはBi無添加(サンプル2)の引張強度の変化率85.2%を下回る71.8%となり、好ましい配合量とは言えない。
【0036】
以上の測定結果から、Sn、Cu、Ni、Bi、Geからなる鉛フリーはんだ合金において、150℃という高温に長時間曝される過酷な使用環境では、Biの添加量が0.5質量%〜4.0質量%であることが望ましく、更にはBiの添加量が1.0質量%〜3.0質量%であることが望ましい。斯かるBiの添加量の範囲内においては、上述したように、500時間のエージング処理時間に対しても高い引張強度を得ることができる。また、エージング処理がなかった場合と、エージング処理がされた場合とにおいて、引張強度に大きさ差も生じなく、安定した引張強度が得られる。
【0037】
なお、Biの添加量が5質量%であるサンプル10の場合は、上述したように、エージング処理がされた後の引張強度がエージング処理のされていない場合より下がっている。しかし、エージング処理がされた後の引張強度が、Biが添加されていないサンプル1及び2の引張強度の変化率が小さいことから、Biの添加量は0.1質量%〜5.0質量%であっても良い。
【0038】
また、以下、Sn-Cu-Ni-Biの基本組成にGeを添加した場合において、Cuの添加量の変化に伴う引張強度の変化について詳しく説明する。
【0039】
この際、Ni、Bi、及び、Geが夫々0.05質量%、1.5質量%、及び、0.006質量%含まれ、また、Cuは0.05質量%から2.2質量%まで添加され、かつ、残部がSnである。以下においては説明の便宜上、Cuが0.05質量%添加されたサンプルを「0.05Cu」、0.1質量%添加されたサンプルを「0.1Cu」、0.7質量%添加されたサンプルを「0.7Cu」、2質量%添加されたサンプルを「2Cu」、2.2質量%添加されたサンプルを「2.2Cu」と称する。
【0040】
このようなサンプルは上述した方法により作製され、作製されたサンプルに対して、150℃にて、0時間及び500時間エージング処理を施した後、上述した方法により引張強度を測定した。
【0041】
【表6】
【0042】
表6は、上述したCuの添加量が異なるサンプルに対する引張強度の測定結果を示す表である。表6の「A」は0時間エージング後の引張強度の測定結果であり、表4の「C」は500時間エージング後の引張強度の測定結果である。また、図4はCuの添加量が異なるサンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
【0043】
「0.05Cu」〜「2.2Cu」何れのサンプルにおいても、エージング前後における強度変化率は90%を上回っており、良好である。しかし、Cuの添加量が0.05質量%である場合は、いわゆるCu食われの増加等の不具合が発生する虞があることから、望ましくない。一方、Cuの添加量が2.2質量%である場合は、液相温度の上昇、引け巣発生等の不具合が発生する虞があることから、望ましくない。
【0044】
以上のことから、上述した組成にて、Sn-Cu-Ni-Biの基本組成にGeを添加した場合においては、Cuの添加量が0.1質量%〜2.0質量%であることが望ましい。
【0045】
また、以下、Sn-Cu-Ni-Biの基本組成にGeを添加した場合において、Niの添加量の変化に伴う引張強度の変化について詳しく説明する。
【0046】
この際、Cu、Bi、及び、Geが夫々0.7質量%、1.5質量%、及び、0.006質量%含まれ、また、Niは0.005質量%から0.55質量%まで添加され、かつ、残部がSnである。以下においては説明の便宜上、Niが0.005質量%添加されたサンプルを「0.005Ni」、0.01質量%添加されたサンプルを「0.01Ni」、0.05質量%添加されたサンプルを「0.05Ni」、0.5質量%添加されたサンプルを「0.5Ni」、0.55質量%添加されたサンプルを「0.55Ni」と称する。
【0047】
このようなサンプルは上述した方法により作製され、作製されたサンプルに対して、150℃にて、0時間及び500時間エージング処理を施した後、上述した方法により引張強度を測定した。
【0048】
【表7】
【0049】
表7は、上述したNiの添加量が異なるサンプルに対する引張強度の測定結果を示す表である。表7の「A」は0時間エージング後の引張強度の測定結果であり、表7の「C」は500時間エージング後の引張強度の測定結果である。また、図5はNiの添加量が異なるサンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
【0050】
「0.005Ni」〜「0.55Ni」何れのサンプルにおいても、エージング前後における強度変化率は90%を上回っており、良好である。しかし、Niの添加量が少ない場合は、合金層界面での金属間化合物の粗大化抑制効果が失われ、クラックの起点となり得るので、望ましくない。一方、Niの添加量が0.5質量%を超えると、液相温度が上昇し、引け巣発生の原因となることから、望ましくない。
【0051】
以上のことから、上述した組成にて、Sn-Cu-Ni-Biの基本組成にGeを添加した場合においては、Niの添加量が0.01質量%〜0.5質量%であることが望ましい。
【0052】
また、以下、Sn-Cu-Ni-Biの基本組成に対してGeを添加した場合において、Geの添加量の変化に伴う引張強度の変化について詳しく説明する。
【0053】
この際、Cu、Ni、及び、Biが夫々0.7質量%、0.05質量%、及び、1.5質量%含まれ、また、Geは0.0001質量%から1質量%まで添加され、かつ、残部がSnである。以下においては説明の便宜上、Geが0.0001質量%添加されたサンプルを「0.0001Ge」、0.001質量%添加されたサンプルを「0.001Ge」、0.006質量%添加されたサンプルを「0.006Ge」、0.1質量%添加されたサンプルを「0.1Ge」、1質量%添加されたサンプルを「1Ge」と称する。
【0054】
このようなサンプルは上述した方法により作製され、作製されたサンプルに対して、150℃にて、0時間及び500時間エージング処理を施した後、上述した方法により引張強度を測定した。
【0055】
【表8】
【0056】
表8は、上述したGeの添加量が異なるサンプルに対する引張強度の測定結果を示す表である。表8の「A」は0時間エージング後の引張強度の測定結果であり、表8の「C」は500時間エージング後の引張強度の測定結果である。また、図6はGeの添加量が異なるサンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
【0057】
「0.0001Ge」〜「0.1Ge」何れのサンプルにおいても、エージング前後における強度変化率は90%を上回っており、良好である。しかし、Geの添加量が0.0001質量%である場合は、酸化防止効果が抑制されるため、望ましくない。一方、Geの添加量が1質量%である場合は、エージング前後における強度変化率は90%を大きく下回っている。
【0058】
以上のことから、上述した組成にて、Sn-Cu-Ni-Biの基本組成にGeを添加した場合においては、Geの添加量が0.001質量%〜0.1質量%であることが望ましい。
【0059】
一方、Geの添加量が増すにつれて酸化防止効果の向上が期待できることから、Geの添加量を0.001質量%〜1.0質量%にすることも可能である。
【0060】
また、以下、Sn-Cu-Ni-Biの基本組成にGeを添加した場合において、Inの添加量の変化に伴う引張強度の変化について詳しく説明する。
【0061】
この際、Cu,Ni、Bi、及び、Geが夫々0.7質量%、0.05質量%、1.5質量%、及び、0.006質量%含まれ、また、Inは0質量%から10質量%まで添加され、かつ、残部がSnである。以下においては説明の便宜上、Inが0質量%添加されたサンプルを「0In」、0.1質量%添加されたサンプルを「0.1In」、3質量%添加されたサンプルを「3In」、4質量%添加されたサンプルを「4In」、5質量%添加されたサンプルを「5In」、6質量%添加されたサンプルを「6In」、7質量%添加されたサンプルを「7In」、10質量%添加されたサンプルを「10In」と称する。
【0062】
このようなサンプルは上述した方法により作製され、作製されたサンプルに対して、150℃にて、0時間及び500時間エージング処理を施した後、上述した方法により引張強度を測定した。
【0063】
【表9】
【0064】
表9は、上述したInの添加量が異なるサンプル(以下、単に、In変化サンプルと言う。)に対する引張強度の測定結果を示す表である。表9の「A」は0時間エージング後の引張強度の測定結果であり、表9の「C」は500時間エージング後の引張強度の測定結果である。また、図7はInの添加量が異なるサンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
【0065】
「10In」を除く何れのサンプルにおいても、エージング前後における強度変化率は90%を上回っており、良好である。従って、Inの添加量が0.1質量%〜7質量%であることが有効であるようにも考えられる。
【0066】
一方、表10はIn変化サンプルに対する伸び率の測定結果を示す表である。表10において、「A」は0時間エージング後の伸び率の測定結果であり、表10の「C」は500時間エージング後の伸び率の測定結果であり、伸び変化率は500時間エージング後の伸び率の変化を百分率(%)にて示した結果である。また、図8は前記In変化サンプルの伸び率の測定結果をまとめたグラフである。
【0067】
【表10】
【0068】
ここで伸び率は、以下の式にて求められる。但し、「σ」は伸び率、「Lo」は引張強度測定前の標点間の距離、「L」は引張強度測定後の標点間の距離である。
σ(%)=(L−Lo)/Lo×100
【0069】
また、伸び率は、引張強度の測定前に所定の標点間距離(50mm(Lo))を試験片に印付けし、引張強度の測定後の破断した試験片の突き合わせた時の標点間の長さ(L)を計測し、上記式を用いて計算した。
【0070】
表10及び図8から分かるように、Inの添加量が4質量%(4In)〜6質量%(6In)である範囲においては、何れのサンプルも伸び変化率が安定して100%を上回っている。すなわち、斯かる範囲においては、エージング後に伸び率が向上されている。
【0071】
換言すれば、斯かる範囲においては、エージング前に比べて、エージング後、変形が生じ易くなると言える。外部からの衝撃があった場合、変形により該衝撃を吸収して全体的にはある程度の強度上昇を齎すこともあることから、斯かる伸び率の向上は強度の向上に寄与すると言える。
【0072】
しかし、Inの添加量が多すぎる場合は、変態開始温度が下がる虞がある。
【0073】
以上のことから、上述した組成にて、Sn-Cu-Ni-Biの基本組成にInを添加した場合においては、Inの添加量が0.1質量%〜6質量%であることがより望ましい。
【0074】
一方、Inの添加量が増すにつれて液相温度の低下、及び、強度の上昇が期待できることから、Inの添加量を0.1質量%〜10.0質量%にすることも可能である。
【0075】
以下においては、Ni、Ge及びBiが添加されておらず、Ag、Cu及びSnのみを含む「SAC305」サンプルと、Sn-Cu-Ni-Biの基本組成に、Ge、Sb、In、Ga、P、Co、Al、Ti又はAg(以下、添加元素とも言う)を添加した場合における強度変化を説明する。
【0076】
【表11】
【0077】
表11は、斯かる添加元素が添加されたサンプルの引張強度の測定結果を示す表である。表11の「A」は0時間エージング後の引張強度の測定結果であり、表11の「C」は500時間エージング後の引張強度の測定結果である。また、図9は斯かる添加元素が添加されたサンプルの引張強度の測定結果をまとめたグラフである。
【0078】
更に、斯かる添加元素が添加されたサンプルの組成を表12に示す。ここで「SAC305」は、前記表4における「SAC305」(日本スペリア社製)と同一組成のものであり、「+1.5Bi」(I)の組成は既に表2に示しているので詳しい組成表示を省略する。
【0079】
【表12】
表11及び表12において、サンプルII〜XIVは、何れにおいても、Cu,Ni、及びBiが夫々0.7質量%、0.05質量%、及び1.5質量%含まれている。以下においては、説明の便宜上、このような、Cu,Ni、及びBiの含有量を基本組成とも言う。
【0080】
また、サンプルII及びIIIにおいては、前記基本組成に加えて、Geが夫々0.001質量%又は0.1質量%更に含まれており、残部はSnである。なお、サンプルIV〜XIVにおいては、前記基本組成と共にGeを0.006質量%含むうえ、更に斯かる添加元素が含まれている。
【0081】
図9及び表11から分かるように、エージング前後において、強度変化率が90%を下回るものは「SAC305」及び「10In」(VII)のみである。すなわち、サンプルVIIの場合を除いて、各サンプルにおける添加元素及び当該添加量は、エージング後の信頼性(強度の向上)を向上させるという本発明の効果を維持しつつ、斯かる添加元素に固有の効果も共に得ることが出来ると判断される。
【0082】
例えば、Ge及びPは酸化被膜によるSn及びはんだ成分の酸化防止という固有の効果を奏する。Ti及びGaは自己酸化効果及びバルク強度の上昇という固有の効果を奏する。Inは液相温度の低下及び強度の上昇という固有の効果を奏し、Agは分散・析出強化によるエージング前の強度上昇という固有の効果を奏する。Coは金属間化合物層の微細化という固有の効果を奏し、Alは金属間化合物の微細化、エージング後の強度低下の抑制、及び、自己酸化効果という固有の効果を奏する。
【0083】
表13は、エージング前後における、「SAC305」と、サンプルI〜XIVとの引張強度を比較した表である。より詳しくは、「SAC305」に対するサンプルI〜XIVの引張強度の比、サンプルIに対する「SAC305」及びサンプルII〜XIVの引張強度の比を百分率(%)として示した。換言すれば、エージング前後での、「SAC305」及びサンプルIに対する相対的引張強度を示している。
【0084】
【表13】
【0085】
表13から解かるように、エージング前後の何れの場合においても、サンプルII〜XIVの全てに対して、93%以上であり、特に、サンプルV及びIXにおいては、エージング前後に亘って120%を超えている。このような結果からも、上述したように、前記添加元素を添加した場合、本発明の効果を維持しつつ、斯かる添加元素に固有の効果も共に得ることが出来ると判断される。
【0086】
本発明のSn-Cu-Ni-Biを基本組成とする鉛フリーはんだ合金は、本発明の効果を有する範囲に於いて、形状や使用方法に限定はなく、フロー及びリフローはんだ付けにも使用可能であり、フロー用のバータイプのはんだ形状は勿論のこと、用途によって、はんだペースト、ヤニ入りはんだ、粉末状、プリフォーム状、及びボール状等の種々の形態に加工することも可能である。
そして、種々の形状に加工された本発明の鉛フリーはんだ合金を用いてはんだ接合したはんだ接合部も本発明の対象である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、はんだ製品の形態に限定されることのない汎用性のある鉛フリーはんだ合金であり、高温状態に長時間曝された状態でもはんだ接合部の接合強度の低下が少ないため、はんだ接合部の信頼性が長期に亘り高く、電子機器のはんだ接合は勿論のこと大電流が流れるはんだ接合部を有する装置・機器や高温状態に曝される装置・機器等に広く応用が期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9