(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体中で正電極及びアース電極の電極間に高電圧パルスを印加してパルス放電を発生させて、前記パルス放電時に発生する衝撃波が伝播する範囲に配置された処理物の被破砕物を前記衝撃波により破砕する工程を含む、放電破砕方法であって、
前記アース電極を前記処理物に接触させ、前記正電極を、前記処理物を挟むように一対対向させて配置した状態で、前記高電圧パルスを印加するとき、
前記一対の正電極のうちの一方の正電極の放電により気泡を発生させ、他方の正電極での放電を行い、前記一方の正電極での放電で生じた気泡の崩壊消滅による衝撃波により前記処理物の一方の正電極側に配置された被破砕物を破砕するとともに、
前記一対の正電極のうちの前記他方の正電極の放電により気泡を発生させ、前記一方の正電極での放電を行い、前記他方の正電極での放電で生じた気泡の崩壊消滅による衝撃波により前記処理物の他方の正電極側に配置された被破砕物を破砕する放電破砕方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、放電経路や放電経路と処理物との間の液体中のうち、処理物から離れた位置に気泡が存在する場合、気泡のキャビテーション崩壊に伴う水撃圧により、高電圧パルス放電のエネルギーを消耗させてしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、エネルギーの消耗が少ない高効率な放電破砕装置及び放電破砕方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る放電破砕装置は、パルス放電を用いて、上下電極間に保持された処理物に搭載された被破砕物を破砕する放電破砕装置であって、
液体を保持する容器と、
前記容器内で、前記液体の中に配置される前記上電極及び前記下電極と、
前記上電極及び前記下電極間に高電圧パルスを印加することで、パルス放電を発生させるパルス電源と、
前記液体中で、前記被破砕物が下面に配置されるように前記上下電極間に保持された前記処理物の下面側に気泡を発生させる気泡発生装置とを備え、
前記パルス電源で前記上電極及び前記下電極間に高電圧パルスを印加するとき、前記処理物の下面側に気泡が存在することにより、前記放電で生じた気泡の崩壊消滅による衝撃波により前記被破砕物を破砕することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の別の態様に係る放電破砕装置は、パルス放電を用いて、上下電極間に保持された処理物に搭載された被破砕物を破砕する放電破砕装置であって、
液体を保持する容器と、
前記容器内で前記液体の中に配置される前記処理物に接続したアース電極と、
前記処理物を挟むように対向させて配置された一対の正電極と、
前記一対の正電極を交互にパルス放電させる放電回路とを備えて、
前記一対の正電極のうちの一方の正電極での放電後に、前記処理物の前記一方の正電極側に気泡を発生させて前記処理物の一方の正電極側に気泡が存在する状態で、前記放電回路で前記一対の正電極のうちの他方の正電極での放電を行い、前記
一方の正電極での放電で生じた気泡の崩壊消滅による衝撃波により前記被破砕物を破砕することを特徴とする。
【0010】
本発明の別の態様に係る放電破砕方法は、液体中で正電極及びアース電極の電極間に高電圧パルスを印加してパルス放電を発生させて、前記パルス放電時に発生する衝撃波が伝播する範囲に配置された処理物の被破砕物を前記衝撃波により破砕する工程を含む、放電破砕方法であって、
前記アース電極を前記処理物に接触させ、前記正電極を、前記処理物を挟むように一対対向させて配置した状態で、前記高電圧パルスを印加するとき、
前記一対の正電極のうちの一方の正電極の放電により気泡を発生させ、
他方の正電極での放電を行い、前記
一方の正電極での放電で生じた気泡の崩壊消滅による衝撃波により前記処理物の一方の正電極側に配置された被破砕物を破砕するとともに、
前記一対の正電極のうちの
前記他方の正電極の放電により気泡を発生させ、
前記一方の正電極での放電を行い、前記
他方の正電極での放電で生じた気泡の崩壊消滅による衝撃波により前記処理物の他方の正電極側に配置された被破砕物を破砕することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の前記態様は、リサイクル対象の物品、特に、使用済み家電製品を高効率に破砕することができる放電破砕装置及び放電破砕方法を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る放電破砕装置1の構成及びその装置1を使用する放電破砕方法について、
図1を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係る放電破砕装置の構成を示す図である。
【0014】
放電破砕装置1は、パルス放電を用いて、上下電極間に保持された処理物に搭載された被破砕物を破砕する放電破砕装置であって、
図1に示すように、水10を満たした容器20と、液体中に配置された上電極31及び下電極32と、上電極31に高電圧パルスを印加するパルス電源40と、気泡80が混入した水流(以下、気泡水流という)を発生させる気泡発生装置50とを備える。上電極31は、パルス電源40とリード線33aと接続され、下電極32は、リード線33bを介して接地されている。上電極31と下電極32は、処理物60を挟んで対向している。処理物60は、上電極31と下電極32との間に(図示しない)支持手段により支持されており、処理物60の下面には、被破砕物70が搭載されている。よって、被破砕物70は、パルス放電時に発生する衝撃波が伝播する範囲に配置されている。気泡発生装置50は、容器20の底面側から処理物60の下面に向けられて配置された流入管で構成される流入経路12aと接続されており、気泡含有液体を流入経路12aから処理物60の下方より噴出する。処理物60の下方には、処理物60の下面側から容器20の底面側に向けて配置された流出管でそれぞれ構成される流出経路13a、13bが設けられており、流出経路13a、13bと接続された液体吸引装置の一例としてのポンプ51により容器20から水10を吸引して排出する。
【0015】
パルス電源40は、500kVまでの電圧を印加できて、パルス幅3μsecのとき、最大30kAの放電電流が可能であればよく、マルクス発生器を用いることができる。好ましい放電条件は、物品の種類やサイズにより異なるが、パルス幅は1〜9μsecが好ましく、放電電流値は10〜30kAが好ましい。放電を発生させる回数(パルス回数)は1回〜100回が好ましい。100回を超えると処理時間が長くなり工数的に不利になる。パルス周波数は特に規定しないが、通常は1〜5Hzである。
【0016】
気泡発生装置50は、直径3mm以下の気泡を発生させることができるものであれば特に限定されない。気泡発生装置50の例としては、気液混合ノズル型の気液混合装置であっても、気体を液体中で攪拌して混合することで気泡含有液体を発生させる気液2相流旋回型であっても、気体を加圧して液体中に溶解させる加圧溶解型であっても構わない。
【0017】
第1実施形態では上電極31と下電極32は、それぞれ、先端を円錐形状としている。下電極32としては、多様な形態が適用できる。下電極32としては、
図1のような円錐形状以外に、平板状、網状、格子状、渦巻き状などであってもよい。
【0018】
処理物60としては、特に特定されないが、放電による衝撃波の効果を全体に均等に及ぼすためには、薄型の物品が好ましい。例えば、携帯電話、ゲーム機、又は、薄型テレビなどの電気製品に使用されている回路基板などが挙げられる。また、処理物60の下面に搭載された被破砕物70としては、ICチップ又はチップ部品など回路基板に半田付けされた電子部品が挙げられる。
【0019】
次に、上記構成の放電破砕装置1における作用及び効果について説明する。
【0020】
気泡発生装置50を作動させて、気泡含有液体を容器20の下部に配置した流入経路12aから処理物60の下面の略中央に向けて噴出させる。下面の略中央に噴出された気泡含有液体は処理物60に衝突し、処理物60の下面の略中央から各端面方向(
図1では左右方向)に向かって放射状に流れる。一方、容器20の下部(例えば、端面近傍の下方)には排出経路13a及び13bが設けられているので、処理物60の各端面方向に流れた気泡含有液体は、排出経路13a及び13bからの排出機能により容器20の下部方向に流れる。これにより、気泡が処理物60の上面側に回り込むことが抑制され、その結果として、処理物60の上面側には気泡がほとんどなく、処理物60の下面側に気泡が存在することになる。
【0021】
この状態でパルス電源40を駆動させる。パルス電源40で発生した高電圧パルスは、上電極31と下電極32との間に印加される。放電は、上電極31と下電極32間に生じる。そうすると、上電極31と下電極32との間に処理物60が配置されているので、放電は、処理物60の上面から下面に回り込むような沿面放電となる。この沿面放電により生じた衝撃波は、処理物60の下面において気泡80にエネルギーを与える。そうすると、気泡80が膨張し、内部圧力が水圧より小さくなると、膨張が止まり収縮を始める。収縮すると内部圧力が高まり、最終的には崩壊消滅する。この気泡80が、崩壊消滅する瞬間に、バブルパルスと呼ばれる急峻な圧力波(以下、バブル衝撃波という。)が発生する。これにより、沿面放電により生じた衝撃波とバブル衝撃波とが重畳して、処理物60の下面に搭載した被破砕物70を効率良く破砕することができる。ここで、放電破砕装置1は、気泡発生装置50で生成した気体含有液体を処理物60の上面側に回り込まない構成にしているため、上電極31と処理物60との間に存在する気泡80が少ない。したがって、放電によるエネルギーが処理物60に到達する前に、気泡80を膨張させるためのエネルギーとして消費されることが少ない。よって、より効率的な放電破砕が可能となる。例えば、衝撃波のみにより直接、被破砕物70を破砕する場合、250kV程度の高電圧パルスが必要であったが、本発明の実施形態においてバブル衝撃波を利用することで100kV程度の高電圧パルスで済み、パルス電源40の小型化が図れるので、低コスト、高効率な破砕処理をすることができる。
【0022】
ここで、気泡80の直径は、50μm〜3mmが好ましく、100μm〜1mmが最も好ましい。気泡の直径がこの範囲内であれば、放電による衝撃波が気泡80を効率良く膨張させることができる。
【0023】
気泡発生装置50による気泡の発生量は、処理物60の下面で、1立方センチメートル当たり100個〜10000個に制御することが好ましい。この範囲内にすることで、放電による衝撃波とバブル衝撃波との重畳による破砕力を最も高めることができる。一方、処理物60の上面側での気泡の発生量は、できる限り少なければよく、50μm以上の気泡が全く存在しないことが好ましい。
【0024】
第1実施形態では、下面の略中央に気泡含有液体を噴出させているが、下面全体に均一に気泡が拡散するのであれば、中央付近に噴出させることには限定されない。
【0025】
容器20の水位を一定に維持するため、排出経路13a及び13bからの液体排出量は、流入経路12aからの気泡含有液体の流入量と同等の容量の液体を排出することができる。
【0026】
ここで、処理物60の下面とは、処理物60の下面の表面から7.5mm下方までの範囲であればよい。この範囲内の気泡の存在量を処理物の上面側(例えば、処理物60の表面から上側の正電極の下端までの範囲)よりも大きくすることにより、衝撃波とバブル衝撃波との重畳が効果的となる。
【0027】
したがって、気泡含有液体を容器20内に導入する流入経路12aの先端部、すなわち、気泡含有液体の導入口は、処理物60の下面表面から7.5〜150mm下方の位置に設置することが好ましい。
【0028】
また、流入経路12aからの気泡含有液体の流入速度は、1秒当たり100〜1500cm
3であることが好ましい。
【0029】
本発明の第1実施形態にかかる放電破砕装置及び放電破砕方法によれば、リサイクル対象の物品、特に、使用済み家電製品を高効率に破砕することができる。なお、以下の各実施形態においても、少なくとも、このような作用効果は奏することができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る放電破砕装置2の構成及びその装置2を使用する放電破砕方法について、
図2を用いて説明する。
図2は、第2実施形態に係る放電破砕装置の構成を示す図である。第2実施形態の放電破砕装置2は、第1実施形態の放電破砕装置1にさらに液体流入経路14を備えている。放電破砕装置1と同一の要素には同一の符号を付している。また、第1実施形態における気泡形成の条件は第2実施形態でも同様に適応される。
【0030】
図2に示すように、本第2実施形態における放電破砕装置2には、容器20の上部に、下向きに差し込まれた液体流入管で構成される液体流入経路14が設けられている。気泡を含まない水10は、送液装置の一例としてのポンプ52から送液され、容器20の水10の中に配置された液体流入経路14の吐出口から噴出し、処理物60の上面の大略中央部分に衝突する。処理物60の上面の大略中央部分に衝突した水10は、処理物60の各端面方向に向かって放射状に流れる。
【0031】
次に、上記構成の放電破砕装置2における作用及び効果について説明する。
【0032】
放電によるエネルギーが、処理物60に到達する前に気泡80を膨張させるエネルギーに消費されないようにするためには、上電極31と処理物60の上面との間に気泡80が存在しないことが重要である。液体流入経路14の吐出口から噴出した気泡を含まない水10は、処理物60の各端面方向に向かって放射状に流れるので、処理物60の各端面付近からの気泡80の処理物60の上面側への回り込みを抑制することができる。また、処理物60が回路基板の場合、回路基板の上面と下面とを貫通する孔、例えばスルーホールなどが形成されていることが有る。貫通孔が有る回路基板の場合には、気泡80は、この貫通孔を通過して処理物60の上面側に浮上することがある。そこで、第2実施形態の放電破砕装置2では、気泡を含まない水10を液体流入経路14の吐出口から噴出し、処理物60の上面に衝突させている。この構成により、噴出された水10の水圧によって気泡80が処理物60の貫通孔を通過することを防止することができ、さらに、貫通孔を通過した気泡が存在したとしても、そのような気泡を上面側から排除することができる。
【0033】
放電破砕装置2からの、気泡を含む水及び気泡を含まない水の排出は流出経路13a、13bを通じて行う。このとき、気泡の発生量が、処理物60の下面で、1立方センチメートル当たり100個〜10000個になるよう制御することが好ましい。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る放電破砕装置3の構成及びその装置3を使用する放電破砕方法について、
図3を用いて説明する。
図3は、第3実施形態に係る放電破砕装置の構成を示す図である。第3実施形態の放電破砕装置3は第1実施形態の放電破砕装置1と同じ構成要素を備えており、放電破砕装置1と異なる点は流入経路及び排出経路の配置である。放電破砕装置1と同一の要素には同一の符号を付している。また、第1実施形態における気泡形成の条件は第3実施形態でも同様に適応される。
【0034】
図3に示すように、本第3実施形態における放電破砕装置3には、容器20の側面に流入経路12bと排出経路13cとが設けられている。流入経路12bには気泡発生装置50が接続され、排出経路13cには液体吸引装置の一例としてのポンプ51が接続されている。また、流入経路12bと排出経路13cとは、処理物60の下方に略同軸上に配置され、流入経路12bから噴出された気泡含有液体が処理物60の下面側に沿って流れ、排出経路13cから容器20の外部へ排出される。
【0035】
このように第3実施形態によれば、気泡80は、処理物60の下面側に沿って流れるので、処理物60の上面への回り込みを抑制することができる。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る放電破砕装置4の構成及びその装置4を使用する放電破砕方法について、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、第4実施形態に係る放電破砕装置の構成を示す図であり、
図5は、
図4のA−A’線における放電破砕装置4の部分断面図である。なお、本第4実施形態ではチャンネル90を除いて、第3実施形態とすべて同様の構成である。また、第1実施形態における気泡形成の条件は第4実施形態でも同様に適応される。
【0036】
図4に示すように本第4実施形態の放電破砕装置4には、処理物60の下面にチャンネル90が設けられている。
図5に示すように、チャンネル90は、上方が開放された略コの字形状の断面を有しているとともに、チャンネル90の長さは、気泡80が流れる方向において、処理物60よりも短くなっている。処理物60の下面がチャンネル90の開口部を覆うように処理物60を保持することで、処理物60の下面に搭載された被破砕物70は、チャンネル90内に配置される。これにより、気泡80は、処理物60の下面とチャンネル90とに囲まれた空間を流れることになるので、気泡80が処理物60の上面へ回り込むことを抑制することができる。なお、チャンネル90の材料としては、電気絶縁性の材料が好ましい。電気絶縁性の材料として、例えば、プラスチックが挙げられる。電気絶縁性の材料が好ましい理由は、チャンネル90が導電性の材料であると、上電極31とチャンネル90との間で放電が起こるので、沿面放電が処理物60の下面を流れる放電の距離が短くなり、処理物60の下面全体に放電による衝撃波が発生しにくくなるからである。
【0037】
チャンネル90内の底面と処理物60の下面との間の距離は、40〜200mmにすることが好ましい。この範囲とすることで、装置の大型化を伴うことなく、衝撃波とバブル衝撃波との重畳が効果的に生じる。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態に係る放電破砕装置5の構成及びその装置5を使用する放電破砕方法について、
図6を用いて説明する。
【0038】
図6は、第5実施形態に係る放電破砕装置の構成を示す図である。第5実施形態の放電破砕装置5は、処理物60を液体中に保持し、アース電極101を処理物60に接触するように設けられており、処理物60の別々の面に間隔をあけて対向する一対の正電極100a及び正電極100bが設けられている。また、放電破砕装置5は、正電極100a及び100bを交互にパルス放電させる放電回路53を有する。処理物60の上面及び下面には、被破砕物70a,70bがそれぞれ搭載されている。
【0039】
放電後に気泡が発生するため、正電極100a及び100bを交互に放電させることにより、処理物60の反対側で、直前の放電によって生成されたバブルを利用して破砕力を強めることができる。
【0040】
また、放電した瞬間に発生する衝撃波によって気泡が崩壊するため、放電しようとしている電極に対して処理物60の反対側で発生させた直前の放電によって、放電する電極側のバブルが崩壊・消滅するため、放電経路に気泡が無い状態を維持でき、電流の減衰を抑制できる。
【0041】
このことにより、放電による気泡の発生により処理物60の被破砕物の存在する一方の面側に気泡が存在し、もう一方の面側(放電側)にはほとんど気泡が無い状態にすることができて、放電経路に気泡が無い状態を維持できる。
【0042】
また、放電波形は、放電電流ピーク値が10kA以上とすることで、例えば電子基板から電子部品の剥離などができるようになるため、好ましい。
【0043】
また、処理物60に対して、正極100a,100bが上下で挟むように位置する場合、上側に位置する正電極100aの放電から下側に位置する正電極100bの放電までの時間は、処理物60の上面に存在する気泡が、破壊に寄与する範囲を超えて上昇してしまう前までの時間とすることが好ましい。その時間は、放電によって大きくとも3mm以下の気泡が多く発生し、その浮力に加えて放電によって起きる水流などから、その上昇速度は速くて100mm/秒程度になり、なおかつ破壊エネルギーを強めるのは泡径の2倍程度の範囲だと想定されるため、計算により下側の正電極100bの放電は上側の正電極100aの放電の後の0.05秒後以下が好ましい。この場合、下側の正電極100bが放電した後、上側の正電極100aの放電までの時間は、発生した気泡が処理物60の表面に滞留するため、前記泡の上昇速度を考慮する必要がないため、特に重要ではない。
【0044】
よって、第5実施形態によれば、例えば、まず、放電回路53により、一方の正電極、例えば、上側の正電極100aでパルス放電させる。その後、パルス放電後に、処理物60の上側の正電極側すなわち上面側に気泡が発生する。
【0045】
その後、他方の正電極、例えば、下側の正電極100bでパルス放電させる。このとき、上側の正電極100aでのパルス放電後に処理物60の上面側に発生した気泡を利用して、気泡の崩壊消滅による衝撃波により、処理物60の上面側の被破砕物70aを破砕する。
【0046】
その後、下側の正電極100bでのパルス放電後に、処理物60の下側の正電極側すなわち下面側に気泡が発生する。
【0047】
その後、上側の正電極100aでパルス放電させる。このとき、下側の正電極100bでのパルス放電後に処理物60の下面側に発生した気泡を利用して、気泡の崩壊消滅による衝撃波により、処理物60の下面側の被破砕物70bを破砕する。
【0048】
このように、一対の正電極100a及び100bを交互にパルス放電させて気泡をそれぞれ発生させ、発生した気泡を利用して、気泡発生側とは反対側でパルス放電を発生させ、気泡の崩壊消滅による衝撃波により、処理物60の被破砕物70a及び70bを破砕することができる。
【0049】
よって、この第5実施形態では、気泡発生装置兼パルス放電装置を、一対の正電極100a,100bとアース電極101と放電回路53とで構成していることになる。
【0050】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。