特許第6340070号(P6340070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6340070
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20180528BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20180528BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20180528BHJP
   H01M 4/96 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   H01M8/18
   H01M4/90 M
   H01M4/92
   H01M4/96 B
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-512638(P2016-512638)
(86)(22)【出願日】2015年3月11日
(86)【国際出願番号】JP2015057106
(87)【国際公開番号】WO2015156076
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-81990(P2014-81990)
(32)【優先日】2014年4月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】獅々倉 利一
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩
【審査官】 菊地 リチャード平八郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−4351(JP,A)
【文献】 特開2000−357520(JP,A)
【文献】 特開昭60−160567(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0230793(US,A1)
【文献】 米国特許第4382116(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 4/86−4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極および隔膜を有し、バナジウムイオンを含む硫酸水溶液からなる正極電解液を正極室に供給し、バナジウムイオンを含む硫酸水溶液からなる負極電解液を負極室に供給して充放電を行うレドックスフロー電池であって、正極材料として、ジルコニウムに貴金属をコーティングしたものが用いられていることを特徴とするレドックスフロー電池。
【請求項2】
負極材料として、ジルコニウムに貴金属もしくは炭素材をコーティングしたもの、またはカーボンフェルトが用いられていることを特徴とする請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記正極が、前記正極材料を箱型または袋型に加工して形成されたものであり、その内側に前記正極室を有し、かつ、前記隔膜に近接または接触している部分である正極側の隔膜電極板を有することを特徴とする請求項1または2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記正極側の隔膜電極板が、多孔状またはメッシュ状であることを特徴とする請求項3に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
正極室の下部に、正極電解液が供給される正極液流入樋が配置され、
正極室の上部に、正極電解液が正極室から流出される正極液流出樋が配置され、
負極室の下部に、負極電解液が供給される負極液流入樋が配置され、
負極室の上部に、正極電解液が負極室から流出される負極液流出樋が配置され、
正極液流入樋から正極室に正極電解液が流入可能なように、正極液流入樋と正極室とが接続され、
正極室から正極液流出樋に正極電解液が流出可能なように、正極液流出樋と正極室とが接続され、
負極液流入樋から負極室に負極電解液が流入可能なように、負極液流入樋と負極室とが接続され、
負極室から負極液流出樋に負極電解液が流出可能なように、負極液流出樋と負極室とが接続されている構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
複数のセルが積層された積層電池であり、該積層電池は、正極、負極、隔膜および双極板を有し、該双極板は凹凸を有し、凹部の少なくとも一部が一方の隔膜電極板に接触し、凸部の少なくとも一部が他方の隔膜電極板に接触していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記双極板の材質がジルコニウムであることを特徴とする請求項6に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
前記双極板が、波型板または面に描かれた格子の頂点が凸部で格子の中心点が凹部の板であることを特徴とする請求項6または7に記載のレドックスフロー電池。
【請求項9】
前記正極材料としてジルコニウムにコーティングされる貴金属が、IrO2、PtIrまたはRuO2であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー電池に関し、より詳しくは、レドックスフロー電池の内部抵抗を低減して出力を大きくしたバナジウム系レドックスフロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
レドックスフロー電池は、電力の負荷平準化や瞬間停止対策などとして利用され、新規の電力貯蔵用電池として注目されており、例えば、バナジウムを活物質にしたレドックス電池が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、正極材料として、チタンシート、チタンメッシュに貴金属をメッキした寸法安定電極、黒鉛の棒、黒鉛の板、またはカーボン繊維物質が用いられており、チタンシートは陽極不動態化で通電ができなくなり、黒鉛やカーボンは酸化耐性があまり良くなく、カーボンクロスを黒鉛の板に締結したものは耐食性があったが、下地の黒鉛が分解したが、チタン表面に酸化イリジウムを被覆した電極は優れていたことが示されている。一方、負極に用いた黒鉛は耐食性があったと示されている。しかし、この実験は充電電圧を2.2〜2.9Vの範囲で行ったことから、酷い酸化状態にさらされた結果、黒鉛などのカーボン材の劣化が激しかったものと推定される。また、この電池を何回も繰り返し充放電したことが示されていないため、チタン表面に貴金属をメッキした寸法安定電極が充分な電池のサイクル性に耐えることは証明されていない。
【0003】
最近では、正極および負極の電極材料としてカーボンフェルト材が用いられ、耐久性を良くするために充電電圧などに制限を設けて運転していることが多い(例えば特許文献2参照)。
【0004】
一般的に、バナジウム系レドックスフロー電池では、イオン交換膜からなる隔膜を挟んで、カーボン材で作られたフェルト系の正極および負極が電極として用いられ、それぞれの電極と電解液とを包含する形で、それぞれ正極室および負極室が構成され、単セルタイプの電池が形成されている。単セルタイプが複数組み合わされた積層セルタイプの場合、各セル間には正極と負極の集電を兼ねた双極板が用いられる。さらに、前記レドックスフロー電池では、正極電解液を貯留する正極タンクと負極電解液を貯留する負極タンクとが備えられており、正極液を正極用ポンプにより正極室に供給して正極フェルト電極面で正極反応を起こし、また負極液を負極用ポンプにより負極室に供給して負極フェルト電極面で負極反応を起こして放電が行われ、外部に電気が取り出される。一方、充電は、正極液および負極液をそれぞれ正極室および負極室に流しながら、外部から両極に電流を流して行われる。正極および負極での反応式は次の通りになる。
【0005】
正極:V4+ → V5+ + e-(充電) V4+ ← V5+ + e-(放電)
負極:V3+ + e- → V2+(充電) V3+ + e- ← V2+(放電)
実際には、V4+はVO2+で存在し、V5+ はVO2+で存在していると推定され、それぞれ水和した状態や硫酸根が配位した状態で存在していると推定される。
【0006】
このようなバナジウム系レドックス電池は、他の電池に比べて、
1.室温で作動する
2.大変安定でサイクル寿命が長い
3.危険物を使用しないので爆発引火性がない
4.活物質が液体でタンク貯蔵を行うことで蓄電量を大型化しやすい
5.電解液組成を監視することで充放電状態の制御可能
6.イオンが混合しても容易に再生可能である
等の有利な特徴を有している。
【0007】
しかしながら、バナジウム系レドックスフロー電池のエネルギー密度は、バナジウム系活物質の飽和溶解濃度がさほど高くないこと、および水溶液電解液のために単セルの電池電圧が大きくないことから、他の二次電池と比べて小さい。一方、瞬間的な出力はかなり大きいものの、連続的に高電流で充放電するには電池の内部抵抗、特に電極内の液の流れ抵抗が大きいために、実用電流密度は数10mA/cm2程度、せいぜい200mA/cm2が限界となってしまう。この原因の一つは電極に用いるカーボンフェルト中の電解液の流れに抵抗が掛かるためであり、逆に抵抗を抑えるためにフェルト密度を下げると電子伝導が悪くなってしまい、トレードオフの関係にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−186473号公報
【特許文献2】特開2002−367657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主目的は、連続的に高電流の充放電ができる耐久性の高い高出力のレドックスフロー電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来のレドックスフロー電池において十分な出力が得られない原因の一つとして、電極のカーボン製フェルト材にあると判断した。また、特許文献1には、正極材としてチタンにIrO2を塗布したものが優れた電極であると記載されているが、実際には、高濃度硫酸浴中で長時間、充放電を繰り返すと基材のチタンの腐食が起こり、電極が崩壊して耐久性が大きくないことが分かった。これは、IrO2が塗布されていない部分やピンホールなどで基材のチタンがむき出しになり、その部分の本来の酸化膜による不動態化が硫酸中では十分に維持できないからと推定される。
【0011】
そこで、本発明者らは、特に正極として、寸法安定なジルコニウムに貴金属をコーティングしたものを用いることにより、高濃度硫酸浴中でも十分な耐久性を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、例えば、以下の事項を含む。
【0012】
[1] 正極、負極および隔膜を有し、バナジウムイオンを含む硫酸水溶液からなる正極電解液を正極室に供給し、バナジウムイオンを含む硫酸水溶液からなる負極電解液を負極室に供給して充放電を行うレドックスフロー電池であって、正極材料として、ジルコニウムに貴金属をコーティングしたものが用いられていることを特徴とするレドックスフロー電池。
【0013】
[2] 負極材料として、ジルコニウムに貴金属もしくは炭素材をコーティングしたもの、またはカーボンフェルトが用いられていることを特徴とする項[1]に記載のレドックスフロー電池。
【0014】
[3] 前記正極が、前記正極材料を箱型または袋型に加工して形成されたものであり、その内側に前記正極室を有し、かつ、前記隔膜に近接または接触している部分である正極側の隔膜電極板を有することを特徴とする項[1]または[2]に記載のレドックスフロー電池。
【0015】
[4] 前記正極側の隔膜電極板が、多孔状またはメッシュ状であることを特徴とする項[3]に記載のレドックスフロー電池。
【0016】
[5] 正極室の下部に、正極電解液が供給される正極液流入樋が配置され、
正極室の上部に、正極電解液が正極室から流出される正極液流出樋が配置され、
負極室の下部に、負極電解液が供給される負極液流入樋が配置され、
負極室の上部に、正極電解液が負極室から流出される負極液流出樋が配置され、
正極液流入樋から正極室に正極電解液が流入可能なように、正極液流入樋と正極室とが接続され、
正極室から正極液流出樋に正極電解液が流出可能なように、正極液流出樋と正極室とが接続され、
負極液流入樋から負極室に負極電解液が流入可能なように、負極液流入樋と負極室とが接続され、
負極室から負極液流出樋に負極電解液が流出可能なように、負極液流出樋と負極室とが接続されている構造を有することを特徴とする項[1]〜[4]のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【0017】
[6] 複数のセルが積層された積層電池であり、該積層電池は、正極、負極、隔膜および双極板を有し、該双極板は凹凸を有し、凹部の少なくとも一部が一方の隔膜電極板に接触し、凸部の少なくとも一部が他方の隔膜電極板に接触していることを特徴とする項[1]〜[5]のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【0018】
[7] 前記双極板の材質がジルコニウムであることを特徴とする項[6]に記載のレドックスフロー電池。
【0019】
[8] 前記双極板が、波型板または面に描かれた格子の頂点が凸部で格子の中心点が凹部の板であることを特徴とする項[6]または[7]に記載のレドックスフロー電池。
【0020】
[9] 前記正極材料としてジルコニウムにコーティングされる貴金属が、IrO2、PtIrまたはRuO2であることを特徴とする項[1]〜[8]のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【発明の効果】
【0021】
本発明のレドックスフロー電池は、非常に高電流でも連続的に充放電が可能であるため充放電効率が高く、エネルギー密度も高いという非常に優れた効果を奏する。したがって、本発明によれば、電力貯蔵用などの用途に好適な電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のレドックスフロー電池の一態様(単セル)の断面図を示す模式図である。
図2図1の単セルの部分斜視図を示す模式図である。
図3】本発明のレドックスフロー電池の一態様(積層セル)を横から見た断面図の一部を示す模式図である。
図4図3の積層セルの部分斜視図を示す模式図である。
図5】本発明のレドックスフロー電池の一態様で用いられる格子状仕切り板の一例を示す模式図であり、各格子の頂点が凸部であり、格子の中心点(「○」で表示)が凹部である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るレドックスフロー電池(以下「本発明の電池」ともいう。)について詳細に説明する。
【0024】
本発明は、正極、負極および隔膜を有し、バナジウムイオンを含む硫酸水溶液からなる正極電解液を正極室に供給し、バナジウムイオンを含む硫酸水溶液からなる負極電解液を負極室に供給して充放電を行うレドックスフロー電池に関し、正極材料として、ジルコニウムに貴金属をコーティングしたものが用いられていることを特徴とする。このように、正極材料として、ジルコニウムに貴金属をコーティングしたものを用いることにより、高濃度硫酸浴中でも十分な耐久性を維持できる。
【0025】
本発明における「ジルコニウム」としては、特に規定がない場合、実質的にジルコニウムのみからなるジルコニウム金属、及びジルコニウム以外の金属を50原子%未満の範囲で含有するジルコニウム合金が挙げられる。前記のジルコニウム以外の金属の種類としては、チタン、タンタル、銅、スズ、鉄、ニッケル、クロム、ハフニウム、コバルト、ニオブ、アルミニウム、ガリウムおよびモリブデンなどが挙げられ、前記ジルコニウム合金は、これらのジルコニウム以外の金属から選ばれる少なくとも1種を含むものである。
【0026】
前記ジルコニウム合金の成分および組成は、特に制限されないが、正極反応および負極反応以外の溶解反応などの副反応を起こさないものが好ましく、このようなジルコニウム合金としては、例えば、
1.94原子%のスズを含むジルカロイ−1、および1.12原子%のスズと0.34原子%の鉄と0.175原子%のクロムと0.005原子%のハフニウムを含むジルカロイ−4などのジルカロイ合金;
Zr1-a-b-ca [(Fe,Co,Ni)Cu]bc[ただし、Aは、AlおよびGaから選択される1種または2種の元素であり、Xは、Nb、TaまたはTiであり、(Ni,Co,Fe)対Cuの比率は1:8〜2:1であり、a〜cは、原子比率であり、0.2<a+b+c<0.6、a=0.05〜0.2、b=0.15〜0.45、XがNbの場合、0<c≦0.25、XがTaの場合、0<c≦0.15、XがTiの場合、0<c≦0.1を満足する]で表される組成をもつジルコニウム系非晶質合金;
チタンおよびタンタルから選ばれる少なくとも1種を50原子%未満の量で含むジルコニウム合金などが挙げられる。
【0027】
正極材料の基材となるジルコニウム(以下「ジルコニウム基材」ともいう。)の形状は、特に限定されないが、エキスパンドメタルを面方向に圧縮して平らにし、貴金属を空気中で焼き付けメッキしたものが、隔膜を擦れ等により破損させることがないので好ましい。例えば、ジルコニウム板の空孔率を大きくしたパンチングメタルでも良いし、ジルコニウム繊維を網目状に編んだものでもよい。
【0028】
コーティング(メッキ)する貴金属は、特に制限されないが、正極反応を速やかに行えるものが好ましく、例えば、IrO2、RuO2、(Ru−Ti)O2 、PdO、Pt−Ir、(Ru−Sn)O2などが用いられる。この中では、IrO2、PtIrおよびRuO2が、高反応性および高耐久性を有することから好ましい。また、電極の触媒効果を大きくするために、S、Co、Mnなどの他の元素を添加することも一向に差し支えない。
【0029】
本発明の電池における負極材料として、正極材料と同様に、ジルコニウム基材に貴金属をコーティングしたものを用いることができるが、水素過電圧を小さくしないで電極反応を速やかに行うためにはカーボンフェルトを用いてもよい。また、耐久性を考慮すると、ジルコニウム基材に炭素材をコーティングしたものも好ましい。カーボンフェルトは、前述したように、液抵抗の妨げになることもありうるので、メッシュ状ジルコニウム基材に貴金属をコーティング(めっき)したものか、ジルコニウム基材に炭素材をコーティングしたものがより好ましい。
【0030】
本発明の電池で用いられる電解液としては、正極電解液および負極電解液のいずれもバナジウムイオンを含む硫酸水溶液である。さらに詳しくは、硫酸バナジウムや硫酸バナジル等のバナジウム塩の硫酸水溶液であり、この水溶液中のバナジウムイオン濃度は、好ましくは0.8mol/L〜5.0mol/L、より好ましくは1.5mol/L〜3.5mol/Lである。バナジウムイオン濃度が低すぎると電池のエネルギー密度が小さくなり、バナジウムイオン濃度が高すぎると電解液の粘度が高くなるため電池セルの抵抗が高くなり、その結果、電力効率が低くなる。バナジウム塩を溶解するのは硫酸水溶液であり、その硫酸の濃度は、特に制限されないが、好ましくは1.0mol/L〜8.0mol/L、より好ましくは1.5mol/L〜5.0mol/Lである。
【0031】
また、本発明の電池において、正極電解液は、充電状態で4価/5価のバナジウムイオンの混合状態または5価のバナジウムイオン単独の状態を取ることができ、充電完了状態における正極電解液中の5価のバナジウムイオンの濃度は、好ましくは1.0mol/L〜4.0mol/L、より好ましくは1.5mol/L〜3.5mol/Lである。充電完了状態における正極電解液中の5価のバナジウムイオンの濃度は、全バナジウムイオンの濃度に対して、好ましくは60%以上99%以下、より好ましくは75%以上97%以下である。
【0032】
また、本発明の電池において、正極電解液は、放電状態で4価/5価のバナジウムイオンの混合状態、4価のバナジウムイオン単独の状態または4価/3価のバナジウムイオンの混合状態を取ることができ、放電終止状態における正極電解液中の4価のバナジウムイオン濃度は、好ましくは0.8mol/L〜4.5mol/L、より好ましくは1.5mol/L〜3.5mol/Lである。放電終止状態における正極電解液中の4価のバナジウムイオンの濃度は、全バナジウムイオンの濃度に対して、好ましくは65%以上99%以下、より好ましくは75%以上96%以下である。また、放電終止状態における正極電解液中の3価のバナジウムイオン濃度は、全バナジウムイオンの濃度に対して、好ましくは20%以下、より好ましくは5%以下である。
【0033】
本発明の電池において、負極電解液は、充電状態で3価/2価のバナジウムイオンの混合状態または2価のバナジウムイオン単独の状態を取ることができ、充電完了状態における負極電解液中の2価のバナジウムイオン濃度は、好ましくは1.0mol/L〜4.0mol/L、より好ましくは1.5mol/L〜3.5mol/Lである。充電完了状態における負極電解液中の2価のバナジウムイオンの濃度は、全バナジウムイオンの濃度に対して、好ましくは70%以上97%以下、より好ましくは75%以上96%以下である。
【0034】
また、本発明の電池において、負極電解液は、放電状態で3価/2価のバナジウムイオンの混合状態、2価のバナジウムイオン単独の状態、または4価/3価のバナジウムイオンの混合状態を取ることができ、放電終止状態における負極電解液中の3価のバナジウムイオンの濃度は、好ましくは1.0mol/L〜4.0mol/L、より好ましくは1.5mol/L〜3.5mol/Lである。放電終止状態における負極電解液中の3価のバナジウムイオンの濃度は、全バナジウムイオンの濃度に対して、好ましくは65%以上98%以下、より好ましくは75%以上96%以下である。また、放電終止状態における負極電解液中の4価のバナジウムイオンの濃度は、全バナジウムイオンの濃度に対して、好ましくは20%以下、より好ましくは5%以下である。
【0035】
本発明の電池で用いられる隔膜としては、有機高分子からなるイオン交換膜が好ましく、カチオン交換膜およびアニオン交換膜のいずれも用いることができる。
【0036】
前記カチオン交換膜としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体をスルホン化して得られるカチオン交換膜、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ・スルホニル・エトキシビニルエーテルとの共重合体にスルホン酸基を導入したカチオン交換膜、テトラフルオロエチレンとカルボキシル基を側鎖に持つパーフルオロビニルエーテルとの共重合体からなるカチオン交換膜、芳香族ポリスルホン共重合体にスルホン酸基を導入したカチオン交換膜などが挙げられる。
【0037】
前記アニオン交換膜としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチル基を導入してアミノ化したアニオン交換膜、ビニルピリジン−ジビニルベンゼン共重合体を4級ピリジジウム化したアニオン交換膜、芳香族ポリスルホン共重合体にクロロメチル基を導入してアミノ化したアニオン交換膜などが挙げられる。
【0038】
次に、本発明の電池構造の例を説明した後、さらに図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれらの構造に限定されるものではなく、基本概念が合致していればよい。
【0039】
本発明の一態様である単セルの場合、例えば、前記正極材料は箱型または袋型に加工され、その内側に正極室が構成される。この正極材料が隔膜に近接または接触している部分を正極側の隔膜電極板と称し、該隔膜電極板は電解液やイオンが通過できるように多孔状またはメッシュ状となっている。また、前記正極材料の下側と上側には穴もしくはスリットが設けられ、この穴を通って電解液の正極室への流入および正極室からの流出が行われる。このような構成により、従来のフェルト系電極の場合に問題となっていた流体(電解液)の流動抵抗を低減することができるので、電解液を正極室内に大量に流すことができる。なお、負極についても前記正極と同様に負極材料を箱型または袋型に加工して形成することができ、その内側に負極室が構成され、負極材料が隔膜に近接または接触している部分を負極側の隔膜電極板と称し、該隔膜電極板は電解液やイオンが通過できるように多孔状またはメッシュ状となっている。また、前記負極材料の下側と上側には穴もしくはスリットが設けられ、この穴を通って電解液の負極室への流入および負極室からの流出が行われる。
【0040】
一方、本発明の一態様である積層セルの場合、正極および負極は、前記単セルの場合と同様に正極材料および負極材料を箱型または袋型に加工したものであるか、あるいは前記隔膜電極板のみの板状のものでもよいが、いずれの場合でも、電解液が通過できない導電性の双極板をセルの境界に設置する必要がある。
【0041】
また、単セルおよび複層セルのいずれの場合においても、正極室や負極室を構成する材料の一部を、導電性を有しない合成樹脂等で構成させてもよいが、隔膜電極板と双極板の間は電気的に導通することが必要である。
【0042】
図1は、本発明の電池の一態様(単セル)の側面から見た断面図を模式的に示したものであり、図2は、図1の単セルの部分斜視図を模式的に示したものである。図1および図2の電池は、ジルコニウム基材の表面に貴金属をコーティングした正極側の隔膜電極板1、正極集電板2および正極室3を含む正極と、負極側の隔膜電極板9、負極集電板10および負極室11を含む負極と、正極および負極に挟まれた隔膜6とを有し、正極側の隔膜電極板1と正極集電板2、および、負極側の隔膜電極板9と負極集電板10は、電気的に接合されており、正極側の隔膜電極板1および負極側の隔膜電極板9は、多孔状またはメッシュ状になっており、
正極室3の下部に、正極電解液が供給される正極液流入樋4が配置され、
正極室3の上部に、正極電解液が正極室3から流出される正極液流出樋5が配置され、
負極室11の下部に、負極電解液が供給される負極液流入樋12が配置され、
負極室11の上部に、正極電解液が負極室11から流出される負極液流出樋13が配置され、
正極液流入樋4から正極室3に正極電解液が流入可能なように、正極液流入樋4と正極室3とが接続され、
正極室3から正極液流出樋5に正極電解液が流出可能なように、正極液流出樋5と正極室3とが接続され、
負極液流入樋12から負極室11に負極電解液が流入可能なように、負極液流入樋12と負極室11とが接続され、
負極室11から負極液流出樋13に負極電解液が流出可能なように、負極液流出樋13と負極室11とが接続されている構造を有する。
【0043】
図1および図2の電池において、正極は箱型形状であり、箱の下部にある正極液流入樋4および箱の上部にある正極液流出樋5は、通常、正極の厚みと同じ幅であり、それぞれ正極液入口ノズル7および正極液出口ノズル8を備えている。
【0044】
一方、負極も、正極と同様の形状および構造を有しており、負極液流入樋12および負極液流出樋13には、それぞれ負極液入口ノズル14および負極液出口ノズル15が設けられている。
【0045】
正極室3及び負極室11の厚みを維持するために、正極室3および負極室11のそれぞれにジルコニウム製のスペーサーを設けることが好ましい。また、集電板を押さえるそれぞれのフランジ間に、耐食性の良いエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)などで間隔を調整できるガスケット16を設置することが好ましい。ただし、負極として、カーボンフェルトのような多孔性炭素電極を用いた場合、ガスケットで負極室、すなわちフェルト厚みが調整されるので、負極下部および上部の負極液流入樋および流出樋はあえて設けずに空間にしておいてもよい。フランジに開けたノズル口からその下部空間を通して負極液がフェルト電極内へ流入し、またフェルト上部空間を通して流出が行われる。セルは、絶縁性の固定板17、例えば塩化ビニル板等で両側からボルトなどで押さえつけて固定される。
【0046】
次に、本発明の電池の一態様である、複数のセルを直列に積層した積層電池の構造を、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0047】
図3は積層セルの側面から見た断面図を模式的に示したものであり、ここでは隔膜6の左側に正極側の隔膜電極板1があり、隔膜6の右側に負極側の隔膜電極板9がある。
【0048】
図4は、図3の積層セルの部分斜視図を模式的に示したものであり、波型の双極板18が正極側の隔膜電極板1と負極側の隔膜電極板9に接触して設置され、三角柱が電極の高さ方向に並ぶように正極室3と負極室11が交互に配置されている。
【0049】
上記のように、積層セルでは、集電を維持し、かつ効率的に両極の液を区切るという観点から、正極と負極が凹凸のある双極板18で区切られ、凹部の少なくとも一部が一方の隔膜電極板に接触し、凸部の少なくとも一部が他方の隔膜電極板に接触していることが好ましい。例えば多角錐が連続的に波状に並んでいる場合、それぞれの頂点が正極側の隔膜電極板1または負極側の隔膜電極板9に接続することで集電と仕切りを兼ね備えることができ、かつ電極液を抵抗なく流せることになる。
【0050】
前記双極板18の形状は、上記効果を奏する限り特に限定されないが、波型板または面に描かれた格子の頂点が凸部で格子の中心点が凹部の板(図5参照)であることが好ましい。また、前記双極板18の材質はジルコニウムであることが好ましい。
【0051】
各単セルにおける、波型の双極板18で区切られた正極室3同士および波型の双極板18で区切られた負極室11同士は内部で連通していても、連通していなくてもよいが、セル全体を効率的に反応させるためには、連通して液が流通できるようになっていることが望ましい。その場合、三角柱はところどころでずれる構造になる。この波型の双極板18が電極室内の厚みを固定できるので、この場合は正極室3および負極室4の内部にスペーサーは必要ない。
【0052】
積層電池における電解液の流通経路および該流通経路を構成する構造については、上述した単セル構造の電池と同様である。
【0053】
ここで充電時の電気の流れについて説明する。正極側の隔膜電極板1で4価のバナジウムイオンが酸化されて5価のバナジウムイオンになり、放出された電子が双極板18を通して負極側の隔膜電極板9に流れる。負極側の隔膜電極板9では隔膜に接触した場において電子を受け取り、3価のバナジウムイオンが還元されて2価のバナジウムイオンになる。電解液中の電気的中性を保つために、H+(水素イオン)が隔膜中を正極室3側から負極室11側に流れる。
【0054】
上記のように、必要数の単セルを積層して、一つのモジュールを構成する。このモジュールの両端は絶縁性の材料でカバーして全体を押し付けて固定することが望ましい。このモジュールの両端電圧は単セルに積層数を掛けたものにほぼ等しくなる。実際に応用する場合、このモジュールのまま使用してもよいし、またモジュールを直列または並列に組み合わせて繋いで大きな容量の電池として使用することもできる。
【0055】
従来の充放電の電流密度は200mA/cm2程度で限界であったが、本発明の電池は、従来の電池の電極に用いられていたカーボンフェルトを少なくとも正極に用いないため、正極室内の液抵抗が非常に少ないことから、連続的かつ安定に500mA/cm2以上流すことができる。そのため出力の大きい電池を提供でき、負荷平準化、非常用電源、瞬停対応、ピークカット対応などに非常に有望な蓄電池となり、また自然エネルギーを活用した太陽電池や風力発電機の余剰電力を効率的に蓄電できる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
図1のような単セルを構成した。このセルの正極室3の入口ノズル7をテフロン(商標)チューブで正極用送液ポンプに繋ぎ、該送液ポンプの吸入側を正極液タンクに繋いだ。また、セルの正極室3の出口ノズル8から正極電解液が正極液タンクに戻るように、出口ノズル8と正極液タンクとをテフロン(商標)配管で繋いだ。同様に負極室11の入口ノズル14を負極用送液ポンプに繋ぎ、該送液ポンプの吸入側を負極液タンクに繋いだ。また、負極室11の出口ノズル15から負極電解液が負極液タンクに戻るように、出口ノズル15と負極液タンクとをテフロン(商標)配管で繋いだ。隔膜6としてNafion(商標)212膜を用い、隔膜6の片側にはジルコニウムのエキスパンドメタル(線径0.5mm)を加圧して表面を滑らかにした空孔率の大きい板状のジルコニウム基材にIrO2を焼き付け塗布した正極側の隔膜電極板1を設け、隔膜の他方側には同じく空孔率の大きい滑らかな板状のジルコニウム基材に白金を焼き付けメッキ処理した負極側の隔膜電極板9を設けた。正極室および負極室である電極室の形状は、横幅3cm長さ15cmの縦長にして下方から液が入り上方から液が出る構造になっている。正極室および負極室それぞれの厚さは電極室を構成する板の厚さを除いて3mmとした。また、電極室は、図2に示すように、上記隔膜電極板、ジルコニウム製のスペーサ−、および集電板としてのジルコニウム製の板によって箱状に構成した。なお、実施例1で使用した上記ジルコニウムは、ジルコニウムを99質量%以上含む、実質的にジルコニウムのみからなるジルコニウム金属である。
【0058】
正極電解液として、4価のバナジウムイオン濃度が2.0mol/Lである3.0mol/L−H2SO4水溶液を用いた。負極電解液として、3価のバナジウムイオン濃度が1.8mol/Lである3.0mol/L−H2SO4水溶液を用いた。電解液量はそれぞれ120mLとした。
【0059】
まず、この電池の正極室3および負極室11に、それぞれ正極電解液および負極電解液を18mL/分の量で供給して循環させながら、電流密度100mA/cm2で充電を行った。電圧が1.6Vになったところで充電をやめ、続いて100mA/cm2で放電を行い、電圧が1.0Vになったところで放電終了とした。以下、充電と放電を10サイクル繰り返して、各サイクルでの電池効率を求めた。電池効率は下記式で算出した(以下同様)。
【0060】
電池効率(%)={放電電圧(V)×放電電流(A)×放電時間(h)}/{充電電圧(V)×充電電流(A)×充電時間(h)}×100
10サイクル目の電池効率および液エネルギー密度は、それぞれ91%および28kWh/m3であった。続いて11サイクル目から電流密度を600mA/cm2に上げて循環電解液量も35mL/分に上げて実験を行った。その結果、20サイクル目の電池効率および液エネルギー密度は、それぞれ88%および22kWh/m3であった。
【0061】
[実施例2]
図3のような積層セルを構成した。隔膜6としてNafion(商標)212膜を用いて、各隔膜6の右側にジルコニウムのエキスパンドメタル(線径0.5mm)を加圧して表面を滑らかにした空孔率の大きい板状ジルコニウム基材にIrO2を焼き付け塗布した正極側の隔膜電極板1を設け、左側に同じく空孔率の大きい滑らかな板状のジルコニウム基材に白金を焼き付けメッキ処理した負極側の隔膜電極板9を設けた。正極側の隔膜電極板1および負極側の隔膜電極板9の面積は横210mm×縦297mmとした。正極側の隔膜電極板1と負極側の隔膜電極板9の間に、ジルコニウムからなる波型の双極板18(厚み0.5mm)が正極側の隔膜電極板1と負極側の隔膜電極板9に接触して配置され、三角柱が電極の高さ方向に並ぶように正極室3と負極室11を交互に配置した。この波型の双極板により電極室内の厚み(3mm)を固定した。集電板としては、隔膜電極板とほぼ同様の面積を有するジルコニウム製の板を、図3に示す位置に配置した。電解液の流通経路および該流通経路を構成する構造については、実施例1で用いた単セル構造の電池と同様にした。単セルの積層数は20枚としてモジュールを構成した。このモジュールの両端は絶縁性の塩化ビニルでカバーして全体を押し付けて通しボルトで固定した。なお、実施例2で使用した上記ジルコニウムは、ジルコニウムを99質量%以上含む、実質的にジルコニウムのみからなるジルコニウム金属である。
【0062】
正極電解液として4価のバナジウムイオン濃度が2.0mol/Lである3.0mol/L−H2SO4水溶液を用い、負極電解液として3価のバナジウムイオン濃度が1.8mol/Lである3.0mol/L−H2SO4水溶液を用いた。電解液量はそれぞれ25Lとした。
【0063】
まず、この電池の正極室3および負極室11に、それぞれ正極電解液および負極電解液を5.0L/分の量で供給して循環させながら、電流密度100mA/cm2で充電を行った。電圧が1.6Vになったところで充電をやめ、続いて100mA/cm2で放電を行い、電圧が1.0Vになったところで放電終了とした。以下、充電と放電を10サイクル繰り返して、各サイクルでの電池効率を求めた。
【0064】
10サイクル目の電池効率および液エネルギー密度は、それぞれ89%および27kWh/m3であった。続いて11サイクル目から電流密度を600mA/cm2に上げて循環電解液量も10L/分に上げて実験を行った。その結果、20サイクル目の電池効率および液エネルギー密度は、それぞれ88%および21kWh/m3であった。
【0065】
[実施例3]
実施例1で使用したジルコニウムの代わりにジルカロイ−4合金を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実験を行った。その結果、10サイクル目の電池効率および液エネルギー密度は、それぞれ91%および28kWh/m3であり、実施例1と同じであった。また、20サイクル目の電池効率および液エネルギー密度も実施例1と同様の結果であった。実験後に、電極表面およびジルカロイ−4合金が電解液に接液した表面を光学顕微鏡で観察したが、腐食は見られなかった。
【0066】
[実施例4]
実施例1で使用した負極側の隔膜電極板の代わりに、空孔率の大きい滑らかな板状のジルコニウム基材に高真空中でイオン化蒸着法により炭素をコーティングした負極側の隔膜電極板を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実験を行った。その結果、10サイクル目の電池効率および液エネルギー密度は、それぞれ95%および29kWh/m3であった。続いて11サイクル目からも実施例1と同じ条件で実験を行った。その結果、20サイクル目の電池効率および液エネルギー密度は、それぞれ91%および23kWh/m3であった。
【0067】
[比較例1]
正極および負極の両方ともカーボンフェルトを用い、正極および負極の集電板としてカーボン製圧延板を用いたこと以外は実施例1と同様にして実験を行った。その結果、10サイクル目の電池効率および液エネルギー密度は、それぞれ81%および18Wh/m3であった。続いて11サイクル目から電流密度を600mA/cm2に上げて循環電解液量も35mL/分に上げて実験を行った。その結果、20サイクル目の電池効率および液エネルギー密度は、それぞれ68%および11kWh/m3であった。
【0068】
[比較例2]
実施例1で用いた電極基材のジルコニウムの代わりに同じ形状のチタニウムを用いたこと以外は実施例1と同様にして実験を行った。その結果、10サイクル目の電池効率および液エネルギー密度は、87%および26Wh/m3であった。続いて11サイクル目から電流密度を600mA/cm2に上げて循環電解液量も35mL/分に上げて実験を行った。その結果、20サイクル目の電池効率および液エネルギー密度は、それぞれ68%および16kWh/m3であった。実験後に電極表面を光学顕微鏡で観察したら、基板が腐食しているのが見えた。
【符号の説明】
【0069】
1 正極側の隔膜電極板
2 正極集電板
3 正極室
4 正極液流入樋
5 正極液流出樋
6 隔膜
7 正極液入口ノズル
8 正極液出口ノズル
9 負極側の隔膜電極板
10 負極集電板
11 負極室
12 負極液流入樋
13 負極液流出樋
14 負極液入口ノズル
15 負極液出口ノズル
16 ガスケット
17 固定板
18 双極板
図1
図2
図3
図4
図5