(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6340080
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】ラックマウント型のモジュール式DC電力ユニットのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20180528BHJP
H02M 7/04 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
H02M3/28 U
H02M7/04 A
【請求項の数】22
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-540372(P2016-540372)
(86)(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公表番号】特表2016-533158(P2016-533158A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】US2014054020
(87)【国際公開番号】WO2015035004
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】201310403989.6
(32)【優先日】2013年9月6日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】62/008,197
(32)【優先日】2014年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506188585
【氏名又は名称】リーバート・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィルコックス,エリック
(72)【発明者】
【氏名】キップリー,ボブ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,マシュー
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0198533(US,A1)
【文献】
特開2012−253933(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102522797(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第103034320(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02M 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置ラックの複数のコンポーネント位置のうちの1つへの搭載を可能にするフォームファクタを有し、装置ラックのコンポーネント位置のうちの他のコンポーネント位置に搭載された1つまたは複数の装置コンポーネントに直流(DC)電力を供給している装置ラックのDCバスにDC電力を提供する、モジュール式電力ユニットであって、
複数のDC電源を挿入できる複数のスロットを画定するシャーシと、
外部の交流(AC)電力源からAC電力を受け取るための複数のACモジュールであって、シャーシ内の、モジュール式電力ユニットのカバー(24)領域の後ろに、かつスロットの後ろに、スロットへのアクセスを妨げることなく配置された複数のACモジュールと、
シャーシのスロットのうちの1つへの挿入および搭載を可能にするフォームファクタをそれぞれが有する複数の独立したモジュール式DC電源と、
複数のDC電源と通信し、シャーシ内に収納されたコントローラと、
シャーシ内の、DC電力を通信可能にするためにスロットの後ろに収納されたDCバスであって、DC電源からのDC出力電力を、装置ラック内に収納された別個のDCバスに供給するためにDC電源と通じるDCバスとを備える、モジュール式電力ユニット。
【請求項2】
DC電源のうちの少なくとも1つが、DC出力電力を提供するためのバッテリバックアップユニット(BBU)モジュールを含む、請求項1に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項3】
DC電源のうちの少なくとも1つが、DC出力電力を供給するための整流器モジュールを含む、請求項1に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項4】
複数のDC電源が、少なくとも1つの整流器モジュールおよび少なくとも1つのバッテリバックアップユニット(BBU)モジュールを含む、請求項1に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項5】
コントローラが、シャーシのスロットのうちの1つに搭載されるのを可能にするフォームファクタを有する、請求項1に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項6】
電源のうちの少なくとも1つが整流器モジュールを含み、
電源のうちの少なくとも1つがバッテリバックアップユニット(BBU)モジュールを含み、
BBUモジュールが、過渡事象ライドスルーインスタンスの間にモジュール式電力ユニットのDCバス上でDC電力を提供して、それにより、整流器モジュールによって提供されているDC電力を補足するように構成された、請求項1に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項7】
BBUモジュールからのDC出力電力が、BBUモジュールが生成できる量よりも少ない量に制限される、請求項6に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項8】
電源のうちの少なくとも1つが整流器モジュールを含み、
電源のうちの少なくとも1つがバッテリバックアップユニット(BBU)モジュールを含み、
BBUモジュールが、モジュール式電力ユニットへのAC電力が失われたときにモジュール式電力ユニットのDCバス上でDC電力を提供するように構成された、請求項1に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項9】
BBUモジュールが、モジュール式電力ユニットへのAC電力が失われたときに、整流器モジュールのDC電力出力に等しいレベルのDC電力を約90秒までの継続時間にわたって提供するように構成された、請求項8に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項10】
電源のうちの少なくとも1つが整流器モジュールを含み、
電源のうちの少なくとも1つがバッテリバックアップユニット(BBU)モジュールを含み、
整流器モジュールおよびBBUモジュールがそれぞれ約3KWの出力を提供する、請求項1に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項11】
装置ラックに搭載されたときに装置ラックの3つのコンポーネント位置を使用するフォームファクタを有する、請求項1に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項12】
電源モジュールのうちの所与の1つに関連する第1のコネクタコンポーネントと、シャーシ内に搭載された第2のコネクタコンポーネントとを有するコネクタアセンブリをさらに備え、第1および第2のコネクタコンポーネントが、電源のうちの所与の1つがシャーシに挿入されているときに接続可能であり、第1および第2のコネクタコンポーネントが、
電源のうちの所与の1つからのDC出力を、シャーシ内に搭載されたDCバスに送るように動作し、
コントローラと通信する制御バスと電源のうちの所与の1つとの間で接続が行われるのを可能にするように動作する、請求項1に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項13】
装置ラックの複数のコンポーネント位置のうちの1つまたは複数への搭載を可能にするフォームファクタを有し、装置ラックのコンポーネント位置のうちの他のコンポーネント位置に搭載された1つまたは複数の装置コンポーネントに直流(DC)電力を供給している装置ラックのDCバスにDC電力を提供する、モジュール式電力ユニットであって、
複数の独立したDC電源を挿入できる複数の並列構成されたスロットを画定するシャーシと、
外部の交流(AC)電力源からAC電力を受け取るための複数のACモジュールであって、シャーシ内の、モジュール式電力ユニットのカバーに隣接して、スロットへのアクセスを妨げることなく配置され、シャーシの幅に沿って互いに離間した複数のACモジュールと、
シャーシのスロットのうちのいずれか1つへの挿入および搭載を可能にする共通フォームファクタを有し、少なくとも1つの整流器モジュールを含む、複数の独立したモジュール式DC電源と、
複数のDC電源と通信し、シャーシの1つのスロットに収納されたコントローラと、
DC電源からのDC出力電力を、装置ラック内に収納された別個のDCバスに供給するための、シャーシ内に収納されDC電源と通じるDCバスとを備える、モジュール式電力ユニット。
【請求項14】
複数のDC電源が、シャーシ内のDCバスにDC電力出力を提供するための少なくとも1つのバッテリバックアップユニット(BBU)モジュールを含む、請求項13に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項15】
整流器モジュールとBBUモジュールが、同じレベルのDC電力出力を提供する、請求項14に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項16】
BBUモジュールが、過渡事象ライドスルーインスタンスが経験されるときにシャーシのDCバスにDC電力を供給して、それにより、整流器モジュールによって提供されているDC電力を補足するように構成された、請求項14に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項17】
BBUモジュールが、外部AC電力源からのAC電力が失われたときに、そのDC電力出力をシャーシ内のDCバスに提供する、請求項14に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項18】
BBUモジュールが、外部AC電力源からのAC電力が失われたときに、そのDC電力を約90秒までにわたって提供するように構成された、請求項17に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項19】
BBUモジュールによって提供されるDC電力が、BBUモジュールが生成できる量よりも少ない量に制限される、請求項16に記載のモジュール式電力ユニット。
【請求項20】
複数のコンポーネント位置を内部に有する装置ラックの直流(DC)バスにDC電力を提供する方法であって、装置ラックが、装置ラックのコンポーネント位置のうちのコンポーネント位置に搭載された1つまたは複数の装置コンポーネントを収容するように、かつ装置ラックのDCバス上で提供されるDC電力を使用して1つまたは複数の装置コンポーネントに電力供給するように、設計され、方法が、
少なくとも1つのコンポーネント位置に挿入されるのを可能にするフォームファクタを有するモジュール式DC電力ユニットを使用して装置ラックのDCバスにDC電力を提供すること、
モジュール式DC電力ユニットのシャーシの複数のスロットに搭載された複数のDC電源を使用して、装置ラックのDCバスに加えられるDC電力を生成すること、
シャーシのスロットのうちの1つに搭載されるように構成されたコントローラを使用して、DC電源と通信しDC電源を制御すること、および、
シャーシ内に、モジュール式電力ユニットのリアカバーに隣接して配置された複数のAC入力モジュールを使用して、シャーシのいずれのスロットへのアクセスを妨げることなく、外部AC電力源をモジュール式DC電力ユニットにインタフェース接続して、AC電力をモジュール式DC電力ユニットに提供することを含む、方法。
【請求項21】
複数のDC電源を使用する動作が、少なくとも1つの整流器モジュールおよび少なくとも1つのバッテリバックアップユニット(BBU)モジュールを使用することを含み、整流器モジュールとBBUモジュールが共通のフォームファクタを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
コントローラを有し、装置ラック内の第1のコンポーネント位置に挿入されるのを可能にする寸法である、モジュール式主要電力ユニットと、
装置ラック内の第2のコンポーネント位置に挿入されるのを可能にする寸法を有するモジュール式補助電力ユニットとを備える、電力ユニットシステムであって、
モジュール式主要電力ユニットおよびモジュール式補助電力ユニットのそれぞれが、
複数のDC電源を挿入できる複数のスロットを画定するシャーシと、
シャーシのスロットのうちの1つへの挿入および搭載を可能にするフォームファクタをそれぞれが有する複数の独立したモジュール式DC電源と、
少なくともモジュール式主電源ユニットに含まれる複数の交流(AC)モジュールであって、外部の交流(AC)電力源からAC電力を受け取るために、モジュール式主電源ユニットのシャーシ内の、モジュール式主電源ユニットのカバーの後ろ、かつモジュール式主電源ユニットのスロットの後ろに、スロットへのアクセスを妨げることなく、配置されている、複数のACモジュールと、
DC電源からのDC出力電力を、装置ラック内に収納された別個のDCバスに供給するための、シャーシ内に収納されDC電源と通じるDCバスとを備える、電力ユニットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年6月5日に出願された米国仮特許出願第62/008,197号の利益を主張する。本出願はまた、2013年9月6日に出願された中国発明特許出願第201310403989.6号の利益および優先権を主張する。上記の各出願の開示全体は、引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、データセンタコンポーネントおよび他の電気コンポーネントに電力供給するための電力システムに関し、より詳細には、装置ラック内の少なくとも1つのDCバスにDC電力を提供して、それにより、装置ラックに搭載された他の装置コンポーネントに電力供給するための、ユーザ構成可能なラックマウント型のモジュール式電力ユニットに関する。
【背景技術】
【0003】
このセクションの記述は、本開示に関係する背景情報を提供するに過ぎず、従来技術を構成するとは限らない。
【0004】
標準的な装置ラックを利用するデータセンタはしばしば、例えばファイルサーバなどの装置を有することになるが、これらのサーバは、各サーバが引き出すことになる電力の量に影響を及ぼす種々の能力により配列および構成される場合がある。したがって、多くの場合、このようなコンポーネントは、必要とされる可能性のある電力よりもずっと多くの電力を供給できる電源を有することになる。例えば、3つのラックマウント型サーバにそれぞれ1000ワット電源が供給されるが、1つのラックは300ワットしか消費しないように装備(例えば、グラフィックカード、メモリカードなど)され、第2のラックは500ワットしか消費しないように構成され、第3のラックは900ワットを消費するように構成されることがある。ラックに搭載されたコンポーネントがこれらだけである場合は、かなりの量の余分な電力容量がラックにおいて提供されたと結論付けることができる。これは、電力「オーバープロビジョニング」とも呼ばれ、データセンタで非常に頻繁に起こる。オーバープロビジョニングは、設備の運営者にとっての追加コストを表す。余分な電力容量の結果としてまた、より程度の高い冷却能力をラックに提供する必要もある(必要とされるその特定の電力量と、おそらくは「ヘッドルーム」としての少量の追加電力とだけがラックのコンポーネントに供給される場合に必要とされるはずの冷却能力と比較して)。さらに、1つのラックマウント型コンポーネントの内部に存在する強力な電源が、隣接して搭載された装置に対してEMIの懸念を生じさせることがある。このような懸念は、電源の全てがラックの1つまたは複数の特定の位置またはエリアに位置することができれば、未然に防ぐことができる。しかし、現在のラックマウント型データセンタ装置はそれぞれがそれ自体の電源を備えるので、これは不可能である。
【0005】
さらに、1つまたは複数の既存のラックマウント型コンポーネントによって引き出されている電力に影響を及ぼす装置構成変更を、これらのコンポーネントに対して行う必要があるとき、これはデータセンタ作業者にとっていくらか不便である可能性がある。例えば、所与のコンポーネント、例えばサーバに対して構成変更が行われて、1つまたは複数のカードがコンポーネントに追加され、それによりコンポーネントの電力要件が変更される、という状況が発生することがある。この場合、電力要件の増大により、必要とされる追加の電力に対応するためにサーバ中の電源を変更する必要が生じることがある(追加の電力引出しを扱うのに十分な容量を電源が有さないと仮定して)。所与のラック中の様々な他のラックマウント型コンピューティングコンポーネント、ストレージコンポーネント、ネットワーキングコンポーネントなどに直接に電力供給する、カスタム構成可能な独立した電源を本質的に提供するラックシステムであれば、各ラックに対する装置構成変更を行うことが大幅に単純化されるであろうが、このようなラックシステムでは、ユーザは、ラックの新しい装置構成によって必要とされるだけの電力量しか配備することができない。
【0006】
最後に、それぞれが自前の電源を有する個別のラックマウント型コンポーネントを収容する装置ラックでは、かなりの程度の無駄にされる電力能力が各ラックに存在することがある。したがって例えば、3つのラックマウント型サーバにそれぞれ1000ワット電源が装備されているが、各サーバは500ワットしか引き出さないように構成された場合は、総計1.5kwが未使用となる(すなわち「ストランデッド(stranded)」電力容量)。これは、必要とされるよりもかなり多くの余分な電力容量であることがある。この状況が、多数のラック、例えば大規模データセンタ内の何十個または何百個ものラック中で発生した場合、総体的なストランデッド電力容量は、データセンタ運営者に対するかなりの追加コストを表し得ることは理解されるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、装置ラックの複数のコンポーネント位置のうちの少なくとも1つへの搭載を可能にするフォームファクタを有する、モジュール式電力ユニットに関する。モジュール式電力ユニットは、装置ラックのDCバスにDC電力を提供する。モジュール式電力ユニットは、複数のDC電源を挿入できる複数のスロットを画定するシャーシを有することができる。外部AC電力源からAC電力を受け取るために、AC入力モジュールが使用されてよい。シャーシのスロットのうちの1つへの挿入および搭載を可能にするフォームファクタをそれぞれが有する、複数の独立したモジュール式DC電源が、シャーシに搭載されてよい。コントローラが、DC電源と通信してよく、シャーシ内に収納されてよい。シャーシ内に収納されたDCバスが、DC電源と通じ、DC電源からのDC出力電力を、装置ラック内に収納された別個のDCバスに供給する。
【0008】
本開示の別の態様は、装置ラックの複数のコンポーネント位置のうちの少なくとも1つへの搭載を可能にするフォームファクタを有する、モジュール式電力ユニットに関する。モジュール式電力ユニットは、装置ラックのコンポーネント位置のうちの他のコンポーネント位置に搭載された1つまたは複数の装置コンポーネントに直流(DC)電力を供給している装置ラックのDCバスに、DC電力を提供する。モジュール式電力ユニットは、複数の独立したDC電源を挿入できる複数の並列構成されたスロットを画定するシャーシを備えることができる。外部AC電力源からAC電力を受け取るために、交流(AC)モジュールがシャーシ内に配置されてよい。シャーシのスロットのうちのいずれか1つへの挿入および搭載を可能にする共通フォームファクタを有する、複数の独立したモジュール式DC電源が備わってよい。モジュール式DC電源は、少なくとも1つの整流器モジュールを含むことができる。コントローラが、複数のDC電源と通信してよく、シャーシの1つのスロットに収納されてよい。シャーシ内に収納されDC電源と通じるDCバスが、DC電源からのDC出力電力を、装置ラック内に収納された別個のDCバスに供給することができる。
【0009】
本開示のさらに別の態様は、複数のコンポーネント位置を内部に有する装置ラックの直流(DC)バスにDC電力を提供する方法に関する。装置ラックは、装置ラックのコンポーネント位置のうちのコンポーネント位置に搭載された1つまたは複数の装置コンポーネントを収容するように、かつ装置ラックのDCバス上で提供されるDC電力を使用して1つまたは複数の装置コンポーネントに電力供給するように、設計される。この方法は、少なくとも1つのコンポーネント位置に挿入されるのを可能にするフォームファクタを有するモジュール式DC電力ユニットを使用して、装置ラックのDCバスにDC電力を提供することを含むことができる。モジュール式DC電力ユニットのシャーシの複数のスロットに搭載された複数のDCモジュール式電源を使用して、装置ラックのDCバスに加えられるDC電力を生成することができる。シャーシのスロットのうちの1つに搭載されるように構成されたコントローラを使用して、DC電源と通信しDC電源を制御することもできる。AC入力モジュールを使用して、外部AC電力源をモジュール式DC電力ユニットにインタフェース接続して、AC電力をモジュール式DC電力ユニットに提供することができる。
【0010】
さらに他の応用可能性領域は、本明細書に提供する記述から明らかになるであろう。記述および具体例は、単に説明のためのものとし、本開示の範囲を限定するものとはしないことを理解されたい。
【0011】
本明細書に記載の図面は、説明のためのものに過ぎず、決して本開示の範囲を限定するものとはしない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示による、統合されたラックマウント型のモジュール式電力ユニットの一実施形態の拡大斜視図である。
【
図2】DC供給バスおよびリターンバスを示す、
図1のモジュール式電力ユニットの背面の斜視図である。
【
図2A】他の外部コンポーネントとの様々な接続を行えるようにするコネクタをより詳細に示す、
図2のモジュール式電力ユニットの背面の一部の拡大斜視図である。
【
図3A】BBUモジュールまたは整流器モジュールのうちの1つを、DC供給バスおよびリターンバスに接続し、かつシステムコントローラカード(SCC)と通信するための通信バスに接続するために、
図1のモジュール式電力ユニットと共に使用できるコネクタアセンブリの斜視図である。
【
図3B】BBUモジュールまたは整流器モジュールのうちの1つを、DC供給バスおよびリターンバスに接続し、かつシステムコントローラカード(SCC)と通信するための通信バスに接続するために、
図1のモジュール式電力ユニットと共に使用できるコネクタアセンブリの斜視図である。
【
図4】ユニットの電源のうちの特定の電源が所定AC入力信号を受け取るようにユーザがモジュール式電力ユニットを構成できるようにする、モジュール式電力ユニット中で使用されるAC入力端子ブロックのうちの1つの斜視図である。
【
図5】3つのAC入力端子ブロックのそれぞれから3つの別々の電源グループにAC電力を供給できるように、モジュール式電力ユニットのシャーシのスロットをグループ化するための一構成を示す、
図1のモジュール式電力ユニットの正面斜視図である。
【
図6】
図1に示すモジュール式電力ユニットの高レベルブロック図タイプの図であって、ユニットの内部コンポーネントのレイアウトの一例を示す図である。
【
図7】追加の電力を整流器モジュールに提供して短期間の電力需要増加を満たすために、電力ブースト動作中にどのように4つのBBUモジュールから利用可能な最大電力出力の「上限を定める」ことができるかを示すグラフである。
【
図8】
図1のモジュール式電力ユニットを埋めるのに使用できる1つの12VDC整流器モジュールの高レベル斜視図である。
【
図9】
図1のモジュール式電力ユニットを埋めるのにやはり使用できる12VDCバッテリバックアップユニット(BBU)モジュールの高レベル斜視図である。
【
図10】BBUモジュールの一実施形態のブロック図である。
【
図11】整流器モジュールの一実施形態の内部サブシステムおよびコンポーネントを示すブロック図である。
【
図12】コントローラカードの一実施形態のブロック図である。
【
図13】主要電力システムが2つの補助電力システムと共に備わる、本開示の別の実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の記述は、例示的な性質のものに過ぎず、本開示、応用、または使用を限定するものとはしない。図面の全体を通して、対応する参照番号は、同じまたは対応する部分および特徴を示すことを理解されたい。
【0014】
図1を参照すると、本開示の一実施形態により、ラックマウント型のモジュール式直流(DC)電力ユニット10(以下、単に「モジュール式電力ユニット10」)が示されている。モジュール式電力ユニット10は、ユーザ構成可能なDC電力出力を従来型の装置ラックのDCバスに提供するための「電力システム」を形成すると見なすことができる。DC出力を使用して、サーバ、ネットワークスイッチ、KVMアプライアンス、ルータ、ファンシステムなど、幅広いラックマウント型データセンタコンポーネントまたはITコンポーネントのいずれかに電力供給することができる。
【0015】
モジュール式電力ユニット10ユニットは、シャーシ12を有することができる。シャーシ12は、この実施形態では、それぞれ整流器モジュール16および/またはバッテリバックアップモジュール(BBU)18のいずれかの形をとる場合のある、ユーザ構成可能な組合せの電源モジュールを受け取って収納するための9つの独立したモジュールスロット14と、コントローラカード20のためのスロットとを有する。便宜上、以下の考察の全体を通して、整流器モジュール16およびBBUモジュール18を「電源モジュール16および/または18」と総称することがある。
【0016】
図1に示す例では、モジュール式電力ユニット10は、高さ3Uおよび幅19インチだが、これらの寸法は、種々のサイズのラックの要件を満たすように変えられてもよい。この例におけるモジュール式電力ユニット10は、3つの整流器モジュール16および6つのBBUモジュール18を備えるように示されているが、前述のように、この構成は完全にユーザ構成可能である。この例におけるコントローラカード20は、1U×3U(高さ)構成を有する。
【0017】
図2に、モジュール式電力ユニット10の背面図を示す。+DCバス22aおよびリターン電力バス22bが設けられ、これらは装置ラック中のDCバスに結合されることが可能である。供給DCバス22aおよびリターン電力バス22bはそれぞれ、厚さ1/8インチであって銅めっきされたものとすることができる。この例における開口24aは、3つまでの別々のAC電力ケーブルがカバー24の中を通ることを許容する。
【0018】
図2Aに、外部コンポーネントとの接続を行うことができる様々なコネクタを説明するために、モジュール式電力ユニット10の背面の一部のみの拡大図を示す。コネクタ25aが設けられてよく、コネクタ25aにより、独立したコンポーネント、例えばリモートアクセスアプライアンスやサーバに接続して、発生した電力障害状態をコンポーネントに知らせることができる。これにより、モジュール式電力ユニット10からの電力が短時間のうちに(例えば10ミリ秒のうちに)失われるであろうことを知らせる通知を、コンポーネントに提供することができる。コネクタ25bは、外部のラック管理システム(RMS)またはリモートアクセスアプライアンス(例えばユニバーサルマネジメントゲートウェイ(UMG)デバイス)への接続を可能にするコネクタとすることができる。コネクタ25cは、コントローラカード20の通信バス(例えばCANバス)に接続される適切なケーブル(図示せず)をモジュール式電力ユニット10に接続できるようにして、それによりコントローラカード20との通信を可能にする、コネクタである。好ましくは、各モジュール式電力ユニット10は、複数のモジュール式電力ユニット10を共に(すなわち並列で)デイジーチェーン接続できるようにするために、2つのコネクタ25cを備える。このようにして、コントローラカード20は、シャーシ12中にインストールされた各電源モジュール16および/または18と通信することができる。コネクタ25dは、他の入力(例えばセンサ)をモジュール式電力ユニット10のコントローラカード20に提供できるようにするために設けられる場合のある、オプションのコネクタである。
【0019】
図3Aおよび3Bにコネクタアセンブリ26を示すが、コネクタアセンブリ26を使用して、電源モジュール16または18のうちの1つからのDC出力をDCバス22aおよび22bに結合すること、ならびにコントローラカード20との通信を可能にすることができる。コネクタアセンブリ26は、第1のコネクタコンポーネント26aと、対合する第2のコネクタコンポーネント26bとを含む。第1のコネクタコンポーネント26aは、電源モジュール16または18のうちの所与の1つのプリント回路基板(PCB)27上の適切なエッジコネクタ27aに接続することができる。したがって、第1のコネクタコンポーネント26aは、所与の電源モジュール16または18からのDC電力出力を受け取り、また、所与の電源モジュール16または18の制御線(図示せず)にも接続する。複数のピン26cが、コントローラカード20との通信に使用できる制御線を形成する。ピン26dを使用して、AC電力源との接続を行うことができる。ピン26eは、PCB27への入力を提供し、それにより、モジュール16または18が最初にシャーシ12に挿入されたときに、DC電源モジュール16または18にDC信号を加えて、制御された方式で徐々にモジュールを所望のDC電圧まで上げることができるようにする。
【0020】
図3Aおよび3Bをさらに参照すると、第2のコネクタコンポーネント26bは、要素、例えば銅ピン26fを備え、銅ピン26fは、+DCバスバー22aおよび電力リターンバスバー22bと係合して、それにより、コネクタアセンブリ26を介して所与のDC電力モジュール16または18からのDC出力をバス22aに結合するように構成される。ピン26fは、第1のコネクタコンポーネント26aのピン26iとインタフェース接続する。第1のコネクタコンポーネント26aはまた、コネクタ26gと通信できるピン26g1(
図3B)も有する。コネクタ26gは、適切なケーブル(図示せず)を介して結合されて、コントローラカード20との通信を可能にすることができる。ピン26g1は、第1のコネクタコンポーネント26aを、エッジコネクタ27aのピン26cにインタフェース接続する。第1のコネクタコンポーネント26aのピン26hを使用して、外部AC入力を受け取り、AC入力をエッジコネクタ27aのピン26dにインタフェース接続することができる。第1のコネクタコンポーネント26aのピン26jは、エッジコネクタ27aのピン26eとインタフェース接続することができる。
【0021】
電源モジュール16および18の大きな利点は、これらが「ホットスワップ可能」なことである。これにより、これらのモジュールは、通電中のDC電力システムに対して損傷なしに挿入および取外しができるプラグアンドプレイタイプのモジュールであることになる。電源モジュール16または18のうちの1つがシャーシ12に挿入されてコネクタアセンブリ26を介して結合されるとき、システム出力電圧が影響を受けることはない。
【0022】
図4に、
図2のカバー24の後ろの各開口24aに隣接して存在するAC入力端子ブロック28を示す。AC入力端子ブロック28は、例えば、単相208VAC、3相480VAC、および3相208VACのうちのいずれか1つを受容するように配線されたものとすることができる。各AC入力端子ブロック28は、シャーシ12の9つのスロット14のうちの特定の3つのスロット中にある電源モジュール16および/または18にAC入力電力を送るように、電気的に結合される。
図5の例では、AC入力端子ブロック28のうちの第1のAC入力端子ブロック28は、シャーシスロット14a−14c中にある電源モジュール16および/または18にAC入力電力を送ることができ、AC入力端子ブロック28のうちの第2のAC入力端子ブロック28は、シャーシスロット14d−14f中にある電源モジュール16および/または18にAC入力電力を提供することができ、第3のAC入力端子ブロック28は、シャーシスロット14g−14i中にある電源モジュール16および/または18にAC入力電力を供給することができる。よって、3つの異なるAC入力電力供給構成を使用して、モジュール式電力ユニット10中にある電源モジュール16および/または18に電力を提供することができる。
【0023】
図6に、モジュール式電力ユニット10のブロック図説明を示すが、このブロック図説明は、どのように整流器モジュール16、BBUモジュール18、コントローラカード20、DCバス22aおよび22b、ならびにAC入力端子ブロック28をモジュール式電力ユニット10のシャーシ12中にパッケージできるかについての一例を示す。この例では、整流器モジュール16はシャーシ位置14a−14eに存在し、BBUモジュール18はシャーシ位置14f−14iに存在する。モジュール式電力ユニット10は、ユーザによって望まれる最大電力出力を提供するように構成されてよい。一例では、各モジュール16および18は、3000KW(12VDCで250振幅)の出力を提供し、総計9つのモジュール16および/または18は、N+1冗長性では24000KWの総電力出力(12VDCで2000振幅)を提供する。これに関して、ユーザは通常、使用されると予想される電力よりもわずかに多い電力をユニットが提供できるように、モジュール式電力ユニット10を構成することになることは理解されるであろう。したがってこの例では、ユーザは通常、約24KW以下を引き出すと予想されるコンポーネントを装置ラックに入れる場合があり、モジュール式電力ユニット10は、27KW(9つの電力モジュール16および/または18の全てが使用される場合)、またはN+1冗長性では24KW(すなわち、9つの電源モジュール16および/または18のうちの1つの出力は、通常はオフラインだが、必要が生じた場合には利用可能である)を提供できることになる。しかし、電源モジュール16および18の出力は、種々のレベルの電力(しかしやはり同じ12VDCで)を装置ラック中のDCバスに提供するように、変えられてもよいことは理解されるであろう。
【0024】
モジュール式電力ユニット10は、単相または3相AC入力信号に対応することができる。単一コード入力と2重コード入力とのいずれかが受け取られる場合がある。単一ラインコードが使用される場合は、この例におけるモジュール式電力ユニット10の出力は、N+1冗長性では24KW、あるいはN+N冗長性では12KWとなる。2重コードAC入力が使用される場合は、出力は、各レッグ上で、N+1冗長性では9KWとなる。よって、例えば1つの整流器モジュール16および1つのBBUモジュール18が使用されるとき、整流器モジュール16とBBUモジュール18の比率は1:1であることは理解されるであろう。したがってこの場合、3KWの電力が利用可能となり、90秒のホールドアップ時間が利用可能となる。別の例として、2つの整流器モジュール16が1つのBBUモジュール18と共に使用されるときは、6KW出力が提供され、90秒にわたる3KWのホールドアップ電力が伴う。
【0025】
整流器モジュール16とBBUモジュール18の電力密度が共通であることにより、過渡事象ライドスルーインスタンスの場合の追加電力に対する需要を満たすために幅広い程度の電力制御および補足的電力が整流器モジュール16にとって利用可能となるようにすることができる。これに関する例が
図7のグラフに示されている。このグラフは、総出力15KWとなるそれぞれ3KWの5つの整流器モジュール16と、総計12KWとなるそれぞれ3KWの4つのBBUモジュール18とで構成されたモジュール式電力ユニット10から利用可能な電力出力を示す。しかし、この例では、4つのBBU18からの出力は、最大2KWに制限され、5つの整流器モジュール16が提供できる電力を超える短い継続時間の追加の電力需要を満たすのに利用可能にされた。よって、モジュール式電力ユニットの整流器モジュール16が15KWしか供給できないであろうにもかかわらず、追加の2KWがBBUモジュール18から利用可能にされてよく、それにより、整流器モジュール16が満たすことのできる電力を超える、過渡事象ライドスルーインスタンス(通常はマイクロ秒またはミリ秒のオーダーの継続時間の)に関連する短期間の電力需要が満たされる。この特徴は、整流器モジュール16が扱うことが通常なら予想されるはずの電力を超える電力引出しの一時的な増加を引き起こす、予期される短い継続時間の過渡事象ライドスルーインスタンスを扱うために、モジュール式電力ユニット10を追加の整流器モジュール16で「オーバープロビジョニング」する必要を低減することによって、著しいコスト利益をもたらすと予想される。よって、BBUモジュール18は、2つの機能のために使用されてよい:すなわち、1)ある程度の短期間「電力ブースト」を整流器モジュール16に提供すること、および、2)モジュール式電力ユニット10へのACソース電力における混乱が生じた場合にホールドアップ電力を提供することである。
【0026】
前述の電力ブースト特徴は、コントローラカード20を使用してBBUモジュール18のバッテリレベルを監視することによって実現され得る。バッテリレベルが十分な最小の所定レベルであるという条件で、コントローラカード20は各BBUモジュール18に信号を送ることができ、この信号により、BBUモジュール18は、+DCバス22a上の感知されたバス電圧が最小の所定レベルより下に瞬間的に降下して過渡事象ライドスルーインスタンスの発生が示されたときに、その出力を提供することができる。このような過渡事象ライドスルーインスタンスが発生したとき、BBUモジュール18からの限られた量の電力が、ほぼ瞬時に+DCバス22a上で利用可能にされて、整流器モジュール(複数可)16からの出力を補足する。
【0027】
図7の上記の例はまた、以下のことも明確にするはずである。すなわち、BBUモジュール18からの最大出力の上限が、BBUから利用可能な最大電力未満のいくらかの量に定められることが可能なので(この例では、電力の上限は2KWに定められる)、このことは、90秒よりもかなり長いホールドアップ時間を提供するようにBBUモジュールを構成するオプションをユーザが有することを意味する。この場合もやはり、AC入力電力が失われた場合、この例における4つのBBUモジュール18は、通常なら最大12KWが利用可能なはずであるにもかかわらず、3KWを提供するように電力制限され得る。この結果、ホールドアップ継続時間は90秒よりもかなり長く、おそらく4倍までの長さであることになる(BBUモジュールからの最大利用可能出力の1/4しか使用されていないので)。よって、モジュール式電力ユニット10中の利用可能な全てのBBUモジュール18から利用可能な最大電力を、最大利用可能電力出力よりも少ないいくらかの所定量に制限するこの能力は、モジュール式電力ユニット10の構成時に、極めて幅広い程度の電力制御カスタマイズ化をユーザに提供する。
【0028】
図8に、整流器モジュール16のうちの1つに関するフォームファクタの例を示す。各整流器モジュール16は、幅1U×高さ3U×奥行き450mmのフォームファクタを有することができる。整流器モジュール16は、固定12VDC出力を提供することができ、これは一実施形態では3000KWである。当然、整流器モジュール16は、ユーザ要件に応じて、より大きいかまたはより小さい出力を提供するように構築されてもよい。
図9に、BBUモジュール18の一実施形態を示す。この実施形態では、BBUモジュール18は、整流器モジュール16と同じフォームファクタを有する(すなわち、1U×3U×奥行き450mm)。しかし、整流器モジュール16とBBUモジュール18とのいずれかまたは両方が、幅2Uのフォームファクタで構成されて、シャーシ12中で1つではなく2つの位置を占めてもよいことは理解されるであろう。しかし、共通のフォームファクタであることにより、必要が生じた場合に整流器モジュール16とBBUモジュール18とを交換することができる。例えば、ユーザが、モジュール式電力ユニット10の初期構成を変更して、6つの整流器モジュールおよび3つのBBUモジュール18から、4つの整流器モジュールおよび5つのBBUモジュールにしたいと仮定する。これは、単純に、整流器モジュール16のうちの2つを取り外し、2つの追加BBUモジュール18をシャーシ12中のそれぞれのスロットに挿入することによって、達成することができる。共通のフォームファクタであることにより、整流器モジュール16とBBUモジュール18を混合し、ユーザの望む任意の構成に一致させることができる。この特徴は、装置ラック中で装置コンポーネントが変更されてそれによりDC電力要件の修正が必要であるときに、特に有用である。単に1つまたは複数の整流器モジュール16および/またはBBUモジュール18を取り外し、取り外したモジュールを追加の整流器モジュール16またはBBUモジュール18で置き換えることによって、モジュール式電力ユニット10を再構成できることは、装置ラック中の新しい装置構成に対応するようにモジュール式電力ユニット10を再構成する際に、かなりの時間を節約することができる。
【0029】
一実装形態では、整流器モジュール16はそれぞれ定電流設計のものであり、このことは、通常の動作周囲温度範囲および入力電圧範囲の内で、利用可能な最大出力電力が所定量(例えば3000W)となることを意味する。これらの範囲で、一例では、整流器モジュール16は、負荷需要に応じて、3つの動作モードのうちの1つで動作することができる。周囲温度が許容値よりも上がったかまたは入力電圧が許容値よりも下がった場合、整流器モジュール16は、動作し続けることができるが、ただし下げられた出力電力レベルで動作し続けることができる。一例として、3つの電力モードは以下のとおりとすることができる:
【0030】
定電力電圧モード:12.0Vから13.2VDCの任意の初期出力電圧設定に対して、出力電圧は負荷にかかわらず一定のままである。これは、負荷が供給されバッテリが浮動充電される、通常動作条件である。負荷電流と出力電圧との積が約3000Wである点まで負荷が増大しない限り、整流器モジュール16は定電圧モードで動作する。
【0031】
定電力モード:負荷がこの例では約3000Wよりも増大するのに伴って、出力電流は増大し続けるが、出力電圧は、一定出力電力を維持するために必要に応じて減少する。電流限度設定に達する点まで負荷が増大し続けない限り、整流器モジュール16は定電力モードで動作する。
【0032】
定電流モード:負荷が電流限度設定まで増大した場合、出力電圧は線形に減少して、出力電流を電流限度設定に維持する。
【0033】
図10を参照しながら、BBUモジュール18の構造についてより詳細に論じる。本明細書に記載のように、モジュール式電力ユニット10の重要な一特徴は、BBUモジュール18が、整流器モジュール16の提供する電力密度と同じ電力密度を提供できることである。一実施形態では、BBUモジュール18の電力密度は約20W/in
3である。この、整流器モジュール16とBBUモジュール18との間の1:1電力密度の関係は、この2つのコンポーネントを、すぐに交換可能とすることができる。一実施形態では、BBUモジュール18は、高電圧の正弦波振幅コンバータ(HV SAC)18a、ブースト力率補正(PFC)モジュール18b、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)バックブースト(BB)モジュール18c、複数のバッテリセル18d、およびZVSバックレギュレータモジュール18eを備えることができる。HV SAC18aは、360VDC−400VDCの間のDC入力を受け取って、完全に絶縁された45V−50V、325Wの出力を提供する、バスコンバータとすることができる。ブーストPFCモジュール18bは、バッテリセル18dを充電するための細流充電器として動作することができる。ZVS BBモジュール18cは、ZVS高効率コンバータとすることができる。HV SACモジュール18a、ZVS BBモジュール18c、およびZVSバックレギュレータモジュール18eのそれぞれは、米国マサチューセッツ州アンドーヴァーのVicor Custom Powerから入手可能である。BBモジュール18cは、所定の入力、例えば38から55VDC入力から動作して、所定の調整された出力、例えば5から55VDC出力を生成することができる。ZVSバックブーストモジュール18cは、高い変換効率で、高いスイッチング周波数(約1MHz)の動作を可能にする。高いスイッチング周波数は、無効分の大きさを減少し、潜在的に1300W/in
3までの電力密度を可能にする。ZVSバックレギュレータモジュール18eは、6つの3623CHiPモジュール(40×23×7.3mm)のアレイを備えることができ、このアレイは、36VDC−60VDC入力を受け取るためのものであり、11−13VDCダイナミックレンジを有し、42A出力でセットポイントは12VDC(各モジュール)、非絶縁である。
【0034】
「待機モード」(バッテリ充電)では、ZVSバックレギュレータモジュール18eはオフであり、12V配電システムは、モジュール式電力ユニット10の他のコンポーネント(便宜上、図面では単に「バルク電力システム」として示す)によって供給される。HV SACモジュール18aは、DC入力から直接に、またはブーストPFCモジュール18bを介してAC入力から、電力を調達する。HV SACモジュール18aは、絶縁出力(360−400V/8=45−50V)を有し、この出力はZVSバックブーストモジュール18cに供給し、ZVSバックブーストモジュール18cはバッテリセル18dを充電する。バッテリ充電プロファイル、ゲージング、および全体管理は、BBUモジュール18の外部で実施されるべきである。DCバス電圧が事前設定済みレベル未満に下がった場合、バックアップモードに入る。この例では、BBUモジュール18への入力線が消えるか、または適切なフラグが受け取られ、ZVSバックレギュレータモジュール18eがイネーブルにされて約250Aまでの調整された12VDC出力を提供する。
【0035】
図11を参照すると、整流器モジュール16の一実施形態が示されている。整流器モジュール16は、入力EMI回路16a、ソフトスタート回路16b、ブリッジレスPFC(力率補正)回路16c、DC/DCコンバータ回路16d、出力EMI回路16e、およびディジタル信号プロセッサ(DSP)16fを備えることができる。入力EMI回路16aは、AC電力線に対するフィルタリングを提供し、どんなスプリアス信号成分もAC電力線上に置かれないようにするのを助ける。ソフトスタート回路16bにより、ブリッジレスPFC回路16cのコンデンサ(図示せず)の入力バンクならびにDC/DCコンバータモジュール16dは、制御された方式で始動して、他の入力ブレーカまたはヒューズを作動させるのを回避することができる。ブリッジレスPFC16cは、力率補正を提供するように機能する。DC/DCコンバータ回路16dは、内部バンクDC電圧をとり、同期整流を介してこれを12VDCに変換する。出力EMI16eは、整流器モジュール16の12VDCレール(図示せず)上で、出力フィルタリングおよびリップルノイズ低減を提供する。DSP16fは、上に論じた整流器モジュール16の他コンポーネントを制御することに加えて、クリティカルなコンポーネント温度および周囲温度を監視すること、ならびにシステムハウスキーピング機能のために他のコンポーネントから入力を受け取ることもできる。CAN(コントローラエリアネットワーク)送受信機16gは、整流器モジュール16がコントローラカード20と通信できるようにする。DSP16fには、PFC制御ファームウェア16hおよびDC/DC制御ファームウェア16iが組み込まれてよい。整流器モジュール16は、以下の仕様を有することができる:
【0036】
約176VAC−310VACの間のAC入力電圧を受容する。
【0037】
約−20℃−45℃の間の動作温度範囲を有する。
【0038】
A級EMC性能レーティングを有する。
【0039】
少なくとも約94%の概算ピーク効率を有する。
【0040】
全負荷の約5%の負荷シェアを有する。
【0042】
200マイクロ秒未満の過渡応答、および5%未満のオーバーシュートを有する。
【0044】
約10ミリ秒のホールドアップ時間を有する。
【0045】
50mv(20MHz)のピークツーピークノイズを有する。
【0046】
UL60950安全性レーティングを有する。
【0047】
各BBUモジュール18は、一実施形態では、以下の仕様を有することができる:
【0050】
約200VAC−310VACの間のAC入力電圧範囲。
【0054】
切断前に約11.4VDCまで下がって動作可能。
【0058】
図12を参照すると、コントローラカード20の一実施形態のブロック図が示されている。コントローラカード20は、モジュール式電力ユニット10のモジュール16および/または18へのインタフェースを提供し、また、モジュール式電力ユニットの外部の、モジュール式電力ユニットと通信する必要がある場合のあるサブシステム(例えばセンサ)へのインタフェースを提供する。この例におけるコントローラカード20は、高さ95mm×奥行き444.5mmのフォームファクタを有することができる。モジュール式電力ユニット10が2つ以上のDCバスに電力を提供することになっている場合は、複数のコントローラカード20、すなわち、ユニット10が電力を提供することになる各DCバスにつき1つのコントローラカード20を使用することができる。3つのモジュール式電力ユニット10が設けられた場合、これらはまとめて、27個までの電源モジュール16および/または18とインタフェース接続できることになる。
【0059】
コントローラカード20は、プロセッサ20bが実装されたマザーボード20aを備えることができる。イーサネット(登録商標)相互接続性を提供するために、オプションのボード20cが設けられてよい。ユーザへのインタフェース接続を可能にするために、マンマシンインタフェース(MMI)サブシステム20dが備わってよい。装置ラックに接続された他のコンポーネント(例えばセンサ)からのディジタルおよびアナログ入力および出力をコントローラカード20が収集するのを補助するために、入力オプションボード20eが備わってよい。コントローラカード20内部の他のボードまたはコンポーネントからマザーボード20aが情報を得るのを補助するために、オプションのボード20fが使用されてよい。他のデバイスやセンサなどからマザーボード20aへの将来の入力を扱うために、別のオプションの入力ボード20gが設けられてよい。情報およびデータを収集するため、または追加の制御機能を提供するために、SMDU(スマートモジュールディストリビューションユニット)20hが使用されてもよい。
【0060】
コントローラカード20から電力モジュール16および/または18への通信は、例えば、GBB CANプロトコルを使用することができる。このプロトコルを拡張して、BBUモジュール18との間で送られるデータを追加することができる。モジュール式電力ユニット10はまた、Emerson Network Power Systemsから入手可能なラック管理システム(RMS)と共に使用することもでき、RMSは、装置ラックの電力コンポーネント、ならびにデータセンタ環境で使用される他のコンポーネントへのアクセスを統合する。コントローラカード20は、RMSへのインタフェースを提供することができる。
【0061】
コントローラカード20はまた、拡張するデータセンタニーズに向けてユーザがよりよく計画を立てられるように、モジュール式電力ユニット10の容量が現在どれくらい使用されているかをユーザが監視および理解するのを助ける。コントローラカード20はまた、以下のトピックについて、情報および/または能力をユーザに提供することもできる:
【0062】
モジュール式電力ユニット10が現在どれくらい最大能力に近く動作しているか、および、現在の使用をモジュール式電力ユニット10からの利用可能な総電力のパーセンテージとして見ること。
【0063】
モジュール式電力ユニット10の問題を示す何らかの警報が存在するかどうか。
【0064】
入来するAC電圧が、予想されるものかどうか。
【0065】
各モジュール式電力ユニット10が、予想されるDC出力を提供しているかどうか。
【0066】
各モジュール式電力ユニット10の実際の構成が、予想される構成と一致するかどうか。
【0067】
モジュール式電力ユニット10のBBUモジュール18が、ユニットが電力を提供している他のラックマウント型コンポーネントを、どれくらい長く維持することになるか。
【0068】
いずれか1つまたは複数のモジュール式電力ユニット10のBBUモジュール18が再充電するのにどれくらいの時間がかかることになるか。
【0069】
ユニットまたは装置ラック中の構成または配線に変更を加えるために、ユーザがいずれか1つまたは複数のモジュール式電力ユニット10をオフにすることができるようにする。
【0070】
入来AC電力に障害が起きた場合にいずれか1つまたは複数のモジュール式電力ユニット10のBBUモジュール18が必要ホールドアップ電力を提供することになることを確実にするために、ユーザがバッテリテストを実施できるようにする。
【0071】
ユーザが、いずれか1つまたは複数のモジュール式電力ユニット10によって生成された1つまたは複数の警報を調べた後で、全ての警報をクリアできるようにする。
【0072】
各ユニットをトラブルシューティングに向けて知られている状態に戻すために、または各ユニットがパワーサイクル後に正しい状態で始動するのを確実にするために、ユーザがモジュール式電力ユニット10をリセットできるようにする。
【0073】
AC電力を制御およびバジェット編成できるように、DC電力システムが使用する入来AC電力の量をユーザが制御できるようにする。
【0074】
いずれかの電力モジュール16および/または18が外れた場合に、または予想されるユニット16および/または18の全てが存在すると認識されない状態でモジュール式電力ユニット10が起動した場合に、モジュール式電力ユニット10がアラートを提供できるように、ユーザが所望の構成をセットアップできるようにする。
【0075】
電力消費および電力効用コストを効果的に管理できるように、DC電力システムが提供する電力の量をユーザが制御できるようにする。
【0076】
装置ラックからの温度過昇アラートに関する温度セットポイントをユーザが設定できるようにする。
【0077】
RMSを含む構成では、コントローラカード20は、イーサネットを介したSNMPを使用してRMSと通信することができる。RMSのない構成では、コントローラカード20は、例えば、イーサネットを介したSNMP、またはインテリジェントプラットフォームマネジメントインタフェース(IPMI)を使用して、インタフェースを提供することができる。
【0078】
次に
図13を参照すると、本開示の別の実施形態による電力ユニットシステム100が示されている。モジュール式電力ユニット10と共通のコンポーネントは、モジュール式電力ユニット10の記述に使用された参照番号から100だけ増やされた参照番号で示されている。
【0079】
この例における電力ユニットシステム100は、モジュール式主要電力ユニット102、および少なくとも1つのモジュール式補助電力ユニット104aを備える。
図13は、2つのこのようなモジュール式補助電力ユニット104aおよび104bが主要電力ユニット102と共に使用されるのを示す。この例における主要電力ユニット102は、1つまたは複数の整流器モジュール116、1つまたは複数のBBU118、およびシステムコントローラカード(SCC)120を備えることができるという点で、モジュール式電力ユニット10と同様または同一とすることができる。別法として、システム100は、SCC120と共に、BBU118のみまたは整流器モジュール116のみを備えてもよい。この例における主要電力ユニット102は、12V DCで2000Aを提供することができ(N+1冗長)、総計9つまでの電力モジュール116および/または118を収容することができる。複数のAC入力端子ブロック(図示せず)が、所望のAC入力に使用されてよい(例えば、208/240V ACの単相AC入力;または、208/240V ACの3相入力フィード、もしくは277/480V ACの4ワイヤ+PE AC入力フィード、もしくは200/208/240V ACの単相入力フィード)。
【0080】
図13をさらに参照すると、補助電力ユニット104aおよび104bはSCC120を備えないことに気付くであろう。その代わり、主要電力ユニット102からのSCC120は、例えばCANバスを使用して、各補助電力ユニット104aおよび104bと通信することができる。これは、主要電力ユニット102のCANバスポート106を補助電力ユニット104aの第1のCANバスポート108aと結合する適切なケーブリングと、補助電力ユニット104aの第2のCANバスポート108bを補助電力ユニット104bのCANバスポート109と結合する別のケーブルとによって達成される。
【0081】
主要電力ユニット102は、電力障害検出ポート106aおよび106bも備えることができ、これらは、補助電力ユニット104aおよび104bの電力障害検出ポート108cおよび109aにそれぞれ結合される。これにより、主要電力ユニット102は、補助電力ユニット104aと104bとのいずれかが電力障害を被っているかどうかを検出することができる。
【0082】
主要電力ユニット102は追加のポートを有することができる。例えば、緊急コマンドがIT専門家または外部装置から発行された場合に主要電力ユニット102の電源をすぐに切ることができるようにするための、緊急電源切断(EPO)用のポート106cを有することができる。さらに他のポートとしては、外部回路に結合されることが可能なリモート感知ポート106d、および、切迫した電力障害状態を他の外部回路に報告するための「切迫電力障害」ポート106eを含めることができる。DCバス106fが、装置ラック中のDCバスと通じることができる。同様に、補助電力ユニット104aおよび104bはそれぞれ、装置ラック中のDCバスに電力を供給するために、それ自体のDCバス108dおよび109bをそれぞれ備えることができる。
【0083】
主要電力ユニット102が、自前のSCC120を必要としない2つまでの追加の補助ユニット104aおよび104bと通信しこれらを制御することができることにより、システム100は、所与の装置ラック中の変化する電力ニーズを満たすように拡張されることが可能である。よって、本開示のモジュール式電力ユニット10は、総出力電力およびホールドアップ時間に関係する選択された特性を提供するようにユーザによって構成できる、DC電力ユニットを提供する。整流器モジュール16およびBBUモジュール18のモジュール的性質、ならびにそれらの共通のフォームファクタおよび電力密度により、これらのコンポーネントは、必要時に素早く容易に交換されることが可能である。これにより、ユーザは、ラックの装置構成が変更された場合に、必要に応じてモジュール式電力ユニット10を素早く容易に再構成することができる。モジュール式電力ユニット10は、所与の装置ラックに電力をオーバープロビジョニングするユーザの傾向を低減すると予想される。モジュール式電力ユニット10のコンポーネントのモジュール的性質はまた、既存の装置ラックに装置コンポーネントが追加されておりしたがって電力供給要件の変化を要するような、発展しつつあるデータセンタに、よりよく対応すると予想される。モジュール式電力ユニット10の電力を制限できることによってさらに、このユニットを使用して、整流器モジュール16の電力出力を補足するための短期間の追加電力を提供して過渡事象ライドスルーインスタンスをよりよく扱うことができる。
【0084】
様々な実施形態について述べたが、当業者なら、本開示を逸脱することなく行われる可能性のある修正または変形を認識するであろう。例は、様々な実施形態を説明するものであり、本開示を限定するものとはしない。したがって、この記述および特許請求の範囲は、寛大に解釈されるべきであり、関連のある従来技術に鑑みて必要である限定のみを含む。