(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー層とを貼り合わせる前の前記液晶ポリマー層の引張伸度に対する、ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー層とを貼り合わせた後の前記液晶ポリマー層の引張伸度の減少率が25%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリイミド樹脂−液晶ポリマー複合フィルム。
貼り合わせた後に、温度25℃、相対湿度60%の環境下に1時間静置して測定したカール値が10mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド樹脂−液晶ポリマー複合フィルム。
ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー層をプラズマ処理する工程、前記プラズマ処理工程後のポリイミド樹脂層と液晶ポリマー層を真空乾燥処理する工程及び5MPa以下の圧力で熱プレスする工程を有することを特徴とするポリイミド樹脂−液晶ポリマー複合フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜3は、本発明の一実施の形態にかかる接着フィルム3の断面図である。本発明のポリイミド樹脂−液晶ポリマー複合フィルム(以下、PI−LCP複合フィルムともいう。)は、ポリイミド樹脂層1と液晶ポリマー層2を有し、前記ポリイミド樹脂層1と液晶ポリマー層2とを貼り合わせた後の液晶ポリマー層が、10%以上の引張伸度を有することを特徴とする。
【0012】
本発明のPI−LCP複合フィルムは、少なくともポリイミド樹脂層1と液晶ポリマー層2を有していればよい。例えば、
図1に示されるように、ポリイミド樹脂層1/液晶ポリマー層2の順に積層された構成でもよく、
図2に示されるように、ポリイミド樹脂層1/液晶ポリマー層2/ポリイミド樹脂層1の順で積層されていてもよく、
図3に示されるように、液晶ポリマー層2/ポリイミド樹脂層1/液晶ポリマー層2の順で積層されていてもよい。これらの中で、製造の簡易さや経済性の観点等から、
図1に示されるようなポリイミド樹脂層1/液晶ポリマー層2の2層の構成であることが好ましい。
【0013】
本発明のPI−LCP複合フィルムにおいて、ポリイミド樹脂層1と液晶ポリマー層2とを貼り合わせた後の液晶ポリマー層の引張伸度が、10%以上であり、好ましくは12%以上である。引張伸度の測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
【0014】
また、本発明のPI−LCP複合フィルムでは、ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー層とを貼り合わせる前の液晶ポリマー層の引張伸度に対する、ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー層とを貼り合わせた後の液晶ポリマー層の引張伸度の減少率が通常25%以下であり、好ましくは15%以下であり、より好ましくは13%以下である。引張伸度の減少率の算出方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
【0015】
本発明のPI−LCP複合フィルムは、特に限定されないが、複合フィルム製造後のポリイミド樹脂層と液晶ポリマー層との接着強度が、通常1.0N/cm以上であり、好ましくは1.2N/cm以上である。接着強度の測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
【0016】
本発明のPI−LCP複合フィルムは、特に限定されないが、複合フィルム製造後のカール値が、通常10mm以下であり、好ましくは8mm以下であり、より好ましくは3mm以下である。カール値の測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
【0017】
本発明のPI−LCP複合フィルムは、特に限定されないが、複合フィルム製造後の熱膨張係数が、後記する実施例に記載の測定条件において、通常0ppm/℃以上30ppm/℃以下であり、好ましくは5ppm/℃以上25ppm/℃以下であり、より好ましくは10ppm/℃以上21ppm/℃以下である。また、本発明のPI−LCP複合フィルムとしては、カールを抑えられる点から、ポリイミド樹脂層の熱膨張係数と液晶ポリマー樹脂層の熱膨張係数の差が、±5ppm/℃以下のものが好ましく、±3ppm/℃以下のものがより好ましく、±1ppm/℃以下のものがさらに好ましく、両者の熱膨張係数が一致していることが特に好ましい。
【0018】
本発明のPI−LCP複合フィルムのポリイミド樹脂層の厚さは、特に限定されないが、ハンドリングの点から、通常5μm以上200μm以下であり、好ましくは7.5μm以上150μm以下である。
【0019】
本発明のPI−LCP複合フィルムの液晶ポリマー層の厚さは、特に限定されないが、ハンドリングの点から、通常5μm以上200μm以下であり、好ましくは7.5μm以上150μm以下である。
【0020】
本発明においてポリイミド樹脂層1を構成する樹脂は、ポリイミド樹脂である。本発明に用いられるポリイミド樹脂とは、構造中にイミド基を有するポリマーであり、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミドエステル、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド等を挙げることができる。ポリイミド樹脂は、前駆体であるポリアミック酸をイミド化(硬化)することによって形成することができる。ポリイミド樹脂層1は単一層であっても良く複数のポリイミド樹脂層からなっていても良いが、良好な耐熱性や絶縁性を確保する観点から、少なくとも1層は非熱可塑性のポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0021】
本発明に用いられるポリイミド樹脂層は、特に限定されないが、ポリイミドフィルムの形態が好適である。前記ポリイミドフィルムについて、以下に詳しく説明する。
【0022】
本発明のポリイミドフィルムを製造するに際しては、まず芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させることにより、ポリアミック酸溶液を得る。
【0023】
前記芳香族ジアミン成分の具体例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンチジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3メチル−5アミノフェニル)ベンゼン及びこれらのアミド形成性誘導体が挙げられ、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。この中でフィルムの引張弾性率を高くする効果のあるパラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルのジアミンの量を調整し、得られるポリイミドフィルムの引張弾性率を3.0GPa以上にすることが、搬送性も良くなるので好ましい。
【0024】
前記酸無水物成分の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸及びこれらのアミド形成性誘導体等の芳香族テトラカルボン酸無水物成分が挙げられ、ピロメリット酸二無水物及び3,3’−4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
この中でも、特に好適な、芳香族ジアミン成分及び酸無水物成分の組み合わせしては、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び3,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上の芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物及び3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1種以上の酸無水物成分との組み合わせが挙げられる。
【0026】
前記した芳香族ジアミン成分の配合割合(モル比)としては、特に限定されないが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとパラフェニレンジアミンとを併用する場合、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテル:パラフェニレンジアミン=0:100〜100:0が好ましく、10:90〜90:10がより好ましい。前記した酸無水物成分の配合割合(モル比)としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを併用する場合、ピロメリット酸二無水物:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物=0:100〜100:0が好ましく、30:70〜95:5がより好ましい。ポリイミドフィルムがこれらの芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とからなるポリアミック酸から製造される場合、ポリイミドフィルムの熱膨張係数を、フィルムの機械搬送方向(MD)、幅方向(TD)共に、後記する実施例に記載の測定条件において、0〜30ppm/℃の範囲に容易に調整することができるため、好ましい。
【0027】
また、本発明において、ポリアミック酸溶液の形成に使用される有機溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒、フェノール、o−,m−,又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒、又はヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は2種以上を使用した混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエン等の芳香族炭化水素の使用も可能である。
【0028】
重合方法は、公知のいずれの方法で行ってもよく、例えば
(1)先に芳香族ジアミン成分全量を溶媒中に入れ、その後、酸無水物成分を芳香族ジアミン成分全量とほぼ等モルになるように加えて重合する方法。
(2)先に酸無水物成分全量を溶媒中に入れ、その後、芳香族ジアミン成分を酸無水物成分とほぼ等モルになるように加えて重合する方法。
(3)一方の芳香族ジアミン成分(a1)を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の酸無水物成分(b1)が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族ジアミン成分(a2)を添加し、続いて、もう一方の酸無水物成分(b2)を全芳香族ジアミン成分と全酸無水物成分とがほぼ等モルになるように添加して重合する方法。
(4)一方の酸無水物成分(b1)を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の芳香族ジアミン成分(a1)が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の酸無水物成分(b2)を添加し、続いてもう一方の芳香族ジアミン成分(a2)を全芳香族ジアミン成分と全酸無水物成分とがほぼ等モルになるように添加して重合する方法。
(5)溶媒中で一方の芳香族ジアミン成分と酸無水物成分をどちらかが過剰になるよう反応させてポリアミック酸溶液(A)を調整し、別の溶媒中でもう一方の芳香族ジアミン成分と酸無水物成分をどちらかが過剰になるよう反応させポリアミック酸溶液(B)を調整する。こうして得られた各ポリアミック酸溶液(A)と(B)を混合し、重合を完結する方法。この時ポリアミック酸溶液(A)を調整するに際し芳香族ジアミン成分が過剰の場合、ポリアミック酸溶液(B)では酸無水物成分を過剰に、またポリアミック酸溶液(A)で酸無水物成分が過剰の場合、ポリアミック酸溶液(B)では芳香族ジアミン成分を過剰にし、ポリアミック酸溶液(A)と(B)を混ぜ合わせこれら反応に使用される全芳香族ジアミン成分と全酸無水物成分とがほぼ等モルになるように調整する。なお、重合方法はこれらに限定されることはなく、その他公知の方法を用いてもよい。
【0029】
こうして得られるポリアミック酸溶液は、通常5〜40重量%の固形分を含有し、好ましくは10〜30重量%の固形分を含有する。また、その粘度は、ブルックフィールド粘度計による測定値で通常10〜2000Pa・sであり、安定した送液のために、好ましくは100〜1000Pa・sである。また、有機溶媒溶液中のポリアミック酸は部分的にイミド化されていてもよい。
【0030】
次に、ポリイミドフィルムの製造方法について説明する。ポリイミドフィルムを製膜する方法としては、ポリアミック酸溶液をフィルム状にキャストし熱的に脱環化脱溶媒させてポリイミドフィルムを得る方法、及びポリアミック酸溶液に環化触媒及び脱水剤を混合し化学的に脱環化させてゲルフィルムを作製し、これを加熱脱溶媒することによりポリイミドフィルムを得る方法が挙げられるが、後者の方が得られるポリイミドフィルムの熱膨張係数を低く抑えることができるので好ましい。
【0031】
化学的に脱環化させる方法においては、まず前記ポリアミック酸溶液を調製する。なお、このポリアミック酸溶液は、必要に応じて、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム及びポリイミドフィラー等の化学的に不活性な有機フィラーや無機フィラーを、30重量%未満の濃度で含有することができる。
【0032】
ここで使用するポリアミック酸溶液は、予め重合したポリアミック酸溶液であっても、またフィラー粒子を含有させる際に順次重合したものであってもよい。
【0033】
前記ポリアミック酸溶液は、環化触媒(イミド化触媒)、脱水剤及びゲル化遅延剤等を含有することができる。
【0034】
本発明で使用される環化触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、及びイソキノリン、ピリジン、ベータピコリン等の複素環第3級アミン等が挙げられるが、複素環式第3級アミンが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
本発明で使用される脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族カルボン酸無水物、及び無水安息香酸等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられるが、無水酢酸及び/又は無水安息香酸が好ましい。
【0036】
ポリアミック酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法としては、前記環化触媒及び前記脱水剤を含有させたポリアミック酸溶液を、スリット付き口金から支持体上に流延してフィルム状に成型し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離し、加熱乾燥/イミド化し、熱処理を行う方法が挙げられる。
【0037】
前記支持体とは、金属製の回転ドラムやエンドレスベルトであり、その温度は液体又は気体の熱媒により及び/又は電気ヒーター等の輻射熱により制御される。
【0038】
前記ゲルフィルムは、支持体からの受熱及び/又は熱風や電気ヒーター等の熱源からの受熱により通常30〜200℃、好ましくは40〜150℃に加熱されて閉環反応し、遊離した有機溶媒等の揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離される。
【0039】
前記支持体から剥離されたゲルフィルムは、特に限定されないが、必要に応じて、回転ロールにより走行速度を規制しながら機械搬送方向に延伸処理を施されてもよい。搬送方向の延伸倍率は、特に限定されない。また、特に限定されないが、必要に投じて、ゲルフィルムをテンター装置に導入し、テンタークリップに幅方向両端部を把持して、テンタークリップと共に走行しながら、幅方法へ延伸してもよい。幅方向の延伸倍率は、特に限定されない。
【0040】
前記の乾燥ゾーンで乾燥したフィルムは、熱風、赤外ヒーター等で15秒から10分加熱される。次いで、熱風及び/又は電気ヒーター等により、250〜500℃の温度で15秒から20分熱処理を行う。
【0041】
また、走行速度を調整し、ポリイミドフィルムの厚みを調整することができる。ポリイミドフィルムの厚さは、フィルムの製膜性が著しく悪化しない範囲であれば、特に限定されない。
【0042】
また、特に限定されないが、必要に応じて、このようにして得られたポリイミドフィルムをさらに200〜500℃の温度でアニール処理を行ってもよい。アニール処理によってフィルムの熱リラックスが起こり加熱収縮率を小さく抑えることができ、より一層寸法精度が高くなり好ましい。具体的には200〜500℃の炉の中を、低張力下にてフィルムを走行させ、アニール処理を行う。炉の中でフィルムが滞留する時間が処理時間となるが、走行速度を変えることでコントロールすることになり、30秒〜5分の処理時間であることが好ましい。これより短いとフィルムに充分熱が伝わらず、また長いと過熱気味になり平面性を損なうので好ましくない。また走行時のフィルム張力は10〜50N/mが好ましく、さらには20〜30N/mが好ましい。この範囲よりも張力が低いとフィルムの走行性が悪くなり、また、張力が高いと得られたフィルムの走行方向の熱収縮率が高くなるので好ましくない。
【0043】
前記ポリイミドフィルムとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、特に限定されないが、例えば、カプトンのENタイプ(例えば、50EN−S(商品名、東レ・デュポン株式会社製)、100EN(商品名、東レ・デュポン株式会社製)等)、カプトンのHタイプ(例えば、カプトン100H(商品名、東レ・デュポン株式会社製)等)、カプトンVタイプ(例えば、カプトン100V(商品名、東レ・デュポン株式会社製)等)、アピカルNPI(商品名、株式会社カネカ製)等、ユーピレックスS(商品名、宇部興産株式会社製)等が挙げられる。
【0044】
ポリイミド樹脂層1には、前記非熱可塑性のポリイミド樹脂と組み合わせて、熱可塑性のポリイミド樹脂を用いることもできる。すなわち、ポリイミド樹脂層1を多層構造とする場合には、非熱可塑性のポリイミド樹脂層に熱可塑性のポリイミド樹脂層を積層させることができる。この場合、特に限定されないが、非熱可塑性ポリイミド樹脂層の両面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を積層していてもよい。
【0045】
前記ポリイミドフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、可塑剤や他の樹脂等を含んでいてもよい。
【0046】
前記可塑剤としては、特に限定されず、例えば、ヘキシレングリコール、グリセリン、β−ナフトール、ジベンジルフェノール、オクチルクレゾール、ビスフェノールA等のビスフェノール化合物、p−ヒドロキシ安息香酸オクチル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ペプチル、p−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ε−カプロラクトン、フェノール類のリン酸エステル化合物、N−メチルベンゼンスルホンアミド、N−エチルベンゼンスルホンアミド、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、N−エチルトルエンスルホンアミド、N−シクロヘキシルトルエンスルホンアミド等を挙げることができる。
【0047】
ポリイミドに配合する上記他の樹脂としては、相溶性に優れるものが好ましく、例えば、エステル及び/又はカルボン酸変性オレフィン樹脂、アクリル樹脂(特に、グルタルイミド基を有するアクリル樹脂)、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリフェニレンオキサイド等を挙げることができる。
【0048】
本発明におけるポリイミドフィルムは、また、本発明の目的を損なわない範囲で、着色剤、各種添加剤等を含んでいてもよい。上記添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、強化剤(フィラー)等を挙げることができる。また、ポリイミドフィルム表面をインク等でコーティングしてもよい。
【0049】
本発明に用いるポリイミドフィルムは、特に限定されないが、機械搬送方向(MD)及び幅方向(TD)の熱膨張係数が、それぞれ通常30ppm/℃以下であり、好ましくは0ppm/℃以上30ppm/℃以下であり、より好ましくは5ppm/℃以上25ppm/℃以下であり、さらに好ましくは7ppm/℃以上21ppm/℃以下である。前記熱膨張係数の測定条件は、後記する実施例に記載のとおりである。ポリイミドフィルムの熱膨張係数は、公知の方法によって調整でき、例えば、延伸処理の倍率、温度条件を調節して得ることができる。
【0050】
本発明に用いるポリイミドフィルムの引張伸度は、PI−LCP複合フィルムの製造後に、液晶ポリマー層の引張伸度を損なわない範囲であれば特に限定されず、液晶ポリマー層の引張伸度と同程度であってもよく、液晶ポリマー層の引張伸度より大きくてもよい。
【0051】
本発明に用いる液晶ポリマー層は、特に限定されないが、液晶ポリマーフィルムの形態が好適である。液晶ポリマーフィルムを構成する液晶ポリマーとしては、特に限定されず、耐熱性の熱可塑性樹脂を使用することができる。前記耐熱性熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーが挙げられる。
【0052】
前記サーモトロピック液晶ポリマーとしては、特に限定されないが、サーモトロピック液晶ポリエステルやサーモトロピック液晶ポリエステルアミド等が挙げられる。
【0053】
サーモトロピック液晶ポリエステル(以下、単に「液晶ポリエステル」という)とは、例えば、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールや芳香族ヒドロキシカルボン酸等のモノマーを主体として合成される芳香族ポリエステルであって、溶融時に液晶性を示すものである。その代表的なものとしては、パラヒドロキシ安息香酸(PHB)と、テレフタル酸と、4,4’−ビフェノールから合成されるI型[下式(1)]、PHBと2,6−ヒドロキシナフトエ酸から合成されるII型[下式(2)]、PHBと、テレフタル酸と、エチレングリコールから合成されるIII型[下式(3)]が挙げられる。
【0055】
液晶ポリエステルとしては、I型〜III型のいずれのものでもよいが、耐熱性、寸法安定性の面からは全芳香族ポリエステル(I型及びII型)が好ましく、鉛フリーの半田付け(例えば260℃で実施される)が可能であり、且つ凹部成形性も良好である点で、I型の液晶ポリエステルが特に好ましい。
【0056】
また、本発明に係る液晶ポリマーとしては、液晶性(特にサーモトロピック液晶性)を示すものであれば、例えば、上記(1)〜(3)式に示すユニットを主体(例えば、液晶ポリマーの全構成ユニット中、50モル%以上)とし、他のユニットも有する共重合タイプのポリマーであってもよい。他のユニットとしては、例えば、エーテル結合を有するユニット、イミド結合を有するユニット、アミド結合を有するユニット等が挙げられる。
【0057】
液晶ポリマーフィルムを得るに当たっては、これを構成する樹脂に応じた公知の各種方法を採用すればよい。また、本発明法において特に好適な上記例示の液晶ポリエステルを用いたフィルムとしては、例えば、BIAC(商品名、株式会社プライマテック製)、ベクスター(商品名、株式会社クラレ製)等の市販品を用いることができる。
【0058】
また、液晶ポリエステルアミドは、他のユニットとしてアミド結合を有する上記液晶ポリエステルが該当し、例えば、下式(4)の構造を有するものが挙げられる。例えば、式(4)中、sのユニット、tのユニット及びuのユニットのモル比が、70/15/15のものが知られている。
【0060】
また、液晶ポリマーフィルムには、上記の液晶ポリマーを含むポリマーアロイを用いてもよい。この場合、液晶ポリマーと混合又は化学結合させるアロイ用ポリマーとしては、融点が220℃以上、好ましくは280〜360℃のポリマー、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート等が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。液晶ポリマーと上記アロイ用ポリマーの混合割合は特に制限されないが、例えば、質量比で10:90〜90:10であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましい。液晶ポリマーを含むポリマーアロイも、液晶ポリマーによる優れた特性を保有し得る。
【0061】
前記液晶ポリマーフィルムにおいて、特に限定されないが、機械搬送方向(MD)及び幅方向(TD)の熱膨張係数が、通常30ppm/℃以下であり、好ましくは0ppm/℃以上30ppm/℃以下であり、より好ましくは5ppm/℃以上25ppm/℃以下であり、さらに好ましくは7ppm/℃以上21ppm/℃以下である。前記熱膨張係数の測定条件は、後記する実施例に記載のとおりである。このように熱膨張係数が調整された液晶ポリマーフィルムの製法は、例えば、特開平10−034742号公報、特開平7−251438号公報に詳細に開示されている。
【0062】
前記液晶ポリマーフィルムの引張伸度は、10%以上であり、好ましくは12%以上であり、より好ましくは15%以上である。
【0063】
液晶ポリマーフィルムの厚みは、要求されるサイズに応じて適宜選択すればよいが、例えば、10μm以上であってもよく、好ましくは50μm以上であってもよく、3mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。厚みが薄すぎると、破れや皺が生じ易くなり、実用性が低下する。厚みが厚すぎると、得られる効果(機械的強度の向上等)が飽和するため、却って無駄な材料を使用することになり、コストや軽量化の面で不利となる。
【0064】
本発明のPI−LCP複合フィルムの製造方法について、以下に説明する。本発明のPI−LCP複合フィルムの製造方法において、まず、接着性を高めるために、ポリイミド樹脂層と、液晶ポリマー樹脂層それぞれの接着面にプラズマ処理を行う。
【0065】
プラズマ処理したポリイミド樹脂層の粗度(Rz)は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、0.1μm以上1.5μm以下が好ましく、0.2μm以上1.0μm以下がより好ましく、0.2μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。粗度(Rz)は、公知の方法で調整できる。
【0066】
プラズマ処理した液晶ポリマー樹脂層の粗度(Rz)は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、0.1μm以上1.5μm以下が好ましく、0.2μm以上1.0μm以下がより好ましく、0.2μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。粗度(Rz)は、公知の方法で調整できる。
【0067】
プラズマ処理は、公知の方法に従って行うことができる。プラズマ処理に使用するガスとしては、特に限定されないが、O
2、N
2、Ar、H
2、NH
3等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
プラズマ処理には、特に限定されず、公知のプラズマ照射装置を使用することができる。プラズマ照射モードとしては、特に限定されず、平行平板型、リモートプラズマ型、大気圧プラズマ型、ICP型高密度プラズマ型等が挙げられる。ガス流量は、特に限定されない。
【0069】
次に、プラズマ処理後のポリイミド樹脂層及び液晶ポリマー樹脂層に、真空乾燥処理を行う。真空乾燥処理には、特に限定されず、公知の真空乾燥機を使用することができる。
【0070】
真空乾燥の温度は、特に限定されないが、25℃〜200℃が好ましく、80℃〜180℃がより好ましい。真空条件で乾燥させることにより、液晶ポリマーが加水分解されず、液晶ポリマー層が脆くなることを防ぐことができる。真空乾燥処理の時間は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されない。
【0071】
続いて、真空乾燥処理後のポリイミド樹脂層及び液晶ポリマー樹脂層を、熱プレス処理することにより、PI−LCP複合フィルムが得られる。
【0072】
熱プレス処理における温度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、十分な接着強度を出すために、200〜500℃が好ましく、250〜450℃がより好ましい。熱プレス処理の時間は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されない。
【0073】
熱プレス処理における圧力は、ポリイミド樹脂層及び液晶ポリマー樹脂層の物性を損なわずに十分な接着強度を出すために、5MPa以下であり、1MPa〜5MPaが好ましく、1MPa〜3MPaがより好ましい。5MPaより高圧でプレスすると、液晶ポリマー樹脂層の熱膨張係数が変化し、ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー樹脂層の熱膨張係数の違いから、カールが発生する。
【0074】
本発明の複合フィルムは接着剤を使用せずとも優れた効果を奏するため、本発明の製造方法において、ポリイミド樹脂層及び液晶ポリマー樹脂層の接着には、接着剤は必須ではないが、本発明の効果を損なわない範囲で接着剤を使用してもよい。
【0075】
以上の構成を有するPI−LCP複合フィルムは、例えば、カットシート状、ロール状等の種々の形状とすることができる。高い生産性を得るためには、長尺に形成されたロール状の形態とし、例えばロール・トゥ・ロール等の方式で連続生産及び連続使用が可能な形態とすることが効率的である。
【0076】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
【実施例】
【0077】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0078】
以下の実施例及び比較例の試料の各物性の測定条件は、以下のとおりである。
【0079】
(引張伸度)
JIS K 7161(1994)に準じて行った。測定にはフィルム強伸度自動測定装置を使用した。試験片は幅10mm×長さ250mmでチャック間100mmとした。クロスヘッド速度300mm/minで引っ張り、破断したときの伸びを測定した。ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー層とを貼り合わせた後の液晶ポリマー層の引張伸度は、接着強度の測定試験後に、剥離した液晶ポリマー層の試験片を用いて、測定した。
引張伸度の減少率は、ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー層とを貼り合わせる前の液晶ポリマー層の引張伸度(X1)、ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー層とを貼り合わせた後の液晶ポリマー層の引張伸度(X2)を用いて、以下の式で算出した。
引張伸度の減少率(%)={(X1−X2)/X1}×100
【0080】
(接着強度)
試験片は幅10mm×長さ
250mmで、引張試験器を使用して、引張角度90度、速度50mm/minで20mm引っ張ったときのポリイミド樹脂層と液晶ポリマー層の接着強度を測定した。
【0081】
(カール)
試験片は5cm四方で、温度25℃(±3℃)、相対湿度60%(±5%)の環境下に1時間静置した後、カール高さ読み取り装置で、4方のカール高さ測定し、もっとも高い数値をカール値とした。
【0082】
(表面粗度)
JIS B 0601(2001)に準じて行った。試験片は幅60mm×長さ180mmで、表面粗さ測定器を使用して表面粗度Rzを測定した。
【0083】
(熱膨張係数測定)
JIS K 7197に準じて行った。試験片は幅5mm×長さ10mmで、島津製作所製TMA−50を使用し、各サンプルを下記条件で加熱した。
1st昇温:室温→300℃(昇温速度10℃/分)
降温 :300℃→35℃(降温速度5℃/分)
2nd昇温:35℃→220℃(昇温速度10℃/分)
熱膨張係数の解析は、2nd昇温での温度範囲100℃〜200℃の条件で行った。
【0084】
[実施例1]
厚さ50μm、熱膨張係数16ppm/℃の‘カプトン200EN’(商品名、東レ・デュポン株式会社製)ポリイミド樹脂層と、厚さ50μm、CTE16ppm/℃、引張伸度16%の液晶ポリマー樹脂層BIAC(商品名、株式会社プライマテック製)の各接着面にプラズマ処理した。ポリイミド樹脂層のプラズマ処理した表面の粗度は0.48μm、液晶ポリマー樹脂層のプラズマ処理した表面の粗度は0.50μmであった。その後、プラズマ処理面を向かい合わせに真空乾燥機に設置し、200℃にて真空処理した。その後、真空のまま、310℃、2MPa、5分熱プレスした。取り出した後の複合フィルムのカールは1mmであった。また、ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー樹脂層の接着強度は1.3N/cmであり、剥離面は液晶ポリマー樹脂層の凝集破壊であった。また、液晶ポリマー樹脂層の引張伸度は14%であった。複合フィルムの熱膨張係数は16ppm/℃であった。
【0085】
[比較例1]
プラズマ処理をしなかった以外は実施例1と全く同様にして、複合フィルムを製造しようと試みた。真空乾燥した後、実施例1と同一のポリイミド樹脂層と液晶ポリマー樹脂層とを310℃、2MPa、5分熱プレスしたが、ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー樹脂層は貼り付かず、複合フィルムにはならなかった。
【0086】
[比較例2]
実施例1で、プラズマ処理した後に真空乾燥処理をしなかった以外は実施例1と全く同様に複合フィルムを製造した。実施例1と同一のポリイミド樹脂層と液晶ポリマー樹脂層とを310℃、2MPa、5分熱プレスしたが、液晶ポリマー樹脂層は加水分解しており、ポリイミド樹脂層と液晶ポリマー樹脂層の接着強度及び液晶ポリマー樹脂層の引張伸度は測定限界(0.1N/cmおよび1%)以下であった。
【0087】
[比較例3]
実施例1と同一のポリイミド樹脂層と液晶ポリマー樹脂層とを用いて、真空乾燥処理後の工程以外は、実施例1と全く同様に、プラズマ処理及び真空乾燥処理を行った。真空乾燥した後、295℃、10MPa、15分の条件で、熱プレスしたところ、取り出した後の複合フィルムのカールは30mmであった。また、液晶ポリマー樹脂層の引張伸度は5%であり、引張伸度の減少率は、69%であった。
【0088】
上記結果から、本発明のポリイミド樹脂−液晶ポリマー複合フィルムは、積層前のLCPの物性を維持し、優れた寸法安定性を有するため、カールを抑制することができることが確認できた。また、本発明によれば、ポリイミド樹脂−液晶ポリマー複合フィルムの液晶ポリマー層と、ポリイミド樹脂層の熱膨張係数を一致させることができる。