特許第6340712号(P6340712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6340712
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】吐出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 53/00 20060101AFI20180604BHJP
   B65D 35/02 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   B65D53/00 100
   B65D35/02 K
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-17363(P2014-17363)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143127(P2015-143127A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】岸上 晴男
【審査官】 二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−226051(JP,A)
【文献】 特開2006−36218(JP,A)
【文献】 特開2006−306459(JP,A)
【文献】 特開2000−238825(JP,A)
【文献】 特開2000−247351(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/117771(WO,A1)
【文献】 特開昭62−52047(JP,A)
【文献】 特開2010−64779(JP,A)
【文献】 特開2004−83086(JP,A)
【文献】 特開2003−175954(JP,A)
【文献】 特開昭51−117773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 53/00
B65D 35/02
B65D 47/36
B65D 35/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体(2)の口筒部(3)に装着されるキャップ(10)と、貫通孔(7c)を有すると共に前記口筒部(3)と前記キャップ(10)との間に設けられて前記口筒部(3)の先端に嵌着される中栓(7)とを備えた吐出容器であって、
前記キャップ(10)と前記中栓(7)との間が第1シール材(8)で封止され、且つ前記中栓(7)と前記口筒部(3)の先端との間が環状の第2シール材(9)で高周波融着されていることを特徴とする吐出容器。
【請求項2】
第1シール材(8)が中栓(7)の上面に設けられ、第2シール材(9)が前記中栓(7)の下面に設けられると共に、前記第1シール材(8)と前記第2シール材(9)とが前記中栓(7)の上下面において対向配置されている請求項1記載の吐出容器。
【請求項3】
第2シール材(9)を、金属箔と該金属箔を被覆する熱融着性の合成樹脂フィルムで構成した請求項1又は2記載の吐出容器。
【請求項4】
第1シール材(8)が、中栓(7)の表面に周設された凸部(7d)の上に固着されている請求項1乃至3のいずれか一項の記載の吐出容器。
【請求項5】
中栓(7)の下面に、口筒部(3)の先端を挿入する外環部(7a)と内環部(7b)を形成すると共に、外環部(7a)と内環部(7b)との間に第2シール材(9)を配置した請求項2乃至4のいずれか一項に記載の吐出容器。
【請求項6】
キャップ(10)を、口筒部(3)に装着されるキャップ本体(11)と、該キャップ本体(11)の頂壁(11A)に突設された吐出ノズル(11a)と、該吐出ノズル(11a)を塞ぐ蓋体(12)とを有する構成とした請求項1乃至のいずれか一項に記載の吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口筒部とキャップとの間に中栓を有する吐出容器に関し、特には密封性を保持できるようにした吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一つの容器において、少量吐出と多量吐出といった異なる吐出方法を可能とする吐出容器が存在する。特許文献1に記載の吐出容器では、注出キャップ13を外した状態で容器14の口部に設けられた中栓15の星形状の開口部18から内容物を多量吐出させることができ、また注出キャップ13を装着するとキャップボディ2の上部に一体的に形成された略円錐状の注出口から内容物を少量ずつ吐出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−175954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような吐出容器において、異物混入防止、無菌状態の保持、あるいは酸化による劣化防止等を図るべく気密性を高めて内容物が外気に触れないようにするためには、シール材を中栓に固着して密封することが必要となる。
【0005】
しかしながら、例えば口筒部の口内仕上げができないことから口内径寸法が安定しない吐出容器にあっては、単にシール材を中栓に固着しただけでは気密性に不具合が生じる虞があった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、キャップと口筒部の先端との間に中栓を有する吐出容器において、キャップと中栓との間の気密性を保持できることに加え、中栓と口筒部の先端との間の気密性をも保持できるようにして容器全体の気密性を向上させた吐出容器を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる構成は、
容器本体の口筒部に装着されるキャップと、貫通孔を有すると共に口筒部とキャップとの間に設けられて口筒部の先端に嵌着される中栓とを備えた吐出容器であって、
キャップと中栓との間が第1シール材で封止され、且つ中栓と口筒部の先端との間が環状の第2シール材で高周波融着されていることを特徴とする、と云うものである。
【0008】
本発明の主たる構成では、第1シール材がキャップと中栓との間を封止し、第2シール材が中栓と口筒部の先端との間の封止を達成する。
また第2シール材は環状であることから、第2シール材を円盤状として口筒部全体を封止する場合に比較し、口筒部の先端のみに接着することで内容物が通る口筒部内を遮蔽せずに中栓と口筒部との間の封止を達成し得る。
また本発明の他の構成は、主たる構成に、第1シール材が中栓の上面に設けられ、第2シール材が中栓の下面に設けられると共に、第1シール材と第2シール材とが中栓の上下面において対向配置されている、との構成を加えたものである。
【0009】
また本発明の他の構成は、主たる構成に、第2シール材を、金属箔とこの金属箔を被覆する熱融着性の合成樹脂フィルムで構成したことを加えたものである。
【0010】
この構成では、ガスバリア性を確保し、高周波による金属箔の発熱により樹脂フィルムを融着させることで中栓と口筒部の先端との間の封止を達成する。
【0013】
また本発明の他の構成は、上記いずれかの構成に、第1シール材が、中栓の表面に周設された凸部の上に固着されている、との構成を加えたものである。
また本発明の他の構成は、上記いずれかの構成に、中栓の面に、口筒部の先端を挿入する外環部と内環部を形成すると共に、外環部と内環部との間に第2シール材を配置したとの構成を加えたものである。
【0014】
上記構成では、第2シート材と口筒部の先端とが位置決めされて当接することになるため、より高度な気密性の保持を達成し得る。
【0015】
また本発明の他の構成は、上記いずれかの構成に、キャップを、口筒部に装着されるキャップ本体と、キャップ本体の頂壁に突設された吐出ノズルと、吐出ノズルを塞ぐ蓋体とを有する構成としたことを加えたものである。
【0016】
上記構成では、キャップを外した状態では貫通孔からの内容物の多量吐出を達成し、またキャップを装着した状態では吐出ノズルを介しての少量ずつの吐出を達成し得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
【0018】
第1シール材がキャップと中栓との間を封止し、第2シール材が中栓と口筒部の先端との間を封止するため、口筒部とキャップとの間に中栓を備える容器全体の気密性を向上させることができる。
【0019】
またキャップを外すことにより、貫通孔から内容物の多量に吐出することができ、またキャップを装着することにより内容物を吐出ノズルから少量ずつ吐出することのできる吐出容器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の吐出容器の実施例を示す正面図である。
図2】Aは吐出容器の側面図、Bはその底面図である。
図3】口筒部とキャップの主要部を拡大して示す断面図である。
図4】口筒部の先端に嵌着される中栓の構成を示す斜視図である。
図5】キャップを取り外した状態を示す口筒部の断面図である。
図6】キャップの開蓋状態を示す口筒部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
先ず吐出容器1の構成について説明する。図1及び図2に示すように、本発明の吐出容器1は、液状、顆粒状など様々な性状の内容物を吐出することが可能であるが、特には高粘性、半固形状あるいはゼリー状の内容物に適する吐出容器である。
【0023】
吐出容器1はスクイズ性を備えた容器本体2と、容器本体2の先端に設けられた口筒部3(図3参照)に装着されるキャップ10とを有して構成されている。容器本体2は例えばEVOH積層などの合成樹脂材料からなるパリソンを延伸ブロー成形することにより形成されたものであり、口筒部3から下方に向かって拡径状に延びる肩部4、肩部4から下方に向かって連続的に形成された胴部5及び胴部5の下端に略四角形状に形成された底部6を有して形成されている。
【0024】
図3に示すように、口筒部3の基端側の外周面3Aにはキャップ10が螺合するためのネジ山3aが形成され、先端側の外周面3Bには外径方向に突出する係止凸部3bが周設されている。
【0025】
口筒部3の先端には中栓7が嵌着されている。図3及び図4に示すように中栓7は合成樹脂を射出成形することにより形成されたものであり、円盤状の栓頂部7Aと栓頂部7Aの外縁部から垂下設された外環部7aと、外環部7aよりも中心側に垂下設された内環部7bとを有すると共に、栓頂部7Aの中心部には、内容物を吐出するための太口状の貫通孔7cが形成されている。なお、この実施例に示す貫通孔7cの形状は星型であるが、この形状に限られるものではない。
【0026】
また貫通孔7cの周囲には、栓頂部7Aの表面から上方に向かって円環状に突出する凸部7dが周設されており、この凸部7dの上に第1シール材8が固着されている。この第1シール材8は例えば合成樹脂フィルム製のシール材である。第1シール材8が凸部7dに固着されて貫通孔7cを塞ぐことにより、中栓7とキャップ10との間の気密性を保持することが可能となっている。なお、外環部7aの内周面には容器本体2の中心方向に突出する係止凸部7eが周設されている。
【0027】
中栓7下面の平面部7Bで且つ外環部7aと内環部7bとの間には、円環状からなる第2シール材9が配置されている。第2シール材9は、ガスバリア性に優れたアルミニウムなどからなる円環状の金属箔を主体とし、この金属箔の周囲を熱融着性の合成樹脂フィルムで被覆した構成であり、合成樹脂フィルムが容器本体2側の口筒部3の先端と中栓7下面の平面部7Bに熱融着することにより、中栓7と口筒部3の先端との間の気密性を保持することが可能となっている。
【0028】
キャップ10は、キャップ本体11と、このキャップ本体11に対してヒンジ13を介して回動自在に連結された蓋体12とを有して構成される。キャップ本体11の頂壁11Aには細口状の吐出ノズル11aが突設されており、吐出ノズル11aの下端は第1シール材8を間に挟んで中栓7の貫通孔7cと対向している。なお、吐出ノズル11aの開口面積は、貫通孔7cの開口面積よりも小さい。またキャップ本体11の内周面には、口筒部3の基端側の外周面3Aに形成されたネジ山3aに螺合するネジ溝11bが形成されている。
【0029】
蓋体12の下面には円筒状に下垂設された外筒部14が突設されている。この外筒部14は閉蓋状態において吐出ノズル11aを外装することにより、吐出ノズル11aを塞いで内容物の吐出を防止する。なお、蓋体12の正面には、蓋体12の開閉動作を補助するための摘み片15が形成されている。
【0030】
次に、中栓7及びキャップ10の容器本体2の口筒部3への取り付け方法について説明する。
【0031】
最初に、中栓7の栓頂部7Aに第1シール材8を固着すると共に、栓頂部7A下面の外環部7aと内環部7bとの間に第2シール材9を挿入して配置し、この状態の中栓7をキャップ本体11内の頂壁11Aの下面にセットする。
【0032】
次に容器本体2内に内容物を口筒部3を通じて充填する。
【0033】
最後に、中栓7を有するキャップ10を充填後の容器本体2の口筒部3に螺着により装着する。このとき中栓7の係止凸部7eと口筒部3の係止凸部3bとがアンダーカット結合し、中栓7が口筒部3の先端に強固に嵌着される。同時に中栓7の外環部7aと内環部7bとの間に口筒部3の先端が挿入されるため、口筒部3の先端と中栓7下面の平面部7Bとの間に第2シート材9を確実に介在させることができる。そして、この状態において外部から高周波誘導加熱を施し、第2シール材9内の金属箔を高温加熱すると、金属箔を覆う合成樹脂フィルムが溶融させられ、容器本体2側の口筒部3の先端と中栓7下面の平面部7Bに熱融着する。
【0034】
このとき、例えば口筒部3の成形精度に誤差あったとしてもその部分も一緒に溶融して第2シール材9を口筒部3の先端に確実に熱融着させることが可能であり、これにより中栓7と口筒部3の先端との間を完全に密封する状態とすることができる。
【0035】
例えば、ブロー成形時に口筒部3の先端に風船状の封止頭部が一体に設けられる容器本体2に好適である。このような容器本体2は、充填直前に封止頭部を切除することで異物混入防止、無菌状態の保持、あるいは酸化による劣化防止等を図るようにしたものであるが、切除後の口筒部3に対する口内仕上げが不十分となる虞がある。しかし、そのような場合であっても口筒部3の先端に第2シール材9が熱融着することで十分な気密性を保持することができる。
【0036】
次に、吐出容器1の使用方法について説明する。
【0037】
図5に示すように、キャップ10を螺脱させて取り外し、中栓7が嵌着されている口筒部3を露出させる。そして、中栓7の栓頂部7Aを覆う第1シール材8を剥離させることにより、貫通孔7cを開口させることができる。この状態から容器本体2をスクイズすることにより、太口状の貫通孔7cから内容物を多量に吐出させることが可能となる。
【0038】
また図6に示すように、第1シール材8を剥がした状態の口筒部3にキャップ10を再装着し、蓋体12を回動させて開蓋状態とすることにより、細口状の吐出ノズル11aから内容物を少量ずつ吐出させることが可能となる。
【0039】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0040】
例えば、上記実施例では、第1シール材8を合成樹脂フィルム製のシール材として説明したが、固着後に手で剥がすことが可能な剥離性を備えたシール材であればどのようなものでもよい。
【0041】
また、上記実施例では、第1シール材8を予め中栓の上面に固着し、第2シール材9についてはキャップを装着後に高周波融着する構成を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、中栓7の上下の面に第1シール材8と第2シール材9とをそれぞれセットしたキャップ10を口筒部3に装着した状態として高周波誘導加熱することにより、2つのシール材を同時に熱融着させる構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、高い気密性を要する吐出容器の分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 : 吐出容器
2 : 容器本体
3 : 口筒部
3A : 基端部の外周面
3B : 先端側の外周面
3a : ネジ山
3b : 係止凸部
4 : 肩部
5 : 胴部
6 : 底部
7 : 中栓
7A : 栓頂部
7B : 平面部
7a : 外環部
7b : 内環部
7c : 貫通孔
7d : 凸部
7e : 係止凸部
8 : 第1シール材
9 : 第2シール材
10 : キャップ
11 : キャップ本体
11A: 頂壁
11a: 吐出ノズル
12 : 蓋体
13 : ヒンジ
14 : 外筒部
15 : 摘み片
図1
図2
図3
図4
図5
図6