特許第6340869号(P6340869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6340869高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法、及び原料副装入設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6340869
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法、及び原料副装入設備
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20180604BHJP
   C21B 7/08 20060101ALI20180604BHJP
   C21B 7/18 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   C21B5/00 311
   C21B7/08
   C21B7/18 303
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-70498(P2014-70498)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190047(P2015-190047A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 貴
(72)【発明者】
【氏名】栗田 泰司
(72)【発明者】
【氏名】古川 雄大
(72)【発明者】
【氏名】溝口 博之
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−279818(JP,A)
【文献】 特開昭54−120206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 3/00〜 5/06
C21B 11/00〜15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉本体の炉頂に原料主装入設備と原料副装入設備とを併設しておき、前記原料主装入設備により原料を高炉に装入する主装入期間の間の主装入停止期間を副装入期間として、その副装入期間に、前記原料副装入設備により高炉に原料を装入する高炉操業であって、
かつ前記原料副装入設備として、原料を一旦貯留するとともに、高炉内圧力と同等の圧力とするための均圧ホッパーと、その均圧ホッパーの下端の出口側に設けられて、均圧ホッパーからの原料の流出を開閉制御する切出ゲートと、その切出ゲートの出口側から原料を高炉の炉内に導く最終装入流路とを有する設備を用いる高炉操業において、
前記副装入期間に、前記切出ゲートを閉止状態から開方向に動作させるにあたって、全開状態に至らない中間開度まで前記切出ゲートを開放させた状態で、切出ゲートの開方向動作を一時的に停止させ、その中間開度のまま所定時間保持した後、切出ゲートを全開開度まで開動作させることを特徴とする高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法において、
ある副装入期間において、前記最終装入流路内を原料が通過する際の流路の振動もしくは衝撃の大きさを検出し、その大きさが、予め定めた閾値を越えた場合に、次の副装入期間における中間開度で保持する時間を延長して、前記次の副装入期間での原料副装入を行うことを特徴とする高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法において、
前記最終装入流路内を原料が通過する際の流路の振動もしくは衝撃を検出し、その振動もしくは衝撃の大きさに応じて、前記中間開度の値を予め設定しておき、
前記副装入期間中に、前記最終装入流路内を原料が通過する際の流路の振動もしくは衝撃の大きさを検出し、その大きさが、予め定めた閾値を越えた場合に、次の副装入期間における中間開度で保持する時間を延長して、前記次の副装入期間での原料副装入を行うことを特徴とする高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法。
【請求項4】
高炉本体の炉頂に原料主装入設備と並んで設けられた原料副装入設備であって、
かつ原料を一旦貯留するとともに、高炉内圧力と同等の圧力とするための均圧ホッパーと、その均圧ホッパーの下端の出口側に設けられて、均圧ホッパーからの原料の流出を開閉制御する切出ゲートと、その切出ゲートの出口側から原料を高炉の炉内に導く最終装入流路とを備えた原料副装入設備において、
最終装入流路内を原料が通過する際の流路の振動もしくは衝撃を検出するためのセンサと、
前記切出ゲートを開閉駆動するためのゲート駆動装置と、
前記センサからの検出信号が入力されて前記ゲート駆動装置の開閉動作を制御するためのゲート制御装置と
を有し、
前記ゲート制御装置は、前記センサからの検出信号のレベルに応じて前記切出ゲートに全開状態に至らない中間開度及びその中間開度での保持時間を設定するように構成され、これらの設定値にしたがって切出ゲートの動作を制御することを特徴とする原料副装入設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の炉頂から製鉄原料を装入するための原料装入設備、特に原料主装入設備と原料副装入設備とを備えた原料装入設備において、原料副装入設備の切出ゲートを制御するための、高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法、及びその制御方法を実施するための原料副装入設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、製鉄用の高炉においては、鉄鉱石などの鉄源材料と、還元材、例えばコークスなどを炉頂の原料装入設備から炉内に投入し、高炉の下部の羽口から熱風を吹き込んで、高温で鉄源材料を還元することが行われる。ここで炉頂から鉄鉱石やコークスなどの製鉄原料を装入するための原料装入設備としては、主装入設備と副装入設備とを併設している。そして通常の高炉操業時においては、主として主装入設備から鉄鉱石やコークスなどの原料を装入し、炉内の径方向中心部の装入物分布調整として、主装入設備からの装入バッチ間(装入と装入の間)に、副装入設備から例えばコークスなどを炉内の径方向中心部に装入することが行われている。したがって、実際の高炉操業においては、高炉炉内への原料装入は、主装入設備からの装入と、副装入設備からの装入とが交互に繰り返して行われることになる。以下本明細書においては、主装入設備から高炉の炉頂に原料を装入する期間を主装入期間と称し、主装入期間の間のインターバルの期間(主装入停止期間)において副装入設備から原料を装入する期間を、副装入期間と称することとする。
【0003】
上述のような主装入設備と副装入設備とを併設した高炉の全体構成の概略を図1に示す。
図1において、高炉本体1の頂部には、原料主装入設備2と、原料副装入設備3とが設置されており、また高炉本体1の下部の炉腹には羽口4が設けられている。鉄鉱石やコークスなどの製鉄原料は、原料搬送コンベヤ5によって炉頂の上方まで搬送されて、原料主装入設備2と原料副装入設備3に投入され、これらの装入設備2、3によって炉頂から高炉本体1の炉内に装入される。なお原料主装入設備2から装入した鉄鉱石とコークスは、交互に層状となるように装入されるのが通常である。
【0004】
さらに図2には、原料副装入設備3の具体的な構成の一例を示す。
図2において、原料副装入設備3の最上部には、前述の原料搬送コンベヤ5から高炉本体の炉頂上方に搬送されてきた原料が貯留される貯留ホッパー11が配設されている。貯留ホッパー11の下部には、切出フィーダー12が配設されており、この切出フィーダー12の一端側の下部には、秤量ホッパー13が配設されている。秤量ホッパー13の下端は、秤量ホッパー切出ゲート14および均圧ホッパー上部シール弁15を介して均圧ホッパー16に連結されている。この均圧ホッパー16は、その内圧が、高炉本体内の圧力と同等の圧力となるように加圧可能に構成されている。均圧ホッパー16の下端(出口側)は、均圧ホッパー切出ゲート17及び均圧ホッパー下部シール弁18を介して、最終装入流路19に連結されている。この最終装入流路19は、均圧ホッパー下部シール弁18に続く鉛直管路19Aと、その鉛直管路19Aの下端に連続しかつ水平面に対して90度未満の角度で傾斜する投入シュート19Bとによって構成されており、投入シュート19Bの傾斜下方の先端部は、高炉本体内に挿入される。
【0005】
このような原料副装入設備3における原料装入動作は次の通りである。
予め、副装入期間として副装入設備からの装入を開始する以前の段階、すなわち副装入期間に至る前の段階において、装入すべきコークスなどの原料を、原料搬送コンベヤ5によって高炉本体の炉頂上方に搬送し、貯留ホッパー11に一旦貯留する。そして切出フィーダー12を経て秤量ホッパー13に移送し、秤量して予め定めた量(副装入量)だけ秤量ホッパー13内に原料を貯留しておく。なおこの状態では、秤量ホッパー切出ゲート14および均圧ホッパー上部シール弁15は閉止されている。
【0006】
さらに、副装入期間に至る前の主装入期間期間中に、秤量ホッパー13内の所定量の原料を、均圧ホッパー16内に移送し、均圧ホッパー16内を高炉内圧力と同等の圧力に加圧して、待機させておく。この均圧ホッパー16内への移送段階および均圧ホッパー加圧段階の制御(準備段階の制御)については、後に改めて説明する。なおこの加圧‐待機状態では、均圧ホッパー16の上流側の秤量ホッパー切出ゲート14および均圧ホッパー上部シール弁15は閉止されており、また均圧ホッパー16の下流側の均圧ホッパー切出ゲート17および均圧ホッパー下部シール弁18も閉止されている。
【0007】
そして主装入設備2からの原料の装入が終わって(主装入期間が終了して)、副装入期間として副装入設備3からの装入を開始するにあたっては、均圧ホッパー下部シール弁18を開放させてから、均圧ホッパー切出ゲート17を開放させる。これによって均圧ホッパー16内の原料は、均圧ホッパー切出ゲート17および均圧ホッパー下部シール弁18を経て、鉛直管路19Aおよび投入シュート19Bからなる最終装入流路19を通り、高炉本体内の中心部に投入される。
【0008】
このようにして均圧ホッパー16内の原料がすべて排出されて、副装入設備3から高炉への原料装入が終了した後には、続いて主装入設備2からの装入が開始される(主装入期間)とともに、次回の副装入設備3からの装入に備えるための準備動作制御に移行する。
すなわち、均圧ホッパー切出ゲート17を閉止してから均圧ホッパー下部シール弁18を閉止し、その状態で均圧ホッパー16内を、大気圧まで減圧させる。次いで均圧ホッパー上部シール弁15を開放させ、さらに秤量ホッパー切出ゲート14を開放させる。これによって秤量ホッパー13内の所定量の原料が、均圧ホッパー16内に装入される。その後は、秤量ホッパー切出ゲート14を閉止し、さらに均圧ホッパー上部シール弁15を閉止した後、均圧ホッパー16内の圧力を高炉の炉内圧と同等となるまで加圧して、次の副装入期間に備える。
【0009】
ところで均圧ホッパー16の下端から、均圧ホッパー切出ゲート17および均圧ホッパー下部シール弁18を経て、鉛直管路19Aおよび傾斜した投入シュート19Bからなる最終装入路19を経て、高炉本体内に原料を装入する過程では、最終装入路19内で原料が円滑に流れず、原料の流れが停滞してしまうこと、すなわち詰りが生じることがある。特に均圧ホッパー下部シール弁18の出口に連続する鉛直管路19Aの下端から投入シュート19Aの上部にかけての部分では、流路が曲がっているため、原料の流れが停滞して、その箇所19Cで詰りが生じやすい。このような原料の詰りが生じれば、予め定めた量の原料が高炉本体内に装入されなくなったり、装入速度が遅くなって、所定の時間内に予め定めた量の原料が高炉本体に装入されなくなってしまう。そのため、例えば生産効率が低下したり、あるいは還元材不足などの問題が生じてしまう。
したがって、上述のような原料副装入設備における原料詰りの問題を解決する手法の確立が要望されている。
【0010】
ここで、上述のような最終装入流路の曲り箇所での詰りは、原料の単位時間当たりの流量が大きいほど生じやすくなり、また急激に流速が大きくなったときに発生しやすくなる、という傾向を示すことが確認されている。すなわち、最終装入流路原料の詰りの発生は、均圧ホッパー切出ゲートから切出される原料の流出速度、流量の影響を受けると考えられるから、均圧ホッパー切出ゲートを適切に制御することによって、詰りの発生を防止し得る可能性があると考えられる。
【0011】
ところでホッパー内の材料をホッパーから定量供給するための排出ゲートを備えたゲート装置についての従来技術としては、特許文献1には、高炉の原料装入設備ではないが、排出ゲートの開度を調整する技術が示されている。またこの特許文献1には、ゲートの開度増減速度、すなわちゲートの開時のゲート開放速度を調整することも記載されている。
一方、高炉の原料装入設備としては、副装入設備ではないが、特許文献2には、ホッパーの下端から炉頂に向けて原料を切出すためのゲートの開度と、原料排出速度との関係を求めておき、設定すべき原料排出速度に応じてゲート開度を調整する技術が示されている。
【0012】
これらの従来技術を、高炉の原料副装入設備に適用し、均圧ホッパー切出ゲートの開度あるいはゲート開放速度を調整することによって、ホッパーからの原料流出速度(単位時間当たりの流量)を適切に調整し、詰りの発生を防止することが考えられる。
【0013】
しかしながら、詰りの発生防止のために、均圧ホッパー切出ゲートの開度あるいはゲート開放速度の調整のみを行った場合、実操業では高炉操業の生産効率の低下が生じたり、別の箇所での新たな詰りの発生を招いてしまう問題がある。
【0014】
すなわち、既に述べたように、最終装入流路の曲り箇所での詰りは、原料の単位時間当たりの流量が大きいほど生じやすくなり、また急激に流速が大きくなったときに発生しやすくなる、という傾向を示すことから、均圧ホッパーから原料を切出す際の均圧ホッパー切出ゲート開放時の開度を小さく設定して、均圧ホッパーからの原料の単位時間当たりの流出流量を小さく設定したり、切出ゲートの開放速度(全開に至るまでにゲートが開く速度)を遅く設定することによって、急激に流速、流量が大きくなることを回避すれば、最終装入流路の曲り箇所での詰りの発生を防止することが可能ではある。しかしながらそれらの場合には、均圧ホッパー内の原料をすべて排出するために長時間を要してしまう。すなわち副装入期間が長くなってしまう。
【0015】
ここで、副装入設備からの原料の装入は、主装入設備からの装入の期間(主装入期間)のインターバル、すなわち主装入休止期間に行うが、副装入期間が長くなることは、主装入と副装入とがラップすることを意味する。そのため、装入物分布において副装入によるコークス装入位置が不安定となり、炉内ガス流れ変動を惹起し、その結果、高炉操業の不安定化を招き、生産効率が低下する。
【0016】
また一方、均圧ホッパー切出ゲート開放時の開放速度を小さくしたり、あるいは開度を小さく設定したりすれば、切出ゲートの上面側や均圧ホッパー内で、いわゆる棚吊り(ブリッジ)が生じて、原料が円滑に流出しなくなってしまうことがある。すなわち、先述のような最終装入流路の曲り箇所での詰りは回避されても、別の箇所で詰りが発生してしまうおそれがある。
【0017】
このような理由から、単純に均圧ホッパー切出ゲートの開放速度を遅くしたり、あるいはその開度を小さく設定したりすることによって原料の詰りを防止しようとする方策は、実操業に適用するには問題があった。
なお、前述のような特許文献1、2においては、高炉頂部への原料装入設備、とりわけ副装入設備における切出ゲートについて、その開度もしくは開放速度と、詰り発生との関係や生産効率との関係については全く考慮されておらず、したがって特許文献1、2に示されている技術を、そのまま高炉の副装入設備に適用しても、問題の基本的解決には至らない。すなわち、切出ゲートの開度や開放速度をどのように調整すれば、高炉の生産効率を低下させることなく、詰りの発生を防止し得るかは、これらの特許文献1、2からは推測することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007−131401号公報
【特許文献2】特公平4−38804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、副装入設備から高炉の炉頂に原料を装入するにあたって、最終装入流路での原料の停滞、詰りの発生を確実かつ安定して防止し得る方法、特に切出ゲートの制御方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の課題を解決するために本発明者等が種々実験・検討を重ねた結果、均圧ホッパーからの原料の流出を開閉制御する切出ゲートの制御方法として、副装入期間に、切出ゲートを閉止状態から開方向に動作させるにあたって、全開状態に至らない中間開度まで切出ゲートを開放させた状態で、切出ゲートの開方向動作を一時的に停止させ、その中間開度のまま所定時間保持した後、切出ゲートを全開開度まで開動作させることによって、高炉操業の生産効率を損なうことなく、また新たな別の箇所での詰りの発生を招くことなく、均圧ホッパーから高炉に至る装入流路での詰りの発生を防止し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
また、切出ゲートから高炉に至るまでの最終装入流路内を原料が通過する際の流路の振動や衝撃の大きさが、原料の流速(単位時間当たりの流量)に対応することに着目し、その振動もしくは衝撃の大きさを検出(具体的には、例えば音響センサによる振動音、衝撃音の大きさの検出、または振動計などによる直接の振動・衝撃の検出)して、その振動・衝撃の大きさに応じて、前記中間開度で保持する時間などを制御することによって、より適切に、高炉操業の生産効率を損なうことなく確実かつ安定して詰りの発生を防止し得ることを見出した。
【0021】
具体的には、本発明の基本的な態様(第1の態様)の高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法は、
高炉本体の炉頂に原料主装入設備と原料副装入設備とを併設しておき、前記原料主装入設備により原料を高炉に装入する主装入期間の間の主装入停止期間を副装入期間として、その副装入期間に、前記原料副装入設備により高炉に原料を装入する高炉操業であって、
かつ前記原料副装入設備として、原料を一旦貯留するとともに、高炉内圧力と同等の圧力とするための均圧ホッパーと、その均圧ホッパーの下端の出口側に設けられて、均圧ホッパーからの原料の流出を開閉制御する切出ゲートと、その切出ゲートの出口側から原料を高炉の炉内に導く最終装入流路とを有する設備を用いる高炉操業において、
前記副装入期間に、前記切出ゲートを閉止状態から開方向に動作させるにあたって、全開状態に至らない中間開度まで前記切出ゲートを開放させた状態で、切出ゲートの開方向動作を一時的に停止させ、その中間開度のまま所定時間保持した後、切出ゲートを全開開度まで開動作させることを特徴とするものである。
【0022】
さらに本発明の第2の態様の高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法は、前記第1の態様の切出ゲート制御方法において、
ある副装入期間において、前記最終装入流路内を原料が通過する際の流路の振動もしくは衝撃の大きさを検出し、その大きさが、予め定めた閾値を越えた場合に、次の副装入期間における中間開度で保持する時間を延長して、前記次の副装入期間での原料副装入を行うことを特徴とするものである。
【0023】
さらに本発明の第3の態様の高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法は、前記第1の態様の切出ゲート制御方法において、
前記最終装入流路内を原料が通過する際の流路の振動もしくは衝撃を検出し、その振動もしくは衝撃の大きさに応じて、前記中間開度の値を予め設定しておき、
前記副装入期間中に、前記最終装入流路内を原料が通過する際の流路の振動もしくは衝撃の大きさを検出し、その大きさが、予め定めた閾値を越えた場合に、次の副装入期間における中間開度で保持する時間を延長して、前記次の副装入期間での原料副装入を行うことを特徴とするものである。
【0024】
さらに本発明の第4の態様では、上記の高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法を実施するために使用される高炉の原料副装入設備を規定している。
【0025】
すなわち本発明の第4の態様の原料副装入設備は、
高炉本体の炉頂に原料主装入設備と並んで設けられた原料副装入設備であって、
かつ原料を一旦貯留するとともに、高炉内圧力と同等の圧力とするための均圧ホッパーと、その均圧ホッパーの下端の出口側に設けられて、均圧ホッパーからの原料の流出を開閉制御する切出ゲートと、その切出ゲートの出口側から原料を高炉の炉内に導く最終装入流路とを備えた原料副装入設備において、
最終装入流路内を原料が通過する際の流路の振動もしくは衝撃を検出するためのセンサと、
前記切出ゲートを開閉駆動するためのゲート駆動装置と、
前記センサからの検出信号が入力されて前記ゲート駆動装置の開閉動作を制御するためのゲート制御装置と
を有し、
前記ゲート制御装置は、前記センサからの検出信号のレベルに応じて前記切出ゲートに全開状態に至らない中間開度及びその中間開度での保持時間を設定するように構成され、これらの設定値にしたがって切出ゲートの動作を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の高炉操業における原料副装入設備の切出ゲート制御方法によれば、切出ゲートから高炉内に至る最終装入流路、特に曲り箇所での原料の詰り、停滞の発生を未然に防止することが可能となるばかりでなく、他の箇所、例えば切出ゲートの上面側や均圧ホッパー内での原料の停滞を招かずに、副装入期間の無駄な長時間化を回避して、主装入と副装入とがラップすることによる高炉操業の不安定化を防止し、ひいては高炉の生産効率の低下を防止することができる。また本発明の原料副装入設備を用いれば、上記のような切出ゲート制御方法を、高炉の実操業に適用して、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】高炉の炉頂への原料装入設備を主体として高炉設備の全体構成の一例を概略的に示す模式図である。
図2図1における原料副装入設備の構成の一例を、より具体的に示す模式図である。
図3】従来の原料副装入設備における切出ゲートの制御の一例について、ゲート開度及び原料流量と、経過時間との関係を示す線図である。
図4】従来の原料副装入設備における切出ゲートの制御の他の例について、ゲート開度及び原料流量と、経過時間との関係を示す線図である。
図5】本発明における切出ゲートの制御の基本的な制御方法の一例について、ゲート開度及び原料流量と、経過時間との関係を示す線図である。
図6】本発明の切出ゲート制御方法を実施するための原料副装入設備の構成の一例を示す模式図である。
図7】本発明の切出ゲート制御方法を実施するにあたって、中間開度を設定する段階の一例を示すフロー図である。
図8】本発明の切出ゲート制御方法を実施するにあたっての切出ゲートの制御の一例を示すフロー図である。
図9】本発明の切出ゲート制御方法を実施した場合の切出ゲートの開度及び原料流量と、経過時間との関係を示す線図である。
図10】比較例1及び実施例1、2の結果として、均圧ホッパーの出口の切出ゲートの開放動作開始からの経過時間と、音響センサによる検出音量との関係を示すグラフである。
図11】実施例3の結果として、均圧ホッパーの出口の切出ゲートの開放動作開始からの経過時間と、音響センサによる検出音量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0029】
まず、本発明のゲート制御方法を説明する前に、図1図2に示した従来の原料副装入設備における均圧ホッパー切出ゲートの動作状況及びその制御状況について、図3図4を参照して説明する。なお以下の説明において、均圧ホッパー切出ゲート17は、単に切出ゲート17と記すこととする。そのほか、各部の要素については、図1図2に示した要素についての符号と同じ符号を付す。
【0030】
図3の実線L1は、切出ゲート17の開度及び開放速度の制御を行わない従来の一般的なケースにおいて、切出ゲート17の開方向動作を時刻Tに開始してからの切出ゲート17の開度の推移を示し、破線L2は、その場合の切出ゲート17から流出する原料の単位時間当たりの流量の推移を示す。
【0031】
この場合、実線L1で示すように、切出ゲート17を閉止状態(開度0%)から、時刻Tでの全開(開度100%)まで、切出ゲート17の開放速度は一定であり、全開後、所定時間経過後の時刻Tにおいて切出ゲート17の閉方向動作を開始し、時刻Tにおいて閉止完了に至る。一方、破線L2で示すように、切出ゲート17の開方向動作(時刻T)から若干遅れたタイミング(時刻T)で、切出ゲート17からの原料の流出が開始され、時刻Tで全開(開度100%)となるまで流量は急激に増大し、その後も原料の排出が終わるまで流量が増大し続けて、最大流量値Fmaxに至る。その後、時刻Tにおいて流量が零となった後、時刻Tで切出ゲート17の閉方向動作が開始され、時刻Tで切出ゲート17の閉止が完了する。
【0032】
上記の過程において、切出ゲート17からの流出流量は、ゲート全開保持期間末期に最大となる傾向を示すが、その最大流量値Fmaxが過大となれば、既に述べたように、最終投入流路19における曲り箇所19Cで、詰りが発生することがある。このように曲り箇所19Cにおいて詰りが発生するおそれがある最小の流量を、ここでは詰り発生限界流量Fと称する。
【0033】
図3に示しているように、最大流量値Fmaxが、詰り発生限界流量Fを超えるような状況では、曲り箇所19Cで、詰りが発生するおそれがあるから、このような状況を招かないように、切出ゲート17を制御することが望まれる。
【0034】
そのための手法としては、図3の鎖線L3に示しているように、切出ゲート17の開放動作の速度を遅らせることが考えられる。すなわち切出ゲート17の開放動作が開始されてから、全開となるまでの時間(T−T)を長くする(T´−T)。その場合には、切出ゲート17が徐々に開放されるため、最大流量も低く抑えることが可能となり、その結果、最大流量値が詰り発生限界流量Fを超えて、最終投入流路19における曲り箇所19Cで詰りが発生することを防止できると考えられる。しかしながら、その場合は、切出ゲート17の開放開始から、最終的に完全閉止するまでの期間、すなわち副装入期間が著しく長くなってしまう。
【0035】
一方、図4は、最終投入流路19における曲り箇所19Cで詰りの発生を防止するために、切出ゲート17の開放時の開度を狭く設定した場合について示す。
【0036】
図4において、実線L1は、図3と同様に、切出ゲート17の開度及び開放速度の制御を行わない従来の一般的なケースにおいて、切出ゲート17の開方向動作を時刻Tに開始してからの開度の推移を示し、破線L2は、その場合の切出ゲート17から流出する原料の単位時間当たりの流量の推移を示す。これらは図3と全く同様である。
【0037】
この例では、最大流量値Fmaxが、詰り発生限界流量Fを超えるような状況下において、鎖線L5で示すように、切出ゲート17を開放させるにあたって、全開(開度100%)まで開放させず、中間の開度、例えば70%の開度で留め、その状態で所定時間保持した後、閉止させる制御を行っている。このような制御を行った場合の流量の推移を破線L6で示す。
【0038】
このような制御の場合、切出ゲート17は100%まで開放されず、中間の開度のまま、原料が流出するため、最大流量も低く抑えることが可能となり、その結果、最大流量値が詰り発生限界流量Fを超えて、最終投入流路19における曲り箇所19Cで詰りが発生することを防止できると考えられる。しかしながら、この場合も、切出ゲート17の開放開始から、最終的に完全閉止するまでの期間、すなわち副装入期間が著しく長くなってしまう。また、切出ゲート17の開度が小さければ、既に述べたように、切出ゲート17の上側や均圧ホッパー16の内部において、棚吊りによって原料の流出が停滞してしまうおそれがある。
【0039】
図5には、本発明のゲート制御方法を適用した場合の切出ゲート17の開度の時間的推移(実線L10)及び切出ゲート17からの原料の流出流量の時間的推移(破線L11)の基本的な一例を示す。
【0040】
本発明の制御方法の場合、図5の実線L10で示すように、切出ゲート17の開方向動作を時刻Tに開始してから、全開(開度100%)に至る以前の、予め定めた中間開度(M%、後述するように例えば40%〜60%程度)に至った段階(時刻Tms)において、一旦切出ゲート17の開方向動作を停止させる。続いて、予め設定した時間(中間開度保持時間tm)だけ、その中間開度M%を維持したままとする。そして、中間開度保持時間tmが経過した後(時刻Tmf)、再び切出ゲート17の開方向動作を再開させ、全開(開度100%)に至らせる(時刻T)。その後は、全開状態で所定時間経過した後(時刻T)、切出ゲート17を閉止させる(時刻T→時刻T)。
【0041】
この場合、切出ゲート17からの原料の流出は、図5の破線L11で示すように、切出ゲート17の開方向動作の開始(時刻T)から若干遅れた時刻Tから開始されて、中間開度M%(時刻Tms)まで、急速に流量が増大する。そしてその中間開度M%での流量がほぼ維持されたまま、所定時間(中間開度保持時間tm)だけ流出が継続し、時刻Tmfにおいて切出ゲート17の開方向動作の再開に伴って急速に流量が増大し、時刻Tにおいて全開(開度100%)となるまで流量は急上昇し、その後も原料の排出が終わる直前まで上昇し続けて最大流量値Fmaxに至る。そして、時刻Tで流量が零となって所定時間経過した後(時刻T)、切出ゲート17が閉止される(時刻T→時刻T)。
【0042】
ここで、中間開度M%および中間開度保持時間tmを適切に設定しておくことによって、最大流量値Fmaxが詰り発生限界流量Fを超えることを容易に防止することができる。すなわち、切出ゲート17の中間開度での保持を行わない場合と比較して、ゲート開放速度が同じであっても、切出ゲート17の中間開度での保持終了時から全開に至るまでの間の流量増加の度合が小さいため、全開に至った時に急激に流出量が増大してしまうことを回避できる。またそのため、たとえゲート開放速度がある程度大きくても、全開時の最大流量値Fmaxを低く抑え、詰り発生限界流量Fを超えてしまうことを未然に防止することができる。
【0043】
なお本発明のゲート制御方法を実施するに当たっては、詰り発生限界流量Fは、詰りが発生する危険性が生じる流量を直接調べて、その値を詰り発生限界流量Fとしてもよいが、後に図6図9を参照して具体的に説明するように、最終装入流路を通過する原料の流量は、その原料の通過時に最終装入流路の壁面に加えられる振動もしくは衝撃の大きさに対応するから、実際上は、その振動もしくは衝撃を、直接あるいは音(振動音もしくは衝撃音)として検出し、詰り発生限界流量Fに対応する振動もしくは衝撃のレベルを、詰り発生限界流量Fに対応する閾値として設定することが望ましい。
【0044】
さらに、上述のように中間開度での保持を行うことによって、図3あるいは図4に示した場合のような、別の箇所での詰りが生じてしまうことを回避しつつ、トータルの副装入期間がいたずらに長くなってしまうことを防止して、主装入と副装入とがラップすることを確実に回避し、高炉操業の不安定化、ひいては高炉の生産効率の低下を防止することが可能となる。
【0045】
すなわち、先ず図3の従来技術による制御と、図5の本発明による制御とを比較すれば、図3の場合は、詰り発生防止のためにゲート開放速度を遅くすることとしているが、この場合は、切出ゲート17が開放開始から全開に至るまでの時間が長くなってしまい、その結果、副装入期間が長くなってしまう。これに対し、図5の本発明例の場合は、中間保持時間を適切に設定することによって、ゲート開放開始から全開に至るまでの時間を短縮でき、しかも全開に至るまでの期間中に、中間開度での保持によって、ある程度の量の原料が流出している(高炉に装入されている)から、ゲート全開状態での保持時間を図3の場合よりも短縮でき、それによってトータルの副装入期間を短縮することが可能である。
【0046】
次に、図4の従来技術による制御と、図5の本発明による制御とを比較すれば、図4の場合は、詰り発生防止のためにゲート開度を全開まで至らせない制御を行っているが、この場合は必然的に副装入期間が長くなってしまう。これに対して図5の本発明による制御の場合は、中間開度での保持後、更に全開まで開放するため、中間開度での保持時間及びその中間開度の値を適切に設定しておくことにより、副装入期間を図4の場合よりも短くすることが可能である。また図4の従来技術のように切出ゲート17の開度を小さく抑えたまま装入する場合は、原料が均圧ホッパー16から徐々に流出されるため、切出ゲート17の上面側や均圧ホッパー16内で原料の棚吊りなどによる停滞が生じやすくなる。これに対して、図5の本発明例の場合は、中間開度での保持における開度を適切に設定すれば、上述のような切出ゲート17の上面側や均圧ホッパー16内で原料の棚吊りなどによる停滞が発生することはない。
【0047】
したがって本発明のゲート制御方法によれば、最終装入流路19、特に曲り箇所19Cでの原料の詰りの発生を未然に防止することが可能となるばかりでなく、他の箇所、例えば切出ゲート17の上面側や均圧ホッパー16内での原料の停滞を招かずに、副装入期間の無駄な長時間化を回避して、主装入と副装入とがラップすることを防止し、高炉操業の不安定、ひいては高炉の生産効率の低下を防止することができる。
【0048】
なお、切出ゲート17において保持すべき中間開度の具体的な値は、後述する図7に示す中間開度設定段階の手法によって決定すればよいが、実際上は、40〜60%程度の範囲内で設定することが好ましい。すなわち、中間開度が40%未満では、中間開度で保持した状態で、切出ゲート17から副原料がほとんど流出せず、その結果、副装入期間を短くする効果が充分に得られなくなってしまうばかりでなく、中間開度保持後の全開に至る過程での流量が大きくなってしまって、詰りが発生するおそれがある。一方、中間開度が60%を越えれば、中間開度に至るまでにかなりの流量がかなり増大してしまい、場合によっては中間開度での保持中あるいはその後の全開中に、詰りが発生してしまうことが懸念される。保持すべき中間開度が40〜60%の範囲内であれば、このような事態を招くことなく、本発明の効果を、より効果的に発揮することができる。
【0049】
さらに本発明のゲート制御方法を実施するために最適な設備、およびその設備を用いての、より具体的なゲート制御方法について図6図9を参照して説明する。
【0050】
図6には、本発明のゲート制御方法を実施するための原料副装入設備3の一例を示す。なお図6において、図2に示した要素と同一の要素については、図2と同じ符号を付し、その詳細は省略する。
【0051】
図6に示す原料副装入設備3において、均圧ホッパー下部シール弁18から高炉本体に至る最終装入流路19のうち、傾斜した投入シュート19Bにおける、上端近くの部位(曲り箇所19Cに近い部位)の外面(通常は下側面)には、その部位を原料が通過する際に投入シュート19Bに加えられる振動もしくは衝撃を検出するためのセンサ20が配設されている。ここで、上記の「振動もしくは衝撃」とは、均圧ホッパー下部シール弁18から落下する原料が投入シュート19Bの内面を直接叩くことによる衝撃や振動、あるいはその付近を粒状もしくは塊状の原料が連続的に通過することによる投入シュート19Bの振動との両者を含むものとする。すなわち原料の通過、衝突に伴う投入シュート19Bの壁部の物理的変位、と言い換えることもできる。
【0052】
ここで、センサ20によって検出される振動もしくは衝撃は、そのセンサ20の設置部位の内側を通過する原料の流量に対応するから、センサ20による振動もしくは衝撃を検出することは、最終装入流路19を通過する原料の流量を間接的に計測することを意味する。
【0053】
センサ20としては、投入シュート19Bの振動や衝撃自体を直接的に検出するセンサとして、光学的な振動センサ、あるいは圧力センサなどの如く機械―電気的な振動センサを用いることができる。また投入シュート19Bの振動や衝撃を間接的に検出するセンサとして、投入シュート19Bの振動、衝撃によって発生する音(振動音、騒音)を音響的に検出する音響センサを用いることができる。これらのいずれを用いてもよいが、コスト面や高温の環境下での使用であることを考慮すれば、音響センサを用いることが望ましく、後述する具体例でも、センサ20として音響センサを用いることとしている。
またセンサ20の設置位置は、均圧ホッパー下部シール弁18から落下する原料が投入シュート19Bの内面を直接叩く(衝突する)ことによる衝撃を効果的に検出し得るように、最終装入流路19の鉛直管路19Aの直下位置(鉛直管路19Aの内側領域の鉛直下方への投影面内)とすることが望ましい。
【0054】
さらに図6に示す原料副装入設備3においては、切出ゲート17を開閉駆動するための油圧シリンダや電動モータなどからなるゲート駆動装置22が、プログラマブルコンピュータ(プロコン)などからなるゲート制御装置21によって制御される構成とされている。ここで、ゲート制御装置21は、前述のセンサ20からの振動や衝撃の大きさを表す信号(すなわち流量に対応する信号)が入力されるとともに、原料装入量に関するデータ、及び次に述べる特性曲線のデータが入力されて、切出ゲート17の中間開度(M%)、及びその中間開度での保持時間(tm)を設定するように構成され、またこれらの設定値にしたがって切出ゲート17の動作を制御するように構成される。
【0055】
ここで、本例の場合、後に改めて説明するように、副装入設備によって高炉に装入すべきコークスなどの原料についての種々の粒径や、そのほかの各種の性状などごとに、最適と予想される特性曲線(中間開度保持時間tmと原料装入量との最適な関係を示す曲線)を作成しておき、その種々の特性曲線をゲート制御装置21に記憶させておくか、または外部の記憶装置に記憶させておき、装入される原料に応じて一つの特性曲線を呼び出し、その特性曲線から原料装入量に応じた中間開度保持時間tmを設定し、更に前述のセンサ20からの信号によって、中間開度保持時間tmを補正するように構成される。
【0056】
またゲート制御装置21は、必要に応じで、切出ゲート17の開方向、閉方向の動作時における開放速度、閉止速度、更には全開に開放された状態での閉止までの保持時間なども設定可能で、またそれらにしたがって切出ゲート17の開閉動作を制御し得るように構成される。
【0057】
以上のような図6に示される原料副装入設備3の動作および制御について、図7図9を参照しながら次に説明する。
なお、センサ20による検出動作、及び切出ゲート17の制御以外の点は、図2に示した副装入設備3についての既に述べた動作及び制御と同一であり、したがってセンサ20及び切出ゲート17に関する点以外については、詳細な説明は省略する。
【0058】
図6に示される原料副装入設備3を用いて原料を装入するにあたっては、予め、装入すべきコークスなどの原料についての種々の粒径や、そのほかの各種の性状などごとに、原料装入量と中間開度保持時間tmとの関係についての特性曲線(図8のA参照)を作成しておく。
【0059】
ここで、特性曲線は、原料装入量に応じて最適と予想される中間開度保持時間tmを示すものである。すなわち、原料装入量との関係で、生産効率を損なわない程度の中間開度保持時間でかつ詰り発生に有効な程度の中間開度保持時間を規定するものである。なおこの特性曲線は、実験によって定めてもよいが、通常は、過去の高炉操業の実績を蓄積しておき、その蓄積データから決定することが望ましい。また、上記の特性曲線は、装入すべき原料の粒径や、その他の性状によって異なるから、上記のように、種々の粒径、種々の性状ごとに特性曲線を作成しておく。そしてこのような特性曲線をゲート制御装置21に記憶させておくか、または外部の記憶装置に記憶させておく。
【0060】
また一方、装入すべき原料と同じ粒径、同じ性状の原料について、実操業におけるセンサ20からの信号によって、中間保持の開度M%を予め設定しておく。この中間開度設定段階のフローを図7に示す。
【0061】
すなわち、副装入設備から高炉本体内に原料を装入する実操業において、センサ(音響センサ)20によって最終装入流路19を通過する原料による振動、衝撃による音(振動音、衝撃音)、特に切出ゲート17を閉止状態から全開に至らせるまでの間の音を計測し、振動、衝撃による音のレベルが、予め定めたあるレベル(中間開度設定用閾値)を越えたときの開度を、その装入原料についての保持すべき中間開度M%と定めておく。ここで、上記の予め定めたあるレベル(中間開度設定用閾値)とは、要は、中間開度に至るまでの間に小流量ではあってもある程度の流量で副原料が流出するように、しかも中間開度に至るまでの間の流出量が、詰りが発生しない程度に抑えられるような中間開度を設定し得るようなレベルとすればよい。具体的には、前述のように中間開度が40〜60%程度の範囲内で設定されるように、上記のレベル(中間開度設定用閾値)を定めることが好ましい。
【0062】
ここまではある副装入期間での副装入設備からの原料の装入を実施する以前の段階で行う事前準備段階である。そしてある副装入期間において副装入設備からの原料の装入(以下、これを「Nバッチ目の装入」と称する)を実施するためのフローを図8に示し、またその場合の切出ゲート17の開閉動作パターン、流量変化パターンを図9に示す。なお図9において、左側のパターンは、Nバッチ目の装入におけるパターンを示し、右側のパターンは、次の(N+1)バッチ目の装入におけるパターンを示す。なお実際の操業では、Nバッチ目の副装入期間と、(N+1)バッチ目の副装入期間との間に、主装入設備から原料を装入する主装入期間が存在する。
【0063】
Nバッチ目の副装入期間において副装入設備から高炉本体への原料の装入を開始するに当たっては、先ずプロコンなどのゲート制御装置21に、原料装入量を設定する(ステップS10)。そして装入すべき原料の粒径や各種の性状などに応じた一つの特性曲線(図8のA)を呼び出し、その特性曲線から原料装入量に応じた中間開度保持時間tmを設定する(ステップS11)。またそれと並行して、図7のフローによって事前に決定されている中間開度M%をゲート制御装置21に設定する(ステップS12)。なお中間開度保持時間tmの具体的長さは特に限定されないが通常は1sec以上、10sec以下、望ましくは2〜7secの範囲内で設定することが好ましい。
【0064】
そして、センサ(音響センサ)20によって最終装入流路19における振動もしくは衝撃音を検出しながら、均圧ホッパー下部シール弁18を開放させ、さらに切出ゲート17の開放動作を開始させ、均圧ホッパー16から最終装入流路19を経て高炉本体内への原料の装入を開始させる(ステップS13)。
【0065】
このようなNバッチ目の装入段階(ステップS13)における切出ゲート17の動作パターン及びそれによる原料流量パターンを、図9の左側に示しているが、このパターンは、基本的には図5を参照して説明したパターンと同じである。
すなわち、図9の実線L10で示すように、切出ゲート17の開方向動作を時刻Tに開始してから、予め設定された中間開度(M%、例えば50%)に至った段階(時刻Tms)において、一旦切出ゲート17の開方向動作を停止させ、続いて、原料装入量に応じて前述の特性曲線から求められた中間開度保持時間tm)だけ、その中間開度M%を維持したままとする。そして、中間開度保持時間tmが経過した後(時刻Tmf)、再び切出ゲート17の開方向動作を再開させ、全開(開度100%)に至らせる(時刻T)。その後は、全開状態で所定時間経過した後(時刻T)、切出ゲート17を閉止させる(時刻T→時刻T)。
【0066】
ここで、上記の装入段階では、センサ(音響センサ)20によって計測される振動音もしくは衝撃音のレベルについて、予め閾値Sを設定しておく。この閾値Sは、図5における詰り発生限界流量Fに対応するものである。すなわち、最終投入流路19における曲り箇所19Cで詰りが発生するおそれが生じる最小の流量(詰り発生限界流量F)における振動音もしくは衝撃音のレベルを閾値Sとして設定しておく。
そしてセンサ20による検出音の最大レベルSmaxが閾値S以下であるか否かを判定し(ステップS14)、最大レベルSmaxが閾値S以下である場合(YES)には、そのまま図9の左側のパターンによってNバッチ目の副装入期間を終了させる。
【0067】
一方、上記のNバッチ目の副装入期間におけるセンサ20による振動音もしくは衝撃音の最大レベルSmaxが閾値Sを超えた場合(NO)には、Nバッチ目の副装入期間自体はそのまま終了させるが、次の(N+1)バッチ目の準備段階として、(N+1)バッチ目の中間開度保持時間を延長させる。すなわち(N+1)バッチ目の中間開度保持時間を(tm+Δt)に設定する。
【0068】
そして、Nバッチ目の副装入期間が終了し、続いて主装入設備からの装入が行われた後(主装入期間終了)、副装入設備からの(N+1)バッチ目の装入が実施されるが、この(N+1)バッチ目の装入段階では、中間開度保持時間を、Nバッチ目よりも長い(tm+Δt)の時間とする(図9の右側のパターン)。これによって、(N+1)バッチ目の装入における最大流量が、Nバッチ目よりも小さくなり、センサ20によって計測される振動音もしくは衝撃音の最大レベルも低くなり、閾値Sを越えなくなる可能性が高くなる。言い換えれば、(N+1)バッチ目の装入における最大流量が詰り発生限界流量Fを超える危険性が小さくなる。もちろん上述のように(N+1)バッチ目の装入段階での中間開度保持時間を、Nバッチ目よりも長い(tm+Δt)の時間としても、(N+1)バッチ目で再び検出音の最大レベルが閾値Sを超えることもあるが、このような過程を複数回繰り返すことによって、検出音の最大レベルを閾値S以下に抑え(したがって流量を詰り発生限界流量F以下に抑え)、詰りの発生を確実に防止することが可能となる。
【0069】
なおNバッチ目の装入段階に関して、前述の説明では、原料装入量に応じて特性曲線から求められる中間保持時間を設定するものとしている(図8のA)。しかしながら、場合によっては、その前の(N−1)バッチ目の装入段階におけるセンサ20からの検出音の最大レベルが閾値Sを越えていた場合には、その(N−1)バッチ目に基づいた延長時間Δt´を、特性曲線による中間開度保持時間tmに加算し、その加算された時間(tm+Δt´)でNバッチ目の中間開度保持を行うこともある。
【実施例】
【0070】
以下に本発明のゲート制御方法を、高炉の実操業に適用した実施例を、比較例とともに記す。なお、実施条件の概要を表1に示し、更に比較例1、実施例1〜3の詳細な条件を表2に示す。また、原料副装入設備における均圧ホッパーの出口の切出ゲートの開放動作開始からの経過時間と、後述する音響センサによる検出音量との関係を、比較例1及び実施例1、2について図10に示し、実施例3について図11に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
〔比較例1〕
実高炉(5800m級のベル式高炉)において、主装入設備から鉄鉱石及びコークス等の原料を装入する装入バッチ間(副装入期間)に、副装入設備から原料としてコークスを装入した。このコークスの粒度は平均粒径45〜55mmであり、また装入量は、1回あたり400kgとした。音響センサ(騒音計)は、図6に示すように副装入設備における投入シュート19Bの上端部付近の下面(符号20の位置)に設置しておき、また、その音響センサによる検出音レベルの閾値を90dBとした。この比較例では、切出ゲートの開放過程での中間開度での保持は行わず、弁開放速度20%/secにて、閉止状態から全開まで開放させた(所要時間6.0sec)。
この比較例1においては、センサによる音響レベルの最大値は閾値を超え、詰り発生の危険性があることが確認された。
またここで、副装入設備における最終投入流路19における曲り箇所19Cの内側位置に、予め目視観察用の小窓を形成しておき、曲り箇所におけるコークスの残留の有無を目視観察したところ、この比較例1の場合には、曲り箇所に少量のコークスが残留しており、詰り発生の前兆状態となっていることが確認された。
なお副装入に要した時間(副装入期間)は、2.3secであった。
【0074】
〔実施例1〕
比較例1と同じ高炉にて前記と同じ粒度のコークスを、副装入設備から装入し、かつ比較例1と同様に投入シュートの上端部付近で音響センサによる測定を行った。コークス装入量は、比較例1と同じく、1回あたり400kgとした。またこの実施例1では、切出ゲートの開放動作途中の開度50%にて中間開度保持を行い、またその中間開度保持時間は、3.0secとした。なお弁開放速度は、前記同様に20%/secとした。
この実施例1の場合、センサによる音響レベルの最大値は閾値以下に抑えられ、詰り発生の危険性が少ないことが確認された。また前記と同様に最終投入流路の曲り箇所におけるコークスの残留の有無を目視観察したところ、実施例1の場合には、曲り箇所にコークスが残留しておらず、詰り発生のおそれがないことが確認された。
なお実施例1における副装入に要した時間(副装入期間)は、4.5secであった。
【0075】
〔実施例2〕
実施例1とは切出ゲートの開放動作途中の中間開度を2段階に異ならしめた点以外は、実施例1と同様な実験を行った。
すなわち、先ず切出ゲートの開放動作途中の中間開度を30%として実験を行なった(第1回目実験)。その後、改めて中間開度を70%として実験を行なった(第2回目実験)。なお中間開度保持時間は、第1回目実験、第2回目実験のいずれの場合も、実施例1と同様に3.0secである。
なお実施例2の第1回目実験における副装入に要した時間(副装入期間)は、3.5secであり、実施例2の第1回目実験における副装入に要した時間(副装入期間)は、4.5secであった。
この実施例2では、第1回目実験、第2回目実験のいずれの場合も、センサによる音響レベルの最大値は閾値以下に抑えられ、詰り発生の危険性が少ないことが確認された。また前記と同様に最終投入流路の曲り箇所におけるコークスの残留の有無を目視観察したところ、実施例2の第1回目実験、第2回目実験では、実施例1の場合と同様に、曲り箇所にコークスが残留しておらず、詰り発生のおそれがないことが確認された。
但し、中間開度を30%とした実施例2の第1回目実験では、中間開度を50%とした実施例1と比べれば、センサによる音響レベルの最大値が若干高くなった。また中間開度を70%とした実施例2の第1回目実験では、中間開度を50%とした実施例1と比べれば、センサによる音響レベルの最大値が若干高くなり、また副装入に要する時間(副装入期間)が実施例1よりも若干長くなった。
【0076】
〔実施例3〕
副装入設備からのコークス装入量を、1回あたり600kgとし、切出ゲートの開放動作途中の中間開度50%での中間開度保持時間を2段階に変化させた点以外は、実施例1と同様に実施した。すなわちまず第1回目実験としては、中間開度50%での中間開度保持時間を3.9secとし、第2回目実験としては、中間開度50%での中間開度保持時間を4.5secとした。
この実施例3では、第1回目実験、第2回目実験のいずれの場合も、センサによる音響レベルの最大値は閾値以下に抑えられ、詰り発生の危険性が少ないことが確認された。また前記と同様に最終投入流路の曲り箇所におけるコークスの残留の有無を目視観察したところ、実施例3の第1回目実験、第2回目実験では、実施例1の場合と同様に、曲り箇所にコークスが残留しておらず、詰り発生のおそれがないことが確認された。
なお第1回目実験と第2回め実験とでは、中間開度保持時間を変えることによって、副装入に要する時間(副装入期間)も若干変化し、第1回目では5.5secであったのに対し、第2回目では6.0secとなった。
【0077】
なお以上の各実施例1〜3のいずれの場合も、切出ゲートの上面側や均圧ホッパー内で棚吊りなどによるコークス流出の停滞が生じないことが確認された。また以上の各実施例1〜4のうち副装入期間の最大は、実施例3で6.0secとなったが、前主装入期間と次主装入期間との間の待機時間(通常は60〜120sec程度)と比較すれば格段に短いから、主装入と副装入とがラップするおそれはなく、生産効率の低下には影響を及ぼさないことが明らかである。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例について説明したが、これらの実施形態、実験例は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0079】
1 高炉本体
2 主装入設備
3 副装入設備
16 均圧ホッパー
17 切出ゲート(均圧ホッパー切出ゲート)
19 最終装入流路(鉛直管路19A、 投入シュート19B)
20 センサ
21 ゲート制御装置(プログラマブルコンピュータ)
22 ゲート駆動装置
M% 中間開度
tm 中間開度保持時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11