【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
なお、以下、特記のない場合、部は重量部を表す。また、本明細書中で採用した測定、評価方法は次の通りである。
【0053】
<樹脂組成>
樹脂試料を、重クロロホルムまたは重ジメチルスルホキシドに溶解し、VARIAN社製 NMR装置400−MRを用いて、
1H−NMR分析、必要に応じて
13C−NMR分析を行ってその積分比より、樹脂組成を求め、重量%で表示した。また、左記樹脂組成を元に、乳酸含有率(重量%)を算出した。
また、乳酸のL/D比率は以下のとおりの方法で求めた。
試料の5g/100mLクロロホルム溶液を調製し、測定温度25℃、測定光源波長589nmにおいて比旋光度を測定し、[α]obsとした。また、上述の方法で求めた試料組成において、乳酸成分をすべてL−乳酸成分に置換した組成の樹脂を重合し、[α]obsと同様の方法により比旋光度を測定し、[α]100とした。
OP[%]= ABS([α]obs/[α]100)×100
OP=100%の時、試料に含まれる乳酸はすべてL体であり、OP=0%の時は、L体とD体の含有率は等しく各々50%であり、L乳酸/(L乳酸+D乳酸)=50+[OP]/2、との関係が成立する。左記により、L−乳酸とD−乳酸の比率を算出した。
【0054】
<数平均分子量>
樹脂試料を、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにテトラヒドロフランに溶解し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF−802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。
【0055】
<スルホン酸金属塩基濃度の定量>
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂中のスルホン酸金属塩基濃度を見積もるための手段としてナトリウム濃度の定量を行った。ナトリウムの定量は共重合ポリウレタン樹脂を加熱炭化、灰化させ、残留灰分を塩酸酸性溶液とした後、原子吸光法により定量した。検出されたナトリウムが全て共重合ポリウレタン樹脂に含有されているスルホン酸ナトリウム塩基に由来するものとみなして、スルホン酸金属塩基濃度を算出した。濃度の単位は樹脂試料106g(すなわち1ton)あたりの当量数(eq/ton)とした。
【0056】
<スルホン酸四級ホスホニウム塩基濃度の定量>
試料のリン濃度を測定し、検出されたリンが全てポリ乳酸系ポリエステル樹脂に含有されているスルホン酸四級ホスホニウム塩基に由来するものとみなしてスルホン酸四級ホスホニウム塩基濃度を算出した。リン濃度の測定は以下のようにして行った;試料を真空乾燥器(110℃)で恒量になるまで乾燥させた後、デシケーター中で室温まで放冷した。試料の一部を50mL三角フラスコに秤量し、硫酸(97%、精密分析用)3mL、硝酸(60%、精密分析用)3.5mL、過塩素酸(60%、精密分析用)0.5mLを加えて、ホットプレート上で除々に昇温し、酸分解した。硫酸白煙が確認されるまで加熱を続け、硝酸、過塩素酸を除去した。アンモニア水を用いて中和処理を行い、モリブデン酸と分解液中のリン酸を反応させ、リンモリブデン酸とし、これを硫酸ヒドラジンで還元して生じるヘテロポリ青の830nmにおける吸光度を測定して定量した。定量に際しては、別途、リン標準溶液を用いて求めた検量線を用いて行った。濃度の単位は樹脂試料106g(すなわち1ton)あたりの当量数(eq/ton)とした。
【0057】
<水分散性の評価>
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した500mlガラスフラスコに、樹脂、塩基性化合物、水を所定量添加した後、温度を80℃に保ち、400rpmで1時間撹拌した後、目視で水分散性を判定した。
(判定)○:未分散物が全くなく樹脂が完全に分散する。
△:未分散物が存在する。
×:樹脂が全く分散しない。
【0058】
<水分散体の平均粒子径>
水分散体試料の体積粒子径基準の算術平均径を、HORIBA LB−500を用いて測定し、水分散体の平均粒子径として採用した。但し、水分散性が△または×のものについては、平均粒子径の測定を行わず、「−」と表示した。
【0059】
<水性接着剤の調製>
水分散体に対して、硬化剤として水溶性イソシアネート樹脂WT20(旭化成ケミカルズ(株)製)を表3に記載の比率で配合し、水性接着剤を調製した。
【0060】
<接着性評価用サンプルの調製>
厚さ25μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製)のコロナ処理面に、乾燥後の厚みが5μmとなるように水性接着剤を塗布し、80℃×5分間乾燥した。その接着面に、別の厚さ25μmのPETフィルムのコロナ処理面を貼り合わせ、80℃で3kgf/cm
2の加圧下に30秒間プレスし、40℃で8時間熱処理して硬化させて、剥離強度評価用サンプルを得た(初期評価用)。
また、上記サンプルを25℃の水中に5時間浸漬後、表面の水を十分に拭き取り、耐水性評価用サンプルとした。
【0061】
<接着性の評価>
剥離強度を測定し、接着性の評価とした。25℃において、引張速度300mm/minで180°剥離試験を行ない、剥離強度を測定した。実用的性能から考慮すると2N/cm以上が良好である。但し、水分散性が△または×のものについて、上澄み液部分を用いて水性接着剤を作製し、接着性評価用サンプル作製を試みたが、有効成分が少ないため、乾燥後厚みが5μmとなるように塗布することが不可能であったが、塗布面にPETフィルムを上述の方法で貼り合わせ剥離強度評価用サンプルを作成し、剥離強度測定を行ったところ、剥離強度は0.1/cm以下であり、正確な測定ができないと判断し、「−」と表示した。
【0062】
<耐水性の評価>
前記接着性評価用サンプルを25℃の水中に5時間浸漬後、表面の水を十分に拭き取り、25℃において、引張速度300mm/minで180°剥離試験を行ない、剥離強度を測定した。但し、水分散性が×のものについては、ほとんど接着性を示さなかったため、耐水性の測定を行わず、「−」と表示した。
【0063】
<生分解性の評価>
樹脂試料を用い、ISO14855(JISK6953)「制御されたコンポスト条件下の好気的究極生分解度および崩壊度の求め方」記載の条件下にて行なった。なお、該求め方における180日目の結果を表3、表4に表示した。
【0064】
以下、実施例中の本文及び表に示した化合物の略号はそれぞれ以下の化合物を示す。
L−LD:L−ラクチド
D−LD:D−ラクチド
CL:ε−カプロラクトン
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
TPA100:多官能イソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製)
MFA100:多官能ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製)
EO−GCM:3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム
HPN−GCM:3,5−ジ(3−ヒドロキシ―2,2−ジメチルプロポキシカルボニル―2−メチルプロピル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム
【0065】
実施例A−1
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1の製造
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した500mlガラスフラスコにイセチオン酸ナトリウム5.3部、L−ラクチド64.4部、ε−カプロラクトン27.6部及び触媒としてオクチル酸錫0.03部を仕込み、60℃で30分窒素ガスを流通した。次いで60℃下に30分間減圧し、内容物を更に乾燥させた。再び窒素ガスを流通しつつ重合系を180℃に昇温し、180℃到達後3時間撹拌した。次いでリン酸0.14部を添加し、20分撹拌後、系を減圧し、未反応のラクチドおよびカプロラクトンを留去した。約20分後、未反応物の留出が収まった後、HDI2.7部を仕込み、150℃で2時間攪拌した後、内容物を取り出し冷却した。得られたポリ乳酸系ポリオールAの組成、数平均分子量、乳酸含有率等を表1に示した。
【0066】
実施例A−1〜A−7、比較例B−1〜B−4
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.2〜11の製造
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1と同様にして、但し、仕込み原料およびその比率を変更してポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.2〜11を合成し、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1と同様の評価を行った。評価結果を表1〜表2に示した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.8は、脂肪族スルホン酸塩基セグメントまたは脂環族スルホン酸塩基セグメントを分子中に有しないため、本発明の範囲外である。ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.9は、ポリ乳酸セグメントを有さないため、本発明の範囲外である。ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.10は、脂肪族スルホン酸塩基セグメントまたは脂環族スルホン酸塩基セグメントを分子中に有しないため、本発明の範囲外である。
【0070】
実施例C−1
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体、水性接着剤の製造および評価
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した500mlガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を30部、水70部を仕込み、90℃に昇温し30分攪拌した後、内容物を取り出し冷却し、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体1を製造した。得られた水分散体の粒子径を測定した。さらに、上述の方法で硬化剤を配合し、得られた塗膜の接着性と耐水性を評価した。結果を表3に示した。
【0071】
実施例C−2〜C−7
実施例1と同様にして、但し、仕込み原料およびその比率を変更してポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造を行ない、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体2〜7を製造した。さらに、実施例1と同様に、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体2〜7に硬化剤を配合し、得られた塗膜の接着性と耐水性を評価した。結果を表3に示した。いずれも高い水分散性を示し、また硬化塗膜は高い接着性及び耐水性を示した。
【0072】
比較例C−8〜C−10
実施例1と同様にして、但し、仕込み原料およびその比率を変更してポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造を試み、水分散体が得られたものについてはさらに、実施例1と同様に硬化剤を配合し、得られた塗膜の接着性と耐水性を評価した。結果を表4に示した。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
比較例C−8はポリ乳酸系ポリエステル樹脂の水分散性は良好であったものの、比較例C−8は180日目の生分解度が低かった。比較例C−8に使用したポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.8は、生分解性の遅い芳香族セグメントを有するため、生分解の速度が遅かったと推定される。
【0076】
比較例C−9は1時間攪拌後も未分散樹脂が大量に存在し、さらに1時間攪拌を続けてもなお大量の未分散樹脂が残存していた。比較例C−9に使用したポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.9は、ポリ乳酸セグメントを有しないため、本発明の範囲外である。カプロラクトン由来の樹脂の結晶化が起こるため、ポリエステル樹脂の分散が殆ど進まなかったものと推定される。また、結晶性を有するため、生分解速度も遅かったと推定される。
【0077】
比較例C−10において、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂の水分散性は良好であったものの、比較例C−10は180日目の生分解度が低かった。比較例C−10に使用したポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.10は、脂肪族スルホン酸塩基セグメントまたは脂環族スルホン酸塩基セグメントを分子中に有しないため、生分解性の遅い芳香族セグメントを有するため、本発明の範囲外である。生分解性の遅い芳香族セグメントを有するため、生分解の速度が遅かったと推定される。
【0078】
<塗料>
水性塗料(D−1)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した500mlガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を100部、水233部を仕込み、80℃に昇温し20分撹拌した後、内容物を取り出し冷却し、100メッシュの濾布で濾過した濾液に、硬化剤(住友化学(株)製M−40W)を20部、イオン交換水167部、酸化チタン(石原産業(株)製CR−93)50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの10%ベンジルアルコール1.0部を添加し、ガラスビーズ型高速振とう機を用いて3時間振とうすることにより均一に分散し水性塗料(D−1)を得た。
【0079】
塗料(D−2)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した500mlガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.2を100部、水233部を仕込み、80℃に昇温し20分撹拌した後、内容物を取り出し冷却し、100メッシュの濾布で濾過した濾液に、硬化剤(住友化学(株)製M−40W)を20部、イオン交換水167部、酸化チタン(石原産業(株)製CR−93)50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの10%ベンジルアルコール1.0部を添加し、ガラスビーズ型高速振とう機を用いて3時間振とうすることにより均一に分散し塗料(D−2)を得た。上記塗料(D−1)、(D−2)を用いて塗膜性能試験を行った。なお塗板の作製、評価は以下の方法に従った。この結果を表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
塗板の作製
溶融亜鉛メッキ鋼板に前記水性塗料(D−1)、(D−2)を塗装後、80℃、10分乾燥後、次いで140℃で30分間焼き付けを行った。膜厚は5μmとした。
【0082】
評価方法
1.光沢
GLOSS METER(東京電飾社製)を用いて、60度での反射を測定した。
◎:90以上 ○:80〜90 △:50〜80 ×:50以下
【0083】
2.沸水試験
塗装鋼板を沸水中に2時間浸漬したあとの塗膜外観(ブリスター発生状況)を評価した。
◎:ブリスターなし
○:ブリスター発生面積10%以内
△:ブリスター発生面積10〜50%
×:ブリスター発生面積50%以上
【0084】
3.耐溶剤性
20℃の室内において、メチルエチルケトンをしみ込ませたガーゼにて塗面に1kg/cm2の荷重をかけ、5cmの長さの間を往復させた。下地が見えるまでの往復回数を記録した。50回の往復で下地が見えないものは>50と表示した。回数の大きいほど塗膜の硬化性が良好である。
【0085】
4.密着性
JISK-5400碁盤目−テープ法に準じて、試験板の塗膜表面にカッターナイフで素地に達するように、直行する縦横11本ずつの平行な直線を1mm間隔で引いて、1mm×1mmのマス目を100個作成した。その表面にセロハン粘着テープを密着させ、テープを急激に剥離した際のマス目の剥がれ程度を観察し下記基準で評価した。
◎:塗膜剥離が全く見られない。
○:塗膜がわずかに剥離したが、マス目は90個以上残存。
△:塗膜が剥離し、マス目の残存数は50個以上で90個未満。
×:塗膜が剥離し、マス目の残存数は50個未満。
【0086】
<インキ>
水性インキ(E−1)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した2,000mlガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を100部、水233部を仕込み、80℃に昇温し20分攪拌した後、30℃まで冷却した後、酸化鉄イエロー水分散体(大日精化工業(株)製MF−5050Yellow)19.6部、水781.0部、2−プロパノール55部を加え、さらに1時間攪拌した後、内容物を取り出し、100メッシュの濾布で濾過して水性インキ(E−1)を得た。
【0087】
インキ(E−2)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した2,000mlガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.2を100部、水233部を仕込み、80℃に昇温し20分攪拌した後、30℃まで冷却した後、酸化鉄イエロー水分散体(大日精化工業(株)製MF−5050Yellow)19.6部、水781.0部、2−プロパノール55部を加え、さらに1時間攪拌した後、内容物を取り出し、100メッシュの濾布で濾過して水性インキ(E−2)を得た。
上記水性インキ(E−1)、(E−2)を用いてインキ塗膜性能試験を行った。なお評価サンプルの作製、評価は以下の方法に従った。この結果を表6に示す。
【0088】
【表6】
【0089】
<インキの分散安定性評価>
上記インキ(E−1)、(E−2)を、20℃、−5℃で2週間保存し、インキの外観変化を評価した。
◎:外観変化全くなし
○:外観変化殆どなし(攪拌で再分散できる沈降物が発生)
△:わずかに沈降物が発生(攪拌で再分散できないもの若干残る)
×:沈降物発生
【0090】
<耐水性評価用サンプルの調製>
厚さ25μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製)のコロナ処理面に、インキ(E−1)、(E−2)を各々乾燥後の厚みが2μmとなるように塗布し、80℃×30分間乾燥し、耐水性評価用サンプルとした。
【0091】
<耐水性の評価>
前記耐水性評価用サンプルを25℃の水中に5時間浸漬後、表面の水を十分に拭き取り、外観変化を確認した。
◎:外観変化全くなし
○:外観変化殆どなし(塗膜と基材の界面のごく一部に水の浸入の形跡がみられる)
△:塗膜の一部に水による膨潤がみられる。
×:全面剥離/溶解が起こった。
【0092】
<積層体>
積層体(F−1)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した500mlガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を100部、水233部を仕込み、80℃に昇温し30分撹拌した後、30℃以下に冷却し、コロイダルシリカ(日産化学(株)製スノーテックC)を100部加え、さらに1時間攪拌した後、100メッシュの濾布で濾過した濾液を、厚さ25μmのPLAフィルム(Innovia Films社製)のコロナ処理面に、乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、80℃×30分間乾燥し、積層体(F−1)を得た。
【0093】
積層体(F−2)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した500mlガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.2を100部、水233部を仕込み、80℃に昇温し30分撹拌した後、30℃以下に冷却し、コロイダルシリカ(日産化学(株)製スノーテックC)を100部加え、さらに1時間攪拌した後、100メッシュの濾布で濾過した濾液を、厚さ25μmのPLAフィルム(Innovia Films社製)のコロナ処理面に、乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、80℃×30分間乾燥し、積層体(F−2)を得た。
上記積層体(F−1)、(F−2)を用いて性能試験を行った。評価は以下の方法に従った。この結果を表7に示す。
【0094】
【表7】
【0095】
<バイオマス度>
積層体全重量に含まれる、バイオマス由来成分の重量%を算出した。
【0096】
<生分解性試験>
積層体1 0 c m × 1 0 c m をコンポスター( 生ゴミ処理機、三井ホーム社製( M A M ) )中に入れ、7 日後にサンプル形態を目視にて観察し、生分解性の程度を下記の基準に従って4 段階で評価した。
◎ : サンプルの形態が完全になし
○ : サンプルの形態がほとんどなし
△ : サンプルの断片あり
× : サンプルの形態がほとんど残っている
【0097】
<徐放性生分解性被覆剤>
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した500mlガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を100部、水233部を仕込み、80℃に昇温し20分撹拌した後、30℃以下に冷却し、コロイダルシリカ(日産化学(株)製スノーテックC)を100部加え、さらに1時間攪拌した後、100メッシュの濾布で濾過した。その濾液を、平均粒径4mmの窒素系粒状肥料成分に、噴流被覆装置を用いて噴霧被覆し、高温の熱風により水分を蒸発乾燥して被覆粒状の徐放性生分解性被覆体G1を得た。
また濾液をポリプロピレンフィルムに塗工し60℃の熱風乾燥機中で乾燥し、ついでポリプロピレンシートから剥離させ、乾燥厚み約20μmのポリ乳酸系ポリエステル樹脂H1からなるシートを作成した。このシートを用いて、好気性暗所下での生分解性を評価した。具体的な評価方法はASTM−D5338に準拠した。評価結果を表8に示した。
このシートの分解速度は、後述するポリ乳酸系ポリエステル樹脂H2からなるシートと比較すれば速いものの、セルロースよりは遅いことが判明した。ポリ乳酸系ポリエステル樹脂H1は、徐放性を示し、かつ、比較的短期間で被被覆成分の放出を終了させたい場合の被覆剤および被覆体に適する。
【0098】
【表8】
【0099】
<徐放性生分解性被覆剤>
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した500mlガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.2を100部、水233部を仕込み、80℃に昇温し20分撹拌した後、30℃以下に冷却し、コロイダルシリカ(日産化学(株)製スノーテックC)を100部加え、さらに1時間攪拌した後、100メッシュの濾布で濾過した。その濾液を、平均粒径4mmの窒素系粒状肥料成分に、噴流被覆装置を用いて噴霧被覆し、高温の熱風により水分を蒸発乾燥して被覆粒状の徐放性生分解性被覆体G2を得た。
また濾液をポリプロピレンフィルムに塗工し60℃の熱風乾燥機中で乾燥し、ついでポリプロピレンシートから剥離させ、乾燥厚み約20μmのポリ乳酸系ポリエステル樹脂H2からなるシートを作成した。このシートを用いて、好気性暗所下での生分解性を評価した。具体的な評価方法はASTM−D5338に準拠した。評価結果を表8に示した。
このシートの分解速度は比較的遅く、比較的長期間にわたる被被覆成分の放出が必要な場合の被覆剤および被覆体に適する。