特許第6340918号(P6340918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6340918
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】推力増強装置
(51)【国際特許分類】
   F02K 1/28 20060101AFI20180604BHJP
   F02K 3/10 20060101ALI20180604BHJP
   F23R 3/18 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   F02K1/28
   F02K3/10
   F23R3/18
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-107048(P2014-107048)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-222051(P2015-222051A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】田中 辰治
(72)【発明者】
【氏名】細井 潤
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克昌
(72)【発明者】
【氏名】廣光 永兆
【審査官】 金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0198940(US,A1)
【文献】 特開2011−043117(JP,A)
【文献】 特開平08−165952(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0260366(US,A1)
【文献】 米国特許第05396761(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 1/28,1/38,1/78,
3/08−3/11
F02C 7/00,7/264
F23R 3/18−3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェット噴流に対して燃料を噴出する燃料噴射器と、燃料噴射器の下流に配置される着火装置と、燃焼領域を囲う筒状のダクトと、前記ダクト内に配置される保炎器とを備える推力増強装置であって、
前記ダクトの軸方向から見て、前記ダクトの内部の半径方向外側領域において前記ジェット噴流の軸方向への流れを維持し、前記ダクトの内部の半径方向内側領域において前記ジェット噴流を前記ダクトの軸が中心となる旋回流とする旋回流形成手段を備え、
前記旋回流形成手段は、
前記ダクトの軸を中心として環状に配列されると共に、各々が前記ダクトの軸方向から見て前記ダクトの軸から同一距離変位した箇所に向けて空気を噴射する複数のラジアルガッタからなる
ことを特徴とする推力増強装置。
【請求項2】
前記ラジアルガッタは、
前記ダクトの軸から同一距離変位した箇所に向けて空気を噴射する管部を備えることを特徴とする請求項記載の推力増強装置。
【請求項3】
前記管部の軸が前記ダクトの軸から同一距離変位した箇所に向けられていることを特徴とする請求項記載の推力増強装置。
【請求項4】
前記管部の噴射開口が前記ダクトの軸から同一距離変位した箇所に向けられて傾斜されていることを特徴とする請求項記載の推力増強装置。
【請求項5】
前記ラジアルガッタは、
前記ダクトの軸に向けられると共に空気を噴射する管部と、
前記管部の噴射開口に取り付けられると共に前記管部から噴射される空気を偏らせて前記ダクトの軸から同一距離変位した箇所に向かわせる蓋部と
を備えることを特徴とする請求項記載の推力増強装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推力増強装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
推力増強装置は、例えば特許文献1や特許文献2に示すように、ジェットエンジンに搭載され、ジェット噴流に対して燃料を供給し、再び燃焼させることにより推力を得る。このような推力増強装置は、ジェット噴流に対して燃料を噴出する燃料噴射器と、燃料噴射器の下流に配置される着火装置と、燃焼領域を囲う筒状のダクトと、ダクト内に配置される保炎器とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−43297号公報
【特許文献2】米国特許第5129226号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、推力増強装置は、高速のジェット噴流中で十分に燃焼反応を完結させるために、十分に長い燃焼器内滞在時間を確保する必要があった。このため、ジェット噴流の流れ方向に十分に長い燃焼器を用意することが一般的である。このような燃焼器は、推力増強装置における燃焼領域を囲うダクトの内部に設けられている。したがって、従来のジェットエンジンでは、推力増強装置のダクトが長くなり、これによってエンジン全体の重量が増加し、エンジン性能(推重比)を引き下げることになる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、推力増強装置において燃焼領域を囲うダクトの長さ短くし、ジェットエンジンの軽量化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、ジェット噴流に対して燃料を噴出する燃料噴射器と、燃料噴射器の下流に配置される着火装置と、燃焼領域を囲う筒状のダクトと、前記ダクト内に配置される保炎器とを備える推力増強装置であって、前記ダクトの軸方向から見て、前記ダクトの内部の半径方向外側領域において前記ジェット噴流の軸方向への流れを維持し、前記ダクトの内部の半径方向内側領域において前記ジェット噴流を前記ダクトの軸が中心となる旋回流とする旋回流形成手段を備えるという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記旋回流形成手段が、前記ダクトの軸を中心として環状に配列されると共に、各々が前記ダクトの軸方向から見て前記ダクトの軸から同一距離変位した箇所に向けて空気を噴射する複数のラジアルガッタからなるという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、前記ラジアルガッタが、前記ダクトの軸から同一距離変位した箇所に向けて空気を噴射する管部を備えるという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第3の発明において、前記管部の軸が前記ダクトの軸から同一距離変位した箇所に向けられているという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第3の発明において、前記管部の噴射開口が前記ダクトの軸から同一距離変位した箇所に向けられて傾斜されているという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第2の発明において、前記ラジアルガッタが、前記ダクトの軸に向けられると共に空気を噴射する管部と、前記管部の噴射開口に取り付けられると共に前記管部から噴射される空気を偏らせて前記ダクトの軸から同一距離変位した箇所に向かわせる蓋部とを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、旋回流形成手段によって、ダクトの内部に旋回流を形成する。このような旋回流が形成されることによって、ジェット噴流と燃料との混合速度が速まる。これによって、短時間で燃料を燃焼させることができ、燃焼領域が短くなる。したがって、本発明によれば、推力増強装置において燃焼領域を囲うダクトの長さ短くし、ジェットエンジンの軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である推力増強装置を備えるジェットエンジンを模式的に示す断面図である。
図2図1のA−A線矢視図である。
図3】本発明の一実施形態である推力増強装置が有するラジアルガッタによって形成される旋回流について説明するための模式図であり、(a)が推力増強装置を含む縦断面の拡大図であり、(b)がダクト及びライナを軸方向から見た模式図である。
図4】本発明の一実施形態である推力増強装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る推力増強装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0016】
図1は、本実施形態の推力増強装置10を備えるジェットエンジン1を模式的に示す断面図である。この図に示すように、ジェットエンジン1は、軸Lを中心とする略回転対称形状を有しており、ケーシング2と、ファン3と、低圧圧縮機4と、高圧圧縮機5と、燃焼器6と、高圧タービン7と、低圧タービン8と、シャフト9と、推力増強装置10と、可変排気ノズル11(ノズル)と、ライナ12とを備えたターボファンエンジンである。
【0017】
ケーシング2は、ファン3、低圧圧縮機4、高圧圧縮機5、燃焼器6、高圧タービン7、低圧タービン8、シャフト9及び推力増強装置10を収容する円筒部材である。このケーシング2は、一端側(図1で示す前側)の開口がジェットエンジン1の内部に空気を取り込むためのインテーク2aとされており、他端側(図1で示す後側)に可変排気ノズル11が設けられている。このケーシング2の下流側の一部の領域は、推力増強装置10のダクト10aとして機能する。
【0018】
また、ケーシング2の内部には、ケーシング2の半径方向内側に設けられる流路であるコア流路2bと、半径方向外側に設けられる流路であるバイパス流路2cとが形成されている。コア流路2b及びバイパス流路2cは、図1に示すように、ファン3の下流側においてケーシング2の内部が半径方向に区画されることにより設けられている。コア流路2bは、燃焼器6に空気を案内すると共に燃焼器6から排出される燃焼ガスを高圧タービン7及び低圧タービン8を介して推力増強装置10に向けて案内する流路である。バイパス流路2cは、ファン3から圧送される空気を、低圧圧縮機4、高圧圧縮機5、燃焼器6、高圧タービン7及び低圧タービン8をバイパスして推力増強装置10に向けて案内する流路である。
【0019】
ファン3は、ケーシング2の内部における最も上流側に配置されている。このファン3は、シャフト9の後述する低圧軸9aに固定される動翼からなる動翼列と、ケーシング2に固定される静翼からなる静翼例が複数段に交互に配列されてなる。このようなファン3は、シャフト9の回転に伴って動翼が回転され、インテーク2aから取り込まれた空気を下流側に圧送する。
【0020】
低圧圧縮機4は、コア流路2bにおいて最も上流側に配置されている。この低圧圧縮機4は、シャフト9の低圧軸9aに固定される動翼からなる動翼列と、ケーシング2に固定される静翼からなる静翼列が複数段に交互に配列されてなる。このような低圧圧縮機4は、シャフト9の回転に伴って動翼が回転され、コア流路2bに取り込まれた空気を静翼で整流しつつ動翼で圧縮する。
【0021】
高圧圧縮機5は、コア流路2bにおいて低圧圧縮機4の下流に配置されている。この高圧圧縮機5は、シャフト9の後述する高圧軸9bに固定される動翼からなる動翼列と、ケーシング2に固定される静翼からなる静翼列が複数段に交互に配列されてなる。このような高圧圧縮機5は、シャフト9の回転に伴って動翼が回転され、低圧圧縮機4で圧縮された空気を静翼で整流しつつ動翼でさらに圧縮する。
【0022】
燃焼器6は、コア流路2bにおいて高圧圧縮機5の下流に配置されている。この燃焼器6は、不図示の燃料ノズル及び着火装置を備えており、高圧圧縮機5で生成された圧縮空気と燃料とからなる混合気を燃焼することによって燃焼ガスを生成する。
【0023】
高圧タービン7は、コア流路2bにおいて燃焼器6の下流に配置されている。この高圧タービン7は、シャフト9の高圧軸9bに固定される動翼からなる動翼列と、ケーシング2に固定される静翼からなる静翼列とが複数段に交互に配列されてなる。このような高圧タービン7は、燃焼器6で生成された燃焼ガスを静翼で整流しつつ動翼で受けることによって動翼が回転し、これによってシャフト9の高圧軸9bを回転させる。
【0024】
低圧タービン8は、コア流路2bにおいて高圧タービン7の下流に配置されている。この低圧タービン8は、シャフト9の低圧軸9aに固定される動翼からなる動翼列と、ケーシング2に固定される静翼からなる静翼列とが複数段に交互に配列されてなる。このような低圧タービン8は、高圧タービン7を通過した燃焼ガスを静翼で整流しつつ動翼で受けることによって動翼が回転し、これによってシャフト9の低圧軸9aを回転させる。
【0025】
シャフト9は、半径方向内側の低圧軸9aと、半径方向外側の高圧軸9bとを備え、これらの低圧軸9aと高圧軸9bとが個別に同軸回転可能な二重軸構造を有している。低圧軸9aには、低圧タービン8の動翼と、低圧圧縮機4の動翼と、ファン3の動翼とが固定されている。このような低圧軸9aは、低圧タービン8の動翼が燃焼ガスを受けて回転されることによって生成される回転動力を低圧圧縮機4の動翼と及びファン3の動翼に伝達し、これらの低圧圧縮機4の動翼と及びファン3の動翼を回転させる。高圧軸9bには、高圧タービン7の動翼と、高圧圧縮機5の動翼とが固定されている。このような高圧軸9bは、高圧タービン7の動翼が燃焼ガスを受けて回転されることによって生成される回転動力を高圧圧縮機5の動翼に伝達し、この高圧圧縮機5の動翼を回転させる。
【0026】
推力増強装置10は、低圧タービン8の下流に配置されている。この推力増強装置10は、低圧タービン8を通過した燃焼ガス、及び、バイパス流路2cを通過した空気の混合気に含まれる酸素を用いて燃料を再燃焼させることにより推力を増強させるものであり、ダクト10a、燃料噴射装置10b、着火装置10c、及び保炎器10d等を備えている。
【0027】
ダクト10aは、ケーシング2と一体化されており、推力増強装置10における燃焼領域を囲む筒状の部位である。このダクト10aの軸は、ジェットエンジン1の軸Lと一致されている。燃料噴射装置10bは、ダクト10a内において、低圧タービン8の下流側に設けられており、低圧タービン8を通過したジェット噴流に対して燃料を噴射する。着火装置10cは、ダクト10a内において、燃料噴射装置10bの下流側に設けられており、燃料とジェット噴流とが混合された混合気に対して着火を行う。
【0028】
保炎器10dは、ダクト10a内において燃料噴射装置10bの下流側に配置されており、軸Lの延在方向において、着火装置10cとほぼ同位置に設けられている。この保炎器10dは、ダクト10a内において火炎を維持する。この保炎器10dについては、後に説明する。
【0029】
可変排気ノズル11は、ケーシング2の下流側の端部に設けられており、コア流路2bから排気される燃焼ガスと、バイパス流路2cから排気される空気流とをジェットエンジン1の後方に噴射する。この可変排気ノズル11は、燃焼ガス及び空気流を噴射するノズル開口端11aと、このノズル開口端11aの開口面積を変化させる可動部11b(流体抵抗調整手段、開口面積可変機構)とを備えている。この可動部11bは、ノズル開口端11aの周方向に配列されたフラップや当該フラップの角度を調整するアクチュエータ等を備えており、ノズル開口端11aの開口面積を変化させることによってノズル開口端11aにおける流体抵抗の調整を行う。
【0030】
ライナ12は、推力増強装置10のダクト10a内に設けられた円筒状の隔壁であり、バイパス流路2cから燃料が混合されずかつ圧縮されていない低温の空気が流れる流路を形成する。
【0031】
図2は、図1のA−A線矢視図であり、本実施形態の推力増強装置10の保炎器10dを示している。保炎器10dは、軸Lを中心として放射状に配置される複数のラジアルガッタ10d1を備えている。各ラジアルガッタ10d1は、一端がライナ12とダクト10aとの間の隙間に配置され、他端がダクト10a内に配置される管部からなる。このラジアルガッタ10d1は、ライナ12とダクト10aとの間の隙間を流れる低温の空気が冷却空気として内部を流れることにより冷却される。
【0032】
また、本実施形態においては、図2に示すように、ラジアルガッタ10d1は、ダクト10aの軸Lを中心として環状に配列されると共に、自らの中心線La(管部の軸)がダクト10aの軸方向から見てダクト10aの軸Lから同一距離変位した箇所に向けられた管部からなる。これらのラジアルガッタ10d1は、各々がダクト10aの軸方向から見てダクトの軸Lから同一距離変位した箇所に向けて空気を噴射する。このようなラジアルガッタ10d1の先端から、空気が噴射されることによって、ラジアルガッタ10d1の中央部に軸Lを中心とする旋回流R1が形成される。
【0033】
図3は、ラジアルガッタ10d1によって形成される旋回流R1について説明するための模式図であり、(a)が推力増強装置10を含む縦断面の拡大図であり、(b)がダクト10a及びライナ12を軸方向から見た模式図である。これらの図に示すように、本実施形態においては、各ラジアルガッタ10d1から空気が噴射されることで形成される旋回流R1は、ダクト10aの半径方向内側領域のみに形成される。この結果、ダクト10aの半径方向外側領域の流れは軸流R2となる。
【0034】
つまり、本実施形態においては、複数のラジアルガッタ10d1は、ダクト10aの軸方向から見て、ダクト10aの内部の半径方向外側領域においてジェット噴流の軸方向への流れを維持し、ダクト10aの内部の半径方向内側領域においてジェット噴流をダクト10aの軸Lを中心とする旋回流とする。すなわち、本実施形態においては、複数のラジアルガッタ10d1は、本発明の旋回流形成手段として機能する。
【0035】
このようなジェットエンジン1では、ファン3の駆動によってケーシング2のインテーク2aを通じて外部から空気が取り込まれ、取り込まれた空気がコア流路2bと、バイパス流路2cとに分配される。コア流路2bを流れる空気は、低圧圧縮機4及び高圧圧縮機5によって圧縮されてから燃焼器6に供給され、燃料と共に燃焼される。これによって燃焼ガスが生成され、この燃焼ガスがコア流路2bを流れて可変排気ノズル11から噴出される。また、バイパス流路2cを流れる空気は、低圧圧縮機4、高圧圧縮機5、燃焼器6、高圧タービン7及び低圧タービン8をバイパスして流れ、可変排気ノズル11から燃焼ガスと共に噴射される。このように可変排気ノズル11から燃焼ガス及びバイパス流路2cを流れる空気が噴出されることによって推力が得られる。
【0036】
なお、コア流路2bを流れる燃焼ガスが高圧タービン7を通過するときに、高圧タービン7の動翼が回転駆動されて回転動力が生成される。この回転動力がシャフト9の高圧軸9bを通じて高圧圧縮機5に伝達され、これによって高圧圧縮機5の動翼が回転する。また、コア流路2bを流れる燃焼ガスが低圧タービン8を通過するときに、低圧タービン8の動翼が回転駆動されて回転動力が生成される。
【0037】
また、大きな推力が必要な場合には、推力増強装置10が、高圧タービン7及び低圧タービン8を通過した燃焼ガスに対して燃料を供給すると共に再燃焼させ、これによって推力の増強が図られる。このときは、燃焼ガスの再燃焼により排気の体積流量が増加するため、ノズル開口端11aにおける流体抵抗が増加しないように、可動部11bによってノズル開口端11aの開口面積が広げられる。
【0038】
以上のような本実施形態の推力増強装置10によれば、複数のラジアルガッタ10d1によって、ダクト10aの内部に旋回流R1を形成する。このような旋回流R1が形成されることによって、ジェット噴流と燃料噴射装置10bから噴射された燃料との混合速度が速まる。これによって、短時間で燃料を燃焼させることができ、燃焼領域を短くすることができる。したがって、推力増強装置10の長さを短くすることができ、ジェットエンジン1の軽量化を図ることができる。
【0039】
また、複数のラジアルガッタ10d1は、従来から保炎器10dの構成要素として設置されているものである。このため、このようなラジアルガッタ10d1によって旋回流R1を形成することにより、新たな機構を追加することなく旋回流R1を形成することができる。
【0040】
さらに、本実施形態の推力増強装置10においては、ラジアルガッタ10d1が、中心線Laがダクト10aの軸Lから同一距離変位した箇所に向けられた管部からなっている。このため、ラジアルガッタ10d1を単純な直線状とすることができ、安価な推力増強装置10とすることができる。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態においては、ラジアルガッタ10d1が、中心線Laがダクト10aの軸Lから同一距離変位した箇所に向けられた管部からなっているという構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図4(a)及び(b)に示すように、ダクト10aの軸Lに向けられると共に空気を噴射する管部10d3と、管部10d3の噴射開口に取り付けられると共に管部10d3から噴射される空気を偏らせてダクト10aの軸Lから同一距離変位した箇所に向かわせる蓋部10d4とを有するラジアルガッタ10d2を備える構成とすることも可能である。また、上記管部10d3の噴射開口10d5が軸Lから同一距離変位した箇所に空気を向かわせるように傾斜された構成を採用することも可能である。このような構成を採用する場合にも、上記実施形態と同様の旋回流R1を形成することができる。
【0043】
また、上記実施形態においては、複数のラジアルガッタ10d1によって旋回流R1を形成する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、保炎器10dとは別に旋回流形成手段を設ける構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1……ジェットエンジン、2……ケーシング、2a……インテーク、2b……コア流路、2c……バイパス流路、3……ファン、4……低圧圧縮機、5……高圧圧縮機、6……燃焼器、7……高圧タービン、8……低圧タービン、9……シャフト、9a……低圧軸、9b……高圧軸、10……推力増強装置、10a……ダクト、10b……燃料噴射装置、10c……着火装置、10d……保炎器、10d1……ラジアルガッタ、10d2……ラジアルガッタ、10d3……管部、10d4……蓋部、10d5……噴射開口、11……可変排気ノズル、11a……ノズル開口端、11b……可動部、12……ライナ、L……軸、La……ラジアルガッタの中心線、R1……旋回流、R2……軸流
図1
図2
図3
図4