(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6340925
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20180604BHJP
H01M 2/18 20060101ALI20180604BHJP
H01M 2/26 20060101ALI20180604BHJP
H01G 11/26 20130101ALI20180604BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20180604BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20180604BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M2/18 Z
H01M2/26 A
H01G11/26
H01G11/52
H01M10/058
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-118534(P2014-118534)
(22)【出願日】2014年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-232934(P2015-232934A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】宗 真平
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕介
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
【審査官】
冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/146513(WO,A1)
【文献】
特開2013−161757(JP,A)
【文献】
特開2014−072018(JP,A)
【文献】
特開2011−113843(JP,A)
【文献】
特開2014−056742(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/066768(WO,A1)
【文献】
特開2013−178997(JP,A)
【文献】
特開平09−213377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 11/26
H01G 11/52
H01M 2/18
H01M 2/26
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とが袋状のセパレータを介して積層された蓄電装置であって、
前記セパレータは、少なくとも前記正極と前記負極のうちの一方の電極の活物質層が形成された部分を包むと共に、前記電極のタブが突出する開口を有し、
前記タブは、前記セパレータ内に位置する第1の部分及び前記セパレータから突出する第2の部分を有し、
前記セパレータに包まれた前記電極の全てにおいて、
前記第1の部分は、折り返しを有さず、
前記第2の部分は、積層方向の両方向に折り返しを有し、
それぞれの前記折り返しにおける折り目の先端は、前記積層方向において前記セパレータの端部より外側に位置する、蓄電装置。
【請求項2】
前記セパレータで包まれる前記電極は、前記正極と前記負極のうちの活物質層の硬い電極である、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記セパレータで包まれる前記電極は、前記正極である、請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
正極と負極とが袋状のセパレータを介して積層された蓄電装置の製造方法であって、
前記セパレータは、少なくとも、前記正極と前記負極のうち一方の電極の活物質層が形成された部分を包むと共に、前記電極のタブが突出する開口を有し、
前記タブは、前記セパレータ内に位置する第1の部分及び前記セパレータから突出する第2の部分を有し、
前記セパレータで包まれた前記一方の電極と他方の電極とを積層する積層工程と、
前記タブの前記第2の部分において、前記電極の積層方向の両方向に折り返しを形成する折り返し形成工程と、
前記一方の電極の前記タブを導電部材に溶接し、前記他方の電極の前記タブを他の導電部材に溶接する溶接工程と、を備え、
前記折り返し形成工程では、それぞれの前記折り返しの折り目の先端が、前記積層方向において前記セパレータの端部より外側に位置するように前記タブを折り曲げ、
前記折り返し形成工程は、前記積層工程と前記溶接工程との間に行われる、蓄電装置の製造方法。
【請求項5】
前記セパレータで包まれる前記電極は、前記正極と前記負極とのうち、活物質層が硬い方の電極である、請求項4に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項6】
前記セパレータで包まれる前記電極は、前記正極である、請求項5に記載の蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と負極とがセパレータを介して配置された蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置は、正極と負極とがセパレータを介して配置された電極組立体及び電解液等がケースに収容されて構成される。正極は、金属箔の少なくとも一面に正極活物質層が形成されている。負極は、金属箔の少なくとも一面に負極活物質層が形成されている。活物質層は、密度に応じて硬さが変わり、密度が高くなるほど硬い。正極と負極との活物質層の硬さが異なっていると、セパレータと電極(正極、負極)との間に異物が入った場合にセパレータの変形が大きくなって破断し、内部短絡する可能性がある。
【0003】
例えば、
図3を参照して、正極101のほうが負極102よりも活物質層が硬い蓄電装置において、正極101又は負極102とセパレータ103との間に異物Sが入った場合について説明する。
図3は、異物Sが入った箇所の断面図であり、正極101、負極102は活物質層のみを示しており、変形している状態をそれぞれ判り易くするために正極101、負極102とセパレータ103との間をそれぞれ離して描いているが、実際にはそれぞれ接している。
図3(a)に示すように、正極101とセパレータ103との間に異物Sが入った場合、正極101は負極102よりも活物質層が硬いので、異物Sによって正極101側が殆ど変形せず(殆ど凹まず)、セパレータ103を介して負極102側が大きく変形する(大きく凹む)。この負極102側の大きな変形により、異物Sと負極102との間のセパレータ103も大きく変形し(伸び)、セパレータ103が破断する可能性がある。セパレータ103が破断すると、正極101と負極102とが直接又は異物Sを介して内部短絡する。また、
図3(b)に示すように、負極102とセパレータ103との間に異物Sが入った場合、負極102は正極101よりも活物質層が軟らかいので、異物Sによって負極102側が大きく変形し、セパレータ103を介して正極101側が殆ど変形しない。そのため、このセパレータ103が殆ど変形せず、セパレータ103が破断する可能性が低い。
【0004】
内部短絡を防止するためには、電極(特に、活物質層が硬いほうの電極)とセパレータとの間に異物が入らないようにする必要がある。例えば、特許文献1には、正極板、負極板及びその間に多孔質絶縁層が配置されて形成された電極群とその露出端に接続された集電板とを備える二次電池において、集電板は電極群が接続される主面と主面の周縁に設けられた突起とを有しているので、溶接時にスパッタが発生した場合でもこの集電板の構造によって電極群の内部へのスパッタの侵入を抑制できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−110751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蓄電装置には、高温になった場合にセパレータが収縮して絶縁できなくなるのを防止等するために、セパレータで一方の電極(例えば、正極)を包む構成としたものがある。セパレータで電極を包む場合、例えば、2枚のセパレータの端部を溶着することによって袋状にして電極を収容し、集電のためのタブだけを袋状のセパレータから出しておく。この場合、タブの部分は溶着できないので、この非溶着部分から異物が入る可能があり、この非溶着部分から異物が入らないようにする必要がある。特許文献1の構成の場合、電極群の上部全体を集電板で覆っているので、大きな集電板が必要となり、その大きな集電板を配置させる大きなスペースも必要となる。
【0007】
そこで、本技術分野においては、簡単な構造によってセパレータで包まれる電極とセパレータとの間に異物が入らないようにする蓄電装置が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る蓄電装置は、正極と負極とがセパレータを介して配置された蓄電装置であって、セパレータは、正極と負極のうちの一方の電極のタブ以外の部分を包んでおり、セパレータで包まれる電極のタブには、積層方向に曲げが形成されている。
【0009】
この蓄電装置は、電極としての正極と負極を備えており、正極と負極との間にセパレータが配置されている。セパレータは、正極と負極のうちの一方の電極のタブ以外の部分を包んでいる。そのため、セパレータで包まれていないタブの部分からは、異物が入る可能性がある。そこで、このタブには、積層方向における少なくとも一方向に曲げが形成されている。この積層方向に曲がっているタブによって、セパレータで包まれていない部分を覆うことができる。このように、この蓄電装置は、セパレータで包まれる電極のタブに積層方向に曲げを形成することにより、簡単な構造によってセパレータで包まれる電極とセパレータとの間に異物が入らないようにすることができる。その結果、異物によってセパレータが破断するのを防止できるので、異物による内部短絡を防止でき、安全性を向上させることができる。また、タブに曲げを形成するだけなので、別途の部材や大きなスペースを必要としない。
【0010】
一実施形態の蓄電装置では、セパレータで包まれる電極は、正極と負極のうちの活物質層の硬い電極である。
【0011】
活物質層の柔らかほうの電極とセパレータとの間に異物が入った場合よりも活物質層の硬いほうの電極とセパレータとの間に異物が入った場合のほうが、セパレータが破断する可能性が高い。そこで、活物質層が硬いほうの電極をセパレータで包み、その電極のタブに積層方向に曲げを形成することにより、活物質層が硬いほうの電極とセパレータとの間に異物が入らないようにすることができる。このように、この蓄電装置は、セパレータが正極と負極のうちの活物質層が硬いほうの電極を包み、その電極のタブに積層方向に曲げを形成することにより、その電極とセパレータとの間に異物が入らないようにすることができ、異物による内部短絡を防止することができる。
【0012】
一実施形態の蓄電装置では、セパレータで包まれる電極(活物質層の硬いほうの電極)は、正極である。したがって、セパレータが活物質層の硬いほうの正極を包み、正極のタブに積層方向に曲げを形成することにより、活物質層の硬いほうの正極とセパレータとの間に異物が入らないようにすることができる。
【0013】
一実施形態の蓄電装置では、セパレータで包まれる電極のタブには、複数の折り返しが形成されている。このようにタブが複数回折り返されることにより、複数回折り返しによってセパレータで包まれていない部分を確実に覆うことができ、セパレータで包まれていない部分から異物が入らないようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構造によってセパレータで包まれる電極とセパレータとの間に異物が入らないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る蓄電装置の電極組立体を模式的に示す分解斜視図である。
【
図2】
図1のセパレータに包まれた正極のタブの構造を模式的に示す側断面図であり、(a)が複数の折り返しが形成されたタブであり、(b)が折り曲げが形成されたタブであり、(c)が湾曲の曲げが形成されたタブである。
【
図3】従来の蓄電装置において異物が入った場合の状態を模式的に示す断面図であり、(a)が正極とセパレータとの間に異物が入った場合であり、(b)が負極とセパレータとの間に異物が入った場合である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る蓄電装置を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
一実施形態に係る蓄電装置は、正極のほうが負極よりも活物質層が硬い蓄電装置であり、この活物質層が硬いほうの正極がセパレータで包まれる。一実施形態に係る蓄電装置は、二次電池又は電気二重層キャパシタ等の蓄電装置である。二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。本実施の形態では、蓄電装置としてリチウムイオン二次電池に適用した場合とする。
【0018】
図1を参照して、一実施形態に係る蓄電装置(特に、電極組立体の構成)について説明する。
図1は、一実施形態に係る蓄電装置の電極組立体を模式的に示す分解斜視図である。なお、
図1では正極のタブに曲げが形成されていないものを描いているが、正極のタブには
図2に示すような曲げが形成される。
【0019】
この実施形態に係る蓄電装置は、正極1と負極2とがセパレータ3を介して積層された電極組立体10及び電解液(図示せず)等がケース(図示せず)に収容されて構成されている。特に、蓄電装置は、電極組立体10での内部短絡を防止するために、セパレータ3で包まれかつ活物質層が硬い正極1とセパレータ3との間に異物が入らない構造を有している。この蓄電装置における電極組立体10以外の構成要素については周知のものを適宜適用してよく、詳細な説明を省略する。
【0020】
正極1は、金属箔と、金属箔の少なくとも一面に形成された正極活物質層からなる。正極1は、金属箔の端部に正極活物質層が形成されていないタブ1aを有する。タブ1aは、正極1の上縁部に延び、導電部材(図示せず)を介して正極端子(図示せず)に接続される。正極1は、正極活物質層が形成されている部分が略矩形状であり、この略矩形状の上端からタブ1aが突出した形状である。金属箔は、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔である。正極活物質層は、正極活物質、バインダを含んでいる。正極活物質層は、導電助剤を含んでいてもよい。正極活物質は、例えば、複合酸化物、金属リチウム、硫黄である。複合酸化物は、マンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとを含む。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリノレ基含有樹脂などである。導電助剤は、例えば、カーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)である。
【0021】
負極2は、金属箔と、金属箔の少なくとも一面に形成された負極活物質層からなる。負極2は、金属箔の端部に負極活物質層が形成されていないタブ2aを有する。タブ2aは、負極2の上縁部に延び、導電部材(図示せず)を介して負極端子(図示せず)に接続される。負極2は、負極活物質層が形成されている部分が略矩形状であり、この略矩形状の上端からタブ2aが突出した形状である。金属箔は、例えば、銅箔、銅合金箔である。負極活物質層は、負極活物質、バインダを含んでいる。負極活物質層は、導電助剤を含んでいてもよい。負極活物質は、例えば、黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素である。バインダ、導電助剤は、例えば、正極1で例示した同様のバインダ、導電助剤の中のものを適用できる。なお、バインダは正極1での例示に加え、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、アルコキシシリル基含有樹脂なども適用できる。
【0022】
正極1と負極2とは、活物質層が異なる硬さ(硬度)であり、正極1のほうが負極2よりも活物質層が硬い。活物質層の硬さ(例えば、ビッカース硬さ試験で測定されたビッカース硬さ[HV])は、活物質層の密度によって決まり、密度が高いほど硬い。したがって、金属箔に電極ペーストを塗布して乾燥させた後のプレス工程においてプレス圧を調整して活物質層の密度を所望の密度(予め設定された設計値)にすることによって、活物質層の硬さを所望の硬さにすることができる。このように、この実施形態に係る蓄電装置では、正極1の正極活物質層の密度を負極2の負極活物質層の密度よりも高くして、正極1の正極活物質層を負極2の負極活物質層よりも硬くしている。
【0023】
セパレータ3は、正極1と負極2とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。特に、2枚のシート状のセパレータ3,3によって正極1のタブ1a以外の部分を包み込むために、2枚のシート状のセパレータ3,3の端部におけるタブ1a以外の部分が溶着部4で接合された袋状のセパレータとなっている。セパレータ3は、略矩形状である。セパレータ3は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布である。
【0024】
図1を参照して、正極1、負極2、セパレータ3からなる電極組立体10の積層工程について説明する。まず、2枚のセパレータ3,3の間に正極1が挟み込まれ、正極1のタブ1a以外の矩形状の部分がセパレータ3の中央部に配置される。正極1のタブ1a以外の矩形状の部分の大きさは、矩形状のセパレータ3の大きさよりも小さい。したがって、正極1のタブ1a以外の部分は、セパレータ3,3によって全て覆われている。次に、2枚のセパレータ3.3の端部(2枚のセパレータ3,3が接して重ねられている部分)においてタブ1a以外の部分が熱溶着され、溶着部4となる。これによって、正極1は、袋状となったセパレータ3,3によってタブ1a以外の部分が包まれる。したがって、この袋状のセパレータ3,3では、タブ1aの部分が非溶着部分となっており、この部分だけが空いている。なお、正極1の矩形状の部分をセパレータ3よりどの程度小さくするかは、熱溶着されないように、溶着部4となる領域を考慮して小さくするとよい。
【0025】
次に、正極1を包み込んだ袋状のセパレータ3,3の両側に負極2がそれぞれ配置され、積層される。負極2のタブ2a以外の矩形状の部分の大きさは、矩形状のセパレータ3の大きさと略同じ大きさである。したがって、負極2のタブ2a以外の矩形状の部分の大きさは、正極1のタブ1a以外の矩形状の部分の大きさよりも大きい。このように、多数の正極1を包み込んだ袋状のセパレータ3,3の両側に負極2,2がそれぞれ積層されて、電極組立体10が構成される。
【0026】
なお、この積層されている多数の正極1のタブ1aが溶接されて導電部材に接続されるとともに、多数の負極2のタブ2aが溶接されて導電部材に接続される。このタブ溶接のときに、スパッタが発生し、溶接時にスパッタが飛び散ったりあるいはスパッタが溶接された部分やタブに付着している場合がある。
【0027】
この電極組立体10では、正極1の正極活物質層が負極2の負極活物質層よりも硬い。そのため、負極2とセパレータ3との間に異物(例えば、スパッタ)が入った場合、負極2側が大きく変形してセパレータ3を介した正極1側が殆ど変形しない。そのため、セパレータ3の変形量(伸び量)が小さく、セパレータ3が破断し難い。一方、正極1とセパレータ3との間に異物が入った場合、正極1側が殆ど変形せずに、セパレータ3を介した負極2側が大きく変形する。そのため、セパレータ3の変形量が大きくなり、この変形量がセパレータ3の引張伸びの許容量を超えると、セパレータ3が破断する。したがって、正極1とセパレータ3との間に異物が入らないようにする必要がある。
【0028】
正極1は溶着部4で2枚のセパレータ3,3を溶着した袋状のセパレータで包まれているが、タブ1aの部分で溶着が途切れ、非溶着部分5となっている。そのため、この非溶着部分5から異物が入る可能性がある。そこで、この非溶着部分5から異物が入らないようにするために、袋状のセパレータ3,3で包まれた正極1のタブ1aに積層方向に曲げを形成し、この曲げられたタブ1aによって非溶着部分5を覆うようにしている。
【0029】
図2を参照して、正極1のタブ1aの曲げの形態を説明する。ここでは、3つの曲げの形態を示す。
図2は、袋状セパレータ3,3に包まれた正極1のタブ1aの構造を模式的に示す側断面図である。この
図2では、タブ1aで溶着できない非溶着部分5での側断面を示している。この例では、金属箔1bの両面に正極活物質層1c,1dが形成され、その外側に袋状の各セパレータ3,3がそれぞれ配置されている。
【0030】
図2(a)を参照して、正極1Aのタブ1a
Aの曲げの形態ついて説明する。タブ1a
Aには、折り目1eでの積層方向の一方側への折り曲げ、折り目1fでの他方側への折り返し、折り目1gでの一方側への折り返し、折り目1hでの上方への折り曲げが形成される。このタブ1a
Aの複数の折り返しにより、非溶着部分5(特に、金属箔1bの一方の面側の正極活物質層1cとセパレータ3との間及び他方の面側の正極活物質層1dとセパレータ3との間)を覆うことができる。
【0031】
図2(b)を参照して、正極1Bのタブ1a
Bの曲げの形態ついて説明する。タブ1a
Bには、折り目1iでの積層方向の一方側への折り曲げが形成される。このタブ1a
Bの一方向への折り曲げにより、非溶着部分5における一方側(特に、金属箔1bの一方の面側の正極活物質層1cとセパレータ3との間)を覆うことができる。非溶着部分5における他方側(特に、金属箔1bの他方の面側の正極活物質層1dとセパレータ3との間)について、その他方側において負極2及びセパレータ3を介して積層されている正極1Bのタブ1a
Bも同じ方向に折り曲げられているので、その隣のタブ1a
Bの同じ方向の折り曲げにより、覆うことができる。
【0032】
図2(c)を参照して、正極1Cのタブ1a
Cの曲げの形態ついて説明する。タブ1a
Cは、積層方向の一方側への湾曲の曲げが形成される。このタブ1a
Cの一方向への曲げにより、非溶着部分5の一方側(特に、金属箔1bの一方の面側の正極活物質層1cとセパレータ3との間)を覆うことができる。非溶着部分5の他方側(特に、金属箔1bの他方の面側の正極活物質層1dとセパレータ3との間)について、その他方側において負極2及びセパレータ3を介して積層されている正極1Cのタブ1a
Cも同じ方向に曲げられているので、その隣のタブ1a
Cの曲げにより、覆うことができる。
【0033】
タブ1a
Aのような積層方向の両方向の曲げ(折り返し)を形成する場合、積層工程前に正極1毎に曲げを形成するとよい。また、タブ1a
Bやタブ1a
Cのように積層方向の一方向のみの曲げを形成する場合、積層工程前に正極1毎に曲げを形成してもよいし、あるいは、積層工程後に全ての正極1のタブ1aを束ねて曲げを形成してもよい(この場合、タブ溶接工程の前でもよいし、後でもよい)。
【0034】
上記したようなタブ1aの積層方向の各形態の曲げにより袋状のセパレータ3,3の非溶着部分5を覆うことができるので、非溶着部分5から異物が入ることを防止でき、正極1(正極活物質層1c,1d)とセパレータ3との間に異物が入らない。異物としては、例えば、上記したタブ溶接で発生したスパッタが考えられる。溶接中にスパッタが飛び散ったりあるいは溶接後に電極組立体10のタブ1a側が上側になったときに付着していたスパッタが落ちてきたりしても、そのスパッタが曲げが形成されているタブ1aによって遮られて、袋状のセパレータ3,3の非溶着部分5まで到達しない。
【0035】
正極1(正極活物質層1c,1d)とセパレータ3との間に異物が入らないので、異物によってセパレータ3が破断するようなこともない。そのため、セパレータ3が正常に機能し、正極1と負極2とが内部短絡するようなこともない。
【0036】
この実施形態に係る蓄電装置によれば、袋状のセパレータ3,3で包まれる正極1(活物質層が硬いほうの電極)のタブ1aに積層方向に曲げを形成することにより、簡単な構造によってセパレータ3,3で包まれる正極1とセパレータ3との間に異物が入らないようにすることができる。その結果、異物によってセパレータ3が破断するのを防止できるので、異物による内部短絡を防止でき、安全性を向上させることができる。また、タブ1aに曲げを形成するだけなので、別途の部材や大きなスペースを必要としない。
【0037】
タブ1aの曲げとして積層方向の両方向への複数の折り返しとすることにより、袋状のセパレータ3,3の非溶着部分5を確実に覆うことができる。また、タブ1aの曲げとして積層方向の一方向の曲げとすることにより、積層される全ての正極1のタブ1aを束ねて曲げを形成することも可能となり、曲げを形成するための作業工数を低減できる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0039】
例えば、上記実施形態では正極ほうが負極よりも活物質層が硬い蓄電装置に適用し、セパレータで正極を包む構成としたが、負極ほうが正極よりも活物質層が硬い蓄電装置にも適用でき、その場合にはセパレータで負極を包む構成とする。この場合、負極のタブに積層方向に曲げを形成する。
【0040】
また、本実施の形態ではセパレータの接合方法として熱溶着としたが、接着剤による接着等の他の接合方法でもよい。また、タブ以外の部分を全て熱溶着で接合したが、セパレータを半分に折り曲げ、残りの部分を接合すようなものでもよい。
【0041】
また、上記実施形態では正極のタブの積層方向の曲げの3つの形態を示したが、袋状のセパレータの非溶着部分を覆い、異物が入らないようにできるのであれば、他の形態の積層方向の曲げとしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1(1A〜1C)…正極、1a(1a
A〜1a
C)…タブ、1b…金属箔、1c,1d…正極活物質層、1e〜1i…折り目、2…負極、2a…タブ、3…セパレータ、4…溶着部、5…非溶着部分、10…電極組立体。