特許第6340941号(P6340941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6340941光ファイバ用冷却装置及び光ファイバの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6340941
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】光ファイバ用冷却装置及び光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/027 20060101AFI20180604BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   C03B37/027 Z
   G02B6/02 356A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-125552(P2014-125552)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-3175(P2016-3175A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】越水 成樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慎治
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−542911(JP,A)
【文献】 特開昭61−132896(JP,A)
【文献】 特開2001−304776(JP,A)
【文献】 特開平05−299722(JP,A)
【文献】 特開2002−104837(JP,A)
【文献】 特開2007−063086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00 − 37/16
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に突き合わされることにより光ファイバが挿通可能な挿通孔を形成する一対の冷却装置本体を備え、前記挿通孔に通された前記光ファイバを冷却する光ファイバ用冷却装置であって、
前記一対の冷却装置本体それぞれを前記光ファイバの走行方向に沿って支持する支持部材を更に備え、
前記一対の冷却装置本体それぞれは、一部において固定部材により前記支持部材に固定されると共に、他の部分においては前記光ファイバの走行方向にスライド可能な接続部材により前記支持部材と接続されている、光ファイバ用冷却装置。
【請求項2】
前記一対の冷却装置本体それぞれは、前記光ファイバの走行方向における両端部において、スライド可能な前記接続部材により前記支持部材に接続されている、請求項1に記載の光ファイバ用冷却装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記一対の冷却装置本体よりも高強度である、請求項1又は2に記載の光ファイバ用冷却装置。
【請求項4】
前記一対の冷却装置本体を相互に突き合わせるための駆動手段を更に備え、
前記一対の冷却装置本体それぞれは、前記駆動手段の配置される中央部において、前記固定部材により前記支持部材に固定されている、請求項1〜3の何れか一項に記載の光ファイバ用冷却装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の光ファイバ用冷却装置を用いて光ファイバを製造する光ファイバの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ用冷却装置及び光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバは、石英等の材料で製造された光ファイバ母材の下端側を加熱して軟化させ、この軟化させた部分に張力をかけて引き伸ばすことで細径化されたガラスファイバとし、さらにその周囲に樹脂を被覆することにより得られる。この光ファイバ母材を細径化して光ファイバとする工程は、線引きと呼ばれている。線引きされた光ファイバは、キャプスタンローラ等の引き取り手段により、その製造ラインの下流側に引き取られてボビン等に巻き取られる。
【0003】
上記のように光ファイバを製造する際、光ファイバ母材から引き伸ばしたガラスファイバは冷却装置内へ通される。そして、この冷却装置では、例えば、ヘリウムガス等の熱伝達率の高い冷却ガスをガラスファイバへ吹き付け、これによりガラスファイバを強制的に冷却している。ガラスファイバを冷却する冷却装置としては、半割構造の装置であって、開閉可能な一対の冷却装置本体を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この冷却装置では、一対の冷却装置本体が相互に突き合わされて閉じることにより、ガラスファイバが挿通可能な挿通孔が形成され、その挿通孔内でガラスファイバが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−220988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような冷却装置における冷却装置本体は、例えばアルミニウム等の熱伝導率の高い材料によって形成されることが多く、高温状態で形成された光ファイバを冷却するための冷却ガスにより、冷却装置の稼働時には、例えば常温(25℃)から極低温へと冷却される。このように冷却装置本体は常温(装置停止時)と極低温(装置稼働時)との間を反復するため、冷却装置本体が熱膨張及び熱収縮を繰り返すことになる。その結果、突き合わせ面自体が歪んでしまい、突き合わせ面の間に隙間が形成され、それにより、比較的高価な冷却ガスがその隙間から装置外部に漏れてしまうことがある。
【0006】
そこで、本発明は、冷却ガスの漏れを抑制して、冷却効率を向上することができる光ファイバ用冷却装置及び光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光ファイバ用冷却装置は、相互に突き合わされることにより光ファイバが挿通可能な挿通孔を形成する一対の冷却装置本体を備え、挿通孔に通された光ファイバを冷却する光ファイバ用冷却装置であって、
一対の冷却装置本体それぞれを光ファイバの走行方向に沿って支持する支持部材を更に備え、
一対の冷却装置本体それぞれは、一部において固定部材により支持部材に固定されると共に、他の部分においては前記光ファイバの走行方向にスライド可能な接続部材により支持部材と接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷却ガスの漏れを抑制して、冷却効率を向上することができる光ファイバ用冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバ用冷却装置を備えた光ファイバ製造装置の概略構成図である。
図2】装置停止時であって開放状態の光ファイバ用冷却装置を示す正面図である。
図3図2の光ファイバ用冷却装置の一部を拡大した平面図である。
図4】装置稼働時であって閉じた状態の光ファイバ用冷却装置を示す正面図である。
図5図4の光ファイバ用冷却装置の一部を拡大した平面図である。
図6】冷却装置本体で発生する反りを模式的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本願発明に係る光ファイバ用冷却装置は、(1)相互に突き合わされることにより光ファイバが挿通可能な挿通孔を形成する一対の冷却装置本体を備え、挿通孔に通された光ファイバを冷却する光ファイバ用冷却装置であって、一対の冷却装置本体それぞれを光ファイバの走行方向に沿って支持する支持部材を更に備え、一対の冷却装置本体それぞれは、一部において固定部材により支持部材に固定されると共に、他の部分においては光ファイバの走行方向にスライド可能な接続部材により支持部材と接続されている。
【0011】
上記の光ファイバ用冷却装置では、挿通孔を形成する一対の冷却装置本体それぞれを光ファイバの走行方向(長手方向)から反らないように支持部材によって支持及び固定している。このため、上記の光ファイバ用冷却装置によれば、一対の冷却装置本体が形成する挿通孔からの冷却ガスの漏れを抑制して、光ファイバ用冷却装置の冷却効率を向上させることができる。
【0012】
もう少し詳細に説明すると、一対の冷却装置本体が光ファイバの走行方向における両端部において支持部材に固定されている場合、冷却装置本体と支持部材との温度変化に伴う伸縮差を阻害してしまう(吸収できない)場合がある。具体的には、光ファイバ冷却装置を稼働して極低温まで冷却すると、例えばアルミニウム等から構成される冷却装置本体が縮み、中央部がへこむ。その状態で中央部は開閉シリンダに押されており、冷却装置本体はまっすぐになるように矯正される。しかし、その後、常温に戻ると、例えば支持部材を構成するSUS材よりも冷却装置本体を構成するアルミニウムの方が膨張するため、中央部が膨らむ形で反りが残留してしまう。しかしながら、上記構成(1)等の光ファイバ冷却装置によれば、冷却装置本体の一部(例えば端部)がスライド可能な接続部材により支持部材に接続されているため、反りが生じても、反りが解消するようにスライドさせることができ、上述した熱膨張に伴う反りを解消させることができる。これにより、反りが解消した状態で(若しくは反りを解消しつつ)冷却装置を固定することができるので、冷却装置本体が形成する挿通孔からの冷却ガスの漏れを更に抑制して、光ファイバ用冷却装置の冷却効率を一層向上させることができる。
【0013】
(2)一対の冷却装置本体それぞれは、光ファイバの走行方向における両端部において、スライド可能な接続部材により支持部材に接続されていてもよい。
(3)支持部材は、一対の冷却装置本体よりも高強度であってもよい。これにより、一対の冷却装置本体を支持部材によって確実に支持することができる。
(4)一対の冷却装置本体を相互に突き合わせるための駆動手段を更に備え、一対の冷却装置本体それぞれは、駆動手段の配置される中央部において、固定部材により支持部材に固定されていてもよい。
なお、上述した何れかの光ファイバ用冷却装置を用いて光ファイバを製造するようにしてもよい。
【0014】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
まず、最初に本発明の一実施形態に係る光ファイバ用冷却装置が用いられる光ファイバの製造工程について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光ファイバ用冷却装置を備えた光ファイバ製造装置の概略構成図である。図1に示されるように、光ファイバの製造装置1は、その最も上流側に、光ファイバ母材Gを加熱する加熱炉2を備えている。加熱炉2は、内側に光ファイバ母材Gが供給される円筒状の炉心管3と、この炉心管3を囲む発熱体4とを備える。加熱炉2には、加熱領域にヘリウムや窒素等のパージガスを供給する。
【0016】
加熱炉2内に供給された光ファイバ母材Gは、その下端側が加熱領域内で加熱されて軟化し、下方に引き伸ばされて細径化され、樹脂被覆前の光ファイバ(以下、「ガラスファイバ」ともいう)G1が形成される。
【0017】
加熱炉2の下流側には、ヘリウムガス等の冷却ガスを用いた冷却装置7が設けられている。加熱炉2を出た直後のガラスファイバG1は、この冷却装置7によって強制的に冷却される。これにより、ガラスファイバG1は、数百℃から室温近くまで急速に冷却される。
【0018】
冷却装置7の下流側には、例えばレーザ光式の外径測定器8が設けられており、冷却装置7を出たガラスファイバG1は、この外径測定器8によりその外径が測定され、線引き時におけるガラスファイバG1の外径が管理される。
【0019】
外径測定器8の下流側には、ガラスファイバG1に紫外線硬化型樹脂を塗布するダイス(Die)9及び塗布された紫外線硬化型樹脂を硬化させるための紫外線照射装置10が順に設けられている。このダイス9及び紫外線照射装置10を通過したガラスファイバG1は、その外周に紫外線硬化型樹脂の被覆層が形成され、光ファイバG2とされる。
【0020】
その後、光ファイバG2は、ガイドローラ11,12を介してキャプスタン(Capstan)13に引き込まれ、スクリーニング装置14及びダンサローラ15,16を介して巻き取りボビン17に送られて巻き取られる。
【0021】
次に、上記の光ファイバの製造装置1に設けられた冷却装置7の構造について詳細に説明する。
【0022】
図2は、装置停止時で開放状態となっている冷却装置を示す正面図であり、図3は、図2に示す冷却装置の一部を拡大した平面図である。図4は、装置稼働時で閉じた状態となっている冷却装置を示す正面図であり、図5は、図4に示す冷却装置の一部を拡大した平面図である。図2図5に示されるように、冷却装置7は、一対の冷却装置本体21A,21Bを備え、開閉可能な半割構造の装置である。
【0023】
冷却装置本体21A,21Bは、例えば略直方体形状のアルミニウムのブロック体からそれぞれ形成されており、その背面で、複数のボルト26A,26Bを介して支持部材25A,25Bにより固定及び支持されている。支持部材25A,25Bは、例えばSUS等の高剛性の部材から構成されており、冷却装置本体21A,21Bは、高剛性の支持部材25A,25Bに固定及び支持されることで、歪みにくいように構成されている。なお、支持部材25A,25Bは、冷却装置本体21A,21Bよりも高強度(引張り強度)の材料であればよく、SUS以外の材料から構成されていてもよい。また、支持部材25A,25Bは、その背面で駆動手段27A,27Bに接続されている。駆動手段27A,27Bは、例えば開閉シリンダである。各冷却装置本体21A,21Bは、駆動手段27A,27Bによる駆動動作により、相互に接近する方向へ移動して突き合わされたり、逆に相互に離反する方向へ移動したりするようになっている。
【0024】
冷却装置本体21A,21Bは、その長手方向(光ファイバの走行方向)の中央において、固定部材であるボルト26A,26Bにより支持部材25A,25Bに固定されている。一方、冷却装置本体21A,21Bは、その長手方向の両端部においては、ボルト26A,26Bにより支持部材25A,25Bに、スライド部材50A,50Bを介して接続されている。長手方向の両端部に位置するボルト26A,26Bと各冷却装置本体21A,21Bとの間にスライド部材50A,50Bを配置することにより、ボルト26A,26Bは、その接続位置を冷却装置本体21A,21Bに対し相対的にその長手方向にスライド可能な状態としている。なお、このスライド部材50A,50Bは、例えば、冷却装置本体21A,21Bの背面に設けられ、ボルト26A,26Bの先端部がスライド可能な溝等で構成されており、冷却装置本体21A,21Bの長手方向への伸び等を許容して、接続できる。なお、このボルト26A,26Bとスライド部材50A,50Bとを合わせて、接続部材と称する。
【0025】
また、冷却装置本体21A,21Bは、図3等に示すように、互いに対向する突き合わせ面20A,20Bを中央付近に有しており、その突き合わせ面20A,20Bには、平面視して三角形形状を呈する溝部28A,28Bが形成されている。冷却装置本体21A,21B同士が相互に突き合わされると、図5等に示すように、これら溝部28A,28Bによって四角形状の挿通孔29が形成される。そして、この挿通孔29に、光ファイバ母材Gから線引きされたガラスファイバG1が挿通され冷却される。なお、溝部28A,28Bの形状は、平面視三角形形状に限られるものではなく、四角形形状や半円形形状等であってもよい。
【0026】
冷却装置本体21A,21Bには、ガラスファイバG1に沿う長手方向の複数箇所に、冷却ガスを噴き出す吹き出し口31A,31Bが設けられており、これら吹き出し口31A,31Bにヘリウム等の冷却ガスを供給する冷却ガス供給管32A,32Bが接続されている。各冷却装置本体21A,21Bでは、冷却ガス供給管32A,32Bから冷却ガスが供給されることで、各吹き出し口31A,31Bから挿通孔29の中心へ向かって冷却ガスを噴き出す。これにより、ガラスファイバG1が冷却される。
【0027】
冷却装置本体21A,21Bは、互いに対向する突き合わせ面20A,20Bにおいて、各溝部28A,28Bの両側に形成された凹部24A及び凹部24Bを有している。凹部24A、24Bの一方には弾性部材22が取り付けられており、これと対向する凹部の面には突起部23が設けられている。
【0028】
弾性部材22は、直方体形状を呈し、突起部23と突き合わされて変形する弾性部材であり、例えば、パッキンに使用される部材やゴム部材等を挙げることができ、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が好適である。特にシリコーンゴムは耐熱温度範囲が広いので、高温ガラスの接触や低温使用にも耐えることができ、好適である。弾性部材22は、その厚みを調整することで、突起部23との気密性を確保できる領域(幅)を広くとることができる。つまり、弾性部材22の厚みを厚くすると、突起部23の位置ずれの吸収度合(幅)を高めることができる。一方、弾性部材22は、突起部23が確実に且つ破損することなく弾性部材22内に埋入されることが気密の点からは必要となり、そのような観点から、弾性部材22は、潰れやすい材料から構成されることが好ましく、例えば、その弾性率が0.8MPa以下であることが好ましい。
【0029】
突起部23は、弾性部材22と突き合わされ、弾性部材22を変形させることが可能な部材であり、例えば、金属からなる部材等が挙げられる。突起部23は、長手方向に連続するような部材でもよいし、その一部が長手方向において断続しているような部材でもよい。また、本実施形態では、突起部23は、冷却装置本体21A,21Bの一部として一体形成されているが、冷却装置本体と別部材として設けるようにしてもよい。なお、冷却装置7では、冷却を実行するために冷却装置本体21A,21Bを閉じると、冷却装置本体21Bの突起部23が冷却装置本体21Aの弾性部材22に突き合うように埋入し、冷却装置本体21Aの突起部23が冷却装置本体21Bの弾性部材22に突き合うように埋入する。そして、このような弾性部材22と突起部23との突き合わせにより、冷却装置本体21A,21Bの突き合わせ面20A,20B等に多少の歪みが発生したとしても、両突き合わせ部の間に位置する挿通孔29を中心とした内部の気密性を高めることができ、冷却ガスの外部への漏れを低減することができる。
【0030】
このような構造の冷却装置7を用いてガラスファイバG1を冷却する場合、まず、図2及び図3に示されるように、中央にガラスファイバG1を位置させると共に、冷却装置本体21A,21Bが開放された状態で、吹き出し口31A,31Bから一定流量の冷却ガスを流し始める。そして、冷却ガスを流し始めてから、駆動手段27A,27Bにより冷却装置本体21A,21Bを中央側に移動させて冷却装置7を閉じる。このとき、溝部28A,28Bは、ガラスファイバG1が通過される挿通孔29を形成する。
【0031】
そして、冷却装置本体21A,21Bが閉じたとき、冷却装置本体21Bの突起部23は冷却装置本体21Aの弾性部材22に突き合わされており、冷却装置本体21Aの突起部23は冷却装置本体21Bの弾性部材22に突き合わされており、挿通孔29を中心とした対向領域において外部との気密性が確保される。
【0032】
ところで、冷却装置7では、アルミニウム等から構成される冷却装置本体21A,21Bを、SUS等からなる高剛性の支持部材25A,25Bにより中央部で固定する一方、両端部ではスライド可能に接続するようにしている。仮に、長手方向の上下両端部のボルト26A,26Bも冷却装置本体21A,21Bに固定されていると、冷却装置本体21A,21Bと支持部材25A,25Bとの温度変化に伴う伸縮差を阻害してしまう(吸収できない)場合がある。つまり、冷却装置7によって冷却を行う際、冷却装置本体21A,21Bが縮み、その中央部が合わせ目に対して凹む。この状態で、冷却装置本体21A,21Bの中央部が支持部材25A,25Bを経由して駆動手段27A,27Bにより押されており、冷却装置本体21A,21Bは真っ直ぐになる。しかし、再び常温になると、SUS等の高剛性な支持部材25A,25Bにより、アルミニウム等からなる冷却装置本体21A,21Bの方が膨張する。その結果、図6に示すように、冷却装置本体21A,21Bの中央部が膨らむ形になり、冷却装置本体21A,21Bの両端部に反りが発生し、冷却ガスが漏れて冷却効率が低下される可能性がある。なお、図6では、反りの発生状況を分かり易く説明するため、強調して記載している。
【0033】
しかしながら、本実施形態に係る冷却装置7では、冷却装置本体21A,21Bの上下両端部において、ボルト26A,26Bによって支持部材25A,25Bを単に固定するのではなく、スライド部材50A,50Bを設け、光ファイバの走行方向にボルト26A,26Bの冷却装置本体21A,21Bに対する接続位置がスライド可能となっている。このため、温度変化に伴って冷却装置7に反りが発生したとしても、このようなスライド機構によりその反りを抑制した状態で固定でき、長手方向の両端部において挿通孔26からの冷却ガス漏れを抑制する。以上により、冷却装置7によれば、冷却効率を向上させることができる。なお、スライド部材50A,50Bは、稼働中にもスライド可能とすることもできるが、稼働中は固定するようにしても良い。
【0034】
以上、本発明をその実施形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施形態では、冷却装置本体21A,21Bに突起部23を設けると共に弾性部材22を取り付けて挿通孔29の気密性を確保していたが、支持部材25A,25Bにより冷却装置本体21A,21Bの反りが十分に抑制されている場合、突起部23及び弾性部材22を設けなくてもよい。この場合であっても、冷却装置本体21A,21Bの反りが抑制されていることにより、冷却ガスの漏れを抑制して、冷却効率を向上することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
7…冷却装置、21A,21B…冷却装置本体、25A,25B…支持部材、29…挿通孔、26A,26B…ボルト、27A,27B…駆動手段、50A,50B…スライド部材、G1…ガラスファイバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6