(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態に係るバッテリパック温度制御装置について図面を参照して説明する。
なお、本実施の形態においてバッテリパックは、電力を用いてモータを駆動して走行する電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などの電動車に搭載され、電動車の走行用電力を蓄電する走行用バッテリとして用いられるものである。
【0009】
図1から
図4に示すように、バッテリパック10は、バッテリケース12を備え、バッテリケース12の内部に、バッテリ14、周辺部品16、加熱媒体循環路18、加熱部20、ファン22、過昇温防止部24などが収容保持されている。
また、本実施の形態のバッテリパック温度制御装置100は、加熱媒体循環路18と、加熱部20と、ファン22と、過昇温防止部24とを含んで構成されている。
【0010】
図1に示すように、バッテリケース12は、平面視矩形状を呈し、長手方向を車両の前後方向に合致させて車両の車幅方向の中央に配置され、不図示のフロアパネルの下方で不図示の一対のサイドメンバの内側に配置され、バッテリケース12は、取り付け部材を介して一対のサイドメンバに取着されている。
図3に示すように、バッテリケース12は、トレー12Aと、カバー12Bとを備えている。
バッテリケース12は、トレー12Aの上方からカバー12Bを被せ、それらの間に不図示のシール材を介してねじやクリップにより締結することで構成され、内部に密閉された空間が形成されるように構成されている。
図2、
図3に示すように、バッテリケース12は、矩形状の底面1202および上面1204と、矩形状の前面1206および後面1208と、矩形状の左右の側面1210,1212とを有している。
【0011】
図1に示すように、バッテリ14は、第1のバッテリ群14Aと第2のバッテリ群14Bとを含んで構成されている。
第1のバッテリ群14Aは、2つのバッテリブロック列26から構成されている。
各バッテリブロック列26は、4個のバッテリブロック28が車両前後方向に間隔をおいて並べられて構成され、各バッテリブロック列26は、車幅方向に間隔をおいて配置されている。
各バッテリブロック28は、車幅方向に沿って2個、車両前後方向に沿って2個のバッテリモジュール30がバッテリケース12の底面1202上に並べられることで構成され、
図3に示すように、バッテリモジュール30は長方形板状の6個のバッテリセル32が厚さ方向に重ね合わされることにより形成されている。
したがって、車両前後方向で隣り合う4個のバッテリブロック28同士の間に、空気が流通可能な隙間S1が車幅方向に沿って形成されており、車幅方向において隣り合う4個のバッテリブロック28同士の間にも、空気が流通可能な隙間S2が車両前後方向に沿って形成されている。
【0012】
第2のバッテリ群14Bは、車幅方向に間隔をおいて配置された2つのバッテリモジュール30から構成されている。
各バッテリモジュール30は長方形板状の6個のバッテリセル32が厚さ方向に重ね合わされることにより形成されている。
そして、2つのバッテリモジュール30の間に空気が流通可能な隙間S3が車両前後方向に沿って形成されている。
【0013】
周辺部品16は、バッテリ14を機能させるための部品である。
周辺部品16は、バッテリパック10の長手方向において第1のバッテリ群14Aを挟んで第2のバッテリ群14Bと反対側の箇所に配置されている。
【0014】
図3、
図4に示すように、加熱部20は、加熱媒体循環路18に設けられ空気(加熱媒体)を加熱するものである。
加熱部20は、バッテリケース12の前面1206の後方で第2のバッテリ群14Bの前方箇所に配置されている。
加熱部20は、この加熱部20の箇所を通る空気を加熱するように構成されている。
本実施の形態では、加熱部20としてPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータが用いられている。
PTCヒータは、温度が上昇すると共に抵抗値が上昇する性質を有している。
したがって、PTCヒータに電流を供給して加熱動作を開始させると、温度上昇に伴いPTCヒータの抵抗値が上昇し電流値が低下していく。
そのため、PTCヒータの発熱温度の検出値に基づいてPTCヒータに供給する電流の制御を行なう必要がなく、その発熱温度を安定して維持することができ、加熱部20の構成の簡素化を図る上で有利となる。
なお、加熱部20として、ニクロム線やカーボン繊維を用いた従来公知の様々なヒータが使用可能である。その場合は、ヒータの発熱温度を検出して発熱温度が一定となるようにヒータに供給する電流制御を行なう温度制御部が必要となる。
【0015】
図3、
図4に示すように、ファン22は、加熱媒体循環路18に設けられ空気を送風するものである。言い換えると、ファン22は、加熱媒体循環路18に空気を循環させるものである。
ファン22は、バッテリケース12の上面1204の下方で第2のバッテリ群14Bの上方箇所に配置されている。
本実施の形態では、ファン22としてシロッコファンが用いられている。
図4に示すように、ファン22は、ハウジング2202と、ファンロータ2204と、モータ2206と、吸い込み口2208と、吹き出し口2210とを含んで構成されている。
ハウジング2202は、ブラケット23を介してバッテリケース12に支持されている。
ファンロータ2204は、回転軸の周方向に並べられた複数の羽根を有し、回転軸を上下方向に向けてハウジング2202に収容されている。
モータ2206は、ハウジング2202に支持され、ファンロータ2204を回転軸周りに回転させるものである。
吸い込み口2208は、ハウジング2202の下部に開口され、ファンロータ2204の回転により空気が吸い込まれる箇所である。
本実施の形態では、吸い込み口2208は、加熱媒体循環路18の内壁面を構成する後述する円盤状底面3422に対面して設けられている。
吹き出し口2210は、ファンロータ2204の回転により空気が吹き出される箇所であり、空気を車両後方に向けて吹き出すように構成されている。
【0016】
ファン22の吸い込み口2208と加熱部20とはファン吸い込み用ダクト34で連結されている。
ファン吸い込み用ダクト34の前端はバッテリケース12の前面1206の後方に位置し、空気導入用開口3402とされている。
このファン吸い込み用ダクト34の前端の内側に加熱部20が配置され、空気導入用開口3402を介してファン吸い込み用ダクト34内に吸い込まれる空気が加熱部20により加熱されるように構成されている。
ファン吸い込み用ダクト34の内部は、起立部3404と、屈曲部3406と、前後延在部3408と、円盤部3410とを有している。
起立部3404は、加熱部20の後方の箇所が第2のバッテリ群14Bの前方で上方に起立することで構成されている。
前後延在部3408は、起立部3404の上端に屈曲部3406を介して連通し、車両の前後方向に延在している。
円盤部3410は、ファン22のハウジング2202に対応した形状を有し、その内部は円盤状空間部3412となっており、円盤状空間部3412の上部は吸い込み口2208に連通している。
円盤状空間部3412は、その外周部下部が環板状底面3420で仕切られており、その中央部が円盤状底面3422で仕切られており、円盤状底面3422は環板状底面3420よりも上方の箇所に位置している。
そして、この円盤状底面3422は、起立部3404と前後延在部3408との間に屈曲部3406が介在し、また、環板状底面1202よりも上方に位置していることから、加熱部20の輻射熱が遮られる箇所となっている。
言い換えると、円盤状底面3422は、屈曲部3406とファン22との間に位置している。
【0017】
過昇温防止部24は、加熱媒体循環路18に設けられ予め定められた温度で加熱部20の加熱動作を停止するものである。
過昇温防止部24が加熱部20の加熱動作を停止する予め定められた温度は、各バッテリセル32に設けられた安全弁が開弁する作動温度よりも低い温度に設定されている。
過昇温防止部24は、ファン22の吸い込み口2208に対面する加熱媒体循環路18の内壁面の箇所である円盤状底面3422上で、吸い込み口2208の軸心の延長箇所から加熱部20寄りの箇所に配置されている。
詳細に説明すると、過昇温防止部24は、ファン22の吸い込み口2208に対向する加熱媒体循環路18の箇所で、吸い込み口2208の軸心の延長箇所から空気の流れの上流側に偏位した箇所に配置されている。すなわち、過昇温防止部24は、加熱部20からファン22の吸い込み口2208に至る経路の中で最も風量の多い箇所に配置されている。また、過昇温防止部24は、加熱部20の輻射熱が屈曲部3406により遮られる箇所に配置されている。
なお、本実施の形態では、過昇温防止部24が配置される加熱媒体循環路18の内壁面の箇所が円盤状底面3422である場合について説明したが、上記内壁面の箇所の形状は円盤状に限定されるものではなく任意である。
【0018】
本実施の形態では、
図5(A)に示すように、過昇温防止部24は、サーモスタットスイッチで構成されている。
サーモスタットスイッチは、予め定められた温度を下回る温度でオン状態となることで加熱部20への電流の供給を行い、予め定められた温度以上の温度でオフ状態となることで加熱部20への電流の供給を停止する。
なお、
図5(B)に示すように、過昇温防止部24として、後述するように予め定められた温度で溶断する温度ヒューズを用いてもよい。
【0019】
加熱媒体循環路18は、バッテリケース12の内部で空気を循環させることでバッテリ14を加熱するためのものである。
図2から
図4に示すように、加熱媒体循環路18は、バッテリケース12の内面と第1、第2のバッテリ群14A、14Bとの間の空間部と、送風ダクト36と、ファン吸い込み用ダクト34とを含んで構成されている。
送風ダクト36は、ファン22の吹き出し口2210に連結されている。
送風ダクト36は、断面が偏平な矩形状を呈して第1のバッテリ群14Aの中央でファン22から後方に延在し、後端が、ファン22から送給される吹き出される空気を後方に向けて吹き出す後端開口3602となっている。
また、送風ダクト36の下面および左右側面には複数の吹き出し口3604、3606が形成され、ファン22から送給される吹き出される空気が送風ダクト36の下方および左右側方に向けて吹き出されるように構成されている。
ファン22が駆動されると、ファン吸い込み用ダクト34の空気導入用開口3402からバッテリケース12内の空気がファン吸い込み用ダクト34内に吸い込まれる。その際に、バッテリケース12内の空気は加熱部20を通過することで加熱される。そして、加熱された空気は、ファン22の吸い込み口2208に吸い込まれ、吹き出し口2210から送風ダクト36内に吹き出される。
【0020】
そして、送風ダクト36の後端開口3602から吹き出された加熱された空気は、第1のバッテリ群14Aの後部の上面を後方に向けて流れ、次に、第1のバッテリ群14Aの後面を上方から下方に向けて流れ、次に、第1のバッテリ群14Aの左右側面の下部、第1のバッテリ群14Aの隙間S2、第2のバッテリ群14Bの左右側面の下部、第2のバッテリ群14Bの隙間S3を後方から前方に向けて流れ、第1、第2のバッテリ群14A、14Bを加熱する。
また、送風ダクト36の下面の吹き出し口3604および送風ダクト36の左右の側面の吹き出し口3606から吹き出された加熱された空気は、第1のバッテリ群14Aの上面を左右側方に向けて流れ、次に、第1のバッテリ群14Aの側面を上方から下方に向けて流れ、次に、第1のバッテリ群14Aの左右側面の下部および第2のバッテリ群14Bの左右側面の下部を後方から前方に向けて流れ、第1、第2のバッテリ群14A、14Bを加熱する。
また、送風ダクト36の下面の吹き出し口3604および送風ダクト36の左右の側面の吹き出し口3606から吹き出された空気は、第1のバッテリ群14Aのバッテリブロック28の間の隙間S1、S2を上方から下方に向けて流れ、次に、第1のバッテリ群14Aの左右側面の下部、第1のバッテリ群14Aの隙間S2、第2のバッテリ群14Bの左右側面の下部、第2のバッテリ群14Bの隙間S3を後方から前方に向けて流れ、第1、第2のバッテリ群14A、14Bを加熱する。
第1、第2のバッテリ群14A、14Bを加熱した空気は、ファン吸い込み用ダクト34の空気導入用開口3402からファン吸い込み用ダクト34内に吸い込まれ、その際に、加熱部20で加熱され、加熱された空気の循環による第1、第2のバッテリ群14A、14Bの加熱が繰り返してなされる。
【0021】
次に、
図5(A)を参照してバッテリパック温度制御装置100の制御系について説明する。
バッテリパック温度制御装置100は、電源部40と、リレー42と、過昇温防止部24と、温度センサ44と、コントローラ46とを含んで構成されている。
【0022】
電源部40は、加熱部20に電流を供給するものである。
電源部40は、バッテリパック10から供給される電力で動作するものであってもよく、あるいは、バッテリパック10とは別体に設けられた補機用バッテリから供給される電力で動作するものであってもよい。
【0023】
リレー42は、電源部40と加熱部20との間に設けられ、コントローラ46の制御によりオン、オフ動作するものである。
過昇温防止部24は、加熱部20と電源部40との間に直列接続されている。
温度センサ44は、バッテリモジュール30毎に設けられ、各バッテリモジュール30の温度を検出するものである。
コントローラ46は、各温度センサ44からの温度の検出結果に基づいてリレー42のオンオフ制御を行なうものである。
【0024】
次に、バッテリパック温度制御装置100の動作について説明する。
コントローラ46は、各温度センサ44からの温度の検出結果に基づいてバッテリ14の加熱が必要であるか否かを判定する。
例えば、各バッテリモジュール30の温度が予め定められた第1のしきい値TLを下回った場合にバッテリ14の加熱が必要であると判定し、リレー42をオンすることで加熱部20によるバッテリ14の加熱を実行する。
すなわち、電源部40からの電流がリレー42、加熱部20、過昇温防止部24を介して流れることで加熱部20が加熱し、ファン22が動作することで加熱媒体循環路18によってバッテリケース12の内部で加熱された空気が循環され、バッテリ14が加熱される。
これにより、バッテリ14の温度が上昇し出力が低下することが回避される。
また、コントローラ46は、各バッテリモジュール30の温度が予め定められた第2のしきい値TH(>TL)を上回った場合にバッテリ14の加熱が不要であると判定し、リレー42をオフすることで電源部40から加熱部20への電流の供給を停止してバッテリ14の加熱を停止する。
なお、ファン22は、バッテリ14の加熱が適切に行なわれるように動作制御がなされればよく、加熱部20の加熱動作時にファン22が動作し、加熱部20の加熱動作の停止時にファン22が停止するようにするなど任意である。
【0025】
また、リレー42あるいはコントローラ46の故障などにより、電源部40から加熱部20への電流供給が実行され続け、バッテリ14の温度が上昇し続け、過昇温防止部24の温度が予め定められた温度以上になると、過昇温防止部24がオン状態からオフ状態となり加熱部20への電流の供給を停止する。
これにより、バッテリ14の過剰な昇温が抑制される。
【0026】
なお、
図5(B)に示すように、過昇温防止部24として、温度ヒューズを用いてもよい。但し、温度ヒューズを用いた場合は、いったん温度ヒューズが溶断すると、温度が予め定められた温度よりも低い温度に戻っても加熱部20の加熱動作を復帰させることができないため、温度ヒューズの交換が必要となる。
これに対して過昇温防止部24としてサーモスタットを用いると、いったんオフ状態になっても、温度が予め定められた温度よりも低い温度に戻ると加熱部20の加熱動作を復帰させることができる点で有利である。
【0027】
以上説明したように本実施の形態によれば、加熱部20により加熱された空気を、バッテリケース12の内部に設けられた加熱媒体循環路18にファン22により送風することでバッテリ14を加熱すると共に、加熱媒体循環路18に設けられた過昇温防止部24により予め定められた温度で加熱部20の加熱動作を停止するようにした。そして、過昇温防止部24を、加熱部20とファン22との間に配置した。言い換えると、過昇温防止部24を、加熱部20よりも加熱媒体循環路18における空気の流れの下流側でかつファン22よりも空気の流れの上流側に配置した。
したがって、加熱部20で加熱された空気の過剰な昇温を早期に検知でき、加熱部20の過剰な昇温を早期に検知できる。そのため、過昇温防止部24によって加熱部20の加熱動作を早期に停止することができ、バッテリ14の過剰な昇温を的確に抑制しバッテリ14の耐久性の向上を図る上で有利となる。
【0028】
また、本実施の形態によれば、加熱媒体循環路18は、加熱部20とファン22との間に屈曲部3406を有し、過昇温防止部24が配置される箇所は、屈曲部3406とファン22との間であり、加熱部20から発せられる輻射熱が屈曲部3406により遮られた箇所である。
したがって、過昇温防止部24が加熱部20から発せられる輻射熱の影響を受けにくくなり、過昇温防止部24によって加熱部20の過剰な昇温をより正確に検知できる。そのため、過昇温防止部24によって加熱部20の加熱動作を的確に停止することができ、バッテリ14の過剰な昇温を的確に抑制しバッテリ14の耐久性の向上を図る上でより有利となる。
【0029】
また、本実施の形態では、過昇温防止部24は、加熱部20よりも上方の箇所に位置している。
したがって、ファン22が停止した状態であっても、加熱部20で加熱された空気が対流により過昇温防止部24に到達するので、過昇温防止部24によって加熱部20の過剰な昇温を的確に検知できる。そのため、ファン22が停止した状態であっても、過昇温防止部24によって加熱部20の加熱動作を停止することができ、バッテリ14の過剰な昇温を的確に抑制しバッテリ14の耐久性の向上を図る上でより有利となる。
【0030】
また、本実施の形態では、過昇温防止部24は、ファン22の吸い込み口2208に対面する加熱媒体循環路18の内壁面の箇所である円盤状底面3422上で、吸い込み口2208の軸心から加熱部20寄りの箇所に配置されている。
言い換えると、過昇温防止部24は、ファン22の吸い込み口2208の近傍の箇所で、吸い込み口2208の軸心から空気の流れの上流側に偏位した箇所に配置されている。
したがって、過昇温防止部24に当たる風量を大きく確保できるため、過昇温防止部24は、加熱部20で加熱された空気の温度をより早期に検知でき、加熱部20の過剰な昇温をより早期に検知できる。そのため、加熱部20が過剰に昇温した場合に、過昇温防止部24によって加熱部20の加熱動作をより早期に停止することができ、バッテリ14の過剰な昇温を的確に抑制しバッテリ14の耐久性の向上を図る上でより有利となる。