【文献】
          AD−460595,UNCLASSIFIED,  DEFENSE  DOCUMENTATION  CENTER  FOR  SCIENTIFIC  AND  THCHNICAL  INFORMATION,米国,UNITED  STATES  DEPARTMENT  OF  DEFENSE,1965年  4月  6日,R62SE26,表紙,P3-P4,P7,P21-P23,P52-P53
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記平面移動支持ユニットに設けられ、前記ノズルが前記開口面と平行する面内で前記空気取り入れ口の位置を基準とする移動範囲の限界位置に到達したことを検出する限界位置検出手段をさらに備えており、
  前記制御手段は、前記限界位置検出手段の検出結果に基づいて、前記駆動源による前記ノズルの前記2方向及びその合成方向への移動を制御することを特徴とする請求項1記載のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置。
  前記平面移動支持ユニットにより一括して前記2方向に移動され、砂の噴出方向が互いに異なる複数の前記ノズルと、これら各ノズルに互いに独立した経路で砂をそれぞれ供給する複数の供給経路とを備えており、前記複数のノズルから前記空気取り入れ口に向けて砂が放射状に拡散して噴出されることを特徴とする請求項1又は2記載のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置。
  前記供給経路は、前記ノズルからの砂の噴射方向における上流側から該ノズルに接続されていることを特徴とする請求項3記載のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置。
  前記空気取り入れ口に対して前記ノズルが接近離間する方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置。
【背景技術】
【0002】
  ターボジェットエンジンやラムジェットエンジンのようなジェットエンジンは、航空機等の飛行用エンジンとして知られている。そして、ジェットエンジンについては、その使用環境における耐久性や性能維持等の観点から、各種の吸い込み試験を行うことが必要となる。
【0003】
  上述した吸い込み試験の一つとして、砂吸い込み試験がある。砂吸い込み試験は、ジェットエンジンが砂を吸い込んでも安定動作するかどうかを評価する試験である。この砂吸い込み試験は、試験スペックを特定するのが困難な、航空機が砂漠の上空や火山灰雲等を飛行する際のジェットエンジンの作動性評価試験に代わる試験として行われることがある。
【0004】
  アメリカ合衆国国防総省(United States Department of Defense, "DoD")が制定するMIL規格(Military Standard 、通称「ミルスペック」)の中には、「航空ターボジェットエンジン及びターボファンエンジン」について述べている規格(MIL−E−5007D)があり、その規格中に、砂吸い込み試験に関する要求が存在する。
【0005】
  MIL規格をベースとした砂吸い込み試験に関して、ヘリコプター用のターボシャフトエンジンを試験対象としたものが開示されている(例えば、非特許文献1)。この試験は、エンジンの前方のノズルから空気取り入れ口に向けて砂を噴出させ、空気取り入れ口からエンジン内部に砂を吸い込ませるものである。
【0006】
  なお、ヘリコプター用のターボシャフトエンジンでは、ジェットエンジンの空気取り入れ口に異物混入防止のためのフェンス(フィルタ)を設置している場合がある。この場合に上述した試験を行うと、ノズルから噴出させた砂がフェンス(フィルタ)により遮られるので、結果として空気取り入れ口からエンジン内部に砂が吸い込まれにくくなり、また、吸い込まれてもその砂は空気取り入れ口の全体に分散されるようになる。
【0007】
  また、ヘリコプター用の別の種類のターボシャフトエンジンを試験対象とした砂吸い込み試験を開示したドキュメントも存在する(例えば、非特許文献2)。この試験では、2通りの試験を開示している。1つ目の試験は、上述した試験と同様に、エンジンの前方のノズルから空気取り入れ口に向けて砂を噴出させ、空気取り入れ口からエンジン内部に砂を吸い込ませるものである。2つ目の試験は、エンジン内部における空気取り入れ口の開口面方向における砂の分散性を1つ目の試験よりも高めるもので、エンジン内部に配置したノズルから、吸い込み空気に逆らって空気取り入れ口に向け砂を噴出させるようにしている。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
  以上に説明したMIL規格をベースとした砂吸い込み試験は、大型航空機用のジェットエンジンにも適用されることが考えられる。但し、大型航空機用のエンジンは、例えば戦闘機用のエンジンに比べて空気取り入れ口の開口径が3倍近く大きい(例えば、戦闘機用エンジン開口=φ500mm程度に対して、大型航空機用のエンジン開口=φ1400mm程度又はそれ以上)。そのため、戦闘機用のエンジンの場合のように一又は少数のノズルから噴出される砂では、大型航空機用のエンジンの空気取り入れ口の開口面方向の全体に砂を分散させることができない。
【0010】
  そこで、大型航空機用のジェットエンジンについては、空気取り入れ口の開口面方向の全体に亘って多数のノズルを分散配置して、各ノズルからそれぞれ噴出される砂が空気取り入れ口の開口面方向の全体に亘り分散してエンジンの内部に吸い込まれるようにすることが考えられる。
【0011】
  しかし、空気取り入れ口の前方に多数のノズルを配置すると、エンジンの空気吸い込み性能やエンジン自体の作動に支障が生じ、正しい試験結果を得られなくなってしまう。また、多数のノズルに砂を供給するために砂供給経路を多数に分岐するように構成すると、分岐部分等において砂が内部に堆積しスムーズな供給の妨げとなってしまう。
【0012】
  そこで、砂を放射状に噴出する拡散噴出ノズルを用いてノズル数を減らすことも検討したが、ノズルに移送されるまでに付与された砂の慣性力によってノズルから噴出した砂がさほど放射状に拡散しないことがわかった。
【0013】
  また、拡散噴出ノズルを用いてエンジンの空気取り入れ口の前方で放射状に砂を拡散させても、空気取り入れ口付近における吸い込み空気の速度や方向に影響されて、エンジンの内部に取り込まれた砂は空気取り入れ口の開口面方向の全体に均等に分散せず、局所に集中してしまいがちとなることもわかった。
【0014】
  本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、空気取り入れ口の開口径が大きい大型航空機用のジェットエンジンであっても、エンジンの空気吸い込み性能に大きな支障を生じさせることなく、空気取り入れ口の開口面方向の全体に分散してエンジン内部に砂を吸い込ませることができる砂吸い込み試験装置を提供することにある。
 
【課題を解決するための手段】
【0015】
  上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置は、
  ジェットエンジンの空気取り入れ口からエンジン内部に試験用の砂を吸い込ませるジェットエンジンの砂吸い込み試験装置であって、
  前記ジェットエンジンの外部に配置され、前記空気取り入れ口に向けて砂を噴出するノズルと、
  前記ノズルを、駆動源の駆動により前記空気取り入れ口の開口面に沿いかつ互いに交差する2方向に移動可能に支持し、前記空気取り入れ口からエンジン内部に吸い込まれる空気の通過を可能とする平面移動支持ユニットと、
  前記ノズルから噴出される砂によって前記開口面の全体が繰り返し走査される移動パターンとなるように、前記駆動源による前記ノズルの前記2方向及びその合成方向への移動を制御する制御手段と、
  を備えることを特徴とする。
【0016】
  請求項1に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置によれば、ジェットエンジンの空気取り入れ口に向けて試験用の砂を噴出するノズルを、駆動源の駆動により空気取り入れ口の開口面に沿いかつ互いに交差する2方向に移動可能に支持する平面移動支持ユニットが、空気取り入れ口からエンジン内部に吸い込まれる空気の流れを遮断しない。したがって、ジェットエンジンの空気吸い込み性能に大きな支障を生じさせる障害物が空気取り入れ口の前方に存在しない。
【0017】
  また、制御手段による制御で駆動源が、ノズルから噴出される砂によって空気取り入れ口の開口面の全体が繰り返し走査される移動パターンとなるようにノズルを移動させる。このため、開口面方向の全体に亘ってエンジン内部に砂が均等に分散することになる。
【0018】
  これにより、空気取り入れ口の開口径が大きい大型航空機用のジェットエンジンであっても、エンジンの空気吸い込み性能に大きな支障を生じさせることなく、空気取り入れ口の開口面方向の全体に分散してエンジン内部に砂を吸い込ませることができる。
【0019】
  また、請求項2に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置は、請求項1に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置において、前記平面移動支持ユニットに設けられ、前記ノズルが前記開口面と平行する面内で前記空気取り入れ口の位置を基準とする移動範囲の限界位置に到達したことを検出する限界位置検出手段をさらに備えており、前記制御手段が、前記限界位置検出手段の検出結果に基づいて、前記駆動源による前記ノズルの前記2方向及びその合成方向への移動を制御することを特徴とする。
【0020】
  請求項2に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置によれば、請求項1に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置において、ジェットエンジンの空気取り入れ口と干渉するまでノズルが移動する前に、空気取り入れ口の位置を基準とする移動範囲の限界位置にノズルが到達したことが、限界位置検出手段によって検出される。
【0021】
  したがって、限界位置検出手段の検出結果に基づいて制御手段が駆動源によるノズルの移動を制御することにより、ノズルから噴出される砂によって開口面の全体が繰り返し走査される移動パターンでノズルを確実に移動させることができる。これにより、空気取り入れ口の開口面方向の全体に分散してエンジン内部に砂を精度良く吸い込ませることができる。
【0022】
  さらに、請求項3に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置は、請求項1又は2に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置において、前記平面移動支持ユニットにより一括して前記2方向に移動され、砂の噴出方向が互いに異なる複数の前記ノズルと、これら各ノズルに互いに独立した経路で砂をそれぞれ供給する複数の供給経路とを備えており、前記複数のノズルから前記空気取り入れ口に向けて砂が放射状に拡散して噴出されることを特徴とする。
【0023】
  請求項3に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置によれば、請求項1又は2に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置において、平面移動支持ユニットにより一括して移動される複数のノズルは、各ノズルからの砂の噴出方向が互いに異なる。しかも、各ノズルには個別の独立した供給経路により砂が供給される。
【0024】
  したがって、単一のノズルの内部で砂の噴出方向を放射状に拡散させる拡散噴射ノズルを用いるより確実に、砂を放射状に拡散させた状態で噴出させることができ、かつ、単一の供給経路において各ノズルに向けて経路を分岐させるよりも内部の堆積を招かずに、確実に砂を噴出させることができる。
【0025】
  また、請求項4に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置は、請求項3に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置において、前記供給経路が、前記ノズルからの砂の噴射方向における上流側から該ノズルに接続されていることを特徴とする。
【0026】
  請求項4に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置によれば、請求項1、2又は3に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置において、ノズルからの砂の噴出方向が、供給経路からノズルへの砂の供給方向の延長線上に位置することになる。
【0027】
  したがって、ノズルに供給される砂にその供給方向への慣性力が付与されていても、その慣性力の方向はノズルからの砂の噴出方向と一致する。よって、ノズルから砂をノズルの噴出方向に精度良く噴出させることができる。
【0028】
  さらに、請求項5に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置は、請求項1、2、3又は4に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置において、前記空気取り入れ口に対して前記ノズルが接近離間する方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0029】
  請求項5に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置によれば、請求項1、2、3又は4に記載した本発明のジェットエンジンの砂吸い込み試験装置において、ノズルが空気取り入れ口に対して接近離間方向に移動可能であることから、砂吸い込み試験の前後や最中に、必要に応じてノズルをジェットエンジンから離間させて、エンジン内部の状態確認やメンテナンス作業等を容易に行えるようにすることができる。
 
【発明の効果】
【0030】
  本発明によれば、空気取り入れ口の開口径が大きい大型航空機用のジェットエンジンであっても、エンジンの空気吸い込み性能に大きな支障を生じさせることなく、空気取り入れ口の開口面方向の全体に分散してエンジン内部に砂を吸い込ませることができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0032】
  以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
 
【0033】
  図1は本発明の一実施形態に係るジェットエンジンの砂吸い込み試験装置の概略構成を示す斜視図である。
図1中引用符号1で示す本実施形態の砂吸い込み試験装置は、砂供給装置3から供給される試験用の砂を、懸架装置Aにより空中に懸架されたジェットエンジン(以下、「エンジン」と略記する。)Eに吸い込ませるためのものである。
 
【0034】
  砂供給装置3は、懸架装置Aに隣接して設置された架台C上に設けられており、
図2の模式図に示すように、試験用の砂Sが貯留される砂タンク31と、砂Sの搬送用の圧縮空気を供給する空気圧縮機COMPとを備えている。砂タンク31の砂Sは、その底部の吐出口33から下方のテーブルフィーダ35に定量ずつ吐出される。テーブルフィーダ35に吐出された砂Sは、空気圧縮機COMPからの圧縮空気によって、ホース状の供給経路5に供給される。
 
【0035】
  そして、砂吸い込み試験装置1は、上述した供給経路5と、供給経路5に接続されて砂供給装置3から砂Sが供給されるノズル11と、ノズル11を水平方向X及び鉛直方向Yに移動させるノズル移動ユニット13と、ノズル移動ユニット13の動作を制御する制御ユニット15とを有している。
図1に示すように、ノズル11及びノズル移動ユニット13は、エンジンEの空気取り入れ側に取り付けた整流用のベルマウスBに対向して配置されたフレームユニット7に実装されている。
 
【0036】
  フレームユニット7は、
図3(b)の側面図に示すように、固定フレーム71と、固定フレーム71に対して前後方向Zにスライド可能に連結された可動フレーム73とを備えており、この可動フレーム73にノズル11及びノズル移動ユニット13が設けられている。そして、固定フレーム71に対して可動フレーム73を前方にスライドさせると、エンジンEの空気取り入れ口E1にノズル11及びノズル移動ユニット13が接近する。可動フレーム73を後方にスライドさせると、空気取り入れ口E1からノズル11及びノズル移動ユニット13が離間する。
 
【0037】
  図2に模式的に示すように、フレームユニット7に実装されたノズル11は、砂供給装置3から供給される砂Sを、整流用のベルマウスBを取り付けたエンジンEの空気取り入れ口E1に向けて噴出する。ベルマウスBは、空気取り入れ口E1の内径とほぼ同じ開口径で形成されている。
 
【0038】
  ノズル移動ユニット13(請求項中の平面移動支持ユニットに相当)は、
図3(b)及び
図3(c)の平面図に示すように、可動フレーム73の先端に設けられている。そして、
図4(a)の正面図に示すように、ノズル移動ユニット13は、左右一対の鉛直フレーム13a,13bと、これら鉛直フレーム13a,13bの上端間を接続する水平フレーム13cと、鉛直フレーム13a,13bにより昇降可能に支持された昇降フレーム13dとを有している。
 
【0039】
  各鉛直フレーム13a,13bの内部には、
図5(a),(d)に拡大した背面図及び側面図でそれぞれ示すように、ボールネジ13e,13fが延設されている。各ボールネジ13e,13fのネジ軸は、
図5(b)の拡大平面図に示すギアボックス13g,13h,13i及び連結シャフト13j,13kを介して、Y軸モータ13lに機械的に結合している。
 
【0040】
  各ボールネジ13e,13fのナットには、
図5(a)に示すように、各鉛直フレーム13a,13bの外部に配置した取付部材13m,13nが、各鉛直フレーム13a,13bの側面に形成したガイドスリット13o,13pを介して連結されている。
 
【0041】
  昇降フレーム13dは、取付部材13m,13n間に架設されており、Y軸モータ13lの駆動によりボールネジ13e,13fのネジ軸が回転駆動されることで、取付部材13m,13nと共にガイドスリット13o,13pの範囲内で鉛直方向Yに昇降する。昇降フレーム13dが昇降範囲の上限及び下限に達したことは、非接触式のリミットスイッチ19a,19b(
図7参照)によって検出される。
 
【0042】
  昇降フレーム13dの内部には、
図5(c)に鉛直方向中間部の拡大平面図で示すように、ボールネジ13qが延設されている。このボールネジ13qのネジ軸は、X軸モータ13rに結合している。また、ボールネジ13qのナットには、
図5(d)に示すように、昇降フレーム13dの外部に配置したノズルホルダ11aが、
図5(c)に示すように昇降フレーム13dの上面に形成したガイドスリット13tを介して連結されている。ノズルホルダ11aは、
図4(b)の側面図に示すように、昇降フレーム13dから前後方向Zの後方に延出している。
 
【0043】
  ノズルホルダ11aは、X軸モータ13rの駆動によりボールネジ13qのネジ軸が回転駆動されることで、ガイドスリット13tの範囲内で、昇降フレーム13dに沿って水平方向Xに移動する。ノズルホルダ11aが移動範囲の左限及び右限に達したことは、非接触式のリミットスイッチ19c,19d(
図7参照)によって検出される。
 
【0044】
  ノズル11は、ノズルホルダ11aの前端から突設されており、ノズル移動ユニット13よりも前方に延出している。
図5(d)に示すように、ノズル移動ユニット13をベルマウスBに近づけた状態で、ノズル11の先端はベルマウスBの内部に延出する。
図6の斜視図に示すように、本実施形態のノズル11は、砂Sの噴出方向が互いに異なる5つのノズル111〜119で構成されている。
 
【0045】
  各ノズル111〜119は、正方形の各隅部とその正方形の中心とに分散して配置されており、中央のノズル115からの砂Sの噴出方向に対して他の4つのノズル111,113,117,119からの砂Sの噴出方向が放射状に拡がるように、各ノズル111〜119の向きが設定されている。そして、各ノズル111〜119と
図2のテーブルフィーダ35とは、互いに独立した個別の供給経路5a〜5eによってそれぞれ接続されている。
 
【0046】
  砂Sの供給経路5(5a〜5d)は、
図4(c)の平面図に示すように、図中矢印で示すノズル11(111〜119)からの砂Sの噴射方向における上流側からノズルホルダ11a乃至ノズル11(111〜119)に接続されている。
 
【0047】
  図4(b)の側面図に示すように、ノズルホルダ11aの後端は、ノズル移動ユニット13の後方に配置された移動範囲規定枠17の直前の鉛直面上に位置する。
図4(a)に示すように、移動範囲規定枠17は円形に形成されている。そして、ノズル11(111〜119)の側面がベルマウスBの内周面に接触する直前まで近づくと、ノズルホルダ11aの後端が移動範囲規定枠17の前側面に対向、近接するように構成されている。
 
【0048】
  なお、ノズルホルダ11aには、移動範囲規定枠17の前側面に対向したことを検出する非接触式のリミットスイッチ19e(
図7参照)が設けられている。そして、本実施形態では、このリミットスイッチ19eと移動範囲規定枠17とにより、請求項中の限界位置検出手段が構成されている。
 
【0049】
  以上に説明したように、本実施形態では、ノズル移動ユニット13を鉛直フレーム13a,13b、水平フレーム13c、及び、昇降フレーム13dにより枠状に構成している。また、これらのフレーム13a〜13dの後方に配置される上述の移動範囲規定枠17も、
図3(a)の正面図及び
図3(b)に示すように、同様の枠状のフレーム13vに支持させている。
 
【0050】
  したがって、ノズル移動ユニット13の全体が中空の枠状に構成されることになり、よって、ベルマウスBを介してエンジンEが空気取り入れ口E1から内部に吸い込む空気の流路上で障害物となることがない。
 
【0051】
  図2に示す制御ユニット15は、
図7に示すように、制御装置I/F(インタフェース)ユニット151と、制御装置I/Fユニット151に接続された制御盤153及びトラバース制御装置155とを有している。
 
【0052】
  制御盤153は、制御装置I/Fユニット151に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)21が計測して表示及び解析するエンジンEや砂供給装置3の動作状況のデータを受信して、空気圧力、温度、空気流量、砂供給量/砂残量等の項目の計測値を表示する。また、制御盤153は、後述するトラバース制御装置155から入力されるノズル11(111〜119)の位置(水平・鉛直)を表示する。
 
【0053】
  さらに、制御盤153は、リミットスイッチ19a〜19eが検出する、X軸モータ13rやY軸モータ13lの駆動により昇降フレーム13dやノズルホルダ11aが限界位置まで移動したことを示すアラーム表示を行う。
 
【0054】
  これに加えて、制御盤153には、砂供給装置3のテーブルフィーダ35や空気圧縮機COMPのオンオフを指令するコマンドや、ノズル移動ユニット13によるノズルホルダ11a乃至ノズル11(111〜119)のトラバース動作のオンオフを指令するコマンドを、制御装置I/Fユニット151を介して砂供給装置3やトラバース制御装置155にそれぞれ出力する。
 
【0055】
  トラバース制御装置155は、サーボアンプ155a,155bとリミットスイッチ警報回路155cとを有している。サーボアンプ155a,155bは、制御盤153からのコマンドに応じた駆動用信号(電源系、検出器系)をX軸モータ13rやY軸モータ13lに出力すると共に、X軸モータ13rやY軸モータ13lの内蔵エンコーダ(図示せず)からのモニタ/アラーム信号を、制御装置I/Fユニット151を介して制御盤153に出力する。また、リミットスイッチ警報回路155cは、各リミットスイッチ19a〜19eからの検出信号を受け、制御装置I/Fユニット151を介して制御盤153に警報信号を出力する。
 
【0056】
  制御盤153が出力するコマンドによりトラバース制御装置155のサーボアンプ155a,155bは、ノズルホルダ11aが予め定められた移動パターンでノズル移動ユニット13により移動されるように、X軸モータ13rやY軸モータ13lを駆動させる。この移動パターンによりノズルホルダ11aは、ベルマウスBの開口面内をジグザグ状にトレースするようなパターンで移動する。
 
【0057】
  これにより、ノズルホルダ11aの移動の往路及び復路のそれぞれにおいて、ノズル11(111〜119)が噴出する砂SがベルマウスB内を、
図8(a),(b)の説明図に示すような軌跡で、ベルマウスBの開口面の全体を満遍なく走査することになる。ここで、ノズル11(111〜119)が移動する際の鉛直方向Yのピッチは、
図8(a),(b)に示すように同じである。但し、ノズル11(111〜119)が水平方向Xに移動する際の位置を、
図8(a)往路と
図8(b)の復路とで、鉛直方向Yのピッチよりも短い間隔Lだけずらしている。これによって、ノズル11(111〜119)が噴出する砂SによるベルマウスB内の走査密度を、鉛直方向Yにおいて高くするようにしている。
 
【0058】
  ところで、本実施形態では、
図2に示すようにエンジンEが空気取り入れ口E1から空気を吸い込むことで生じるベルマウスB内の空気の流れは、ベルマウスBの開口端付近のテーパ状に開口径が変化する部分を除いて、おおよそ、ベルマウスBの中心軸に平行する層流となる。
 
【0059】
  したがって、ベルマウスBの開口径とほぼ同じ内径であるエンジンEの空気取り入れ口E1も、ノズル11(111〜119)が噴出する砂Sによって、
図8(a),(b)の軌跡で走査されることになる。
 
【0060】
  本実施形態の場合、ノズルホルダ11aが往復移動におおよそ5分程度の時間を要し、これを繰り返す砂吸い込み試験を2時間程度行うので、試験時間の全期間から見れば、空気取り入れ口E1からエンジンEの内部に吸い込まれる砂Sは、空気取り入れ口E1の開口面方向の全体に亘って分布することになる。
 
【0061】
  なお、サーボアンプ155a,155bによりX軸モータ13r及びY軸モータ13lを上述した移動パターンで移動させるための制御盤153による制御は、リミットスイッチ19a〜19eの検出信号に基づいたシーケンス処理によるものであっても良く、制御盤153にCPUを設け、リミットスイッチ19a〜19eの検出信号に応じた制御内容で、プログラムにしたがった処理を行わせるものであっても良い。
 
【0062】
  このように、本実施形態の砂吸い込み試験装置1によれば、ノズル移動ユニット13によりノズルホルダ11aをジグザグ状の移動パターンで移動させて、ノズル11(111〜119)から噴出される砂SによってベルマウスBの開口を、
図8(a),(b)の軌跡で走査させる構成とした。これにより、ベルマウスBを空気取り入れ口E1に接続したエンジンEの内部に、その開口面方向の全体に亘って砂Sが吸い込まれるように構成した。
 
【0063】
  そして、ノズル移動ユニット13の全体を中空の枠状に構成して、ベルマウスBを介してエンジンEが空気取り入れ口E1から内部に吸い込む空気の流路上で障害物とならないように構成した。
 
【0064】
  このため、エンジンEが、空気取り入れ口E1の開口径が大きい大型航空機用のものであっても、ノズル移動ユニット13の存在によりエンジンEの空気吸い込み性能に大きな支障を生じさせることなく、開口面方向の全体に分布するように複数のノズルを配置しなくても、空気取り入れ口E1の開口面方向の全体に分散してエンジンEの内部に砂Sを吸い込ませることができる。
 
【0065】
  図4(b)の側面図に示すように、ノズルホルダ11aの後端は、ノズル移動ユニット13の後方に配置された移動範囲規定枠17の直前の鉛直面上に位置する。
図4(a)に示すように、移動範囲規定枠17は円形に形成されている。そして、ノズル11(111〜119)の側面がベルマウスBの内周面に接触する直前まで近づくと、ノズルホルダ11aの後端が移動範囲規定枠17の前側面に対向、近接するように構成されている。
 
【0066】
  なお、制御盤153がサーボアンプ155a,155bによりX軸モータ13r及びY軸モータ13lを上述した移動パターンで移動させる制御を、リミットスイッチ19eがノズルホルダ11aの移動範囲規定枠17への近接を検出した結果に基づいて行う構成は、省略しても良い。しかし、本実施形態のようにこの構成を設ければ、ノズルホルダ11a乃至ノズル11(111〜119)を精度良く上述した移動パターンで移動させることができるので、有利である。
 
【0067】
  また、ノズル11は1つであっても良いが、本実施形態のように、互いの砂Sの噴出方向が異なり全体で放射状に砂Sを噴出する複数(5つ)のノズル111〜119を用い、各ノズル111〜119に個別の独立した供給経路5(5a〜5e)により砂供給装置3から砂Sを供給する構成とすれば、次のような利点がある。
 
【0068】
  即ち、全体で放射状に砂Sを噴出するように、各ノズル111〜119による砂Sの噴出方向を異ならせているので、単一のノズルの内部で砂の噴出方向を放射状に拡散させる拡散噴射ノズルを用いる場合のように、ノズルの内部で砂Sの流れを分岐させ、かつ、底に到達するまでに砂Sに付与された慣性力とは異なる噴出方向に砂Sの流れ方向を変化させる必要がない。
 
【0069】
  そのため、単一の拡散噴射ノズルを用いる場合には、ノズルに供給されるまでに砂Sに付与された慣性力によって、ノズルから噴出した砂Sが目的の方向に噴出されなくなる傾向が強いが、本実施形態の複数のノズル111〜119では、各ノズル111〜119が個別の方向に砂Sを噴出することで、より確実に砂Sを放射状に拡散させた状態で噴出させることができる。
 
【0070】
  これに加えて、各ノズル111〜119にそれぞれ個別の独立した供給経路5a〜5eにより砂供給装置3から砂Sを供給する構成を用いることで、単一の供給経路において各ノズル111〜119に向けて経路を分岐させる場合のような、分岐部分における砂Sの堆積を招かずに、確実に砂Sを噴出させることができる。
 
【0071】
  さらに、本実施形態のように、砂Sの供給経路5(5a〜5d)をノズル11(111〜119)からの砂Sの噴射方向における上流側からノズルホルダ11a乃至ノズル11(111〜119)に接続する構成は、省略しても良い。しかし、本実施形態のように構成すれば、次のような利点がある。
 
【0072】
  即ち、ノズル11(111〜119)からの砂Sの噴出方向が、供給経路5(5a〜5d)からノズル11(111〜119)への砂Sの供給方向の延長線上に位置することになる。そのため、供給経路5(5a〜5e)内で砂Sに付与された慣性力の方向をノズル11(111〜119)の方向と一致させ、慣性力をむしろ利用して砂Sを各ノズル11(111〜119)の噴出方向にそれぞれ精度良く噴出させることができる。
 
【0073】
  また、本実施形態のように、ノズル移動ユニット13をフレームユニット7の可動フレーム73に設け、固定フレーム71に対するスライドによりノズル11(111〜119)をベルマウスB乃至エンジンEの空気取り入れ口E1に対して接近離間可能とする構成は、省略しても良い。
 
【0074】
  しかし、この構成を設ければ、砂吸い込み試験の前後や最中に、必要に応じてノズル11(111〜119)をベルマウスB乃至エンジンEの空気取り入れ口E1から離間させて、エンジンEの内部の状態確認やメンテナンス作業等を容易に行えるようにすることができるので、有利である。