特許第6341024号(P6341024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341024
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   G03G15/20 550
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-188691(P2014-188691)
(22)【出願日】2014年9月17日
(65)【公開番号】特開2016-61880(P2016-61880A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】小川原 則雄
(72)【発明者】
【氏名】日高 啓介
【審査官】 山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−164022(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0241765(US,A1)
【文献】 特開2008−241866(JP,A)
【文献】 特開2013−057855(JP,A)
【文献】 特開2012−088372(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0093552(US,A1)
【文献】 特開2010−224287(JP,A)
【文献】 米国特許第05933695(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
B41J 29/00
B41J 2/315−2/345
B41J 2/385−2/465
B41J 2/475−2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を照射する光源と、
前記レーザー光が入射する第1面および出射する第2面を有し、当該第1面から入射したレーザー光を集光して当該第2面から出射するレンズを含む集光部材と、
前記集光部材と接触する位置に設けられたローラーであって、当該ローラーと前記集光部材との間に進入した記録媒体を搬送するローラーと
を有し、
前記第2面の一部が、前記レーザー光を透過しない材料で形成されており、
前記ローラーの回転軸に垂直な断面において、前記ローラーと前記集光部材との接触面が、前記レーザー光を透過しない材料で形成された部分の少なくとも一部を含む
定着装置。
【請求項2】
前記材料は、前記集光部材の表面の一部を覆うコーティング材であり、
前記ローラーの回転軸に垂直な断面において、前記ローラーと前記集光部材との接触面が、前記コーティング材で覆われた表面の少なくとも一部を含む
請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記レンズは、前記材料で形成された遮光層を有し、
前記ローラーの回転軸に垂直な断面において、前記ローラーと前記集光部材との接触面が、前記遮光層の表面の少なくとも一部を含む
請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記集光部材は、前記レーザー光を透過する素材で形成され、前記レンズが内部に収容され、当該レンズに対して回転する筒体を有し、
前記筒体は、前記ローラーの回転に伴って回転し、前記記録媒体を搬送する
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ローラーの回転軸に垂直な断面における前記接触面の両端の位置に、前記材料で形成された面が含まれる
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記ローラーの回転軸に平行な断面において、前記接触面が、前記材料で形成された面の少なくとも一部を含む
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記記録媒体上にトナー像を形成する画像形成手段と、
前記形成されたトナー像を前記記録媒体上に定着させる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の定着装置と
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、レーザー光を照射することによりトナーを記録媒体に定着させる技術が用いられている。特許文献1には、記録材上の加熱定着可能な画像に対し当該記録材の搬送方向に交差する方向に沿って延びる照射領域に向かってレーザー光を照射するレーザー光源と、照射領域を囲うように設けられかつレーザー光源から照射されたレーザー光による照射領域からの反射光が照射領域に向かって再照射されるように反射光を反射する反射面を有する反射部材と、この反射部材の記録材に向かう側の端部に連なるように設けられ、記録材の搬送面に対向しかつ反射部材の外方に向かって延びる部分を有してレーザー光が吸収可能な光吸収部材と、を備える定着装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、照射部よりも記録媒体搬送方向上流側で照射部側から記録媒体に外周面を接する、光を透過しない第1ローラーと、照射部よりも記録媒体搬送方向下流側で照射部側から記録媒体に外周面を接する、光を透過しない第2ローラーと、搬送路を挟んで第1ローラーに外周面を接する第3ローラーと、搬送路を挟んで第2ローラーに外周面を接する第4ローラーと、照射部よりも記録媒体搬送方向上流側および下流側で、搬送路を照射部側から覆う、光を透過しない遮光板とを有する定着装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−88372号公報
【特許文献2】特開2013−57855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、レーザー光を照射することによりトナーを記録媒体に定着させる定着装置において、レーザー光の漏れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る定着装置は、レーザー光を照射する光源と、前記レーザー光が入射する第1面および出射する第2面を有し、当該第1面から入射したレーザー光を集光して当該第2面から出射するレンズを含む集光部材と、前記集光部材と接触する位置に設けられたローラーであって、当該ローラーと前記集光部材との間に進入した記録媒体を搬送するローラーとを有し、前記第2面の一部が、前記レーザー光を透過しない材料で形成されており、前記ローラーの回転軸に垂直な断面において、前記ローラーと前記集光部材との接触面が、前記レーザー光を透過しない材料で形成された部分の少なくとも一部を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る定着装置は、請求項1に記載の定着装置において、前記材料は、前記集光部材の表面の一部を覆うコーティング材であり、前記ローラーの回転軸に垂直な断面において、前記ローラーと前記集光部材との接触面が、前記コーティング材で覆われた表面の少なくとも一部を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係る定着装置は、請求項1に記載の定着装置において、前記レンズは、前記材料で形成された遮光層を有し、前記ローラーの回転軸に垂直な断面において、前記ローラーと前記集光部材との接触面が、前記遮光層の表面の少なくとも一部を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係る定着装置は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の定着装置において、前記集光部材は、前記レーザー光を透過する素材で形成され、前記レンズが内部に収容され、当該レンズに対して回転する筒体を有し、前記筒体は、前記ローラーの回転に伴って回転し、前記記録媒体を搬送することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る定着装置は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の定着装置において、前記ローラーの回転軸に垂直な断面における前記接触面の両端の位置に、前記材料で形成された面が含まれることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6に係る定着装置は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の定着装置において、前記ローラーの回転軸に平行な断面において、前記接触面が、前記材料で形成された面の少なくとも一部を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7に係る画像形成装置は、前記記録媒体上にトナー像を形成する画像形成手段と、前記形成されたトナー像を前記記録媒体上に定着させる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の定着装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1および7に係る発明によれば、レーザー光を照射してトナーを記録媒体に定着させる定着装置において、レーザー光の漏れを抑制することができる。
請求項2に係る発明によれば、集光部材の表面の一部がコーティング材で覆われていない場合と比べて、ローラーと集光部材との接触面で発生する段差が軽減する。
請求項3に係る発明によれば、レンズが遮光層を有しない場合と比べて、ローラーとレンズとの接触面で発生する段差が軽減する。
請求項4に係る発明によれば、ローラーの回転に伴って回転する筒体によって搬送される記録媒体にレーザー光を照射する定着装置において、レーザー光の漏れを抑制することができる。
請求項5に係る発明によれば、レーザー光を透過しない材料で形成された面が接触面の両端に含まれない場合と比べて、レーザー光の漏れを抑制することができる。
請求項6に係る発明によれば、ローラーの回転軸に平行な断面において接触面がレーザー光を透過しない材料で形成された面を含まない場合と比べて、レーザー光の漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
図2】第1実施形態に係る定着装置の全体構成および透明チューブの断面構成例を示す説明図である。
図3】第1実施形態に係る定着装置の要部の各組立部品を示す分解説明図である。
図4】第1実施形態に係る定着装置の各組立部品の組立状態を示す説明図である。
図5】第1実施形態に係る定着装置の透明チューブの光入射位置、光出射位置でのレーザー光の挙動および透明チューブ断面構成例を示す説明図である。
図6】第1実施形態に係る定着装置の駆動機構の一例を示す説明図である。
図7】(a)は第1実施形態に係る定着装置の接触域での定着過程を模式的に示す説明図、(b)は第1実施形態に係る定着装置による定着過程においてレーザー光照射以降のトナー像の温度変化の一例を示す説明図である。
図8】第2実施形態に係る定着装置の全体構成例を示す図である。
図9】変形例に係る定着装置の全体構成例を示す図である。
図10】(a)はレンズパッド組立体の変形の形態を示す説明図、(b)はその要部を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.第1実施形態
1−1.全体構成
図1は画像形成装置の全体構成を示す図である。画像形成装置は、画像形成部20と、中間転写体30と、一括転写装置50と、定着装置80とを装置筐体60内に備えている。画像形成部20(具体的には20a〜20d)は、記録媒体S上に作像材料を用いて複数の色成分(本例ではイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の画像(トナー像)を形成する。中間転写体30はベルト状の部材であり、各画像形成部20にて形成された各色成分の画像を記録媒体Sに転写する前に一時的に保持して搬送する。一括転写装置(二次転写装置)50は、中間転写体30上に保持された各色成分画像を記録媒体Sに一括転写する。定着装置80は、一括転写装置50にて記録媒体S上に転写された非定着画像を定着する。画像形成部20、中間転写体30および一括転写装置50の少なくともいずれかひとつは、記録媒体S上にトナー像を形成する画像形成手段の一例である。
【0016】
各画像形成部20の基本的構成は電子写真方式を採用したものである。各画像形成部20は、感光体21を有し、感光体21の周囲には、帯電装置22と、潜像書込装置23と、現像装置24と、清掃装置25とが順次設置されている。感光体21は、表面に感光層が形成されかつ予め決められた方向に回転可能なドラム状の部材である。帯電装置22は、例えばコロトロンであり、感光体21を予め帯電する。潜像書込装置23は、例えばレーザー走査装置であり、帯電装置22にて帯電された感光体21上に光で静電潜像を書き込む。現像装置24は、潜像書込装置23にて書き込まれた静電潜像を各色成分トナーにて現像する。清掃装置25は、感光体21上の残留トナー等を清掃する。
【0017】
中間転写体30は、複数の張架ロール31〜36に掛け渡されるベルト部材からなる。中間転写体30は、例えば張架ロール31を駆動ロールとし、他の張架ロール32〜36を従動ロールとして予め決められた方向に循環回転するようになっている。本例では、張架ロール33は中間転写体30に予め決められた張力を付与する張力付与ロールとして機能し、また、張架ロール35は一括転写装置50の一要素である対向ロール52を兼用している。
【0018】
各画像形成部20(20a〜20d)に対応する中間転写体30の裏面には一次転写装置40が設置されている。本例では、一次転写装置40は例えば一次転写電圧が印加される転写ロールを有し、この転写ロールと感光体21との間に一次転写電界を形成することで感光体21上の画像を中間転写体30に一次転写させるように機能するものである。中間転写体清掃装置37は、中間転写体上の残留トナー等を清掃する。
【0019】
一括転写装置(二次転写装置)50は、中間転写体30の張架ロール35を対向ロール52とし、対向ロール52に対向する中間転写体30の表面側に転写ロール51を有すると共に、対向ロール52の表面には給電ロール53を設置したものである。本例では、一括転写装置50は、給電ロール53に一括転写電圧(二次転写電圧)を印加すると共に転写ロール51を接地することで、転写ロール51と中間転写体30との間に一括転写電界(二次転写電界)を形成し、中間転写体30上の各色成分の画像を記録媒体Sに一括転写するように機能するものである。記録媒体Sは収容装置71に収容される。記録媒体Sは、収容装置71から1枚ずつ送出された後に複数の搬送ロール72,73を経て位置決めロール74まで搬送され、位置決めロール74にて位置決めされた後に一括転写装置50の一括転写域へと搬送される。記録媒体Sは、一括転写域を通過した後搬送ベルト75を経て定着装置80に搬送され、排出ロール76を経て図示外の排出受けに排出される。
【0020】
1−2.定着装置の構成
図2は、定着装置80の全体構成および透明チューブ81の断面構成例を示す説明図である。定着装置80は、透明チューブ81(筒体の一例)と、対向ロール82(ローラーの一例)と、レーザー光照射装置83(光源の一例)と、レンズパッド90(レンズの一例)と、保持枠100とを備えている。透明チューブ81は、レーザー光Bmを透過する素材で形成された筒体である。透明チューブ81は、保持枠100およびレンズパッド90を内部に収納する。保持枠100およびレンズパッド90と透明チューブ81とは固定されておらず、透明チューブ81は、保持枠100およびレンズパッド90に対して回転する。対向ロール82は、レンズパッド90と接触する位置に設けられ、レンズパッド90との間に進入した記録媒体Sを搬送する。この例で、対向ロール82とレンズパッド90との間とは、対向ロール82とレンズパッド90との間隙を示す。対向ロール82は、透明チューブ81に対向して設けられ、透明チューブ81との間に接触域nを形成する。透明チューブ81は、対向ロール82の回転に伴って回転し、記録媒体Sを搬送する。
【0021】
レーザー光照射装置83は、透明チューブ81の外部に設けられ、透明チューブ81のうち予め決められた光入射位置Aに向けてレーザー光Bmを照射する。レンズパッド90は、透明チューブ81の内部に設けられ、透明チューブ81の接触域nにて透明チューブ81を対向ロール82側に押し付ける。また、レンズパッド90は、記録媒体S上の画像Gに対し透明チューブ81の光入射位置Aに照射されたレーザー光Bmを接触域n内にて記録媒体Sの搬送方向で集光する加圧兼用集光部材である。
【0022】
1−2−1.透明チューブ
透明チューブは、対向ロール82の回転に伴って回転し、記録媒体Sを搬送する。本例において、透明チューブ81における透明とは、レーザー光Bmの波長域において透過率が予め定められた閾値よりも高いことを意味する。本例において、透明チューブ81は、レーザー光Bmを透過するものであればよく、光利用効率やレンズパッド90の加熱を防止するという観点からすれば、透過率が高ければ高いほどよい。例えば透過率は90%以上、望ましくは95%以上がよい。
【0023】
透明チューブ81は、図2に示すように、基材層81aと、弾性層81bと、離型層81cとを備える3層構成となっている。基材層81aは、必要な強度を維持するための層である。弾性層81bは、基材層81aの上に積層される。離型層81cは、弾性層81bの上に積層されかつ作像材料としてのトナーが離型し易い部材で構成される。なお、本実施の形態では、透明チューブ81は、3層構造に限られず、その機能に応じた層を含んでいればよいことは勿論である。
【0024】
基材層81aは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のシリコーン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびそれらの混合物からなる群から選択される材料により構成される。弾性層81bは、LSRシリコーンゴム、HTVシリコーンゴム、RTVシリコーンゴム等により構成される。弾性層81bは、レーザー光Bmを透過するとともに記録媒体Sの凹凸やトナーによる画像Gの段差を吸収する弾性を有していればよい。離型層81cは、フッ素樹脂、例えば四フッ化エチレン重合体(PTFE)、四フッ化エチレンパーフロロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等により構成される。離型層81cは、レーザー光Bmを透過すると共に記録媒体S上に形成されたトナーによる画像Gと透明チューブ81との離型を促進するものであればよい。なお、離型層81cは、弾性層81bと協働して定着画像に好ましい光沢を与える機能も有している。
【0025】
1−2−2.対向ロール
対向ロール82は、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル等をメッキした銅板等により構成されている。対向ロール82は、透明チューブ81との間に予め決められた加圧力が作用するように配置されている。
【0026】
1−2−3.レーザー光照射装置
レーザー光照射装置83は、レーザーアレイ84と、コリメータレンズ86とを有する。レーザーアレイ84は、複数のレーザー光源85が図2の紙面垂直方向にアレイ状に配列されて構成されている。コリメータレンズ86は、レーザーアレイ84の各レーザー光源85から照射されたレーザー光Bmを平行光とする光学部材である。コリメータレンズ86は、レーザー光照射装置83の図示外の筐体内に組み込まれている。レーザー光照射装置83は、各レーザー光源85からのレーザー光Bmの照射位置およびその照射強度を選定可能に構成されている。レーザー光源85は、例えば、固体レーザーや、液体レーザー、ガスレーザー、半導体レーザーなどのレーザー素子を備え、レーザー光を照射する。
【0027】
1−2−4.レンズパッド
レンズパッド90は、記録媒体S上の画像G(トナー像)に対し、透明チューブ81の光入射位置Aに照射されたレーザー光Bmを接触域n内にて集光する。レンズパッド90の材料としては、通常レンズに用いられるものの中で耐熱性を持つものから選択でき、例えば、各種光学用ガラス、光学用透明プラスチック樹脂等が挙げられる。光学用透明プラスチック樹脂としては、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(PADC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PSt)、メチルメタクリレート単位とスチレン単位からなる重合体(MS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、フルオレン樹脂等を含む材料が挙げられる。
【0028】
レンズパッド90は、レーザー光の入射部からレーザー光の出射部に至るまでの距離を考慮し、最適な焦点深度を具備させるように設計すればよい。レンズパッド90は、本来の集光作用は勿論であるが、これに加えて、光入射位置A、接触域nに対応した箇所で透明チューブ81に接触し、かつ、接触域nでは記録媒体S上の画像Gを加圧する機能を備える。このときの加圧力はレーザー光Bmの加熱エネルギーとの関係で予め定められた定着性が得られる範囲で選定すればよい。
【0029】
図3は、定着装置80の要部の各組立部品を示す分解説明図であり、図4は、定着装置80の各組立部品の組立状態を示す説明図である。レンズパッド90は、図2および図3に示すように、レーザーアレイ84から照射される複数のレーザー光Bmを透過方向に向かって集光するレンズ本体91を有している。レンズ本体91は、レーザーアレイ84の長手方向に延びる長尺なレンズ部材にて構成されている。レンズ本体91は、光入射面92と、光出射面93とを有している。光入射面92は、透明チューブ81の光入射位置Aに対応した部位であり、透明チューブ81の回転方向に沿った方向で湾曲している。光出射面93は、透明チューブ81と対向ロール82との接触域nに対応した部位であり、透明チューブ81の回転方向に沿った方向で湾曲している。光入射面92および光出射面93は透明チューブ81の内面に接触配置されている。更に、レンズパッド90はレンズ本体91の光入射面92および光出射面93を除いた両側に略平行な平面部94を有している。各平面部94の一部にはレーザーアレイ84の長手方向に沿って延びる断面略矩形状の被位置決め溝95が一体的に形成されている。
【0030】
保持枠100は、側方保持枠101,102と、端部保持枠131,132とを有している。側方保持枠101,102は、レンズパッド90を両側方から抱き込み保持する一対の保持枠である。端部保持枠131,132は、レンズパッド90および一対の側方保持枠101,102の長手方向両端部を図示外の接着材にて固定保持する部材である。側方保持枠101,102は例えばアルミニウムやステンレス鋼からなる金属や合成樹脂等を用いて一体的に形成された長尺な枠材105を有する。枠材105には案内部106と、位置決め突部107とが設けられている。案内部106は、透明チューブ81の内面の曲率半径rcに略対応した曲率半径の湾曲状の部材である。位置決め突部107は、レンズパッド90の平面部94に対向して平面状に形成された保持面108の一部にレンズパッド90の被位置決め溝95に嵌まり込むように突出して形成された断面略矩形状の部材である。側方保持枠101,102の保持面108はレンズパッド90の平面部94に対応した大きさを有しており、位置決め突部107がレンズパッド90の被位置決め溝95に嵌まり込んだとき、側方保持枠101,102の案内部106の湾曲方向両端がレンズパッド90の光入射面92、光出射面93の湾曲軌跡の延長面から突出しないように設計されている。
【0031】
端部保持枠131,132は、端部蓋体133と、案内段部134と、支軸135とを有している。端部蓋体133は、レンズパッド90および一対の側方保持枠101,102が組み合わされた略円柱状のサブアッセンブリの両端を固定する断面円形の部材である。案内段部134は、端部蓋体133の外側に隣接して当該端部蓋体133よりも小径でかつ予め決められた段差をもって張り出す部材である。支軸135は、案内段部134の外側に隣接して突出する断面非円形(本例では矩形)の部材である。
【0032】
透明チューブ81はその両端にエンドキャップ140(具体的には141,142(図4参照))を有している。エンドキャップ140は、端部環体143と、環状ギア144とを備えている。端部環体143は、透明チューブ81の両端内面に嵌まり込む部材である。環状ギア144は、端部環体143の外側に隣接して一体的に設けられ、透明チューブ81に対して回転駆動力を直接若しくは間接的に付与する部材である。本例では、エンドキャップ140(141,142)は、透明チューブ81の両端開口を完全に塞ぐものではなく、端部環体143および環状ギア144の中央には貫通孔145を有している。端部環体143の貫通孔145には端部保持枠131,132の案内段部134が挿入され、端部環体143は端部保持枠131,132の案内段部134に対してすべり移動可能に回転するようになっている。また、環状ギア144の貫通孔145には端部保持枠131,132の支軸135が貫通して環状ギア144の外側に突出配置されるようになっている。
【0033】
図5は、定着装置80の透明チューブ81の光入射位置、光出射位置でのレーザー光の挙動および透明チューブ断面構成例を示す説明図である。光入射面92(第1面)および光出射面93(第2面)は、図5に示すように、透明チューブ81の内面の曲率半径rc以下の曲率半径r1またはr2(本例ではr1=r2)の湾曲部として形成されている。レンズパッド90の湾曲状の光入射面92の曲率半径r1並びにレンズパッド90の光入射面92および光出射面93の間の距離Lは、透明チューブ81の光入射位置Aから入射された平行光であるレーザー光Bmが透明チューブ81と対向ロール82との接触域nの略中央Oc付近を焦点域pとして集光して焦点を結ぶように予め選定されている。レンズパッド90は保持枠100によって透明チューブ81内に固定的に保持されている。本例において、保持枠100は、レーザー光を透過しない材料(例えば、ステンレス銅などの金属)で形成され、レンズパッド90を保持する。
【0034】
レンズパッド90と対向ロール82とは、透明チューブ81を間に介在して光出射面93に含まれる接触域nにて接触する。光出射面93の一部は、コーティング材98でコーディングされている。コーティング材98としては、レーザー光が透過しない材料(例えば樹脂)が用いられる。以下の説明では、説明の便宜上、光出射面93においてコーティング材98が塗布された部分を「コーティング面」と称する。
【0035】
この例で、図5に示すように、対向ロール82の回転軸に垂直な断面において、対向ロール82とレンズパッド90との接触域n(接触面)には、レーザー光の出射位置(焦点域p)が含まれるとともに、コーティング面の少なくとも一部が含まれる。すなわち、光出射面93のうちのコーティング面以外の面(以下「レンズ幅」という)qは、接触域nよりも小さい、更に、この例では、図5に示すように、対向ロール82の回転軸に垂直な断面において、接触域nには、レンズ幅qの両側に位置するコーティング面が含まれている。すなわち、対向ロール82の回転軸に垂直な断面において、接触域nの両端の位置にコーティング面が含まれる。特に、この例では、図5に示すように、レンズ幅qは、接触域nの中央付近に位置している。
【0036】
1−2−5.液体塗布具
本実施の形態では、透明チューブ81の内面に透明液体を塗布するために透明チューブ81内に液体塗布具150が設けられている。透明液体は、透明チューブ81とレンズパッド90との接触抵抗を抑制する潤滑剤として機能する。本例において、液体塗布具150は例えばシリコーンオイルやフッ素オイル等の透明液体が含浸されるフェルト材である。液体塗布具150の取付構造は、例えば一方の側方保持枠101の案内部106の一部にレーザーアレイ84の長手方向に沿って断面略矩形状の取付溝110を形成し、この取付溝110に液体塗布具150としてのフェルト材を拘束保持することで、透明チューブ81の内面に液体塗布具150を密接させ、液体塗布具150に含浸している透明液体を均等に塗布するものである。
【0037】
1−2−6.透明チューブへのレンズパッド組立体、液体塗布具の組込作業
次に、透明チューブ81内にレンズパッド90を組み込む手順について説明する。先ず、保持枠100にレンズパッド90を保持するに際し、図3に示すように、一対の側方保持枠101,102にてレンズパッド90を抱き込み保持した後、一対の端部保持枠131,132に対しレンズパッド90および側方保持枠101,102の両端部を保持させ、レンズパッド90および保持枠100が組み立てられたレンズパッド組立体120(図4参照)を作製する。
【0038】
一方、図4に示すように、透明チューブ81の一端開口には一方のエンドキャップ140(本例では141)を装着した後、透明チューブ81の他端開口側からレンズパッド組立体120を挿入し、透明チューブ81の一方のエンドキャップ140(本例では141)の端部環体143にレンズパッド組立体120の一方の端部保持枠131の案内段部134を嵌め込み、かつ、エンドキャップ140(本例では141)の環状ギア144の貫通孔145から一方の端部保持枠131の支軸135を突出させ、レンズパッド組立体120のレンズパッド90が透明チューブ81内に挿入された状態で、透明チューブ81の他端開口に他方のエンドキャップ140(本例では142)を装着し、他方のエンドキャップ140(本例では142)の端部環体143にレンズパッド組立体120の他方の端部保持枠132の案内段部134を嵌め込み、かつ、当該エンドキャップ140(本例では142)の環状ギア144の貫通孔145から他方の端部保持枠132の支軸135を突出させるようにすればよい。
【0039】
更に、本例では、透明チューブ81内にレンズパッド組立体120を組み込む際に、レンズパッド組立体120に対し透明液体が含浸した液体塗布具150を予め組み込み、この状態で、透明チューブ81内にレンズパッド組立体120および液体塗布具150を組み込むようにすればよい。この状態で、透明チューブ81内へのレンズパッド組立体120、液体塗布具150の組込作業が終了し、レンズパッド組立体120、液体塗布具150が組み込まれた透明チューブ組立体125が完成する。
【0040】
1−2−7.定着装置の駆動系
図6は、定着装置80の駆動機構の一例を示す説明図である。透明チューブ組立体125が完成すると、図6に示すように、装置筐体60の予め決められた部位に透明チューブ組立体125を組み込むようにすればよい。このとき、透明チューブ組立体125のうち、レンズパッド組立体120は、その両端から突出した支軸135を定着装置筐体126の支持孔127に固定的に支持することで装置筐体60に対して固定設置される。一方、透明チューブ組立体125のうち、透明チューブ81の駆動系は例えばエンドキャップ140(本例では142)の環状ギア144に駆動伝達機構160を介して駆動モータ161を接続し、駆動モータ161からの駆動力をエンドキャップ140(本例では142)を通じて透明チューブ81へと伝達するようになっている。なお、本例では、透明チューブ81のもう一方のエンドキャップ140にも環状ギア144が設けられており、この環状ギア144は複数の支持ギア(図示せず)で回転可能に支えられ、透明チューブ81の軸方向両端での負荷のバランスを図るようになっている。
【0041】
更に、本例では、対向ロール82も透明チューブ81とは別個の駆動系を有している。対向ロール82の駆動系は、ギアやベルト等の駆動伝達機構170を介して駆動モータ171に接続し、駆動モータ171からの駆動力を駆動伝達機構170を通じて対向ロール82へと伝達するようになっている。
【0042】
本例では、透明チューブ81、対向ロール82には夫々別個の駆動系が作用していることから、透明チューブ81および対向ロール82の接触域nで両者間に大きな速度差が生ずる懸念がある。そこで、本実施の形態では、例えば透明チューブ81の駆動系のうち、駆動伝達機構160の一部にワンウェイクラッチ162を介在させ、接触域nで両者間に大きな速度差が生ずる状況に至った場合に、ワンウェイクラッチ162を働かせ、接触域nでの両者間の速度差を低減させるようになっている。なお、本例では、透明チューブ81、対向ロール82に個別に駆動系を設けるようにしているが、これに限られるものではなく、例えば対向ロール82側に駆動系を具備させ、透明チューブ81については対向ロール82との接触域nで対向ロール82に追従移動させるようにしてもよい。
【0043】
1−3.動作
先ず、画像形成装置にて作像処理を実施するには、図示外の作像モード選択ボタンを操作した後に、図示外のスタートスイッチをオン操作すればよい。このとき、図1に示すように、各画像形成部20(20a〜20d)では、各色成分のトナーによる画像が感光体21上に形成され、中間転写体30に逐次一次転写される。そして、中間転写体30に一次転写された画像は一括転写域(二次転写域)に到達した段階で一括転写装置50にて記録媒体Sに一括転写され、その後、記録媒体S上の未定着画像は定着装置80にて定着される。
【0044】
定着装置80では、図2および図5に示すように、レーザー光照射装置83のレーザーアレイ84から照射されたレーザー光Bmは、コリメータレンズ86にて平行にされた後、平行化されたレーザー光Bmが透明チューブ81の光入射位置Aに照射される。透明チューブ81の光入射位置Aに照射されたレーザー光Bmは、透明チューブ81を透過した後、レンズパッド90の光入射面92からレンズ本体91を透過して光出射面93を経て再び透明チューブ81を透過し、記録媒体S上のトナーによる画像Gに向けて集光する。この状態において、トナーによる画像Gはレーザー光Bmにより定着される。
【0045】
この定着過程において、本例の定着装置80は以下の挙動を示す。
(1)透明チューブ81の回転動作
透明チューブ81は駆動モータ161からの駆動力を駆動伝達機構160、エンドキャップ142(140)を介して受け、対向ロール82と共に回転し、両者の接触域nにて記録媒体Sを挟持して搬送する。このとき、透明チューブ81は円柱状のレンズパッド組立体120の周囲に案内されて移動する。具体的には、透明チューブ81は、レンズパッド90の光入射面92、光出射面93に接触し、更に、側方保持枠101,102の案内部106に接触しながら回転する。
【0046】
(2)レンズパッド90による加圧、集光動作
レンズパッド90は保持枠100を介して予め決められた位置に固定され、予め決められた曲率半径r1の湾曲状の光入射面92を有し、更に、光入射面92と光出射面93との距離Lを予め定められた長さに選定していることから、透明チューブ81の光入射位置Aに入射されたレーザー光Bmは予め定められた焦点深度のレンズパッド90を透過し、予め決められた集光特性にて集光する。また、予め定められた位置に位置決めされたレンズパッド90の光出射面93は対向ロール82に対し透明チューブ81を予め定められた加圧力で加圧する。これにより、透明チューブ81と対向ロール82との接触域nでは、記録媒体S上のトナーによる画像Gは加圧処理を受けながらレーザー光Bmによる焦点域pにて加熱処理を受ける。
【0047】
(3)透明液体の塗布動作
本例では、シリコーンオイル等の透明液体を含浸した液体塗布具150が透明チューブ81の内面に接触配置されていることから、透明チューブ81の内面には透明液体180が塗布される。このとき、透明チューブ81の光入射位置Aでは、透明チューブ81とレンズパッド90の光入射面92とは接触配置されてはいるが、両者間には曲率度合の相違などに起因して界面空気層181が存在する。しかしながら、本実施の形態では、両者間の界面空気層181には透明液体180が充填されることから、透明チューブ81の光入射位置Aから入射されたレーザー光Bmは透明液体180を透過してレンズパッド90の光入射面92に至る。このため、透明液体180が存在しない場合には、界面空気層181でレーザー光Bmの一部が反射してしまうが、透明液体180が存在することで、この種のレーザー光Bmの反射動作が防止されることになり、その分、レーザー光Bmの照射損失が少なくなる。また、透明液体180は透明チューブ81の内面に塗布されることから、透明チューブ81がレンズパッド組立体120の周面に接触しても、両者間の接触抵抗を抑制する潤滑剤として機能する。
【0048】
更に、本実施の形態では、液体塗布具150は、透明チューブ81のうち、光入射位置Aよりも回転方向上流側で、接触域nよりも回転方向下流側に位置しているため、レンズパッド90の光入射面92に対応した界面空気層181は液体塗布具150による透明液体180の塗布位置に近く、塗布された透明液体180が良好に充填される。一方、レンズパッド90の光出射面93に対応した部位にも界面空気層181が存在するが、液体塗布具150による透明液体180の塗布位置から離れているため、適量の透明液体180が充填されることになり、当該界面空気層181でレーザー光Bmが無駄に反射することは有効に回避される。
本例では、レンズパッド90の光出射面93は対向ロール82に透明チューブ81を加圧することから、透明チューブ81のうち、レンズパッド90の光入射面92との間に界面空気層181が生成され易く、その分、本例のように、液体塗布具150の設置位置を選定することが好ましい。
【0049】
(4)レーザー光による焦点域の選定
図7(a)は、定着装置80の接触域での定着過程を模式的に示す説明図であり、図7(b)は、定着装置80による定着過程においてレーザー光照射以降のトナー像の温度変化の一例を示す説明図である。本例では、レーザー光Bmによる焦点域pは、図7(a)に示すように、透明チューブ81と対向ロール82との接触域nの略中央Oc付近に選定されている。
【0050】
ここで、レーザー光照射後、透明チューブ81からトナー画像を剥離しなかった場合の温度変化を調べたところ、図7(b)に示す結果が得られた。同図は、例えばレーザー光照射条件として、0.2ms・0.81J/cmとしたものである。同図によれば、トナー温度は、レーザー光照射直後にピーク温度Tp(例えば200℃)に達し、1ms後には約Tp/2の温度(例えば100℃)、2ms後には約Tp/3の温度(例えば70℃)まで冷却されることが理解される。このとき、トナー画像は、レーザー光照射後1〜2msという短時間、透明チューブ81と対向ロール82との接触域n内にいれば、透明チューブ81に対して剥離が可能な冷却温度Th(例えば70℃〜100℃)に至ることが把握される。
【0051】
図7(b)に示すように、レーザー光照射後のピーク温度Tpから剥離が可能な冷却温度Thに至るまでの時間をΔtとすれば、本例の場合、図7(a)に示すように、記録媒体Sの搬送速度vは、透明チューブ81と対向ロール82との接触域n内において、レーザー光Bmの焦点域pから接触域nのうち記録媒体Sの搬送方向下流側端に至るまでの時間tがΔt以上になるように選定されればよい。
【0052】
ところで、レーザー光を照射してトナーを記録媒体に定着させる定着装置において、接触域よりもレンズ幅が広い場合、レンズパッドの表面のうちの対向ロールに接していない部分からレーザー光が漏れてしまう場合がある。レーザー光がレンズパッドから漏れることにより、画像形成装置の他の部品が変形してしまう等、画像形成装置の他の部品や画像形成装置のメンテナンスを行う作業者等へ影響を及ぼす虞がある。それに対しこの実施形態では、図5に示したように、レンズパッド90のレンズ幅qが、対向ロール82と透明チューブ81との接触域nよりも小さく構成されており、また、接触域nにおけるレンズ幅q以外の領域は、レーザー光Bmが透過しない材料のコーティング材98により覆われている。これにより、レンズパッド90が対向ロール82と接していない部分からのレーザー光の漏れが抑制される。
【0053】
なお、レンズパッド90の幅を小さくしてレンズパッド90の周囲を他の部材で囲むことによってレーザー光の漏れを抑制することも考えられる。しかしながら、その場合、レンズパッド90と他の部材との熱膨張率の違いなどにより、対向ロール82と透明チューブ81との接触域において、レンズパッド90の表面と他の部材の表面とで段差が生じてしまう場合がある。それに対しこの実施形態では、レンズパッド90の表面をコーティング材98で覆うため、レンズパッド90の周囲を他の部材で覆う場合よりも、接触域nにおける段差の発生が軽減される。
【0054】
また、この実施形態では、対向ロール82の回転軸に垂直な断面における接触域nの両端の位置にコーディング面が含まれている。これにより、レーザー光の出射位置の両側からのレーザー光の漏れが抑制される。
【0055】
2.第2実施形態
図8は、第2実施形態に係る定着装置80Bの要部を示す説明図である。図において、定着装置80Bの構成が第1実施形態に係る定着装置80と異なる点は、レンズパッド90に代えて、レンズパッド90Bを有する点である。第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同様の符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
【0056】
レンズパッド90Bは、レーザー光を透過しない材料(例えば、着色された各種光学用ガラス、着色された光学用プラスチック樹脂、等)で形成された遮光層99A,99Bを有する。遮光層99A,99Bの材料は、通常レンズに用いられるものの中で耐熱性を持つものから選択され、かつ、レーザー光が透過しない、またはレーザー光の透過率が予め定められた閾値よりも低い材料で形成される。レンズパッド90Bは、一体成型されてもよく、また、レンズパッド本体と遮光層99A,99Bとを組み立てた後に光出射面93が研磨されて形成されてもよい。
【0057】
この実施形態でも、上述の実施形態と同様に、レンズパッド90の光出射面93のうちの遮光層99A,99Bの表面以外の部分(レンズ幅q)が、対向ロール82と透明チューブ81との接触域nよりも小さく構成されている。また、接触域nにおけるレンズ幅q以外の領域は、レーザー光Bmが透過しない材料の遮光層99A,99Bにより覆われている。これにより、レンズパッド90Bが対向ロール82と接していない部分からのレーザー光の漏れが抑制される。
【0058】
また、この実施形態では、レンズの材料により遮光層99A,99Bを形成するため、遮光層99A,99Bとレンズ本体との熱膨張率の差はそれほど大きくないといえる。これにより、この実施形態によれば、異なる材料で形成された部材によってレーザー光を遮断する場合と比べて、接触域nにおける段差の発生が軽減される。
【0059】
3.変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその例を示す。なお、以下の各態様を組み合わせてもよい。
【0060】
3−1.変形例1
上述の第1実施形態では、レンズパッド90の光出射面93の一部がコーティング材98で覆われている構成について説明した。また、上述の第2実施形態では、レンズパッド90が焦点域pの周囲に遮光層99A,99Bを有する構成について説明した。本発明に係る集光部材の構成は上述したものに限られない。集光部材は、光出射面(第2面)の一部が、レーザー光を透過しない材料で形成されており、対向ロール82の回転軸に垂直な断面において、対向ロール82と集光部材との接触域nが、レーザー光を透過しない材料で形成された部分の少なくとも一部を含むものであればよい。
【0061】
図9は、変形例に係る定着装置80Cの全体構成例を示す図である。図9に示す例では、レンズパッド90Cは、レーザー光を透過しない材料で形成された遮光層99C,99Dを有する。遮光層99C,99Dの材料は、通常レンズに用いられるものの中で耐熱性を持つものから選択され、かつ、レーザー光が透過しない(レーザー光の透過率が予め定められた閾値よりも低い)材料で形成される。遮光層99C,99Dは、上述の遮光層99A,99Bは対向ロール82の回転軸に垂直な断面が、上述の遮光層99A,99Bと異なっている。
【0062】
この態様においても、レンズパッド90の光出射面93のうちの遮光層99C,99Dの表面以外の部分(レンズ幅q)が、対向ロール82と透明チューブ81との接触域nよりも小さく構成されている。また、接触域nにおけるレンズ幅q以外の領域は、レーザー光Bmが透過しない材料の遮光層99C,99Dにより覆われている。これにより、レンズパッド90Cが対向ロール82と接していない部分からのレーザー光の漏れが抑制される。なお、レンズパッドの遮光層の形状は、上述の図8または図9で示したものに限られない。遮光層の形状は種々のものが採用され得る。同様に、コーティング面の位置は上述の第1実施形態で示したものに限られない。
【0063】
3−2.変形例2
上述の第1実施形態において、接触域nは、対向ロール82の回転軸に平行な断面において、レーザー光の出射位置(焦点域p)を含むとともに、コーティング面の少なくとも一部を含んでもよい。対向ロール82の回転軸に垂直な方向に加えて、回転軸に平行な方向においても、レーザー光が通過するレンズパッド90のレンズ幅を接触域よりも小さくすることにより、レーザー光の周囲への漏れが抑制される。
【0064】
同様に、上述の第2実施形態において、接触域nは、対向ロール82の回転軸に平行な断面において、レーザー光の出射位置(焦点域p)を含むとともに、遮光層99A,99Bの表面の少なくとも一部を含んでもよい。対向ロール82の回転軸に垂直な方向に加えて、回転軸に平行な方向においても、レーザー光が通過するレンズパッド90のレンズ幅を接触域よりも小さくすることで、レーザー光の周囲への漏れが抑制される。
【0065】
3−3.変形例3
上述の第1実施形態では、接触域nは、対向ロール82の回転軸に垂直な断面において、レーザー光の出射位置(焦点域p)の両側に位置するコーティング面を含んでいた。接触域nは上述したものに限られない。接触域nは、レーザー光の出射位置(焦点域p)の片側に位置するコーティング面を含んでいてもよい。この態様においても、接触域nにコーティング面が含まれない場合に比べて、レーザー光の漏れが抑制される。
【0066】
また、上述の第2実施形態では、接触域nは、対向ロール82の回転軸に垂直な断面において、レーザー光の出射位置(焦点域p)の両側に位置する遮光層99A,99Bの表面を含んでいた。接触域nは上述したものに限られない。接触域nは、レーザー光の出射位置(焦点域p)の片側に位置する遮光層99A,99Bの表面を含んでいてもよい。この態様においても、接触域nに遮光層99A,99Bの表面が含まれない場合に比べて、レーザー光の漏れが抑制される。
【0067】
3−4.変形例4
上述の各実施形態では、レンズパッド組立体120は側方保持枠101,102および端部保持枠131,132にて構成された保持枠100にレンズパッド90を組み込んだものであるが、レンズパッド組立体120の構成はこれに限られない。
【0068】
図10(a)はレンズパッド組立体の変形の形態を示す説明図であり、(b)はその要部を示す斜視説明図である。図10に示す例では、レンズパッド90として、断面略楔状形状のレンズ本体201を有し、このレンズ本体201の幅広側に光入射部202を形成すると共に、幅狭側に光出射部203を形成したものを用意する。一方、保持枠100としては、円柱状部211の両端に案内段部214、支軸215を一体的に形成すると共に、円柱状部211には液体塗布具150を取り付けるための取付溝216およびレンズパッド90の形状に対応した形状の位置決め孔217を貫通したものを用意する。
【0069】
本例では、レンズパッド組立体120を構成するには、保持枠100の位置決め孔217にレンズパッド90を挿入し、保持枠100の周面にレンズパッド90の光入射部202および光出射部203を露呈させた状態で位置決め保持するようにすればよい。なお、保持枠100としては、円柱状部211と案内段部214、支軸215とを一体に形成したものを示したが、例えば円柱状部211を含む保持枠本体と案内段部214、支軸215を含む側方保持枠とを別々に設けておき、レンズパッド組立体120を構成するときに保持枠本体と側方保持枠とを接着剤等で固着するようにしてもよい。
【0070】
図10に示す例においても、上述の第1実施形態と同様に、レンズパッド90のレンズ幅qが接触域nよりも小さく構成されており、また、接触域nにおいてレンズ幅q以外の領域は、レーザー光を透過しないコーティング材98により覆われている。これにより、接触域nからのレーザー光の漏れが抑制される。
【0071】
3−5.変形例5
上述の各実施形態では、電子写真方式で画像形成を行う画像形成装置を示したが、画像形成装置は上述したものに限られない。例えば、イオン流を用いた静電記録方式を用いて画像形成を行う装置であってもよい。
【0072】
3−6.変形例6
上述の各実施形態では、透明筒体の一例として透明チューブ81を例示したが、透明筒体は上述したものに限られない。透明筒体は透明素材で筒状に構成されるものであれば剛体、弾性体いずれでもよい。また、透明筒体は単層構成でも差し支えないが、強度の確保、対向部材との接触域の確保、トナー像との離型性などを考慮した複数の機能層を具備するようにしてもよい。
【0073】
また、上述の各実施形態において、定着装置80が透明チューブ81(透明筒体)を有しない構成であってもよい。この場合、例えば、記録媒体Sは、レンズパッド90の表面をすべりながら、対向ロール82により搬送されてもよい。
【0074】
3−7.変形例7
上述の各実施形態では、対向部材の一例として対向ロール82を例示したが、対向部材は上述したものに限られない。対向部材は透明筒体との間で接触域を確保し、透明筐体と協働して記録媒体を挟持搬送するものであればよい。記録媒体を通過したレーザー光を有効に利用するという観点からすれば、対向部材はレーザー光が反射可能な反射面を有する態様が好ましい。
【0075】
3−8.変形例8
上述の各実施形態では、照射手段の一例としてレーザー光照射装置83を例示したが、照射手段は上述したものに限られない。照射手段は透明筒体の予め決められた光入射位置に向けてレーザー光を照射するものであればよい。
【符号の説明】
【0076】
20…画像形成部、30…中間転写体、50…一括転写装置、80…定着装置、83…レーザー光照射装置、90…レンズパッド、100…保持枠、82…対向ロール、A…光入射位置、Bm…レーザー光、G…画像、n…接触域、S…記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10