(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341044
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】センターピラーの側面衝突試験のための、センターピラーの上端部の支持治具
(51)【国際特許分類】
G01M 7/08 20060101AFI20180604BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
G01M7/08 A
B62D25/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-204102(P2014-204102)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-75489(P2016-75489A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】大野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】田坂 誠均
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】村上 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清一
【審査官】
山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−281964(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/016499(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/00 − 7/08
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部にルーフレールを結合する結合部を有するセンターピラーの側面衝突試験のための該センターピラーの上端部の支持治具であって、
ルーフレール模擬材として前記センターピラーの結合部に結合するための軸部材と、
前記軸部材を回転可能に軸支する軸支部材と、
前記軸支部材を支持する支持台と、
前記支持台を、前記軸部材を結合したセンターピラーの上下端方向に直線移動可能に支持する直線移動機構と、
前記軸部材、前記軸支部材、前記支持台及び前記直線移動機構を搭載し、剛体床又は剛体壁に固定される固定台とを備えたことを特徴とするセンターピラーの側面衝突試験のための、センターピラーの上端部の支持治具。
【請求項2】
前記軸部材を結合したセンターピラーの下端方向に向かって前記支持台が直線移動できる範囲を制限することを特徴とする請求項1に記載のセンターピラーの側面衝突試験のための、センターピラーの上端部の支持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のセンターピラーの側面衝突試験のための
、センターピラーの上端部の支持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には燃費向上を目的とした軽量化と衝突安全性の向上が求められている。これらの相反する要望を両立するため、自動車の衝突安全性を支配する骨格部材に対し、材料設計及び板厚を含む断面形状に関する構造設計の適切な実施が重要である。
自動車メーカでは、部品構造設計段階において、CAE(Computer Aided Engineering)とのコリレーション検証のために部品単体やユニット試験による評価を実施している(例えば特許文献1を参照)。例えば側面衝突用の骨格部材であるセンターピラーの開発では、実車を対象とした数値解析による衝突性能の評価の他に、部材単体での実験的評価を重ねて、その結果が部材設計に反映される。
しかしながら、現状では3点曲げのような簡易的な試験がほとんどであり、実車試験に近い変形挙動の確認や破断評価が困難である。その結果、実車試験でNGが出ると、開発手戻りによる開発コストアップや開発期間の延期といった課題がある。したがって、部品構造設計の精度向上を実現すべく、実車における変形挙動を反映した部品単体やユニット試験が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4902027号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「センターピラーの衝突性能に及ぼすセンターピラーとサイドシルの強度差の影響」、大野 敦史、田坂 誠均、中澤 嘉明、三日月 豊、綛田 良之、中田 匡浩、2012年10月3日、自動車技術会秋季学術講演会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センターピラー単体の側面衝突試験を実施する場合に、実車試験と同様に衝突性能を精度良く評価するためには、実車におけるセンターピラーの変形挙動を再現できるようにすることが必要である。
【0006】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、センターピラー単体の側面衝突試験を実施する際に、実車におけるセンターピラーの変形挙動を再現できる支持治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセンターピラーの側面衝突試験のための
、センターピラーの上端部の支持治具は、上端部にルーフレールを結合する結合部を有するセンターピラーの側面衝突試験のための
該センターピラーの上端部の支持治具であって、ルーフレール模擬材として前記センターピラーの結合部に結合するための軸部材と、前記軸部材を回転可能に軸支する軸支部材と、前記軸支部材を支持する支持台と、前記支持台を、前記軸部材を結合したセンターピラーの上下端方向に直線移動可能に支持する直線移動機構と、前記軸部材、前記軸支部材、前記支持台及び前記直線移動機構を搭載し、剛体床又は剛体壁に固定される固定台とを備えたことを特徴とする。
また、本発明のセンターピラーの側面衝突試験のための
、センターピラーの上端部の支持治具の他の特徴とするところは、前記軸部材を結合したセンターピラーの下端方向に向かって前記支持台が直線移動できる範囲を制限する点にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、センターピラー単体の側面衝突試験を実施する際に、実車におけるセンターピラーの変形挙動を再現できる支持治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るセンターピラーの側面衝突試験のための支持治具を示す図である。
【
図3】センターピラーの側面衝突試験を実施するときの状態を説明するための図である。
【
図4】側面衝突の際の実車におけるセンターピラーの上端部の変形挙動を説明するための図である。
【
図5】制限する並進範囲を説明するための図である。
【
図6】センターピラーのモーメントと、センターピラーの位置との関係を示す特性図である。
【
図7】自動車のセンターピラーまわりの構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図7に示すように、センターピラー(Bピラーとも呼ばれる)101は、自動車の前部座席と後部座席の間にある支柱であり、側面衝突から乗員を守るための重要な骨格部材である。センターピラー101の上端部(天井側)には自動車の前後方向に延伸するルーフレール102が結合し、下端部(床側)には自動車の前後方向に延伸するサイドシル103が結合する。なお、本願において「センターピラーの上下」は、
図7に示すように自動車に組み込まれた状態での方向を指すものとする。
【0011】
センターピラー101単体の側面衝突試験では、センターピラー101に対して側面衝突を模擬した衝突荷重を加えて変形挙動を評価する。このとき、実車に組み付けられた状態と同等の状態とするためにセンターピラー101を支持する必要がある。
本実施形態では、センターピラー101単体の側面衝突試験を実施する際に、センターピラー101の上端部を支持する支持治具1について説明する。
【0012】
図1、
図2に、実施形態に係るセンターピラーの側面衝突試験のための支持治具1を示す。なお、
図1ではセンターピラー101を一点鎖線で示すが、
図2ではセンターピラー101の図示は省略する。
支持治具1において、固定台2に、丸棒状の軸部材3と、軸部材3の両端を回転可能に軸支する軸支部材である一対のベアリング4、4と、一対のベアリング4、4を支持する支持台5と、支持台5を直線移動可能に支持する直線移動機構であるリニアモーションガイド6とが搭載されている。
【0013】
センターピラー101の側面衝突試験を実施する際には、固定台2を剛体床又は剛体壁に固定する。
また、
図1、
図3に示すように、センターピラー101の上端部に、軸部材3を結合する。
図3、
図4に示すように、センターピラー101の上端部には、ルーフレール102を結合する結合部101aを有する。軸部材3は、ルーフレール模擬材としてセンターピラー101に結合するものであり、本来結合されるルーフレール102と同じ方向に延伸するように配置され、結合部101aに結合する。
また、
図3に示すように、センターピラー101の下端部にはサイドシル模擬材として例えば角管9を結合し、角管9の両端を固定する(完全拘束する)。
【0014】
センターピラー101の結合部101aに軸部材3を結合した状態で、支持台5は、リニアモーションガイド6によってセンターピラー101の上下端方向(
図1、
図3の矢印+z、−zを参照)に直線移動できる状態となる。
ここで、
図1に示すように、センターピラー101の下端方向(−z方向)に向かって支持台5が直線移動できる範囲をストッパ7によって制限する。ストッパ7と支持台5との間にはエネルギ吸収体として緩衝材8を配置することが好ましい。
【0015】
以上のようにして支持治具1で支持したセンターピラー101に対して、インパクタにより側面衝突を模擬した衝突荷重を加えて変形挙動を評価する。
ここで、
図4に示すように、側面衝突の際の実車におけるセンターピラーの上端部の変形挙動として、ルーフレール回りの回転(矢印r)、及び車高方向の並進(矢印z)が知られている(非特許文献1を参照)。
センターピラー101の上端部を支持治具1で支持することにより、回転及び並進を拘束条件とすることができる。すなわち、軸部材3の回転により、実車におけるセンターピラー101の上端部の回転を再現することができる。また、支持台5の直線運度により、実車におけるセンターピラー101の上端部の並進を再現することができる。
【0016】
この場合に、センターピラー101の下端方向(−z方向)に向かって支持台5が直線移動できる範囲をストッパ7によって制限することで、並進範囲を制限する。
図5に示すように、z≧0、すなわちセンターピラー101の上端方向(+z方向)には無制限、下端方向(−z方向)には衝突前の位置までとなるよう設定する条件1と、制限なしとする条件2とを比較した。
図6は、センターピラーにかかるx軸回り(
図3)の曲げモーメントと、センターピラー上の位置(z=0が下端)との関係を示す特性図である。
図6に示すように、条件1では、条件2よりも実車に近いモーメントに近づけることができた。
【0017】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、本発明は実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。例えば軸部材3は丸棒状であると説明したが、ベアリング4で軸支される箇所が丸棒状であれば、それ以外の箇所、例えば結合部101aに結合する箇所は他の形状となっていてもよい。
【符号の説明】
【0018】
1:支持治具、2:固定台、3:軸部材、4:ベアリング、5:支持台、6:リニアモーションガイド、7:ストッパ、8:緩衝材、101:センターピラー、101a:結合部