特許第6341082号(P6341082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6341082高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341082
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/30 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   G01N3/30 S
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-257664(P2014-257664)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-135324(P2015-135324A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2017年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-264231(P2013-264231)
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】大川 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】白幡 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 清孝
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】柳田 和寿
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−230666(JP,A)
【文献】 特開2009−063320(JP,A)
【文献】 特開2008−046106(JP,A)
【文献】 特開2011−033457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00〜3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性を判定する方法であって、
板厚の異なる複数の標準鋼を用いて脆性破壊伝播停止試験を行う工程と、
前記標準鋼を用いて複合小型試験を行う工程と、
前記脆性破壊伝播停止試験により実測される脆性き裂伝播停止特性Kca値と前記複合小型試験の結果との相関モデルを算出する工程と、
前記脆性破壊伝播停止試験、前記複合小型試験の結果及び前記相関モデルに基づき、板厚毎の脆性き裂伝播停止特性判定基準を決定する工程と、
サンプル鋼を用いて前記複合小型試験を行う工程と、
前記サンプル鋼の前記複合小型試験の結果及び前記脆性き裂伝播停止特性判定基準に基づき、前記サンプル鋼の脆性き裂伝播停止特性を判定する工程と、
を含み、
前記標準鋼を用いて前記複合小型試験を行う工程、及び前記サンプル鋼を用いて前記複合小型試験を行う工程はともに、
(a)鋼板表層部を含む表層小型試験片を採取する工程と、
(b)鋼板表層部を含まない一箇所または二箇所以上の内部領域からそれぞれ内部小型試験片を採取する工程と、
(c)前記表層小型試験片を用いて、ASTM E208−06に規定されたNRL落重試験法に準拠して落重試験を行い、NDT温度を求める工程と、
(d)前記内部小型試験片を用いて、脆性破面率または吸収エネルギーを測定する小型試験を行い、破面遷移温度またはエネルギー遷移温度を求める工程と、
を含み、
前記脆性き裂伝播停止特性Kca値において、所定のKca値を確保し得る限界温度である目標Kca限界温度TKcaを目的変数、前記標準鋼の前記NDT温度を第1の説明変数X、前記標準鋼の前記破面遷移温度またはエネルギー遷移温度を第2の説明変数Y、前記標準鋼の板厚を第3の説明変数Zとし、a、b、c及びdを係数とすると、前記相関モデルは、下記式(1)であり、
a・X+b・Y+c・Z+d=TKca ・・・ (1)
前記脆性き裂伝播停止特性判定基準を決定する工程では、
前記標準鋼の前記NDT温度と、前記破面遷移温度またはエネルギー遷移温度と、TKcaを、前記標準鋼が所定のKca値を備えていることを保証する最低の温度である保証温度とした上記式(1)との相関関係を、板厚ごとに求める工程と、
前記相関関係に基づき、前記標準鋼の前記TKcaの値が前記保証温度以下を示す領域を決定し、当該領域を表すための前記標準鋼の前記NDT温度と前記破面遷移温度またはエネルギー遷移温度について、板厚毎に纏める工程と、
を含むことを特徴とする高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法。
【請求項2】
前記脆性き裂伝播停止特性判定基準を決定する工程において、前記相関関係に基づき、前記標準鋼の前記TKcaの値が前記保証温度以下を示す領域を決定する際、板厚の相違に因らず、前記領域を表すための前記破面遷移温度またはエネルギー遷移温度を一定として、前記領域を表すための前記標準鋼の前記NDT温度を決定することを特徴とする請求項1に記載の高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法。
【請求項3】
前記第3の説明変数Zを、前記標準鋼の板厚をt、nを0.01〜1の係数とし、下記式(2)とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法。
Z=t ・・・ (2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法に関し、特に、脆性き裂の伝播で起きる大規模な損傷や損壊を防止する必要がある構造物の建造に使用する高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性を、簡便でかつ合理的な手法で判定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶接構造体であるコンテナ船やバルクキャリアーは、タンカーと異なり、船倉内の仕切り壁が少なく、船の上部が大きく開口している。逆に、タンカーは、油槽により内部が細かく仕切られていて、内部壁や上甲板も船殻強度を担う構造となっている。
【0003】
このため、コンテナ船では、船殻構造の強度を確保するため、特に、船体外板として高強度鋼板を使用する必要がある。
【0004】
近年、コンテナ船は大型化し、6000〜20000TEU(Twenty feet Equivalent Unit)の大型コンテナ船が建造され、また、計画されている。これに伴い、船体外板用の鋼板は、厚肉化するとともに、高強度化し、板厚50mm〜250mmで、降伏強度が390N/mm級、さらには470N/mm級の厚肉の鋼板(厚鋼板)が用いられるようになってきた。
【0005】
なお、TEUは、コンテナ船の積載能力を示す指標で、長さ20フィートのコンテナに換算した場合のコンテナの個数で表示する。
【0006】
上記のように船舶等に用いられる高強度厚鋼板において、脆性き裂伝播停止特性(以下「アレスト性能」ということがある)は、高強度厚鋼板の安全性を評価する上で非常に重要な特性となる。
他にも、水力発電用の水圧鉄管(ペンストック)に用いる高強度鋼材でも、アレスト性能に対する要求が高まっている。
【0007】
このアレスト性能の向上を図るため、様々な成分組成や、製造工程を伴う鋼材、あるいは、種々の大型溶接構造体等が開発され、製造されている。これら新規に開発された鋼材のアレスト性能を定量的に評価するには、ESSO試験(脆性破壊伝播停止試験:試験片に脆性き裂を人為的に発生させ、脆性き裂を停止させる性能を評価する試験)や、二重引張試験等の大型試験などが実施される。例えば、脆性破壊伝播停止試験の場合、寸法が500mm×500mm×板厚程度の全厚大型試験片を作製し、この試験片の端部にV切欠を形成する。試験片には温度勾配を付与し、V切欠に、楔を介して衝撃荷重を負荷していき、脆性き裂を人為的に発生させる。試験体に付加された応力と、脆性き裂の伝播が停止した位置での温度(以下、「き裂停止温度」と称することもある)と、き裂の長さに基づいてKca値(破壊靭性値)を算出する。
【0008】
温度勾配条件及び負荷荷重条件を変えて試験を行い、き裂停止温度とKca値の関係を求め、任意温度におけるアレスト性能をKca値で評価する。また、アレスト性能の指標として、所定のKcaを確保し得る限界温度(最低温度)を目標Kca限界温度と呼び、「TKca」と表記する。
具体的には、例えば、目標とするKca値が6000N/mm1.5である場合の目標Kca限界温度は、TKca6000と表記される。
鋼板をコンテナ船などの鋼構造物に使用する場合には、その鋼構造物の設計温度または最低使用温度が定められている。所定の鋼板について測定または推算したTKca6000がその設計温度以下の温度であれば、この設計温度において、上記の鋼板は、十分なアレスト性能を確保することができると評価する。
【0009】
しかし、Kca値を実測するには、大型試験片と大型試験機を必要とし、試験結果を得るまで、多くの手数と時間が必要である。特に、板厚50mm以上の厚鋼板の大型試験には、1000トン以上の引張荷重を付加することが可能な大型試験機が必要とされていた。そこで、従来の鋼板の性能検査または品質管理では、厚鋼板全体のアレスト性能と、厚鋼板から採取した小型試験片を用いた簡易な小型試験結果と、の相関関係を予め求めておく必要があった(例えば、特許文献1および非特許文献1から3を参照)。そして、その事前の検討結果を用いて、必要なアレスト性能から算出される小型試験の要求値を元に、製鐵所などで製造される鋼板に小型試験を行い、その試験結果が小型試験の要求値を満たしているか否かを判定する方法で、鋼板の性能検査または品質管理が行われてきた。
【0010】
非特許文献1には、板厚16mm程度の低温用鋼のアレスト性能と小型試験の相関関係が記載されている。非特許文献2には、鋼板表層部に特殊な超細粒組織を有する複層構造の鋼板のアレスト性能の簡易評価法が記載されている。非特許文献3には、極厚高強度790N/mm級鋼板で板厚の中心部、板厚の1/4及び鋼板表面下2mmそれぞれの位置におけるシャルピー衝撃試験で求められた破面遷移温度からアレスト性能を簡易評価する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−302993号公報
【特許文献2】特許第4795487号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】鉄鋼協会講演概要、CAMP−ISIJ Vol.4(1991)−918、「Kcaと小型アレスト試験法との相関とアレスト性能支配因子」(鋼板のアレスト性能の検討(5))
【非特許文献2】西部造船会会報第106号(平成15年8月)、P275−280、「表層超細粒鋼板のアレスト性能簡易評価法(その1)−アレスト性能推定式の確立−」
【非特許文献3】溶接学会全国大会講演概要、第49集(1991年8月25日発行)、P108〜109、「極厚HT790のアレスト性に及ぼす板厚と板圧方向靱性分布の影響」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
大型コンテナ船の安全性確保のため、例えば、使用される板厚50mm〜100mmで、降伏強度390N/mm級、470N/mm級の厚肉の鋼板(厚鋼板)には、−10℃で4000N/mm1.5から6000N/mm1.5程度のアレスト性能が非常に重要なことが判ってきた。このアレスト性要求に応えるために、高アレスト性能を有する鋼板が開発されてきたが、全ての鋼板に対して4000N/mm1.5から6000N/mm1.5程度のアレスト性能が具備されているかを確認する必要が生じた。このため、製鐵所で鋼板の出荷試験などでアレスト性能を確認することが求められるようになってきた。しかしながら、前記のように、全ての鋼板に対し脆性破壊伝播停止試験などの大型試験を行うことは困難である。また、上記大型試験でのアレスト性能と小型試験結果の相関には大きなバラツキがあり、バラツキを考慮すると、製鐵所で安定して製造できないような非常に厳しい小型試験要求値とならざるを得なかった。このため、前記板厚50mm〜100mmで、降伏強度390N/mm級、470N/mm級の厚肉の鋼板に対して、アレスト性能を小型試験を用いて簡易かつ高精度に評価する方法が求められてきた。
そこで、本発明者らは、厚鋼板全体のアレスト性能と、厚鋼板から採取した小型試験片を用いた簡易な小型試験結果と、の相関関係をこれまでよりも簡易かつ高精度に求める方法を検討した。
【0014】
本発明者らは、まず、複数の組成・製法で高強度厚鋼板を製造し、非特許文献1及び2に開示されている手法により、脆性破壊伝播停止試験で高強度厚鋼板のKca値を求めた。また、上記の厚鋼板から小型試験片を採取し、これに対して、各種の小型試験(Vノッチシャルピー衝撃試験、落重試験等)を行って小型試験片の特性値を求めた。その上で、得られた大型試験の結果であるKca値と、小型試験片の特性値との対応関係を調査した。上述したように、板厚20mm程度の鋼板に係る相関関係を求める既存の手法で、小型試験で求めた特性値とアレスト性能を関係付けた場合、両者の相関にはバラつきがあり、十分な精度での相関関係が得られないことが判明した。
【0015】
そこで、本発明は、このような事情を背景としてなされたもので、小型試験法およびその評価方法を大幅に改善し、脆性破壊伝播停止試験等の大型試験を行うことなく、高強度厚鋼板のアレスト性能を簡便な手法で判定する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上述の課題を解決するため、大型試験でのアレスト性能と小型試験結果との間で十分な整合性が取れない要因について検討したところ、厚鋼板のアレスト性能に対し、従来では考慮されていなかった鋼板板厚が大きな影響を及ぼしていることを見出した。つまり、既存の手法を用いて大型試験でのアレスト性能と小型試験結果との相関関係を導出した場合、板厚を考慮されていなかったために、両者の相関にバラツキが生じていたと考えられる。
【0017】
したがって本発明の要旨とするところは、下記の通りである。
[1] 厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性を判定する方法であって、
板厚の異なる複数の標準鋼を用いて脆性破壊伝播停止試験を行う工程と、
前記標準鋼を用いて複合小型試験を行う工程と、
前記脆性破壊伝播停止試験により実測される脆性き裂伝播停止特性Kca値と前記複合小型試験の結果との相関モデルを算出する工程と、
前記脆性破壊伝播停止試験、前記複合小型試験の結果及び前記相関モデルに基づき、板厚毎の脆性き裂伝播停止特性判定基準を決定する工程と、
サンプル鋼を用いて前記複合小型試験を行う工程と、
前記サンプル鋼の前記複合小型試験の結果及び前記脆性き裂伝播停止特性判定基準に基づき、前記サンプル鋼の脆性き裂伝播停止特性を判定する工程と、
を含み、
前記標準鋼を用いて前記複合小型試験を行う工程、及び前記サンプル鋼を用いて前記複合小型試験を行う工程はともに、
(a)鋼板表層部を含む表層小型試験片を採取する工程と、
(b)鋼板表層部を含まない一箇所または二箇所以上の内部領域からそれぞれ内部小型試験片を採取する工程と、
(c)前記表層小型試験片を用いて、ASTM E208−06に規定されたNRL落重試験法に準拠して落重試験を行い、NDT温度を求める工程と、
(d)前記内部小型試験片を用いて、脆性破面率または吸収エネルギーを測定する小型試験を行い、破面遷移温度またはエネルギー遷移温度を求める工程と、
を含み、
前記脆性き裂伝播停止特性Kca値において、所定のKca値を確保し得る限界温度である目標Kca限界温度TKcaを目的変数、前記標準鋼の前記NDT温度を第1の説明変数X、前記標準鋼の前記破面遷移温度またはエネルギー遷移温度を第2の説明変数Y、前記標準鋼の板厚を第3の説明変数Zとし、a、b、c及びdを係数とすると、前記相関モデルは、下記式(1)であり、
a・X+b・Y+c・Z+d=TKca ・・・ (1)
前記脆性き裂伝播停止特性判定基準を決定する工程では、
前記標準鋼の前記NDT温度と、前記破面遷移温度またはエネルギー遷移温度と、TKcaを、前記標準鋼が所定のKca値を備えていることを保証する最低の温度である保証温度とした上記式(1)との相関関係を、板厚ごとに求める工程と、
前記相関関係に基づき、前記標準鋼の前記TKcaの値が前記保証温度以下を示す領域を決定し、当該領域を表すための前記標準鋼の前記NDT温度と前記破面遷移温度またはエネルギー遷移温度について、板厚毎に纏める工程と、
を含むことを特徴とする高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法。
[2] 前記脆性き裂伝播停止特性判定基準を決定する工程において、前記相関関係に基づき、前記標準鋼の前記TKcaの値が前記保証温度以下を示す領域を決定する際、板厚の相違に因らず、前記領域を表すための前記破面遷移温度またはエネルギー遷移温度を一定として、前記領域を表すための前記標準鋼の前記NDT温度を決定することを特徴とする上記[1]に記載の高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法。
[3]前記第3の説明変数Zを、前記標準鋼の板厚をt、nを0.01〜1の係数とし、下記式(2)とすることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法。
Z=t ・・・ (2)
【発明の効果】
【0018】
本発明の高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法によれば、脆性破壊伝播停止試験等の大型試験を行うことなく、高強度厚鋼板のアレスト性能を簡便な手法で判定する方法を提供することができる。
特に、本発明の高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法によれば、大型溶接構造物に使用する高強度厚鋼板のアレスト性能を判定するに際して、製造される各ロットの鋼片ごとに脆性破壊伝播停止試験用の試験片のような大型試験片や、1000トン以上の大型破壊試験機を用いる必要がない。つまり、高強度厚鋼板が大型溶接構造体を破壊するような致命的大規模損傷や損壊を防止し得るかどうかを、簡便な手法で、迅速、適確に評価することができる。
従って、本発明の方法は、例えば大型溶接構造物に使用する高強度厚鋼板の生産時の品質管理に、有効に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】厚鋼板から小型試験片を採取する位置を示す図である。
図1B】厚鋼板から小型試験片を採取する位置を示す図である。
図2】高強度厚鋼板から内部小型試験片及び表層小型試験片を採取する位置及び向きを説明するための模式図である。
図3A】落重試験の試験機および小型試験片の配置を示す概略模式図である。
図3B】落重試験の試験結果の判定方法を示す概略模式図である。
図4A】小型試験片の形状を示す図であり、落重試験片を示す。図中の数値は寸法(単位:mm)を示す。
図4B】小型試験片の形状を示す図であり、Vノッチシャルピー衝撃試験片を示す、概略側面および正面図である。
図4C】小型試験片の形状を示す図であり、1面シャープノッチシャルピー衝撃試験片を示す。図中の数値は寸法(単位:mm)を示す。
図4D】小型試験片の形状を示す図であり、3面シャープノッチシャルピー衝撃試験片を示す。図中の数値は寸法(単位:mm)を示す。
図4E】小型試験片の形状を示す図であり、シェブロンノッチシャルピー衝撃試験片の形状を示す。
図5A】表層超細粒鋼の落重試験の破面の模式図である。
図5B】一般鋼の落重試験の破面の模式図である。
図6】本実施例における、脆性破壊伝播停止試験におけるTKca6000の実測値と、相関モデルの式によるTKca6000の推定値との関係を示すグラフである。
図7A】本実施例による、落重試験、Vノッチシャルピー衝撃試験の結果より、板厚65mmにおける、NDT温度とvTrsとの関係を示すグラフである。
図7B】本実施例による、落重試験、Vノッチシャルピー衝撃試験の結果より、板厚70mmにおける、NDT温度とvTrsとの関係を示すグラフである。
図7C】本実施例による、落重試験、Vノッチシャルピー衝撃試験の結果より、板厚80mmにおける、NDT温度とvTrsとの関係を示すグラフである。
図7D】本実施例による、落重試験、Vノッチシャルピー衝撃試験の結果より、板厚100mmにおける、NDT温度とvTrsとの関係を示すグラフである。
図7E】本実施例による、落重試験、Vノッチシャルピー衝撃試験の結果より、板厚150mmにおける、NDT温度とvTrsとの関係を示すグラフである。
図7F】本実施例による、落重試験、Vノッチシャルピー衝撃試験の結果より、板厚200mmにおける、NDT温度とvTrsとの関係を示すグラフである。
図7G】本実施例による、落重試験、Vノッチシャルピー衝撃試験の結果より、板厚250mmにおける、NDT温度とvTrsとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施形態に係る高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0021】
本実施形態に係る高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性を判定する方法は、板厚の異なる複数の標準鋼を用いて脆性破壊伝播停止試験を行う工程と、前記標準鋼を用いて複合小型試験を行う工程と、前記脆性破壊伝播停止試験により実測される脆性き裂伝播停止特性Kca値と前記複合小型試験の結果との相関モデルを算出する工程と、前記脆性破壊伝播停止試験、前記複合小型試験の結果及び前記相関モデルに基づき、板厚毎の脆性き裂伝播停止特性判定基準を決定する工程と、サンプル鋼を用いて前記複合小型試験を行う工程と、前記サンプル鋼の前記複合小型試験の結果及び前記脆性き裂伝播停止特性判定基準に基づき、前記サンプル鋼の脆性き裂伝播停止特性を判定する工程と、を含み、
前記標準鋼を用いて前記複合小型試験を行う工程、及び前記サンプル鋼を用いて前記複合小型試験を行う工程はともに、
(a)鋼板表層部を含む表層小型試験片を採取する工程と、
(b)鋼板表層部を含まない一箇所または二箇所以上の内部領域からそれぞれ内部小型試験片を採取する工程と、
(c)前記表層小型試験片を用いて、ASTM E208−06に規定されたNRL落重試験法に準拠して落重試験を行い、NDT温度を求める工程と、
(d)前記内部小型試験片を用いて、脆性破面率または吸収エネルギーを測定する小型試験を行い、破面遷移温度またはエネルギー遷移温度を求める工程と、
を含み、
前記脆性き裂伝播停止特性Kca値において、所定のKca値を確保し得る限界温度である目標Kca限界温度TKcaを目的変数、前記標準鋼の前記NDT温度を第1の説明変数X、前記標準鋼の前記破面遷移温度またはエネルギー遷移温度を第2の説明変数Y、前記標準鋼の板厚を第3の説明変数Zとし、a、b、c及びdを係数とすると、前記相関モデルは、下記式(1)であり、
a・X+b・Y+c・Z+d=TKca ・・・ (1)
前記脆性き裂伝播停止特性判定基準を決定する工程では、
前記標準鋼の前記NDT温度と、前記破面遷移温度またはエネルギー遷移温度と、TKcaを、前記標準鋼が所定のKca値を備えていることを保証する最低の温度である保証温度とした上記式(1)との相関関係を、板厚ごとに求める工程と、前記相関関係に基づき、前記標準鋼の前記TKcaの値が前記保証温度以下を示す領域を決定し、当該領域を表すための前記標準鋼の前記NDT温度と前記破面遷移温度またはエネルギー遷移温度について、板厚毎に纏める工程と、を含むことを特徴とする。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0022】
まず、板厚の異なる複数の標準鋼を用い、鋼板の保証温度をとして脆性破壊伝播停止試験を行う工程と、前記標準鋼を用いて複合小型試験を行う工程についての説明を行う。なお、本実施形態の判定方法の対象とする高強度厚鋼板は、例えば、大型船体や水圧鉄管等の構造物の建造用の厚鋼板であり、板厚が50mm以上、降伏強度が、240〜1000N/mmであるものが好ましい。
まず、所定の組成・製法により、板厚の異なる複数の標準鋼(高強度厚鋼板)を複数枚(例えば10〜100枚)製造し、非特許文献1及び2に開示されている手法により、脆性き裂伝播停止試験で高強度厚鋼板のKca値を求める。
【0023】
また、上記の標準鋼の厚鋼板から小型試験片を採取し、これに対して、後述する各種の小型試験を行って小型試験片の特性値を求める。
本明細書において「小型試験」とは、上記のように用意された各々の試験材から、その一部を切り出して小型試験片を採取し、この小型試験片を用いて行う試験を指す。後に詳しく述べるように、各種の小型試験片の採取は、試験材中の一箇所から行っても良いし、複数の箇所から行ってもよい。小型試験は、部分試験と呼ぶこともできる。
本実施形態では、小型試験に供する小型試験片を、高強度厚鋼板の板厚方向において区分した複数の領域のうち、鋼板表層部を含む領域、及び鋼板表層部を含まない一箇所または二箇所以上の内部の領域からそれぞれ採取する。
【0024】
ここで、板厚50mm以上の厚鋼板における板厚中心部のき裂伝播挙動と、鋼板表層部近傍のき裂伝播挙動が相違する理由について説明する。
【0025】
板厚50mm以上の厚鋼板では、製造時に、板厚方向の温度履歴が異なるうえ、圧延時に、鋼板内部に作用する歪も板厚方向で異なることがある。このため、鋼板組織の結晶粒径や集合組織が、板厚方向で大きく異なる場合が多い。
それ故、板厚50mm以上の厚鋼板から、任意の位置で小型試験片を採取して小型試験を行った場合、試験結果は、小型試験片の採取位置の影響を受けて大きく分散し、板厚50mm以上の厚鋼板全体の脆性き裂伝播特性を代表しない。
【0026】
さらに、板厚50mm以上の厚鋼板の板厚方向において、脆性き裂伝播挙動が異なる。この原因は、き裂先端が、板厚内部では平面歪状態にあり、表面近傍では平面応力状態にあることに関係する。即ち、厚鋼板の板厚内部では、き裂先端が平面歪状態にあるので、き裂先端に形成される塑性域の寸法は、板厚表面近傍に存在するき裂先端の塑性域に比べて小さく、その結果、き裂の伝播に対する抵抗が小さくなり、脆性き裂が進展し易くなっている。
【0027】
一方、厚鋼板の表面近傍(表層部)では、き裂先端は、平面応力状態にあるので、き裂先端に形成される塑性域の寸法は、板厚内部に存在するき裂先端の塑性域の寸法より大きく、その結果、脆性き裂は、板厚内部に比べ、伝播し難くなっている。このため、表層部近傍にシアリップが形成され、脆性き裂伝播停止性能の向上に大きく寄与することは広く知られている。このように、鋼板の表層部では板厚内部と全く異なる現象が起きている。
【0028】
したがって、本実施形態においては、板厚50mm以上の厚鋼板の脆性き裂伝播挙動が、板厚方向において異なることを踏まえ、複合小型試験に供する小型試験片を、高強度厚鋼板の板厚方向において区分した複数の領域から採取する。
【0029】
以降の記載において、厚鋼板の表面、または表面下2mm程度までの位置を少なくとも含むように採取した試験片を表層小型試験片(落重試験片)と呼ぶ。
さらに、本実施形態では前記表層小型試験片に加えて、厚鋼板の厚み方向内部おいて、1箇所の位置から試験片を採取する。このように、厚鋼板の表面部分を含まず、厚鋼板の厚み方向で表面下10mm以上の内部から採取された試験片を、内部小型試験片と呼ぶ。
【0030】
内部小型試験片を採取する場合、採取位置は、厚鋼板の板厚中心部(中心偏析部)aを避けるのが好ましい。図1Aに示すように、厚鋼板7の板厚中心部aから内部小型試験片8を採取すれば、試験結果は、板厚中心部の脆性き裂伝播挙動を示すと通常は考えられる。ところが、連続鋳造プロセスで製造した鋼板には、板厚中心部に、中心偏析部と呼ばれる合金元素濃化域が存在することが多く、中心偏析が顕著な場合は、中心偏析部は、脆性き裂発生特性を著しく低下させる原因となりうる。そのため、厚鋼板内部において、中心偏析が顕著な場合は、図1Aに示すように、内部小型試験片9を、脆性き裂伝播面が中心偏析部を含まない領域bで採取することが好ましい。なお、厚鋼板内部において、中心偏析が顕著でない場合は、板厚中心部を含む内部小型試験片8を採取してもよい。
【0031】
厚鋼板の板厚中心部近傍で、板厚中心部を含まない内部小型試験片を採取する場合、板厚中心部から厚さ方向に0.1mm以上離れた(更に好ましくは1mm以上離れた)領域を採取することが好ましく、かつ、板厚中心部から5mm以内の位置を含む領域を採取することが好ましい。例えば、図1Aに示すように、厚鋼板の板厚中心部aを含まず、板厚中心部から5mm以内の位置を含むように採取した内部小型試験片9に係る試験結果は、中心偏析部の影響が排除されているので、板厚中心部の脆性き裂伝播特性を適確に示すものとなる。
【0032】
図1Aに示すように、き裂先端が平面応力状態にあり、脆性き裂が伝播し難い鋼板表面近傍(表層部)から小型試験片10を採取する場合、鋼板表面を含む試験片(表層小型試験片)を採取することが好ましい。鋼板の製造後、鋼板表面にスケール、脱炭部分等、鋼板内部と比較して大きく特性の異なる層が存在する場合は、これらの層をなるべく薄く切削して排除してから試験片を採取してもよい。表面を切削する場合でも、鋼板表面から2mmを超えて大きく切削すると、鋼板表面のき裂伝播特性を代表する試験片が得られないおそれがある。スケール、脱炭部分等の影響を避けるためなどの理由により、鋼板表面を切削する場合でも、鋼板表面2mm以内とする必要がある。
【0033】
図1Bに、小型試験片の採取の態様を示す。小型試験片9aは、板厚中心部aから5mm以内の位置を含む小型試験片である。小型試験片10aは、鋼板表面下2mmの位置を含む小型試験片である。小型試験片11は、厚鋼板の板厚1/4の位置を含む小型試験片を採取する態様である。小型試験片8aは、板厚中心部aを含む小型試験片である。小型試験片12は、鋼板表面下2mmの位置および鋼板表面を含む。
本実施形態では、表層小型試験片12は、図1Bに示す位置(鋼板表面を含む)から採取し、内部小型試験片11は板厚1/4の深さ位置(図1Bに示す位置)を含むように採取することが最も好ましい。
【0034】
そして、内部小型試験片11は、シアリップの影響をさけるため、鋼板表面から7mm以上、好ましくは10mm以上離れるよう採取する。内部小型試験片としては、板厚中心部を含む試験片、または、板厚中心部から5mm以内の位置を含むように採取した試験片、厚鋼板の板厚1/4の位置を含むように採取した小型試験片等を用いることができる。
【0035】
このように、内部小型試験片及び表層小型試験片を採取してそれぞれ小型試験をすることにより、板厚方向で異なる脆性き裂伝播挙動に対応する試験結果を得ることができる。この試験結果に基づいて、板厚50mm以上でも厚鋼板のアレスト性能を精度よく推定することができる。この推定の方法の詳細については後述する。
【0036】
厚鋼板の表層部分以外の領域から採取した小型試験片(内部小型試験片)を用いて行う小型試験は、脆性破面率または吸収エネルギーを測定し、破面遷移温度またはエネルギー遷移温度を求めることが可能な小型試験であれば、特定の試験に限定されない。このような試験の場合、小型試験片の内部をき裂が進行する際の挙動を十分に評価できる。
例えば各種のシャルピータイプ衝撃試験片、具体的には、Vノッチシャルピー衝撃試験片、シャープノッチシャルピー衝撃試験片、プレスノッチシャルピー衝撃試験片、プレクラックシャルピー衝撃試験片、3面シャープノッチシャルピー衝撃試験片、シェブロンノッチシャルピー衝撃試験片及び、Uノッチシャルピー衝撃試験片を用いることができる。いずれの試験片においても、衝撃試験時の吸収エネルギーを測定できる。また、破断面の延性破面率または脆性破面率を測定できる。
特定の鋼材の小型試験における延性破面率と吸収エネルギーとの間には通常正の相関関係がある。脆性破面率と吸収エネルギーとの測定では、いずれも、小型試験片の表面部分のみでなく、試験片内部を含み、試験片の断面全体に対して応力が作用した結果が積分的に蓄積されて十分に試験結果に反映される。このために、内部小型試験片の評価方法として、脆性破面率(または延性破面率)または吸収エネルギーの測定を行うことによって、厚鋼板内部における脆性き裂伝播特性を高精度に評価できるものと考えられる。なお、延性破面率と脆性破面率を合計すると100%になるため、脆性破面率の代わりに、延性破面率を用いてもよい。
【0037】
Vノッチシャルピー衝撃試験や落重試験は、ASTM規格やJIS規格に準拠した試験法を用いて行ってよい。また、シェブロンノッチシャルピー衝撃試験やシャープノッチシャルピー衝撃試験を採用する場合は、脆性き裂が発生し易いように、ノッチ形状を工夫し、脆性き裂伝播特性の寄与を大きく抽出できるよう、試験片の形状を調整することが望ましい。好ましい試験片の形状については、後述する。
【0038】
図2に、高強度厚鋼板から内部小型試験片102及び表層小型試験片101を採取する位置及び向きを説明するための模式図を示す。また図3Aに、落重試験の試験機および表層小型試験片の配置を示す概略図を、図3Bに落重試験の試験結果の判定方法を説明するための表層小型試験片の概略模式図を示す。なお、図2の内部小型試験片102は、Vノッチシャルピー衝撃試験片を示しており、図中の「N」はノッチを指す。
図4A図4Eに、好適な小型試験片の形状を示す。図4Aは落重試験片、図4BはVノッチシャルピー衝撃試験片、図4Cは(1面)シャープノッチシャルピー衝撃試験片、図4Dは3面シャープノッチシャルピー衝撃試験片、図4Eはシェブロンノッチシャルピー衝撃試験片の代表的な形状をそれぞれ示す。
【0039】
本実施形態の方法に従って表層小型試験として落重試験を用いた場合、厚鋼板の最表面部分の脆性き裂伝播特性を直接的に評価することができる。このため、表層小型試験をVノッチシャルピー衝撃試験等、他の方法で試験した場合に比較して、高い精度で厚鋼板のアレスト性能を評価できる。
【0040】
次に、落重試験片について説明する。
図2及び図4Aに示すように、落重試験片101に対し、試験片の表面に溶接部(溶接ビード,図2の101b)を形成し、溶接部に切欠(スリット)を形成する。落重試験片101は、図2に示すように厚鋼板の表層部を含むように採取される。つまり、落重試験片101の一方の表面101aが厚鋼板の表面に対応するように採取される。図2に模式的に示すように、溶接ビード101bは、この表面101aに形成する。なお図4A中の表は、寸法の種類(P−1〜P−3)を示しており、“T”は高さ(厚み)、“L”は長さ、“W”は幅を表している。
【0041】
次に、落重試験法について説明する。
取得した落重試験片101を用い、ASTM(Standards of American Society for Testing and Materials;米国材料試験協会規格)のE208−06に規定されたNRL(Naval Research Laboratory)落重試験を行う。落重試験片101の一方の表面101aに、上記規定に従った溶接材料で、長手方向に64mm程度の溶接ビード101bを付設する(図4A)。このビードがクラック開始ウェルド(Crack starter weld)として作用する。さらにこの溶接ビード101bに、幅1.5mm以下のスリットを形成する。
【0042】
次に、図3Aに示すように、落重試験機200の試験片設置台200bに落重試験片101を設置する。このとき、溶接ビード101bの形成された表面101aが下向きになるように設置する。落重試験では、規定の形状・質量をもつ錘200aが試験片101上に落下する。試験片101の鋼材の靭性が低いと、落重試験温度等の条件によって、溶接ビード101bの切欠(スリット)から発生した脆性き裂が、試験片101内部へ伝播する。
切欠から始まったクラックが試験片の表面101aを試験片101の幅方向に伝播してその端部まで進行した(図3Bの状態)場合、試験結果はBreak(き裂伝播あり)と判定される。幅方向の端部にき裂が達しなかった場合は、試験結果はNo Break(き裂伝播なし)と判定される。上記試験操作を、落重試験温度を5℃刻みで変化(No Breakの場合は5℃低下、Breakの場合は5℃上昇)させながら2個ずつの試験片で反復して行い、2個の試験片ともにNo breakが得られた最も低い落重試験温度から5℃低い温度を、NDT温度とする。
き裂は試験片を貫通して溶接ビード設置面101aと反対側の面に進行する場合もあるが、本実施形態で採用する落重試験では、この貫通の有無を評価に含めないこととする。
【0043】
落重試験でのNDT温度をアレスト靭性値Kcaの簡易評価に用いた例として、表層超細粒鋼という特殊な鋼板の破壊評価に用いた例がある(非特許文献2)。表層超細粒鋼では、表層部に、ほぼ均一の超細粒組織で脆性破壊し難い層が存在する。非特許文献2では表層超細粒鋼の評価に落重試験が用いられている。ただし、この文献では、落重試験で発生させた脆性き裂が、表層超細粒鋼を貫通して裏面に到達するか否かを主な評価基準とするよう、試験条件、相関式等が最適化されている。このため、ASTM規格の落重試験の一般的な運用法とは、試験全体の用法および結果の解釈、相関式等が大きく異なる。すなわち、この先行技術では、表層超細粒層の特性評価専用の特殊な相関式が得られるものの、当該相関式等の試験条件を一般鋼材に用いることは困難である。また、上記文献の試験では、ビード設置面に沿った態様のき裂の伝播は、試験結果に直接決定的影響を必ずしも与えない。これは、表層超細粒鋼では、き裂が表層超細粒部分を垂直方向に貫通し、その後表層超細粒部分の内側(下側)をき裂が伝播するという、特殊な伝播態様が生じるためである。図5Aにこの表層超細粒鋼の落重試験の破面の様子を、図5Bに一般鋼材の落重試験の破面の様子を示す。表層超細粒鋼の落重試験では、この超細粒組織からなる表層部を脆性き裂が貫通し、図5Aの領域Pに達すれば試験片は全破断する。領域Pまでき裂が貫通しない場合は停止となる。つまり、実質超細粒域の境界まで亀裂が到達すれば、Go(伝播)と判定される。すなわち、表層超細粒鋼の落重試験では、超細粒組織からなる表層部のみの評価をしていることに等しい。一方、一般鋼材の落重試験では、脆性き裂は板厚方向、試験片幅方向の両方向(図5Bの矢印)に伝播し、幅方向の貫通によりBreak(き裂伝播あり)と判定される。このように、一般鋼材の落重試験では、板表面近傍の板表面に平行な脆性き裂の伝播特性を評価するものである点が表層超細粒鋼の落重試験とは大きく異なる。このため、非特許文献2の試験方法は、表層超細粒鋼にのみ適用できる条件に設定されており、一般鋼の試験には適用できない。
【0044】
また、非特許文献2では、板厚内部も落重試験で評価している。板厚内部がアレスト性に寄与する主なメカニズムは、脆性き裂伝播抵抗のエネルギーであり、シアリップ形成のエネルギーではない。このため、内部試験片を落重試験で評価することは、試験鋼の製造バッチ別、製造法別に生じる鋼性状の偏差に起因する評価誤差の原因となると考えられる。当該鋼板では、表層超細粒域のアレスト特性に対する寄与があまりにも大きいため、このような誤差が大きくならず、実用化されている。このため、当該評価式は一般鋼材には適用できない。
一方、一般の鋼材の板厚表層の評価に関しては、最表面の評価と、内部の評価に別々の最適な方法を使い分けることが重要となる。本実施形態で使用する落重試験では、試験片の裏層にき裂が達しているかどうかは評価に含まない。この落重試験は、表層側の寄与が最も大きく、裏面側の寄与が小さい試験法であり、鋼材表層のシアリップ効果の評価に適している。
【0045】
本実施形態は、上述した脆性破壊伝播停止試験(ESSO試験)及び複合小型試験の結果に基づいて、厚鋼板のアレスト性能を判定することを基本思想とするものであり、成分組成に基づく特性は試験結果に現れる。このため、広い成分組成の厚鋼板に対して本実施形態の方法を適用することができる。本実施形態で用いる厚鋼板は、公知の成分組成の構造用鋼から製造したものでよい。即ち、本実施形態で用いる厚鋼板は、公知の成分組成の厚鋼板でよい。
【0046】
なお、本実施形態において判定対象となる厚鋼板としては、例えば、質量%で、C:0.02〜0.20%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.001〜0.20%、N:0.02%以下、P:0.01%以下、S:0.01%以下を基本成分としたものを挙げることができる。また、母材強度や継手靭性の向上等、要求される特性に応じて、さらに、Ni:2.0%以下、Cr:1.5%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下、W:1.0%以下、Co:1.0%以下、V:0.1%以下、Nb:0.1以下、Ti:0.05以下、Zr:0.05%以下、Ta:0.05%以下、Hf:0.005%以下、REM:0.005%以下、Y:0.005%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、Te:0.01%以下、Se:0.005%以下、B:0.005%以下の1種または2種以上を含有させた厚鋼板を用いてもよい。
【0047】
本実施形態に係るアレスト性能の判定方法では、上記各種の標準鋼の複数箇所からそれぞれ採取した小型試験片について、上記の方法で複数の小型試験(Vノッチシャルピー衝撃試験、落重試験等の複合小型試験)を行った後、次に、得られた複合小型試験の結果と、最初に行った上記各種の標準鋼の脆性破壊伝播停止試験の結果との相関モデルを、以下のように算出する。
【0048】
本実施形態に係る相関モデルは、標準鋼の脆性破壊伝播停止試験により測定される、脆性き裂伝播停止特性Kca値が所定の要求値となる温度であるTKcaを目的変数、標準鋼の前記表層小型試験片の落重試験の結果であるNDT温度を第1の説明変数X、前記標準鋼の前記内部小型試験片を用いた小型試験(Vノッチシャルピー衝撃試験)の結果である破面遷移温度(またはエネルギー遷移温度)を第2の説明変数Y、標準鋼の板厚tを第3の説明変数Zとして重回帰分析を行うことで得られる。具体的には、下記式(1)で表される相関モデル式を算定することができる。
【0049】
a・X+b・Y+c・Z+d=TKca ・・・ (1)
なお、a,b,c,dは係数である。
【0050】
従来から、大型試験の結果であるKca値と、小型試験片の特性値との対応関係についてアレスト性能の観点から調査されてきたが、十分な精度での相関関係が得られなかった。しかし、本実施形態に係る上記相関モデルの式では、厚鋼板のアレスト性能に対し、従来では考慮されていなかった板厚を新たな要素として加入することで、大型試験でのアレスト性能と小型試験結果との関係において、高精度な相関関係を導出できる。
【0051】
次に、脆性破壊伝播停止試験及び複合小型試験の結果、ならびに上記相関モデルの式に基づき、板厚毎に厚鋼板のアレスト性能を判定する基準を定める。
具体的には、まず、上記の複合小型試験により求めた標準鋼のNDT温度と、破面遷移温度(またはエネルギー遷移温度)と、上記相関モデルの式において左辺のTKcaを標準鋼の保証温度とした式との相関関係(グラフ)を、板厚ごとに求める。尚、上記保証温度とは、鋼板が所定のKca値を備えていることを保証する最低の温度である。
次に、得られた板厚毎の相関関係(グラフ)に基づき、標準鋼のTKcaの値が保証温度以下を示す領域を決定し、当該領域を表すための標準鋼のNDT温度と破面遷移温度またはエネルギー遷移温度について、例えば、表2に示す様に板厚毎に、厚鋼板のアレスト性能の判定基準として纏める。
このようにして求めた判定基準を用い、サンプル鋼の複合小型試験の結果から、当該サンプル鋼のアレスト性能が合格否かを簡易に判定することができる。なお、サンプル鋼は生産ラインから任意の数を取得することができ、各サンプル鋼から、標準鋼に行ったのと同様の方法で表層小型試験片(落重試験用)および内部小型試験片(脆性破面率または吸収エネルギー測定用)を取得する。そして引き続き標準鋼と同様に、小型試験片に対する各小型試験を行い、サンプル鋼の複合小型試験結果を得ることができる。
【0052】
上述したように、厚鋼板のアレスト性能は板厚の影響を大きく受ける。即ち、板厚が厚くなればなるほどアレスト性能は厳しくなる傾向となり、厚鋼板の板厚が厚くなればなるほど、き裂の伝播は停止しにくくなる。そこで、標準鋼のNDT温度と、破面遷移温度またはエネルギー遷移温度と、上記相関モデルにおいてTKcaを標準鋼の保証温度とした式との相関関係(グラフ)を、板厚ごとに求め、標準鋼のTKcaの値が保証温度以下を示す領域、つまりアレスト性能が良好となる合格領域を板厚毎に纏めることで、高精度かつ簡易なアレスト性能の判定基準を作成することができる。
【0053】
なお、アレスト性能の上記判定基準を決定する工程において、前記相関関係(グラフ)に基づき、標準鋼のTKcaの値が保証温度以下を示す領域(アレスト性能が良好と判断される領域)を決定する際、板厚の相違に因らず、前記領域を表すための破面遷移温度(またはエネルギー遷移温度)を一定として、前記領域を表すための標準鋼のNDT温度を決定してもよい。
上述のとおり、板厚が厚くなればなるほどアレスト性能は厳しくなる傾向にあり、アレスト性能が良好となる合格基準(破面遷移温度またはエネルギー遷移温度、及びNDT温度)も厳しくなる。そのため、板厚毎によって合格基準を示す値も変動するが、破面遷移温度またはエネルギー遷移温度を一定値に固定して、板厚毎のNDT温度の合格判定基準を決定することで、より簡易にアレスト性能を判定することが可能となる。
【0054】
上述したように、板厚が厚くなればなるほどアレスト性能は厳しくなる傾向にある。すなわち、NDT温度と破面遷移温度(またはエネルギー遷移温度)が同じである場合、板厚が厚くなればなるほどTKcaの値は大きく(高温)になる。また、板厚が厚くなるに伴い、TKcaの板厚依存性は徐々に低下する。例えば、板厚が50〜100mmの範囲での板厚増加に対するTKcaの変化に比べ、板厚が100超〜250mmの範囲での板厚増加に対するTKcaの変化は小さくなる。そのため、前記第3の説明変数Zを、下記式(2)とすることが好ましい。なお、下記式(2)中のtは前記標準鋼の板厚、nを0.01〜1とした係数である。これにより、相関モデルの精度が向上する。
Z=t ・・・ (2)
【0055】
この際、前記モデル式(2)のnの値としては、0.01〜1の範囲内の値であれば何れの値を用いても実用上問題ない。しかし、100mmを超える板厚の鋼板を含む場合には、nの値を1未満とし、しかも、nの値が小さければ小さい程、即ち、0.01に近くするする程、相関モデルの精度が向上するため好ましい。しかし、0.01未満にしてもそれ以上の精度の向上は見込めない上、上記式(1)の係数cの値が大きくなるため相関モデル式が煩雑になる。そのため、nの下限は0.01とすることが好ましい。一方、板厚が例えば100mmを超える板厚の鋼板を含まずに、50〜100mmの領域の薄い鋼板で構成されている場合には、nの値として1を用いることが、相関モデル式が簡単となり扱いやすい。そのため、100mmを超える板厚の鋼板を含まない場合は、nを1とすることが好ましい。
【実施例】
【0056】
次に、本発明の各実施形態の実施例について説明する。実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した条件の例であり、本発明の適用範囲は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0057】
(実施例1)
本実施例で用いた厚鋼板(鋼種No.1〜14)の成分組成、板厚、および強度区分YP、用意した鋼板枚数(合計105枚)を、表1に示す。また、これら鋼種No1.〜14の脆性破壊伝播停止試験(鋼の保証温度:−10℃)の結果(Kca−10℃[N/mm1.5],TKca6000[℃])も併せて表1に示す。
なお、強度区分については、例えば「YP40」は「降伏点40kgf/mm級」を意味する。
【0058】
表1に示す厚鋼板(鋼種No.1〜14)から、図1Bに示す採取態様のうち、落重試験用の小型試験片を表層を含む位置より採取した小型試験片12を用い、Vノッチシャルピー試験用の小型試験片を板厚の1/4の位置を含む位置より採取した小型試験片11を用いた。各試験片の寸法及び形状は、図2図4A図4Bに示すとおりとし、落重試験片の寸法は、図4Aの「P−3(T:16mm,L:130mm,W:50mm」とした。
次に、採取した各小型試験片において、NRL落重試験(ASTM E208−06に準拠)及び、Vノッチシャルピー衝撃試験(JIS Z 2242に準拠)を行いNDT温度及びvTrs(破面遷移温度)を求めた。
【0059】
【表1】
【0060】
次に、上記試験の結果より、TKca6000[℃]を目的変数、NDT温度[℃]、vTrs[℃]、板厚t[mm]の(1/13)乗を説明変数として重回帰分析を行ったところ、上記式(1)の係数a、b、c及びdはそれぞれ、a=0.4033、b=0.2882、c=144.1、d=−162.5が得られた。これより、本実施例における相関モデルは下記式(3)となった。
TKca6000=0.4033×NDT温度+0.2882×vTrs+144.1×t1/13−162.5 ・・・ (3)
【0061】
図6に、板厚が50〜250mmの場合に於ける、上記相関モデルの式(3)によるTKca6000の推定値と、表1に示すTKca6000の実測値の関係を示す。
図6のグラフより分かるように、TKca6000の推定値と実測値は概ね一致するものの若干の誤差が生じる。各種試験は同一の鋼板を用いたとしても、試験結果にばらつきが生じるため、ある程度の誤差は避けることはできない。従って、本実施例においては、アレスト性がKca−10℃≧6000N/mm1.5を満足することを簡易判定する基準を、推定TKca6000≦−(10+e)℃とした。例えば、eの値は、TKca6000の推定値と実測値との誤差の標準偏差σを用いることができる。本実施例では、図6のグラフによりσ=6.3℃であることから、アレスト性を簡易判定する基準を推定TKca6000≦−16.3℃とした。このようにすることで、TKca6000の実測値が保証温度(−10℃)超で不合格であるサンプルが、TKca6000の推定値と実測値の誤差により誤って合格と判定してしまうことを防止することができる。また、eの値はσである必要はなく、例えば2σとしても良い。
【0062】
また、本発明者らによる考察によると、アレスト性がKca−10℃≧6000N/mm1.5を満足する鋼板はほとんどvTrsが−80℃以下であったことから、本実施例においては、vTrsの合格条件を−80℃に固定した。
これより、上記相関モデルの式(3)にTKca6000=−16.3℃、vTrs=−80℃を代入することで、板厚毎のNDT温度の合格条件を決定することができる。このようにして決定した、板厚毎の、落重試験温度、NDT温度及びvTrsを纏めた判定基準テーブルを表2に示す。
【0063】
次に、表2の判定基準テーブルによって、確実にアレスト性の合否判定ができていることを確認するために、板厚が65mm、70mm、80mm、100mm、150mm、200mm、250mmのサンプルについて、NDT温度とvTrsとの関係を、表2の判定基準テーブルによる合格領域とともに纏めた結果を、図7A図7Gに示す。
即ち、図7A図7Gにおいて、表2のNDT温度の値を図7A図7Gの縦軸にプロットし、表2のvTrsの値を図7A図7Gの横軸にプロットして、この両者を結んだ線の下側(両温度より低い温度領域)を合格領域とするものである。
また、図7A図7G内では、TKca6000(実測値)が保証温度(−10℃)以下で合格であったものを「○」、TKca6000(実測値)が保証温度(−10℃)超で不合格であったものを「×」とした。
この図7A図7Gから解るように、各板厚での合格領域には「○」のみしかなく、確実にアレスト性がKca−10℃≧6000N/mm1.5を満足する鋼板のみを判定できていることを立証できている。
【0064】
【表2】
【0065】
以上のようにして、アレスト性の判定基準を作成することができる。その結果、当該判定基準に基づき、サンプル鋼の大型試験(脆性破壊伝播停止試験)を行うことなく、小型試験を行うことで、サンプル鋼のアレスト性の合否を簡易に判定することが可能となる。
本実施例の場合は、鋼の保証温度:−10℃、脆性き裂伝播停止特性Kcaの要求値:6000N/mm1.5を条件とする場合であり、当該条件の場合、サンプル鋼の破面遷移温度vTrs(またはエネルギー遷移温度vTre)が−80℃以下、NDT温度が表2の値以下である場合に、サンプル鋼の脆性き裂伝播停止特性が要求値を満足すると判定できる。換言するに、例えば板厚50mmのサンプル鋼の場合、「NRL落重試験において表2のNDT温度である−63℃よりも5℃高い−58℃以下で合格、かつ、Vノッチシャルピー衝撃試験において表2のvTrsである−80℃以下で合格であれば、当該サンプル鋼の脆性き裂伝播停止特性が要求値を満足すると判定できる。」なお、NRL落重試験の合格基準は、切欠から始まったクラックがサンプル鋼試験片の表面を試験片の幅方向に伝播してその端部まで進行した場合、試験結果は「Break(き裂伝播あり)」と判定され不合格であり、幅方向の端部にき裂が達しなかった場合は、試験結果は「No Break(き裂伝播なし)」と判定される。上記試験操作を、同一の試験温度にて2個ずつの試験片で反復して行い、2個の試験片ともに「No break」が得られた場合、この時の温度において合格とする。また、Vノッチシャルピー衝撃試験の合格基準は、3個の試験の脆性破面率を測定し、これらの平均値が50%以下であった場合、この時の試験温度において合格とする。
【0066】
以上説明したように、サンプル鋼のアレスト性の判定基準としてアレスト性に大きな影響を及ぼす板厚の要素を加えることで、判定精度を向上させることが可能となる上、板厚毎の判定基準を作成することで、サンプル鋼のアレスト性の判定を簡易に行うことができる。
【0067】
なお、鋼の保証温度及び脆性き裂伝播停止特性Kcaの要求値が異なる場合には、その場合の条件に沿って相関モデルを導出することで、条件に沿った判定基準を作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の方法によると、脆性破壊伝播停止試験のように、大型試験装置を必要し、高コストの大型試験を省略することが可能となる。つまり、各バッチの製品鋼材からサンプル鋼材を選出し、このサンプル鋼材から切り出した小型試験片を用いて小型試験を行い、大型試験と同様の高い精度で実製品のアレスト性能を推定できる。本発明の方法を用いると、成分・工程レベルの品質保証に替わって、小型試験に基づいた各バッチの製品鋼材レベルの品質保証を提供できる。
【符号の説明】
【0069】
7 ・・・ 厚鋼板、
8、8a、9、9a、10、10a、11、12 ・・・ 小型試験片、
101 ・・・ 表層小型試験片(落重試験片)、
101a ・・・ 片方の表面(溶接ビード設置面)、
101b ・・・ 溶接ビード、
102 ・・・ 内部小型試験片、
N ・・・ ノッチ、
200 ・・・ 落重試験機、
200a ・・・ 錘、
200b ・・・ 試験片設置台
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
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図7E
図7F
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