(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341196
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/26 20060101AFI20180604BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20180604BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20180604BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20180604BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20180604BHJP
A61K 31/4402 20060101ALI20180604BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20180604BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20180604BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20180604BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20180604BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20180604BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20180604BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20180604BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
A61K47/26
A61K47/36
A61K9/20
A61K31/167
A61K31/439
A61K31/4402
A61K31/4545
A61K31/445
A61K31/5415
A61K31/192
A61K31/495
A61K31/522
A61K31/375
A61K31/137
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-506812(P2015-506812)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2014057444
(87)【国際公開番号】WO2014148520
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年3月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-57659(P2013-57659)
(32)【優先日】2013年3月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】桑田 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】湊 孝文
(72)【発明者】
【氏名】浜下 智宏
【審査官】
今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−515535(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/123678(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/071139(WO,A1)
【文献】
特開平11−116464(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/037254(WO,A1)
【文献】
特表2006−528243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンニトール、ショ糖及びデンプンを含有し、マンニトールの含有量がショ糖1質量部に対し10質量部以上であることを特徴とする水なしで服用可能な圧縮又は打錠製剤。
【請求項2】
口腔内崩壊錠またはチュアブル錠である請求項1に記載の圧縮又は打錠製剤。
【請求項3】
デンプンの含有量が、ショ糖1質量部に対して、0.01質量部以上である請求項1又は2に記載の圧縮又は打錠製剤。
【請求項4】
さらに薬物を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧縮又は打錠製剤。
【請求項5】
薬物がアセトアミノフェン、スコポラミン又はその塩,クロルフェニラミン又はその塩、カルビノキサミン又はその塩、ベラドンナ総アルカロイド、ロラタジン、フェキソフェナジン又はその塩、メキタジン、ロキソプロフェン又はその塩、メクリジン又はその塩、イブプロフェン、カフェイン、アスコルビン酸、プソイドエフェドリン又はその塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項4に記載の圧縮又は打錠製剤。
【請求項6】
さらに軽質無水ケイ酸を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧縮又は打錠製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内で速やかに崩壊あるいは簡単に噛み砕くことができる固形製剤に関し、適度な硬度を有し、服用性にも優れた口腔内崩壊錠またはチュアブル錠を含む水なしで服用可能な製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内崩壊錠は口腔内で速やかに溶解または崩壊させて服用でき、適切な崩壊性を有する錠剤、チュアブル錠は咀嚼して服用する錠剤と定義されており(非特許文献1)、両者とも水なしで服用可能な製剤のため、服用シーンを選ばず、水がない状況下でも服用できるというメリットがある。
従来の口腔内崩壊錠としては、ゼラチン等の物質を用いて容器中で凍結乾燥することにより成型されたものや、湿った粉体もしくは造粒物を湿式打錠したもの等が知られているが、これらの錠剤は輸送の際に錠剤の割れ、欠けが発生することもしばしばあり、充分な硬度を有するとは言い難く、また製造方法も煩雑である。そのため、口腔内崩壊錠またはチュアブル錠の製造では口腔内崩壊時間と錠剤の硬度を両立する工夫が必要となる。また、口腔内で崩壊するため、服用性に考慮が必要となる。
これまでに、速やかな崩壊性と高い硬度を有する口腔内崩壊錠を得るべく種々検討がなされてきた。例えば、デンプン粉末と糊化したデンプン、マンニトールを含む水溶性賦形剤、フマル酸ステアリルナトリウム及び薬効成分を含有する口腔内崩壊錠剤(特許文献1)、成形性の低い糖類及び成形性の高い糖類を含有してなる、口腔内において速やかな崩壊性、溶解性を有する口腔内溶解型圧縮成型物(特許文献2)、マンニトール、崩壊剤、セルロース類、滑沢剤、並びにデンプン類及び乳糖の少なくとも1種を含有する口腔内崩壊錠の製造方法(特許文献3)、等が報告されている。
しかしながら、特許文献1は、デンプン粉末と糊化したデンプンを用いると製造装置への貼り付き等が生じ易く、製造上の取り扱いが困難である。また、特許文献2の方法では、口腔内崩壊錠を製造するためには低圧で打錠した後の加湿・乾燥工程が必須条件のため、製造工程数が多くなり、操作も煩雑である。特許文献3はマンニトールをベースとして実質的にクロスポビドン、クロスカルメロースなどのスーパー崩壊剤を含有する口腔内崩壊錠であるが、スーパー崩壊剤の多量の配合は吸湿による硬度の低下及び外観変化等が懸念されるため、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4435424号公報
【特許文献2】特許第3122141号公報
【特許文献3】特開2000−273039号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】第十六改正日本薬局方解説書 株式会社廣川書店 第A−33−34頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、口腔内で速やかに崩壊あるいは噛み砕ける固形製剤であって、適度な硬度を有し、服用性に優れた口腔内崩壊錠またはチュアブル錠を含む水なしで服用可能な製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々の検討を行ったところ、マンニトールとショ糖とデンプンを含有し、マンニトールの含有量がショ糖1質量部に対し10質量部以上含有する固形製剤は、口腔内において速やかな崩壊性を示しながら、適度な硬度を有し、且つ服用性に優れた口腔内崩壊錠またはチュアブル錠が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)マンニトール、ショ糖及びデンプンを含有し、マンニトールの含有量がショ糖1質量部に対し10質量部以上であることを特徴とする水なしで服用可能な製剤、
(2)口腔内崩壊錠またはチュアブル錠である(1)に記載の製剤、
(3)デンプンの含有量が、ショ糖1質量部に対して、0.01質量部以上である(1)又は(2)に記載の製剤、
(4)さらに薬物を含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の製剤、
(5)薬物がアセトアミノフェン、スコポラミン又はその塩、クロルフェニラミン又はその塩、カルビノキサミン又はその塩、ベラドンナ総アルカロイド、ロラタジン、フェキソフェナジン又はその塩、メキタジン、ロキソプロフェン又はその塩、メクリジン又はその塩、イブプロフェン、カフェイン、アスコルビン酸、プソイドエフェドリン又はその塩から選ばれる1種又は2種以上である(1)〜(4)のいずれかに記載の製剤、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、特殊な設備、製造方法、賦形剤を使用せず、口腔内で崩壊し且つ、所望の適度な硬度を有し、服用性に優れた口腔内崩壊錠またはチュアブル錠の製造が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤について詳述し説明する。
【0010】
本発明の口腔内崩壊錠とは、通常の咀嚼条件での口腔内における崩壊時間が極めて早い錠剤を意味する。また、本発明のチュアブル錠とは、噛み砕いて服用する錠剤を意味する。口腔内崩壊錠またはチュアブル錠は服用の際に水を必須としないため、例えば、通常の錠剤を服用しにくい災害時や突然の発症にも、好適な剤型である。
【0011】
口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤に含まれるマンニトールの含有量は、ショ糖1質量部に対し10質量部以上である。10質量部未満であると口腔内崩壊時間と錠剤の硬度、服用性の両立が難しいからである。また、口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤に含まれるマンニトールの含有量は、ショ糖1質量部に対し950質量部以下が好ましく、100質量部以下がさらに好ましく、特に好ましいのは50質量部以下である。なお、口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤中に含まれるマンニトール含有量は、錠剤物性及び圧縮成形性の観点から上限値は好ましくは95質量%である。
【0012】
本発明のデンプンとしては、例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、甘藷デンプン、緑豆デンプン、タピオカデンプンなどが挙げられ、好ましくはトウモロコシデンプン、バレイショデンプンである。また、製剤中に粉糖を含有する場合は、粉糖中に含まれるトウモロコシデンプンは本発明のデンプンに含まれる。口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤に含まれるデンプン含有量は、ショ糖1質量部に対して0.01質量部〜20.0質量部が好ましい。本発明の効果の点から、0.01質量部〜15.0質量部がより好ましい。また、本発明の製剤中に含まれるデンプンの含有量は、錠剤物性及び圧縮成形性という観点から上限値は好ましくは70質量%となる。
【0013】
口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤に含まれるショ糖は、製剤中に粉糖を含有する場合は、粉糖中に含まれるショ糖は本発明のショ糖に含まれる。本発明のショ糖の含有量は、製剤全質量に対して通常0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは1.0〜20質量%、いっそう好ましくは2.0〜10質量%である。
【0014】
また、口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤には、薬物を配合することができる。口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤に配合できる薬物としては、固形状、結晶状などいずれのものでもよく、例えば解熱鎮痛消炎薬、滋養強壮保健薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、胃腸薬、制酸剤、鎮咳去痰剤、制吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、アレルギー用薬、抗ヒスタミン剤、中枢神経刺激薬、ビタミン剤、歯科口腔用薬、鎮けい剤、などから選ばれた1種または2種以上の成分が用いられる。例えば、アセトアミノフェン、スコポラミン又はその塩、クロルフェニラミン又はその塩、カルビノキサミン又はその塩、ベラドンナ総アルカロイド、ロラタジン、フェキソフェナジン又はその塩、メキタジン、ロキソプロフェン又はその塩、メクリジン又はその塩、イブプロフェン、カフェイン、アスコルビン酸、プソイドエフェドリン又はその塩等が挙げられる。薬物の含有量は、製剤全質量に対し通常0.01〜90質量%、好ましくは0.01〜80質量%、より好ましくは0.1〜80質量%、さらに好ましくは0.1〜70質量%、いっそう好ましくは0.5〜50質量%である。
【0015】
口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤には、本発明の効果に支障のない限り、口腔内崩壊錠またはチュアブル錠の製造に一般に用いられる種々の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤として、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、酸味剤、発泡剤、甘味剤、香料、滑沢剤、着色剤等が挙げられる。口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤の大きさ、形状は、特に限定されず、また、割線を有する分割錠としてもよい。
【0016】
口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤の製造に当たっては、特に制約なく従来から行われている製造方法を使用することができる。例えば以下の方法が挙げられる。
【0017】
マンニット、ショ糖及びデンプンを混合し、必要に応じて添加剤を混合する。造粒方法は特に制限されず、湿式造粒法及び乾式造粒法のどちらで製造しても良い。造粒過程あるいは造粒製造後に適宜乾燥しても良い。湿式造粒法としては、例えば、流動層造粒法、攪拌造粒法、練合造粒法、転動造粒法、溶融溶媒法が挙げられ、乾式造粒法としては、スラッグ法、ローラーコンパクター法が挙げられるが、流動層造粒法、攪拌造粒法で製造するのが好ましい。得られた造粒物に適宜後末添加成分を添加し、打錠などの一般的な圧縮成型を行うことにより口腔内崩壊錠およびチュアブル錠を含む本発明に係る水なしで服用可能な製剤が得られる。また、湿式造粒法で製造する場合、造粒溶媒は水またはマンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸のいずれか1種以上を含む水溶液が好ましいが、特にマンニトールを含む造粒溶媒を使用すると、本発明の効果である錠剤の硬度と服用性がより向上するのでより好ましい。
【0018】
また造粒工程を必要としない直接打錠法で製造してもよい。打錠装置としては、一般に錠剤の成型に使用される装置が用いられ、例えば、単発式打錠機、回転式打錠機等が用いられる。
【0019】
かくして得られる口腔内崩壊錠またはチュアブル錠は、口腔内で優れた崩壊性を示すものであり、好ましくは日本薬局方による崩壊試験もしくはヒトによる口腔内崩壊試験において、崩壊時間が60秒以内、さらに好ましくは30秒以内である。また製剤工程、さらには流通過程において損傷することのない適度な強度を有し、錠剤硬度は引張強度に換算して0.7MPa以上の服用性の良好な製剤である。
【実施例】
【0020】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。なお、比較例及び実施例の粉糖は、徳倉社製の粉糖(ショ糖98.3%、トウモロコシデンプン1.7%)を使用した。
【0021】
(比較例1)
表1の混合末に示す成分を秤量、混合した粉体に、同じく表1の造粒溶媒に示す成分を溶解・分散させた水溶液を添加した後、乳鉢で練合し、十分乾燥させた。その後22メッシュの篩に通し、造粒物を製造した。得られた造粒物に表1に示す後末添加成分を秤量、混合した後、卓上簡易錠剤成型機(商品名:HANDTAB;市橋精機)を用いて得られた錠剤の引張強度が0.7MPa以上になるように打錠圧を設定し(6〜15kN)、錠剤径8mmの錠剤を得た。
【0022】
(比較例2〜3、実施例1〜6、8)
表1に示す処方に従い、比較例1と同様にして錠剤を製造した。
(実施例7)
表1の混合末及び後末添加成分を秤量、混合し、22メッシュの篩に通した粉体を比較例1と同様にして錠剤を製造した。
【0023】
(試験例)
<評価方法1>
実施例1〜15及び各比較例の口腔内崩壊錠について、以下の各試験方法により錠剤の硬度、崩壊時間を測定し、服用性(ざらつき、粉っぽさ)については以下の評価基準に従って評価し、点数化した。
【0024】
(1)硬度試験
シュロイニゲル錠剤硬度計(シュロイニゲル社製)を用いて測定した。それぞれの錠剤の硬度を3回ずつ測定した。また得られた結果を下記の[数1]を用い計算し、引張強度を算出し、その平均値を求めた。
【0025】
【数1】
【0026】
F:錠剤硬度(N)
D:錠剤直径(mm)
t:錠剤厚さ(mm)
【0027】
(2)崩壊試験
日本薬局方第十六改正に記載されている崩壊試験法に従い測定した。それぞれの錠剤の崩壊時間を3回ずつ測定し、その平均値を求めた。
【0028】
(3)服用性試験1:ざらつき
健康な成人パネラー3名が、口腔内でかまずに、舌で軽く触れた状態でのざらつきを下記評価基準に従って評価し、その平均値を求めた。
ざらつきの評価基準
非常にざらつく :4ポイント
ややざらつく :3ポイント
ほとんどざらつかない:2ポイント
ざらつき無し :1ポイント
【0029】
(4)服用性試験2:粉っぽさ
健康な成人パネラー3名が、口腔内でかまずに、舌で軽く触れた状態での粉っぽさを評価し、その平均値を求めた。
粉っぽさの評価基準
非常に粉っぽい :4ポイント
やや粉っぽい :3ポイント
粉っぽさをほとんど感じない :2ポイント
粉っぽさを全く感じない :1ポイント
【0030】
(結果)
それぞれの錠剤の崩壊時間、引張強度、服用性結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
表1、3に示すように、マンニトール、ショ糖及びデンプンを含有し、且つマンニトールの含有量がショ糖1質量部に対し10質量部以上配合した固形製剤である実施例1〜8は、崩壊時間30秒未満の優れた崩壊性を示し、かつ、引張強度、服用性において全て良好な値を示した。一方、処方中にショ糖を配合していない比較例1は高打錠圧にて製造しても0.7MPa以上の硬度を持つ錠剤を製造できず、また服用性においても満足できなかった。また、トウモロコシデンプンを処方に配合していない比較例2、ショ糖1質量部に対しマンニトールが10質量部以下である比較例3では崩壊時間、服用性のいずれかについて満足できるものでなかった。
【0035】
(実施例9)
薬物としてアセトアミノフェンを用い、表4に示す造粒顆粒の成分を秤量、混合し、流動層造粒機(商品名:FLO−1;フロイント社製)にて造粒物を製造した。得られた造粒物に表4に示す後末添加成分を秤量、混合した後、小型回転式錠剤機(商品名:VELA 5;菊水製作所)を用いて、得られた錠剤の引張強度が0.7MPa以上になるように打錠圧を設定し(600〜1500kgf)、錠剤径8〜10mmの錠剤を得た。
【0036】
(実施例10)
薬物としてスコポラミン臭化水素酸塩水和物、クロルフェニラミンマレイン酸塩を用い、実施例9と同様にして錠剤を製造した。
【0037】
(実施例11)
薬物としてベラドンナ総アルカロイド、クロルフェニラミンマレイン酸塩を用い、実施例9と同様にして錠剤を製造した。
【0038】
(実施例12)
薬物としてロラタジンを用い、実施例9と同様にして錠剤を製造した。
【0039】
(実施例13)
薬物としてベラドンナ総アルカロイド、カルビノキサミンマレイン酸塩を用い、実施例9と同様にして錠剤を製造した。
【0040】
(実施例14)
薬物としてスコポラミン臭化水素酸塩水和物、メクリジン塩酸塩を用い、実施例9と同様にして錠剤を製造した。
【0041】
(実施例15)
薬物としてロキソプロフェンナトリウム二水和物を用い、実施例9と同様にして錠剤を製造した。
【0042】
【表4】
【0043】
(結果)
表4に示すように、薬物を配合した固形製剤である実施例9〜15においても、崩壊時間及び引張強度、服用性の全てにおいて、基準値を満たす結果が得られた。
(実施例16)
薬物としてイブプロフェンを用い、表5に示す造粒顆粒の成分を秤量、混合し、流動層造粒機(商品名:FLO−1;フロイント社製)にて造粒物を製造した。得られた造粒物に表5に示す後末添加成分を秤量、混合した後、卓上簡易錠剤成型機(商品名:HANDTAB;市橋精機)を用いて、得られた錠剤の引張強度が0.7MPa以上になるように打錠圧を設定し(6〜15kN)、錠剤質量が125mgの錠剤径8mmの錠剤を得た。
(実施例17)
薬物としてカフェインを用い、実施例16と同様にして錠剤を製造した。
(実施例18)
薬物としてアスコルビン酸を用い、実施例16と同様にして錠剤を製造した。
(実施例19)
薬物としてフェキソフェナジン塩酸塩を用い、実施例16と同様にし、錠剤質量150mgの錠剤を製造した。
(実施例20)
薬物としてメキタジンを用い、実施例16と同様にして錠剤を製造した。
(実施例21)
薬物として塩酸プソイドエフェドリンを用い、実施例16と同様にして錠剤を製造した。
【0044】
<評価方法2>
実施例16〜21の口腔内崩壊錠について、以下の各試験方法により、崩壊時間を測定し、服用性(ざらつき、粉っぽさ)については以下の評価基準に従って評価し、点数化した。
(1)硬度試験
評価方法1と同様に行った。
(2)崩壊試験(口腔内崩壊試験)
健康的な成人パネラー2名が、口腔内でかまずに、錠剤が口腔内で完全に崩壊するまでの時間を測定し、その平均値を求めた。
(3)服用性試験1:ざらつき
健康な成人パネラー2名により、評価方法1と同様に行った。
(4)服用性試験2:粉っぽさ
健康な成人パネラー2名により、評価方法1と同様に行った。
【0045】
【表5】
【0046】
(結果)
実施例16〜21で得た錠剤の崩壊時間、錠剤硬度、服用性結果を表5に示す。
表5に示す薬物を配合した固形製剤(実施例16〜21)においても、崩壊時間及び引張強度、服用性において、全て基準値を満たす結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、特殊な設備、製造方法、賦形剤を使用せず、口腔内で速やかに崩壊あるいは溶解し、かつ所望の適度な硬度を有し、服用性に優れた口腔内崩壊錠またはチュアブル錠の提供が可能となる。