【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例および比較例について、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるわけではない。なお、以下の実施例では、Ce濃度は、特定の結晶中における濃度か、融液、(仕込み)における濃度かのいずれかの記載となっているが、各実施例において、結晶中の濃度1に対して仕込み時の濃度1〜10程度となるような関係があった。
【0063】
(実施例1)
マイクロ引下げ法により、(Ce
0.01La
0.44Gd
0.55)
2 Si
2 O
7 の組成(x=0.44、y=0.01)で表される結晶を育成した。この結晶はA
2 B
2 O
7 で表されるパイロクロア型酸化物の一種であるパイロシリケート結晶である。
図1は育成した(Ce
0.01La
0.44Gd
0.55)
2 Si
2 O
7 結晶の写真を示す図である。
図1に示すように、育成した結晶は、部分的に透明な結晶が得られた。透明な結晶は、その下の模様が透けて見えており、透明バルク体であった。また、この結晶は、へき開性や潮解性のない単結晶であることが確認された。
【0064】
(実施例2)
マイクロ引下げ法により、(Ce
0.01La
0.34Gd
0.65)
2 Si
2 O
7 の組成(x=0.34、y=0.01)で表される結晶を育成した。この結晶はA
2 B
2 O
7 で表されるパイロクロア型酸化物の一種であるパイロシリケート結晶である。
図2は育成した(Ce
0.01La
0.34Gd
0.65)
2 Si
2 O
7 結晶の写真を示す図である。
図2に示すように、育成した結晶は、部分的に透明な結晶が得られた。透明な結晶は、その下の模様が透けて見えており、透明バルク体であった。また、この結晶は、へき開性や潮解性のない単結晶であることが確認された。
【0065】
(実施例3)
マイクロ引下げ法により、(Ce
0.01La
0.29Gd
0.7)
2 Si
2 O
7 の組成(x=0.29、y=0.01)で表される結晶を育成した。この結晶はA
2 B
2 O
7 で表されるパイロクロア型酸化物の一種であるパイロシリケート結晶である。
図3は育成した(Ce
0.01La
0.29Gd
0.7 )
2 Si
2 O
7 結晶の写真を示す図である。
図3に示すように、育成した結晶は、部分的に透明な結晶が得られた。透明な結晶は、その下の模様が透けて見えており、透明バルク体であった。また、この結晶は、へき開性や潮解性のない単結晶であることが確認された。
【0066】
(実施例4)
マイクロ引下げ法により、(Ce
0.01La
0.22Gd
0.77)
2 Si
2 O
7 の組成(x=0.22、y=0.01)で表される結晶を育成した。この結晶はA
2 B
2 O
7 で表されるパイロクロア型酸化物の一種であるパイロシリケート結晶である。
図4は育成した(Ce
0.01La
0.22Gd
0.77)
2 Si
2 O
7 結晶の写真を示す図である。
図4に示すように、育成した結晶は、部分的に透明な結晶が得られた。透明な結晶は、その下の模様が透けて見えており、透明バルク体であった。また、この結晶は、へき開性や潮解性のない単結晶であることが確認された。
【0067】
(実施例5)
マイクロ引下げ法により、(Ce
0.005 La
0.30Gd
0.695 )
2 Si
2 O
7 の組成(x=0.30、y=0.005)で表される結晶を育成した。この結晶はA
2 B
2 O
7 で表されるパイロクロア型酸化物の一種であるパイロシリケート結晶である。
図5は育成した(Ce
0.005 La
0.30Gd
0.695 )
2 Si
2 O
7 結晶の写真を示す図である。
図5に示すように、育成した結晶は、部分的に透明な結晶が得られた。透明な結晶は、その下の模様が透けて見えており、透明バルク体であった。また、この結晶は、へき開性や潮解性のない単結晶であることが確認された。
【0068】
(実施例6)
マイクロ引下げ法により、(Ce
0.03La
0.30Gd
0.67)
2 Si
2 O
7 の組成(x=0.30、y=0.03)で表される結晶を育成した。この結晶はA
2 B
2 O
7 で表されるパイロクロア型酸化物の一種であるパイロシリケート結晶である。
図6は育成した(Ce
0.03La
0.30Gd
0.67)
2 Si
2 O
7 結晶の写真を示す図である。
図6に示すように、育成した結晶は、部分的に透明な結晶が得られた。透明な結晶は、その下の模様が透けて見えており、透明バルク体であった。また、この結晶は、へき開性や潮解性のない単結晶であることが確認された。
【0069】
(比較例1)
マイクロ引下げ法により、(Ce
0.01La
0.49Gd
0.50)
2 Si
2 O
7 の組成で表される結晶を育成した。この結晶はA
2 B
2 O
7 で表されるパイロクロア型酸化物の一種であるパイロシリケート結晶である。
図7は育成した(Ce
0.01La
0.49Gd
0.50)
2 Si
2 O
7 結晶の写真を示す図である。
図7に示すように、育成した結晶は、全体的にクラックが入り、もろい結晶体であった。
【0070】
(比較例2)
マイクロ引下げ法により、(Ce
0.01La
0.19Gd
0.80)
2 Si
2 O
7 の組成で表される結晶を育成した。この結晶はA
2 B
2 O
7 で表されるパイロクロア型酸化物の一種であるパイロシリケート結晶である。
図8は育成した(Ce
0.01La
0.19Gd
0.80)
2 Si
2 O
7 結晶の写真を示す図である。
図8に示すように、育成した結晶は、育成方向に対し、一定方向にクラックが入り、へき開が生じた。
【0071】
(比較例3)
公知の単結晶シンチレータの比較例として、市販されている5mm×5mm×5mmサイズの(Ce
0.01Gd
0.99)
2 SiO
5 (Ce1%:GSO)結晶を用いた。
【0072】
実施例1から実施例6まで実施したところ、透明なバルク体を安定して育成することができたのに対して、比較例1および比較例2は、安定して育成することができなかった。比較例1はLaが多い場合であるが、GdとLaのイオン半径(シャノンのイオン半径)がそれぞれ0.94オングストローム、1.03オングストロームと異なり、Laが多いと、育成した結晶の格子の歪が大きくなり、割れやすくなる。比較例2はLaが少ない場合であるが、調和溶融組成に近いものの、この組成では、Gd
2 Si
2 O
7 の不安定な包晶組成に近づくため、結晶育成が不安定になる。
【0073】
育成した実施例1〜実施例6および比較例3の結晶について、各々のシンチレーション光の発光特性を、放射線励起による発光(ラジオルミネッセンス)にて測定した。発光測定にはEdingurg社の分光器(型式:Instrument FSL920)を用いた。励起に用いた放射線源には、5.5MeVのアルファ線源である
241Am(放射能:1MBq)を使用した。
【0074】
図9は得られた実施例1および実施例2および実施例3のプロファイルを示す図である。なお、
図9において、横軸は発光波長、縦軸は各々のピークの最大値を1で規格化したカウント数(normalized)であり、発光強度を表す。
図9に示すように、実施例の結晶は、どれも300nm〜400nmの範囲で発光ピーク波長を有するものであった。
【0075】
さらに、実施例1〜実施例6で得られた結晶の発光量を見積もった。ここでそれぞれの結晶は、光学グリース(応用光研社製6262A)にて光検出器である光電子増倍管(浜松ホトニクス社製R7600−200)に光学装着し、1MBqの放射能を有する
137Cs密封線源(ガンマ線源)または
241Amを用い、ガンマ線を照射して励起、発光させた。
【0076】
なお、光電子増倍管には650V〜700Vを印加し、シンチレーション光を電気信号に変換した。ここで、光電子増倍管より出力される電気信号は、受光したシンチレーション光を反映したパルス状の信号であり、パルスの波高がシンチレーション光の発光強度を表す。このようにして光電子増倍管から出力された電気信号を整形増幅器で整形、増幅した後、多重波高分析器(マルチチャンネルアナライザー:MCA)に入力して解析し、波高分布スペクトルを作成した。なお、比較例3の結晶についても同様に波高分布スペクトルを作成した。
【0077】
図10は、上記
137Csによるガンマ線(662keV)を照射して得られた波高分布スペクトル(実施例1、実施例3、実施例5、実施例6、比較例3)を示す図である。
図10において、横軸はMCAのチャンネル番号であり、信号の大きさを表している。横軸については、662keVのガンマ線に由来する光電吸収ピークが、図中の右側にあるほど発光量が高いことを表す。
【0078】
図10からわかるように、実施例の結晶は比較例の結晶よりも発光量が高かった。なお、
図10において、実施例1の発光量は39,000photon/MeVであった。なお、発光量が30,000photon/MeV以上となるものを良好な特性とする。実施例1〜実施例6まで、全て良好であった。
【0079】
次に、実施例1〜実施例6の結晶のシンチレーション光の減衰時間を求めた。ここで結晶は上記光学グリースにて上記光電子増倍管に光学接着し、上記
137Csによるガンマ線を用い、ガンマ線を照射して励起、発光させた。そして、光電子増倍管からの信号をオシロスコープ(Tektronix社製TDS 3034B)で信号の時間分布を測定することで、減衰時間を求めた。ここで、1000ナノ秒以下を良好、80ナノ秒以下を特に良好とする。
【0080】
図11は、実施例1の結晶の蛍光減衰曲線のプロファイルを示す図である。
図11において、横軸は時間を表し、縦軸は発光強度に対応する電圧を表している。灰色の線は実測であり、黒線は減衰定数(蛍光寿命)を求めるために時間tを変数とする次の関数I(t)でフィッティングを行なった結果である。
【0081】
I(t)=A
1 ×exp(−t/τ
1 (ns))+A
2 ×exp(−t/τ
2 (ns))+c
【0082】
ここで、実施例1の測1定結果をフィッティングすると、結晶の高速度成分蛍光寿命τ
1 は75ナノ秒であり、高速シンチレータを構成できるものであった。また、実施例2〜実施例6まで全ての実施例で80ナノ秒以下であり、特に良好であった。
【0083】
実施例1〜6の結果から、(Gd
1−x−y La
x Ce
y )
2 Si
2 O
7 で表されたシンチレータ結晶材料において、x=0.2〜0.45、好ましくは0.22〜0.35、さらに好ましくは0.22〜0.34と設定することで、300〜400nmの範囲の発光ピーク波長を持ち、蛍光寿命が80ナノ秒以下の好ましい特性を有する結晶材料が得られることが確認できた。
【0084】
(実施例7)
(Gd
1−x−y La
x Ce
y )
2 Si
2 O
7 で表されたシンチレータ結晶材料において、yを0.0001〜0.05と変化させた以外は、実施例1〜6と同様にして、シンチレータ結晶材料を作成し、同様な試験を行った。実施例7においても、実施例1〜6と同様に、部分的に透明な結晶が得られ、へき開性や潮解性のない単結晶であることが確認された。
【0085】
また、実施例7においては、yを0.0001〜0.05の範囲とすることで、蛍光波長が200nm以上900nm以下であり、かつその蛍光寿命が1000ナノ秒以下のシンチレータ結晶材料が得られることが確認できた。さらに、yを0.0005〜0.02の範囲とすることで、蛍光波長が300nm以上700nm以下であり、かつその蛍光寿命が80ナノ秒以下のシンチレータ結晶材料が得られることが確認できた。