(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1回路基板及び第2回路基板と、前記第1回路基板上に搭載された第1半導体素子及び前記第2回路基板上に搭載された第2半導体素子と、前記第1回路基板及び第2回路基板が搭載され、前記第1半導体素子及び第2半導体素子を冷却する冷却器と、を備える半導体装置であって、
前記冷却器が、
第1面及び該第1面に対向する第2面を備え、前記第1面に該第1回路基板及び第2回路基板が接合された放熱部と、
前記第2面に設けられたフィンと、
第1の側壁及び前記第1の側壁に対向する第2の側壁を備え、前記フィンを収容するとともに前記該放熱部に接続されたケースと、
前記第1の側壁に設けられた、冷却液の導入部及び該第2の側壁に設けられた排出部と、
前記導入部に接続し、前記第1の側壁の内面に沿って形成された導入路と、
前記排出部に接続し、前記第2の側壁の内面に沿って形成された排出路と、
前記導入路と該排出路との間の、前記フィンが収容される位置に形成された冷却用流路と、を備え、
前記導入部が前記ケースの側壁に取り付けられ、前記導入部の開口の高さが前記導入路の高さよりも高く、前記導入路と前記導入部との接続部に、前記冷却用流路に向かって傾斜する傾斜面を有し、
前記導入路及び前記排出路は互いに非対称な平面形状を有し、かつ、前記導入路と前記導入部との接続部が、前記冷却器上に配置された前記第2回路基板直下の前記冷却用流路に対向するとともに、前記排出路と前記排出部との接続部が、前記冷却器上に配置された前記第1回路基板直下の前記冷却用流路に対向することを特徴とする半導体装置。
前記排出部が前記ケースの側壁に取り付けられ、前記排出部の開口の高さが前記排出路の高さよりも高く、前記排出路と前記排出部との接続部に、前記冷却用流路に向かって傾斜する傾斜面を有する請求項1記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の半導体装置の実施形態を、図面を用いて具体的に説明する。以下の説明に表れる「上」、「下」、「底」、「前」、「後」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
【0015】
(実施形態1)
図1は本発明の半導体装置の一実施形態である、半導体モジュールの一例の外観を示す斜視図である。
図2(a)は、
図1の半導体モジュールをIIa−IIa線矢視断面で示す模式図であり、
図2(b)は、
図2(a)の拡大部分模式図である。
【0016】
半導体モジュール1は、
図1及び
図2(a)、(b)に示すように複数の回路素子部11A〜11F、12A〜12Fと、これらの回路素子部11A〜11F、12A〜12Fが接続された冷却器20とを備えている。
各回路素子部11A〜11F、12A〜12Fは、例えば、いずれも回路基板13上に2種類の半導体素子14、15を2個ずつ、計4個搭載した構成を有する。回路基板13は、
図2(b)で分かるように、絶縁板13aの両面に導体層13b、13cが形成された構成である。
【0017】
回路基板13の絶縁板13aは、例えば窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の絶縁性のセラミック基板を用いることができる。導体層13b、13cは、銅やアルミニウム等の金属(例えば、銅箔)を用いて形成することができる。
【0018】
半導体素子14、15は、はんだ等の接合層16を用いて回路基板13における回路パターンが形成された導体層13b側に接合され、この接合層16を通して、又はボンディングワイヤやバスバー等(図示せず)を介して、その導体層13bに電気的に接続されている。半導体素子14、15を搭載した回路基板13は、もう一方の導体層13c側で、接合層17を介して冷却器20の放熱基板21上に接合されている。
【0019】
こうして、回路基板13及び半導体素子14、15は、冷却器20に対し熱伝導可能に接続された状態になる。なお、導体層13b、13cにおける露出された表面や、半導体素子14、15と導体層13bとを電気的に接続するボンディングワイヤ等(図示せず)の表面には、それらの表面を汚れ、腐食、外力等から保護するためにニッケルめっき等の保護層を形成するようにしてもよい。
【0020】
このような回路基板13上に搭載される半導体素子14、15として、図示した例では、パワー半導体素子のチップを用いている。これらのパワー半導体素子のうち、一方の半導体素子14をフリーホイールダイオード(Free Wheeling Diode;FWD)とし、他方の半導体素子15を絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)としている。
【0021】
半導体モジュール1は、
図3に示すような、6個の回路素子部11A〜11Fによってインバータ回路71を構成することが可能であり、また、6個の回路素子部12A〜12Fによってインバータ回路72を構成することが可能である。
【0022】
図3のインバータ回路71、72は、直流電流を交流電流に変換して三相交流モータ73、74に供給するインバータ回路を例示している。インバータ回路71は、回路素子部11A〜11Cを上アーム、11D〜11Fを下アームとし、ワイヤーボンディングやバスバー等による配線(図示せず)を接続することで入出力や制御を行う構成である。また、インバータ回路72は、12A〜12Cを上アーム、12D〜12Fを下アームとし、ワイヤーボンディングやバスバー等による配線(図示せず)を接続することで入出力や制御を行う構成である。これらのインバータ回路71、72は、U相、V相、W相の三相についてそれぞれ、IGBTである半導体素子15と、FWDである半導体素子14とのブリッジ回路を備える。半導体素子15のスイッチング制御を行うことで、直流電流を交流電流に変換し、三相交流モータ73、74を駆動することができるようになっている。
【0023】
図3に示した電力変換回路は、6個の回路素子部11A〜11F又は6個の回路素子部12A〜12Fにより、インバータ回路71又は72を構成している。しかし、
図1に12個の回路素子部11A〜11F及び12A〜12Fを示すように、冷却器20に搭載される回路素子部の個数は6個に限定されない。
図1では、2つの三相交流モータ73及び74を制御するためのインバータ回路であって、インバータ回路71は、11A〜11Cを上アームとして、11D〜11Fを下アームとして冷却器20上に搭載し、インバータ回路72は、12A〜12Cを上アーム、12D〜12Fを下アームとして、それぞれ冷却器20上に搭載し計12個の回路素子部を有する構成としている。別の構成として、昇降圧制御を行う所定数のIGBTとFWDを用いた回路素子部を冷却器上に搭載した構成などがある。いずれの構成においても、回路素子部の配置エリアに適合する大きさになる冷却器20を用いる。
【0024】
冷却器20は、
図1に示した例では、上方に開口が設けられた、箱形状を有するケース22と、このケース22の側壁の上端と液漏れなく接続する平板形状を有する放熱基板(放熱部)21と、この放熱基板21における各回路素子部11A〜11F、12A〜12Fが接合された面(第1面)とは反対側の面(第2面)に取り付けられ、ヒートシンクとしての熱交換性能を持つフィン23と、を有する。複数のフィン23はケース22の内部に収容され、ケース22と放熱基板21とは、互いに金属的に接合されることにより、又は、それらの間にシール部材を介在させることにより密閉される。ケース22と放熱基板21との金属的な接合作業を容易にするため、ケース22および放熱基板21のそれぞれの接合部は平坦であることが望ましい。
【0025】
図3を用いて先に述べた電力変換回路の動作時に、各回路素子部11A〜11F、12A〜12Fで発生した熱は、接合層17を通じて放熱基板21へと伝わり、更にフィン23へと伝わる。冷却器20内のフィン23は、後述する冷却用流路内に配置されるから、この冷却用流路に冷却液が流通されることで、フィン23が冷却される。発熱する回路素子部11A〜11F、12A〜12Fは、このようにして冷却器20により冷却される。
【0026】
図4は、冷却器20のケース22の要部構成を示す斜視図であって、矢印は冷却液の流れる方向を示す。なお、同図には説明の便宜上、放熱基板21に取り付けられているフィン23が描かれている。
図5は、
図4に示した冷却器20の内部構造を示す平面図である。
【0027】
図4、
図5に示すように、冷却器20のケース22の外形は、底壁22a及び側壁22bを有する略直方体形状である。ケース22の内部には、冷却液をフィン23に向けて導入するための導入路24、フィン23を通った冷却液を排出するための排出路25及びフィン23が配置される冷却用流路26が形成されている。更に、ケース22の側壁22bのうちの第1の側壁、すなわちケース22の短辺側の一つの側壁22b1には、ケース22の内部に冷却液を導入するための導入口を備える導入部27が設けられている。更にまた、ケース22の側壁22bのうちの第2の側壁、すなわちケース22の短辺側の他の側壁22b2には、ケース22の内部から外部に冷却液を排出するための排出口を備える排出部28が設けられている。導入部27及び排出部28は例えば円筒形状である。導入部27と排出部28とは、ケース22の対角の位置からやや内寄りに設けられている。導入部27および排出部28の軸線は、冷却用流路26の長手方向、すなわち、冷却用流路26において冷却液が流通する方向(
図4の矢印で示す方向)と略平行である。また、図示するように、上アームの回路素子部11A〜11C、12A〜12C及び下アームの回路素子部11D〜11F、12D〜12Fは、それぞれ冷却液の流れる方向に沿って、並列するように2列に配置されている。複数の上アーム用回路基板13(第1回路基板)及び複数の下アーム用回路基板13(第2回路基板)がそれぞれ整列し、並列に配置されている。
【0028】
導入路24は、導入部27が設けられたケース22の短辺側の一つの側壁22b1の内面に沿って形成される。また、導入路24と導入部27との間に接続部271が設けられ、導入路24は、接続部271から導入された冷却液を分散させて冷却用流路26に流れるように形成されている。接続部271は、冷却用流路における、回路基板13の直下に位置する部分に対向して設けられている。図示した例では、下アームの回路素子部11Dに搭載された半導体素子15(第2半導体素子)側の冷却用流路26に対向する部分に接続部271が設けられている。
【0029】
排出路25は、排出部28が設けられたケース22の短辺側の側壁22b2の内面に沿って形成される。また、排出路25と排出部28との間に接続部281が設けられ、排出路25は、冷却用流路26を経た冷却液を排出部28へ排出するように形成されている。接続部281は、冷却用流路における、回路基板13の直下に位置する部分に対向して設けられている。図示した例では、上アームの回路素子部12Cに搭載された半導体素子15(第1半導体素子)側の冷却用流路26に対向する部分に接続部281が設けられている。
【0030】
冷却用流路26は、導入路24と排出路25との間、フィン23が収容される位置に形成され、これにより、ヒートシンクとしてのフィン23の冷却に必要な部分に冷却液を流すよう構成される。導入路24及び排出路25が、ケース22の短辺側の側壁22b1、22b2に沿って形成されていることから、冷却用流路26は、冷却液の流通方向の長さが、導入路24及び排出路25における冷却液の流通方向の長さよりも長い。このことにより、冷却器20の小型化に有利である。
【0031】
また、冷却用流路26は、回路素子部11A〜11F、12〜12Fの位置に合わせて、複数の流路に分割することが可能である。例えば、
図4に示した本実施形態では、導入路24と排出路25とに接続する仕切り22cによって、冷却用流路26が二分割されている。もっとも、後で
図10を用いて説明する実施形態3のように、仕切り22cを有しない構成とすることもでき、圧力損失低減の観点から好ましい。導入路24および排出路25の長手方向は、冷却用流路26の長手方向とほぼ直交している。
【0032】
放熱基板21において、半導体素子14、15が搭載された回路素子部11A〜11F、12A〜12Fが接合されている位置が発熱する。そこで、冷却用流路26を長手方向に二分割して、その分割した流路を、インバータ回路の上アームの回路素子部11A〜11C、12A〜12Cと、下アームの回路素子部11D〜11F、12D〜12Fとのそれぞれに対応させている。換言すれば、それらの回路素子部の直下に各々平行して流れる2つの冷却用流路を形成している。
【0033】
冷却用流路26には、複数のフィン23が設けられている。複数のフィンからなるヒートシンクは、その外形が略直方体であり、冷却用流路26内を冷却液が流れる方向に平行に配設されている。
【0034】
図6は、フィンの形状の説明図である。冷却器20のフィン23は、例えば
図6(a)に示すように、板状のフィン要素が並設された複数のブレードフィン23aとして形成することができる。ブレードフィン23aは、冷却用流路26に配置され、冷却液が
図6(a)に矢印で示す方向に流通する。ブレードフィン23aは、放熱基板21に固定されて一体化している。冷却器20のフィン23は、
図6(a)のブレードフィン23aに限定されず、
図6(b)に示すコルゲートフィン23bを用いることもできる。また、後述するように、押し出し成形により、放熱基板21とフィン23とケース22の底壁22aとが一体的に形成されてなる多穴板の構成とすることもできる。
【0035】
ブレードフィン23aは、放熱基板21と一体化してケース22内に設けられたときに、その先端とケース22の底壁22aとの間に一定のクリアランスCが存在するような寸法(高さ)に形成される。またコルゲートフィン23bの場合は、ろう付けによりケース22と一体化することでクリアランスCが存在しない形状に形成される。
【0036】
フィン23のフィン形状については、従来公知の様々な形状のものを用いることが可能である。もっとも、フィン23は、冷却用流路26内を流れる冷却液の抵抗となるので、冷却液に対する圧力損失が小さいものが望ましく、よって上述したブレードフィン23aやコルゲートフィン23bが好ましい。また、フィン23の形状及び寸法は、冷却液の冷却器20への導入条件(すなわち、ポンプ性能等)、冷却液の種類(粘性等)、目的とする除熱量等を考慮して、適宜設定することが好ましい。また、フィン23からなるヒートシンクの外形は略直方体であり、好ましくは直方体であり、発明の効果を損ねない範囲で面取りや変形された形状であってもよい。
【0037】
冷却器20の使用時には、例えば導入部27に、導入部27の上流側に設けられるポンプ(図示せず)と接続される配管(図示せず)が接続され、排出部28に、排出部28の下流側に設けられる熱交換器(図示せず)に接続される配管(図示せず)が接続される。熱交換器で熱交換された後の冷却液がポンプに導かれることで、これら冷却器20、ポンプ及び熱交換器を含む閉ループの冷却液流路が構成される。冷却液は、このような閉ループ内をポンプによって強制循環される。冷却液は、水やロングライフクーラント(LLC)等、公知の冷却媒体を用いることができる。
【0038】
ケース22の側壁22b1、22b2に設けられた導入部27、排出部28の開口の高さ(直径)は、所定の流量の冷却液を低負荷でケース22内に導入し、またケース22内から排出できるように、所定の大きさを有している。また、ケース22内の導入路24、排出路25及び冷却用流路26は、所定の冷却能を有する範囲内で、できるだけ小型化、薄肉化される。例えば、冷却用流路26の全幅、すなわち、ケース22の2つの長手方向の側壁22b3間の内法の長さに対する冷却用流路26の厚さの比は、1:8〜1:12程度であるように薄肉化されている。このため、
図1、2に示すように冷却器20は、導入部27の開口の高さが、導入路24の高さよりも高くなっている。同様に、排出部28の開口の高さが、排出路25の高さよりも高くなっている。
【0039】
導入部27と導入路24との間の接続部271は、
図7に接続部271近傍の拡大図を示すように、導入部27から見て奥行き方向(冷却用流路26の長手方向)に底面から傾斜して導入路24の底面に接続する第1の傾斜面271aを有している。導入部27の底面が、導入路24および冷却用流路26の底面よりフィン23の先端から冷却器20の厚み方向に離れて形成されている。第1の傾斜面271aと導入路24の底面との間は、曲面271cにより接続されている。第1の傾斜面271aは、冷却器20の上方、フィン23へ向かって傾斜している。
接続部271が、第1の傾斜面271aを有することにより、導入部27から導入された冷却液は、第1の傾斜面271aに沿って流れ、この流動方向の流路断面積が次第に減少されつつ導入路24及び冷却用流路26に導かれる。
【0040】
導入部27側と同様に、排出部28側においては、排出部28と排出路25との間の接続部281は、排出部28から見て奥行き方向(冷却用流路26の長手方向)に底面から傾斜して排出路25の底面に接続する第1の傾斜面281aを有している。排出部28の底面が、排出路25および冷却用流路26の底面よりフィン23の先端から冷却器20の厚み方向に離れて形成されている。第1の傾斜面281aと排出路25の底面との間は、曲面281cにより接続されている。第1の傾斜面281aは、冷却器20の上方、フィン23へ向かって傾斜している。
接続部281が、第1の傾斜面281aを有することにより、冷却用流路26から排出路25を通した冷却液は、第1の傾斜面281aに沿って流れ、排出部28に向かう。
【0041】
図8に示すように、導入部27側の接続部271は、冷却用流路26における、下アームの回路基板13の直下の部分に対向する位置に設けられている。このことにより、冷却用流路26内において、最も高温になり易い回路基板13の直下の部分のフィンに対して、導入部27からの冷却液をストレートに導くことができ、よって、回路基板13の直下の部分のフィンに向けた冷却液の流速を他の部分よりも高めることができ、ひいては回路基板上の半導体素子14、15を効果的に冷却することができる。半導体素子14、15のうち、IGBTチップである半導体素子15がFWDチップである半導体素子14よりも発熱するから、導入部27側の接続部271は、冷却用流路26における、半導体素子15(第2半導体素子)の直下の部分に対向する位置に設けられることが、より好ましい。導入部27側の接続部271は、冷却用流路26の全幅の1/10〜1/3に相当する長さで導入路の端部から中央寄りに位置している。
【0042】
また、排出部28の側の接続部281も同様に、冷却用流路26における、回路基板13の直下の部分に対向する位置に設けられている。このことにより、冷却用流路26内において、最も高温になり易い回路基板13の直下の部分のフィン23を通した冷却液を、排出部28へストレートに導くことができ、よって、回路基板13の直下の部分のフィン23を通した冷却液の流速を他の部分よりも高めることができ、ひいては回路基板上の半導体素子14、15を効果的に冷却することができる。半導体素子14、15のうち、IGBTチップである半導体素子15がFWDチップである半導体素子14よりも発熱するから、排出部28側の接続部281は、冷却用流路26における、半導体素子15(第1半導体素子)の直下の部分に対向する位置に設けられることが、より好ましい。排出部28側の接続部281は、冷却用流路26の全幅の1/10〜1/3に相当する長さで導入路の端部から中央寄りに位置している。
【0043】
導入路24と排出路25は、互いに非対称な平面形状を有している。具体的には導入路24は、冷却用流路26の幅方向の一端から他端までにわたり、なるべく均等に冷却液が流れるようにするために、排出路25に比べて狭幅の流路としている。これに対して、排出路25は、冷却用流路26から排出部まで冷却液を抵抗少なく流れるようにするために、ある程度広幅の流路としている。図示した例では、排出路25の容積は導入路24に比べて大きい。
【0044】
また、導入路24は、導入路24の下流側で導入路24の断面積が低減するように、導入路24の下流側に行くに従って流路幅が漸減する形状に形成されている。これにより、導入路24の下流側と接続する冷却用流路26と、導入路24の上流側と接続する冷却用流路26とで、冷却液の流速分布を均一化することができる。これに対して、排出路25は、導入路24のように下流側に行くに従って流路幅が漸減する形状ではない。
導入路24と排出路25とが互いに異なる、換言すれば非対称な平面形状を有していることから、圧力損失に有効に寄与している。
【0045】
このような構成を有するケース22は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属材料を用いて形成することができる。例えば、A1050やA6063等の材料が好ましく、周辺部材、特に固定部やパワーモジュールを収めるインバータケースとのシールが必要な場合はADC12やA6061等の材料が好ましい。またケース22をダイキャストで製造し、かつ、熱伝導性が求められる場合は、三菱樹脂株式会社のダイキャスト用高熱伝導アルミニウム合金であるDMSシリーズの材料を適用することも可能である。このような金属材料を用いてケース22を形成する場合、例えばダイキャストによって、上記のような導入路24、排出路25、冷却用流路26、導入部27及び接続部271、排出部28及び接続部281を形成することができる。接続部271及び接続部281は複雑形状になるが、ダイキャストによれば、このような複雑形状のケース22を容易に作製することができる。ケース22は、この他、カーボンフィラーを含有する金属材料を用いることもできる。また、冷却液の種類やケース22内に流れる冷却液の温度等によっては、セラミック材料や樹脂材料等を用いることも可能である。
【0046】
フィン23及び放熱基板21は、ケース22と同様に、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属材料を用いて形成することができる。例えばA1050、A6063等が望ましい。より好ましくは、熱伝導率が200W/mK以上のアルミニウムを用いることができる。フィン23と放熱基板21とは、同種の金属材料であってもよいし、異種の金属材料であってもよい。フィン23は、上述したブレードフィン23aやコルゲートフィン23b等以外にも例えば金属材料を用いて形成された所定のピンや板体を金属製の基材に接合することによって形成することができる。また、フィン23は、ダイキャストやろう付けするなどにより、放熱基板21自体と一体的に形成することができる。更に、フィン23は、ダイキャストによって放熱基板21からフィン23が形成される部分を凸形状に形成した後、その部分をワイヤーカット法によりフィン形状に切削することにより形成することも可能である。更に、金属材料の押し出し成形によって多穴板を成形することにより、放熱基板21とフィン23とケース22とが一体的に形成されている形状とすることもできる。
【0047】
ケース22の側壁22bの上端と放熱基板21の端部とは、Oリング等を介在させて封止することも可能であるが、側壁22bに沿って金属的に接合されていることが、液漏れを確実に防止できることから好ましい。この金属的な接合は、摩擦攪拌接合法(Friction Stir Welding)であることが、より好ましい。摩擦攪拌接合法による接合部は、摩擦攪拌接合法に特有の金属組織を有している。摩擦攪拌接合法であることにより、ケース22の側壁22bの上端と放熱基板21の端部との接合を、確実にすることができる。また摩擦攪拌接合法は、ケース22の底面を支持しながら、ケース22と放熱基板21との接合界面に向けて摩擦攪拌接合法のツールを上方から当てて接合できるので、より確実な接合が可能となる。更に、摩擦攪拌接合法により接合することにより、放熱基板21の材料として、例えばA6063およびDMSシリーズの合金、大紀アルミニウム工業所のダイキャスト用高熱伝導アルミニウム合金であるHT−1等の熱伝導率の高い材料を用い、放熱性を向上することができる。つまり、放熱基板21の材料を、ケース22の材料とは異なる組成の材料として、ケース22よりも熱伝導率の高い材料とすることにより、放熱性を向上させることができる。
【0048】
ケース22が、仕切り22cを有する場合には、この仕切り22cについても放熱基板21と摩擦攪拌接合法により接合することが、放熱基板21の熱変形によるフィン23とケース22の底壁22aとのクリアランスCの拡大を防止できるので好ましい。
【0049】
ケース22と放熱基板21とを摩擦攪拌接合法により接合する場合には、ケース22の側壁22bの上端および放熱基板21の端部が少なくとも平坦であり、好ましくは放熱基板21が平板形状であることが、接合作業を容易にすることから好ましい。また、放熱基板21は、所定の厚さを有することにより、熱変形に対する信頼性と、良好な放熱性を具備することができる。放熱基板21の厚さは、例えばフィンが接合される領域において、1〜3mmが望ましい。さらに、導入部27の上面が放熱基板21の底面より下側になるよう導入部27を配置することにより、導入部27と接続部271で生じる乱流を小さくできるので、接合作業を容易にし、かつ冷却効率を向上できる。
このように、接続部271の軸線が、回路基板13直下の部分の冷却用流路26に対向するとともに、接続部281の軸線が、回路基板13直下の部分の冷却用流路26に対向する冷却器20により、冷却効率を向上できる。
【0050】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2の半導体装置について説明する。本実施形態の半導体装置は、実施形態1の半導体装置における接続部271及び接続部281の形状を除いて、実施形態1の半導体装置と同様の構成を有している。したがって、以下では接続部271及び接続部281の形状について説明する。また、実施形態1の半導体装置を説明した
図5及び
図7に記載された部材及びその部分と同一の機能を有する部材、部分については同一の符号を付しており、以下では重複する説明を省略する。
【0051】
図9に、実施形態2の半導体装置の接続部271の拡大図を示す。
図9の接続部271の第1の傾斜面271aは、
図7に示した実施形態1の第1の傾斜面271aと比べて、導入路24の底面側に延びた形状を有している。また、曲面271cと導入路24の底面との間に、導入路24の長手方向に底面から傾斜して導入路24の底面に接続する第2の傾斜面271bを有している。第2の傾斜面271bも冷却器20の上側へ向かって傾斜している。冷却器20の上面と第2の傾斜面271bのなす角は90度より小さい。
【0052】
実施形態2の半導体装置は、接続部271が、第2の傾斜面271bを有することにより、導入部27から導入された冷却液は、導入路24の長手方向には、第2の傾斜面271bに沿って流れ、この流動方向の流路断面積が次第に拡大されつつ導入路24に導かれる。したがって、接続部271が、第1の傾斜面271aのみならず第2の傾斜面271bを有する実施形態2の半導体装置は、実施形態1の半導体装置に比べて接続部271の流路を部分的に広げることができ、よって接続部271における圧力損失を、より効果的に低減させることができる。これにより、冷却器20の放熱基板21に接合された回路素子部11A〜11F、12A〜12Fの半導体素子14、15を効果的に冷却でき、冷却液を循環するポンプへの負荷を低減し、また半導体素子の安定した動作が可能になる。
【0053】
図9の拡大図では、導入部27の接続部271について図示しているが、排出部28の接続部281においても同様に、第1の傾斜面281aが、
図7に示した実施形態1の第1の傾斜面281aと比べて、排出路25の底面側に延びた形状を有し、かつ、曲面281cと排出路25の底面との間に、排出路25の長手方向に底面から傾斜して排出路25の底面に接続する第2の傾斜面281bを有している構成とすることができる(
図11参照)。排出部28の接続部281が第1の傾斜面281a及び第2の傾斜面281bを有することにより、接続部281における圧力損失を、より効果的に低減させることができる。
【0054】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3の半導体装置について説明する。本実施形態の半導体装置は、実施形態1の半導体装置における冷却用流路26の構成を除いて、実施形態1の半導体装置と同様の構成を有している。したがって、以下では本実施形態の冷却用流路26の構成を説明する。
【0055】
図10に、本実施形態の半導体装置における冷却器20の内部構造を示す平面図を示す。
図10は、実施形態1の冷却器を示した
図5に対応する図面であり、
図5に示した部材と同一部材には同一符号を付しているので、各部材について重複する説明は省略する。
【0056】
図10に示したケース22は、
図5に示した実施形態1の半導体装置のケース22とは、導入路24と排出路25とに接続する仕切り22cの有無により相違する。本実施形態のケース22が
図5に示した仕切り22cを有しないことにより、
図10の冷却用流路26は、
図5に示した実施形態1の冷却用流路26に比べて、冷却用流路26全体としての圧力損失を、より低減することができる。
【0057】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4の半導体装置について
図11を用いて説明する。本実施形態の半導体装置は、実施形態3の半導体装置における導入部27側の接続部271の第1の傾斜面271aが、
図9に示したように導入路24の底面側に延びた形状を有し、かつ、第2の傾斜面271bを有している。排出部28側についても同様である。それ以外の構成は、実施形態3の半導体装置と同様の構成を有している。
【0058】
実施形態4の半導体装置は、接続部271が、第2の傾斜面271bを有することにより、実施形態3の半導体装置に比べて接続部271の流路を部分的に広げることができ、よって接続部271における圧力損失を、より効果的に低減させることができる。また、接続部281が、第2の傾斜面281bを有することにより、実施形態3の半導体装置に比べて接続部281の流路を部分的に広げることができ、よって接続部281における圧力損失を、より効果的に低減させることができる。
【0059】
本発明の半導体装置の効果を確認するために、ケース22に設けられた導入路24と導入部27との接続部271の位置を、ケース22の短手方向で異ならせた複数の冷却器20を用意して圧力損失を調べた。
【0060】
実施例1の冷却器20は、
図12に示す冷却器20のケース22を備えている。具体的には、ケース22に設けられた導入路24と導入部27との接続部271が、ケース22の長手方向の側壁22b3の内側に接するような位置に設けられた例である。
比較例1の冷却器は、
図13に示すケース122を備えている。具体的には、ケース122に設けられた導入路24と導入部27との接続部271が、ケース22の長手方向の側壁22b3よりもケース22の短手方向外側の位置に設けられた例である。
実施例2の冷却器は、
図5に示したケース22を備えている。
【0061】
上記の実施例1、2及び比較例1の冷却器について冷却液の導入部と排出部との間での圧力差を調べた結果を
図14にグラフで示す。
図14から、比較例1の冷却器に比べて、実施例1、2の冷却器は圧力損失が低く、特に実施例2の冷却器は、実施例1よりも圧力損失が低かった。熱流体シミュレーションによる比較結果によれば、10L/minの冷却液を流した場合、比較例1では9kPa、実施例1が6.7kPa、実施例2が6.0kpaであった。
【0062】
冷却用流路26を流れる冷却液の圧力には、配置されたフィン23に対し冷媒が衝突する圧力、フィン23間を流れる際に発生する圧力、排出路を流れ出る際に発生する圧力がある。導入部27側の接続部271、排出部側の接続部281において、比較例1ではケース22の側壁22b3を用いて導入路24に流れを強制することにより圧力が生じる。これに対して、実施例1、実施例2では冷却流れを大きく変えることなく、冷却用流路26内に冷却液を運ぶことができ、よって冷却液を循環させるためのポンプへの負荷を小さくすることが可能となる。
【0063】
次に、
図10に示した半導体モジュールにおけるケース22が
図5に示した仕切り22cを有しないこと、すなわち、冷却用流路26を分岐させないことの効果、及び
図11に示した本発明の半導体モジュールにおける接続部271の第2の傾斜面271b、及び接続部281の第2の傾斜面281bを有することの効果を確認するために、仕切り22cを有しない冷却器であって、第2の傾斜面271b、281bを有し又は有しないことによって異なる複数の冷却器20を用意して圧力損失を調べた。また、冷却器20上の回路素子部11A〜11Fの半導体素子15の発熱状況を調べた。
【0064】
実施例3の冷却器20は、
図10に示す冷却器20のケース22を備えている。具体的には、第2の傾斜面271b、281bを有しない例である。
実施例4の冷却器20は、
図15に接続部271近傍の拡大図を示すように、第2の傾斜面271b、281bを有し、かつ、第2の傾斜面271b、281bを形成するための面取り長さが5mmである例である。面取り長さの相違の他は、次に説明する実施例5と同様のケース22を備えている。
実施例5の冷却器20は、
図11に示す冷却器20のケース22を備えている。具体的には、
図9に接続部271近傍の拡大図を示すように、当該第2の傾斜面271b、281bを有し、かつ、第2の傾斜面271b、281bを形成するための面取り長さが10mmである例である。
【0065】
上記の実施例3〜5の冷却器について冷却液の導入部と排出部との間での圧力差を調べた結果を
図16にグラフで示す。
図16から、実施例3の冷却器は、
図14の実施例2よりも圧力損失が低かった。熱流体シミュレーションによる比較結果によれば、10L/minの冷却液を流した場合、実施例2は6.0kpaであったのに対して、実施例3は4.6kpaであった。このことから、冷却用流路26に仕切り22cを有さず、すべてフィン23を配置することで、仕切り22cを有する実施例2に比べて圧力損失を1kpa程度以上は低減可能であった。
【0066】
図17に、実施例2の冷却器を備える半導体モジュールと、実施例3の冷却器を備える半導体モジュールとについて回路素子部11A〜11Fの各々の半導体素子15のジャンクション温度を測定した結果を示す。
図17から、実施例2の冷却器を備える半導体モジュールに比べて実施例3の冷却器を備える半導体モジュールは、半導体素子15の温度が低く、かつ温度ばらつきが小さかった。
【0067】
また、面取りの有無及び面取り程度の相違による実施例3〜5の冷却器の圧力損失を
図18に示すグラフで対比すると、10mmの面取りをした実施例5は、5mmの面取りをした実施例4に比べて、圧力損失が小さかった。実施例3と実施例5とでは、圧力損失については同等であった。
図18に示す回路素子部11A〜11Fの各々の半導体素子15のジャンクション温度を測定結果のグラフで対比すると、実施例3に比べて実施例5は、回路素子部11A〜11Fの各々の半導体素子15の温度ばらつきが、より小さかった。
【0068】
(実施形態5)
本発明の実施形態5の半導体装置である半導体モジュール3の斜視図を
図19に示す。
図19に示した半導体モジュールは、冷却液の導入部37及び排出部38が、冷却器30の底壁に設けられた例である。図の矢印は冷却液の流れる方向を示す。
また、
図20(a)は、
図19の半導体モジュールをXXa−XXa線矢視断面で示す模式図であり、
図20(b)は、
図20(a)の拡大部分模式図である。
【0069】
半導体モジュール3は、
図19及び
図20(a)、(b)に示すように複数の回路素子部11A〜11F、12A〜12Fと、これらの回路素子部11A〜11F、12A〜12Fが接続された冷却器30とを備えている。各回路素子部11A〜11F、12A〜12Fは、
図1に示した半導体モジュール3の回路素子部11A〜11F、12A〜12Fと同じであるため、以下では重複する説明を省略する。
【0070】
冷却器30は、本実施形態では、上方に開口が設けられた、箱形状を有するケース32と、このケース32の側壁の上端と液漏れなく接続する平板形状を有する放熱基板31(放熱部)と、この放熱基板31における各回路素子部11A〜11F、12A〜12Fが接合された面(第1面)とは反対側の面(第2面)に取り付けられ、ヒートシンクとしての熱交換性能を持つフィン33と、を有する。
図20に示した本実施形態の冷却器30は、フィン33が設けられた領域において、フィン33の根本と放熱基板31とが一体的に形成されていて、かつ、フィン33の先端とケース32の底壁とが一体的に形成されている形状を有している。このような形状は、金属材料の押し出し成形によって、複数の孔を有する、多穴板(多穴管)を作製することによって得ることができる。押し出し成形により多穴板を作製することは、放熱基板31と、ケース32と、フィン33とを別個に用意し、これらの部材を接合することにより冷却器30を製造する方法に比べて、簡便でしかも低コストに製造することが可能である。また、図示するように、上アームの回路素子部11A〜11C、12A〜12C及び下アームの回路素子部11D〜11F、12D〜12Fは、それぞれ冷却液の流れる方向に沿って、並列するように2列に配置されている。複数の上アーム用回路基板13(第2回路基板)及び複数の下アーム用回路基板13(第1回路基板)がそれぞれ整列し、並列に配置されている。
【0071】
多穴板を含む冷却器30において、各回路素子部11A〜11F、12A〜12Fで発生した熱は、回路基板13から多穴板の上面を含む、放熱基板31に相当する部分に伝わり、更に多穴板の互いに取り合う穴の隔壁へと伝わる。多穴板の互いに取り合う穴の隔壁は冷却器30内のフィン33に相当し、多穴板の穴は、後述する冷却用流路に相当するから、多穴板の穴、すなわち冷却用流路に冷却液が流通されることで、フィン33が冷却される。発熱する回路素子部11A〜11F、12A〜12Fは、このようにして冷却器30により冷却される。
【0072】
図21は、冷却器30の内部構造を示す平面図(同図(a))及びXXIb−XXIb線矢視断面図(同図(b))である。
図21に示すように、冷却器30の外形は、略直方体形状である。冷却器30は、冷却液の導入ヘッダ部30aと、多穴板から構成された冷却用流路部30cと、冷却液の排出ヘッダ部30bとを含む。導入ヘッダ部30aは冷却器30の第1の側壁側に、排出ヘッダ部30bは第1の側壁に対向する第2の側壁側にそれぞれ配置されている。
【0073】
導入ヘッダ部30aの底壁には、冷却器30の内部に冷却液を導入するための導入部37が設けられている。導入ヘッダ部30aの内部には、冷却液を冷却用流路部30cのフィン33に向けて導入するための導入路34と、該導入路34と導入部37との間に設けられた接続部371とを有している。
【0074】
排出ヘッダ部30bの底壁には、冷却器30の内部から外部に冷却液を排出するための排出部38が設けられている。排出ヘッダ部30bの内部には、冷却用流路部30cからの冷却液を排出部38に排出するための排出路35と、該排出路35と排出部38との間に設けられた接続部381とを有している。
【0075】
導入部37と排出部38とは、冷却器30の対角の位置からやや内寄りに設けられている。導入部37および排出部38の軸線は、冷却用流路36の長手方向、すなわち、冷却用流路36において冷却液が流通する方向と略直交する。
【0076】
導入路34は、導入部37が設けられた導入ヘッダ部30aの側壁321の内面に沿って、接続部371から導入された冷却液を分散させて冷却用流路36に流れるように形成されている。また、導入路34と導入部37との間に接続部371が設けられている。この接続部371は、冷却用流路における、回路基板13(第2回路基板)の直下に位置する部分に対向して設けられている。
【0077】
排出路35は、排出部38が設けられた排出ヘッダ部30bの側壁322の内面に沿って、冷却用流路36を経た冷却液を排出部38へ排出するように形成されている。また、排出路35と排出部38との間に接続部381が設けられている。この接続部381は、冷却用流路における、回路基板13(第1回路基板)の直下に位置する部分に対向して設けられている。
【0078】
冷却用流路36は、導入路34と排出路35との間の、長手方向の2つの側壁323の間でフィン33が収容される位置に形成され、これにより、ヒートシンクとしてのフィン33の冷却に必要な部分に冷却液を流すよう構成される。導入路34及び排出路35が、冷却器30の短辺側の側壁321、322に沿って形成されていることから、冷却用流路36は、冷却液の流通方向の長さが、導入路34及び排出路35における冷却液の流通方向の長さよりも長い。このことにより、冷却器30の小型化に有利である。
【0079】
また、冷却用流路36は、先に説明した実施形態1の半導体装置のように、仕切りにより二分割されてはいない。これにより、圧力損失の低減が有利に図られる。もっとも、本実施形態の半導体装置は、冷却用流路36に仕切りを設けて、回路素子部11A〜11F、12A〜12Fの位置に合わせて、複数の流路に分割することを排除するものではない。
導入路34および排出路35の長手方向は、冷却用流路36の長手方向とほぼ直交している。
【0080】
冷却用流路36には、複数のフィン33が設けられている。複数のフィンからなるヒートシンクは、その外形が略直方体であり、冷却用流路36内を冷却液が流れる方向に平行に配設されている。ヒートシンクのフィンは、本実施形態では押し出し成形に形成された多穴板の隔壁がフィンに相当する。先に実施形態1において説明したように冷却器30が、別個に用意した放熱基板とケースとフィンとを接合してなる場合には、
図6に示したブレードフィン23aやコルゲートフィン23bを用いることもできる。
【0081】
冷却器30の使用時には、例えば導入部37に、導入部37の上流側に設けられるポンプ(図示せず)と接続される配管(図示せず)が接続され、排出部38に、排出部38の下流側に設けられる熱交換器(図示せず)に接続される配管(図示せず)が接続される。熱交換器で熱交換された後の冷却液がポンプに導かれることで、これら冷却器30、ポンプ及び熱交換器を含む閉ループの冷却液流路が構成される。冷却液は、このような閉ループ内をポンプによって強制循環される。冷却液は、水やロングライフクーラント(LLC)等を用いることができる。
【0082】
導入部37及び導入路34が設けられた導入ヘッダ部30a、排出部38及び排出路35が設けられた排出ヘッダ部30b及び冷却用流路36が形成された冷却用流路部30cは、所定の冷却能を有する範囲内で、できるだけ小型化、薄肉化される。例えば、冷却用流路36の全幅、すなわち、ケース32の長手方向の内壁間の長さに対する冷却用流路36の厚さの比は、1:8〜1:14程度であるように薄肉化されている。
【0083】
導入部37と導入路34との間の接続部371は、導入ヘッダ部30a内に形成された内壁によって形成されている。この内壁は、導入部37からみて冷却用流路36とは反対側に位置し、導入部37の開口(導入口)と略同心になる円弧状側壁371aと、この円弧状側壁371aの一端と接続し、冷却用流路36の幅方向端部に向けて延びる直線状側壁371bと、この円弧状側壁371aの一端と接続し、冷却用流路36の長手方向とほぼ平行に延びる直線状側壁371cとを含む。
【0084】
接続部371が、上記構成の内壁により形成されていることにより、導入部37から接続部371に導入された冷却液は、冷却用流路36の幅方向端部に冷却液の一部が向かいつつ導入路34及び冷却用流路36に導かれる。
【0085】
排出部38と排出路35との間の接続部381は、排出ヘッダ部30b内に形成された内壁によって形成されている。この内壁は、排出部38からみて冷却用流路36とは反対側に位置し、排出部38の開口(排出口)とは中心が異なる円弧状側壁381aと、この円弧状側壁381aの一端と接続し、冷却用流路36の長手方向とほぼ平行に延びる直線状側壁381bと、この円弧状側壁381aの他端と接続し、冷却用流路36の長手方向とほぼ平行に延びる直線状側壁381cとを含む。排出口は直線状側壁381bと直線状側壁381cの間を二分した領域の直線状側壁381c側、すなわち導入部37の導入口寄りに形成されている。
【0086】
接続部381が、上記構成の内壁により形成されていることにより、冷却用流路36から排出路35を通した冷却液は、接続部381で収束されつつ、排出部38に向かう。排出口を接続部381の長手方向中心線より導入口寄りに配置したので、接続部381を流れる冷却液の流量が接続部381の断面に対して非対称になり、
図22に示すように冷却液は渦を巻きながら排出口から排出部38へ流れ出る。図示した例では、冷却液は反時計まわりに渦を巻く。このような構造により、並列に配置された上アーム用回路基板13と下アーム用回路基板13のそれぞれの直下を流れた冷却液は、あまり衝突することなく、排出路35及び接続部381をスムーズに流れ排出部38から流れ出る。冷却器30での圧力損失は低減される。
【0087】
図19と
図21との位置関係の対比から理解できるように、導入部37側の接続部371は、冷却用流路36における、回路基板13の直下の部分に対向する位置に設けられている。このことにより、冷却用流路36内において、最も高温になり易い回路基板13の直下の部分のフィン33に対して、導入部37からの冷却液をストレートに導くことができ、よって、回路基板13の直下の部分のフィンに向けた冷却液の流速を他の部分よりも高めることができ、ひいては回路基板上の半導体素子14、15を効果的に冷却することができる。半導体素子14、15のうち、IGBTチップである半導体素子15がFWDチップである半導体素子14よりも発熱するから、導入部37側の接続部371は、冷却用流路36における、半導体素子15(第2半導体素子)の直下の部分に対向する位置に設けられることが、より好ましい。導入部37側の接続部371は、冷却用流路26の全幅の1/10〜1/3に相当する長さで導入路の端部から中央寄りに位置している。
【0088】
また、排出部38の側の接続部381も同様に、冷却用流路36における、回路基板13の直下の部分に対向する位置に設けられている。このことにより、冷却用流路36内において、最も高温になり易い回路基板13の直下の部分のフィン33を通した冷却液を、排出部38へストレートに導くことができ、よって、回路基板13の直下の部分のフィン33を通した冷却液の流速を他の部分よりも高めることができ、ひいては回路基板上の半導体素子14、15を効果的に冷却することができる。半導体素子14、15のうち、IGBTチップである半導体素子15がFWDチップである半導体素子14よりも発熱するから、排出部38側の接続部381は、冷却用流路36における、半導体素子15(第1半導体素子)の直下の部分に対向する位置に設けられることが、より好ましい。排出部38側の接続部381は、冷却用流路26の全幅の1/10〜1/3に相当する長さで導入路の端部から中央寄りに位置している。
【0089】
導入路34と排出路35とは、互いに非対称な平面形状を有している。具体的には導入路34は、冷却用流路36の幅方向の一端から他端までにわたり、なるべく均等に冷却液が流れるようにするために、狭幅の流路としている。これに対して、排出路35は、冷却用流路36から排出部まで冷却液を抵抗少なく流れるようにするために、ある程度広幅の流路としている。
【0090】
また、導入路34と接続する接続部371の内壁のうち、円弧状側壁371aが、導入部37と略同心の円弧状の曲面であるのに対して、排出路35と接続する接続部381の内壁のうち、円弧状側壁381aは、排出部38とは異なる中心の円弧状の曲面である。また、円弧状側壁371aの曲率半径よりも円弧状側壁381aの曲率半径が大きい。更に、接続部371の直線状側壁371bが冷却用流路36の幅方向端部に向けて延びるのに対して、接続部381の直線状側壁381bは、冷却用流路36の長手方向とほぼ平行に延びている。これらのことにより、導入路34と排出路35は、互いに非対称な平面形状を有している。
【0091】
導入路34と排出路35とが互いに異なる、換言すれば非対称な平面形状を有する理由は、接続部371、381において乱流の発生をできる限り抑制しつ圧力損失を低減するために最適な形状としたためである。仮に、接続部381の内壁の円弧状側壁381aが排出部38と同心に位置した場合には、冷却液の乱流の発生が大きくなった。このため、乱流の発生を抑制するためには、円弧状側壁381aは、排出部38とは偏心させた位置に形成することが最適である。
【0092】
本実施形態の冷却器30は、実施形態1の冷却器20と同様の金属材料を用いて形成することができる。冷却器30が、導入ヘッダ部30aと、多穴板から構成された冷却用流路部30cと、排出ヘッダ部30bとを含む場合には、これらの部材を接合して冷却器30を作製することができる。これらの部材の金属的な接合は、確実に接合するために摩擦攪拌接合法(Friction Stir Welding)によることが、より好ましい。摩擦攪拌接合法による接合部は、摩擦攪拌接合法に特有の金属組織を有している。
本実施形態の半導体モジュール3は、導入部37や排出部38が冷却器30の底壁に設けられた、薄型の冷却器における圧力損失を低減することができる。
【0093】
(実施形態6)
本発明の実施形態6の半導体装置である半導体モジュール4の分解斜視図を
図23に示す。本実施形態の半導体モジュール4は、放熱基板41と、仕切り42cを有するケース42と、ブレードフィン43とをそれぞれ別個に用意し、それらを接合してなる。好適な接合には、前述した摩擦攪拌接合法がある。
【0094】
(実施形態7)
本発明の実施形態7の半導体装置である半導体モジュール5の分解斜視図を
図24に示す。本実施形態の半導体モジュール5は、放熱基板とフィンとを兼ねる2枚の多穴板53と、ケース52と、仕切り部材52cとをそれぞれ別個に用意し、それらを接合してなる。多穴板53は、押し出し成形により成形することができる。また、多穴板53とケース52との好適な接合には、前述した摩擦攪拌接合法がある。
【0095】
(実施形態8)
本発明の実施形態8の半導体装置である半導体モジュール6の分解斜視図を
図25に示す。本実施形態の半導体モジュール6は、薄い放熱基板61と、コルゲートフィン63と、ケース62と、仕切り部材62cとをそれぞれ別個に用意し、それらをろう付けにより接合してなる。本実施形態の半導体モジュール6は、薄い放熱基板61が用いられ、ろう付けにより冷却器が作製されるから、冷却器の厚さを薄くすることができ、また作製が簡便で低コストという利点がある。
実施形態6〜8の半導体モジュール4〜6は、これらの半導体モジュールの冷却器を作製する際の部材が相違するが、組み立てられた冷却器は実施形態5の構成を具備し、実施形態5の構成により得られる効果を有している。
【0096】
以上、本発明の半導体装置の実施形態を、図面を用いて説明したが、本発明の半導体装置は、各実施形態及び図面の記載に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で幾多の変形が可能であることはいうまでもない。