特許第6341331号(P6341331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341331
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20180604BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20180604BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20180604BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   H01L27/04 H
   H01L27/06 311C
   H01L27/06 311B
   H01L29/78 656D
   H01L29/78 657E
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 657A
【請求項の数】32
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2017-506574(P2017-506574)
(86)(22)【出願日】2016年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2016058211
(87)【国際公開番号】WO2016148156
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2017年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-53980(P2015-53980)
(32)【優先日】2015年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】豊田 善昭
(72)【発明者】
【氏名】片倉 英明
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−338604(JP,A)
【文献】 特開2005−223016(JP,A)
【文献】 特開2004−327976(JP,A)
【文献】 特開2011−018685(JP,A)
【文献】 特開平05−206387(JP,A)
【文献】 特開2005−235844(JP,A)
【文献】 特開2000−323654(JP,A)
【文献】 特開平06−334120(JP,A)
【文献】 特開平06−163823(JP,A)
【文献】 特開平06−169062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板の第1主面の表面層に選択的に設けられた第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域内に設けられた半導体素子の素子構造と、
前記第1半導体領域の内部に選択的に設けられ、前記半導体素子の素子構造を構成する第1導電型の第2半導体領域と、
前記第1半導体領域を深さ方向に貫通し、前記第1半導体領域の深さ以上の深さで、前記半導体素子の素子構造を囲むように選択的に設けられた、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体領域と、
前記半導体基板の第1主面の表面層に、前記第1半導体領域と離して選択的に設けられた第2導電型の第4半導体領域と、
前記第4半導体領域の内部に選択的に設けられた第1導電型の第5半導体領域と、
前記第4半導体領域を深さ方向に貫通し、前記第4半導体領域の深さ以上の深さで選択的に設けられた、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第6半導体領域と、
前記第2半導体領域と、前記第3半導体領域と、前記第4半導体領域と、前記第5半導体領域と、に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体基板の第2主面に接続された第2電極と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
第1導電型の半導体基板の第1主面の表面層に選択的に設けられた第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域内に設けられた半導体素子の素子構造と、
前記第1半導体領域の内部に選択的に設けられ、前記半導体素子の素子構造を構成する第1導電型の第2半導体領域と、
前記第1半導体領域の内部に、前記半導体素子の素子構造を囲むように選択的に設けられた、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体領域と、
前記半導体基板の第1主面の表面層に、前記第1半導体領域と離して選択的に設けられた第2導電型の第4半導体領域と、
前記第4半導体領域の内部に選択的に設けられた第1導電型の第5半導体領域と、
前記第4半導体領域の内部に選択的に設けられた、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第6半導体領域と、
前記第2半導体領域と、前記第3半導体領域と、前記第4半導体領域と、前記第5半導体領域と、に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体基板の第2主面に接続された第2電極と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記第4半導体領域の内部に選択的に設けられた、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第7半導体領域をさらに備え、
前記第1電極は、前記第7半導体領域を介して前記第4半導体領域に電気的に接続され、
前記第5半導体領域は、前記第6半導体領域と前記第7半導体領域との間に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第4半導体領域の内部に選択的に設けられた、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第7半導体領域をさらに備え、
前記第1電極は、前記第7半導体領域を介して前記第4半導体領域に電気的に接続され、
前記第7半導体領域は、前記第6半導体領域と離して配置されており、
前記第5半導体領域は、前記第6半導体領域の内部に選択的に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第6半導体領域の内部に選択的に設けられた、前記第6半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第7半導体領域をさらに備え、
前記第1電極は、前記第7半導体領域を介して前記第4半導体領域に電気的に接続され、
前記第5半導体領域は、前記第6半導体領域の内部に選択的に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第6半導体領域の内部に選択的に設けられた、前記第6半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第7半導体領域をさらに備え、
前記第1電極は、前記第7半導体領域を介して前記第4半導体領域に電気的に接続され、
前記第5半導体領域は、前記第6半導体領域と離して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第5半導体領域は、前記第7半導体領域の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第5半導体領域は、前記第7半導体領域の周囲を囲むように配置され、
前記第6半導体領域は、前記第5半導体領域の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第6半導体領域は、前記第7半導体領域の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第6半導体領域は、前記第5半導体領域の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする請求項3または6に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第6半導体領域は、前記第3半導体領域と同じ不純物濃度および深さを有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第4半導体領域は、前記第1半導体領域と同じ不純物濃度および深さを有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項13】
第1導電型の半導体基板の第1主面の表面層に選択的に設けられた第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域内に設けられた半導体素子の素子構造と、
前記第1半導体領域の内部に選択的に設けられ、前記半導体素子の素子構造を構成する第1導電型の第2半導体領域と、
前記第1半導体領域を深さ方向に貫通し、前記第1半導体領域の深さ以上の深さで、前記半導体素子の素子構造を囲むように選択的に設けられた、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体領域と、
前記半導体基板の第1主面の表面層に、前記第1半導体領域と離して選択的に設けられた第2導電型の第4半導体領域と、
前記第4半導体領域の内部に選択的に設けられた第1導電型の第5半導体領域と、
前記第2半導体領域と、前記第3半導体領域と、前記第4半導体領域と、前記第5半導体領域と、に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体基板の第2主面に接続された第2電極と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
前記第4半導体領域の内部に選択的に設けられた、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第6半導体領域をさらに備え、
前記第1電極は、前記第6半導体領域を介して前記第4半導体領域に電気的に接続され、
前記第5半導体領域は、前記第6半導体領域の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子もしくは前記第5半導体領域、前記第6半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第6半導体領域から前記第4半導体領域と前記第1電極との接触部までの距離が設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子もしくは前記第5半導体領域、前記第6半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第6半導体領域から前記第7半導体領域までの距離が設定されていることを特徴とする請求項3または4に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第6半導体領域から前記第5半導体領域までの距離が設定されていることを特徴とする請求項3、6、8または10に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第4半導体領域のコーナー部から前記第4半導体領域と前記第1電極との接触部までの距離が設定されていることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第4半導体領域のコーナー部から前記第6半導体領域までの距離が設定されていることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子もしくは前記第5半導体領域、前記第6半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第4半導体領域の不純物濃度が設定されていることを特徴とする請求項1〜12、14〜17、19のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項21】
前記半導体素子の素子構造は、
前記第2半導体領域と、
前記第1半導体領域の内部に、前記第2半導体領域と離して選択的に設けられた第1導電型の第8半導体領域と、
前記第1半導体領域の、前記第2半導体領域と前記第8半導体領域とに挟まれた部分の表面上にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、からなることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項22】
同一の深さの前記第1半導体領域および前記第4半導体領域が設けられていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項23】
同一の深さの前記第3半導体領域および前記第6半導体領域が設けられていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項24】
同一の深さの前記第2半導体領域および前記第5半導体領域が設けられていることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項25】
同一の深さの前記第3半導体領域および前記第4半導体領域が設けられていることを特徴とする請求項13または14に記載の半導体装置。
【請求項26】
前記第4半導体領域と前記第5半導体領域との間に、前記第5半導体領域を覆うように設けられた第9半導体領域をさらに備えることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項27】
前記第9半導体領域は、前記第4半導体領域よりも第1導電型不純物濃度が高いことを特徴とする請求項26に記載の半導体装置。
【請求項28】
前記第9半導体領域は、前記第4半導体領域よりも第2導電型不純物濃度が高いことを特徴とする請求項26に記載の半導体装置。
【請求項29】
前記第4半導体領域は、前記第3半導体領域の一部であることを特徴とする請求項26に記載の半導体装置。
【請求項30】
前記半導体基板の第1主面の表面層に、前記第1半導体領域および前記第4半導体領域と離して選択的に設けられた第2導電型の第10半導体領域と、
前記第10半導体領域を深さ方向に貫通し、前記第10半導体領域の深さ以上の深さで選択的に設けられた第2導電型の第11半導体領域と、
前記第11半導体領域の表面層に選択的に設けられた前記第11半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第12半導体領域と、
をさらに備え、
前記半導体基板と前記第3半導体領域とで構成される第1ダイオードの降伏電圧が前記半導体基板と前記第11半導体領域とで構成される第2ダイオードの降伏電圧より高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項31】
前記半導体基板の第1主面の表面において、前記半導体基板と前記第6半導体領域との間の距離が前記半導体基板と前記第11半導体領域との距離より大きいことを特徴とする請求項30に記載の半導体装置。
【請求項32】
第1導電型の半導体基板の第1主面の表面層に選択的に設けられた第2導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域内に設けられた半導体素子の素子構造と、前記第1半導体領域の内部に選択的に設けられ、前記半導体素子の素子構造を構成する第1導電型の第2半導体領域と、前記第1半導体領域を深さ方向に貫通し、前記第1半導体領域の深さ以上の深さで、前記半導体素子の素子構造を囲むように選択的に設けられた、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体領域と、前記半導体基板の第1主面の表面層に、前記第1半導体領域と離して選択的に設けられた第2導電型の第4半導体領域と、前記第4半導体領域の内部に選択的に設けられた第1導電型の第5半導体領域と、前記第4半導体領域を深さ方向に貫通し、前記第4半導体領域の深さ以上の深さで選択的に設けられた、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第6半導体領域と、前記第2半導体領域と、前記第3半導体領域と、前記第4半導体領域と、前記第5半導体領域と、に電気的に接続された第1電極と、前記半導体基板の第2主面に接続された第2電極と、を備えた半導体装置の製造方法であって、
同一の不純物注入および不純物拡散処理によって、前記半導体基板の第1主面の表面層に、互いに離して、前記第1半導体領域および前記第4半導体領域を選択的に形成する工程と、
同一の不純物注入および不純物拡散処理によって、前記第1半導体領域の内部に前記第2半導体領域を選択的に形成するとともに、前記第4半導体領域の内部に前記第5半導体領域を選択的に形成する工程と、
同一の不純物注入および不純物拡散処理によって、前記第1半導体領域を深さ方向に貫通する前記第3半導体領域を選択的に形成するとともに、前記第4半導体領域を深さ方向に貫通する前記第6半導体領域を選択的に形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワー半導体素子の高信頼性化、小型化および低コスト化を目的として、縦型パワー半導体素子と、この縦型パワー半導体素子の制御・保護用回路用の横型半導体素子とを同一の半導体基板(半導体チップ)上に設けたパワー半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献1,2参照。)。従来の半導体装置の構造について、出力段用の縦型nチャネルパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)と、制御回路用の横型CMOS(Complementary MOS:相補型MOS)とを同一の半導体基板上に設けたパワー半導体装置を例に説明する。図13は、従来の半導体装置の構造を示す断面図である。
【0003】
図13に示す従来の半導体装置は、出力段用の縦型nチャネルパワーMOSFETをトレンチゲート構造の縦型MOSFET110とした車載用のハイサイド型パワーIC(Integrated Circuit:集積回路)の一例である。図13に示すように、従来の半導体装置は、n+型支持基板101のおもて面上にn-型半導体層102を積層してなるn型半導体基体(半導体基板)上に、出力段部、回路部、およびこれらをサージから保護する保護素子部を備える。出力段部には、出力段用の縦型MOSFET110が設けられている。回路部には、制御回路用の横型CMOSなどが設けられている。回路部には、制御回路用の横型CMOSを構成する相補に接続された横型pチャネルMOSFETおよび横型nチャネルMOSFETのうち、横型nチャネルMOSFET120のみを図示する。保護素子部には、保護素子部である縦型ダイオード130が設けられている。
【0004】
出力段部において、n+型支持基板101およびn-型半導体層102はそれぞれドレイン層およびドリフト層として機能する。基体裏面(n+型支持基板101の裏面)に接続されたドレイン電極109(ドレイン端子)は、車載用バッテリーが接続される電源電圧端子(以下、VCC端子とする)である。基体おもて面側(n-型半導体層102の、n+型支持基板101側に対して反対側)には、接地端子(以下、GND端子とする)および出力端子(以下、OUT端子とする)が設けられている。OUT端子には、縦型MOSFET110のn+型ソース領域107およびp++型拡散領域108が電気的に接続されている。符号103〜106は、それぞれ縦型MOSFET110のトレンチ、ゲート絶縁膜、ゲート電極およびp型ベース領域である。
【0005】
回路部の横型CMOSを構成する横型nチャネルMOSFET120は、基体おもて面の表面層に選択的に設けられたp-型ベース領域121の内部に配置されている。また、p-型ベース領域121の内部には、p-型ベース領域121の外周付近に、横型nチャネルMOSFET120のn+型ソース領域122およびn+型ドレイン領域123と離してp+型拡散領域124が設けられている。p+型拡散領域124の深さは、p-型ベース領域121の深さと同じか、p-型ベース領域121の深さよりも深い。図13には、p+型拡散領域124の深さがp-型ベース領域121の深さより深い場合を示す。このp+型拡散領域124は、基体おもて面上に積層される配線層の電位によるp-型ベース領域121の反転を防止する反転防止層として機能する。
【0006】
+型拡散領域124の内部には、配線層とのコンタクト(電気的接触部)となるp++型コンタクト領域125が選択的に設けられている。図13には、横型nチャネルMOSFET120が制御回路内のCMOSインバータやED(Enhancement/Depletion)インバータ、抵抗負荷インバータなどの各種インバータ回路に用いられる場合の一例を示しており、横型nチャネルMOSFET120のn+型ソース領域122に接続されたソース端子はGND端子に電気的に接続されている。バックゲートであるp-型ベース領域121もp+型拡散領域124およびp++型コンタクト領域125を介してGND端子に電気的に接続されている。符号126は、横型nチャネルMOSFET120のゲート電極である。
【0007】
横型nチャネルMOSFET120のn+型ドレイン領域123が接続されたドレイン端子には、横型pチャネルMOSFETやデプレッション型MOSFET、抵抗素子などの回路素子111が接続され、制御回路内の各種インバータ回路が構成されている。回路素子111は、電源回路112を介して、基体おもて面の表面層に選択的に設けられたn+型拡散領域113に接続されている。電源回路112は、高耐圧の回路素子(不図示)によって構成されており、n型半導体基体の電源電圧電位(VCC端子の電位)を受けて回路素子111に低電位を出力し、横型nチャネルMOSFET120および回路素子111からなる各種インバータ回路に電源電圧を供給している。このような車載用のパワーICには、高いサージ耐量が要求される。
【0008】
VCC端子とGND端子との間にESD(Electro−Static Discharge:静電気放電)等の高いサージ電圧が印加された場合、VCC端子からn-型半導体層102、電源回路112、回路素子111、横型nチャネルMOSFET120およびGND端子の経路で順にサージが侵入し高電圧が印加される。これらサージが侵入する各構成部のうち、回路素子111や横型nチャネルMOSFET120はサイズが小さく、素子単体ではサージ耐量が低い。このため、VCC端子とGND端子との間に並列にサージ電流吸収用(サージ保護用)の縦型ダイオード130が接続されている。縦型ダイオード130は、基体おもて面の表面層にp+型拡散領域131が選択的に設けられてなるpn接合で構成される。横型nチャネルMOSFET120と同一のn型半導体基体に縦型ダイオード130を形成するにあたって工程数が増えないように、縦型ダイオード130のp+型拡散領域131は横型nチャネルMOSFET120のp+型拡散領域124と同時に形成される。
【0009】
縦型ダイオード130は、VCC端子とGND端子との間にサージ電圧が印加されたときにアバランシェブレイクダウン(アバランシェ降伏)し、VCC端子側からp+型拡散領域131およびp++型コンタクト領域132を通ってGND端子に向う縦方向に電流I101を流してサージ電流を吸収する。一方、回路部(横型nチャネルMOSFET120が設けられている領域)に設けられたp+型拡散領域124とn-型半導体層102との間にも縦型ダイオード130と同様にpn接合が形成される。このp+型拡散領域124とn-型半導体層102との間のpn接合も縦型ダイオード130と同程度の印加電圧でブレイクダウンする。これは回路部内に縦型ダイオード130よりもpn接合面積の小さい縦型ダイオード(以下、回路部ダイオードとする)127が複数内蔵されていることと等価であり、パワーICで大きな面積を占める回路部の一部をサージ保護用の縦型ダイオード130として利用することができる。このため、サージ保護用の縦型ダイオード130の実効的なpn接合面積を大きくすることができる。
【0010】
縦型ダイオード130の破壊電流量(電流破壊を生じさせない最大電流値)はpn接合面積に比例して大きくなる。このため、回路部の一部を利用して回路部ダイオード127を構成することで、単独で縦型ダイオード130を構成する場合よりも縦型ダイオード130自体の破壊耐量を向上させることができ、それに伴いパワーICのサージ耐量を向上させることができる。また、縦型ダイオード130の耐圧は温度上昇とともに増加する。このため、仮に、回路部の一部を利用して構成されたpn接合面積の小さい回路部ダイオード127に電流が集中しても、回路部ダイオード127の耐圧は発熱により増加し、回路部ダイオード127への電流集中が緩和される。したがって、上述したように回路部に回路部ダイオード127を点在させても、回路部の局所的な破壊は生じにくい。
【0011】
一方、パワーICに限らず一般的に、ダイオードに代えてバイポーラ素子をサージ保護用の保護素子として用いてサージ耐量を向上させる技術が知られている。サージ保護用の保護素子としてバイポーラ素子を用いた場合、バイポーラ素子のスナップバック特性を利用してサージ電流の吸収能力を向上させることで被保護素子のサージ耐量を向上させている。バイポーラ素子のスナップバック特性はデバイス構造に依存するため、この特性を改良するために各種バイポーラ構造を備えた保護素子が提案されている(例えば、下記特許文献3〜12参照。)。下記特許文献3では、バイポーラESD保護素子のベース層の下部層に連続した同型の半導体層を設けることによりバイポーラESD保護素子のベース層のベース幅を広くし、バイポーラESD保護素子自体の電圧耐性を向上させている。
【0012】
下記特許文献4では、保護素子のベース電極とベース領域との接触部を当該ベース領域のコレクタ電極側の端部とエミッタ領域との間に位置させることで、保護素子のホールド電圧を高くしている。下記特許文献5では、トリガ素子におけるブレイクダウンをトリガとして保護素子のバイポーラ動作を開始させることで、ESD耐量およびノイズ耐性を向上させている。下記特許文献6では、バイポーラトランジスタのブレイクダウンをトリガとして保護素子であるサイリスタを動作させる構成とし、トリガ電圧をサイリスタのホールド電圧から独立して調整している。下記特許文献7では、保護素子のn+型ソース層の下方のボディ層の底部に窪み部を形成し、保護素子のスナップバック電圧を被保護素子のスナップバック電圧より低くしている。
【0013】
下記特許文献8では、保護素子の低濃度コレクタ層の内部に設けた第2導電型層とベース層との間隔を調節することにより、ホールド電圧を変化させずに、トリガ電圧のみを調節している。下記特許文献9では、区分された各領域にそれぞれ形成された不純物拡散領域または半導体層の底面に、半導体装置の常用動作電圧より高く、かつ半導体装置を構成する各素子の耐圧よりも低く逆方向降伏電圧が設定されたpn接合ダイオードを形成することにより、チップ面積の増大を抑制している。下記特許文献10では、トランジスタの降伏動作時の抵抗よりダイオードの降伏動作時の抵抗を小さく、かつ、トランジスタの二次降伏電流よりダイオードの二次降伏電流を大きくすることにより、ESD耐量およびサージ耐量を高くしている。下記特許文献11、12には、寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧を制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−359294号公報
【特許文献2】特開2000−91344号公報
【特許文献3】特開2006−93361号公報
【特許文献4】特開2009−64974号公報
【特許文献5】特開2011−18685号公報
【特許文献6】特開2012−38974号公報
【特許文献7】特開2012−94797号公報
【特許文献8】特開2012−99626号公報
【特許文献9】特開平3−49257号公報
【特許文献10】特開2010−287909号公報
【特許文献11】特開2010−182727号公報
【特許文献12】特開2010−157642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、発明者らが鋭意研究を重ねた結果、次のことが新たに判明した。パワーICの回路部には、横型nチャネルMOSFET120のn+型ソース領域122が形成されており、n-型半導体層102、p-型ベース領域121およびn+型ソース領域122からなる縦型の寄生バイポーラ素子T102が形成される。n+型ソース領域122は低電位側のGND端子に電気的に接続されているため、回路部を流れる電流がサージ電圧の上昇に伴って増加してくると、回路部ダイオード127がブレイクダウンしてp+型拡散領域124に電流(以下、アバランシェ電流とする)I102が流れる。このアバランシェ電流I102の一部の電流I102aがn+型ソース領域122側に流れ込んでベース電流となり、寄生バイポーラ素子T102がオン状態になってスナップバックする。
【0016】
寄生バイポーラ素子T102がスナップバックすると、回路部のインピーダンスが急激に低下して横型nチャネルMOSFET120のn+型ソース領域122に電流が集中する。パワーICの微細化により横型nチャネルMOSFET120のn+型ソース領域122は比較的小さい占有面積で形成されているため、破壊電流量が小さい。n+型ソース領域122への電流集中により配線層との接触部128でn+型ソース領域122が破壊された場合、寄生バイポーラ素子T102がスナップバックを開始する電流I102aでパワーIC全体のサージ耐量が決定されてしまう。したがって、縦型ダイオード130や回路部ダイオード127の占有面積を大きくしてこれらの縦型ダイオードの破壊耐量を上げたとしても、パワーIC全体のサージ耐量を効果的に上げることができない。
【0017】
このような問題を解消するには、回路部の寄生バイポーラ素子T102がスナップバックしても回路部で破壊が生じない、または、回路部の寄生バイポーラ素子T102をスナップバックさせないことが必要である。回路部の寄生バイポーラ素子T102がスナップバックしても回路部で破壊が生じなければ、所定電流以上の電流I102aが回路部に流れたときに、寄生バイポーラ素子T102が保護素子として機能する。このように回路部の寄生バイポーラ素子T102を保護素子として機能させることができれば、縦型ダイオード130や回路部ダイオード127を配置する場合よりもサージ電流の吸収能力が大幅に向上するため、パワーIC全体のサージ耐量の向上に有用である。
【0018】
しかしながら、回路部の微細化が進むと、横型nチャネルMOSFET120のn+型ソース領域122の占有面積の減少とともに、n+型ソース領域122と配線層との接触部128となるコンタクトホールの幅が狭くなり、コンタクトホールの破壊電流量が小さくなる。このため、回路部の寄生バイポーラ素子T102がスナップバックした場合、スナップバック後にn+型ソース領域122と配線層との接触部128に電流が集中してコンタクトホールが破壊されやすくなり、回路部の破壊電流量がよりいっそう低下する。すなわち、回路部の微細化と破壊電流量の増加とを両立させることは困難であり、回路部の寄生バイポーラ素子T102がスナップバックしても回路部で破壊が生じない構成では、微細化されたパワーICのサージ耐量を向上させることは難しい。
【0019】
したがって、微細化されたパワーICのサージ耐量を向上させるには、回路部の寄生バイポーラ素子T102をスナップバックさせないように保護素子である縦型ダイオード130や回路部ダイオード127のサージ吸収能力を大幅に向上させて、回路部への電流集中を低減させる必要がある。上記特許文献は、保護素子であるバイポーラ素子のスナップバック特性を改善する技術であり、パワーICの回路部に形成される寄生バイポーラ素子のスナップバック特性と、保護素子である縦型ダイオードの特性との関係を考慮した構造について記載されていない。また、上記特許文献には、スナップバック特性をもつ回路部を有するパワーICのサージ耐量を向上させる方法や、このようなパワーICの製造コストを抑制する方法について記載されていない。
【0020】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、回路部と当該回路部を保護する保護素子とを同一の半導体基板に備え、微細化を図るとともに、サージ耐量を向上させることができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、コストを抑制して、回路部と当該回路部を保護する保護素子とを同一の半導体基板に備えた半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の半導体基板の第1主面の表面層に、第2導電型の第1半導体領域が選択的に設けられている。前記第1半導体領域内に、半導体素子の素子構造が設けられている。前記半導体素子の素子構造は、第1導電型の第2半導体領域を有する。前記第1半導体領域を深さ方向に貫通し、前記第1半導体領域の深さ以上の深さで、前記半導体素子の素子構造を囲むように、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体領域が選択的に設けられている。前記半導体基板の第1主面の表面層に、前記第1半導体領域と離して、第2導電型の第4半導体領域が選択的に設けられている。前記第4半導体領域の内部に、第1導電型の第5半導体領域が選択的に設けられている。前記第4半導体領域を深さ方向に貫通し、前記第4半導体領域の深さ以上の深さで、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第6半導体領域が選択的に設けられている。第1電極は、前記第2半導体領域と、前記第3半導体領域と、前記第4半導体領域と、前記第5半導体領域と、に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の第2主面に接続されている。
【0022】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の半導体基板の第1主面の表面層に、第2導電型の第1半導体領域が選択的に設けられている。前記第1半導体領域内に、半導体素子の素子構造が設けられている。前記半導体素子の素子構造は、第1導電型の第2半導体領域を有する。前記第1半導体領域の内部に、前記半導体素子の素子構造を囲むように、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体領域が選択的に設けられている。前記半導体基板の第1主面の表面層に、前記第1半導体領域と離して第2導電型の第4半導体領域が選択的に設けられている。前記第4半導体領域の内部に、第1導電型の第5半導体領域が選択的に設けられている。前記第4半導体領域の内部に、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第6半導体領域が選択的に設けられている。第1電極は、前記第2半導体領域と、前記第3半導体領域と、前記第4半導体領域と、前記第5半導体領域と、に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の第2主面に接続されている。
【0023】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第4半導体領域の内部に選択的に設けられた、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第7半導体領域をさらに備える。前記第1電極は、前記第7半導体領域を介して前記第4半導体領域に電気的に接続されている。前記第5半導体領域は、前記第6半導体領域と前記第7半導体領域との間に配置されていることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、さらに、次の特徴を有する。前記第4半導体領域の内部に、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第7半導体領域が選択的に設けられている。前記第1電極は、前記第7半導体領域を介して前記第4半導体領域に電気的に接続されている。前記第7半導体領域は、前記第6半導体領域と離して配置されている。前記第5半導体領域は、前記第6半導体領域の内部に選択的に設けられている。
【0025】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、さらに、次の特徴を有する。前記第6半導体領域の内部に、前記第6半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第7半導体領域が選択的に設けられている。前記第1電極は、前記第7半導体領域を介して前記第4半導体領域に電気的に接続されている。前記第5半導体領域は、前記第6半導体領域の内部に選択的に設けられている。
【0026】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、さらに、次の特徴を有する。前記第6半導体領域の内部に、前記第6半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第7半導体領域が選択的に設けられている。前記第1電極は、前記第7半導体領域を介して前記第4半導体領域に電気的に接続されている。前記第5半導体領域は、前記第6半導体領域と離して配置されている。
【0027】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第5半導体領域は、前記第7半導体領域の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする。
【0028】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、さらに、次の特徴を有する。前記第5半導体領域は、前記第7半導体領域の周囲を囲むように配置されている。前記第6半導体領域は、前記第5半導体領域の周囲を囲むように配置されている。
【0029】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第6半導体領域は、前記第7半導体領域の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする。
【0030】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第6半導体領域は、前記第5半導体領域の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする。
【0031】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第6半導体領域は、前記第3半導体領域と同じ不純物濃度および深さを有することを特徴とする。
【0032】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第4半導体領域は、前記第1半導体領域と同じ不純物濃度および深さを有することを特徴とする。
【0033】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の半導体基板の第1主面の表面層に、第2導電型の第1半導体領域が選択的に設けられている。前記第1半導体領域内に、半導体素子の素子構造が設けられている。前記半導体素子の素子構造は、第1導電型の第2半導体領域を有する。前記第1半導体領域を深さ方向に貫通し、前記第1半導体領域の深さ以上の深さで、前記半導体素子の素子構造を囲むように、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体領域が選択的に設けられている。前記半導体基板の第1主面の表面層に、前記第1半導体領域と離して、第2導電型の第4半導体領域が選択的に設けられている。前記第4半導体領域の内部に、第1導電型の第5半導体領域が選択的に設けられている。第1電極は、前記第2半導体領域と、前記第3半導体領域と、前記第4半導体領域と、前記第5半導体領域と、に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の第2主面に接続されている。
【0034】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、さらに次の特徴を有する。前記第4半導体領域の内部に、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第6半導体領域が選択的に設けられている。前記第1電極は、前記第6半導体領域を介して前記第4半導体領域に電気的に接続されている。前記第5半導体領域は、前記第6半導体領域の周囲を囲むように配置されている。
【0035】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子もしくは前記第5半導体領域、前記第6半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第6半導体領域から前記第4半導体領域と前記第1電極との接触部までの距離が設定されていることを特徴とする。
【0036】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子もしくは前記第5半導体領域、前記第6半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第6半導体領域から前記第7半導体領域までの距離が設定されていることを特徴とする。
【0037】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第6半導体領域から前記第5半導体領域までの距離が設定されていることを特徴とする。
【0038】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第4半導体領域のコーナー部から前記第4半導体領域と前記第1電極との接触部までの距離が設定されていることを特徴とする。
【0039】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第4半導体領域のコーナー部から前記第6半導体領域までの距離が設定されていることを特徴とする。
【0040】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第5半導体領域、前記第4半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子もしくは前記第5半導体領域、前記第6半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧が、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記半導体基板からなる寄生バイポーラ素子がスナップバックを開始する電圧よりも低くなるように、前記第4半導体領域の不純物濃度が設定されていることを特徴とする。
【0041】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2半導体領域、第1導電型の第8半導体領域、ゲート絶縁膜およびゲート電極で前記半導体素子の素子構造が構成される。前記第8半導体領域は、前記第1半導体領域の内部に、前記第2半導体領域と離して選択的に設けられている。前記ゲート電極は、前記第1半導体領域の、前記第2半導体領域と前記第8半導体領域とに挟まれた部分の表面上に前記ゲート絶縁膜を介して設けられていることを特徴とする。
【0042】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、同一の深さの前記第1半導体領域および前記第4半導体領域が設けられていることを特徴とする。
【0043】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、同一の深さの前記第3半導体領域および前記第6半導体領域が設けられていることを特徴とする。
【0044】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、同一の深さの前記第2半導体領域および前記第5半導体領域が設けられていることを特徴とする。
【0045】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、同一の深さの前記第3半導体領域および前記第4半導体領域が設けられていることを特徴とする。
【0046】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第4半導体領域と前記第5半導体領域との間に、前記第5半導体領域を覆うように設けられた第9半導体領域をさらに備えることを特徴とする。
【0047】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第9半導体領域は、前記第4半導体領域よりも第1導電型不純物濃度が高いことを特徴とする。
【0048】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第9半導体領域は、前記第4半導体領域よりも第2導電型不純物濃度が高いことを特徴とする。
【0049】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第4半導体領域は、前記第3半導体領域の一部であることを特徴とする。
【0050】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、第2導電型の第10〜12半導体領域をさらに備える。前記第10半導体領域は、前記半導体基板の第1主面の表面層に、前記第1半導体領域および前記第4半導体領域と離して選択的に設けられている。前記第11半導体領域は、前記第10半導体領域を深さ方向に貫通し、前記第10半導体領域の深さ以上の深さで選択的に設けられている。前記第12半導体領域は、前記第11半導体領域の表面層に選択的に設けられている。前記第12半導体領域は、前記第11半導体領域よりも不純物濃度が高い。そして、前記半導体基板と前記第3半導体領域とで構成される第1ダイオードの降伏電圧が前記半導体基板と前記第11半導体領域とで構成される第2ダイオードの降伏電圧より高いことを特徴とする。
【0051】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記半導体基板の第1主面の表面において、前記半導体基板と前記第6半導体領域との間の距離が前記半導体基板と前記第11半導体領域との距離より大きいことを特徴とする。
【0052】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した半導体装置において、次の特徴を有する。同一の不純物注入および不純物拡散処理によって、前記半導体基板の第1主面の表面層に、互いに離して、前記第1半導体領域および前記第4半導体領域を選択的に形成する工程を行う。同一の不純物注入および不純物拡散処理によって、前記第1半導体領域の内部に前記第2半導体領域を選択的に形成するとともに、前記第4半導体領域の内部に前記第5半導体領域を選択的に形成する工程を行う。同一の不純物注入および不純物拡散処理によって、前記第1半導体領域を深さ方向に貫通する前記第3半導体領域を選択的に形成するとともに、前記第4半導体領域を深さ方向に貫通する前記第6半導体領域を選択的に形成する工程を行う。
【0053】
上述した発明によれば、第6半導体領域および半導体基板からなる保護素子部の縦型ダイオードの動作抵抗を、第3半導体領域および半導体基板からなる回路部の縦型ダイオードの動作抵抗よりも高くすることができる。これにより、サージ電圧が印加されたときに、保護素子部によってサージ電流を吸収することができる。このため、微細化により回路部の第2半導体領域と第1電極との接合部となるコンタクトホールの幅が狭くなったとしても、回路部の第2半導体領域と第1電極との接合部にサージ電流が集中することを抑制することができる。したがって、半導体装置全体のサージ耐量を上げることができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法によれば、回路部と当該回路部を保護する保護素子とを同一の半導体基板に備え、微細化を図るとともに、サージ耐量を向上させることができるという効果を奏する。また、本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法によれば、回路部と当該回路部を保護する保護素子とを同一の半導体基板に備えた半導体装置のコストを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図2図2は、実施の形態1にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。
図3図3は、実施の形態1にかかる半導体装置の動作原理を説明する説明図である。
図4図4は、実施の形態1にかかる半導体装置のスナップバック特性を示す特性図である。
図5図5は、実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図6図6は、実施の形態3にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図7図7は、実施の形態4にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図8図8は、実施の形態4にかかる半導体装置の保護素子部における平面レイアウトを示す平面図である。
図9図9は、実施の形態4にかかる半導体装置の保護素子部におけるスナップバック特性を示す特性図である。
図10図10は、実施の形態5にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図11図11は、実施の形態6にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図12図12は、実施の形態6にかかる半導体装置の構造の別の一例を示す断面図である。
図13図13は、従来の半導体装置の構造を示す断面図である。
図14図14は、実施の形態7にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図15図15は、実施の形態7にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。
図16図16は、実施の形態7にかかる半導体装置のスナップバック特性を示す特性図である。
図17図17は、実施の形態8にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図18図18は、実施の形態8にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。
図19図19は、実施の形態9にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図20図20は、実施の形態9にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。
図21図21は、実施の形態9にかかる半導体装置の構造の別の一例を示す断面図である。
図22図22は、実施の形態10にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図23図23は、実施の形態10にかかる半導体装置の構造の別の一例を示す断面図である。
図24図24は、実施の形態11にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図25図25は、実施の形態11にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。
図26図26は、実施の形態11にかかる半導体装置のスナップバック特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0057】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置の構造について説明する。図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図1には、図2の切断線A−A’における断面構造を示す。図2は、実施の形態1にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。図2では、出力段部の平面レイアウトを図示省略する(図15,18においても同様)。平面レイアウトとは、半導体基板100のおもて面側から見た各部の平面形状および配置構成である。
【0058】
図1には、実施の形態1にかかる半導体装置の一例として、出力段用の縦型nチャネルパワーMOSFETと、制御回路用の横型CMOSと、これらのMOSFETをサージから保護する保護素子30と、を同一の半導体基板(半導体チップ)上に設けた車載用のハイサイド型パワーICを示す。回路部には、制御回路用の横型CMOSを構成する相補に接続された横型pチャネルMOSFETおよび横型nチャネルMOSFETのうち、横型nチャネルMOSFET20のみを図示する。
【0059】
具体的には、図1に示すように、n+型支持基板1のおもて面上にn-型エピタキシャル層2を積層してなるn型エピタキシャル基体(半導体基板)上に、出力段部、回路部および保護素子部が互いに離して配置されている。出力段部には、出力段用の縦型nチャネルパワーMOSFETとして、例えばトレンチゲート構造の縦型MOSFET10が配置されている。出力段部において、n+型支持基板1およびn-型エピタキシャル層2はそれぞれ縦型MOSFET10のドレイン層およびドリフト層として機能する。基体おもて面側(n-型エピタキシャル層2の、n+型支持基板1側に対して反対側)には、縦型MOSFET10のMOSゲート構造が設けられている。
【0060】
縦型MOSFET10のMOSゲート構造は、トレンチ3、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5、p型ベース領域6、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8からなる一般的なトレンチゲート構造である。縦型MOSFET10のMOSゲート構造の平面レイアウトは図示省略する。n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8はソース電極(ソース端子)に接続され、ソース端子は配線層(不図示)を介して基体おもて面側に設けられた出力端子(OUT端子)に電気的に接続されている。基体裏面(n+型支持基板1の裏面)に接続された縦型MOSFET10のドレイン電極(ドレイン端子(第2電極))9は、例えば電源電圧電位VCC端子である。
【0061】
図1,2に示すように、回路部には、制御回路用の横型CMOSや、回路素子11、電源回路12などの各回路が設けられている。例えば、回路部において、基体おもて面の表面層にはp-型ベース領域(第1半導体領域)21が選択的に設けられており、p-型ベース領域21の内部には、制御回路用の横型CMOSを構成する横型nチャネルMOSFET20のn+型ソース領域(第2半導体領域)22およびn+型ドレイン領域(第8半導体領域)23が互いに離してそれぞれ選択的に設けられている。n+型ソース領域22およびn+型ドレイン領域23の深さは、例えば縦型MOSFET10のn+型ソース領域7の深さと同じであってもよい。
【0062】
-型ベース領域21の、n+型ソース領域22とn+型ドレイン領域23とに挟まれた部分の表面上には、ゲート絶縁膜(不図示)を介してゲート電極27が設けられている。ゲート電極27は、例えば直線状の平面レイアウトに設けられている。図2では、ゲート電極27以外の電極(配線層)を図示省略する。また、p-型ベース領域21を深さ方向に貫通して、n-型エピタキシャル層2の、p-型ベース領域21とn+型支持基板1とに挟まれた部分に達するp+型拡散領域(第3半導体領域)24が設けられている。p+型拡散領域24は、p-型ベース領域21の外周付近に、横型nチャネルMOSFET20のn+型ソース領域22およびn+型ドレイン領域23と離して設けられている。
【0063】
また、p+型拡散領域24は、横型nチャネルMOSFET20の周囲を囲む例えば略矩形枠状の平面レイアウトに設けられている。p+型拡散領域24の内側に、横型nチャネルMOSFET20の単位セル(素子の機能単位)が複数配置されていてもよい。p+型拡散領域24の深さは、p-型ベース領域21の深さよりも深く、p-型ベース領域21の下側(n+型支持基板1側)からn-型エピタキシャル層2内に突出している。p+型拡散領域24は、基体おもて面上に積層される配線層(不図示)の電位によるp-型ベース領域21の反転を防止する反転防止層として機能する。また、p+型拡散領域24は、横型nチャネルMOSFET20が隣接する他のデバイスから、ノイズ等の影響を受けるのを防止するガードリングとして機能する。
【0064】
+型拡散領域24の内部には、配線層(不図示)とオーミック接触するp++型コンタクト領域25が選択的に設けられている。p++型コンタクト領域25は、例えば横型nチャネルMOSFET20の周囲を囲む矩形枠状の平面レイアウトに設けられている。p++型コンタクト領域25の深さは、例えば縦型MOSFET10のp++型コンタクト領域8の深さと同じであってもよい。後述する回路部の寄生バイポーラ素子T2のスナップバック特性に対して、保護素子部の寄生バイポーラ素子T1が所定のスナップバック特性を有していればよく(図4参照)、p+型拡散領域24の不純物濃度によってはp++型コンタクト領域25を設けなくてもよい。
【0065】
図1,2には、横型nチャネルMOSFET20が回路部において制御回路を構成するCMOSインバータやEDインバータ、抵抗負荷インバータなどの各種インバータ回路に用いられる場合の一例を示す(図3,5,11,12,14,15,17〜19,2123においても同様)。したがって、横型nチャネルMOSFET20のn+型ソース領域22に接続されたソース電極(ソース端子(第1電極))は、基体おもて面に設けられた接地電位のGND端子(GNDパッド)に電気的に接続される。n+型ソース領域22とソース電位の配線層(ソース電極)との接触部28aを構成するコンタクトホール28bは、例えば、略矩形状の平面形状を有し、1つ配置されている。
【0066】
バックゲートであるp-型ベース領域21は、p+型拡散領域24、p++型コンタクト領域25および配線層(不図示)を介してGND端子に電気的に接続される。横型nチャネルMOSFET20のp++型コンタクト領域25と配線層との接触部26aを構成するコンタクトホール26bは、例えば、略矩形状の平面形状を有し、p++型コンタクト領域25の周方向に沿って点在するように複数設けられている。横型nチャネルMOSFET20のn+型ドレイン領域23は、ドレイン電極(ドレイン端子)を介して、横型pチャネルMOSFETや、デプレッション型MOSFET、抵抗素子など回路素子11の各素子に接続されている。
【0067】
これら回路素子11の各素子は横型nチャネルMOSFET20のドレイン端子に接続されることで、上記各種インバータ回路を構成している。横型nチャネルMOSFET20のn+型ドレイン領域23とドレイン電位の配線層(ドレイン電極)との接触部29aを構成するコンタクトホール29bは、例えば、略矩形状の平面形状を有し、1つ配置されている。また、回路素子11は、電源回路12を介して、基体おもて面の表面層に選択的に設けられた高電位側n+型拡散領域13に接続されている。電源回路12は、高耐圧の回路素子(不図示)によって構成されており、n型エピタキシャル基体の電源電位(VCC端子の電位)を受けて回路素子11に低電位を出力し、各種インバータ回路に電源電圧を供給している。
【0068】
図1,2に示すように、保護素子部には、縦型ダイオードからなる保護素子30が配置されている。保護素子部において、基体おもて面の表面層には、回路部のp-型ベース領域21と離して、p-型拡散領域(第4半導体領域)31が選択的に設けられている。p-型拡散領域31の内部には、p++型コンタクト領域(第7半導体領域)32、n+型拡散領域(第5半導体領域)33およびp+型拡散領域(第6半導体領域)34がそれぞれ選択的に設けられている。p++型コンタクト領域32は、p-型拡散領域31の略中心部に配置されている。p++型コンタクト領域32は、配線層35とオーミック接触している。n+型拡散領域33は、p++型コンタクト領域32の周囲を囲む略矩形環状の平面レイアウトで配置されている。
【0069】
+型拡散領域34は、p-型拡散領域31の外周付近においてp-型拡散領域31を深さ方向に貫通して、n-型エピタキシャル層2の、p-型拡散領域31とn+型支持基板1とに挟まれた部分に達する。また、p+型拡散領域34は、例えば、n+型拡散領域33よりも外側に、n+型拡散領域33の周囲を囲むように略矩形環状の平面レイアウトで配置されている。すなわち、p+型拡散領域34とp++型コンタクト領域32との間に、n+型拡散領域33が配置される。n+型拡散領域33は、p++型コンタクト領域32に接していてもよいし、p++型コンタクト領域32と離して配置されていてもよい。p+型拡散領域34は、n+型拡散領域33に接していてもよいし、n+型拡散領域33と離して配置されていてもよい。p+型拡散領域34の深さはp-型拡散領域31の深さよりも深く、p+型拡散領域34とn-型エピタキシャル層2との間のpn接合によって縦型ダイオードが構成される。
【0070】
-型拡散領域31、p++型コンタクト領域32、n+型拡散領域33およびp+型拡散領域34の深さは、例えば、それぞれ、回路部のp-型ベース領域21、p++型コンタクト領域25、n+型ソース領域22およびp+型拡散領域24の深さと同じであることが好ましい。その理由は、保護素子部の各拡散領域を、それぞれ、回路部に配置する導電型、不純物濃度および深さが同じ拡散領域と同一の不純物注入および不純物拡散工程(不純物注入および不純物拡散処理)によって形成することができるからである。これによって、プロセスがばらついたとしても、保護素子部および回路部の拡散領域のばらつき具合が同じ傾向となる。したがって、保護素子部および回路部をそれぞれ所定の動作特性に調整しやすくなる。また、同一の半導体基板に保護素子部と回路部とを形成するにあたって、新たな工程を追加する必要がないため、コストを抑制することができる。
【0071】
++型コンタクト領域32およびn+型拡散領域33は、配線層35を介してGND端子に接続されている。p++型コンタクト領域32およびn+型拡散領域33が配線層35との接触部36a,37aを構成するコンタクトホール36b,37bは、それぞれ1つ以上複数配置される。図2には、コンタクトホール36b,37bともに複数配置した状態を示す(矩形ドット状の塗りつぶし部分)。保護素子部のn+型拡散領域33が配線層35との接触部37aを構成するコンタクトホール37bの数は、回路部のn+型ソース領域22とソース電位(接地電位)の配線層(不図示)との接触部28aを構成するコンタクトホール28bの数よりも多いことが好ましい。また、保護素子部のn+型拡散領域33とp-型拡散領域31が形成するpn接合面積は、回路部のn+型ソース領域22とp-型ベース領域21が形成するpn接合面積よりも大きいことが好ましい。保護素子部においてコンタクトホール37bの数またはn+型拡散領域33とp-型拡散領域31とのpn接合面積、もしくはその両方を上記条件とすることで、回路部の寄生バイポーラ素子T2よりも保護素子部の寄生バイポーラ素子T1の破壊電流量を上げることができる。後述する回路部の寄生バイポーラ素子T2のスナップバック特性に対して、保護素子部の寄生バイポーラ素子T1が所定のスナップバック特性を有していればよく(図4参照)、p-型拡散領域31の不純物濃度によってはp++型コンタクト領域32を設けなくてもよい。この場合、p-型拡散領域31の、n+型拡散領域33に囲まれた略中心部に配線層35と接触するためのコンタクトホール37bが形成される。
【0072】
次に、実施の形態1にかかる半導体装置の動作について説明する。図3は、実施の形態1にかかる半導体装置の動作原理を説明する説明図である。図4は、実施の形態1にかかる半導体装置のスナップバック特性を示す特性図である。図3に示すように、保護素子部および回路部には、それぞれ、p+型拡散領域34,24とn-型エピタキシャル層2との間のpn接合によって縦型ダイオードD1、D2が形成されている。まず、回路部が単独に存在した場合における回路部の動作について、図3の動作原理図および図4の電流−電圧(I−V)波形w2を参照して説明する。VCC端子からサージ電圧が侵入することによりVCC端子の電圧が上昇し回路部への印加電圧が第1電圧(以下、ブレイクダウン電圧とする)Vbv2に到達すると、縦型ダイオードD2がp+型拡散領域24とn-型エピタキシャル層2との間のpn接合でブレイクダウンして電流(アバランシェ電流)I2が流れ始める。アバランシェ電流I2により縦型ダイオードD2に発生した正のキャリア(ホール)は、p+型拡散領域24を経由し、p++型コンタクト領域25から配線層を介してGND端子に流れ込む。そして、回路部への印加電圧が上昇してアバランシェ電流I2が増加するにつれ、縦型ダイオードD2のブレイクダウン箇所がp+型拡散領域24とn-型エピタキシャル層2との間のpn接合面の全面に広がっていきキャリアの発生領域が広がる。それに伴い、アバランシェ電流I2はp++型コンタクト領域25に到達するまでに長い距離を流れることとなり、p+型拡散領域24において、ブレイクダウン箇所からp++型コンタクト領域25までの距離に応じた抵抗成分による電圧降下が大きくなる。回路部への印加電圧がさらに第2電圧Vt2まで上昇しアバランシェ電流I2が所定電流It2まで増加すると、p+型拡散領域24での電圧降下がp-型ベース領域21とn+型ソース領域22との間のpn接合の順方向電圧を超える。これによって、p-型ベース領域21とn+型ソース領域22との間のpn接合が順バイアスされ、アバランシェ電流I2の一部の電流I2aがn+型ソース領域22側に流れる。このn+型ソース領域22側に流れる電流I2aがベース電流となり、n+型ソース領域22、p-型ベース領域21およびn-型エピタキシャル層2からなる寄生バイポーラ素子T2がオン状態になりスナップバックする。このとき、回路部に印加される電圧は、縦型ダイオードD2のブレイクダウン電圧Vbv2よりも低い電圧Vh2まで低下する。
【0073】
次に、保護素子部が単独に存在した場合における保護素子部の動作について、図3の動作原理図および図4のI−V波形w1を参照して説明する。VCC端子からサージ電圧が侵入することによりVCC端子の電圧が上昇し保護素子部への印加電圧が第1電圧(ブレイクダウン電圧)Vbv1に到達すると、縦型ダイオードD1がp+型拡散領域34とn-型エピタキシャル層2との間のpn接合でブレイクダウンしてアバランシェ電流I1が流れ始める。アバランシェ電流I1により縦型ダイオードD1に発生した正のキャリア(ホール)はp+型拡散領域34およびp-型拡散領域31を経由し、p++型コンタクト領域32から配線層35を介してGND端子に流れ込む。縦型ダイオードD1の動作抵抗は、p-型拡散領域31による抵抗成分R1により比較的大きくなっている。保護素子部への印加電圧がさらに第2電圧Vt1まで上昇しアバランシェ電流I1が所定電流It1まで増加すると、p-型拡散領域31による抵抗成分R1によるp-型拡散領域31での電圧降下がp-型拡散領域31とn+型拡散領域33との間のpn接合の順方向電圧を超える。これによって、p-型拡散領域31とn+型拡散領域33との間のpn接合が順バイアスされ、アバランシェ電流I1の一部の電流I1aがn+型拡散領域33側に流れる。このn+型拡散領域33側に流れる電流I1aがベース電流となり、n+型拡散領域33、p-型拡散領域31およびn-型エピタキシャル層2からなる寄生バイポーラ素子T1がオン状態になりスナップバックする。このとき、保護素子部に印加される電圧は、縦型ダイオードD1のブレイクダウン電圧Vbv1よりも低い電圧Vh1まで低下する。図3において、符号I1b,I2bは、配線層35を介してGND端子に流れ込むアバランシェ電流である。
【0074】
上述した保護素子部の縦型ダイオードD1と回路部の縦型ダイオードD2とを比較する。縦型ダイオードD1,D2は、それぞれのpn接合を構成するp+型拡散領域34,24の条件(不純物濃度および拡散深さ)がほぼ同じであるため、ブレイクダウン電圧Vbv1,Vbv2が等しい。一方、保護素子部および回路部は、次の2つの点が異なる。1つ目の相違点は、次の通りである。回路部においては、アバランシェ電流I2により縦型ダイオードD2に発生したキャリアがp+型拡散領域24のみを経由してp++型コンタクト領域25に到達する。それに対して、保護素子部においては、アバランシェ電流I1により縦型ダイオードD1に発生したキャリアは、p+型拡散領域34よりも不純物濃度の低いp-型拡散領域31を経由してp++型コンタクト領域32に到達する。このため、保護素子部の縦型ダイオードD1の動作抵抗は、回路部の縦型ダイオードD2の動作抵抗よりも高くなる。これによって、保護素子部のI−V波形w1における第1電圧Vbv1−第2電圧Vt1間のアバランシェ電流I1の傾きは、回路部のI−V波形w2における第1電圧Vbv2−第2電圧Vt2間のアバランシェ電流I2の傾きよりも緩やかになる。すなわち、ブレイクダウン電圧Vbv1、Vbv2以上の印加電圧において、保護素子部の縦型ダイオードD1のアバランシェ電流I1の増加量は、回路部の縦型ダイオードD2のアバランシェ電流I2の増加量よりも小さくなる。
【0075】
2つ目の相違点は、次の通りである。保護素子部においては、回路部と異なり、n+型拡散領域33がp+型拡散領域34とp++型コンタクト領域32とに挟まれた位置に配置されている。このため、保護素子部に流れる大部分のアバランシェ電流I1が配線層35に流れ込むまでの経路近傍に、p-型拡散領域31とn+型拡散領域33との間のpn接合が存在する。したがって、アバランシェ電流I1によってp-型拡散領域31とn+型拡散領域33との間のpn接合が順バイアスされやすくなっており、さらに、縦型ダイオードD1の動作抵抗の高さも影響して、保護素子部の寄生バイポーラ素子T1は回路部の寄生バイポーラ素子T2よりもスナップバックしやすい。また、保護素子部の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始時の電流It1は、回路部の寄生バイポーラ素子T2のスナップバック開始時の電流It2よりも小さい(It1<It2)。このとき、保護素子部の寄生バイポーラ素子T1がスナップバックを開始する第2電圧(以下、スナップバック開始電圧とする)Vt1は、回路部の寄生バイポーラ素子T2がスナップバックを開始する第2電圧(スナップバック開始電圧)Vt2よりも低くなるように設定されている(Vt1<Vt2)。スナップバック開始電圧Vt1,Vt2の調整は、p-型拡散領域31による抵抗成分R1を調整することにより実現可能である。具体的には、スナップバック開始電圧Vt1,Vt2の調整は、保護素子部において、p-型拡散領域31の不純物濃度を調整することによって行ってもよいし、p+型拡散領域34からp++型コンタクト領域32までの距離x1を調整することによって行ってもよいし、p+型拡散領域34からn+型拡散領域33までの距離を調整することによって行ってもよいし、これらを複合的に調整することによって行ってもよい。
【0076】
このような特性をもつ回路部と保護素子部とが同一の半導体基板に配置される。このため、VCC端子からサージ電圧が侵入したときに、回路部への印加電圧が保護素子の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt1まで上昇したところで寄生バイポーラ素子T1がスナップバックして、保護素子部にサージ電流が吸収される。すなわち、VCC端子からサージ電圧が侵入したとしても、回路部の寄生バイポーラ素子T2はスナップバックしない。したがって、微細化により横型nチャネルMOSFET20のn+型ソース領域22と配線層との接触部28aを構成するコンタクトホール28bの幅が狭くなったとしても、当該コンタクトホール28bへ電流集中することは無いため、破壊することはない。一方、保護素子部には、従来(図13参照)のp+型拡散領域131と同程度にp-型拡散領域31の占有面積を確保しておけば、配線層35との接触部36a,37aを構成するコンタクトホール36b,37bを多く配置する、または広い幅で1つずつ配置することが可能である。これにより、コンタクトホール36b,37bの破壊電流を大きくすることができるため、保護素子部の寄生バイポーラ素子T1のスナップバックによって直ちにコンタクトホール36b,37bが破壊されることはなく、保護素子部の破壊電流量を向上させることができる。したがって、微細化を図った場合においても、パワーICのサージ耐量を向上させることができる。
【0077】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、保護素子部のp-型拡散領域を深さ方向に貫通し、p-型拡散領域の深さ以上のp+型拡散領域を設け、かつp+型拡散領域とp++型コンタクト領域との間にGND電位のn+型拡散領域を設けることで、保護素子部の縦型ダイオードの動作抵抗を、回路部の縦型ダイオードの動作抵抗よりも高くすることができる。これにより、サージ電圧が印加されたときに、保護素子部によってサージ電流を吸収することができる。このため、微細化により横型nチャネルMOSFETのn+型ソース領域と配線層との接触部を構成するコンタクトホールの幅が狭くなったとしても、回路部の横型nチャネルMOSFETのn+型ソース領域と配線層との接触部にサージ電流が集中することを抑制することができる。したがって、パワーIC全体のサージ耐量を上げることができる。
【0078】
また、実施の形態1によれば、保護素子部の各拡散領域を、それぞれ回路部における不純物濃度および深さの同じ各拡散領域と同一の不純物注入および不純物拡散工程によって同時に形成することができるため、新たな工程を追加する必要がなく、コストアップを抑制できる。また、実施の形態1によれば、保護素子部の拡散領域と回路部の拡散領域とを同一の不純物注入および不純物拡散工程によって同時に形成することで、保護素子部と回路部とが同じ拡散層構成となるため、プロセスばらつきによる寄生バイポーラ素子のスナップバック開始電流のばらつきが保護素子部と回路部とで同傾向となる。したがって、保護素子部および回路部において寄生バイポーラ素子のスナップバック開始時の電流の大小関係のバランスが保たれ、プロセスばらつきに対して安定した保護動作が可能になる。
【0079】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の構造について説明する。図5は、実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図5には、実施の形態2にかかる半導体装置の動作時の状態を示す(図6(a),11,12においても同様)。実施の形態2にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、回路部において縦型ダイオードD2を構成するp+型拡散領域44の幅x11を部分的に、かつ内側に向って広くした点である。具体的には、p+型拡散領域44の幅x11は、横型nチャネルMOSFET20のn+型ソース領域22と対向する部分において、p-型ベース領域21の外周付近からn+型ソース領域22に達する程度に広い。p+型拡散領域44は、n+型ソース領域22の一部に重なるように配置されていてもよい。p+型拡散領域44の内部に選択的に設けられたp++型コンタクト領域45の幅x12は、p+型拡散領域44の幅x11に応じて広くしてもよい。p++型コンタクト領域45は、n+型ソース領域22に接していてもよい。
【0080】
+型拡散領域44の幅x11を広くすることで、縦型ダイオードD2がブレイクダウンして発生するアバランシェ電流I2の増加によりキャリアの発生領域が広がっても、アバランシェ電流I2の一部の、n+型ソース領域22側に向って流れる電流I2aが低抵抗のp+型拡散領域44を通過する割合を多くすることができる。このため、回路部の寄生バイポーラ素子T2がスナップバックを開始する電流It2を大きくし、かつ回路部の寄生バイポーラ素子T2のスナップバック開始電圧Vt2を高くする効果がある(図4参照)。これにより、VCC端子からサージ電圧が侵入したときに、回路部の寄生バイポーラ素子T2よりも先に保護素子部の寄生バイポーラ素子T1をスナップバックさせる構成にしやすくなり、保護素子部の設計の自由度が向上する。
【0081】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(実施の形態3)
実施の形態3にかかる半導体装置の構造について説明する。図6は、実施の形態3にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図6には、保護素子部の断面構造を示し、保護素子部と同一の半導体基板に形成された回路部および出力段部を図示省略する。実施の形態3にかかる半導体装置の回路部および出力段部の構成は、実施の形態1にかかる半導体装置と同様である(図1参照)。また、実施の形態3にかかる半導体装置の回路部および出力段部の構成は、実施の形態2にかかる半導体装置と同様であってもよい(図5参照)。実施の形態3にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、保護素子部において縦型ダイオードD1を構成するp+型拡散領域51,52の内部にn+型拡散領域33が配置されている点である。p-型拡散領域31の略中心部に配置されたp++型コンタクト領域32は、p+型拡散領域51と離して配置されてもよいし(図6(a))、p+型拡散領域52の内部に配置されてもよい(図6(b))。
【0083】
図6(a)に示すようにp+型拡散領域51の内部にn+型拡散領域33を配置することにより、縦型ダイオードD1のブレイクダウン箇所からp++型コンタクト領域32までの距離に応じた、p-型拡散領域31による抵抗成分R1を減少させることができる。このため、保護素子部の寄生バイポーラ素子のスナップバック開始時の電流It1を、p-型拡散領域31による抵抗成分R1の減少分に応じて大きくすることができる。また、保護素子部の寄生バイポーラ素子のスナップバック開始電圧Vt1を、p-型拡散領域31による抵抗成分R1の減少分に応じて高くすることができる。これにより、ノイズによって保護素子部の寄生バイポーラ素子がスナップバックするという誤作動を起こりにくくすることができる(図4参照)。ノイズとは、例えば、サージ電圧に比べて低電圧で、ICの誤動作を引き起こす虞のある異常電圧である。スナップバック開始電圧(第2電圧)Vt1の調整は、保護素子部において、p-型拡散領域31の不純物濃度を調整することによって行ってもよいし、p+型拡散領域51からp++型コンタクト領域32までの距離を調整することによって行ってもよいし、これらを複合的に調整することによって行ってもよい。
【0084】
また、図6(b)に示すように、p-型拡散領域31にほぼ重なるようにp+型拡散領域52を配置して、p+型拡散領域52の内部にp++型コンタクト領域32およびn+型拡散領域33を配置してもよい。図6(b)には、p-型拡散領域31の両コーナー部31aに重なる程度に幅の広いp+型拡散領域52を示す。これにより、p-型拡散領域31による抵抗成分(不図示)をさらに減少させることができ、ノイズによる上記誤動作をより起こりにくくすることができる。スナップバック開始電圧Vt1の調整は、保護素子部において、p-型拡散領域31およびp+型拡散領域52の不純物濃度を調整することによって行うことができる。
【0085】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。
【0086】
(実施の形態4)
実施の形態4にかかる半導体装置の構造について説明する。図7は、実施の形態4にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図7には、図8の保護素子部の断面構造を示し、保護素子部と同一の半導体基板に形成された回路部および出力段部を図示省略する。図8は、実施の形態4にかかる半導体装置の保護素子部における平面レイアウトを示す平面図である。図8では、回路部および出力段部の平面レイアウトを図示省略する(図20においても同様)。図9は、実施の形態4にかかる半導体装置の保護素子部におけるスナップバック特性を示す特性図である。実施の形態4にかかる半導体装置の回路部および出力段部の構成は、実施の形態1にかかる半導体装置と同様である(図1参照)。実施の形態4にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、保護素子部の構造を回路部の構造とほぼ同じ構成にしている点である。
【0087】
具体的には、図7,8に示すように、保護素子部においてGND端子に接続された配線層35とのコンタクトであるp++型コンタクト領域62およびn+型拡散領域63の配置が実施の形態1と異なる。より具体的には、n+型拡散領域63は、p-型拡散領域31の略中心部に配置されている。縦型ダイオードD1を構成するp+型拡散領域34は、p-型拡散領域31の周辺付近に、n+型拡散領域63と離して、かつn+型拡散領域63の周囲を囲むように配置されている。p++型コンタクト領域62は、p+型拡散領域34の内部に配置されている。符号66a,67aは、p++型コンタクト領域62およびn+型拡散領域63と配線層35との接触部である。符号66b,67bは、それぞれp++型コンタクト領域62およびn+型拡散領域63と配線層35と接触するためのコンタクトホールである(図8の矩形の塗りつぶし部分)。
【0088】
このように保護素子部のp++型コンタクト領域62、n+型拡散領域63およびp+型拡散領域34は、回路部のp++型コンタクト領域25、n+型ソース領域22およびp+型拡散領域24と同様に配置されている。図9に示すように、保護素子部のp+型拡散領域34からn+型拡散領域63までの距離x21を調整することによって、保護素子部の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始時の電流It1およびスナップバック開始電圧Vt1を調整することができる。例えば、保護素子部のp+型拡散領域34からn+型拡散領域63までの距離x21を長くするほど、保護素子部の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始時の電流It1が小さくなりスナップバックしやすくなる。このため、保護素子部のp+型拡散領域34からn+型拡散領域63までの距離x21を調整することで、実施の形態1と同様に、回路部の寄生バイポーラ素子T2より先に保護素子部の寄生バイポーラ素子T1をスナップバックさせることができる(図4参照)。具体的には、保護素子部のp+型拡散領域34からn+型拡散領域63までの距離x21を、回路部のp+型拡散領域24からn+型ソース領域22までの距離x2(図1参照)よりも長くすればよい(x21>x2)。また、スナップバック開始電圧Vt1の調整は、保護素子部において、p-型拡散領域31の不純物濃度を調整することによって行ってもよい。
【0089】
また、回路部の構成を実施の形態2にかかる半導体装置の回路部と同様の構成にすることも可能である(図5参照。すなわちx2≦0)。
【0090】
以上、説明したように、実施の形態4によれば、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。
【0091】
(実施の形態5)
実施の形態5にかかる半導体装置の構造について説明する。図10は、実施の形態5にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図10には、保護素子部の断面構造を示し、保護素子部と同一の半導体基板に形成された回路部および出力段部を図示省略する。実施の形態5にかかる半導体装置の回路部および出力段部の構成は、実施の形態1にかかる半導体装置と同様である(図1参照)。また、実施の形態5にかかる半導体装置の回路部および出力段部の構成は、実施の形態2にかかる半導体装置と同様であってもよい(図5参照)。実施の形態5にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、保護素子部において縦型ダイオードD1を構成するp+型拡散領域71の深さをp-型拡散領域31の深さと同じにした点である(図10(a))。すなわち、実施の形態5においては、保護素子部の縦型ダイオードD1のブレイクダウン箇所がp+型拡散領域71とn-型エピタキシャル層2との間のpn接合となる。
【0092】
+型拡散領域71の深さを、p+型拡散領域71の底部でアバランシェブレイクダウンが生じる程度にp-型拡散領域31の深さとほぼ同等とすることで、p+型拡散領域71を形成する際の不純物拡散のための熱処理時間を短縮することができる。これによって、p+型拡散領域71の横方向(基体おもて面に平行な方向)拡散を抑制することができるため、回路の微細化に有利であり、コストを抑制することができる。また、実施の形態5を実施の形態3,4に適用し、保護素子部においてアバランシェブレイクダウン箇所を構成するp+型拡散領域72〜74の深さをp-型拡散領域31の深さと同等にした構成としてもよい(図10(b)〜図10(d))。図10(b),10(c)には、実施の形態3にかかる半導体装置(図6(a),6(b)参照)に実施の形態5を適用した場合を示す。図10(d)には、実施の形態4にかかる半導体装置(図7参照)に実施の形態5を適用した場合を示す。
【0093】
図10(e)には、図10(a)の変形例を示す。図10(e)に示す変形例においては、p+型拡散領域71の深さがp-型拡散領域31の深さより若干浅い。この場合でも、保護素子部のアバランシェブレイクダウン箇所がp+型拡散領域71の底となるようにp+型拡散領域71を形成することで図10(a)に示す構成と同様の効果を奏する。p+型拡散領域71の深さは、保護素子の耐圧がp+型拡散領域71の底部で決まる深さであればよい。
【0094】
図10(b),10(c)および10(d)においても同様に、p+型拡散領域71の深さがp-型拡散領域31の深さより若干浅くてもよい。
【0095】
以上、説明したように、実施の形態5によれば、実施の形態1〜4と同様の効果を得ることができる。
【0096】
(実施の形態6)
実施の形態6にかかる半導体装置の構造について説明する。図11は、実施の形態6にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図12は、実施の形態6にかかる半導体装置の構造の別の一例を示す断面図である。実施の形態6にかかる半導体装置の回路部および出力段部の構成は、実施の形態1にかかる半導体装置と同様である。実施の形態6にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、保護素子部にp-型拡散領域を設けずに、p++型コンタクト領域(第6半導体領域)32、n+型拡散領域33、および縦型ダイオードD1を構成するp+型拡散領域(第4半導体領域)81によって保護素子部を構成している点である。
【0097】
具体的には、図11に示すように、保護素子部において、基体おもて面の表面層には、回路部のp-型ベース領域21と離して、p+型拡散領域81が選択的に設けられている。p+型拡散領域81の内部には、p++型コンタクト領域32およびn+型拡散領域33がそれぞれ選択的に設けられている。p++型コンタクト領域32は、p+型拡散領域81の略中心部に配置されている。回路部の寄生バイポーラ素子T2のスナップバック特性に対して、保護素子部の寄生バイポーラ素子T1が所定のスナップバック特性を有していればよく(図4参照)、p+型拡散領域81の不純物濃度によってはp++型コンタクト領域32を設けなくてもよい。この場合、p+型拡散領域81の、n+型拡散領域33に囲まれた略中心部に配線層35との接触部を構成するコンタクトホール36bが形成される。n+型拡散領域33は、p++型コンタクト領域32と離して、p++型コンタクト領域32の周囲を囲む略矩形環状の平面レイアウトで配置されている。すなわち、保護素子部には、n+型拡散領域33、p+型拡散領域81およびn-型エピタキシャル層2からなる寄生バイポーラ素子T1が形成される。
【0098】
++型コンタクト領域32、n+型拡散領域33およびp+型拡散領域81の深さは、例えば、それぞれ、回路部のp++型コンタクト領域25、n+型ソース領域22およびp+型拡散領域24の深さと同じであることが好ましい。その理由は、保護素子部の各拡散領域を、それぞれ、回路部に配置する導電型、不純物濃度および深さが同じ拡散領域と同一の不純物注入および不純物拡散工程(不純物注入および不純物拡散処理)によって形成することができるからである。
【0099】
このような構成とした場合、p+型拡散領域81のコーナー部(下側外周端)81aが縦型ダイオードD2のブレイクダウン箇所となる。このため、p+型拡散領域81のコーナー部81aからp++型コンタクト領域32までの距離x31を調整することで、実施の形態1と同様に、回路部の寄生バイポーラ素子T2より先に保護素子部の寄生バイポーラ素子T1をスナップバックさせることができる(図4参照)。具体的には、p+型拡散領域81のコーナー部81aからp++型コンタクト領域32までの距離x31を、回路部のp+型拡散領域24からn+型ソース領域22までの距離x2よりも長くすればよい(x31>x2)。
【0100】
図11の回路部、および図1の保護素子部に比べて、図11の保護素子部はp-型拡散領域の電界緩和効果がなくなるためアバランシェブレイクダウンしやすくなる。このため保護素子部のブレイクダウン電圧Vbv1と回路部のブレイクダウン電圧Vbv2の間には、Vbv1<Vbv2という関係が成立する。これにより、動作抵抗だけの調整を行う場合よりも保護素子部のスナップバック開始電圧Vt1を回路部のスナップバック開始電圧Vt2より小さい値に調整しやすくなる。また、保護素子部にp-型拡散領域を形成するための工程を削除することができるため、例えば、保護素子部の各拡散領域と回路部との各拡散領域とを別々の工程で形成する場合に工程数を低減させることができ、コストを抑制することができる。スナップバック開始電圧Vt1の調整は、保護素子部において、p+型拡散領域81の不純物濃度を調整することによって行うことができる。
【0101】
図12に示すように、保護素子部において縦型ダイオードD1を構成するp+型拡散領域82の深さと、回路部において縦型ダイオードD2を構成するp+型拡散領域83の深さとを、回路部のp-型ベース領域21と同じ深さにしてもよい。
【0102】
以上、説明したように、実施の形態6によれば、保護素子部にp-型拡散領域を設けない場合であっても、実施の形態1〜5と同様の効果を得ることができる。
【0103】
(実施の形態7)
実施の形態7にかかる半導体装置の構造について説明する。図14は、実施の形態7にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図14には、図15の切断線B−B’における断面構造を示す。図15は、実施の形態7にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。図15には、回路部の横型nチャネルMOSFET20の単位セルを複数配置した場合を示す。実施の形態7にかかる半導体装置が実施の形態6にかかる半導体装置と異なる点は、保護素子部において縦型ダイオードD1を構成するp+型拡散領域82と、当該p+型拡散領域82の内部のn+型拡散領域33と、の間にn型またはp型の拡散領域(第9半導体領域)91が設けられている点である。拡散領域91は、保護素子30の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt1を調整する機能を有する。
【0104】
具体的には、図14に示すように、拡散領域91は、p+型拡散領域82の内部に、n+型拡散領域33の下部(n+型支持基板1側の部分)全体を覆うように設けられている。また、拡散領域91は、p++型コンタクト領域32と離して配置されている。拡散領域91は、p+型拡散領域82にn型不純物またはp型不純物を導入してなるn型またはp型の拡散領域であり、例えばイオン注入および活性化のための熱処理により形成される。p+型拡散領域82にp型不純物を導入して拡散領域91を形成した場合、p+型拡散領域82よりもp型不純物濃度が高いp型の拡散領域91が形成される。p型の拡散領域91のp型不純物濃度が高くなるほど、拡散領域91を設けない場合と比べて、保護素子30の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt1が高くなる。
【0105】
一方、p+型拡散領域82にn型不純物を導入して拡散領域91を形成した場合、p+型拡散領域82よりもn型不純物濃度が高い拡散領域91が形成される。この場合、p+型拡散領域82に導入するn型不純物のドーズ量で拡散領域91の導電型が決定される。p+型拡散領域82のp型不純物濃度よりも拡散領域91のn型不純物濃度が低い場合には、p+型拡散領域82よりも不純物濃度の低いp型の拡散領域91が形成される。p+型拡散領域82のp型不純物濃度よりも拡散領域91のn型不純物濃度が高い場合には、p+型拡散領域82の一部がn型に反転してn型の拡散領域91が形成される。n型の拡散領域91のn型不純物濃度が高くなるほど、拡散領域91を設けない場合と比べて、保護素子30の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt1が低くなる。
【0106】
図15に示すように、n+型拡散領域33は、例えば略直線状の平面レイアウトに配置されてもよい。p++型コンタクト領域32は、例えば、n+型拡散領域33の長手方向(直線状に延びる方向)に平行にn+型拡散領域33を通る直線上に配置されてもよい。拡散領域91は、n+型拡散領域33の周囲を覆う例えば略直線状の平面レイアウトに配置される。n+型拡散領域33と配線層(不図示)との接触部37a(図14参照)を構成するコンタクトホール37bは、例えば、略矩形状の平面形状を有し、n+型拡散領域33の長手方向に沿って点在するように複数設けられている。p++型コンタクト領域32と配線層との接触部を構成するコンタクトホール36bは、例えば、略矩形状の平面形状を有し、1つ配置されている。回路部および出力段部の構成は実施の形態6と同様である。
【0107】
保護素子部の動作について説明する。図16は、実施の形態7にかかる半導体装置のスナップバック特性を示す特性図である。図16には、VCC端子からサージ電圧が侵入することによりVCC端子の電圧が上昇したときの実施例1,2および比較例の電流−電圧(I−V)波形を示す。実施例1は、上述した実施の形態7にかかる半導体装置の構成にしたがいn型の拡散領域91を設けた保護素子30である。実施例2は、上述した実施の形態7にかかる半導体装置の構成にしたがいp型の拡散領域91を設けた保護素子30である。比較例は、拡散領域91を設けていない以外は実施例1,2と同じ構成であり、例えば実施の形態6の保護素子30に相当する。
【0108】
図16に示すように、実施例1の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt11は、比較例の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt1よりも低くなる。実施例2の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt12は、比較例の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt1よりも高くなる。したがって、拡散領域91のn型不純物濃度またはp型不純物濃度を調整することで、保護素子30の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt1を調整することができる。その調整可能範囲は、実施例1の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt11以上、実施例2の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt12以下の範囲Xである。
【0109】
また、実施の形態7に実施の形態2を適用し、回路部において縦型ダイオードD2を構成するp+型拡散領域83の幅を広げて、横型nチャネルMOSFET20のn+型ソース領域22の一部に重なるようにp+型拡散領域83を配置してもよい。これにより、実施の形態2と同様に、横型nチャネルMOSFET20の寄生動作が抑制され、回路部の寄生バイポーラ素子T2のスナップバック開始電圧Vt2が高くなる。これによって、保護素子30の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt1と、回路部の寄生バイポーラ素子T2のスナップバック開始電圧Vt2との差が大きくなるため、寄生動作のマージンを確保することもできる。
【0110】
以上、説明したように、実施の形態7によれば、実施の形態1〜6と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態7によれば、保護素子部において縦型ダイオードを構成するp+型拡散領域の内部のn+型拡散領域の下部全体を覆うようにn型またはp型の拡散領域を設けることで、保護素子の寄生バイポーラ素子のスナップバック開始電圧を調整することができる。これによって、保護素子の寄生バイポーラ素子のスナップバック開始電圧を調整するために、上記特許文献11のように保護素子部の寄生抵抗を調整するための当該p型拡散領域の幅を確保したり、上記特許文献12のようにトリガ素子を同一基板上に追加したりする必要がない。これにより、保護素子の占有面積を小さくできるため、スナップバックが起こりやすい箇所に近い位置に保護素子を配置しやすく、回路設計の自由度が高い。また、複数箇所に保護素子を配置する場合においても回路設計の自由度が高くなる。
【0111】
(実施の形態8)
実施の形態8にかかる半導体装置の構造について説明する。図17は、実施の形態8にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図17には、図18の切断線C−C’における断面構造を示す。図18は、実施の形態8にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。実施の形態8にかかる半導体装置が実施の形態7にかかる半導体装置と異なる点は、n型またはp型の拡散領域91を備えた保護素子40を、回路部においてガードリングとして機能するp+型拡散領域83に一体化した点である。すなわち、回路部に形成された縦型ダイオードD2で保護素子40を構成することで、回路部の内部に保護素子40を配置している。
【0112】
具体的には、図17,18に示すように、例えば、横型nチャネルMOSFET20の周囲を囲む略矩形枠状の平面レイアウトに配置されたp+型拡散領域83の1辺に沿って、略直線状の平面レイアウトにn+型拡散領域33が配置されている。この場合、p+型拡散領域83の内部のp++型コンタクト領域25は、例えば、p+型拡散領域83の残りの3辺に沿って略C字状の平面レイアウトに配置される。これによって、p+型拡散領域83の、n+型拡散領域33を配置した部分83bが保護素子40となり、p++型コンタクト領域25を配置した部分83aがガードリングとして機能する。
【0113】
拡散領域91は、p+型拡散領域83(83b)の内部にp++型コンタクト領域25と離して、n+型拡散領域33の周囲を覆う例えば略直線状の平面レイアウトに配置される。拡散領域91の配置以外の構成は、実施の形態7と同様である。ここでは、p+型拡散領域83の、横型nチャネルMOSFET20のn+型ソース領域22に対向する1辺に保護素子40を一体化しているが、p+型拡散領域83の他の辺に保護素子40を一体化させてもよい。図示省略するが、実施の形態7に実施の形態8を適用し、回路部の内部に配置された保護素子40と、回路部の外側に配置された保護素子部の保護素子(図14の符号30)と、を併用してもよい。
【0114】
このように縦型ダイオードD2からなる保護素子40をガードリングと一体化した場合においても、n+型拡散領域33の下部全体を覆うようにn型またはp型の拡散領域91を設けることで、実施の形態7と同様の効果が得られる。また、保護素子40の、n+型拡散領域33、p+型拡散領域83およびn-型エピタキシャル層2からなる寄生バイポーラ素子T1がスナップバックすると、横型nチャネルMOSFET20のn+型ソース領域22と、p+型拡散領域83の内部のn+型拡散領域33と、にアバランシェ電流が流れる。ガードリングに寄生動作する縦型ダイオードD2を設けない場合と比較して、横型nチャネルMOSFET20のn+型ソース領域22と、p+型拡散領域83と、にアバランシェ電流が分散するため、より大きな電流を流すことができる。
【0115】
以上、説明したように、実施の形態8によれば、回路部においてガードリングとして機能するp+型拡散領域に保護素子を一体化した場合においても、実施の形態1〜7と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態8によれば、回路部においてガードリングとして機能するp+型拡散領域に保護素子を一体化することで、小型化を図ることができる。
【0116】
(実施の形態9)
実施の形態9にかかる半導体装置の構造について説明する。図19は、実施の形態9にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図19には、図20の切断線D−D’における断面構造を示す。図20は、実施の形態9にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。図21は、実施の形態9にかかる半導体装置の構造の別の一例を示す断面図である。図20,21に示す実施の形態9にかかる半導体装置は、それぞれ実施の形態1,6に実施の形態7を適用した半導体装置である。
【0117】
具体的には、保護素子部のp++型コンタクト領域32の周囲を囲む略矩形環状の平面レイアウトに配置されたn+型拡散領域33に沿って、略矩形環状の平面レイアウトにn型またはp型の拡散領域92が配置されている。拡散領域92は、実施の形態7と同様に、n+型拡散領域33の下部全体を覆うように設けられている。この拡散領域92のn型不純物濃度およびp型不純物濃度を調整することで、実施の形態7と同様に、保護素子30の寄生バイポーラ素子T1のスナップバック開始電圧Vt1を調整することができる。
【0118】
以上、説明したように、実施の形態9によれば、実施の形態1,6,7と同様の効果を得ることができる。
【0119】
(実施の形態10)
実施の形態10にかかる半導体装置の構造について説明する。図22は、実施の形態10にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図23は、実施の形態10にかかる半導体装置の構造の別の一例を示す断面図である。図22,23に示す実施の形態10にかかる半導体装置は、それぞれ実施の形態1,2に実施の形態8を適用した半導体装置である。
【0120】
具体的には、図22に示すように、回路部においてガードリングとして機能するp+型拡散領域24の一部24bに、実施の形態8と同様にn型またはp型の拡散領域91を備えた保護素子40が一体化されている。これによって、回路部の外側に配置された保護素子部の保護素子(不図示)の他に、拡散領域91を備えた保護素子40を回路部の内部に配置し、これら2つの保護素子が併用される。また、図23に示すように、回路部においてガードリングとして機能するp+型拡散領域44の、保護素子40を一体化した部分44bの幅を、横型nチャネルMOSFET20のn+型ソース領域22の一部に重なるように広げてもよい。
【0121】
ここでは、p+型拡散領域24の、横型nチャネルMOSFET20のn+型ソース領域22に対向する部分24b,44bに保護素子40を一体化しているが、p+型拡散領域24の他の部分24a,44aに保護素子40を一体化させてもよい。また、図22,23には、回路部の外側に配置された保護素子部を構成する各部を図示省略するが、保護素子部の構成は実施の形態1,2と同じであってもよいし、実施の形態9と同じであってもよい。回路部の外側に配置された保護素子部を実施の形態9と同じ構成とした場合、保護素子部の保護素子にn型またはp型の拡散領域91が配置される。
【0122】
以上、説明したように、実施の形態10によれば、実施の形態1,8,9と同様の効果を得ることができる。
【0123】
上記実施の形態1などにおいて、保護素子30のような縦型のスナップダイオードのスナップバック開始電流を調整するためには、p-型拡散領域31の不純物濃度や深さを調整する必要がある。一方、上記したように、製造コスト削減のためには、保護素子部の保護素子30を構成するp-型拡散領域31と回路部の横型nチャネルMOSFET20を構成するp-型拡散領域21とを同時に形成することが望ましい。この場合、横型nチャネルMOSFET20の特性を優先してp-型拡散領域21およびp-型拡散領域31の不純物濃度や深さを決定すると保護素子30のスナップバック開始電流の調整が困難な場合がある。以下に、保護素子30のスナップバック開始電流の調整が困難な場合においても有効な保護が行える半導体装置について説明する。
【0124】
(実施の形態11)
実施の形態11にかかる半導体装置の構造について説明する。図24は、実施の形態11にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図24の保護素子部の断面構造は、図25の切断線E−E’における断面構造である。図25は、実施の形態11にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。図25には、保護素子部のみを示す。実施の形態11にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、保護素子部に、保護素子(第1保護素子)30と離して保護素子(第2保護素子)50をさらに備える点である。
【0125】
保護素子50は、n-型エピタキシャル層2の表面層に選択的に設けられたp-型拡散領域(第10半導体領域)51で構成されている。p-型拡散領域51は、出力段部の縦型MOSFET10のp型ベース領域6、回路部のp-型拡散領域21および保護素子30のp-型拡散領域31と離して配置されている。p-型拡散領域51の内部には、p++型コンタクト領域(第12半導体領域)52およびp+型拡散領域(第11半導体領域)53が選択的に設けられている。
【0126】
++型コンタクト領域52は、配線層35を介してGND端子に接続されている。p++型コンタクト領域52が配線層35との接触部55aを構成するコンタクトホール55bは、1つ以上配置される(図25)。図25には、コンタクトホール55bを複数配置した状態を示す(矩形ドット状の塗りつぶし部分)。p+型拡散領域53の深さは、p-型拡散領域51の深さよりも深くてもよい。p+型拡散領域53とn-型エピタキシャル層2との間のpn接合によって縦型ダイオードD3が形成されている。
【0127】
保護素子50の縦型ダイオードD3の降伏電圧(ブレイクダウン電圧)は、保護素子30のp+型拡散領域34とn-型エピタキシャル層2との間のpn接合による縦型ダイオードD1の降伏電圧よりも低い。具体的には、保護素子50のp-型拡散領域51のp+型拡散領域53から横方向への張り出し幅waを、保護素子30のp-型拡散領域31のp+型拡散領域34から横方向への張り出し幅wbよりも小さくする。保護素子50のp-型拡散領域51の張り出し幅waを保護素子30のp-型拡散領域31の張り出し幅wbより小さくすることで、保護素子50の外周部の電界緩和効果が小さくなる。これにより、縦型ダイオードD3の降伏電圧を縦型ダイオードD1の降伏電圧より小さくすることができる。
【0128】
本実施例においては、保護素子30は、ブレイクダウン電圧を超えて直ちに寄生バイポーラ素子T1が動作するように設定することが望ましい。具体的には、p+型拡散領域34からp++型コンタクト領域32までの距離x1を十分長くする。このような保護素子30では、寄生バイポーラ素子T1が動作することによりスナップバックするため、p-型拡散領域31の不純物濃度や深さを調整してスナップバック開始電流を調整する必要がない。
【0129】
本実施の形態では、保護素子部のp-型拡散領域31、p-型拡散領域51および回路部のp-型拡散領域21の各拡散領域を、同一の不純物注入および不純物拡散工程によって同時に形成する場合であっても、回路部に形成する素子の特性を優先してp-型拡散領域21の不純物濃度や深さを設定できる。
【0130】
図26は、実施の形態11にかかる半導体装置のスナップバック特性を示す特性図である。まず、保護素子50が単独に存在した場合における動作について、電流−電圧(I−V)波形w12を参照して説明する。VCC端子からサージ電圧が侵入することによりVCC端子の電圧が上昇し印加電圧がブレイクダウン電圧Vbv11に到達すると、縦型ダイオードD3がp+型拡散領域53とn-型エピタキシャル層2との間のpn接合でブレイクダウンして電流(アバランシェ電流)が流れ始める。アバランシェ電流により縦型ダイオードD3に発生した正のキャリア(ホール)は、p+型拡散領域53を経由し、p++型コンタクト領域52から配線層35を介してGND端子に流れ込む。そして、その後は、ダイオードD3の動作抵抗により、印加電圧が上昇するにつれてアバランシェ電流が増加する。
【0131】
次に、保護素子30が単独に存在した場合における動作について、図26のI−V波形w13を参照して説明する。VCC端子からサージ電圧が侵入することによりVCC端子の電圧が上昇し印加電圧がブレイクダウン電圧Vbv12に到達すると、縦型ダイオードD1がp+型拡散領域34とn-型エピタキシャル層2との間のpn接合でブレイクダウンしてアバランシェ電流が流れ始める。アバランシェ電流により縦型ダイオードD1に発生した正のキャリア(ホール)はp+型拡散領域34およびp-型拡散領域31を経由し、p++型コンタクト領域32から配線層35を介してGND端子に流れ込む。縦型ダイオードD1の動作抵抗は、p-型拡散領域31による抵抗成分により比較的大きくなっている。ブレイクダウンすると直ちに、p-型拡散領域31による抵抗成分によるp-型拡散領域31での電圧降下がp-型拡散領域31とn+型拡散領域33との間のpn接合の順方向電圧を超える。これによって、p-型拡散領域31とn+型拡散領域33との間のpn接合が順バイアスされ、アバランシェ電流の一部の電流がn+型拡散領域33側に流れる。このn+型拡散領域33側に流れる電流がベース電流となり、n+型拡散領域33、p-型拡散領域31およびn-型エピタキシャル層2からなる寄生バイポーラ素子T1がオン状態になりスナップバックする。このとき、保護素子30に印加される電圧は、縦型ダイオードD1のブレイクダウン電圧Vbv11よりも低い電圧Vh11まで低下する。
【0132】
次に、保護素子部全体の動作について電流−電圧(I−V)波形w11を参照して説明する。VCC端子からサージ電圧が侵入することによりVCC端子の電圧が上昇し印加電圧がブレイクダウン電圧Vbv11に到達すると、縦型ダイオードD3がブレイクダウンして電流(アバランシェ電流)が流れ始める。縦型ダイオードD3の動作抵抗により、印加電圧がブレイクダウン電圧Vbv12に到達すると、縦型ダイオードD1がp+型拡散領域34とn-型エピタキシャル層2との間のpn接合でブレイクダウンしてアバランシェ電流が流れ始める。ブレイクダウンすると直ちに、n+型拡散領域33、p-型拡散領域31およびn-型エピタキシャル層2からなる寄生バイポーラ素子T1がオン状態になりスナップバックする。このとき、保護素子30に印加される電圧は、縦型ダイオードD1のブレイクダウン電圧Vbv1よりも低い電圧Vh1まで低下する。
【0133】
このような実施の形態11を実施の形態1に代えて実施の形態2〜5に適用することができる。
【0134】
以上、説明したように、実施の形態11によれば、実施の形態1〜5と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態11によれば、保護素子(スナップダイオード)のスナップバック開始電流を調整する必要がないため、回路部に形成する素子の特性を優先してp-型拡散領域の不純物濃度や深さを設定した場合においても、保護素子の設計が容易となる。
【0135】
以上において本発明では、上述した各実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した各実施の形態では、出力段用の半導体素子として、トレンチゲート構造の縦型MOSFETを設けた場合を例に説明しているが、出力段用の半導体素子として、プレーナゲート構造の縦型MOSFETなどさまざまなデバイスを設けてもよい。また、本発明は、回路部を構成するさまざまなデバイス(素子)と、これらのデバイスをサージから保護する保護素子とを同一の半導体基板に備えた半導体装置に適用することができる。また、本発明は、導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上のように、本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法は、回路部を構成するデバイスと、このデバイスをサージから保護する保護素子とを同一の半導体基板に備えた半導体装置に適している。
【符号の説明】
【0137】
1 n+型支持基板
2 n-型エピタキシャル層
3 縦型MOSFETのトレンチ
4 縦型MOSFETのゲート絶縁膜
5 縦型MOSFETのゲート電極
6 縦型MOSFETのp型ベース領域
7 縦型MOSFETのn+型ソース領域
8 縦型MOSFETのp++型コンタクト領域
9 ドレイン電極
10 出力段用の縦型MOSFET
11 回路部の回路素子
12 回路部の電源回路
13 回路部の高電位側n+型拡散領域
20 回路部の横型nチャネルMOSFET
21 横型nチャネルMOSFETのp-型ベース領域
22 横型nチャネルMOSFETのn+型ソース領域
23 横型nチャネルMOSFETのn+型ドレイン領域
24,44,83 回路部のp+型拡散領域
25 回路部のp++型コンタクト領域
26a 回路部のp++型コンタクト領域と接地電位の配線層との接触部
26b,28b,29b 横型nチャネルMOSFETのコンタクトホール
27 横型nチャネルMOSFETのゲート電極
28a 横型nチャネルMOSFETのn+型ソース領域と配線層との接触部
29a 横型nチャネルMOSFETのn+型ドレイン領域と配線層との接触部
30 保護素子部の保護素子
31 保護素子部のp-型拡散領域
32,62 保護素子部のp++型コンタクト領域
33,63 保護素子部のn+型拡散領域
34,51,52,71〜74,81,82 保護素子部のp+型拡散領域
35,65 配線層
36a,37a,66a,67a 保護素子部の配線層との接触部
36b,37b 保護素子部のコンタクトホール
D1,D2 縦型ダイオード
I1,I1a,I2,I2a アバランシェ電流
It1,It2 寄生バイポーラ素子のスナップバック開始時の電流
R1 保護素子部のp-型拡散領域による抵抗成分
T1,T2 寄生バイポーラ素子
Vbv1,Vbv2 ブレイクダウン電圧
Vh1,Vh2 寄生バイポーラ素子のスナップバック後の電圧
Vt1,Vt2 寄生バイポーラ素子のスナップバック開始電圧
w1,w2,w11〜w13 I−V波形
x1 保護素子部のp+型拡散領域からp++型コンタクト領域までの距離
x11 回路部のp+型拡散領域の幅
x12 回路部のp++型コンタクト領域の幅
x21 保護素子部のp+型拡散領域からn+型拡散領域までの距離
x2 回路部のp+型拡散領域からn+型ソース領域までの距離
x31 保護素子部のp+型拡散領域のコーナー部からp++型コンタクト領域までの距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26