(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ノボラック樹脂中間体(M)と前記炭素原子数8〜24のアルケン化合物(D)との反応割合が、両者の合計質量に対し前記炭素原子数8〜24のアルケン化合物(D)が0.5〜30質量%となる割合である請求項3記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂は、下記構造式(1)又は(2)
【0020】
【化4】
[式中R
1は水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基の何れかである。kは0、1、2の何れかである。R
2、R
3はそれぞれ独立に脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかであり、lはそれぞれ独立に0又は1〜4の整数、mは0又は1〜5の整数、nは0又は1〜7の整数である。*は図示されたベンゼン環或いはナフタレン環との結合点であり、2つの*は同一の芳香環に結合していてもよいし、それぞれ異なる芳香環に結合していてもよい。]
で表される構造部位(α)と、下記構造式(3)
【0021】
【化5】
(式中R
1は水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基の何れかである。R
4は水素原子又は炭素原子数1〜7の脂肪族炭化水素基である。R
5は水素原子又は炭素原子数8〜24の脂肪族炭化水素基である。)
で表される構造部位(β)とを繰り返し単位として有し、樹脂中に存在するR
2、R
3、R
5のうち少なくとも一つが炭素原子数8〜24の脂肪族炭化水素基であることを特徴とする。
【0022】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂は、対称性が高く剛直な前記構造部位(α)を繰り返し単位として有し、フェノール性水酸基を高密度で有することから、耐熱性が高く、現像性にも優れる特徴を有する。本発明は、前記構造部位(α)の他、前記構造部位(β)を繰り返し単位とする樹脂設計とし、樹脂構造中に炭素原子数8〜24の脂肪族炭化水素基を導入することにより、耐熱性と現像性を維持したまま、厚膜形成時の耐クラック性を向上させることに成功したものである。一般に、樹脂構造中に長鎖の脂肪族炭化水素基を導入するなどして樹脂の柔軟性や靱性を高める手法は、耐クラック性の向上に効果を有するものの、官能基密度の低下に伴う現像性の低下や、耐熱性の低下が生じることが常であるが、本発明ではこのような効果のトレードオフが生じず、現像性、耐熱性、耐クラック性のいずれにも優れるフェノール性水酸基含有樹脂となる。
【0023】
前記構造式(1)、(2)、(3)中のR
1は水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基の何れかである。前記脂肪族炭化水素基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基のアルキル基等、炭素原子数1〜9アルキル基等が挙げられる。前記芳香環含有炭化水素基は、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上にアルキル基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。中でも、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、R
1は水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0024】
前記構造部位(α)について、前記構造式(1)、(2)中の*は、前記構造式(1)、(2)中に図示された3つの芳香環の何れかとの結合点であり、2つの*は同一の芳香環に結合していてもよいし、それぞれ異なる芳香環に結合していてもよい。前記構造式(1)で表される構造部位は、具体的には、下記構造式(1−1)〜(1−4)の何れかで表されるものが挙げられる。また、前記構造式(2)で表される構造部位は、具体的には、下記構造式(2−1)〜(2−4)の何れかで表されるものが挙げられる。
【0025】
【化6】
[式中R
1は水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基の何れかである。kは0、1、2の何れかである。R
2、R
3はそれぞれ独立に脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかであり、lはそれぞれ独立に0又は1〜4の整数、mは0又は1〜5の整数である。]
【0026】
【化7】
[式中R
1は水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基の何れかである。kは0、1、2の何れかである。R
2、R
3はそれぞれ独立に脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかであり、lはそれぞれ独立に0又は1〜4の整数、nは0又は1〜7の整数である。]
【0027】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂は、樹脂中に存在する構造部位(α)の全てが同一構造であってもよいし、異なる複数の構造を有していても良い。中でも、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、前記構造式(1)で表される構造部位を有することが好ましい。また、前記構造式(1)、(2)中のkの値は1であることが好ましい。kが1の場合、前記構造式(1)中の3つのフェノール性水酸基の結合位置は、3つの芳香環を結節するメチン基に対しいずれもパラ位であることが好ましい。
【0028】
前記構造式(1)、(2)中のR
2はそれぞれ独立に脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかであり、lはそれぞれ独立に0又は1〜4の整数である。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖型のもの、分岐構造を有するもののどちらでも良く、構造中に不飽和基を有するもの、有さないもののどちらでも良い。その炭素原子数は特に限定されず、炭素原子数1〜6の短鎖のもの、炭素原子数7以上の比較的長鎖のもの、いずれでも良い。前記芳香環含有炭化水素基は、芳香環を含有する構造部位であれば具体構造は特に限定されず、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基の他、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0029】
中でも、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、lが2〜4の整数であり、そのうち二つのR
2が炭素原子数1〜3のアルキル基であり、その他のR
2が水素原子又は炭素原子数8〜24の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、炭素原子数1〜3のアルキル基である二つのR
2は、フェノール性水酸基の2,5−位に結合していることが好ましい。
【0030】
前記構造式(1)、(2)中のR
3はそれぞれ独立に脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかであり、mは0又は1〜5の整数、nは0又は1〜7の整数である。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖型のもの、分岐構造を有するもののどちらでも良く、構造中に不飽和基を有するもの、有さないもののどちらでも良い。その炭素原子数は特に限定されず、炭素原子数1〜6の短鎖のもの、炭素原子数7以上の比較的長鎖のもの、いずれでも良い。前記芳香環含有炭化水素基は、芳香環を含有する構造部位であれば具体構造は特に限定されず、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基の他、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。中でも、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、R
3は水素原子又は炭素原子数9〜24の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0031】
前記構造部位(β)について、前記構造式(3)中のR
4は水素原子又は炭素原子数1〜7の脂肪族炭化水素基、R
5は水素原子又は炭素原子数8〜24の脂肪族炭化水素基である。これら脂肪族炭化水素基は、直鎖型のもの、分岐構造を有するもののどちらでも良く、構造中に不飽和基を有するもの、有さないもののどちらでも良い。中でも、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、R
4は炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることが好ましい。また、その置換位置はフェノール性水酸基に対しメタ位であることが好ましい。
【0032】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂において、前記構造部位(α)と前記構造部位(β)との存在比率は、所望の樹脂性能や用途等に応じて適宜変更される。中でも、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、両者の存在比率[(α)/(β)]が90/10〜30/70の範囲であることが好ましく、80/20〜40/60の範囲であることがより好ましい。
【0033】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂において、樹脂中に存在するR
2、R
3、R
5のうち少なくとも一つは炭素原子数8〜24の脂肪族炭化水素基である。前述の通り、当該脂肪族炭化水素基は直鎖型のもの、分岐構造を有するもののどちらでも良く、構造中に不飽和基を有するもの、有さないもののどちらでも良い。中でも、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、炭素原子数8〜20の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、その構造は直鎖型のアルキル基であることが好ましい。
【0034】
炭素原子数8〜24の脂肪族炭化水素基の存在割合は、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、フェノール性水酸基含有樹脂100質量部中、前記炭素原子数8〜24の脂肪族炭化水素基が0.5〜30質量%となる割合であることが好ましい。
【0035】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂を製造する方法は特に限定されないが、例えば、下記構造式(4)又は(5)
【0036】
【化8】
〔式中kは0、1、2の何れかである。R
2、R
3はそれぞれ独立に脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかであり、lはそれぞれ独立に0又は1〜4の整数、mは0又は1〜5の整数、nは0又は1〜7の整数である。〕
で表される分子構造を有するトリアリールメタン型化合物(A)、フェノール又は炭素原子数1〜7の脂肪族炭化水素基を有するフェノール化合物(B)、及びアルデヒド化合物(C)を反応原料とするノボラック樹脂中間体(M)と、炭素原子数8〜24のアルケン化合物(D)とを反応させる方法により製造することができる。
【0037】
前記トリアリールメタン型化合物(A)は、同一構造のものを単独で用いても良いし、異なる分子構造を有する複数の化合物を併用しても良い。中でも、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、前記構造式(4)で表される分子構造を有するものが好ましい。また、kの値は1であることが好ましい。kの値が1の場合、構造式(4)において、分子構造中の3つのフェノール性水酸基の結合位置は、3つの芳香環を結節するメチン基に対しパラ位であることが好ましい。
【0038】
前記トリアリールメタン型化合物(A)は、例えば、フェノール化合物(a1)と芳香族アルデヒド化合物(a2)との縮合反応により得られるものが挙げられる。前記フェノール化合物(a1)は、例えば、フェノールや、フェノールの芳香核上の水素原子の一つ乃至複数がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換された化合物が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、耐熱性に優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、フェノールの2,5−位に脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかを有する化合物が好ましく、2,5−位に炭素原子数1〜3のアルキル基を有する化合物が好ましく、2,5−キシレノールが特に好ましい。
【0039】
前記芳香族アルデヒド化合物(a2)は、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フェノール、レゾルシン、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等の芳香核上にホルミル基を有する化合物、ホルミル基の他に更にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等を有する化合物が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、耐熱性と現像性とのバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることからベンゼン環構造を有するものが好ましい。具体的には、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒドが好ましく、サリチルアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒドがより好ましい。
【0040】
前記フェノール化合物(a1)と芳香族アルデヒド化合物(a2)との反応モル比率[(a1)/(a2)]は、目的のトリアリールメタン型化合物(A)を高収率かつ高純度で得られることから、1/0.2〜1/0.5の範囲であることが好ましく、1/0.25〜1/0.45の範囲であることがより好ましい。
【0041】
フェノール化合物(a1)と芳香族アルデヒド化合物(a2)との反応は、酸触媒条件下で行うことが好ましい。ここで用いる酸触媒は、例えば、酢酸、シュウ酸、硫酸、塩酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、酢酸マンガン等が挙げられる。これらの酸触媒は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これらの中でも、触媒活性に優れる点から硫酸、パラトルエンスルホン酸が好ましい。
【0042】
フェノール化合物(a1)と芳香族アルデヒド化合物(a2)との反応は、必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。ここで用いる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のポリオール;2−エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトンなどが挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒として用いても良い。
【0043】
前記フェノール化合物(a1)と芳香族アルデヒド化合物(a2)との反応は、例えば、60〜140℃の温度範囲で、0.5〜20時間かけて行う。
【0044】
反応終了後は、例えば、反応生成物をトリアリールメタン型化合物(A)の貧溶媒(S1)に投入して沈殿物を濾別し、次いで、トリアリールメタン型化合物(A)の溶解性が高く、かつ、前記貧溶媒(S1)と混和する溶媒(S2)に得られた沈殿物を再溶解させる方法により、反応生成物から未反応のフェノール化合物(a1)や芳香族アルデヒド化合物(a2)、用いた酸触媒を除去し、精製されたトリアリールメタン型化合物(A)を得ることが出来る。
【0045】
フェノール化合物(a1)と芳香族アルデヒド化合物(a2)との反応をトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒中で行った場合には、反応生成物を80℃以上まで加熱して前記トリアリールメタン型化合物(A)を芳香族炭化水素溶媒に溶解し、そのまま冷却することにより前記トリアリールメタン型化合物(A)の結晶を析出させることが出来る。
【0046】
前記トリアリールメタン型化合物(A)の精製に用いる前記貧溶媒(S1)は、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、エトキシエタノール等のモノアルコール;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヒキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、酸触媒の溶解性に優れることから水、メタノール、エトキシエタノールが好ましい。
【0047】
一方、前記溶媒(S2)は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のポリオール;2−エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、前記貧溶媒(S1)として水やモノアルコールを用いた場合には、溶媒(S2)としてアセトンを用いることが好ましい。
【0048】
前記フェノール又は炭素原子数1〜7の脂肪族炭化水素基を有するフェノール化合物(B)について、炭素原子数1〜7の脂肪族炭化水素基は、直鎖型のもの、分岐構造を有するもののどちらでも良く、構造中に不飽和基を有するもの、有さないもののどちらでも良い。中でも、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、フェノール化合物(B)は炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基を有することが好ましく、メチル基を有することが好ましい。また、その置換位置はフェノール性水酸基に対しメタ位であることが好ましい。
【0049】
前記トリアリールメタン型化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との反応割合は、所望の樹脂性能や用途等に応じて適宜変更される。中でも、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、両者のモル比[(A)/(B)]が90/10〜30/70の範囲であることが好ましく、80/20〜40/60の範囲であることがより好ましい。
【0050】
前記アルデヒド化合物(C)は、前記トリアリールメタン型化合物(A)及び前記フェノール化合物(B)と縮合反応を生じてノボラック型のフェノール性水酸基含有樹脂を形成し得るものであればよく、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、1,3,5−トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、テトラオキシメチレン、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、反応性に優れることからホルムアルデヒドを用いることが好ましい。ホルムアルデヒドは水溶液の状態であるホルマリンとして用いても、固形の状態であるパラホルムアルデヒドとして用いても、どちらでも良い。また、ホルムアルデヒドとその他のアルデヒド化合物とを併用する場合には、ホルムアルデヒド1モルに対して、その他のアルデヒド化合物を0.05〜1モルの割合で用いることが好ましい。
【0051】
前記ノボラック樹脂中間体(M)は、前記トリアリールメタン型化合物(A)、前記フェノール化合物(B)及び前記アルデヒド化合物(C)の他、その他のフェノール性水酸基含有化合物(E)を反応原料とするものであっても良い。ここで用いるその他のフェノール性水酸基含有化合物(E)は、例えば、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、フェニルフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。その他のフェノール性水酸基含有化合物(E)を用いる場合には、本発明の効果が十分に発揮されることから、前記ノボラック樹脂中間体(M)のフェノール性水酸基含有化合物原料の合計100質量部中、前記トリアリールメタン型化合物(A)とフェノール化合物(B)とを合計で50質量部以上用いることが好ましく、80質量部以上用いることがより好ましい。
【0052】
前記トリアリールメタン型化合物(A)、前記フェノール化合物(B)及び前記アルデヒド化合物(C)の反応モル比率[〔(A)+(B)〕/(C)]は、過剰な高分子量化(ゲル化)を抑制でき、レジスト用組成物として適当な分子量のフェノール性水酸基含有樹脂が得られることから、1/0.5〜1/1.2の範囲であることが好ましく、1/0.6〜1/0.9の範囲であることがより好ましい。
【0053】
前記その他のフェノール性水酸基含有化合物(E)を併用する場合には、フェノール性水酸基含有化合物原料の合計(P)と前記アルデヒド化合物(C)との反応モル比率[(P)/(C)]が、1/0.5〜1/1.2の範囲であることが好ましく、1/0.6〜1/0.9の範囲であることがより好ましい。
【0054】
前記トリアリールメタン型化合物(A)、前記フェノール化合物(B)及び前記アルデヒド化合物(C)の反応は、酸触媒条件下で行うことが好ましい。ここで用いる酸触媒は、例えば、酢酸、シュウ酸、硫酸、塩酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、酢酸マンガン等が挙げられる。これらの酸触媒は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これらの中でも、触媒活性に優れる点から硫酸、パラトルエンスルホン酸が好ましい。
【0055】
前記トリアリールメタン型化合物(A)、前記フェノール化合物(B)及び前記アルデヒド化合物(C)の反応は、必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。ここで用いる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のポリオール;2−エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトンなどが挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒として用いても良い。
【0056】
前記トリアリールメタン型化合物(A)、前記フェノール化合物(B)及び前記アルデヒド化合物(C)の反応は、例えば、60〜140℃の温度範囲で、0.5〜20時間かけて行う。
【0057】
反応終了後は、反応生成物に水を加えて再沈殿操作を行うなどして、ノボラック樹脂中間体(M)を得ることが出来る。このようにして得られるノボラック樹脂中間体(M)の重量平均分子量(Mw)は、現像性、耐熱性及び耐クラック性のバランスに優れ、レジスト材料に好適なフェノール性水酸基含有樹脂が得られることから3,000〜50,000の範囲であることが好ましくい。また、フェノール性水酸基含有樹脂の多分散度(Mw/Mn)は3〜10の範囲であることが好ましい。
【0058】
なお、本発明において重量平均分子量(Mw)及び多分散度(Mw/Mn)は、下記条件のGPCにて測定される値である。
[GPCの測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」
カラム:昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)
+昭和電工株式会社製「Shodex KF803」(8.0mmФ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF804」(8.0mmФ×300mm)
カラム温度:40℃
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.30」
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料:樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
標準試料:下記単分散ポリスチレン
(標準試料:単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
【0059】
炭素原子数8〜24のアルケン化合物(D)は、前記ノボラック樹脂中間体(M)と反応し得るエチレン性二重結合部位を有していれば、それ以外の分子構造は特に限定されず、例えば、下記構造式(6)
【0060】
【化9】
(式中R
6は炭素原子数6〜22の脂肪族炭化水素基である。)
で表される化合物が挙げられる。炭素原子数8〜24のアルケン化合物(D)は一種類を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0061】
前記構造式(6)中のR
6は、炭素原子数6〜22の脂肪族炭化水素基であれば、直鎖型のもの、分岐構造を有するもののどちらでも良く、また、構造中に不飽和基を有するもの、有さないもののどちらでも良い。中でも、耐クラック性に特に優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、R
6は直鎖のアルキル基であることが好ましく、その炭素原子数は6〜18の範囲であることが特に好ましい。
【0062】
前記ノボラック樹脂中間体(M)と炭素原子数8〜24のアルケン化合物(D)との反応割合は、現像性、耐熱性、耐クラック性のバランスに優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、ノボラック樹脂中間体(M)と炭素原子数8〜24のアルケン化合物(D)との合計質量に対し、炭素原子数8〜24のアルケン化合物(D)が0.5〜30質量%となる割合であることが好ましい。
【0063】
前記ノボラック樹脂中間体(M)と炭素原子数8〜24のアルケン化合物(D)との反応は、酸触媒条件下で行うことが好ましい。ここで用いる酸触媒は、例えば、酢酸、シュウ酸、硫酸、塩酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、酢酸マンガン等が挙げられる。これらの酸触媒は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これらの中でも、触媒活性に優れる点から硫酸が好ましい。
【0064】
前記ノボラック樹脂中間体(M)と炭素原子数8〜24のアルケン化合物(D)との反応は、必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。ここで用いる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のポリオール;2−エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトンなどが挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒として用いても良い。
【0065】
前記ノボラック樹脂中間体(M)と炭素原子数8〜24のアルケン化合物(D)との反応は、例えば、60〜140℃の温度範囲で、0.5〜20時間かけて行う。
【0066】
反応終了後は、反応生成物に水を加えて再沈殿操作を行い、適宜有機溶剤等で洗浄するなどして、目的のフェノール性水酸基含有樹脂を得ることが出来る。このようにして得られるフェノール性水酸基含有樹脂の重量平均分子量(Mw)は、現像性、耐熱性及び耐クラック性のバランスに優れ、レジスト材料に好適なものとなることから3,500〜50,000の範囲であることが好ましくい。また、フェノール性水酸基含有樹脂の多分散度(Mw/Mn)は3〜10の範囲であることが好ましい。
【0067】
以上詳述した本発明のフェノール性水酸基含有樹脂は、現像性、耐熱性及び耐クラック性のバランスに優れる特徴を有することから、特にレジスト材料として有用であるが、汎用有機溶剤への溶解性に優れる等、扱いも容易であることから、塗料や接着剤、プリント配線基板等の各種の電気・電子部材用途等、多種多様な用途に用いることが出来る。本発明のフェノール性水酸基含有樹脂をレジスト材料に用いる場合、その具体的な用途は特に限定されず、厚膜用途やレジスト下層膜、レジスト永久膜用途等にも好適に用いることができる。
【0068】
本発明の感光性組成物は、前記本発明のフェノール性水酸基含有樹脂と感光剤とを必須の成分として含有する。前記感光剤は、例えば、キノンジアジド基を有する化合物が挙げられる。キノンジアジド基を有する化合物の具体例としては、例えば、芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物と、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸等のキノンジアジド基を有するスルホン酸或いはそのハライドとの完全エステル化合物、部分エステル化合物、アミド化物又は部分アミド化物などが挙げられる。
【0069】
前記芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物は、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシ−2’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン化合物;
【0070】
ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、3,3’−ジメチル−{1−[4−〔2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール等のビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン化合物;
【0071】
トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン等のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン化合物又はそのメチル置換体;
【0072】
ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタンなどの、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン化合物又はそのメチル置換体等が挙げられる。これらの感光剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0073】
本発明の感光性組成物における前記感光剤の配合量は、光感度に優れる感光性組成物となることから、感光性組成物の樹脂固形分の合計100質量部に対し、5〜50質量部となる割合であることが好ましい。
【0074】
本発明の感光性組成物は、前記本発明のフェノール性水酸基含有樹脂以外に、その他の樹脂(X)を併用しても良い。ここで用いるその他の樹脂(X)は、例えば、各種のノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン等の脂環式ジエン化合物とフェノール化合物との付加重合樹脂、フェノール性水酸基含有化合物とアルコキシ基含有芳香族化合物との変性ノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び各種のビニル重合体等が挙げられる。
【0075】
前記各種のノボラック樹脂は、より具体的には、フェノール、クレゾールやキシレノール等のアルキルフェノール、フェニルフェノール、レゾルシノール、ビフェニル、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有化合物と、アルデヒド化合物とを酸触媒条件下で反応させて得られる重合体が挙げられる。
【0076】
前記各種のビニル重合体は、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート等のビニル化合物の単独重合体或いはこれらの共重合体が挙げられる。
【0077】
これらその他の樹脂を用いる場合、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂とその他の樹脂(X)との配合割合は、用途に応じて任意に設定することが出来るが、本発明が奏する効果がより顕著に発現することから、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂100質量部に対し、その他の樹脂(X)が0.5〜100質量部となる割合であることが好ましい。
【0078】
また、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂の光感度に優れる特徴を活かして、これを感度向上剤として用いる場合には、前記その他の樹脂(X)100質量部に対し、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂が3〜80質量部の範囲であることが好ましい。
【0079】
本発明の感光性組成物は、レジスト用途に用いた場合の製膜性やパターンの密着性の向上等の目的で界面活性剤を含有していても良い。ここで用いる界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル化合物、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル化合物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル化合物等のノニオン系界面活性剤;フルオロ脂肪族基を有する重合性単量体と[ポリ(オキシアルキレン)](メタ)アクリレートとの共重合体など分子構造中にフッ素原子を有するフッ素系界面活性剤;分子構造中にシリコーン構造部位を有するシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0080】
これらの界面活性剤の配合量は、本発明の感光性組成物中の樹脂固形分の合計100質量部に対し0.001〜2質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0081】
本発明の感光性組成物をレジスト用途に用いる場合には、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂、感光剤の他、更に必要に応じてその他の樹脂(X)や界面活性剤、染料、充填材、架橋剤、溶解促進剤など各種の添加剤を加え、有機溶剤に溶解することにより感光性のレジスト材料とすることができる。当該レジスト材料は、これをそのまま塗材として用いても良いし、レジスト材料を支持フィルム上に塗布して脱溶剤させたものをレジストフィルムとして用いても良い。レジストフィルムとして用いる際の支持フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが挙げられ、単層フィルムでも複数の積層フィルムでも良い。また、該支持フィルムの表面はコロナ処理されたものや剥離剤が塗布されたものでも良い。
【0082】
前記有機溶剤の種類は特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジアルキレングリコールジアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン化合物;ジオキサン等の環式エーテル;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル化合物が挙げられる、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0083】
本発明のレジスト材料は上記各成分を配合し、攪拌機等を用いて混合することにより調整できる。また、レジスト材料が充填材や顔料を含有する場合には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散或いは混合して調整することが出来る。
【0084】
前記感光性のレジスト材料を用いたフォトリソグラフィーの方法は、例えば、シリコン基板フォトリソグラフィーを行う対象物上にレジスト材料を塗布し、60〜150℃の温度条件でプリベークする。このときの塗布方法は、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターブレードコート等の何れの方法でも良い。本発明のレジスト材料をポジ型として用いる場合には、目的とするレジストパターンを所定のマスクを通じて露光し、露光した箇所をアルカリ現像液にて溶解することにより、レジストパターンを形成する。本発明のレジスト材料は、露光部のアルカリ溶解性と、非露光部の耐アルカリ溶解性とが共に高いことから、解像度に優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0085】
本発明の硬化性組成物は、前記本発明のフェノール性水酸基含有樹脂と、硬化剤とを必須の成分として含有する。また、前記本発明のフェノール性水酸基含有樹脂以外に、その他の樹脂(Y)を併用しても良い。ここで用いるその他の樹脂(Y)は、例えば、各種のノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン等の脂環式ジエン化合物とフェノール化合物との付加重合樹脂、フェノール性水酸基含有化合物とアルコキシ基含有芳香族化合物との変性ノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び各種のビニル重合体等が挙げられる。
【0086】
前記各種のノボラック樹脂は、より具体的には、フェノールェノール、クレゾールやキシレノール等のアルキルフェノール、フェニルフェノール、レゾルシノール、ビフェニル、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有化合物と、アルデヒド化合物とを酸触媒条件下で反応させて得られる重合体が挙げられる。
【0087】
前記各種のビニル重合体は、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート等のビニル化合物の単独重合体或いはこれらの共重合体が挙げられる。
【0088】
これらその他の樹脂を用いる場合、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂とその他の樹脂(Y)との配合割合は、用途に応じて任意に設定することが出来るが、本発明が奏する効果がより顕著に発現することから、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂100質量部に対し、その他の樹脂(Y)が0.5〜100質量部となる割合であることが好ましい。
【0089】
本発明で用いる硬化剤は、前記本発明のフェノール性水酸基含有樹脂と硬化反応を生じ得る化合物であれば特に限定なく、様々な化合物を用いることができる。また、本発明の硬化性組成物の硬化方法は特に限定されず、硬化剤の種類や、後述する硬化促進剤の種類等に応じて熱硬化や光硬化など、適当な方法で硬化させることができる。熱硬化における加熱温度や時間、光硬化における光線の種類や露光時間等の硬化条件は、硬化剤の種類や、後述する硬化促進剤の種類等に応じて適宜調節される。
【0090】
前記硬化剤の具体例としては、例えば、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、レゾール樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基等の2重結合を含む化合物、酸無水物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0091】
前記メラミン化合物は、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1〜6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1〜6個がアシロキシメチル化した化合物等が挙げられる。
【0092】
前記グアナミン化合物は、例えば、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物等が挙げられる。
【0093】
前記グリコールウリル化合物は、例えば、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル等が挙げられる。
【0094】
前記ウレア化合物は、例えば、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素等が挙げられる。
【0095】
前記レゾール樹脂は、例えば、フェノール、クレゾールやキシレノール等のアルキルフェノール、フェニルフェノール、レゾルシノール、ビフェニル、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有化合物と、アルデヒド化合物とをアルカリ性触媒条件下で反応させて得られる重合体が挙げられる。
【0096】
前記エポキシ化合物は、例えば、ジグリシジルオキシナフタレン、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)アルカン、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、リン原子含有エポキシ樹脂、フェノール性水酸基含有化合物とアルコキシ基含有芳香族化合物との共縮合物のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0097】
前記イソシアネート化合物は、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0098】
前記アジド化合物は、例えば、1,1’−ビフェニル−4,4’−ビスアジド、4,4’−メチリデンビスアジド、4,4’−オキシビスアジド等が挙げられる。
【0099】
前記アルケニルエーテル基等の2重結合を含む化合物は、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0100】
前記酸無水物は例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(イソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等の芳香族酸無水物;無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水ドデセニルコハク酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0101】
これらの中でも、硬化性や硬化物における耐熱性に優れる硬化性組成物となることから、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、レゾール樹脂が好ましく、グリコールウリル化合物が特に好ましい。
【0102】
本発明の硬化性組成物における前記硬化剤の配合量は、硬化性に優れる組成物となることから、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂とその他の樹脂(X)との合計100質量部に対し、0.5〜50質量部となる割合であることが好ましい。
【0103】
本発明の硬化性組成物をレジスト用途に用いる場合には、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂、硬化剤の他、更に必要に応じてその他の樹脂(Y)、界面活性剤や染料、充填材、架橋剤、溶解促進剤など各種の添加剤を加え、有機溶剤に溶解することにより硬化性のレジスト材料とすることができる。
【0104】
前記有機溶剤の種類は特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジアルキレングリコールジアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン化合物;ジオキサン等の環式エーテル;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル化合物が挙げられる、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0105】
前記レジスト材料は上記各成分を配合し、攪拌機等を用いて混合することにより調整できる。また、レジスト材料が充填材や顔料を含有する場合には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散或いは混合して調整することが出来る。
【0106】
硬化性のレジスト材料は、特にレジスト下層膜用途に好適に用いることができる。前記レジスト材料からレジスト下層膜を作製するには、例えば、シリコン基板などフォトリソグラフィーを行う対象物上に前記レジスト材料を塗布し、100〜200℃の温度条件下で乾燥させた後、更に250〜400℃の温度条件下で加熱硬化させるなどの方法によりレジスト下層膜を形成する。次いで、この下層膜上で通常のフォトリソグラフィー操作を行ってレジストパターンを形成し、ハロゲン系プラズマガス等でドライエッチング処理することにより、多層レジスト法によるレジストパターンを形成することが出来る。
【実施例】
【0107】
以下に具体的な例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。なお、合成した樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び多分散度(Mw/Mn)は、下記のGPCの測定条件で測定したものである。
[GPCの測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」
カラム:昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)
+昭和電工株式会社製「Shodex KF803」(8.0mmФ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF804」(8.0mmФ×300mm)
カラム温度:40℃
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.30」
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料:樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの
注入量:0.1mL
標準試料:下記単分散ポリスチレン
(標準試料:単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
【0108】
また、
13C−NMRスペクトルの測定は、日本電子(株)製「AL−400」を用い、試料のDMSO−d
6溶液を分析して構造解析を行った。以下に、
13C−NMRスペクトルの測定条件を示す。
[
13C−NMRスペクトル測定条件]
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
パルス角度:45℃パルス
試料濃度:30wt%
積算回数:10000回
【0109】
製造例1 トリアリールメタン型化合物(A−1)の製造
冷却管を設置した3000mlの4口フラスコに、2,5−キシレノール586.4g、4−ヒドロキシベンズアルデヒド244gを仕込み、2−エトキシエタノール1000mlに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸30mlを添加した後、マントルヒーターで100℃まで加熱し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた溶液に水を加えて粗成生物を再沈殿させた。粗生成物をアセトンに再溶解し、さらに水で再沈殿させた後、沈殿物を濾別して真空乾燥を行い、白色結晶のトリアリールメタン型化合物(A−1)421gを得た。
13C−NMRにて下記構造式で表される化合物の生成を確認した。GPCチャート図から算出される純度はGPC純度98.2%であった。トリアリールメタン型化合物(A−1)のGPCチャートを
図1に、
13C−NMRチャートを
図2に示す。
【0110】
【化10】
【0111】
製造例2 ノボラック樹脂中間体(M−1)の製造
冷却管を設置した3000mlの4口フラスコにトリアリールメタン型化合物(A−1)174g、m−クレゾール54gを仕込んだ後、2−エトキシエタノール500ml、酢酸500mlに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸50mlを添加した後、92%パラホルムアルデヒド33gを仕込んだ。オイルバスで80℃まで加熱し、10時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、得られた溶液に水を加えて粗成生物を再沈殿させた。粗生成物をアセトンに再溶解し、さらに水で再沈殿させた後、沈殿物を濾別して真空乾燥を行い、赤色粉末のノボラック樹脂中間体(M−1)213gを得た。ノボラック樹脂中間体(M−1)の数平均分子量(Mn)は1,937、重量平均分子量(Mw)は12,822、多分散度(Mw/Mn)は6.62であった。
【0112】
製造例3 ノボラック樹脂中間体(M−2)の製造
冷却管を設置した3000mlの4口フラスコにトリアリールメタン型化合物(A−1)249g、m−クレゾール31gを仕込んだ後、2−エトキシエタノール500ml、酢酸500mlに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸50mlを添加した後、92%パラホルムアルデヒド33gを仕込んだ。オイルバスで80℃まで加熱し、10時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、得られた溶液に水を加えて粗成生物を再沈殿させた。粗生成物をアセトンに再溶解し、さらに水で再沈殿させた後、沈殿物を濾別して真空乾燥を行い、赤色粉末のノボラック樹脂中間体(M−2)266gを得た。ノボラック樹脂中間体(M−2)の数平均分子量(Mn)は2,018、重量平均分子量(Mw)は11,486、多分散度(Mw/Mn)は5.69であった。
【0113】
製造例4 ノボラック樹脂中間体(M−3)の製造
冷却管を設置した3000mlの4口フラスコにトリアリールメタン型化合物(A−1)174g、m−クレゾール54gを仕込んだ後、2−エトキシエタノール500ml、酢酸500mlに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸50mlを添加した後、92%パラホルムアルデヒド30gを仕込んだ。オイルバスで80℃まで加熱し、8時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、得られた溶液に水を加えて粗成生物を再沈殿させた。粗生成物をアセトンに再溶解し、さらに水で再沈殿させた後、沈殿物を濾別して真空乾燥を行い、赤色粉末のノボラック樹脂中間体(M−3)218gを得た。ノボラック樹脂中間体(M−3)の数平均分子量(Mn)は1,538、重量平均分子量(Mw)は6,508、多分散度(Mw/Mn)は4.23であった。
【0114】
実施例1 フェノール性水酸基含有樹脂(1)の製造
冷却管を設置した300mlの4口フラスコにノボラック樹脂中間体(M−1)30g、1−オクテン3.0gを仕込んだ後、2−エトキシエタノール100mlに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸10mlを添加した後、オイルバスで80℃まで加熱し、6時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、得られた溶液に水を加えて粗成生物を再沈殿させた。次いで、粗生成物をメタノールに溶解させた後、ヘキサンを加えて再沈殿させ、沈殿物を濾別して真空乾燥を行い、赤色粉末のフェノール性水酸基含有樹脂(1)29gを得た。フェノール性水酸基含有樹脂(1)の数平均分子量(Mn)は1,827、重量平均分子量(Mw)は12,209、多分散度(Mw/Mn)は6.68であった。フェノール性水酸基含有樹脂(1)のGPCチャートを
図3に示す。
【0115】
実施例2 フェノール性水酸基含有樹脂(2)の製造
1−オクテン3.0gを1−オクタデセン1.5に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、赤色粉末のフェノール性水酸基含有樹脂(2)27gを得た。フェノール性水酸基含有樹脂(2)の数平均分子量(Mn)は1,860、重量平均分子量(Mw)は13,740、多分散度(Mw/Mn)は7.39であった。フェノール性水酸基含有樹脂(2)のGPCチャートを
図4に示す。
【0116】
実施例3 フェノール性水酸基含有樹脂(3)の製造
ノボラック樹脂中間体(M−1)30gをノボラック樹脂中間体(M−2)30gに変更し、1−オクテン3.0gを1−ドデセン3.0gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、赤色粉末のフェノール性水酸基含有樹脂(3)30gを得た。フェノール性水酸基含有樹脂(3))の数平均分子量(Mn)は2,010、重量平均分子量(Mw)は10,756、多分散度(Mw/Mn)は5.35であった。フェノール性水酸基含有樹脂(3)のGPCチャートを
図5に示す。
【0117】
実施例4 フェノール性水酸基含有樹脂(4)の製造
ノボラック樹脂中間体(M−1)30gをノボラック樹脂中間体(M−3)30gに変更し、1−オクテン3.0gを1−ドデセン1.5gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、赤色粉末のフェノール性水酸基含有樹脂(4)28gを得た。フェノール性水酸基含有樹脂(4)の数平均分子量(Mn)は1,572、重量平均分子量(Mw)は6,784、多分散度(Mw/Mn)は4.32であった。フェノール性水酸基含有樹脂(4)のGPCチャートを
図6に示す。
【0118】
実施例5 フェノール性水酸基含有樹脂(5)の製造
ノボラック樹脂中間体(M−1)30gをノボラック樹脂中間体(M−3)30gに変更し、1−オクテン3.0gを出光興産株式会社製「リニアレン148」[1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンの35:37:28(モル比)混合物]1.5gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、赤色粉末のフェノール性水酸基含有樹脂(5)29gを得た。フェノール性水酸基含有樹脂(5)の数平均分子量(Mn)は1,586、重量平均分子量(Mw)は6,829、多分散度(Mw/Mn)は4.31であった。フェノール性水酸基含有樹脂(4)のGPCチャートを
図7に示す。
【0119】
比較製造例1 フェノール性水酸基含有樹脂(1’)の製造
攪拌機、温度計を備えた2Lの4つ口フラスコに、m−クレゾール648g、p−クレゾール432g、シュウ酸2.5g、42%ホルムアルデヒド492gを仕込み、100℃まで加熱して反応させた。常圧で200℃まで加熱して脱水及び蒸留し、更に230℃で6時間減圧蒸留を行い、淡黄色固形のフェノール性水酸基含有樹脂(1’)736gを得た。フェノール性水酸基含有樹脂(1’)の数平均分子量(Mn)は1,450、重量平均分子量(Mw)は10,316、多分散度(Mw/Mn)は7.12であった。
【0120】
比較製造例2 フェノール性水酸基含有樹脂(2’)の製造
冷却管を設置した300mlの4口フラスコにメタクレゾール13.0g、パラクレゾール8.6g、3−ペンタデシルフェノール6.1gを仕込んだ後、2−エトキシエタノール15ml、酢酸15mlに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸10mlを添加した後、92%パラホルムアルデヒド6.5gを仕込んだ。オイルバスで80℃まで加熱し、10時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、得られた溶液に水を加えて粗成生物を再沈殿させた。粗生成物をアセトンに再溶解し、さらに水で再沈殿させた後、沈殿物を濾別して真空乾燥を行い、黄色粉末のフェノール性水酸基含有樹脂(2’)24.6gを得た。フェノール性水酸基含有樹脂(2’)の数平均分子量(Mn)は1,792、重量平均分子量(Mw)は11,701、多分散度(Mw/Mn)は6.53であった。
【0121】
実施例6〜10及び比較例1、2
実施例1〜5、比較製造例1、2で得たフェノール性水酸基含有樹脂について、下記の要領で評価した。結果を表1に示す。
【0122】
感光性組成物の調整
前記フェノール性水酸基含有樹脂28質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60質量部に溶解させ、この溶液に感光剤12質量部を加えて溶解させた。これを0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、感光性組成物を得た。
感光剤は東洋合成工業株式会社製「P−200」(4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール1モルと1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド2モルとの縮合物)を用いた。
【0123】
耐熱性試験用組成物の調整
前記フェノール性水酸基含有樹脂28質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60質量部に溶解させ、これを0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、耐熱性試験用組成物を得た。
【0124】
アルカリ現像性[ADR(Å/s)]の評価
先で得た感光性組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。このウェハーを2枚用意し、一方を「露光なしサンプル」とした。他方を「露光有サンプル」としてghi線ランプ(ウシオ電機株式会社製「マルチライト」)を用いて100mJ/cm
2のghi線を照射したのち、140℃、60秒間の条件で加熱処理を行った。
「露光なしサンプル」と「露光有サンプル」の両方をアルカリ現像液(2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)に60秒間浸漬した後、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。各サンプルの現像液浸漬前後の膜厚を測定し、その差分を60で除した値をアルカリ現像性[ADR(Å/s)]とした。
【0125】
光感度の評価
先で得た感光性組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。このウェハー上にラインアンドスペースが1:1であり、ライン幅が1〜10μmまで1μmごとに設定されたレジストパターン対応のマスクを密着させた後、ghi線ランプ(ウシオ電機株式会社製「マルチライト」)を用いてghi線を照射し、140℃、60秒間の条件で加熱処理を行った。次いで、アルカリ現像液(2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)に60秒間浸漬した後、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。
ghi線露光量を30mJ/cm
2から10mJ/cm
2毎に増加させた場合の、ライン幅3μmを忠実に再現することのできる露光量(Eop露光量)を評価した。
【0126】
解像度の評価
先で得た感光性組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。得られたウェハー上にフォトマスクを乗せ、先のアルカリ現像性評価の場合と同様の方法でghi線200mJ/cm
2を照射し、アルカリ現像操作を行った。レーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VK−X200」)を用いてパターン状態を確認し、L/S=5μmで解像できているものを○、L/S=5μmで解像できていないものを×として評価した。
【0127】
耐熱性評価
先で得た耐熱性試験用組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。得られたウェハーより樹脂分をかきとり、そのガラス転移温度(Tg)を測定した。ガラス転移温度(Tg)の測定は示差走査熱量計(DSC)(株式会社TAインスツルメント製「Q100」)を用いて、窒素雰囲気下、温度範囲−100〜250℃、昇温温度10℃/分の条件で行った。
【0128】
耐クラック性の評価
先で得た感光性組成物を5インチシリコンウェハー上にスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で300秒乾燥させた。この塗工操作を繰り返し、塗膜の厚さが50μmのウェハーと、塗膜の厚さが100μのウェハーとを作製した。ウェハーの表面をレーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VK−X200」)を用いて観察し、クラックが無い場合を○、クラックがある場合を×として評価した。
【0129】
柔軟性の評価
先で得た感光性組成物を厚さ50μmのポリイミドフィルム上に約5μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で300秒乾燥させた。得られた積層フィルムを180度に折り曲げて、折り曲げ箇所の状態をレーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VK−X200」)を用いて観察し、クラックが無い場合を○、クラックがある場合を×として評価した。
【0130】
【表1】
【0131】
実施例11〜15及び比較例3、4
実施例1〜5、比較製造例1、2で得たフェノール性水酸基含有樹脂について、下記の要領で評価した。結果を表2に示す。
【0132】
硬化性組成物の調整
前記フェノール性水酸基含有樹脂16質量部、硬化剤(東京化成工業株式会社製「1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル」)4質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30質量部に溶解させ、これを0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、硬化性組成物を得た。
【0133】
アルカリ現像性[ADR(Å/s)]の評価
先で得た硬化性組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。このウェハーを2枚用意し、一方を「未硬化サンプル」とした。他方を「硬化サンプル」として160℃、60秒間の条件で加熱処理を行った。
「未硬化サンプル」と「硬化サンプル」の両方をアルカリ現像液(2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)に60秒間浸漬した後、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。各サンプルの現像液浸漬前後の膜厚を測定し、その差分を60で除した値をアルカリ現像性[ADR(Å/s)]とした。
【0134】
耐熱性評価
先で得た硬化性組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた後、160℃、60秒間の条件で加熱処理を行った。得られたウェハーより樹脂分をかきとり、そのガラス転移温度(Tg)を測定した。ガラス転移温度(Tg)の測定は示差走査熱量計(DSC)(株式会社TAインスツルメント製「Q100」)を用いて、窒素雰囲気下、温度範囲−100〜250℃、昇温温度10℃/分の条件で行った。
【0135】
耐クラック性
先で得た硬化性組成物を5インチシリコンウェハー上にスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で300秒乾燥させた。この塗工操作を繰り返し、塗膜の厚さが50μmのウェハーと、塗膜の厚さが100μのウェハーとを作製した。ウェハーの表面をレーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VK−X200」)を用いて観察し、クラックが無い場合を○、クラックがある場合を×として評価した。
【0136】
【表2】
耐熱性やアルカリ現像性に加え、厚膜形成時の耐クラック性にも優れるフェノール性水酸基含有樹脂、これを含有する感光性組成物、硬化性組成物、及びレジスト材料を提供することを目的として、下記構造式(1)又は(2)