(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イグニッションスイッチがOFF状態のときに、前記2系統以上の前記回転情報検出機能部に対して、前記車両の備えるバッテリからの電力を間欠的に供給する電源制御部を備える請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
前記電源制御部は、前記イグニッションスイッチがOFF状態のときに、予め設定した設定回転数以上の前記電動モータのモータ回転数を検出した場合に、前記バッテリの電力を間欠的に供給している状態から連続で供給する状態へと切り替える請求項2に記載のモータ駆動制御装置。
前記電源制御部は、前記イグニッションスイッチがOFF状態のときに、前記2系統以上の前記回転情報検出機能部における、前記回転位置情報検出部、前記回転位置情報診断部、及び前記回転変化量計測部に対して前記バッテリからの電力を間欠供給し、他の構成部への電力の供給を遮断する請求項2又は3に記載のモータ駆動制御装置。
前記2系統以上の前記回転情報検出機能部は、前記回転位置情報に対応するアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器と、該AD変換器にアナログの監視電位信号を入力する監視電位信号入力部と、前記AD変換器でデジタル信号に変換された前記監視電位信号を予め設定した比較電位と比較して、該比較結果に基づき前記AD変換器に異常が生じているか否かを診断するAD変換器診断部とを備える請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の第1実施形態及びその変形例1〜4を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものも含まれており、部材ないし部分の縦横の寸法や縮尺は実際のものとは異なる場合があることに留意すべきである。従って、具体的な寸法や縮尺は以下の説明を参酌して判断すべき場合がある。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す第1実施形態及びその変形例1〜4は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(第1実施形態)
(全体構成)
第1実施形態に係る車両1は、
図1に示すように、左右の転舵輪となる前輪4FR及び4FLと後輪4RR及び4RLを備えている。前輪4FR及び4FLは、電動パワーステアリング装置3によって転舵される。
電動パワーステアリング装置3は、ステアリングホイール31と、ステアリングシャフト32と、第1のユニバーサルジョイント34と、ロアシャフト35と、第2のユニバーサルジョイント36とを備える。
電動パワーステアリング装置3は、更に、ピニオンシャフト37と、ステアリングギヤ38と、タイロッド39と、ナックルアーム40と、トルクセンサ41とを備える。
ステアリングホイール31に運転者から作用された操舵力は、ステアリングシャフト32に伝達される。このステアリングシャフト32は、入力軸32aと出力軸32bとを有する。入力軸32aの一端はステアリングホイール31に連結され、他端はトルクセンサ41を介して出力軸32bの一端に連結されている。
【0011】
そして、出力軸32bに伝達された操舵力は、第1のユニバーサルジョイント34を介してロアシャフト35に伝達され、さらに、第2のユニバーサルジョイント36を介してピニオンシャフト37に伝達される。このピニオンシャフト37に伝達された操舵力はステアリングギヤ38を介してタイロッド39に伝達される。更に、このタイロッド39に伝達された操舵力はナックルアーム40に伝達され、前輪4FRおよび4FLを転舵させる。
ここで、ステアリングギヤ38は、ピニオンシャフト37に連結されたピニオン38aとこのピニオン38aに噛合するラック38bとを有するラックアンドピニオン形式に構成されている。したがって、ステアリングギヤ38は、ピニオン38aに伝達された回転運動をラック38bで車幅方向の直進運動に変換している。
【0012】
トルクセンサ41は、ステアリングホイール31に付与されて入力軸32aに伝達された操舵トルクTを検出する。
また、ステアリングシャフト32の出力軸32bには、操舵補助力を出力軸32bに伝達する操舵補助機構42が連結されている。
操舵補助機構42は、出力軸32bに連結したウォームギヤ機構で構成される減速ギヤ43と、この減速ギヤ43に連結された操舵補助力を発生する電動モータ44と、電動モータ44のハウジングに固定支持されたモータ駆動制御装置45とを備えている。
【0013】
電動モータ44は、3相ブラシレスモータであり、図示しない環状のモータロータと環状のモータステータとを備えている。モータステータは、径方向内側に突出する複数の極歯を円周方向に等間隔に備えて構成され、各極歯には励磁用コイルが巻き回されている。そして、モータステータの内側に、モータロータが同軸に配設されている。モータロータは、モータステータの極歯と僅かの空隙(エアギャップ)をもって対向しかつ外周面に円周方向に等間隔に設けられた複数の磁石を備えて構成されている。
モータロータはモータ回転軸に固定されており、モータステータのコイルにモータ駆動制御装置45を介して3相交流電流を流すことでモータステータの各歯が所定の順序に励磁されてモータロータが回転し、この回転に伴ってモータ回転軸が回転する。
【0014】
そして、モータ回転軸が回転すると、その回転力(操舵補助力)が減速ギヤ43を介してステアリングシャフト32に伝達されステアリングシャフト32が回転する。一方、ステアリングホイール31が操舵されてステアリングシャフト32が回転すると、その回転力が減速ギヤ43を介してモータ回転軸に伝達されモータロータが回転する。すなわち、電動モータ44の回転位置とステアリングシャフト32の回転位置とは対応関係があり、いずれか一方の回転情報から他方の回転位置を算出することが可能である。
【0015】
モータ駆動制御装置45は、車載電源であるバッテリ61から電源供給されることによって作動する。ここで、バッテリ61の負極は接地され、その正極はエンジン始動を行うイグニッションスイッチ62(以下、「IGスイッチ62」と記載する場合がある)を介してモータ駆動制御装置45に接続されると共に、IGスイッチ62を介さず直接、モータ駆動制御装置45に接続されている。
また、モータ駆動制御装置45には、
図1に示すように、トルクセンサ41で検出された操舵トルクTと、車速センサ60で検出された車速Vとが入力されている。
【0016】
(モータ駆動制御装置45の構成)
モータ駆動制御装置45は、
図2に示すように、モータ回転センサ46と、回転検出装置47と、コントローラ48と、モータ駆動回路49と、電源制御部50とを備えている。
モータ回転センサ46は、電動モータ44の回転位置情報を検出するための磁気式のセンサであり、
図3に示すように、2系統の回転位置情報検出部である、第1の回転位置情報検出部46b及び第2の回転位置情報検出部46cを備えている。なお、モータ回転センサ46の詳細な構成については後述する。
【0017】
図2に戻って、回転検出装置47には、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cで検出された磁気検出信号である、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)が入力されている。
以下、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)は、個別に「sinθ1」、「cosθ1」、「sinθ2」、「cosθ2」と略記する場合がある。
【0018】
回転検出装置47は、
図4に示すように、入力された第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)に基づき、これらモータ回転位置信号の異常診断処理、モータ回転角θmの算出処理、モータ回転位置の変化量の測定処理等を行う、2系統の第1及び第2回転情報検出部47a及び47bを備えている。なお、回転検出装置47の詳細な構成については後述する。
また、詳細は後述するが、第1実施形態の回転検出装置47は、モータ回転位置の変化量の測定処理をIGスイッチ62がOFF状態中も継続して行うように構成されている。
【0019】
図2に戻って、コントローラ48は、操舵トルクTと、車速Vと、回転検出装置47からのモータ回転角θm及びモータ回転位置の変化量(後述するカウント値Cs及びCc)とに基づきモータ駆動回路49を制御して電動モータ44を駆動制御する。
具体的に、コントローラ48は、操舵補助制御を行う場合に、操舵トルクT、車速V及びモータ回転角θmに応じた操舵補助トルクを電動モータ44で発生するための操舵補助指令値(操舵補助トルク指令値)を公知の手順で算出し、算出した操舵補助指令値に基づき操舵補助制御のための第1の電流指令値Iref1を算出する。そして、算出した第1の電流指令値Iref1に基づきモータ駆動回路49を制御して、電動モータ44を駆動制御する。
【0020】
このとき、第1実施形態のコントローラ48は、回転検出装置47の2系統の第1及び第2回転情報検出部47a及び47bの各々の異常診断結果に基づき、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)に異常が生じているか否かを判定する。そして、いずれか一方に異常が生じていると判定した場合に、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)に基づき算出された第1モータ回転角θm1及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)に基づき算出された第2モータ回転角θm2のうち異常の生じていない方のモータ回転角に基づき操舵補助制御を行うように構成されている。
【0021】
一方、コントローラ48は、IGスイッチ62がON状態中に、回転検出装置47からのモータ回転角θmに基づきステアリングシャフト31の回転位置θs(以下、「ステアリング角度θs」と記載する場合がある)を算出(推定)する。
但し、第1実施形態のコントローラ48は、IGスイッチ62がOFF状態からON状態に切り替わったときは、予め不揮発性メモリ(不図示)に記憶したOFF状態となる直前のステアリング角度θs及びモータ回転位置の変化量(後述するカウント値Cs及びCc)と、ON状態に切り替わった直後のモータ回転位置の変化量とに基づき、OFF状態からON状態に切り替わったときのステアリング角度θsを算出する。
【0022】
そして、コントローラ48は、自動運転制御装置(不図示)からの指令に応じて、自動運転制御を行う場合に、自動運転制御装置からの目標操舵角θs*と、算出したステアリング角度θsと、回転検出装置47からのモータ回転角θmとに基づき自動運転制御のための第2の電流指令値Iref2を算出する。そして、算出した第2の電流指令値Iref2に基づきモータ駆動回路49を制御して、電動モータ44を駆動制御する。
モータ駆動回路49は、図示省略するが、3相インバータ回路を備え、コントローラ48からの駆動信号(例えばPWM信号)に基づき3相インバータ回路を駆動してモータ駆動電流を電動モータ44に供給する。
【0023】
電源制御部50は、バッテリ61と直接接続されていると共にIGスイッチ62とも接続されており、IGスイッチ62からのIGスイッチ62のON状態及びOFF状態を示す信号(以下、「IG信号」又は「IG」と記載する場合がある)が入力されている。そして、入力されたIG信号に基づき、IGスイッチ62がON状態であると判定すると、ON状態の間は、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cと回転検出装置47に対して、バッテリ61からの電力を連続で供給する。
以下、バッテリ61からの電力を連続で供給する電力供給状態を「通常供給状態」と記載する場合がある。
【0024】
一方、電源制御部50は、IGスイッチ62がOFF状態であると判定すると、OFF状態の間は、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cと回転検出装置47に対して、バッテリ61からの電力を予め設定した一定の間隔で間欠供給する。すなわち、間欠供給によって、IGスイッチがOFF状態時の電力消費量を低減するように構成されている。
【0025】
以下、バッテリ61からの電力を間欠供給する電力供給状態を「間欠供給状態」と記載する場合がある。
ここで、間欠供給する際の一定の間隔値は、バッテリ61の容量(暗電流)と、ステアリングホイール31の最大回転速度から決定する。すなわち、電力供給を行わない間隔が長すぎると、モータ回転位置の変化に追随できなくなる恐れがあるので、十分に追随できる間隔に決定する。
【0026】
(モータ回転センサ46の構成)
次に、
図3に基づき、モータ回転センサ46の具体的な構成について説明する。
第1実施形態のモータ回転センサ46は、
図3(a)に示すように、電動モータ44のモータステータ内に位置するモータ回転軸44aの減速ギヤ43側のステータ端部位置に設けられている。
具体的に、モータ回転センサ46は、
図3(b)に示すように、多極リング磁石46aと、第1の回転位置情報検出部46bと、第2の回転位置情報検出部46cとを備えている。
【0027】
多極リング磁石46aは、周方向に沿って外径面にS極とN極とが交互に連続するように着磁された円環形状(リング状)の多極磁石であり、モータ回転軸44aに固定支持されている。この多極リング磁石46aは、中央の貫通穴内にモータ回転軸44aを挿通させた状態でモータ回転軸44aと同心にモータステータの内側にモータ回転軸44aと同期回転可能に固定支持されている。これにより、モータ回転軸44aの回転に同期して多極リング磁石46aも回転する。
【0028】
なお、多極リング磁石46aは、正弦波着磁によって着磁されており、各磁極表面の磁束密度分布が正弦波状となっている。
第1の回転位置情報検出部46bは、第1磁気検出素子46d及び第2磁気検出素子46eを備えている。第1磁気検出素子46d及び第2磁気検出素子46eは、多極リング磁石46aの外周面に所定の空隙をもって対向して配置され、かつ多極リング磁石46aの周方向に沿って互いに電気角で90°の位相差となる間隔で並列して設けられている。
第2の回転位置情報検出部46cは、第3磁気検出素子46f及び第4磁気検出素子46gを備えている。第3磁気検出素子46f及び第4磁気検出素子46gは、多極リング磁石46aの外周面に所定の空隙をもって対向して配置され、かつ多極リング磁石46aの周方向に沿って互いに電気角で90°の位相差となる間隔で並列して設けられている。
【0029】
かかる構成によって、第1の回転位置情報検出部46bは、モータ回転軸44aの回転位置に応じて変化する多極リング磁石46aの磁束を正弦波及び余弦波の磁気検出信号(第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1))として検出することが可能である。更に、第2の回転位置情報検出部46cは、モータ回転軸44aの回転位置に応じて変化する多極リング磁石46aの磁束を正弦波及び余弦波の磁気検出信号(第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2))として検出することが可能である。なお、第1の回転位置情報検出部46b及び第2の回転位置情報検出部46cが正常時は、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)と、第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)とは一致する。
【0030】
すなわち、第1実施形態に係るモータ回転センサ46は、2系統の回転位置情報検出部を備えている。
なお、
図3(a)〜(b)に示すモータ回転センサ46は、多極リング磁石46aに対して、第1の回転位置情報検出部46bと第2の回転位置情報検出部46cとを、多極リング磁石46aの外周面に所定の空隙をもって対向して配置する構成としたが、この構成に限らない。
【0031】
例えば、
図3(c)のモータ回転センサ46’に示すように、第1の回転位置情報検出部46bと第2の回転位置情報検出部46cとを、多極リング磁石46aの軸方向の端面に所定の空隙をもって対向して配置する構成としてもよい。
また、モータ回転センサは、
図3(a)〜(c)に示す構成に限らず、例えば、
図3(d)に示すモータ回転センサ53を用いる構成としてもよい。
このモータ回転センサ53は、2極磁石53aと、第3の回転位置情報検出部53bとを備えている。
【0032】
2極磁石53aは、軸方向の一端側の面がS極とN極の2極に着磁された円板形状の磁石であり、着磁された面とは反対側の面の中央に設けられた凹部に、モータ回転軸44aの減速ギヤ43とは反対側の端部を2極磁石53aと同心となるように挿入した状態でモータ回転軸44aに固定支持されている。これにより、モータ回転軸44aの回転に同期して2極磁石53aも回転する。
第3の回転位置情報検出部53bは、2極磁石53aの軸方向の他端側の面と所定の空隙をもって対向配置されている。第3の回転位置情報検出部53bは、モータ回転センサ46と同様に2系統の回転位置情報検出部を備えており(図示略)、モータ回転センサ46と同様に第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)を検出可能である。
【0033】
(回転検出装置47の構成)
次に、
図4に基づき、回転検出装置47の具体的な構成について説明する。
回転検出装置47は、
図4に示すように、第1回転情報検出部47aと、第2回転情報検出部47bとを備えている。
また、第1の回転位置情報検出部46bと第1回転情報検出部47aとから第1回転情報検出機能部51が構成され、第2の回転位置情報検出部46cと第2回転情報検出部47bとから第2回転情報検出機能部52が構成されている。すなわち、第1実施形態のモータ駆動制御装置45は、2系統の回転情報検出機能部を備えている。
第1回転情報検出部47aは、第1ADC(Analog-to-digital converter)471aと、第1診断部471bと、第1カウンタ部471cと、第1メモリ部471dと、第1回転角算出部471eと、第1出力判定部471fとを備えている。
【0034】
第1ADC471aは、第1回転位置情報検出部46bからのアナログの第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)が入力されると、これをデジタルの第1モータ回転位置信号である第1デジタル回転位置信号(sinθd1,cosθd1)に変換する。そして、この第1デジタル回転位置信号(sinθd1,cosθd1)を、第1診断部471b、第1カウンタ部471c及び第1回転角算出部471eにそれぞれ出力する。
以下、第1デジタル回転位置信号(sinθd1,cosθd1)を、「第1デジタル回転位置信号」、又は、個別に「sinθd1」、「cosθd1」と略記する場合がある。
【0035】
第1診断部471bは、第1デジタル回転位置信号に基づき、この第1デジタル回転位置信号に異常が発生しているか否かを診断する。そして、診断結果を示す第1診断結果フラグDR1を設定し、設定した第1診断結果フラグDR1を第1カウンタ部471c、第1メモリ部471d及び第1出力判定部471fにそれぞれ出力する。
具体的に、第1診断部471bは、以下の式(1)に基づき、第1デジタル回転位置信号の異常の有無を診断する。
sinθd
2+cosθd
2=1 ・・・(1)
すなわち、sin信号とcos信号との2乗を求めると、両者は位相が反転したのみの同波形となって、上式(1)が成立する。このことから、sinθd1及びcosθd1が正常であれば、その自乗値の和「sinθd1
2+cosθd1
2」は1となる。
【0036】
従って、sinθd1及びcosθd1の自乗値の和が「1」であれば、第1デジタル回転位置信号に異常が発生していない(正常である)と診断することが可能である。そして、「1」以外の数値になった場合に異常が発生していると診断することが可能である。
第1診断部471bは、正常と診断した場合に第1診断結果フラグDR1を「0」に設定し、異常と診断した場合に第1診断結果フラグDR1を「1」に設定する。
第1カウンタ部471cは、sinθd1及びcosθd1の象限毎にこれらの値をカウントし、そのカウント値である第1sinカウント値Cs1及び第1cosカウント値Cc1を第1メモリ部471dに出力する。
【0037】
以下、第1sinカウント値Cs1及び第1cosカウント値Cc1を、「第1カウント値Cs1及びCc1」と略記する場合がある。
また、第1カウンタ部471cは、第1診断部471bから入力された第1診断結果フラグDR1が「1」の場合に、その動作を停止するように構成されている。
また、第1カウンタ部471cは、1周のカウント数が設計的に定められることから、第1カウント値Cs1及びCc1に基づき回転回数情報も判別することが可能である。
第1メモリ部471dは、不揮発性のメモリ(図示略)を備え、第1カウンタ部471cから入力される第1カウント値Cs1及びCc1を不揮発性のメモリに記憶する。
【0038】
また、第1メモリ部471dは、第1診断部471bから入力された第1診断結果フラグDR1が「1」の場合に、その動作を停止するように構成されている。
第1回転角算出部471eは、第1ADC471aからの第1デジタル回転位置信号に基づき、第1モータ回転角θm1を算出する。そして、算出した第1モータ回転角θm1を第1出力判定部471fに出力する。
第1出力判定部471fは、第1診断部471bから入力された第1診断結果フラグDR1が「0」のときは、この第1診断結果フラグDR1と、第1回転角算出部471eから入力された第1モータ回転角θm1とをコントローラ48に出力する。また、IGスイッチ62がOFF状態からON状態になったときは、更に、第1メモリ部471dに記憶された第1カウント値Cs1及びCc1をコントローラ48に出力する。
【0039】
一方、第1出力判定部471fは、第1診断結果フラグDR1が「1」のときは、第1モータ回転角θm1と第1カウント値Cs1及びCc1との出力を停止し、第1診断結果フラグDR1のみをコントローラ48に出力する。
一方、第2回転情報検出部47bは、第2ADC472aと、第2診断部472bと、第2カウンタ部472cと、第2メモリ部472dと、第2回転角算出部472eと、第2出力判定部472fとを備えている。
【0040】
第2ADC472aは、第2の回転位置情報検出部46cからのアナログの第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)が入力されると、これをデジタルの第2モータ回転位置信号である第2デジタル回転位置信号(sinθd2,cosθd2)に変換する。そして、この第2デジタル回転位置信号(sinθd2,cosθd2)を、第2診断部472b、第2カウンタ部472c及び第2回転角算出部472eにそれぞれ出力する。
【0041】
以下、第2デジタル回転位置信号(sinθd2,cosθd2)を、単に「第2デジタル回転位置信号」、又は、個別に「sinθd2」、「cosθd2」と略記する場合がある。
なお、第2診断部472b、第2カウンタ部472c、第2メモリ部472d、第2回転角算出部472e及び第2出力判定部472fは、取り扱う信号が異なるだけで、上記第1診断部471b、第1カウンタ部471c、第1メモリ部471d、第1回転角算出部471e及び第1出力判定部471fと同様の動作を行うものである。そのため、これらの説明を省略する。
【0042】
また、第2診断部472bの診断結果を示すフラグを第2診断結果フラグDR2とし、第2カウンタ部472cのカウント値を第2sinカウント値Cs2及び第2cosカウント値Cc2とし、第2回転角算出部472eで算出されるモータ回転角を第2モータ回転角θm2とする。
以下、第2sinカウント値Cs2及び第2cosカウント値Cc2を、「第2カウント値Cs2及びCc2」と略記する場合がある。
【0043】
第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の上記構成によって、コントローラ48は、第1診断結果フラグDR1が「1」である場合に、第1回転情報検出機能部51に異常が生じていると認識することが可能となり、第2診断結果フラグDR2が「1」である場合に、第2回転情報検出機能部52に異常が生じていると認識することが可能となる。すなわち、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52のいずれに異常が生じているかを特定することが可能となる。
【0044】
なお、第1実施形態のコントローラ48は、異常を検出した場合に、不図示の警告ランプの点灯及び不図示のカーナビゲーションの表示装置への警告メッセージの表示によって運転者への異常の報知を行うように構成されている。
また、第1実施形態の第1回転情報検出部47a及び第2回転情報検出部47bは、それぞれ独立して構成されている。例えば、特定の用途向けに設計・製造される集積回路であるASIC(application specific integrated circuit)や、製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路であるFPGA(field programmable gate array)等の回路からそれぞれが独立して構成されている。従って、一方に異常が生じても他方がその異常の影響を受けることなく独立して動作することが可能となっている。
【0045】
また、第1実施形態の第1及び第2回転情報検出機能部51及び52は、IGスイッチ62がOFF状態となっても、電源制御部50を介してバッテリ61からの電力が間欠供給される。そのため、IGスイッチ62がOFF状態中も第1及び第2モータ回転位置信号の検出処理と、第1及び第2モータ回転位置信号のAD変換処理と、第1及び第2デジタル回転位置信号のカウント処理及びカウント値の記憶処理とを継続して行うことが可能である。
【0046】
これによって、IGスイッチ62のOFF状態中にステアリングホイール31が操舵されても、モータ回転位置の変化を追跡することが可能となり、コントローラ48は、IGスイッチ62がOFF状態からON状態に切り替わったときに第1回転情報検出機能部51及び第2回転情報検出機能部52から入力される第1カウント値Cs1及びCc1と第2カウント値Cs2及びCc2とに基づき正確なステアリング角度θsを算出することが可能である。
【0047】
(動作)
次に、
図5に基づき、第1実施形態の動作を説明する。
いま、IGスイッチ62がON状態中であり、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対して、バッテリ61からの電力が電源制御部50を介して通常供給状態で供給されていることとする。
この状態において、第1及び第2回転位置情報検出部46b及び46cは、モータ回転位置に応じた第1及び第2モータ回転位置信号を検出し、検出した第1及び第2モータ回転位置信号を、第1及び第2回転情報検出部47a及び47bに入力する。
【0048】
これにより、第1及び第2回転情報検出部47a及び47bは、第1及び第2ADC471a及び472aにおいて、入力されたアナログの第1及び第2モータ回転位置信号をデジタルの第1及び第2デジタル回転位置信号に変換する。そして、変換後の第1及び第2デジタル回転位置信号を、第1及び第2診断部471b及び472bと、第1及び第2カウンタ部471c及び472cと、第1及び第2回転角算出部471e及び472eとにそれぞれ出力する。
【0049】
引き続き、第1及び第2診断部471b及び472bは、入力された第1及び第2デジタル回転位置信号から、上式(1)に従って、「sinθd1
2+cosθd1
2」及び「sinθd2
2+cosθd2
2」を算出し、これらの算出結果が「1」となるか否かを判定する。
ここでは、上記算出結果がいずれも「1」であったとして、第1及び第2診断部471b及び472bは、第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2として「0」を、第1及び第2カウンタ部471c及び472cと、第1及び第2メモリ部471d及び472dと、第1及び第2出力判定部471f及び472fとにそれぞれ出力する。
【0050】
また、第1及び第2カウンタ部471c及び472cは、入力された第1及び第2デジタル回転位置信号を象限毎にカウントし、そのカウント値である、第1カウント値Cs1及びCc1を第1メモリ部471dに出力し、第2カウント値Cs2及びCc2を第2メモリ部472dに出力する。
第1メモリ部471dは、入力された第1カウント値Cs1及びCc1を自己の不揮発性メモリに記憶し、第2メモリ部472dは、入力された第2カウント値Cs2及びCc2を自己の不揮発性メモリに記憶する。
【0051】
また、第1及び第2回転角算出部471e及び472eは、入力された第1及び第2デジタル回転位置信号から、第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2を算出し、第1モータ回転角θm1を第1出力判定部471fに、第2モータ回転角θm2を第2出力判定部472fに出力する。
第1及び第2出力判定部471f及び472fは、入力された第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2が「0」であることから、これら第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2と、入力された第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2とをコントローラ48に出力する。
【0052】
コントローラ48は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52から入力される、第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2に基づき、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の双方に異常が生じていない(双方は正常である)と判定する。
そして、コントローラ48は、入力された第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2のうち、ここでは、第1モータ回転角θm1に基づきステアリング角度θsを算出する。更に、操舵補助制御を実施する場合は、第1モータ回転角θm1に基づき電動モータ44を駆動制御し、自動運転制御を実施する場合は、算出したステアリング角度θsと第1モータ回転角θm1とに基づき電動モータ44を駆動制御する。
【0053】
その後、IGスイッチ62がOFF状態になると、電源制御部50は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、通常供給状態から間欠供給状態へと切り替える。
具体的に、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力の導通及び不導通を切り替えるスイッチ(図示略)を、
図5に示すように、ON状態及びOFF状態のそれぞれについて予め設定した一定の間隔(
図5の例では1[ms])で交互にON・OFFさせる。なお、ONのときに電力を導通させ、OFFのときに電力を非導通とする。
【0054】
間欠供給状態中も、第1及び第2ADC471a及び472aに、アナログの第1及び第2モータ回転位置信号が入力され、この信号がデジタルの第1及び第2デジタル回転位置信号に変換される。更に、第1及び第2診断部471b及び472bにおいて、第1及び第2デジタル回転位置信号の診断が行われる。また、第1及び第2回転角算出部471e及び472eにおいて、第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2の算出処理が行われる。
ここでは、第1及び第2デジタル回転位置信号に異常がなく、第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2が「0」になったとする。
【0055】
これにより、間欠供給状態中も、第1及び第2カウンタ部471c及び472cのカウント処理が継続して実施され、第1及び第2メモリ部471d及び472dのカウント値の記憶処理が継続して実施される。
例えば、このとき、停車時に自動的にエンジンを停止させる、いわゆるアイドリングストップ機能を搭載した車両1に乗車した運転者が、信号待ちの間に、アイドリングストップ機能によりIGスイッチ62がOFFとなった状態で、ステアリングホイール31を操舵し、この操舵によってモータ回転軸44aが回転したとする。
【0056】
このように、IGスイッチ62がOFF状態中に操舵が行われた場合でも、第1及び第2カウンタ部471c及び472cは、第1及び第2デジタル回転位置信号の変化に応じた値をカウントすることが可能となり、第1メモリ部471d及び第2メモリ部472dは、第1カウント値Cs1及びCc1と、第2カウント値Cs2及びCc2とを記憶することが可能となる。
その後、IGスイッチ62がOFF状態からON状態になると、第1及び第2出力判定部471f及び472fは、第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2と第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2とに加えて、第1及び第2メモリ部471d及び472dに記憶された第1カウント値Cs1及びCc1並びに第2カウント値Cs2及びCc2をコントローラ48に出力する。
【0057】
コントローラ48は、入力された第1カウント値Cs1及びCc1並びに第2カウント値Cs2及びCc2に基づきステアリング角度θsを算出し、自動運転制御を実施する際に、算出したステアリング角度θsと入力された第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2とに基づき電動モータ44を駆動制御する。
引き続き、通常供給状態において、上記通常供給時と同様の処理が実施され、第1及び第2診断部471b及び472bにおいて、第1診断結果フラグDR1が「1」、第2診断結果フラグDR2が「0」になったとする。すなわち、第1カウンタ部471c、第1メモリ部471d及び第1出力判定部471fに、第1診断結果フラグDR1として異常を示す「1」が入力されたとする。
【0058】
これにより、第1カウンタ部471c及び第1メモリ部471dは動作を停止する。
また、第1出力判定部471fは、第1モータ回転角θm1及び第1カウント値Cs1及びCc1の出力を停止し、第1診断結果フラグDR1(=1)のみをコントローラ48に出力する。
一方、第2回転情報検出機能部52は、正常動作して、コントローラ48には、第2診断結果フラグDR2(=0)と、第2モータ回転角θm2とが出力される。
コントローラ48は、入力された第1診断結果フラグDR1(=1)から第1回転情報検出機能部51に異常が生じていると判断し、入力された第2診断結果フラグDR2(=0)から第2回転情報検出機能部52が正常であると判断する。そして、正常と判断した第2回転情報検出機能部52から入力された第2モータ回転角θm2を用いて電動モータ44を駆動制御する。
【0059】
ここで、多極リング磁石46aが円環状の磁石に対応し、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cが回転位置情報検出部に対応し、第1及び第2回転角算出部471e及び472eがモータ回転角算出部に対応する。
また、第1及び第2診断部471b及び472bが回転位置情報診断部に対応し、コントローラ48及びモータ駆動回路49がモータ駆動制御部に対応し、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52が2系統以上の回転情報検出機能部に対応する。
また、第1及び第2カウンタ部471c及び472c並びに第1及び第2メモリ部471d及び472dが回転変化量計測部に対応する。
【0060】
(第1実施形態の効果)
(1)第1実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、電動モータ44のモータ回転軸44a上に該モータ回転軸44aと同期回転可能に設けられ、周方向に異なる磁極を交互に2極以上配した円環状の多極リング磁石46aを備える。
更に、モータ回転軸44aの回転位置に応じて変化する多極リング磁石46aの磁束を、第1磁気検出素子46d及び第2磁気検出素子46eによって、電気角で互いに90°の位相差を有する磁気検出信号を回転位置情報(第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1))として検出する第1の回転位置情報検出部46b、第1の回転位置情報検出部46bで検出した回転位置情報に基づき第1モータ回転角θm1を算出する第1回転角算出部471e、及び第1の回転位置情報検出部46bで検出した回転位置情報に異常が生じているか否かを診断する第1診断部471bを備えた第1回転情報検出機能部51と、モータ回転軸44aの回転位置に応じて変化する多極リング磁石46aの磁束を、第3磁気検出素子46f及び第4磁気検出素子46gによって、電気角で互いに90°の位相差を有する磁気検出信号を回転位置情報(第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2))として検出する第2の回転位置情報検出部46c、第2の回転位置情報検出部46cで検出した回転位置情報に基づき第2モータ回転角θm2を算出する第2回転角算出部472e、及び第2の回転位置情報検出部46cで検出した回転位置情報に異常が生じているか否かを診断する第2診断部472bを備えた第2回転情報検出機能部52との2系統の回転情報検出機能部を備える。
【0061】
なお更に、2系統の第1及び第2回転情報検出機能部51及び52から出力される第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2に基づき電動モータ44を駆動制御するコントローラ48及びモータ駆動回路49を備える。
そして、コントローラ48及びモータ駆動回路49は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の一方でモータ回転位置信号に異常が生じていると診断した場合に、他方の正常な回転情報検出機能部から出力されるモータ回転角に基づき電動モータ44を駆動制御する。
【0062】
この構成であれば、各々が回転位置情報に異常が生じているか否かを診断可能な第1及び第2回転情報検出機能部51及び52を備えているので、異常の発生した回転情報検出機能部を特定することが可能となり、一方の回転情報検出機能部で異常と診断された場合に、他方の正常な回転情報検出機能部によって電動モータ44の駆動制御を継続して行うことが可能となる。加えて、各系統が、2つの磁気検出素子によって位相の90°異なる2つの回転位置情報(sinθ,cosθ)を検出する構成としたので、これら2つの回転位置情報から異常の発生した系統をより正確に特定することが可能となる。
【0063】
(2)第1実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、電動モータ44が、当該モータ駆動制御装置45が搭載される車両1の備えるステアリングシャフト32に操舵補助力を付与するモータであり、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52が、電動モータ44の回転位置の変化量を計測する第1及び第2カウンタ部471c及び472c並びに第1及び第2メモリ部471d及び472dを備える。
更に、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対して、車両1の備えるバッテリ61からの電力をIGスイッチ62がOFF状態中も供給するように構成されており、第1及び第2カウンタ部471c及び472c並びに第1及び第2メモリ部471d及び472dが、IGスイッチ62がOFF状態中も継続して回転位置の変化量を計測しこの変化量を記憶する。
【0064】
そして、コントローラ48及びモータ駆動回路49が、IGスイッチ62がOFF状態からON状態となったときは、第1及び第2カウンタ部471c及び472c並びに第1及び第2メモリ部471d及び472dで計測したモータ回転位置の変化量に基づきステアリングシャフト32の回転角であるステアリング角度θsを算出し、以降のIGスイッチ62がON状態中は、第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2に基づきステアリング角度θsを算出し、算出したステアリング角度θsに基づき電動モータ44を駆動制御する。
【0065】
この構成であれば、IGスイッチ62がOFF状態中に、車両1の運転者がステアリングホイール31を操舵した場合でも、モータ回転位置の変化量を継続して計測することが可能となる。これによって、IGスイッチ62がOFF状態からON状態になった直後に、測定した変化量から正確なステアリング角度θsを得ることが可能となる。その結果、ON状態になってすぐに自動運転制御などの舵角制御を伴う制御が実施された際に即座に対応することが可能となる。
【0066】
(3)第1実施形態に係るモータ駆動制御装置45は、IGスイッチ62がOFF状態のときに、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対して、車両1の備えるバッテリ61からの電力を間欠的に供給する電源制御部50を備える。
この構成であれば、IGスイッチ62がOFF状態中も第1及び第2回転情報検出機能部51及び52を継続して動作させることが可能になると共に、OFF状態中の消費電力を節約することが可能となる。
(4)第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置3は、上記モータ駆動制御装置45を備える。また、第1実施形態に係る車両1は、上記電動パワーステアリング装置3を備える。
これによって、いずれも信頼性の高い操舵補助制御を行うことが可能となる。
【0067】
(第1実施形態の変形例1)
次に、
図6に基づき上記第1実施形態の変形例1について説明する。
変形例1は、上記第1実施形態において、電源制御部50がIGスイッチ62のOFF状態中に、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の全ての構成部に対して、バッテリ61からの電力を一定の間隔で間欠供給していたのに対して、電力を供給する間隔を変化させる点が上記第1実施形態と異なる。
以下、上記第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分のみを詳細に説明する。
【0068】
変形例1の電源制御部50は、IGスイッチ62がOFF状態中でかつ間欠供給状態中に、モータ回転数(rpm)が予め設定した設定回転数ωt以上となったと判定すると、モータ回転センサ46及び回転検出装置47に対する電力供給状態を、間欠供給状態から通常供給状態へと切り替える。更に、切替後の通常供給状態中に、モータ回転数が設定回転数ωt未満となったと判定すると通常供給状態から間欠供給状態へと切り替えるように構成されている。すなわち、IGスイッチ62がOFF状態のときに、運転者がステアリングホイール31を操舵してモータ回転数が設定回転数ωt以上となるとバッテリ61からの電力を通常供給状態にしてモータ回転位置の変化に、より確実に追随できるようにしている。
【0069】
(動作)
次に、
図6に基づき、第1実施形態の変形例1の動作を説明する。
いま、車両1のIGスイッチ62がON状態からOFF状態になったとする。これにより、電源制御部50は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力供給状態を、通常供給状態から間欠供給状態へと切り替える。
具体的に、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対するバッテリ61からの電力の導通及び不導通を切り替えるスイッチ(図示略)を、
図6に示すように、ON状態及びOFF状態のそれぞれについて予め設定した一定の間隔(
図6の例ではON状態を1[ms]、OFF状態を99[ms])で交互にON・OFFさせる。
【0070】
例えば、このとき、アイドリングストップ機能を搭載した車両に乗車した運転者が、信号待ちの間に、アイドリングストップ機能によりIGスイッチ62がOFFとなった状態で、ステアリングホイール31を操舵し、この操舵によってモータ回転軸44aが回転したとする。
これにより、例えば、
図6に示すように、モータ回転数が設定回転数ωt(
図6の例では50[rpm])以上になると、電源制御部50は、現在の間欠供給状態を通常供給状態へと切り替える。なお、
図6において、細線の曲線がモータ回転数を示し、太線の直線が上記スイッチのON/OFF(導通/非導通)を示す。
【0071】
その後、モータ回転数が設定回転数ωt未満になると、電源制御部50は、通常供給状態を間欠供給状態へと切り替える。
これにより、IGスイッチ62がOFF状態中に設定回転数ωt以上となる操舵が行われた場合、第1及び第2カウンタ部471c及び472cは、通常供給状態によるフル稼動状態で、第1及び第2デジタル回転位置信号の変化に応じた値をカウントすることが可能となり、第1メモリ部471d及び第2メモリ部472dは、フル稼動状態で、第1カウント値Cs1及びCc1と、第2カウント値Cs2及びCc2とを記憶することが可能となる。
【0072】
(変形例1の効果)
(1)第1実施形態の変形例1に係るモータ駆動制御装置45は、電源制御部50が、IGスイッチ62がOFF状態のときに、予め設定した設定回転数ωt以上の電動モータ44のモータ回転数を検出した場合に、バッテリ61の電力を間欠的に供給している状態から連続で供給する状態へと切り替える。
この構成であれば、IGスイッチ62がOFF状態中に運転者がステアリングホイール31を操舵した場合に、この操舵によってモータ回転数が設定回転数ωt以上となれば、間欠供給状態から通常供給状態に切り替えて、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52をフル稼動させることが可能となる。これにより、設定回転数ωt以上のときのモータ回転位置の変化量をより確実に測定することが可能となる。
【0073】
(第1実施形態の変形例2)
次に、
図7に基づき上記第1実施形態の変形例2について説明する。
変形例2は、上記第1実施形態において、電源制御部50がIGスイッチ62のOFF状態中に、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の全ての構成部に対して、バッテリ61からの電力を間欠供給していたのに対して、一部の構成部にしか間欠供給しない点が上記第1実施形態と異なる。
【0074】
以下、上記第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分のみを詳細に説明する。
変形例2の電源制御部50は、IGスイッチ62がOFF状態中に、
図7に示すように、下向きの枠線矢印を付した構成部に対してはバッテリ61からの電力を間欠供給し、枠線矢印を付していない構成部に対しては電力供給を完全停止するように構成されている。
【0075】
具体的に、変形例2の電源制御部50は、IGスイッチ62がOFF状態中に、第1及び第2回転位置情報検出部46b及び46cと、第1及び第2ADC471a及び472aと、第1及び第2診断部471b及び472bと、第1及び第2カウンタ部471c及び472cと、第1及び第2メモリ部471d及び472dとに対してのみ、バッテリ61からの電力を間欠供給する。以下、これらの構成部を「電力供給構成部」と略記する場合がある。
一方、変形例2の電源制御部50は、IGスイッチ62がOFF状態中に、第1及び第2回転角算出部471e及び472eと、第1及び第2出力判定部471f及び472fとに対しては、バッテリ61からの電力供給を完全停止(遮断)する。以下、これらの構成部を「電力停止構成部」と略記する場合がある。
【0076】
具体的に、変形例2の電源制御部50は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52の電力供給構成部及び電力停止構成部に対して、バッテリ61からの電力の導通及び非導通を行うスイッチ(図示省略)を個別に備えている。
そして、電源制御部50は、IGスイッチ62がOFF状態中は、電力供給構成部に対応するスイッチを予め設定した一定の間隔で交互にON・OFFさせることで、電力供給構成部に対して電力を間欠供給する。
【0077】
なお、上記変形例1の構成を適用した場合、間欠供給状態中において、運転者がステアリングホイール31を操舵して、モータ回転数が予め設定した設定回転数ωt以上となった場合は、電力供給構成部に対応するスイッチをON状態に固定して、電力供給構成部に対する電力供給状態を、間欠供給状態から通常供給状態に切り替える。その後、モータ回転数が設定回転数ωt以上の状態から設定回転数ωt未満の状態となった場合は、電力供給構成部に対する電力供給状態を、通常供給状態から間欠供給状態に切り替える。
一方、電源制御部50は、IGスイッチ62がOFF状態中は、電力停止構成部に対応するスイッチをOFF状態に固定して電力停止構成部への電力供給を遮断する。
【0078】
(変形例2の効果)
第1実施形態の変形例2は、上記第1実施形態の効果に加えて下記の効果を奏する。
(1)変形例2に係るモータ駆動制御装置45は、電源制御部50が、IGスイッチ62がOFF状態のときに、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52における、第1及び第2ADC471a及び472aと、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cと、第1及び第2診断部471b及び472bと、第1及び第2カウンタ部471c及び472cと、第1及び第2メモリ部471d及び472dとに対してバッテリ61からの電力を間欠供給し、他の構成部への電力の供給を遮断する。
この構成であれば、IGスイッチ62がOFF状態中は、電力を間欠供給することに加えて、OFF状態中に作動させる必要のある構成部(モータ回転位置の変化量を測定するのに必要な構成部)のみに電力供給を行うことが可能となるので、OFF状態中の消費電力をより節約することが可能となる。
【0079】
(第1実施形態の変形例3)
次に、上記第1実施形態の変形例3について説明する。
変形例3は、第1及び第2ADC471a及び472aの前段に第1及び第2MUX(multiplexer)471g及び472gを備え、第1及び第2MUX471g及び472gを介して監視電位を第1及び第2ADC471a及び472aに入力する。そして、監視電位のAD変換結果に基づき第1及び第2MUX471g及び472g並びに第1及び第2ADC471a及び472aの異常診断を行う点で、上記第1実施形態と異なる。
【0080】
以下、上記第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分のみを詳細に説明する。
変形例3の第1及び第2回転情報検出部47a及び47bは、
図8に示すように、新たに、第1及び第2MUX471g及び472gを備えている。
第1MUX471gは、図示省略するが、複数の信号入力端子と選択信号の入力端子と少なくとも1つの出力端子とを有し、第1診断部471bからの第1選択信号SL1に基づき、複数の入力端子に入力される信号のうちから第1ADC471aへと出力する信号を選択し、選択した信号を第1ADC471aに出力する。
【0081】
ここで、変形例3では、第1ADC471aに入力する信号の種類として、第1の回転位置情報検出部46bから出力される第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)と、第1診断部471bから出力される、第1ADC471aの異常診断のための第1監視電位信号Vc11〜Vc1n(nは1以上の自然数)とがある。従って、第1MUX471gは、これらの信号を第1選択信号SL1に従って順次選択し、第1ADC471aに出力する。
変形例3の第1ADC471aは、第1MUX471gから順次入力されるアナログの信号をデジタルの信号に変換して、これを後段の各構成部へと出力する。
【0082】
具体的に、変形例3の第1ADC471aは、第1MUX471gから入力されるアナログの第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)を、第1デジタル回転位置信号(sinθd1,cosθd1)に変換し、これを第1診断部471b、第1カウンタ部471c及び第1回転角算出部471eにそれぞれ出力する。
更に、変形例3の第1ADC471aは、第1MUX471gから入力されるアナログの第1監視電位信号Vc11〜Vc1nを、デジタルの第1監視電位信号である第1デジタル電位信号Vcd11〜Vcd1nへと変換し、これを第1診断部471bに出力する。
【0083】
変形例3の第1診断部471bは、
図9(a)に示すように、第1回転情報診断部1471と、第1MUX/ADC診断部1472とを備えている。
第1回転情報診断部1471は、上記第1実施形態の第1診断部471bと同様の機能を備えた構成部である。すなわち、上記第1実施形態の式(1)に基づき、第1デジタル回転位置信号(sinθd1,cosθd1)に異常が生じているか否かを診断し、異常が生じている場合に、第1診断結果フラグDR1として「1」を、異常が生じていない場合に「0」を、第1カウンタ部471c、第1メモリ部471d及び第1出力判定部471fにそれぞれ出力する。
【0084】
第1MUX/ADC診断部1472は、バッテリ61からの供給電圧VCCから第1監視電位信号Vc11〜Vc1nを生成し、生成した第1監視電位信号Vc11〜Vc1nを第1MUX471gの入力端子に入力する。
更に、第1MUX/ADC診断部1472は、第1MUX471gの入力端子に入力された第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)及び第1監視電位信号Vc11〜Vc1nを予め設定した順番及び時間間隔で順次切り替えて第1ADC471aへと出力させるための第1選択信号SL1を生成し、生成した第1選択信号SL1を第1MUX471gの選択信号の入力端子に入力する。
【0085】
但し、変形例3の第1MUX/ADC診断部1472は、IGスイッチ62がOFF状態からON状態となる毎に、ON状態の直後に1回だけ、第1監視電位信号Vc11〜Vc1nを順番に切り替えて出力させる第1選択信号SL1を選択信号の入力端子に入力する。そして、以降のON状態の間は、第1モータ回転位置信号(sinθ1,cosθ1)を交互に切り替えて出力させる第1選択信号SL1を選択信号の入力端子に入力する。
なお更に、第1MUX/ADC診断部1472は、第1ADC471aから入力された第1デジタル電位信号Vcd11〜Vcd1nを、予め設定した第1比較電位Vct11〜Vct1nの末尾の数字が同じもの同士と比較する。
【0086】
ここで、第1比較電位Vct11〜Vct1nは、それぞれ許容範囲を持った値となっており、第1デジタル電位信号Vcd11〜Vcd1nが全て第1比較電位Vct11〜Vct1nの許容範囲内(例えば、上限値と下限値の間の値)となる場合に、第1MUX471g及び第1ADC471aに異常が生じていないと判定する。一方、第1デジタル電位信号Vcd11〜Vcd1nの少なくとも1つが許容範囲内にない場合に、第1MUX471g及び第1ADC471aに異常が生じていると判定する。
第1MUX/ADC診断部1472は、異常が生じていないと判定した場合に、第1ADC診断結果フラグDMA1として「0」を、第1カウンタ部471c、第1メモリ部471d及び第1出力判定部471fにそれぞれ出力する。一方、異常が生じていると判定した場合に、第1ADC診断結果フラグDMA1として「1」を、第1カウンタ部471c、第1メモリ部471d及び第1出力判定部471fにそれぞれ出力する。
【0087】
変形例3の第1カウンタ部471c及び第1メモリ部471dは、第1診断結果フラグDR1又は第1ADC診断結果フラグDMA1の少なくとも一方が「1」である場合に、動作を停止する。
また、変形例3の第1出力判定部471fは、第1診断結果フラグDR1及び第1ADC診断結果フラグDMA1が共に「0」である場合に、第1診断結果フラグDR1、第1ADC診断結果フラグDMA1、第1モータ回転角θm1及び第1カウント値Cs1及びCc1のコントローラ48への出力を行う。
【0088】
一方、第1診断結果フラグDR1又は第1ADC診断結果フラグDMA1の少なくとも一方が「1」である場合に、第1モータ回転角θm1及び第1カウント値Cs1及びCc1のコントローラ48への出力を停止し、第1診断結果フラグDR1及び第1ADC診断結果フラグDMA1のみをコントローラ48に出力する。
一方、変形例3の第2MUX472g及び第2ADC472aは、上記第1MUX471g及び第1ADC471aと同様の構成となる。すなわち、取り扱う信号が第2モータ回転位置信号(sinθ2,cosθ2)、第2デジタル回転位置信号(sinθd2,cosθd2)、第2選択信号SL2、第2監視電位信号Vc21〜Vc2n、第2デジタル電位信号Vcd21〜Vcd2nとなるだけで動作内容は同様となるため説明を省略する。
【0089】
変形例3の第2診断部472bは、
図9(b)に示すように、第2回転情報診断部1473と、第2MUX/ADC診断部1474とを備えている。
第2回転情報診断部1473は、取り扱う信号が、第2デジタル回転位置信号(sinθd2,cosθd2)、第2診断結果フラグDR2となるだけで、上記第1回転情報診断部1471と同様の構成となるため説明を省略する。
第2MUX/ADC診断部1474は、上記第1MUX/ADC診断部1472と同様の構成となる。すなわち、取り扱う信号が第2デジタル回転位置信号(sinθd2,cosθd2)、第2デジタル電位信号Vcd21〜Vcd2n、第2選択信号SL2、第2ADC診断結果フラグDMA2、第2比較電位Vct21〜Vct2nとなるだけで動作内容は同様となるので説明を省略する。
【0090】
変形例3の第2カウンタ部472c及び第2メモリ部472dは、第2診断結果フラグDR2又は第2ADC診断結果フラグDMA2の少なくとも一方が「1」である場合に、動作を停止する。
また、変形例3の第2出力判定部472fは、第2診断結果フラグDR2及び第2ADC診断結果フラグDMA2が共に「0」である場合に、第2診断結果フラグDR2、第2ADC診断結果フラグDMA2、第2モータ回転角θm2及び第2カウント値Cs2及びCc2のコントローラ48への出力を行う。
【0091】
一方、第2診断結果フラグDR2又は第2ADC診断結果フラグDMA2の少なくとも一方が「1」である場合に、第2モータ回転角θm2及び第2カウント値Cs2及びCc2のコントローラ48への出力を停止し、第2診断結果フラグDR2及び第2ADC診断結果フラグDMA2のみをコントローラ48に出力する。
変形例3のコントローラ48は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52から入力された第1診断結果フラグDR1及び第1ADC診断結果フラグDMA1と、第2診断結果フラグDR2及び第2ADC診断結果フラグDMA2とから異常の有無の判定及び異常発生部位の特定又は推定を行う。
【0092】
具体的に、変形例3のコントローラ48は、第1ADC診断結果フラグDMA1又は第2ADC診断結果フラグDMA2が「1」のときは、第1MUX471g及び第1ADC471a又は第2MUX472g及び第2ADC472aに異常が発生していると特定することが可能である。
また、第1ADC診断結果フラグDMA1及び第2ADC診断結果フラグDMA2が「0」で、第1診断結果フラグDR1又は第2診断結果フラグDR2が「1」のときは入力されるモータ回転位置信号に異常が生じているため、第1の回転位置情報検出部46b若しくは第2の回転位置情報検出部46c、又は多極リング磁石46aに異常が発生していると推定することが可能である。
【0093】
(動作)
以下、変形例3の動作を説明する。
いま、IGスイッチ62がOFF状態からON状態になって、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52に対して、バッテリ61からの電力が電源制御部50を介して通常供給状態で供給されたとする。
ここでは、第1及び第2ADC471a及び472aの通常使用範囲(0〜VCC)を基準に、「Vc11=Vc21=VCC*1/2」、「Vc12=Vc22=VCC*1/3」、「Vc13=Vc23=VCC*2/3」、「Vc14=Vc24=VCC」及び「Vc15=Vc25=0」の5種類の第1及び第2監視電位信号Vc11〜Vc15及びVc21〜Vc25を用意する。
【0094】
すなわち、第1診断部471bから第1監視電位信号Vc11〜Vc15が第1MUX471gの入力端子に入力され、第2診断部472bから第2監視電位信号Vc21〜Vc25が第2MUX472gに入力される。
IGスイッチ62がOFF状態からON状態になると、第1及び第2診断部471b及び472bは、第1及び第2監視電位信号Vc11〜Vc15及びVc21〜Vc25を選択出力させるための第1及び第2選択信号SL1及びSL2を、第1及び第2MUX471g及び472gに出力する。
【0095】
具体的に、第1及び第2診断部471b及び472bは、第1及び第2監視電位信号Vc11〜Vc15及びVc21〜Vc25を、予め設定したAD変換に必要な時間間隔で順次切り替えながら第1及び第2ADC471a及び472aに出力させるための第1及び第2選択信号SL1及びSL2を、第1及び第2MUX471g及び472gに出力する。
これにより、第1MUX471gは、入力された第1選択信号SL1に応じて、予め設定された時間間隔で、第1監視電位信号Vc11〜Vc15を、順次第1ADC471aに出力する。第1ADC471aは、順次入力される第1監視電位信号Vc11〜Vc15を、第1デジタル電位信号Vcd11〜Vcd15に順次変換し、これを第1診断部471bに順次出力する。
【0096】
同様に、第2MUX472gは、入力された第2選択信号SL2に応じて、予め設定された時間間隔で、第2監視電位信号Vc21〜Vc25を、第2ADC472aに出力する。第2ADC472aは、順次入力される第2監視電位信号Vc21〜Vc25を、第2デジタル電位信号Vcd21〜Vcd25に順次変換し、これを第2診断部472bに順次出力する。
第1診断部471bは、順次入力される第1デジタル電位信号Vcd11〜Vcd15と、第1比較電位Vct11〜Vct15とを末尾が同じ番号のもの同士で順次相互比較し、この比較結果に基づき第1ADC診断結果フラグDMA1を生成する。同様に、第2診断部472bは、順次入力される第2デジタル電位信号Vcd21〜Vcd25と、第2比較電位Vct21〜Vct25とを順次相互比較し、比較結果に基づき第2ADC診断結果フラグDMA2を生成する。
【0097】
第1診断部471bは、第1デジタル電位信号Vcd11〜Vcd15が、全て第1比較電位Vct11〜Vct15の示す許容範囲内であると判定した場合は、第1ADC診断結果フラグDMA1として「0」を生成し、1つでも許容範囲外となったものがあると判定した場合は「1」を生成する。
第2診断部472bは、第2デジタル電位信号Vcd21〜Vcd25が、全て第2比較電位Vct21〜Vct25の示す許容範囲内であると判定した場合は、第2ADC診断結果フラグDMA2として「0」を生成し、1つでも許容範囲外となったものがあると判定した場合は「1」を生成する。
【0098】
第1及び第2診断部471b及び472bは、生成した第1及び第2ADC診断結果フラグDMA1及びDMA2を、第1及び第2カウンタ部471c及び472cと、第1及び第2メモリ部471d及び472dと、第1及び第2出力判定部471f及び472fとに出力する。
第1及び第2カウンタ部471c及び472cと、第1及び第2メモリ部471d及び472dは、第1及び第2ADC診断結果フラグDMA1及びDMA2が「1」である場合は以降の動作を停止し、「0」である場合は、以降は通常動作を行う。
【0099】
第1及び第2出力判定部471f及び472fは、第1及び第2ADC診断結果フラグDMA1及びDMA2が「1」である場合は、第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2と、第1及び第2ADC診断結果フラグDMA1及びDMA2とをコントローラ48に出力する。そして、以降の第1及び第2モータ回転角θm1及びθm2と、第1カウント値Cs1及びCc1並びに第2カウント値Cs2及びCc2の出力処理を停止する。
【0100】
一方、第1及び第2出力判定部471f及び472fは、第1及び第2ADC診断結果フラグDMA1及びDMA2が「0」である場合は、第1及び第2診断結果フラグDR1及びDR2と、第1及び第2ADC診断結果フラグDMA1及びDMA2とをコントローラ48に出力し、以降は通常の出力動作を行う。
ここで、第1ADC471a及び第2ADC472aがAD変換器に対応し、第1MUX/ADC診断部1472及び第2MUX/ADC診断部1474がAD変換器診断部に対応し、第1MUX471g及び第2MUX472gが監視電位信号入力部に対応する。
【0101】
(変形例3の効果)
第1実施形態の変形例3は、上記第1実施形態の効果に加えて下記の効果を奏する。
(1)変形例3に係るモータ駆動制御装置45は、第1及び第2回転情報検出機能部51及び52が、アナログの第1及び第2モータ回転位置信号をデジタルの第1及び第2デジタル回転位置信号に変換する第1及び第2ADC471a及び472aと、これら第1及び第2ADC471a及び471bにアナログの第1及び第2監視電位信号Vc11〜Vc1n及びVc21〜Vc2nを入力する第1及び第2MUX471g及び472gと、第1及び第2ADC471a及び472aでデジタルの信号に変換された第1及び第2デジタル電位信号Vcd11〜Vcd1n及びVcd21〜Vcd2nを、予め設定した第1及び第2比較電位Vct11〜Vct1n及びVct21〜Vct2nと比較して、該比較結果に基づき第1及び第2ADC471a及び471b並びに第1及び第2MUX471g及び472gに異常が生じているか否かを診断する第1及び第2MUX/ADC診断部1472及び1474とを備える。
【0102】
この構成であれば、アナログの第1及び第2監視電位信号Vc11〜Vc1n及びVc21〜Vc2nを、第1及び第2ADC471a及び472aでAD変換した第1及び第2デジタル電位信号Vcd11〜Vcd1n及びVcd21〜Vcd2nに基づき、第1及び第2ADC471a及び471b並びに第1及び第2MUX471g及び472gに異常が生じているか否かを診断することが可能となる。
これにより、第1ADC471a及び第1MUX471gと、第2ADC472a及び第2MUX472gの異常をそれぞれ特定することが可能となる。
【0103】
(第1実施形態の変形例4)
次に、上記第1実施形態の変形例4について説明する。
変形例4は、第1及び第2カウンタ部471c及び472cのカウンタ機能部を2重化すると共に、2重化したカウンタ機能部のカウント値を相互に比較することで、第1及び第2カウンタ部471c及び472cが自己を異常診断する点が上記第1実施形態と異なる。加えて、第1及び第2メモリ部471d及び472dのそれぞれに2つのアドレスエリアを設定し、第1及び第2カウンタ部471c及び472cの2重化したカウンタ機能部の一方のカウント値を各2つのアドレスエリアの一方に記憶し、他方のカウント値をアドレスエリアの他方に記憶して、これら記憶したカウント値をエリア相互に比較することで、第1及び第2メモリ部471d及び472dが自己を異常診断する点が上記第1実施形態と異なる。
【0104】
以下、上記第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分のみを詳細に説明する。
変形例4の第1カウンタ部471cは、
図10(a)に示すように、第1カウンタ1475と、第2カウンタ1476と、第1カウンタ比較部1477とを備えている。
第1及び第2カウンタ1475及び1476は、同期入力されるsinθd1及びcosθd1の象限毎にこれらの値をカウントし、そのカウント値である第1sinカウント値Cs11及びCs12と、第1cosカウント値Cc11及びCc12とを第1カウンタ比較部1477に出力する。
【0105】
第1カウンタ比較部1477は、第1カウンタ1475から入力されるカウント値Cs11及びCc11と、第2カウンタ1476から入力されるカウント値Cs12及びCc12とを相互比較する。そして、「Cs11=Cs12」及び「Cc11=Cc12」が成立する場合に、カウント値に異常が無いと判定して第1カウンタ診断結果フラグDC1として「0」を設定し、成立しない場合に、カウント値に異常が生じていると判定して「1」を設定する。第1カウンタ比較部1477は、設定した第1カウンタ診断結果フラグDC1を第1メモリ部471d及び第1出力判定部471fにそれぞれ出力する。
【0106】
更に、第1カウンタ比較部1477は、第1カウンタ診断結果フラグDC1が「0」のときは第1sinカウント値Cs11及びCs12と、第1cosカウント値Cc11及びCc12とを第1メモリ部471dに出力し、「1」のときは出力を停止する。
変形例4の第1メモリ部471dは、
図10(a)に示すように、第1メモリエリア1478と、第2メモリエリア1479と、第1メモリ比較部1480とを備えている。
第1メモリエリア1478は、第1sinカウント値Cs11及び第1cosカウント値Cc11を記憶するメモリエリアである。
【0107】
第2メモリエリア1479は、第1sinカウント値Cs12及び第1cosカウント値Cc12を記憶するメモリエリアである。
なお、変形例4では、第1メモリ部471dは、第1sinカウント値Cs12及び第1cosカウント値Cc12を、論理を反転して第2メモリエリア1479に記憶するように構成されている。ここで、論理を反転して記憶することで、後段の第1メモリ比較部1480において、メモリの固着異常も検出できるようにしている。
【0108】
第1メモリ比較部1480は、第1メモリエリア1478に記憶された第1sinカウント値Cs11及び第1cosカウント値Cc11と、第2メモリエリア1479に論理を反転して記憶された第1sinカウント値Cs12及び第1cosカウント値Cc12とが一致するか否かを判定する。具体的には、反転された論理を元に戻して両者が一致するか否かを判定する。そして、両者が完全に一致する場合に、第1メモリ診断結果フラグDM1として「0」を設定し、一致しない場合に「1」を設定する。そして、設定した第1メモリ診断結果フラグDM1を第1出力判定部471fに出力する。
【0109】
また、変形例4の第1メモリ部471dは、第1カウンタ部471cから入力される第1カウンタ診断結果フラグDC1が「1」のときは動作を停止するように構成されている。
一方、変形例4の第2カウンタ部472cは、
図10(b)に示すように、第3カウンタ1481と、第4カウンタ1482と、第2カウンタ比較部1483とを備えている。
なお、第3カウンタ1481、第4カウンタ1482及び第2カウンタ比較部1483は、上記第1カウンタ1475、上記第2カウンタ1476及び上記第1カウンタ比較部1477と同様の構成を有する。すなわち、取り扱う信号が、sinθd2及びcosθd2、第2sinカウント値Cs21及びCs22、第2cosカウント値Cc21及びCc22、第2カウンタ診断結果フラグDC2となるだけで動作内容は同様となるので説明を省略する。
【0110】
また、変形例4の第2メモリ部472dは、
図10(b)に示すように、第3メモリエリア1484と、第4メモリエリア1485と、第2メモリ比較部1486とを備えている。
なお、第3メモリエリア1484、第4メモリエリア1485及び第2メモリ比較部1486は、上記第1メモリエリア1478、上記第1メモリエリア1479及び上記第1メモリ比較部1480と同様の構成を有する。すなわち、取り扱う信号が第2sinカウント値Cs21及びCs22、第2cosカウント値Cc21及びCc22、第2カウンタ診断結果フラグDC2となるだけで動作内容は同様となるので説明を省略する。
【0111】
変形例4の第1出力判定部471fは、第1診断結果フラグDR1、第1カウンタ診断結果フラグDC1及び第1メモリ診断結果フラグDM1が1つでも「1」となっている場合は、これら診断結果フラグDR1、DC1及びDM1をコントローラ48に出力する。そして、以降は、第1モータ回転角θm1と、第1sinカウント値Cs11及びCs12と、第1cosカウント値Cc11及びCc12とのコントローラ48への出力処理を停止する。
【0112】
一方、変形例4の第1出力判定部471fは、第1診断結果フラグDR1、第1カウンタ診断結果フラグDC1及び第1メモリ診断結果フラグDM1がいずれも「0」となっている場合は、これら診断結果フラグDR1、DC1及びDM1をコントローラ48に出力し、以降は、これら診断結果フラグDR1、DC1及びDM1と、第1モータ回転角θm1と、第1sinカウント値Cs11及びCs12と、第1cosカウント値Cc11及びCc12とのコントローラ48への出力処理を実行する。
【0113】
また、変形例4の第2出力判定部472fは、上記変形例3の第1出力判定部471fと同様の構成を有する。すなわち、取り扱う信号が、第2診断結果フラグDR2、第2カウンタ診断結果フラグDC2、第2メモリ診断結果フラグDM2、第2モータ回転角θm2と、第2sinカウント値Cs21及びCs22と、第2cosカウント値Cc21及びCc22となるだけで動作内容は同様となるので説明を省略する。
また、変形例4のコントローラ48は、第1回転情報検出機能部51からの第1カウンタ診断結果フラグDC1及び第1メモリ診断結果フラグDM1に基づき、第1カウンタ診断結果フラグDC1が「1」のときは、第1カウンタ部471cに異常が生じていると特定し、第1メモリ診断結果フラグDM1が「1」のときは、第1メモリ部471dに異常が生じていると特定することが可能である。
【0114】
また、変形例4のコントローラ48は、第2回転情報検出機能部52からの第2カウンタ診断結果フラグDC2及び第2メモリ診断結果フラグDM2に基づき、第2カウンタ診断結果フラグDC2が「1」のときは、第2カウンタ部472cに異常が生じていると特定し、第2メモリ診断結果フラグDM2が「1」のときは、第2メモリ部472dに異常が生じていると特定することが可能である。
【0115】
(動作)
以下、変形例4の動作を説明する。
いま、第1及び第2カウンタ部471c及び472cに、第1及び第2デジタル回転位置信号(sinθd1,cosθd1)及び(sinθd2,cosθd2)が入力されたとする。
これにより、第1カウンタ部471cの第1及び第2カウンタ1475及び1476は、sinθd1及びcosθd1の象限毎のカウントを行い、第1sinカウント値Cs11及びCs12と、第1cosカウント値Cc11及びCc12とを第1カウンタ比較部1477に出力する。
【0116】
第1カウンタ比較部1477は、各カウント値の相互比較によって「Cs11=Cs12」及び「Cc11=Cc12」が成立するか否かを判定し、成立すると判定した場合は異常なしと診断し、成立しないと判定した場合は異常ありと診断する。そして、診断結果に応じた値の第1カウンタ診断結果フラグDC1を、第1メモリ部471d及び第1出力判定部471fにそれぞれ出力する。このとき、異常なしの場合は、更に、第1sinカウント値Cs11及びCs12と、第1cosカウント値Cc11及びCc12とを第1メモリ部471dに出力する。
【0117】
第1メモリ部471dは、入力された第1sinカウント値Cs11及び第1cosカウント値Cc11を第1メモリエリア1478に記憶し、入力された第1sinカウント値Cs12及び第1cosカウント値Cc12をこれらの論理を反転して第2メモリエリア1479に記憶する。
第1メモリ比較部1480は、第1メモリエリア1478に記憶された第1sinカウント値Cs11及び第1cosカウント値Cc11と、第2メモリエリア1479に記憶された第1sinカウント値Cs12及び第1cosカウント値Cc12とを論理を元に戻してから両者を比較する。そして、「Cs11=Cs12」及び「Cc11=Cc12」が成立するか否かを判定し、成立すると判定した場合は異常なしと診断し、成立しないと判定した場合は異常ありと診断する。そして、診断結果に応じた値の第1メモリ診断結果フラグDM1を、第1出力判定部471fに出力する。
【0118】
一方、第2カウンタ部472c及び第2メモリ部472dの動作については、取り扱う信号が異なる以外は、上記第1カウンタ部471c及び第1メモリ部471dと同様の動作となるので説明を省略する。
コントローラ48は、第1回転情報検出機能部51からの第1カウンタ診断結果フラグDC1及び第1メモリ診断結果フラグDM1に基づき、第1カウンタ部471c及び第1メモリ部471dに異常が生じているか否かを判定する。これにより、コントローラ48は、第1カウンタ診断結果フラグDC1が「1」のときは第1カウンタ部471cに異常が生じていると特定し、第1メモリ診断結果フラグDM1が「1」のときは第1メモリ部471dに異常が生じていると特定することができる。
【0119】
また、第2回転情報検出機能部52からの第2カウンタ診断結果フラグDC2及び第2メモリ診断結果フラグDM2に基づき、第2カウンタ部472c及び第2メモリ部472dに異常が生じているか否かを判定する。これにより、コントローラ48は、第2カウンタ診断結果フラグDC2が「1」のときは、第2カウンタ部472cに異常が生じていると特定し、第2メモリ診断結果フラグDM2が「1」のときは、第2メモリ部472dに異常が生じていると特定することができる。
ここで、第1〜第2カウンタ1475〜1476及び第3〜第4カウンタ1481〜1482が変化量計測部に対応し、第1〜第2メモリエリア1478〜1479及び第3〜第4メモリエリア1484〜1485が変化量記憶部に対応する。
また、第1及び第2カウンタ比較部1277及び1480と、第1及び第2メモリ比較部1480及び1486とが計測異常診断部に対応する。
【0120】
(変形例4の効果)
変形例4は、上記第1実施形態の効果に加えて下記の効果を奏する。
(1)変形例4に係るモータ駆動制御装置45は、第1及び第2カウンタ部471c及び472cの第1〜第2カウンタ1475〜1476及び第3〜第4カウンタ1481〜1482が、第1及び第2の回転位置情報検出部46b及び46cの検出する第1及び第2モータ回転位置信号に基づき電動モータ44の回転位置の変化量(第1sinカウント値Cs11及びCs12、第1cosカウント値Cc11及びCc12、第2sinカウント値Cs21及びCs22、第2cosカウント値Cc21及びCc22)を計測する。更に、第1及び第2カウンタ部471c及び472cの第1及び第2カウンタ比較部1277及び1480が、第1及び第2カウンタ部471c及び472cの異常を診断する。
【0121】
また、第1及び第2メモリ部471d及び472dが、第1〜第2カウンタ1475〜1476及び第3〜第4カウンタ1481〜1482で計測した変化量を第1〜第2メモリエリア1478〜1479及び第3〜第4メモリエリア1484〜1485に記憶する。第1及び第2メモリ部471d及び472dの第1及び第2メモリ比較部1480及び1486が、第1及び第2メモリ部471d及び472dの異常を診断する。
更にまた、第1及び第2出力判定部471f及び472fが、変化量及び異常診断結果(第1及び第2カウンタ診断結果フラグDC1及びDC2、第1及び第2メモリ診断結果フラグDM1及びDM2)を、コントローラ48に出力する。
【0122】
この構成であれば、第1及び第2カウンタ部471c及び472cと第1及び第2メモリ部471d及び472dとが、それぞれ個別に自己の異常診断を行うことが可能となるので、これらの異常を個別に特定することが可能となる。
なお、上記変形例4では、第2メモリエリア1479及び第4メモリエリア1485に対して各カウント値の論理を反転して記憶するように構成したので、メモリエリアに固着異常が生じている場合に、この状態を異常として検出することが可能となる。
【0123】
(他の変形例)
(1)上記第1実施形態及び各変形例では、回転情報検出機能部を2系統から構成したが、この構成に限らず、3系統以上で構成してもよい。
(2)上記第1実施形態及び各変形例では、モータ回転センサ46を磁気式のセンサから構成したが、この構成に限らず、光学式のセンサから構成してもよい。
(3)上記第1実施形態及び各変形例では、異常が生じた場合に、各種診断結果フラグのみをコントローラ48に出力し、コントローラ48は、各種診断結果フラグに基づき、異常の生じている回転情報検出機能部や各構成部を特定する構成としたが、この構成に限らない。例えば、異常が生じた場合でも、算出したモータ回転角や測定したカウント値をコントローラ48に出力し、コントローラ48において、各系統間でモータ回転角やカウント値を相互比較することで2重の異常診断を行う構成としてもよい。
【0124】
(4)上記第1実施形態の変形例3では、MUX及びADCの異常診断を、IGスイッチ62がOFFからONになる毎に1回だけ行う構成にしたが、この構成に限らず、ON状態中でも常時又は定期的に行う構成としてもよい。
(5)上記第1実施形態の変形例3では、監視電位を複数種類用意する構成としたが、この構成に限らず1種類だけ用意する構成としてもよい。
(6)上記第1実施形態の変形例1〜4は、それぞれ単独の構成に限らず、それぞれを任意に組み合わせた構成としてもよい。
(7)上記第1実施形態及び各変形例では、カウンタ部に入力される回転位置情報を(sinθ,cosθ)とする構成としたが、回転位置情報であれば、この構成に限らない。例えば、角度演算処理された回転位置情報を用いる構成としてもよい。
【0125】
(8)上記第1実施形態の変形例1では、IGスイッチ62がOFF状態のときに、モータ回転数が設定回転数以上になったか否かを判定する処理(以下、「第1の判定処理」と称す)と、モータ回転数が設定回転数未満になったか否かを判定する処理(以下、「第2の判定処理」と称す)とにおいて、共通の設定回転数ωtを用いる構成としたが、この構成に限らない。例えば、第1の判定処理では第1設定回転数ωt1を用い、第2の判定処理では第1設定回転数ωt1とは異なる第2設定回転数ωt2を用いるといったように、第1の判定処理と第2の判定処理とで異なる設定回転数を用いる構成としてもよい。
(9)上記第1実施形態及び各変形例では、第1の回転位置情報検出部46bと、第2の回転位置情報検出部46cとが、それぞれ、互いに位相の異なる磁気信号を検出する2つの磁気検出素子を有する構成としたが、この構成に限らず、3つ以上の磁気検出素子を有する構成としてもよい。
【0126】
(10)上記第1実施形態及び各変形例では、本発明をコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置に適用した例を説明したが、この構成に限らず、例えば、ラックアシスト式又はピニオンアシスト式の電動パワーステアリング装置に適用する構成としてもよい。(11)上記第1実施形態及び各変形例では、電動パワーステアリング装置の操舵アシスト用のモータに本発明を適用した例を説明したが、この構成に限らず、例えば、パワーウインドウ装置のモータ等の他の車載のモータに適用する構成としてもよい。また、車載のモータに限らず、他の機器に搭載されたモータに適用する構成としてもよい。
以上、本願が優先権を主張する日本国特許出願P2016−097215(2016年5月13日出願)の全内容は、ここに引用例として包含される。
ここでは、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく各実施形態の改変は当業者にとって自明のことである。