(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サイドノズルの内径をDとし、前記第1ポッティング部の前記第2端側から前記筐体の第2端までの長さをLとしたとき、前記インナーパイプの長さがD以上L以下である、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の中空糸膜モジュールを図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
なお、本明細書において、「縦」とは中空糸膜モジュールの軸方向に沿った方向であり、「横」とは、中空糸膜モジュールの軸方向と直交する方向である。
【0013】
本発明の中空糸膜モジュールの実施形態としては、例えば、以下に記す第1実施形態又は第2実施形態が挙げられる。なお、以下に記す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
(第1実施形態)
<中空糸膜モジュール>
本発明の第1実施形態にかかる中空糸膜モジュールの構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる中空糸膜モジュールを示す概略縦断面図である。
【0015】
図1に示す中空糸膜モジュール100Aは、両端が開口した筒状の筐体2と、筐体2内に収容された複数の中空糸膜1とを備える。筐体2は、その上部に筐体上部キャップ2aを備え、その下部に筐体下部キャップ2bを備えている。筐体上部キャップ2aはろ過液出口7を有し、筐体下部キャップ2bは原液流入口5を有する。なお、ここでの「上」、「下」は、中空糸膜モジュール100Aの使用時の姿勢における上下を指し、
図1の上下と一致する。
【0016】
さらに、中空糸膜モジュール100Aは、第1ポッティング部3及び第2ポッティング部4等を備える。
【0017】
ここで筐体上部キャップ2aの上端部、すなわちろ過液出口7は筐体2の第1端であり、筐体下部キャップ2bの下端部、すなわち原液流入口5は筐体2の第2端である。また、筐体2の側面には、筐体2の第1端の近傍に筐体サイドノズル2cが設けられ、筐体サイドノズル2cは原液出口6を有している。
【0018】
なお、筐体サイドノズル2cの内径Dは、フラッシング時の圧力損失と洗浄性の観点から、筐体サイドノズル2c内でのフラッシング時の流速が、0.5m/s以上10m/s以内の範囲となるように設定することが好ましく、1m/s以上5m/s以内の範囲となるように設定することがより好ましい。
【0019】
筐体サイドノズル2cの内径Dが小さ過ぎると、フラッシング時の圧力損失が増加し、動力コストが増加する場合がある。一方、筐体サイドノズル2cの内径Dが大き過ぎると、フラッシング時の流速が低くなり、洗浄性が低下する場合がある。
【0020】
第1ポッティング部3は、上部ポッティング部とも呼ばれる。第1ポッティング部3は接着剤で形成されており、中空糸膜1の上側の端部(「中空糸膜第1端」に相当する。)を、その端面が開口した状態で、筐体2に液密かつ気密に接着する。つまり、中空糸膜1は、第1ポッティング部3により束ねられ、筐体2の内壁に固定されている。
【0021】
第2ポッティング部4は、下部ポッティング部とも呼ばれる。第2ポッティング部4は、接着剤で形成されており、中空糸膜1の下側の端部(「中空糸膜第2端」に相当する。)において、その端面を封止し、かつ、筐体2に接着している。すなわち、第2ポッティング部4は、筐体2内で、第1ポッティング部3と対向するように配置されている。こうして、中空糸膜モジュール100Aの下部では、中空糸膜1の中空部が接着剤で封止されており、開口しない状態になっている。中空糸膜1は、第2ポッティング部4によって束ねられ、筐体2の内壁に固定されている。
【0022】
第2ポッティング部4は、第1ポッティング部3との対向面から逆の面まで、連続する貫通孔8を有している。貫通孔8は原液の流路やエアスクラビング時の空気の流路の役割を担っている。
【0023】
図5は、
図1の中空糸膜モジュール100AのB−B線断面図であり、第2ポッティング部4における貫通孔8の配置の一例を示している。フラッシング時の原液の偏流や、エアスクラビング時の空気の偏流を抑制するため、貫通孔8は第2ポッティング部4に均等に配置することが好ましい。
【0024】
<整流構造>
中空糸膜モジュール100Aは、
図2に示すように、さらに筐体2の第2端側から筐体2の第1端側へ向かって中空糸膜1の外側を流れる流体について、第1ポッティング部3の上記第2端側の径方向中心部に指向して流れを発生させ、さらに第1ポッティング部3の上記第2端側の径方向中心部から径方向外周側に指向して放射状に流れを発生させる整流構造を有する。
【0025】
上記整流構造は、整流筒9とインナーパイプ11を備える。
整流筒9は、筐体2の内側に配置される筒状の部材である。整流筒9は第1ポッティング部3の第2端側(下側)に配置される。整流筒9の上下は開口しており、側面には整流孔10が設けられている。整流筒9は、この整流孔10から通液することができる。
【0026】
一方、インナーパイプ11は整流筒9の内側のモジュール径方向中心部に配置される筒状の部材であり、第1ポッティング部3の第2端側(下側)に配置される。インナーパイプ11の上側は第1ポッティング部3に固定されており、下側は開口している。また、インナーパイプ11の側面には側面開口部12が設けられている。
【0027】
中空糸膜モジュール100Aのろ過運転では原液流入口5からモジュール内に原液が供給され、中空糸膜1の外側から内側に向かって原液がろ過される。ろ過液は中空糸膜1の中空部を通って上側のろ過液出口7から外部に排出される。ここで中空糸膜1の中空部をろ過液が通液する際に圧力損失が発生するが、モジュールの第1端側(上側)に近いほど中空部の通液距離が短く、圧力損失が小さいため、ろ過流束が高くなる。
【0028】
つまり中空糸膜1は、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍の部位のろ過流束が高く、膜表面に濁質が堆積しやすい。従って高濁度の原液をろ過する場合、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍の洗浄性を向上させることが重要である。
【0029】
膜表面に濁質が堆積しやすい従来の中空糸膜モジュールの一例として整流筒9のみを有し、中空糸膜1が筐体2内に均等に配置された中空糸膜モジュール100Dの構造を
図10に示し、フラッシング時の中空糸膜モジュール100D内の液流を
図11に示している。
【0030】
従来の中空糸膜モジュール100Dでは、フラッシング時には原液流入口5から原液を供給し、原液出口6から原液を排出してモジュール内を洗浄するが、モジュールの第2端側(下側)からの流れはモジュールの第1端側(上側)では整流孔10に向かうため、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍は流速が低く、堆積した濁質が十分に洗浄されない。第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍のモジュール径方向中心部については特に流速が低く、濁質が堆積しやすい。
【0031】
なお、濁質の排出に必要な流速は濁質の粒径、比重、中空糸膜との相互作用などによって変化するが、0.05m/s以上とすることが好ましく、0.1m/s以上とすることがより好ましく、0.2m/s以上とすることがさらに好ましい。
【0032】
そこで、本発明の第1実施形態では、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍でのフラッシング時の流速を高め、洗浄性を向上させるため、整流構造として整流筒9とインナーパイプ11を設けた。
【0033】
この整流構造は、フラッシング時にモジュールの第2端側(下側)からモジュールの第1端側(上側)へ向かって中空糸膜1の外側を流れる原液について、第1ポッティング部3の第2端側(下側)のモジュール径方向中心部に指向して流れを発生させ、さらに第1ポッティング部3の第2端側(下側)のモジュール径方向中心部から径方向外周側に指向して放射状に流れを発生させ、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍の洗浄性を向上させることが目的である。
【0034】
モジュールの第2端側(下側)からモジュールの第1端側(上側)へ向かう原液は、インナーパイプ11の内側を通って第1ポッティング部3の第2端側(下側)のモジュール径方向中心部に導かれ、その後インナーパイプ11の側面開口部12から出た原液は、整流筒9の整流孔10に向かって流れる。
【0035】
この整流構造により第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍で、モジュール径方向中心部から径方向外周側に指向して放射状に流れが発生し、堆積した濁質を洗い流すことができる。なお整流孔10を出た原液は
図4に示すように整流筒9と筐体2の間の流路を通って、原液出口6から排出される。
【0036】
<流動パラメータF>
ここで、フラッシング時にインナーパイプ11の内側に原液を導くため、インナーパイプ11内側の中空糸膜の充填率A1は、インナーパイプ11外側の中空糸膜の充填率A2より小さくする必要がある。これはインナーパイプ11内側の中空糸膜の充填率A1をインナーパイプ11の外側の中空糸膜の充填率A2よりも小さくすることで通液抵抗を下げ、インナーパイプ11の内側の流速を高めるためである。
【0037】
なお、ここで中空糸膜の充填率とは、第1ポッティング部3と第2ポッティング部4の間における中空糸膜モジュールの筐体2の軸方向に垂直な断面(
図1の左右方向に平行かつ紙面に垂直な面、以下「横断面」ともいう。)で、中空糸膜が占める面積の割合のことである。筐体2内側の中空糸膜存在区画の横断面の断面積をS1、中空糸膜の横断面の合計断面積をS2としたとき、中空糸膜の充填率は下記式(2)で表すことができる。
中空糸膜の充填率[%]=S2/S1×100 ・・・(2)
【0038】
ここで中空糸膜存在区画とは、中空糸膜が存在する一定の区画を表す。この区分けの方法としては、筐体2、整流筒9、インナーパイプ11などの部材により区分けする方法や、
図6の中空糸膜モジュール100Bのようにポッティング部での中空糸膜の固定により区分けする方法などが挙げられる。
【0039】
例えば
図3に、
図1の中空糸膜モジュール100AのA−A線断面図を示しているが、中空糸膜1は整流筒9とインナーパイプ11の間の空間に存在している。従って、
図3中では、整流筒9の内側断面積からインナーパイプ11の断面積(外径基準)を差し引いた面積が、中空糸膜存在区画の断面積S1となる。なお、中空糸膜が存在しない区画の中空糸膜の充填率は0%である。
【0040】
なお、本明細書において、筐体2、整流筒9又はインナーパイプ11の内側断面積とは、筐体2、整流筒9又はインナーパイプ11の中空糸膜モジュールの軸方向に垂直な断面の、筐体2、整流筒9又はインナーパイプ11の中空部の断面積をいう。
【0041】
ここで中空糸膜の横断面の合計断面積S2は下記式(3)で表すことができる。中空糸膜存在区画内の中空糸膜10本について、それぞれ最も長い方向と短い方向の2方向ずつ外径を測定する。この合計20箇所の測定値の平均値を中空糸膜の外径Rとする。この外径Rを使用し、中空糸膜の横断面が真円と仮定して式(3)により中空糸膜の横断面の合計断面積S2を算出する。なお、中空糸膜存在区画内に存在する中空糸膜が10本未満の場合は、中空糸膜存在区画内に存在する全ての中空糸膜について外径を測定し、平均値を算出すればよい。
S2=[円周率]×[中空糸膜の外径R/2]
2×[中空糸膜存在区画内の中空糸膜の本数] ・・・(3)
【0042】
ここでインナーパイプ11内側の中空糸膜の充填率A1が低いほどインナーパイプ11内側の通液抵抗が下がる。インナーパイプ11内側の中空糸膜の充填率A1は0%以上50%以下とすることが好ましく、0%以上40%以下とすることがより好ましく、0%以上30%以下とすることがさらに好ましい。
【0043】
一方、インナーパイプ11外側の中空糸膜の充填率A2は、インナーパイプ11内側の中空糸膜の充填率A1とのバランスを考慮して適宜設定すればよいが、20%以上70%以下とすることが好ましく、30%以上60%以下とすることがより好ましく、40%以上60%以下とすることがさらに好ましい。
【0044】
なお、インナーパイプ11がその部位によって直径が変化するテーパー形状の場合、インナーパイプ11の第1端側と第2端側の各々において、インナーパイプ11の内側と外側の中空糸膜の充填率を測定する。そして第1端側と第2端側のインナーパイプ11内側における中空糸膜充填率の平均値をインナーパイプ11内側の中空糸膜の充填率A1とする。そして第1端側と第2端側におけるインナーパイプ11外側の中空糸膜充填率の平均値をインナーパイプ11外側の中空糸膜の充填率A2とする。
【0045】
ここで、インナーパイプ11の断面積(内側断面積)をT1、筐体2の断面積(内側断面積)をT2としたとき、下記式(1)の流動パラメータFを1.0以上8.0以下とすることが好ましい。
F=(A2−A1)×T1/T2 ・・・(1)
【0046】
式(1)において(A2−A1)はインナーパイプ11の外側と内側の中空糸膜の充填率の差であり、インナーパイプ11の外側と内側の通液抵抗の差を表している。(A2−A1)が大きいほど、インナーパイプ11の内側に原液が流れやすい。一方T1/T2は筐体2の断面積に対するインナーパイプ11の断面積の割合を表しており、T1/T2が大きいほどインナーパイプ11の内側に原液が流れやすい。
【0047】
インナーパイプ11の内側に十分に原液を導き、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍の洗浄性を向上させるには式(1)の流動パラメータFを1.0以上8.0以下とすることが好ましく、2.0以上8.0以下とすることがより好ましい。
【0048】
流動パラメータFが1.0未満だと、インナーパイプ11の内側の流速が低下し、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍で十分な洗浄性が得られない場合がある。一方、流動パラメータFが8.0を超えると、インナーパイプ11の外側の流速が大幅に低下し、インナーパイプ11の外側での中空糸膜の洗浄性が低下する場合がある。
【0049】
なお、インナーパイプ11がその部位によって直径が変化するテーパー形状の場合、インナーパイプ11の第1端側と第2端側の各々において、インナーパイプ11の内側断面積を測定する。そして第1端側と第2端側におけるインナーパイプ11の内側断面積の平均値をインナーパイプ11の断面積(内側断面積)T1とする。
【0050】
<インナーパイプ長さ>
第1実施形態の中空糸膜モジュール100Aにおいて、インナーパイプ11の長さ(中空糸膜モジュール軸方向)は、筐体サイドノズル2cの内径D以上とすることが好ましく、1.5×D以上とすることがより好ましく、2×D以上とすることがさらに好ましい。ここでインナーパイプ11の長さとは、第1ポッティング部3の第2端側(下側)から、インナーパイプ11の第2端側(下側)までの長さである。
【0051】
インナーパイプ11の長さが筐体サイドノズル2cの内径D未満だと、モジュール第2端側(下側)からの流れがインナーパイプ11に到達する前にモジュール径方向に分散し、インナーパイプ11内側の流速が十分に向上しない場合がある。一方、第1ポッティング部3の第2端側(下側)から筐体2の第2端(原液流入口5)までの長さをLとしたとき、インナーパイプ11の長さはL以下とすることが好ましく、60×D以下とすることがより好ましく、40×D以下とすることがさらに好ましく、5×D以下とすることがさらに好ましい。
【0052】
インナーパイプ11は第2ポッティング部4を貫通し、筐体2の第2端側まで延長することもできる。なお、インナーパイプ11が長いとインナーパイプ11内側と外側の通液抵抗差が大きくなるため、インナーパイプ11内側の流速は向上し、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍での洗浄性は向上するが、一方でインナーパイプ11外側の流速は低下するため、インナーパイプ11外側での洗浄性は低下する場合がある。
【0053】
<インナーパイプ側面開口部>
インナーパイプ11は、その側面に1つ以上の側面開口部12を有しているが、第1ポッティング部3の第2端側(下側)から長さD(筐体サイドノズル2cの内径)の範囲に存在する側面開口部12を第1側面開口部と呼ぶ。第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍での流速を向上させるには、インナーパイプ11の第1側面開口部の総開口面積の割合を大きくすることが好ましい。インナーパイプ11の側面開口部12の総開口面積のうち、第1側面開口部が占める総開口面積の割合R1(式4)は、50%以上とすることが好ましく、80%以上とすることがより好ましい。
R1[%]=[第1側面開口部の総開口面積]/[側面開口部の総開口面積]×100 ・・・(4)
【0054】
また、インナーパイプ11の第1側面開口部が第1ポッティング部3の第2端側(下側)に近いほど、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍での流速をさらに高められるため、第1側面開口部が第1ポッティング部3の第2端側と接していることが好ましい。
【0055】
また、インナーパイプ11の第1側面開口部の総開口面積の、筐体2の内側断面積T2に対する割合R2(式5)は5%以上50%以下とすることが好ましく、10%以上40%以下とすることがより好ましい。R2が5%未満だと、第1側面開口部の開口面積が小さ過ぎて、周囲に流れを十分拡散できない場合がある。一方、R2が50%を超えると、第1側面開口部の開口面積が大き過ぎて、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍での流速が低下する場合がある。
R2[%]=[第1側面開口部の総開口面積]/T2×100 ・・・(5)
【0056】
側面開口部12から放射状に流れを発生させるため、側面開口部12はインナーパイプ11の周方向に略均等に配置することが好ましい。側面開口部12の配置が不均一だと、側面開口部12からの流れに偏りが発生し、流速の低い部位が発生する場合がある。側面開口部12はインナーパイプ11の周方向に一定間隔で配置してもよいし、千鳥配置等にしてもよい。側面開口部12の形状は特に限定されないが、円形、楕円形、長方形などの形状とすることができる。
【0057】
また、インナーパイプ11の全周に亘り、側面開口部12を設けることもできる。また、インナーパイプ11は第1ポッティング部3や第2ポッティング部4で固定する方法や、整流筒9や筐体2とシャフト等を介して接続して固定する方法によりモジュール内に設置することができる。
【0058】
<整流筒>
整流筒9はその側面に1つ以上の整流孔10を有しているが、整流孔の総開口面積の筐体2の内側断面積T2に対する割合R3(式6)は5%以上50%以下とすることが好ましく、10%以上40%以下とすることがより好ましく、15%以上30%以下とすることがさらに好ましい。R3が5%未満だと、整流孔の開口面積が小さ過ぎて、整流筒9の内側で偏流が発生し、流速の低い部位が発生する場合がある。一方、R3が50%を超えると、第1側面開口部の開口面積が大き過ぎて、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍での流速が低下する場合がある。
R3[%]=[整流孔の総開口面積]/[T2]×100 ・・・(6)
【0059】
また、整流孔10のうち、第1ポッティング部3の第2端側(下側)から長さD(筐体サイドノズル2cの内径)の範囲に存在する整流孔10を第1整流孔と呼ぶ。第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍での流速を向上させるには、第1整流孔の総開口面積の割合を大きくすることが好ましい。整流孔10の総開口面積のうち、第1整流孔が占める総開口面積の割合R4(式7)は、50%以上とすることが好ましく、80%以上とすることがより好ましい。また、第1整流孔が第1ポッティング部3の第2端側(下側)に近いほど、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍での流速をさらに高められるため、第1整流孔が第1ポッティング部3の第2端側と接していることが好ましい。
R4[%]=[第1整流孔の総開口面積]/[整流孔の総開口面積]×100 ・・・(7)
【0060】
整流筒9の内側で放射状に流れを発生させるため、整流孔10は整流筒9の周方向に略均等に配置することが好ましい。整流孔10の配置が不均一だと、整流筒9の内側の流れに偏りが発生し、流速の低い部位が発生する場合がある。整流孔10は整流筒9の周方向に一定間隔で配置してもよいし、千鳥配置等にしてもよい。整流孔10の形状は特に限定されないが、円形、楕円形、長方形などの形状とすることができる。
【0061】
また、整流筒9の全周に亘り、整流孔10を設けることもできる。また、整流筒9は第1ポッティング部3で固定する方法や、筐体2と接着して固定する方法によりモジュール内に設置することができる。
【0062】
第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍での流速を高めるため、整流筒9の第2端側(下側)での筐体2との間のクリアランスは小さくすることが好ましい。整流筒9の第2端側(下側)と筐体2の間に大きなクリアランスがあると、
図15に示すようにフラッシング時に原液がクリアランス部分から抜けてしまい、第1ポッティング部3の第2端側(下側)での流速が低下してしまう。整流筒9の第2端側(下側)と筐体2との間のクリアランスの、中空糸膜モジュール径方向における断面積は、整流孔10の総開口面積の50%以下とすることが好ましく、20%以下とすることがより好ましい。
【0063】
図4に示すように整流孔10から出た流れは整流筒9と筐体2の間の流路を通って筐体サイドノズル2cに向かって流れ、原液出口6から排出されるが、この流路断面積は大きくすることが好ましい。整流筒9と筐体2の間の流路断面積が小さいと、通液時の圧力損失が大きくなり、筐体サイドノズル2cから距離の離れた整流孔10からの流速が低くなる場合がある。その結果、整流筒9内側で偏流が発生し、流速の低い部位が発生する場合がある。つまり筐体サイドノズル2cの対向面側での流速が低くなる場合がある。
【0064】
整流筒9と筐体2の間の流路の中空糸膜モジュール軸方向における断面積は、筐体2の内側断面積T2の3%以上とすることが好ましく、5%以上とすることがより好ましく、10%以上とすることがさらに好ましい。また、整流筒9と筐体2の間の流路を確保するため、整流筒9の外周部分について
図16のように筐体2の直径を拡大してもよい。
【0065】
なお、式(1)、式(5)、式(6)など、本明細書中で筐体2の内側断面積T2を記載しているが、
図16のように整流筒9の外周部の筐体2を拡径する場合、筐体2の内側断面積T2は、整流筒9よりも第2端側(下側)の部分の筐体2の内径Eを基準に算出した値を使用する。即ち拡径していない部分の筐体2の内径を基準に内側断面積T2を算出する。
【0066】
なお、整流筒9の内径は適宜設定すればよいが、整流筒9よりも第2端側の部分の筐体2の内径Eに対し、80%以上120%以下とすることが好ましく、90%以上110%以下とすることがより好ましい。中空糸膜は整流筒9の内側に充填するため、整流筒9の内径がEの80%未満だと、充填可能な中空糸膜の本数が減り、中空糸膜モジュールの膜面積が減少する場合がある。整流筒9の内径がEの120%を超えると、筐体2の第1端側を大幅に拡径する必要があり、製作コストが上がる場合がある。
【0067】
<中空糸膜モジュールの製造方法>
中空糸膜同士を接着剤で束ねることは、ポッティングと呼ばれる。ポッティングの方法としては、遠心力を利用して液状のポッティング剤(接着剤)を中空糸膜間に浸透させてから硬化させる遠心ポッティング法と、液状のポッティング剤を定量ポンプまたはヘッドにより送液し自然に流動させることにより中空糸膜間に浸透させてから硬化させる静置ポッティング法とが代表的な方法として挙げられる。遠心ポッティング法は遠心力によりポッティング剤が中空糸膜間に浸透しやすく、高粘度のポッティング剤も使用することができる。
【0068】
図12、
図13、
図14を用い、中空糸膜モジュールの遠心ポッティングの一例を説明する。
図12に示すように筐体2に整流筒やインナーパイプ、中空糸膜等の部材を装填し、第1端側に第1ポッティングキャップ15を設置し、第2端側には第2ポッティングキャップ16を設置する。このとき中空糸膜の第1端側は、中空部にポッティング剤が侵入するのを防ぐため、予め目止め処理をしておく。また第2ポッティングキャップ16には貫通孔8を形成するためのピン14を差し込んでおく。
【0069】
続いて
図13に示すようにポッティング剤投入器17より、中空糸膜の第1端側と第2端側にポッティング剤を送液する。ポッティング剤は中空糸膜モジュールを回転させることで遠心力により送液され、ポッティング剤が硬化するまで回転を継続する。ここで中空糸膜の第2端側は中空部にもポッティング剤が侵入し、中空部が閉塞する。
【0070】
ポッティング剤の硬化後にピン14を引き抜くと貫通孔8が形成される。その後第1ポッティングキャップ15と第2ポッティングキャップ16を取り外し、
図14のC−C線でポッティング剤を切断することで中空糸膜の中空部を開口させることができる。最後に筐体上部キャップ2aと筐体下部キャップ2bを液密かつ気密に装着し、中空糸膜モジュールが完成する。
【0071】
使用するポッティング剤の種類は特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂、ポリウレタンやシリコーン樹脂などを用いることができる。
【0072】
<中空糸膜>
本実施形態の中空糸膜モジュールは、分離膜として中空糸膜を備える。中空糸膜は一般的に平膜よりも比表面積が大きく、単位時間当たりにろ過できる液量が多いため有利である。中空糸膜の構造としては全体的に孔径が一様な対称膜や、膜の厚み方向で孔径が変化する非対称膜、強度を保持するための支持層と対象物質の分離を行うための分離機能層を有する複合膜などが存在する。
【0073】
中空糸膜の平均孔径は分離対象によって適宜選択すればよいが、微生物の分離などを目的とする場合、10nm以上、1000nm以下であることが好ましい。平均孔径が10nm未満だと透水性が低くなり、1000nmを超えると微生物等が漏洩する可能性がある。一方、低分子量のタンパク質などの分離を行う場合、平均孔径が2nm〜20nmの中空糸膜を使用することが好ましい。本発明での平均孔径とは最も孔径の小さい緻密層の孔径とする。
【0074】
中空糸膜の材質は特に限定されないが、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体などのフッ素系樹脂、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリプロピレンなどの樹脂を含有することができる。特にフッ素系樹脂やポリスルホン系樹脂からなる分離膜は耐熱性、物理的強度、化学的耐久性が高いことから、中空糸膜モジュールに好適に用いることができる。
【0075】
また、中空糸膜は、フッ素系樹脂やポリスルホン系樹脂に加えて、親水性樹脂をさらに含有してもよい。親水性樹脂によって、中空糸膜の親水性を高め、膜の透水性を向上させることができる。親水性樹脂は、分離膜に親水性を付与することができる樹脂であればよく、具体的な化合物に限定されるものではないが、例えば、セルロースエステル、脂肪酸ビニルエステル、ビニルピロリドン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ポリメタクリル酸エステル系樹脂及びポリアクリル酸エステル系樹脂などが好適に用いられる。
【0076】
中空糸膜モジュールを作製する場合はポッティングキャップに中空糸膜を充填し、ポッティング剤で固定する。その際、ハンドリングを良好にし、接着不良を防止する観点から、予め中空糸膜を乾燥させておく。しかし中空糸膜の多くは乾燥により収縮が起こり、透水性が低下するという問題があるため、グリセリン水溶液に浸漬した後で乾燥させたものを用いる。グリセリン水溶液に浸漬した後で乾燥すると、グリセリンが細孔内に残留することで乾燥による収縮を防止することができ、その後エタノールなどの溶媒で浸漬処理を行うことで透水性を回復させることができる。
【0077】
<中空糸膜モジュールの運転方法>
次に中空糸膜モジュール100Aによるろ過方法を述べる。原液は筐体下部キャップ2bの原液流入口5より中空糸膜モジュール100A内に流入し、中空糸膜1を透過したろ過液は、筐体上部キャップ2aのろ過液出口7より中空糸膜モジュール100Aの外部に排出される。
【0078】
ここで、筐体サイドノズル2cの原液出口6を閉じた状態で、供給した原液を全量ろ過する方法をデッドエンドろ過と呼ぶ。一方、筐体サイドノズル2cの原液出口6を開放して原液を排出しながらろ過する方式、即ち膜面に対して原液を平行に流しながらろ過する方式をクロスフローろ過と呼ぶ。
【0079】
クロスフローろ過は原液中の濁質等が膜面に堆積するのを抑制する効果や、原液に含まれる成分の膜表面での濃度分極を抑制する効果があるが、原液の送液量が多いため、デッドエンドろ過と比べ動力コストは高くなる。
【0080】
また、
図1の中空糸膜モジュール100Aのように中空糸膜の外側に原液を供給し、外側から内側に向かってろ過を行う方式は外圧式と呼ばれる。逆に中空糸膜の内側から外側に向かってろ過を行う方式は内圧式と呼ばれる。内圧式では中空糸膜の中空部に原液が供給されるため、高濁度の原液の場合、中空部が濁質で閉塞して送液できなくなる場合がある。そのため高濁液のろ過には外圧式の中空糸膜モジュールが好ましい。
【0081】
ろ過流束は、原液の性状に応じて適宜設定すればよいが、0.1m
3/m
2/d以上10.0m
3/m
2/d以下とすることが好ましく、0.3m
3/m
2/d以上5.0m
3/m
2/d以下とすることがより好ましく、0.5m
3/m
2/d以上3.0m
3/m
2/d以下とすることがさらに好ましい。
【0082】
前述のフラッシングやクロスフローろ過では、原液流入口5から中空糸膜モジュール内に原液を供給し、原液出口6から原液を排出することで中空糸膜モジュール内を洗浄するが、原液の膜面線速度を高めることで膜面に働くせん断応力が向上し、洗浄性が向上する。
【0083】
膜面線速度(m/s)は、原液流量(m
3/s)を中空糸膜モジュールの径方向断面の流路面積(m
2)で除することで求めることができるが、中空糸膜モジュール内に整流筒やインナーパイプ等の部材が存在する場合、流路面積は部位により変化する。そこで本発明では筐体の内側断面積T2と中空糸膜の横断面の合計断面積S2を基準に式(8)で代表膜面線速度を定義した。
代表膜面線速度[m/s]=[原液流量]/(T2−S2) ・・・(8)
【0084】
フラッシング時の代表膜面線速度は0.1m/s以上とすることが好ましく、0.3m/s以上とすることがより好ましく、0.5m/s以上とすることがさらに好ましい。代表膜面線速度が0.1m/s未満だと、十分な洗浄効果が得られない場合がある。またフラッシング時の代表膜面線速度は5m/s以下とすることが好ましく、3m/s以下とすることがより好ましく、2m/s以下とすることがさらに好ましい。代表膜面線速度が5m/sを超えると動力コストが高くなる場合がある。
【0085】
デッドエンドろ過及びクロスフローろ過では、定期的にろ過を停止し、逆洗を実施することもできる。逆洗は中空糸膜モジュール100Aのろ過液出口7から逆洗液を供給して、中空糸膜の内側から外側に向かって逆洗液を流し、膜を洗浄する。逆洗により透水性が回復すると、ろ過時間を延長することができ、薬液洗浄の頻度が減るため運転コストを低減できる。逆洗はろ過液で実施してもよいし、水など他の液体を使用することもできる。
【0086】
逆洗流束は、原液の性状や、中空糸膜の目詰まりの状態に応じて適宜設定すればよいが、0.5m
3/m
2/d以上10.0m
3/m
2/d以下とすることが好ましく、1.0m
3/m
2/d以上5.0m
3/m
2/d以下とすることがより好ましい。逆洗流束が0.5m
3/m
2/d未満だと、洗浄効果が低くなる場合がある。また逆洗流束が10.0m
3/m
2/dを超えると動力コストが高くなる場合や、逆洗に使用する液が大量に必要となる場合がある。
【0087】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態にかかる中空糸膜モジュールの構成について、図面を参照しながら説明する。
図6は、本発明の第2実施形態にかかる中空糸膜モジュール100Bを示す概略縦断面図であり、
図7は、フラッシング時の中空糸膜モジュール100B内の液流を示している。
図8は、本発明の第2実施形態の変形例である、中空糸膜モジュール100Cを示す概略縦断面図であり、
図9は、フラッシング時の中空糸膜モジュール100C内の液流を示している。
【0088】
<整流構造>
図6に示す中空糸膜モジュール100Bには、第1実施形態のインナーパイプ11に替わり、中心空間部13が設けられている。中心空間部13は、第1ポッティング部3で中空糸膜1を接着固定する際に、中空糸膜モジュールの中心部をスペーサー等で区分けした状態で接着することにより形成させることができる。
【0089】
なお、本発明の第2実施形態にかかる中空糸膜モジュールの構成は、インナーパイプに替わり、中心空間部が設けられていること以外は、本発明の第1実施形態にかかる中空糸膜モジュールの構成と同様である。
【0090】
中心空間部13を形成することで、フラッシング時は
図7のような原液の流れとなる。モジュールの第2端側(下側)からモジュールの第1端側(上側)へ向かう原液は、中心空間部13を通って第1ポッティング部3の第2端側(下側)のモジュール径方向中心部に導かれ、その後整流筒9の整流孔10に向かって流れる。この整流構造により第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍で、モジュール径方向中心部から径方向外周側に指向して放射状に流れが発生し、堆積した濁質を洗い流すことができる。
【0091】
<流動パラメータF>
ここで、フラッシング時に中心空間部13に原液を導くため、中心空間部13の中空糸膜の充填率A1は、中心空間部13外側の中空糸膜の充填率A2より小さくする必要がある。これは中心空間部13の中空糸膜の充填率A1を中心空間部13の外側の中空糸膜の充填率A2よりも小さくすることで通液抵抗を下げ、中心空間部13での流速を高めるためである。
【0092】
なお、ここで中空糸膜の充填率とは、第1ポッティング部3と第2ポッティング部4の間における中空糸膜モジュールの筐体2の横断面(
図6の左右方向に平行かつ紙面に垂直な面)で中空糸膜が占める面積の割合のことである。筐体2内側の中空糸膜存在区画の断面積をS1、中空糸膜の横断面の合計断面積をS2としたとき、中空糸膜の充填率は下記式(2)で表すことができる。
中空糸膜の充填率[%]=S2/S1×100 ・・・(2)
【0093】
ここで中空糸膜存在区画とは、中空糸膜が存在する一定の区画を表す。この区分けの方法としては、筐体2、整流筒9などの部材により区分けする方法や、
図6の中空糸膜モジュール100Bのようにポッティング部での中空糸膜の固定により区分けする方法などが挙げられる。また、筐体2内において結束部材等で中空糸膜を束ねることで区分けすることもできる。
【0094】
例えば本発明の第2実施形態において、中心空間部13に中空糸膜が存在しない場合、整流筒9の内側断面積から中心空間部13の軸方向に垂直な断面の断面積を差し引いた面積が、中空糸膜存在区画の断面積S1となる。なお、中空糸膜が存在しない区画の中空糸膜の充填率は0%である。
【0095】
ここで中空糸膜の横断面の合計断面積S2は下記式(3)で表すことができる。中空糸膜存在区画内の中空糸膜10本について、それぞれ最も長い方向と短い方向の2方向ずつ外径を測定する。この合計20箇所の測定値の平均値を中空糸膜の外径Rとする。この外径Rを使用し、中空糸膜の横断面が真円と仮定して式(3)により中空糸膜の横断面の合計断面積S2を算出する。なお、中空糸膜存在区画内に存在する中空糸膜が10本未満の場合は、中空糸膜存在区画内に存在する全ての中空糸膜について外径を測定し、平均値を算出すればよい。
S2=[円周率]×[中空糸膜の外径R/2]
2×[中空糸膜存在区画内の中空糸膜の本数] ・・・(3)
【0096】
ここで中心空間部13の中空糸膜の充填率A1が低いほど中心空間部13の通液抵抗が下がる。中心空間部13の中空糸膜の充填率A1は0%以上50%以下とすることが好ましく、0%以上40%以下とすることがより好ましく、0%以上30%以下とすることがさらに好ましい。
【0097】
一方、中心空間部13外側の中空糸膜の充填率A2は、中心空間部13の中空糸膜の充填率A1とのバランスを考慮して適宜設定すればよいが、20%以上70%以下とすることが好ましく、30%以上60%以下とすることがより好ましく、40%以上60%以下とすることがさらに好ましい。
【0098】
なお、
図6の中空糸膜モジュール100Bのように中心空間部13がその部位によって直径が変化するテーパー形状の場合、第1ポッティング部3の第2端側と、第2ポッティング部4の第1端側の各々において、中心空間部13と中心空間部13の外側の中空糸膜充填率を測定する。そして第1ポッティング部3の第2端側と、第2ポッティング部4の第1端側における中心空間部13の中空糸膜充填率の平均値を、中心空間部13の中空糸膜の充填率A1とする。そして第1ポッティング部3の第2端側と、第2ポッティング部4の第1端側における中心空間部13の外側の中空糸膜充填率の平均値を、中心空間部13外側の中空糸膜の充填率A2とする。
【0099】
ここで、中心空間部13の軸方向に垂直な断面の断面積をT1、筐体2の断面積(内側断面積)をT2としたとき、下記式(1)の流動パラメータFを1.0以上8.0以下とすることが好ましい。
F=(A2−A1)×T1/T2 ・・・(1)
【0100】
式(1)において(A2−A1)は中心空間部13の外側と内側の中空糸膜の充填率の差であり、中心空間部13の外側と内側の通液抵抗の差を表している。(A2−A1)が大きいほど、中心空間部13に原液が流れやすい。一方T1/T2は筐体2の断面積に対する中心空間部13の断面積の割合を表しており、T1/T2が大きいほど中心空間部13に原液が流れやすい。
【0101】
中心空間部13に十分に原液を導き、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍の洗浄性を向上させるには式(1)の流動パラメータFを1.0以上8.0以下とすることが好ましく、2.0以上8.0以下とすることがより好ましい。
【0102】
流動パラメータFが1.0未満だと、中心空間部13の流速が低下し、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍で十分な洗浄性が得られない場合がある。一方、流動パラメータFが8.0を超えると、中心空間部13の外側の流速が大幅に低下し、中心空間部13の外側での中空糸膜の洗浄性が低下する場合がある。
【0103】
なお、中心空間部13がその部位によって直径が変化するテーパー形状の場合、第1ポッティング部3の第2端側と、第2ポッティング部4の第1端側の各々において、中心空間部13の断面積を測定する。そして第1ポッティング部3の第2端側と、第2ポッティング部4の第1端側における中心空間部13の断面積の平均値を中心空間部13の軸方向に垂直な断面の断面積T1とする。
【0104】
また中空糸膜の充填率を中空糸膜モジュールの中心部から外周部に向かって連続的に変化させた中空糸膜モジュールとすることもできるが、その場合、筐体2の中心部から筐体2の内径の30%の範囲を中心空間部13と定義する。
【0105】
<中心空間部長さ>
第2実施形態の中空糸膜モジュール100Bにおいて、中心空間部13の長さ(中空糸膜モジュール軸方向)は筐体サイドノズル2cの内径D以上とすることが好ましく、1.5×D以上とすることがより好ましく、2×D以上とすることがさらに好ましい。ここで中心空間部13の長さとは、第1ポッティング部3の第2端側(下側)から、中空糸膜1が結束または固定される箇所までの長さである。中空糸膜1は結束部材や第2ポッティング部4等で結束または固定することができる。
【0106】
中心空間部13の長さが筐体サイドノズル2cの内径D未満だと、モジュール第2端側(下側)からの流れが中心空間部13に到達する前にモジュール径方向に分散し、中心空間部13の流速が十分に向上しない場合がある。一方、第1ポッティング部3の第2端側(下側)から第2ポッティング部4の第2端側(下側)までの長さをMとし、第1ポッティング部3の第2端側(下側)から第2ポッティング部4の第1端側(上側)までの長さをNとしたとき、中心空間部13の長さはN以下となる。なお、第2ポッティング部4の中心部に貫通孔8を設けることで、貫通孔8から中心空間部13に流路を繋げることもできる。
【0107】
中心空間部13が長いと中心空間部13と中心空間部13外側の通液抵抗差が大きくなるため、中心空間部13の流速は向上し、第1ポッティング部3の第2端側(下側)近傍での洗浄性は向上するが、一方で中心空間部13外側の流速は低下するため、中心空間部13外側での洗浄性は低下する場合がある。
【実施例】
【0108】
以下に具体的な実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0109】
(参考例1)
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマー38質量部とγ−ブチロラクトン62質量部を混合し、160℃で溶解し高分子溶液を作製した。この高分子溶液を、85質量%γ−ブチロラクトン水溶液を中空部形成液体として随伴させながら二重管の口金から吐出し、口金の30mm下方に設置した温度20℃のγ−ブチロラクトン85質量%水溶液からなる冷却浴中で凝固させて、球状構造からなる中空糸膜を作製した。
【0110】
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマー14質量部、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製、CAP482−0.5)1質量部、N−メチル−2−ピロリドン77質量部、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(三洋化成工業(株)製、“イオネット”(登録商標)T−20C)5質量部、水3質量部を混合し、95℃で溶解して高分子溶液(製膜原液)を作製した。
【0111】
この製膜原液を、球状構造からなる中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させて球状構造層の上に三次元編目構造を形成させた中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜は、外径1350μm、内径800μmで、膜表面平均孔径は40nmであった。
【0112】
(実施例1)
(中空糸膜モジュール作製)
参考例1の中空糸膜を30質量%グリセリン水溶液に1時間浸漬後、風乾した。この中空糸膜の片端の中空部をシリコーン接着剤(東レ・ダウコーニング社製、SH850A/B、2剤を質量比が50:50となるように混合したもの)で目止めした。
【0113】
塩化ビニル樹脂製の筐体2(内径77mm、整流筒外周部内径90mm、長さ1900mm、筐体サイドノズル内径24mm)、整流筒9(外径75mm、内径71mm)、インナーパイプ11(外径24mm、内径20mm)の表面のうち、ポッティング剤で接着する領域については、予めサンドペーパー(#80)でヤスリがけを行い、エタノールで脱脂した。
【0114】
その後、前述の中空糸膜の束を、
図12に示すように筐体2及び整流筒9内に充填した。このときインナーパイプ11内側の中空糸膜の充填率A1は0%とし、インナーパイプ11の外側の中空糸膜の充填率A2は50%とした。
【0115】
筐体2のモジュール上部側となる第1端部(
図12の右側端部)に目止めした側の端部が向くように、中空糸膜束を配置し、さらに第1ポッティングキャップ15を装着した。モジュール下部側となる第2端部(
図12の左側端部)には底に36個の穴が空いた第2ポッティングキャップ16を装着した。
【0116】
その後、第2ポッティングキャップ16の底の穴に36本のピン14を差し込んで固定した。ピン14の位置は
図5の貫通孔と同様に配置した。こうして両端にポッティングキャップが装着されたモジュールを遠心成型機内に設置した。
【0117】
ポリメリックMDI(Huntsman社製、Suprasec5025)、ポリブタジエン系ポリオール(Cray Valley社製、Krasol LBH 3000)及び2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを、質量比が57:100:26となるように混合した。得られた混合物(つまりポリウレタン樹脂液)を、ポッティング剤投入器17に入れた。
【0118】
続いて遠心成型機を回転させ、ポッティング剤を両端のポッティングキャップに充填し、第1ポッティング部3及び第2ポッティング部4を形成した。ポッティング剤投入器17は2方向に分割されたものであり、遠心力によりモジュール上部側(第1端部)及びモジュール下部側(第2端部)にポリウレタン樹脂液が投入される。遠心成型機内の温度は35℃、遠心時間は4時間とした。
【0119】
遠心後、第1ポッティングキャップ15、第2ポッティングキャップ16及びピン14を取り外し、さらに室温で24時間ポッティング剤を後硬化させた。その後、筐体2のモジュール上部側(第1端部側)の外側のポッティング剤部分(
図14に示すC−C面)をチップソー式回転刃でカットし、中空糸膜の端面を開口させた。続いて筐体2の両端に筐体上部キャップ2a、筐体下部キャップ2bを取り付け、
図16に示す中空糸膜モジュール100Fを得た。
【0120】
その後中空糸膜モジュール100Fにエタノールを送液してろ過を行い、中空糸膜の細孔内をエタノールで満たした。続いてRO(Reverse Osmosis)水を送液してろ過を行い、エタノールをRO水に置換した。なお、第1ポッティング部3の第2端側から第2ポッティング部4の第1端側までの長さは1776mmとした。
【0121】
中空糸膜モジュール100Fのインナーパイプ11の長さは12mmとした。またインナーパイプ11には第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ12mm、幅14.8mm(長方形)の第1側面開口部を4箇所、周方向に均等に配置した。また整流筒9には第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ10mm、幅8mm(長方形)の第1整流孔を12箇所、周方向に均等に配置した。整流筒9と筐体2の間の流路の幅は7.5mmで、軸方向高さは50mmとした。
【0122】
中空糸膜モジュール100Fについて、流動パラメータFを上記式(1)により、第1側面開口部が占める総開口面積の割合R1を上記式(4)により、インナーパイプ11の第1側面開口部の総開口面積の、筐体2の内側断面積T2に対する割合R2を上記式(5)により、整流孔の総開口面積の筐体2の内側断面積T2に対する割合R3を上記式(6)により、整流孔10の総開口面積のうち、第1整流孔が占める総開口面積の割合R4を上記式(7)により算出した。結果を表1に示す。
【0123】
(排濁性評価)
中空糸膜モジュール100Fの排濁性は以下の方法で評価した。
ベントナイト70mg/L、ポリ塩化アルミニウム70mg/L、pH7の懸濁液を調整し、1時間以上撹拌して凝集フロックを形成させた。この供給懸濁液をろ過流束1m
3/m
2/dで30分間ろ過した。続いてろ過液による逆洗を行った。逆洗流束は2m
3/m
2/dで1分間実施した。続いて供給懸濁液を使用し、代表膜面線速度0.4m/sでフラッシングを1分間実施した。逆洗とフラッシングで中空糸膜モジュール外部に排出された排出液を回収して懸濁物質質量を測定し、式(9)により洗浄による排濁率を算出した。
排濁率[%]=[排出懸濁物質質量]/[供給懸濁物質質量]×100 ・・・(9)
【0124】
供給懸濁物質質量及び排出懸濁物質質量は以下の方法で求めた。
懸濁液1Lを孔径1μmのガラスろ紙でろ過し、110℃で3時間乾燥させた後、質量を測定し、予め測定したガラスろ紙の質量を差し引くことで懸濁液1L当たりの懸濁物質質量を測定し、懸濁物質濃度(g/L)を求めた。
【0125】
供給懸濁物質質量は式(10)に示すように供給懸濁液の懸濁物質濃度に、供給液量(ろ過液量とフラッシング液量の合計)を乗じて求めた。
排出懸濁物質質量は式(11)に示すように、洗浄で外部に排出された排出液の懸濁物質濃度に、排出液量(逆洗液量とフラッシング液量の合計)を乗じて求めた。
供給懸濁物質質量[g]=[供給懸濁液の懸濁物質濃度]×[ろ過液量+フラッシング液量] ・・・(10)
排出懸濁物質質量[g]=[排出液の懸濁物質濃度]×[逆洗液量+フラッシング液量] ・・・(11)
【0126】
前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は90%だった。
【0127】
(実施例2〜8)
インナーパイプ11の長さを表1に示すものに変更した以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。
各中空糸膜モジュール100Fの排濁率の評価結果を表1に示す。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0128】
インナーパイプ11の長さと排濁率の関係は、表1に示すとおり、実施例2ではD:98%、実施例3では1.5×D:99.5%、実施例4では2×D:99.5%、実施例5では3×D:99.5%、実施例6では5×D:99%、実施例7では40×D:96%、実施例8では60×D:94%だった。
なお、表1中のDは、筐体サイドノズル内径を示す。
【0129】
(実施例9)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)とし、インナーパイプ11内側の中空糸膜の充填率A1を10%とした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は98%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0130】
(実施例10)
インナーパイプ11内側の中空糸膜の充填率A1を20%とした以外は、実施例9と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は98%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0131】
(実施例11)
インナーパイプ11内側の中空糸膜の充填率A1を30%とした以外は、実施例9と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は96%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0132】
(実施例12)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)、内径を12mm、外径を16mm、第1側面開口部の幅を8.6mmとした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は96%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0133】
(実施例13)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)、内径を28mm、外径を32mm、第1側面開口部の幅を21.1mmとし、インナーパイプ11外側の中空糸膜の充填率A2を60%とした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は99%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0134】
(実施例14)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)とし、インナーパイプ11には第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ12mm、幅14.8mm(長方形)の第1側面開口部を4箇所、周方向に均等に配置した。さらにインナーパイプ11の第2端側から第1端側に向かって5mmから8mmの範囲に、高さ3mm、幅14.8mm(長方形)の側面開口部12を4箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は98%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0135】
(実施例15)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)とし、インナーパイプ11には第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ12mm、幅14.8mm(長方形)の第1側面開口部を4箇所、周方向に均等に配置した。さらにインナーパイプ11の第2端側から第1端側に向かって5mmから17mmの範囲に、高さ12mm、幅14.8mm(長方形)の側面開口部12を4箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は97%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0136】
(実施例16)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)とし、インナーパイプ11には第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ12mm、幅14.8mm(長方形)の第1側面開口部を4箇所、周方向に均等に配置した。さらにインナーパイプ11の第2端側から第1端側に向かって5mmから17mmの範囲に、高さ12mm、幅14.8mm(長方形)の側面開口部12を4箇所、周方向に均等に配置し、インナーパイプ11の第2端側から第1端側に向かって25mmから37mmの範囲に、高さ12mm、幅14.8mm(長方形)の側面開口部12を4箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は94%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0137】
(実施例17)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)とし、第1側面開口部の高さを24mmとした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は99%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0138】
(実施例18)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)とし、第1側面開口部の高さを4mmとした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は99%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0139】
(実施例19)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)とした。また整流筒9には第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ10mm、幅8mm(長方形)の第1整流孔を12箇所、周方向に均等に配置した。さらに第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって28mmから36mmの範囲に、高さ8mm、幅12mm(長方形)の整流孔10を12箇所、周方向に均等に配置し、第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって40mmから48mmの範囲に、高さ8mm、幅12mm(長方形)の整流孔10を12箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は94%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0140】
(実施例20)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)とした。また整流筒9には第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ8mm、幅10mm(長方形)の第1整流孔を12箇所、周方向に均等に配置し、さらに第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって12mmから20mmの範囲に、高さ8mm、幅10mm(長方形)の第1整流孔を12箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は97%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0141】
(実施例21)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)とした。また整流筒9には第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ6mm、幅6mm(長方形)の第1整流孔を12箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は98%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0142】
(実施例22)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)とした。また整流筒9には第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ5mm、幅8mm(長方形)の第1整流孔を12箇所、周方向に均等に配置した。さらに第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって30mmから35mmの範囲に、高さ5mm、幅8mm(長方形)の整流孔10を12箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は98%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0143】
(実施例23)
インナーパイプ11の長さを72mm(3×D)とした。また整流筒9には第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ5mm、幅5mm(長方形)の第1整流孔を12箇所、周方向に均等に配置した。さらに第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって30mmから35mmの範囲に、高さ5mm、幅5mm(長方形)の整流孔10を12箇所、周方向に均等に配置し、さらに第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって40mmから45mmの範囲に、高さ5mm、幅5mm(長方形)の整流孔10を12箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Fを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Fの排濁率を評価した結果、排濁率は94%だった。
流動パラメータF、割合R1、割合R2、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表1に示す。
【0144】
(実施例24)
インナーパイプ11に替わり、長さが、第1ポッティング部3の第2端側(下側)から第2ポッティング部4の第1端側(上側)までの長さN(74×D)である中心空間部13を設けた中空糸膜モジュール100G(
図17)を作製した。中心空間部13は中空糸膜モジュールの第2端側に向かって縮径する円錐形状とし、第1ポッティング部3の第2端側での中心空間部13の直径は20mmとし、第2ポッティング部4の第1端側では中心空間部13を設けず、中空糸膜1を略均等に配置した。また中心空間部13での中空糸膜の充填率A1は0%とし、中心空間部13の外側の中空糸膜の充填率A2は35%とした。上記以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール100Gを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Gの排濁率を評価した結果、排濁率は94%だった。
流動パラメータF、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表2に示す。
【0145】
(実施例25)
中心空間部13の外側の中空糸膜の充填率A2を50%とした以外は実施例24と同様の方法で中空糸膜モジュール100Gを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Gの排濁率を評価した結果、排濁率は91%だった。
流動パラメータF、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表2に示す。
【0146】
(実施例26)
整流筒9の第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ8mm、幅8mm(長方形)の第1整流孔を12箇所、周方向に均等に配置した。さらに第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって30mmから34mmの範囲に、高さ4mm、幅4mm(長方形)の整流孔10を12箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例25と同様の方法で中空糸膜モジュール100Gを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Gの排濁率を評価した結果、排濁率は90%だった。
流動パラメータF、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表2に示す。
【0147】
(実施例27)
整流筒9の第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ5mm、幅5mm(長方形)の第1整流孔を12箇所、周方向に均等に配置した。さらに第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって30mmから35mmの範囲に、高さ5mm、幅5mm(長方形)の整流孔10を12箇所、周方向に均等に配置し、第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって40mmから45mmの範囲に、高さ5mm、幅5mm(長方形)の整流孔10を12箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例25と同様の方法で中空糸膜モジュール100Gを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Gの排濁率を評価した結果、排濁率は86%だった。
流動パラメータF、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表2に示す。
【0148】
(実施例28)
円柱状の中心空間部13を設けた中空糸膜モジュール100H(
図18)を作製した。第1ポッティング部3の第2端側での中心空間部13の直径は20mmとし、第2ポッティング部4の第1端側での中心空間部13の直径も20mmとした。上記以外は実施例24と同様の方法で中空糸膜モジュール100Hを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Hの排濁率を評価した結果、排濁率は94%だった。
流動パラメータF、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表2に示す。
【0149】
(実施例29)
中心空間部13の外側の中空糸膜の充填率A2を50%とした以外は実施例28と同様の方法で中空糸膜モジュール100Hを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Hの排濁率を評価した結果、排濁率は92%だった。
流動パラメータF、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表2に示す。
【0150】
(実施例30)
整流筒9の第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ8mm、幅8mm(長方形)の第1整流孔を12箇所、周方向に均等に配置した。さらに第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって30mmから34mmの範囲に、高さ4mm、幅4mm(長方形)の整流孔10を12箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例29と同様の方法で中空糸膜モジュール100Hを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Hの排濁率を評価した結果、排濁率は90%だった。
流動パラメータF、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表2に示す。
【0151】
(実施例31)
整流筒9の第1ポッティング部3の第2端側に接する位置に、高さ5mm、幅5mm(長方形)の第1整流孔を12箇所、周方向に均等に配置した。さらに第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって30mmから35mmの範囲に、高さ5mm、幅5mm(長方形)の整流孔10を12箇所、周方向に均等に配置し、第1ポッティング部3の第2端側から中空糸膜モジュールの第2端側に向かって40mmから45mmの範囲に、高さ5mm、幅5mm(長方形)の整流孔10を12箇所、周方向に均等に配置した。上記以外は実施例29と同様の方法で中空糸膜モジュール100Hを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Hの排濁率を評価した結果、排濁率は87%だった。
流動パラメータF、割合R3及び割合R4を算出した。結果を表2に示す。
【0152】
(比較例1)
図19に示す中空糸膜モジュール100Iを製作した。インナーパイプ及び中心空間部は設けず、整流筒9の内側の中空糸膜の充填率は50%とした。上記以外は実施例31と同様の方法で中空糸膜モジュール100Iを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Iの排濁率を評価した結果、排濁率は78%だった。
割合R3及び割合R4を算出した。結果を表2に示す。
【0153】
(比較例2)
図20に示す中空糸膜モジュール100Jを製作した。整流筒は設けず、インナーパイプ11内側の中空糸膜の充填率A1は0%とし、インナーパイプ外側の中空糸膜の充填率A2は50%とした。上記以外は実施例5と同様の方法で中空糸膜モジュール100Jを作製した。前述の方法で中空糸膜モジュール100Jの排濁率を評価した結果、排濁率は78%だった。
流動パラメータF、割合R1及び割合R2を算出した。結果を表2に示す。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2017年1月31日出願の日本特許出願(特願2017−15171)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明は、軸方向における第1端と第2端とを有する筒状の筐体と、複数の中空糸膜と、第1ポッティング部と、第2ポッティング部とを備え、さらに上記第2端側から上記第1端側へ向かって上記中空糸膜の外側を流れる流体について、上記第1ポッティング部の上記第2端側の径方向中心部に指向して流れを発生させ、さらに上記第1ポッティング部の上記第2端側の径方向中心部から径方向外周側に指向して放射状に流れを発生させる整流構造を有する、中空糸膜モジュールに関する。