特許第6341410号(P6341410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341410
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】ガス溶存水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/46 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   C02F1/46 Z
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-66637(P2014-66637)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-188797(P2015-188797A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591145874
【氏名又は名称】水青工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100103012
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 隆宣
(72)【発明者】
【氏名】松川 英子
(72)【発明者】
【氏名】西村 喜之
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 一男
(72)【発明者】
【氏名】佐野 昌子
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−246800(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3175997(JP,U)
【文献】 特開2012−187460(JP,A)
【文献】 特開2000−325958(JP,A)
【文献】 特開2010−084225(JP,A)
【文献】 特開2003−129266(JP,A)
【文献】 特開平08−089962(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/096503(WO,A1)
【文献】 特開平11−300360(JP,A)
【文献】 特開2012−217868(JP,A)
【文献】 特開2014−147888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46 − 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔の上側電極と多孔の下側電極との間で固体高分子電解質膜を挟持したガス発生部と、
前記上側電極及び前記下側電極のそれぞれと電源制御部とを一対の導電部材の下端部で連結して前記上側電極及び前記下側電極のそれぞれに対して前記電源制御部からの直流電圧を印加する一対の導電部材と、
前記導電部材に連結された前記ガス発生部を容器の側壁に対して取り付けるための取付部材と、を備えて、主生成ガスが前記上側電極の側で発生するとともに副生成ガスが前記下側電極の側で発生する、ガス溶存水生成装置であって、
前記導電部材に近い側が水平方向に対して上向きに傾斜するようにガス発生部が構成されており
前記ガス発生部における前記下側電極の側には、発生した副生成ガスを前記導電部材の下端部側に導く副生成ガス誘導部が設けられている、ガス溶存水生成装置。
【請求項2】
前記導電部材が、前記容器の前記側壁の側に寄せて取り付けられている、請求項1に記載のガス溶存水生成装置。
【請求項3】
前記導電部材の周囲の少なくとも一部分を覆う被覆部材をさらに備える、請求項1又は2に記載のガス溶存水生成装置。
【請求項4】
前記上側電極の上面に設けられる上側圧接部材と、前記下側電極の下面に設けられる下側圧接部材とによって、前記上側電極と前記固体高分子電解質膜と前記下側電極とが圧接して挟持されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス溶存水生成装置。
【請求項5】
前記上側圧接部材は、前記上側電極の前記上面ができるだけ広い範囲で露出するように構成されている、請求項4に記載のガス溶存水生成装置。
【請求項6】
前記副生成ガス誘導部は、前記下側電極の下面と、下側圧接部材又は前記下側電極の周縁部分から下方に突出する周縁凸部、又は、下側圧接部材の下面に形成された平坦なフレーム部と、である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガス溶存水生成装置。
【請求項7】
前記固体高分子電解質膜と前記上側電極との間及び前記固体高分子電解質膜と前記下側電極との間には、それぞれ、前記上側電極及び前記下側電極よりも目の細かい多孔の貴金属系の触媒層が配置されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載のガス溶存水生成装置。
【請求項8】
前記導電部材が、前記電源制御部の取付部に対して着脱自在に構成されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載のガス溶存水生成装置。
【請求項9】
前記電源制御部が、前記上側電極及び前記下側電極に印加される電圧の正負の極性を切り替えることができる、請求項1乃至のいずれか1項に記載のガス溶存水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電解式のガス溶存水生成装置に関し、詳細には、原水を電解するときに発生するガスのうち所望とする主生成ガスが高濃度で溶存したガス溶存水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原水の電解によるガス溶存水生成装置には、様々なタイプのものがあり、代表的なものは、原水中に陽極及び陰極を離間配置させた状態で、両電極間に直流電圧を印加するタイプのものがある(例えば、特許文献1)。また、固体高分子電解質膜を用いるタイプのものがあり、固体高分子電解質膜を用いるタイプの一つに、固体高分子電解質膜からなる隔壁を介して、電解室を陽極室と陰極室とに分離して間仕切る構造のものがある(例えば、特許文献2)。固体高分子電解質膜を用いた間仕切りタイプのものは、ある程度の小型化は可能であるものの、コップのような小容器において使用可能な程度にまで小型化することは容易ではない。
【0003】
原水の電解によって発生したガスのうち、使用者が必要とするガスを主生成ガスと呼び、必要としないガスを副生成ガスと呼ぶと、主生成ガスができるだけ高濃度で溶存し且つ副生成ガスができるだけ低濃度で溶存していることが望ましい。一般家庭での使用者が必要とするのは、通常、主生成ガスが溶存したガス溶存水であり、主生成ガスが溶存したガス溶存水及び副生成ガスが溶存したガス溶存水の両方を同時に必要とすることは稀である。
【0004】
大型の生成装置を使って主生成ガスが高濃度で溶存したガス溶存水を大量に生成しても、ガス溶存水の中に溶存した主生成ガスが経時的に脱気してしまい、ガス溶存水での主生成ガスの溶存濃度が低下してしまう。そのため、必要なときに必要な量の原水を電解して主生成ガスが溶存したガス溶存水を新たに生成することが好適であり、一般家庭での使用者にとっては小型の生成装置の方が大型の生成装置よりも使い勝手が優れている。
【0005】
そこで、固体高分子電解質膜を用いて一般家庭での使用者に好適な小型の生成装置として、陽極と陰極との間で固体高分子電解質膜を挟持したタイプのものが検討されている(例えば、特許文献3)。当該構成を有する生成装置を用いて原水の電解を行うと、陰極の側では水素ガスが発生して水素ガスが溶存した水素水が生成され、陽極の側ではオゾンガスが発生してオゾンガスが溶存したオゾン水が生成される。発生した水素ガスとオゾンガスとの混合を回避するために、ポット部が、水槽室と、水槽室の底部に配置された反応室と、に分かれた構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−095808号公報
【特許文献2】特開平07−214063号公報
【特許文献3】特開2012−217868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示された生成装置では、上側の陰極で水素ガスを発生させるとともに下側の陽極でオゾンガスを発生させるガス発生部が反応室の中に水平方向に収容されていて、水槽室が電極ケース蓋の中央開口部及び連通口を介して反応室と連通している。反応室で主反応として発生した水素ガスが中央開口部を介して水槽室に至り、水素ガスが水槽室を浮上する過程で原水に溶存する。
【0008】
他方、反応室で副反応として発生したオゾンガスは、反応室に隣接配置された生成ガス待機室にて一時的に貯留されることによって大きなサイズの気泡に成長する。その後、大きなサイズの気泡が連通口を介して水槽室に至り、大きな気泡のオゾンガスが水槽室を浮上する。
【0009】
しかしながら、特許文献3に開示された生成装置では、反応室の周囲に隣接配置された生成ガス待機室が、電極部において大きな面積を占める構成となっているため、水素ガスを発生させるためのガス発生部の面積を電極部において大きくできず、水素ガスの溶存濃度を高くすることが困難であるという問題がある。さらに、ガス発生部の高分子膜が水平方向に配置されているため、生成されたオゾンガスが、高分子膜の下部に膜状に(平面状に)溜まってしまい、膜状のオゾンガスによって高分子膜と原水との間での接触が妨げられるので、水素ガス生成能が低下するという問題がある。
【0010】
また、ガスを発生させる電極部がポット部の底部に固設されているため、電極部とポット部とを常に一体的に使用しなければならない。そのため、容器を構成するポット部と電極部とを切り離して使用することができず、生成装置の使用範囲が限定されるという問題がある。すなわち、生成装置を、特定のポット部以外の他の容器で自由自在に使用することができず、使い勝手が良くないという問題がある。
【0011】
また、電極部がポット部の底部にあるため、電極部のクリーニング作業が行いにくく、使い勝手が良くないという問題がある。
【0012】
したがって、この発明の解決すべき技術的課題は、所望とする主生成ガスが高濃度で溶存した主生成ガス溶存水を手軽に生成できる小型のガス溶存水生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記技術的課題を解決するために、この発明によれば、以下のガス溶存水生成装置が提供される。
【0014】
すなわち、この発明に係るガス溶存水生成装置は、
多孔の上側電極と多孔の下側電極との間で固体高分子電解質膜を挟持したガス発生部と、
前記上側電極及び前記下側電極のそれぞれと電源制御部とを一対の導電部材の下端部で連結して前記上側電極及び前記下側電極のそれぞれに対して前記電源制御部からの直流電圧を印加する一対の導電部材と、
前記導電部材に連結された前記ガス発生部を容器の側壁に対して取り付けるための取付部材と、を備えて、主生成ガスが前記上側電極の側で発生するとともに副生成ガスが前記下側電極の側で発生する、ガス溶存水生成装置であって、
前記導電部材に近い側が水平方向に対して上向きに傾斜するようにガス発生部が構成されていることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、導電部材に近い側が水平方向に対して上向きに傾斜するように傾斜配置されたガス発生部において、主生成ガスが上側電極と固体高分子電解質膜との界面で発生する。そして、上側電極の側で発生した主生成ガスの微小な気泡が、容器中の原水をゆっくりと浮上する過程で原水に溶存する。多数の微小な気泡の主生成ガスと原水との接触面積が大きくて主生成ガスと原水との接触時間が長いので、主生成ガスが高濃度で溶存した主生成ガス溶存水を効率的に生成できる。他方、傾斜配置されたガス発生部において、副生成ガスが下側電極と固体高分子電解質膜との界面で発生する。そして、下側電極の側で発生した副生成ガスは、固体高分子電解質膜によって略垂直上方への移動がブロックされるため、傾斜した下側電極の下面に沿って導電部材の下端部に向けて移動する。この過程で、発生した副生成ガスの微小な気泡が導電部材の下端部近傍に次第に寄り集まって合体し、大きなサイズの気泡に成長する。そして、大きな気泡に成長した副生成ガスが容器の原水中を急浮上する。このため、少数の大きな気泡の副生成ガスと原水との接触面積が小さくて副生成ガスと原水との接触時間が短いので、原水への副生成ガスの溶存が抑制される。また、ガス発生部の傾斜配置によって、副生成ガスが固体高分子電解質膜の下部に膜状に溜まることも無く、また、膜状のガスによって固体高分子電解質膜と原水との間での接触が妨げられることも無いので、高い主生成ガス生成能が保たれる。したがって、所望とする主生成ガスが高濃度で溶存した主生成ガス溶存水が手軽に生成される小型のガス溶存水生成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の第1実施形態に係るガス溶存水生成装置におけるガス発生部の分解斜視図である。
図2】この発明の第1実施形態に係るガス溶存水生成装置を上面から見た一部断面図である。
図3図2に示したガス溶存水生成装置の使用態様を説明する模式的断面図である。
図4図3の要部を拡大した説明図である。
図5】この発明の第2実施形態に係るガス溶存水生成装置におけるガス発生部の分解斜視図である。
図6】この発明の第2実施形態に係るガス溶存水生成装置を上面から見た一部断面図である。
図7図6に示したガス溶存水生成装置の使用態様を説明する模式的断面図である。
図8図7の要部を拡大した説明図である。
図9】この発明の変形例に係るガス溶存水生成装置を上面から見た模式図である。
図10図9に示したガス溶存水生成装置を側面から見た模式図である。
図11A】この発明の他の変形例に係るガス溶存水生成装置での下側電極周辺の模式的斜視図である。
図11B図11AでのXIB線−XIB線の断面図である。
図11C図11AでのXIC線−XIC線の断面図である。
図12A】この発明のさらなる他の変形例に係るガス溶存水生成装置での下側電極周辺の模式的斜視図である。
図12B図12AでのXIIB線−XIIB線の断面図である。
図12C図12AでのXIIC線−XIIC線の断面図である。
図13】実施例1に係るガス溶存水生成装置を用いたときの溶存水素濃度の経時変化を示すグラフである。
図14】実施例3に係るガス溶存水生成装置を用いたときの溶存水素濃度の経時変化を示すグラフである。
図15】実施例2に係るガス溶存水生成装置を用いたときの溶存オゾン濃度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、この発明の第1実施形態に係るガス溶存水生成装置1について、図1乃至4を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図3に示すように、ガス溶存水生成装置1は、ガス発生部10と、DCジャック39を経由して電源につながる電源制御部30と、ガス発生部10及び電源制御部30を電気的に接続し且つ連結する一対の導電部材14c,15cと、導電部材14c,15cを覆う被覆部材21と、を備える。ガス溶存水生成装置1は、後述するように、コップのような小さな容器3に簡単に装着することのできるポータブル(ハンディ)タイプのものである。
【0019】
ガス発生部10は、図1に示すように、上から順に、上側圧接部材16と上側電極14と触媒層12と固体高分子電解質膜11と触媒層13と下側電極15と下側圧接部材17とが、積層された積層構造を有している。上側電極14と触媒層12と固体高分子電解質膜11と触媒層13と下側電極15とが、上側圧接部材16及び下側圧接部材17で挟持されている。ガス発生部10は、通常の180ml程度のコップの中に入れることができるように寸法構成されている。
【0020】
上側圧接部材16は、縦方向に延びる平坦な縦フレーム部16bと、横方向に延びる平坦な横フレーム部16fと、縦フレーム部16b及び横フレーム部16fで囲まれた2つの開口部16cと、を有する。縦フレーム部16b及び横フレーム部16fが交差する部分と、中央の横フレーム部16fとには、それぞれ、4つのコーナ貫通穴16dと、1つの中央貫通穴16aと、が形成されている。4つのコーナ貫通穴16dは、上側電極14の外周部分よりも外側に位置するように構成されている。
【0021】
同様に、下側圧接部材17は、縦方向に延びる平坦な縦フレーム部17bと、横方向に延びる平坦な横フレーム部17fと、縦フレーム部17b及び横フレーム部17fで囲まれた2つの開口部17cと、を有する。縦フレーム部17b及び横フレーム部17fが交差する部分と、中央の横フレーム部17fとには、それぞれ、4つのコーナネジ穴17dと、1つの中央ネジ穴17aと、が形成されている。4つのコーナネジ穴17dは、下側電極15の外周部分よりも外側に位置するように構成されている。なお、下側圧接部材17でのネジ穴を上側圧接部材16での貫通穴にして、上側圧接部材16と下側圧接部材17とを同じ形状にすることで、部品を共用化することもできる。
【0022】
中央貫通穴16a及び中央ネジ穴17aは、上側電極14と触媒層12と固体高分子電解質膜11と触媒層13と下側電極15とのそれぞれに形成されている各貫通穴14a,12a,11a,13a,15aに対応するように配置されている。上側電極14と触媒層12と固体高分子電解質膜11と触媒層13と下側電極15とを積層したものを、上側圧接部材16及び下側圧接部材17で挟持して、5つの絶縁性ネジ28で留めることによって圧接状態のガス発生部10が得られる。
【0023】
上側電極14は、例えば、略卵形をしたメッシュ状の金属製(例えば、チタン製)板状体であり、微小な孔を多数有している。メッシュ状の板状体は、細い線材を格子状に織った織網や、薄い板材に直線状の不連続なスリットを多数列で切り込み、これを伸展させて作成する一体格子状のマイクログレーチング等から構成される。上側電極14の上面側は、導電部材14cの下端部に位置する溶接端部14bに溶接されている。
【0024】
同様に、下側電極15は、例えば、略卵形をしたメッシュ状の金属製(例えば、チタン製)板状体であり、微小な孔を多数有している。メッシュ状の板状体は、細い線材を格子状に織った織網や、薄い板材に直線状の不連続なスリットを多数列で切り込み、これを伸展させて作成する一体格子状のマイクログレーチング等から構成されている。下側電極15の下面側は、導電部材15cの下端部に位置する溶接端部15bに溶接されている。
【0025】
触媒層12,13は、白金などの貴金属系(貴金属を含有する合金も含む)の材料からなり、上側電極14及び下側電極15と大略同じ形状の略卵形をしている。触媒層12,13は、メッシュ状の薄板体であり、細い線材を格子状に織った織網や、薄い板材に直線状の不連続なスリットを多数列で切り込み、これを伸展させて作成する一体格子状のマイクログレーチング等から構成され、微小な孔を多数有している。また、触媒層12,13として、ナノカーボングラフェン等のような貴金属系以外の材料から構成することもできる。
【0026】
好適には、触媒層12,13での孔の開口サイズは、上側電極14及び下側電極15での孔の開口サイズよりも小さくて、触媒層12,13の孔が上側電極14及び下側電極15の孔よりも、目が細かいように構成されている。なお、触媒層12,13は、上側電極14の少なくとも下面や下側電極15の少なくとも上面にメッキ等の方法でそれぞれコーティングすることによって上側電極14及び下側電極15に含有させることもできる。
【0027】
固体高分子電解質膜11は、陽イオン交換膜であり、例えば、デュ・ポン社製のナフィオン(登録商標)膜のような、ポリテトラフルオロエチレンをベースにした陽イオン交換基ペルフルオロスルホン酸膜や、旭化成製のフレミオン(登録商標)膜のような、陽イオン交換基ビニルエーテルとテトラフルオロエチレンの共重合体である。
【0028】
一対の導電部材14c,15cは、電源制御部30からの直流電圧を上側電極14及び下側電極15に印加するための金属製(例えば、チタン製)の棒状体であり、両者が接触しないように離間配置されている。導電部材14c,15cの下端部は、それぞれ、水平方向に対して下向きに傾斜しているとともに容器3の内側を向くように折り曲げられている。導電部材14c,15cの上端部は、それぞれ、水平方向と略平行に延在するとともに容器3の外側を向くように折り曲げられている。導電部材14c,15cの下端部は、それぞれ、溶接端部14b,15bとして、上側電極14の上面及び下側電極15の下面に溶接されている。導電部材14c,15cの上端部は、電源制御部30の取付部26の取付穴に対して着脱自在に差し込まれている。
【0029】
ガス発生部10は、容器3の側壁3aに近い部分が上方に位置するとともに容器3の中心に近い部分が下方に位置しているので、容器3の側壁3aに近い側が水平方向に対して上向きに傾斜している。すなわち、傾斜したガス発生部10において、容器3の側壁3aに近い部分が最も上方の頂部として位置するとともに、導電部材15cの下端部である溶接端部15bが最も上方の頂部の近傍に配設されている。下側電極15と固体高分子電解質膜11との界面で発生した副生成ガスb2は、固体高分子電解質膜11によって略垂直上方への移動がブロックされるため、最も上方の頂部(導電部材15cの溶接端部15b)の方向に移動する。この過程で、発生した副生成ガスb2の微小な気泡が最も上方の頂部(導電部材15cの溶接端部15b)近傍に次第に寄り集まって合体し、大きなサイズの気泡に成長し、大きな気泡に成長した副生成ガスb2が原水5の中を急浮上する。したがって、原水5への副生成ガスb2の溶存が抑制される。以上のことから、この発明では、ガス発生部10が少なくとも水平方向に配置されていないことを必須要件とする。
【0030】
ガス発生部10の水平方向に対する傾斜角度は、特に限定されるものではないが、傾斜角度が大きすぎると、副生成ガスb2が移動(すなわち、浮上)しやすくなる。このため、発生した一群の副生成ガスb2が寄り集まって合体し、大きなサイズの気泡に成長するまでの時間を十分に確保することができないので、副生成ガスb2の溶存濃度を下げにくくなる。また、傾斜したガス発生部10において、容器3の側壁3aに近い部分が、容器3に満たされた原水5の液面に近くなるため、主生成ガスb1の溶存時間が短くなり、主生成ガスb1の溶存濃度を高くするのが難しくなる。
【0031】
逆に、ガス発生部10の水平方向に対する傾斜角度が小さすぎると、発生した一群の副生成ガスb2が一つの方向に(具体的には、傾斜したガス発生部10での最も上側にある頂部の方向に)寄り集まりにくくなる。そのため、発生した複数の副生成ガスb2が、ガス発生部10における複数の場所から分散して浮上するので、大きなサイズの気泡に成長させることが難しくなる。なお、この発明を限定しないガス発生部10の水平方向に対する傾斜角度を例示すると、2乃至70度であり、好適には5乃至55度であり、より好適には10乃至45度である。
【0032】
一対の導電部材14c,15cにおける長手方向の部分は、絶縁性の被覆部材21で覆われている。被覆部材21は略半円筒形状をしており、容器3の側壁3aを向いた部分が開口している。被覆部材21の一方側の部分が開口していることは、上端部及び下端部において折り曲げ部分を有する一対の導電部材14c,15cを、被覆部材21に対して取り付けたり被覆部材21から取り外したりすることを容易にする。被覆部材21の下端部は、ガス発生部10と一体化されている、被覆部材21の上端部は、電源制御部30の側壁に対してネジ留めされている。被覆部材21の内面と容器3の側壁3aとで囲まれる空間が、副生成ガスb2を略垂直上方に導出する副生成ガス導出空間22を形成している。機能的には、一対の導電部材14c,15cだけでも副生成ガスb2を導出することもできる。しかしながら、被覆部材21で一対の導電部材14c,15cが覆われている形態であってもよい。この形態であれば、被覆部材21無しで一対の導電部材14c,15cが露出する形態よりも、副生成ガスb2の拡散を防止して副生成ガスb2の集約効率が高くなり、デザイン性も優れている。
【0033】
電源制御部30は、一対の導電部材14c,15cを介して、上側電極14及び下側電極15に直流電圧を印加する電源を制御する。電源は、電源制御部30の外部に設けられるACアダプタ又は電源制御部30の箱体に内蔵される電池である。なお、電池は、一次電池又は二次電池のいずれであってもよい。電源制御部30は、上筐体31と下筐体32とを組み合わせた箱体内に、取付部26や基板33や押圧スイッチ34や濃度切替スイッチ35やLED表示部36やDCジャック39等を備えた構成をしている。上筐体31及び下筐体32からなる箱体の側壁には、取付穴37及びプラグ差込穴38が形成されている。取付穴37及びプラグ差込穴38を通じて、導電部材14c,15cの上端部及びACアダプタ(図示しない)のプラグが差し込まれる。
【0034】
押圧スイッチ34は、電源のON/OFFや電解に関する各種の操作や設定を行うためのスイッチである。濃度切替スイッチ35は、電解時における作動時間を切り替えるスイッチである。基板33は、電解の電圧や電流や時間を制御する制御回路や、電解の積算時間を記憶する記憶媒体を備えていてもよい。LED表示部36は、通電(電解)状態を知らせたり、何らかの異常が発生したことを知らせるアラームとして機能する。なお、上側電極14及び下側電極15に印加される電圧の正負の極性を切り替える極性切替スイッチを備えていてもよい。上側電極14が陰極である場合、水素ガスが主生成ガスとして上側電極14と固体高分子電解質膜11との界面で発生して、水素水を得ることができる。上側電極14を陽極に切り替えた場合、オゾンガスが主生成ガスとして上側電極14と固体高分子電解質膜11との界面で発生して、オゾン水を得ることができる。
【0035】
下筐体32の下面には、下向きに突出する側壁係合部40が配設されている。容器30の側壁3aの上部分を側壁係合部40と被覆部材21とで挟持することによって、ガス溶存水生成装置1が容器30に取り付けられている。すなわち、ガス溶存水生成装置1は、容器30の側壁3aに寄せて取り付けられている。側壁係合部40が容器30の側壁3aの上部分に係合するため、ガス溶存水生成装置1を容器30に対して安定的に載置することができる。
【0036】
次に、第1実施形態に係るガス溶存水生成装置1の動作状態について説明する。なお、原水5の電解により、主生成ガスb1としての水素ガスが上側電極(陰極)14と固体高分子電解質膜11との界面で発生し、副生成ガスb2としての酸素ガスが下側電極(陽極)15と固体高分子電解質膜11との界面で発生して、水素水が生成される場合について説明する。
【0037】
先ず、180ml程度のコップのような小さな容器3に適量の飲料用の原水5を入れておき、ガス溶存水生成装置1のガス発生部10が原水5で満たされた容器3の下部に位置するように、ガス溶存水生成装置1を容器3の側壁3aに設置する。濃度切替スイッチ35を選択した後、押圧スイッチ34を押して、電解動作を開始させる。
【0038】
原水5の電解が開始されると、主生成ガスb1としての水素ガスが微小な気泡の形態で上側電極(陰極)14と固体高分子電解質膜11との界面で発生する。そして、上側電極(陰極)14の側で発生した水素ガスの微小な気泡が、原水5の中をゆっくりと浮上すると、水素ガスと原水5との接触面積が大きくて水素ガスと原水5との接触時間が長いので、水素ガスが高濃度で溶存した水素水(主生成ガス溶存水)5を効率的に生成できる。
【0039】
他方、副生成ガスb2としての酸素ガスが、微小な気泡の形態で下側電極(陽極)15と固体高分子電解質膜11との界面で発生する。下側電極(陽極)15の側で発生した酸素ガスは、固体高分子電解質膜11によって略垂直上方への移動がブロックされる。そこで、発生した酸素ガスの微小な気泡は、下側電極15の下面に沿って、最も上方の頂部(導電部材15cの溶接端部15b)の方向に移動する。したがって、下側電極15の下面が、副生成ガス誘導部として機能している。また、下側圧接部材17の横フレーム部17fの近傍にある副生成ガスb2の微小な気泡は、平坦な横フレーム部17fに沿って、下側電極15における最も上方の頂部(溶接端部15b)の方向に移動する。したがって、下側圧接部材17の横フレーム部17fが、副生成ガス誘導部として機能している。
【0040】
この過程で、発生した一群の酸素ガスの微小な気泡が最も上方の頂部(導電部材15cの溶接端部15b)近傍に次第に寄り集まって合体し、大きなサイズの気泡に成長する。そして、大きな気泡に成長した酸素ガスが、容器3に満たされた原水5の中を導電部材14c,15cや容器3の側壁3aに沿って(言い換えれば、副生成ガス導出空間22の中を)急浮上する。したがって、酸素ガスと原水5との接触面積が小さくて酸素ガスと原水5との接触時間も短いので、原水5への酸素ガスの溶存が抑制される。
【0041】
電解を行うと、水素ガスが高濃度で溶存した水素水(主生成ガス溶存水)5が短時間で得られる。
【0042】
(実施例1)
上述した構成を有する第1実施形態に係るガス溶存水生成装置1を用いて、水素水を生成したときの実施例1の結果を図13に示す。
【0043】
図13に示した実施例1では、上側電極14及び下側電極15がチタン製のマイクロメッシュであり、触媒層12,13が白金もしくは白金メッキ製のマイクロメッシュであり、固体高分子電解質膜11がナフィオン(登録商標)膜である。これらの構成要素を積層したものを、ステンレス製の上側圧接部材16及び下側圧接部材17で挟持した後、樹脂製の絶縁性のネジ28で留めることにより、圧接して挟持されたガス発生部10を作成した。上側電極(陰極)14及び下側電極(陽極)15との間には、5Vの直流電圧を印加した。ガス発生部10の水平方向に対する傾斜角度は、約35度である。容器3に満たされた原水5の量と温度は、それぞれ、210mlと10℃である。有限会社共栄電子研究所製の溶存水素モニター(KM2100DH)を用いて、溶存水素濃度を測定した。
【0044】
図13に示すように、第1実施形態に係るガス溶存水生成装置1によって、10分経過後には溶存水素濃度が1000ppb(μg/リッター)を超えており、高い濃度で水素ガスが溶存した水素水を得ることができた。なお、生成された高濃度の水素水は、生体内で抗酸化作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、エネルギー代謝亢進作用を提供する有用な飲料水として用いることができる。
【0045】
(実施例2)
また、第1実施形態に係るガス溶存水生成装置1において、上側電極14及び下側電極15に印加される電圧の正負の極性を切り替えて、上側電極14を陽極にしてオゾンガスを上側電極14から発生させた実施例2を行った。
【0046】
先ず、180ml程度のコップのような小さな容器3に適量の原水5を入れておき、ガス溶存水生成装置1のガス発生部10が原水5で満たされた容器3の下部に位置するように、ガス溶存水生成装置1を容器3の側壁3aに設置した。上側電極(陽極)14及び下側電極(陰極)15との間には、8Vの直流電圧を印加した。ガス発生部10の水平方向に対する傾斜角度は、約35度である。容器3に満たされた原水5の量と温度は、それぞれ、300mlと10℃である。株式会社神戸製鋼所製の紫外線吸収式オゾン水濃度計(モデルOZM−300)を用いて、溶存オゾン濃度を測定した。
【0047】
図15に示すように、第1実施形態に係るガス溶存水生成装置1によって、2分経過後で溶存オゾン濃度が1100ppb(μg/リッター)になり、5分経過後で溶存オゾン濃度が1600ppb(μg/リッター)に達しており、高い濃度でオゾンガスが溶存したオゾン水を得ることができた。なお、生成された高濃度のオゾン水は、オゾンの強い酸化作用により、殺菌、脱臭、消毒効果を備えるので、産業用をはじめ医療および介護の分野等で広く利用することができる。
【0048】
次に、この発明の第2実施形態について、図5乃至8を参照しながら詳細に説明する。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態での構成要素と同じ機能を有する構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0049】
ガス発生部10が、容器3の側壁3aに近い側が水平方向に対して上向きに傾斜していて、上側電極14と触媒層12と固体高分子電解質膜11と触媒層13と下側電極15とが積層されている構造は、第1実施形態で説明したものと共通である。第2実施形態でのガス発生部10は、当該積層構造に対して、上カバー18及び下カバー19をさらに備えた構造をしている。すなわち、上カバー18が上側電極14の上に配置され、下カバー19が下側電極15の下に配置されている。
【0050】
上カバー18は、縦方向に延びる平坦な縦フレーム部18bと、横方向に延びる平坦な横フレーム部18fと、周囲部分を形成する周縁フレーム部18gと、縦フレーム部18bと横フレーム部18fと周縁フレーム部18gとで囲まれた4つの開口部18cと、を有する。縦フレーム部18b及び横フレーム部18fが交差する部分には、1つの中央貫通穴18aが形成されている。
【0051】
下カバー19は、底壁部19bと、底壁部19bの周囲部分から上方に突出する周縁部19cと、底壁部19bから上方に突出して横方向に延びる複数の突起部19fと、隣り合う2つの突起部19fの間に形成されて横方向に延びる複数の間隙部19dと、を有する。底壁部19bの略中央部分には、1つの中央ネジ穴19aが形成されている。周縁部19cにおいて導電部材15cを取り付けるための部分には、周縁部19cが部分的に切り欠かれた切欠19gが設けられている。切欠19gは、導電部材15cの下端部に設けられた溶接端部15bを配設するための開口として機能するとともに、発生した副生成ガスb2の出口として機能する。
【0052】
中央貫通穴18a及び中央ネジ穴19aは、上側電極14と触媒層12と固体高分子電解質膜11と触媒層13と下側電極15とのそれぞれに形成されている各貫通穴14a,12a,11a,13a,15aに対応するように配置されている。上側電極14と触媒層12と固体高分子電解質膜11と触媒層13と下側電極15とを積層したものを、上カバー18及び下カバー19で挟持した後、絶縁性ネジ28で留めることによって圧接状態のガス発生部10が得られる。
【0053】
上カバー18での4つの開口部18cを合わせた開口面積は、第1実施形態で説明した上側圧接部材16の2つの開口部16cを合わせた開口面積と大略同じであり、上側電極14の側が大きな開口を有している。その結果、第1実施形態と同じように、上側電極14と固体高分子電解質膜11との界面で発生した主生成ガスb1の微小な気泡が、原水5の中をゆっくりと浮上する過程で原水3に溶存することができる。
【0054】
他方で、下側電極15では、下カバー19の底壁部19bによって、蓋をしたような状態になっている。下側電極15の下面が複数の突起部19fの上面に当接し、それ以外のところでは、複数の間隙部19dの存在によって隙間ができている。下側電極15と固体高分子電解質膜11との界面で発生した副生成ガスb2は、固体高分子電解質膜11によって略垂直上方への移動がブロックされる。そこで、突起部19fのところで発生した副生成ガスb2は、間隙部19dに移動した後、傾斜した間隙部19dに沿って移動する。そして、間隙部19dのところで発生した副生成ガスb2は、そのまま、傾斜した間隙部19dに沿って移動する。したがって、傾斜した複数の間隙部19dは、下側電極15と固体高分子電解質膜11との界面で発生した副生成ガスb2の微小な気泡を切欠19gの方に導く通路として機能している。また、切欠19gは、間隙部19dに沿って移動した副生成ガスb2を、1ヶ所に集めて成長させた後、副生成ガス導出空間22に受け渡す開口として機能している。さらに、下側電極15の下面側を下カバー19で蓋することによって、副生成溶存水がガス発生部10の外に流出するのが抑制される。
【0055】
このように、下側電極15と固体高分子電解質膜11との界面で発生した副生成ガスb2の微小な気泡は、下カバー19の間隙部19dに沿って、下側電極15における最も上方の頂部(溶接端部15b及び切欠19g)の方向に移動する。また、周縁部19cの近傍にある副生成ガスb2の微小な気泡は、周縁部19cに沿って、下側電極15における最も上方の頂部(溶接端部15b及び切欠19g)の方向に移動する。したがって、下側電極15の下面と下カバー19の間隙部19d及び周縁部19cとが、副生成ガス誘導部を形成している。
【0056】
この過程で、一群の微小な気泡の副生成ガスb2が、下側電極15における最も上方の頂部(溶接端部15b及び切欠19g)近傍に次第に寄り集まって合体し、大きなサイズの気泡に成長する。そして、大きな気泡に成長した副生成ガスb2が、原水5の中を導電部材14c,15cや容器3の側壁3aに沿って(言い換えれば、副生成ガス導出空間22の中を)急浮上する。したがって、原水5への副生成ガスb2の溶存が抑制される。
【0057】
以上のように、所定時間にわたって電解を行うと、主生成ガスb1が高濃度で溶存した主生成ガス溶存水5が得られる。
【0058】
(実施例3)
上述した構成を有する第2実施形態に係るガス溶存水生成装置1を用いて、水素水を生成した実施例3の結果を図14に示す。
【0059】
図14に示した実施例では、第1実施形態との比較で、ガス発生部10における、上側電極(陰極)14や下側電極(陽極)15や触媒層12,13や固体高分子電解質膜11が同じであり、樹脂製の上カバー18及び下カバー19を用いた点が相違している。また、印加電圧、傾斜角度、容器3に満たされた原水5の量と温度、及び、溶存水素濃度の測定機器は、第1実施形態で説明したのと同じである。
【0060】
図14に示すように、第2実施形態に係るガス溶存水生成装置1によって、電解の開始から10分で溶存水素濃度が約1000ppb(μg/リッター)となり、15分経過後には溶存水素濃度が1000ppb(μg/リッター)を超えており、高い濃度で水素ガスが溶存した水素水を得ることができた。
【0061】
なお、上記実施形態は、ガス溶存水生成装置1のガス発生部10を容器3の側壁3aの側に寄せて設置するタイプである。しかしながら、ガス溶存水生成装置1は、図9及び10に示すように、ガス発生部10を容器3の側壁3aの側に寄せないで設置するタイプに、例えば、容器3の中央部の側に設置するタイプにすることもできる。
【0062】
図9及び10は、ガス発生部10を容器3の中央部の側に設置するタイプの変形例に係るガス溶存水生成装置1を示している。
【0063】
図9及び10に示した変形例に係るガス溶存水生成装置1は、ガス溶存水生成装置1の中心部分に配置された一対の導電部材14c,15cと、導電部材14c,15cから外方に延びるように配置された4つのガス発生部10と、を有する。4つのガス発生部10は、一対の導電部材14c,15cを中心にして、大略均等に(すなわち、約90度の角度で)配置されている。4つのガス発生部10のそれぞれは、導電部材14c,15cに近い側(すなわち、図10に示したガス溶存水生成装置1の中心部分)が水平方向に対して上向きに傾斜するように配置されている。
【0064】
一対の導電部材14c,15cは、電源制御部30からの直流電圧を上側電極14及び下側電極15に印加するための金属製(例えば、チタン製)の棒状体であり、両者が接触しないように離間配置されている。導電部材14c,15cにおいて、その下端部は、ガス発生部10を傾斜させるために、水平方向に対して下向きに傾斜するように折れ曲がっているが、それ以外の部分は大略直線状に上方に延びている。導電部材14c,15cの上端部は、それぞれ、電源制御部30の下面に設けられた取付部26に挿入されてクランプされる。したがって、傾斜した4つのガス発生部10は、一対の導電部材14c,15cを介して、電源制御部30の下面で吊り下げられた構造になっている。
【0065】
導電部材14c,15cは、絶縁性の被覆部材21の円筒空間内に挿通されている。導電部材14c,15cにおいて、下端部である溶接端部14b,15bと、上端部とを除く部分が、被覆部材21で覆われている。そして、被覆部材21における円筒空間が、副生成ガス導出空間22を形成している。なお、機能的には、一対の導電部材14c,15cによって副生成ガスb2の導出を行うこともできる。しかしながら、被覆部材21で一対の導電部材14c,15cが覆われている形態の方が、被覆部材21無しで一対の導電部材14c,15cが露出する形態よりも、副生成ガスb2の拡散を防止して副生成ガスb2の集約効率が高くなり、デザイン性も優れている。
【0066】
電源制御部30は、水平方向に延びる2つの横ビーム部51と、2つの横ビーム部51の間に直交して配設された2つの縦ビーム部53と、を備える取付部材50の上に載置されている。横ビーム部51のそれぞれは、左右の脚部55を収容することができる内部空間を有して、左右の脚部55が伸縮自在であるように構成されている。容器3の外径サイズに合わせて、左右の脚部55を伸縮させることにより、取付部材50の横方向の長さを調節することができる。左右の脚部55は、下方に突出するストッパ56を、それぞれ、外側端部に有する。すなわち、図9に示した取付部材50は、4つのストッパ56を有する。脚部55のストッパ56は、容器3の側壁3aと係合することによって脚部55の内向きの動きを規制して、取付部材50の横方向の長さが容器3の外径サイズよりも不用意に短くなることを防止することができる。
【0067】
上記態様のガス溶存水生成装置1では、一対の導電部材14c,15cを中心にして4つのガス発生部10が大略均等に配置されている。1つのガス発生部10が配置された態様であってもよく、複数のガス発生部10が大略均等にあるいは不均等に配置される態様であってもよい。
【0068】
なお、上記実施形態では、ガス発生部10が、上側圧接部材16や下側圧接部材17、あるいは上カバー18や下カバー19を備えた構成をしている。少なくとも上側電極14と固体高分子電解質膜11と下側電極15とを、絶縁性ネジで締め付けたり、絶縁性の樹脂製接着剤で接着したりする密着手段で密着して一体的に取り付けることによって、上側圧接部材16や下側圧接部材17、あるいは上カバー18や下カバー19を必要としない構成とすることもできる。
【0069】
図11A乃至11Cは、ガス発生部10の下側電極15及び下側圧接部材17の周辺の他の変形例に係るガス溶存水生成装置1を示している。
【0070】
図11A乃至11Cに示すように、下側電極15に圧接している下側圧接部材17は、下側圧接部材17の下面の周縁部分から下方に突出する周縁凸部60を有している。周縁凸部60は、下側電極15と固体高分子電解質膜11との界面で発生した副生成ガスb2を導電部材15cの溶接端部(下端部)15b側に導く副生成ガス誘導部として機能する。周縁凸部60において導電部材15cの溶接端部(下端部)15bを取り付けるための部分には、周縁凸部60が部分的に切り欠かれた切欠62が設けられている。切欠62は、導電部材15cの溶接端部(下端部)15bを配設するための開口として機能するとともに、下側電極15と固体高分子電解質膜11との界面で発生した副生成ガスb2の出口として機能する。
【0071】
下側電極15と固体高分子電解質膜11との界面で発生した副生成ガスb2の微小な気泡は、下側電極15の下面に沿って、下側圧接部材17における最も上方の頂部(切欠62)の方向に移動する。また、周縁凸部60の近傍にある副生成ガスb2の微小な気泡は、周縁凸部60に沿って、下側圧接部材17における最も上方の頂部(切欠62)の方向に移動する。したがって、下側電極15の下面と下側圧接部材17の周縁凸部60とが、副生成ガス誘導部を形成している。
【0072】
図12A乃至12Cは、ガス発生部10の下側電極15周辺のさらなる他の変形例に係るガス溶存水生成装置1を示している。
【0073】
図12A乃至12Cに示すように、ガス発生部10は、下側圧接部材17を備えずに、下側電極15が、下側電極15の下面の周縁部分から下方に突出する周縁凸部60’を有する構成となっている。周縁凸部60’は、下側電極15の下面で発生した副生成ガスb2を導電部材15cの溶接端部(下端部)15b側に導く副生成ガス誘導部として機能する。周縁凸部60’において導電部材15cの溶接端部(下端部)15bを取り付けるための部分には、周縁凸部60’が部分的に切り欠かれた切欠62’が設けられている。切欠62’は、導電部材15cの溶接端部(下端部)15bを配設するための開口として機能するとともに、下側電極15と固体高分子電解質膜11との界面で発生した副生成ガスb2の出口として機能する。
【0074】
そして、ガス発生部10における下側電極15の下面では、発生した副生成ガスb2を導電部材15cの溶接端部(下端部)15b側に導くように、下側電極15の下面の周縁部分から下方に突出する周縁凸部60’が設けられている。
【0075】
下側電極15と固体高分子電解質膜11との界面で発生した副生成ガスb2の微小な気泡は、下側電極15の下面に沿って、下側電極15における最も上方の頂部(切欠62’)の方向に移動する。また、周縁凸部60’の近傍にある副生成ガスb2の微小な気泡は、周縁凸部60’に沿って、下側電極15における最も上方の頂部(切欠62’)の方向に移動する。したがって、下側電極15における下面及び周縁凸部60’が、副生成ガス誘導部を形成している。
【0076】
以上の説明から明らかなように、この発明に係るガス溶存水生成装置1では、多孔の上側電極14と多孔の下側電極15との間で固体高分子電解質膜11を挟持したガス発生部10と、上側電極14及び下側電極15のそれぞれと電源制御部30とを一対の導電部材14c,15cの下端部14b,15bで連結して上側電極14及び下側電極15のそれぞれに対して電源制御部30からの直流電圧を印加する一対の導電部材14c,15cと、導電部材14c,15cに連結されたガス発生部10を容器3の側壁3aに対して取り付けるための取付部材50と、を備えて、主生成ガスb1が上側電極14の側で発生するとともに副生成ガスb2が下側電極15の側で発生する、ガス溶存水生成装置1であって、導電部材14c,15cに近い側が水平方向に対して上向きに傾斜するようにガス発生部10が構成されている。
【0077】
上記構成によれば、上側電極14と固体高分子電解質膜11との界面で発生した主生成ガスb1の微小な気泡が、原水5の中をゆっくりと浮上する過程で原水5に溶存するので、主生成ガスb1が高濃度で溶存した主生成ガス溶存水5が生成される。他方、下側電極15と固体高分子電解質膜11との界面で発生した副生成ガスb2は、傾斜した下側電極15の下面に沿って導電部材14c,15cの下端部に向けて移動する。この過程で、下側電極15の側で発生した副生成ガスb2の微小な気泡が導電部材14c,15cの下端部近傍に次第に寄り集まって合体し、大きなサイズの気泡に成長する。大きな気泡に成長した副生成ガスb2が原水5の中を急浮上するため、原水5への副生成ガスb2の溶存が抑制される。したがって、所望とする主生成ガスb1が高濃度で溶存した主生成ガス溶存水5が手軽に生成される小型のガス溶存水生成装置1が提供される。
【0078】
この発明は、上記特徴に加えて次のような特徴を備えることができる。
【0079】
すなわち、導電部材14c,15cが、容器3の側壁3aの側に寄せて取り付けられている。当該構成によれば、導電部材14c,15cを伝って浮上する副生成ガスb2が、容器3の側壁3aによって水平方向の拡散が規制されるため、原水5への副生成ガスb2の溶存が抑制される。また、ガス溶存水生成装置1を容器3に対して簡単に取り付けることができる。
【0080】
導電部材14c,15cの周囲の少なくとも一部分を覆う被覆部材21をさらに備える。当該構成によれば、導電部材14c,15cを伝って浮上する副生成ガスb2が、被覆部材21によって水平方向の拡散が規制されるため、原水5への副生成ガスb2の溶存が抑制される。また、被覆部材21に対する導電部材14c,15cの着脱が容易になる。
【0081】
上側電極14の上面に設けられる上側圧接部材16と、下側電極15の下面に設けられる下側圧接部材17とによって、上側電極14と固体高分子電解質膜11と下側電極15とが圧接して挟持されている。当該構成によれば、ガス発生部10の構成要素が密接しているので、原水5の電解を安定的に行うことができる。
【0082】
上側圧接部材16は、上側電極14の上面ができるだけ広い範囲で露出するように構成されている。当該構成によれば、上側圧接部材16が大きな開口面積を有するので、主生成ガスb1の微小な気泡が、他の微小な気泡と合体することなくそのまま浮上しやすくなる。
【0083】
ガス発生部10における下側電極15の側には、発生した副生成ガスb2の微小な気泡を導電部材14c,15cの下端部14b,15b側に導く副生成ガス誘導部が設けられている。当該構成によれば、発生した副生成ガスb2の微小な気泡を導電部材14c,15cの下端部14b,15b側にスムーズに誘導することができる。
【0084】
副生成ガス誘導部は、下側電極15の下面と、下側圧接部材17又は下側電極15の周縁部分から下方に突出する周縁凸部60,60’、又は、下側圧接部材17の下面に形成された平坦な横フレーム部17fと、である。当該構成によれば、発生した副生成ガスb2を導電部材14b,15bの下端部側に容易に誘導することができる。
【0085】
固体高分子電解質膜11と上側電極14との間及び固体高分子電解質膜11と下側電極15との間には、それぞれ、上側電極14及び下側電極15よりも目の細かい多孔の貴金属系の触媒層12,13が配置されている。当該構成によれば、触媒活性の高い貴金属により、電解電圧を下げることができる。そして、触媒層12,13を目の細かい多孔構造とすることによって、固体高分子電解質膜11と触媒層12とが、多数の微小領域で部分的に接触することで、主生成ガスb1が微小な気泡の形態で発生する。発生した主生成ガスb1の微小な気泡が、目の細かい多孔の触媒層12,13の微小孔をスムーズに通過して、他の微小な気泡と合体することなくそのまま浮上しやすくなる。
【0086】
導電部材14c,15cが、電源制御部30の取付部26に対して着脱自在に構成されている。当該構成によれば、必要に応じて、導電部材14c,15cの連結されたガス発生部10を電源制御部30から取り外して洗浄することができる。
【0087】
電源制御部30が、上側電極14及び下側電極15に印加される電圧の正負の極性を切り替えることができる。当該構成によれば、主生成ガス溶存水5として、水素水又はオゾン水を選択して得ることができる。
【符号の説明】
【0088】
1:ガス溶存水生成装置
3:容器
3a:側壁
5:原水(主生成ガス溶存水)
10:ガス発生部
11:固体高分子電解質膜
12:触媒層
13:触媒層
14:上側電極
14b:溶接端部(下端部)
14c:導電部材
15:下側電極
15b:溶接端部(下端部)
15c:導電部材
16:上側圧接部材
17:下側圧接部材
17f:横フレーム部(副生成ガス誘導部)
18:上カバー
19:下カバー
19d:間隙部(副生成ガス誘導部)
20:副生成ガス導出部
21:被覆部材
22:副生成ガス導出空間
26:取付部
28:ネジ
30:電源制御部
31:上筐体
32:下筐体
33:基板
34:押圧スイッチ
35:濃度切替スイッチ
36:LED表示部
37:取付穴
38:プラグ差込穴
39:DCジャック
40:側壁係合部
50:取付部材
60,60’:周縁凸部(副生成ガス誘導部)
b1:主生成ガス
b2:副生成ガス
図1
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図11A
図11B
図11C
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図12B
図12C
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