特許第6341423号(P6341423)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341423
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   H02M3/155 B
   H02M3/155 H
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-189643(P2014-189643)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-63621(P2016-63621A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩章
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−020352(JP,A)
【文献】 米国特許第06127815(US,A)
【文献】 特開2013−192422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回路が生成する駆動信号に応じてスイッチング素子がオンオフすることにより第1
直流電圧を第2直流電圧に変換するDC/DCコンバータであって、
前記制御回路は、
所定の周波数のパルスを出力する発振器と、
前記第2直流電圧と基準電圧との誤差を増幅して誤差増幅信号を出力する誤差増幅器と

前記スイッチング素子と前記第2直流電圧の出力端子とに接続されたインダクタと、
前記インダクタの回生期間が完了した時にゼロクロス信号を出力するゼロクロス検出回
路と、
前記誤差増幅器からの誤差増幅信号と閾値を比較して軽負荷信号を出力する軽負荷検知
回路と、
前記軽負荷検回路からの前記軽負荷信号と前記ゼロクロス検出回路からのゼロクロス
信号とに基づき前記スイッチング素子を間欠動作させ、間欠動作している期間に前記誤差
増幅信号が前記閾値未満となった時に前記スイッチング素子をオフさせ、前記間欠動作し
ている期間に前記誤差増幅信号が少なくとも前記閾値以上となった時に前記スイッチング
素子をオンさせるオンオフ制御部と、
前記間欠動作時の前記スイッチング素子のオフ期間を検出し、検出した前記オフ期間に
応じて前記閾値を変化させて間欠発振周期を所定の時間内に制御する発振休止期間制限回
路を備えることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
制御回路が生成する駆動信号に応じてスイッチング素子がオンオフすることにより第1
直流電圧を第2直流電圧に変換するDC/DCコンバータであって、
前記制御回路は、
所定の周波数のパルスを出力する発振器と、
前記第2直流電圧と基準電圧との誤差を増幅して誤差増幅信号を出力する誤差増幅器と

前記スイッチング素子と前記第2直流電圧の出力端子とに接続されたインダクタと、
前記インダクタの回生期間が完了した時にゼロクロス信号を出力するゼロクロス検出回
路と、
前記誤差増幅器からの誤差増幅信号と閾値を比較して軽負荷信号を出力する軽負荷検知
回路と、
前記軽負荷検回路からの前記軽負荷信号と前記ゼロクロス検出回路からのゼロクロス
信号とに基づき所定時間経過後に間欠動作許可信号を出力し前記ゼロクロス信号の出力さ
れない期間が所定期間継続した場合に間欠動作禁止信号を出力するタイマー回路と、
前記タイマー回路が前記間欠動作許可信号を出力している期間に前記誤差増幅信号が前
記閾値未満となった時に前記スイッチング素子をオフさせ、前記タイマー回路が前記間欠
動作許可信号を出力している期間に前記誤差増幅信号が少なくとも前記閾値以上となった
時に前記スイッチング素子をオンさせるオンオフ制御部と、
前記タイマー回路が前記間欠動作許可信号を出力している期間の前記スイッチング素子
のオフ期間を検出し、検出した前記オフ期間に応じて前記閾値を変化させて間欠発振周期
を所定の時間内に制御する発振休止期間制限回路を備えることを特徴とするDC/DCコ
ンバータ。
【請求項3】
前記閾値は第1閾値と第1閾値より大きい第2閾値と第2閾値より大きい第3閾値を備
え、
前記タイマー回路は、定常発振動作から間欠発振動作に移行する際に前記第1閾値を選
択し、前記間欠発振動作から前記定常発振動作に移行する際に前記第2閾値又は前記第3
閾値を選択することを特徴とする請求項2に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記タイマー回路は、前記誤差増幅信号が前記第1閾値未満となった時に、前記第1閾
値を前記第2閾値又は前記第3閾値に切り替え、
前記オンオフ制御部は、前記誤差増幅信号が前記第2閾値未満となった時に前記スイッ
チング素子をオフさせ、前記誤差増幅信号が前記第3閾値以上となった時に前記スイッチ
ング素子をオンさせることを特徴とする請求項3に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記発振休止期間制限回路は、前記スイッチング素子のオフ期間が所定の時間より長い場
合には前記閾値を下げ、前記スイッチング素子のオフ期間が所定の時間より短い場合には
前記閾値を上昇させることを特徴とする請求項2記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記発振休止期間制限回路は、アップダウンカウンタ回路と前記アップダウンカウンタ回
路のカウント出力を入力するDAコンバータ回路を備え、
前記DAコンバータ回路は前記閾値を生成し、
前記スイッチング素子のオフ期間に応じて、前記アップダウンカウンタ回路のカウント値
を変化させることを特徴とする請求項5記載のDC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧より低い安定した電圧を生成する方法として、非絶縁型の降圧チョッパ回路が広く使用されている。しかし、待機時などのように軽負荷になった場合でもスイッチング動作を継続するため、軽負荷になるほど電源変換効率が低下する。
【0003】
この問題点を解決するため、出力電圧と基準電圧とを比較して生成された誤差信号を所定の閾値と比較することで軽負荷を検出し、軽負荷状態になると、誤差信号の脈動に応じてスイッチングトランジスタをオンオフ制御することで間欠動作を繰り返す方法が提案されている。
【0004】
この制御方式は、軽負荷になるほどスイッチング動作の頻度が低下することでスイッチングロスを低減でき、その上、スイッチングトランジスタのゲートドライブ電流も低減できるために、効率を改善することができる(特許文献1)。特許文献1に記載されたDC/DCコンバータを図10に示す。
【0005】
図10に示すDC/DCコンバータは、発振器1、SRフリップフロップ2、アンド回路3、ハイサイドドライバ4、ドライブREG回路5、逆流防止ダイオード6、ブートストラップコンデンサ7、ハイサイドMOSFET8、インダクタ9、出力コンデンサ10、出力負荷11、フィードバック抵抗12、フィードバック抵抗13、エラーアンプ14、位相補償抵抗15、位相補償コンデンサ16、PWMコンパレータ17、インバータ18、ノア回路19、ローサイドドライバ20、ローサイドMOSFET21、ゼロクロス検出回路22、軽負荷検知コンパレータ23、定電流源Ibias1、定電流源Ibias2を備える。
【0006】
次に、図11に示すタイミングチャートを参照しながら、まず、定常負荷時(Iout>Iskip)の領域の動作を説明する。
【0007】
出力電圧Voutをフィードバック抵抗12とフィードバック抵抗13で分圧して、フィードバック電圧FBを生成する。フィードバック電圧FBはエラーアンプ14の反転入力端子に入力され、非反転入力端子には基準電圧Vrefが入力される。エラーアンプ14はフィードバック電圧FBと基準電圧Vrefとの誤差増幅信号COMPを生成し、誤差増幅信号COMPはPWMコンパレータ17の反転入力端子と、軽負荷検知コンパレータ23の反転入力端子に出力される。軽負荷検知コンパレータ23の非反転入力端子には軽負荷検知第1閾値Vsk_Loが入力され、出力負荷電流Ioutが十分大きい場合には、COMP>Vsk_Loとなる。このため、軽負荷検知コンパレータ23の出力信号SKIP2はローレベルとなり、インバータ回路18の入力に対してローレベルの信号を出力する。このために、間欠発振動作は禁止状態となる。
【0008】
発振器1には定電流源Ibias2が接続され、発振器1は定電流源Ibias2に基づきセットパルスを生成し、セットパルスをPWMラッチ2のセット端子Sに対して出力する。
【0009】
ドライブREG回路5には定電流源Ibias1が接続され、ドライブREG(レギューレータ)回路5は、ローサイドドライブ回路20、および、逆流防止ダイオード6を介してハイサイドドライブ回路4に駆動電圧を供給する。
【0010】
PWMラッチ2がセット状態となると、アンド回路3を介して、ハイサイドドライバ4を駆動することで、ハイサイドMOSFET8をオンさせる。この時にSW端子電圧は直流電源Vin近くの電圧まで上昇し、SW端子とVout端子の電圧差に応じた電流IDHがインダクタ9に流れることで、出力コンデンサ10と出力負荷11に対してエネルギー供給を行う。
【0011】
一方、PWMコンパレータ17の非反転入力には、ハイサイドMOSFET8のドレイン電流IDHに比例するハイサイド電流検出信号Vtripが入力される。ハイサイドMOSFET8のオン期間に、ハイサイド電流検出信号Vtripが誤差増幅信号COMP以上となると、PWMラッチ2に対してリセット信号RESETを出力する。PWMラッチ2がリセット状態となると、アンド回路3を介してハイサイドドライバ4をオフすると共に、ノア回路19を介して、ローサイドドライバ20をオンさせる。これにより、ハイサイドMOSFET8がオンからオフに切り替わり、ローサイドMOSFET21がオフからオンに切り替わることで、回生電流IDLがローサイドMOS21のソースからドレインを通ってインダクタ9へ供給される。
【0012】
発振器1で決定する発振周期の間に、インダクタ9の回生が終了しない電流連続動作の場合、再び、PWMラッチ2がセット状態となり、ローサイドMOSFET21がオフし、ハイサイドMOSFET8がオンする。
【0013】
以上の動作を繰り返すことで、降圧チョッパ動作を行う。次に、図11を参照しながら、定常負荷から軽負荷に移行し、再び、定常負荷に復帰する時の動作を説明する。Ioutが低下すると、誤差増幅信号COMPが低下するために、ハイサイドMOSFET8のドレイン電流IDHのピーク値は小さくなるように制御される。軽負荷検知コンパレータ23は誤差増幅信号COMPと第1軽負荷検知閾値Vsk_Loを比較し、誤差増幅信号COMPが第1閾値Vsk_Lo未満となると第1閾値Vsk_Loが第2閾値Vsk_Hiに切り替わると同時に、軽負荷検知信号SKIPがローからハイに切り替わる。そして、インバータ18とアンド回路3とハイサイドドライバ4を介してハイサイドMOSFET8を強制的にオフする。その後、インダクタ9の回生期間が完了したことをゼロクロス検出回路22が検出し、ゼロクロス信号ZEROがローからハイに切り替わると、ノア回路19とローサイドドライバ20を介してローサイドMOSFET21をオフする。
【0014】
その後、間欠発振のスイッチ動作停止期間中に出力コンデンサ10の電荷が出力電流Ioutによって放電されると出力電圧Voutが僅かに低下し、FB端子の電圧と電圧Vref間の電位差が広がると、誤差増幅電圧信号COMPが上昇する。
【0015】
誤差増幅信号COMPが、第2軽負荷閾値Vsk_Hi以上となると、軽負荷検知コンパレータ23は軽負荷検知信号SKIPをハイからローに切り替えることで、軽負荷検知閾値は第2閾値Vsk_Hiから第1閾値Vsk_Loに切り替わる。この時に、インバータ18の出力がローからハイに切り替わることでスイッチ動作を開始する。
【0016】
以上の一連の動作を繰り返すことで間欠発振動作を行い、出力電流Ioutが小さくなるほど、間欠発振周期を長くなるように制御することで、ハイサイドMOSFET8とローサイドMOSFET21で発生するスイッチング損失を低下させて軽負荷効率を向上させる。
【0017】
その後、Ioutが上昇すると、Ioutの上昇に従い、間欠発振オフ期間中のVoutの低下時間が短くなるために、間欠発振周期は短くなる。やがて、誤差増幅信号COMPは上昇し、軽負荷検知第1閾値Vsk_Lo未満にならなくなると、定常発振動作に移行する。
【0018】
特許文献2には、軽負荷時にスイッチング回数を減らす提案として、出力電圧をヒステリシスコンパレータで検出し、検出された電圧が第1の閾値になるとスイッチング素子をオフし、第1の閾値より小さい第2の閾値になるとスイッチング素子をオンさせる降圧型チョッパにおいて、軽負荷時には第2の閾値を所定電圧幅だけ高電位側にシフトすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許5481178号公報
【特許文献2】特開2007−020352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許文献1では、第1の問題点として、PWMコンパレータ17に伝搬遅延があるため、電流検出信号Vtripが誤差増幅信号COMPに達しても、速やかにリセット信号をPWMラッチ2に出力し、ハイサイドMOSFET8をオフさせることができない。このため、誤差増幅信号COMPは、予め目標レベルよりも低い電圧で制御される。この伝搬遅延は一定であるため、図12(a)に示すように、Voutが比較的大きい条件(VinとVoutとの電圧差が小)では、ハイサイドMOSFET8のオン期間(図12(a)のVtripのオン期間に対応)が伝搬遅延ΔTに対して十分に長いために、特に問題とならない。
【0021】
しかし、Voutの設定が比較的に小さい条件(VinとVoutとの電圧差が大)では、ハイサイドMOSFET8のオン期間(図12(b)のVtripのオン期間に対応)が短くなり、伝搬遅延の影響が無視できなくなり、誤差増幅信号COMPは目標レベルよりもかなり小さい電圧で制御されることになる。軽負荷検知コンパレータ23は、この誤差増幅信号COMPと軽負荷検知第1閾値Vsk_Loを比較して軽負荷検知を行うため、図6に示したようにVoutが小さい条件程、軽負荷判定の電流レベル(軽負荷検知閾値)が大きくなってしまい、本来なら定常発振動作をさせたい重負荷の領域でも間欠発振動作をしてしまう問題があった。
【0022】
また、第2の問題点として、間欠発振期間にハイサイドMOSFET8がオンすると、Voutが上昇し、FB端子電圧と電圧Vref間の電圧差が増えるため、誤差増幅信号COMPが低下して、再び軽負荷検知信号SKIPがローからハイに切り替わり、ハイサイドMOSFET8、および、ローサイドMOSFET21の動作を停止させる。しかし、実際には誤差増幅信号COMPに応答遅れがあり、誤差増幅信号COMPが速やかに軽負荷検知第1閾値(Vsk_Lo)未満となることができないため、図11に示すように、1間欠発振周期中に複数回スイッチング動作をしてしまう。このため、Voutに重畳
するリップル電圧は大きくなり、これに伴い、間欠発振のオフ期間が必要以上に長くなってしまう。このため、間欠発振周波数が人間の可聴域(20kHz以下)よりも低くなり、出力コンデンサ10にセラミックコンデンサを用いた場合には、その圧電効果によって音鳴りが発生してしまう問題があった。
【0023】
また、第3の問題点として、間欠発振動作に入る負荷電流と、間欠発振動作から抜ける負荷電流との間に電流差が無いため、閾値近傍の負荷領域で、動作が不安定になる問題があった。特許文献2に対しては、上記第2の問題点を軽減できるが、第1および第3の問題点は解決されていない。
【0024】
本発明は、出力電圧が小さい条件でも、発振周波数が可聴域よりも低くならず、軽負荷検知閾値を大きくせず、重負荷の領域で間欠発振動作を禁止することができるDC/DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、請求項1のDC/DCコンバータは、制御回路が生成する
駆動信号に応じてスイッチング素子がオンオフすることにより第1直流電圧を第2直流電
圧に変換するDC/DCコンバータであって、前記制御回路は、所定の周波数のパルスを
出力する発振器と、前記第2直流電圧と基準電圧との誤差を増幅して誤差増幅信号を出力
する誤差増幅器と、前記スイッチング素子と前記第2直流電圧の出力端子とに接続された
インダクタと、前記インダクタの回生期間が完了した時にゼロクロス信号を出力するゼロ
クロス検出回路と、前記誤差増幅器からの誤差増幅信号と閾値を比較して軽負荷信号を出
力する軽負荷検知回路と、前記軽負荷検回路からの前記軽負荷信号と前記ゼロクロス検
出回路からのゼロクロス信号とに基づき所定時間経過後に間欠動作許可信号を出力し前記
ゼロクロス信号の出力されない期間が所定期間継続した場合に間欠動作禁止信号を出力す
るタイマー回路と、前記タイマー回路が前記間欠動作許可信号を出力している期間に前記
誤差増幅信号が前記閾値未満となった時に前記スイッチング素子をオフさせ、前記タイマ
ー回路が前記間欠動作許可信号を出力している期間に前記誤差増幅信号が少なくとも前記
閾値以上となった時に前記スイッチング素子をオンさせるオンオフ制御部と、前記タイマ
ー回路が前記間欠動作許可信号を出力している期間の前記スイッチング素子のオフ期間を
検出し、検出した前記オフ期間に応じて前記閾値を変化させて間欠発振周期を所定の時間
内に制御する発振休止期間制限回路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、タイマー回路は、軽負荷検回路からの軽負荷信号とゼロクロス検出
回路からのゼロクロス信号とに基づき所定時間経過後に間欠動作許可信号を出力しゼロク
ロス信号の出力されない期間が所定期間継続した場合に間欠動作禁止信号を出力する。即
ち、出力電圧が大きいときは、ゼロクロス検出回路によって決定される軽負荷閾値レベル
よりも、軽負荷検回路によって決定される軽負荷閾値レベルの方が低いために、軽負荷
回路が優先されて間欠動作許可信号を出力し、一方で、出力電圧が小さいときは、ゼ
ロクロス検出回路によって決定される軽負荷閾値レベルよりも、軽負荷検回路によって
決定される軽負荷閾値レベルの方が高いために、ゼロクロス検出回路が優先されて間欠動
作許可信号を出力する。このために、出力電圧が小さい条件でも、軽負荷検知閾値を大き
くせず、重負荷の領域で間欠発振動作を禁止することができる。さらに、間欠発振動作時
の発振休止期間をモニタリングし、発振休止期間に応じて軽負荷検出閾値の基準値を変化
させて間欠発振周期を制御することで、間欠発振周期を可聴域に入らせず、安定に制御さ
せることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例のDC/DCコンバータの回路構成図である。
図2】本発明の実施例のDC/DCコンバータのゼロクロス検出回路の詳細な回路構成図である。
図3】発明の実施例のDC/DCコンバータのタイマー回路の詳細な回路構成図である。
図4】本発明の実施例のDC/DCコンバータの各部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図5】本発明の実施例のDC/DCコンバータの間欠発振動作時にリップル電圧を重畳する動作を説明するための各部のタイミングチャートである。
図6】従来のDC/DCコンバータにおいて出力電圧に対して誤差増幅信号検出のみで決まる軽負荷検知閾値を示す図である。
図7】本発明の実施例のDC/DCコンバータにおいて出力電圧に対して誤差増幅信号検出で決まる閾値とゼロクロス検出で決まる閾値とのアンドを取った軽負荷検知閾値を示す図である。
図8】本発明の実施例のDC/DCコンバータの回路構成図に発振休止期間制限回路30の詳細を加えて示したものである。
図9図8に示す本発明の実施例のDC/DCコンバータの各部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図10】従来のDC/DCコンバータの回路構成図である。
図11】従来のDC/DCコンバータの各部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図12】従来のDC/DCコンバータにおいて入力電圧と出力電圧との電圧差が大きい場合に軽負荷検知閾値が急上昇する問題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のDC/DCコンバータの実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本発明の概要について説明する。
【0029】
従来技術は、誤差増幅信号と閾値を比較することで軽負荷を検知したのに対して、本発明は、誤差増幅信号での検出と、インダクタ電流の不連続を検出するゼロクロス検知回路とを組み合わせて軽負荷を検知したことを特徴とする。
【0030】
即ち、本発明は、誤差増幅信号と軽負荷検知閾値を比較することで軽負荷検出を行う軽負荷検知コンパレータと、インダクタの回生期間が終了したことを検知するゼロクロス検出回路を組み合わせることで、Vout値が比較的小さい条件ではゼロクロス検出による軽負荷検出を行い、Vout値が比較的大きい条件では、軽負荷検知コンパレータで軽負荷検出を行う。これにより、Voutが小さい時に軽負荷検知閾値が急上昇してしまう問題を解決でき、Vout依存性の少ない軽負荷検出を実現できる。
【0031】
また、従来技術は、誤差増幅信号が軽負荷検知閾値未満となった時にスイッチング動作を停止させ、誤差増幅信号が軽負荷検知閾値以上となった時にスイッチング動作を再開させたのに対して、本発明は、間欠発振動作制御回路を追加し、1間欠発振動作期間中のスイッチ回数を1回に抑えることを特徴とする。
【0032】
即ち、本発明は、間欠発振のオン期間終了時にFB電圧に一時的にリップルを重畳することで誤差増幅信号を瞬時に低下させ、ハイサイドMOSFETが連続してスイッチ動作するのを防ぐことで、1間欠周期当たりのスイッチ回数を1回に抑える。これにより、出力電圧Voutのリップルを低く抑えることができ、また、間欠発振周期が必要以上に低くならないため、出力コンデンサからの音鳴りを抑制することができる。
【0033】
また、従来技術は、軽負荷を検知するために第1閾値と、第1閾値よりも大きい第2閾値でヒステリシスを設けているのに対して、本発明は、第1閾値と、第1閾値よりも大きい第2閾値と、第2閾値よりも大きい第3閾値でヒステリシスを設けることを特徴とする。
【0034】
即ち、本発明は、軽負荷検知閾値を、第1閾値、第2閾値、第3閾値と三段階で切り替わる構成とし、定常発振動作から間欠動作に移行する際には、軽負荷検知コンパレータの軽負荷検知閾値は第1閾値を選択し、間欠発振動作から定常発振動作に移行する際には、軽負荷検知コンパレータの軽負荷検知閾値は第1閾値よりも電圧レベルの大きい第2閾値、又は第3閾値を選択してヒステリシスを発生させることで軽負荷検知閾値近傍の不安定動作を解消することができる。
【0035】
また、本発明は、間欠発振周期の発振休止期間をモニタリングし、発振休止期間に応じて軽負荷検出閾値の基準値を変化させて間欠発振周期を制御することを特徴とする。
【0036】
即ち、本発明は、間欠発振周期の発振休止期間をモニタリングし、発振休止期間が所定の期間より長い場合には、軽負荷検知コンパレータの軽負荷検知閾値を下げて間欠発振周期を短くしていき、発振休止期間が所定の期間より短く補正した場合には、軽負荷検知コンパレータの軽負荷検知閾値を上げて間欠発振周期を長くすることで、間欠発振周期を可聴域に入らせず、安定に制御させることが可能になる。
【0037】
次に、上述した特徴を有するDC/DCコンバータの具体的な実施例を例示して説明する。
【実施例】
【0038】
図1は本発明の実施例のDC/DCコンバータの回路構成図である。図2は本発明の実施例のDC/DCコンバータのゼロクロス検出回路の詳細な回路構成図である。図3は発明の実施例のDC/DCコンバータのタイマー回路の詳細な回路構成図である。
【0039】
実施例のDC/DCコンバータは、制御回路が生成する駆動信号に応じてスイッチング素子がオンオフすることにより第1直流電圧を第2直流電圧に変換するDC/DCコンバータである。
【0040】
発振器1は、所定の周波数のパルスを出力する。エラーアンプ14は、第2直流電圧と基準電圧との誤差を増幅して誤差増幅信号を出力する。インダクタ9は、スイッチング素子からなるMOSFET8,21と第2直流電圧Voutの出力端子とに接続される。ゼロクロス検出回路22は、インダクタ9の回生期間が完了した時にゼロクロス信号を出力する。軽負荷検知コンパレータ23は、エラーアンプ14からの誤差増幅信号と閾値を比較して軽負荷信号を出力する。
【0041】
実施例のDC/DCコンバータは、図10に示す従来のDC/DCコンバータの構成に対して、さらに、間欠発振動作を制御するための間欠発振動作制御回路27と間欠発振動作時の発振休止期間制限回路30を設けたことを特徴とする。
【0042】
まず、間欠発振動作制御回路27は、フィルタ抵抗2711とフィルタ容量2712とスイッチ2713とオア回路2715で構成されるローパスフィルタ回路271と、タイマー272、アンド回路273、アンド回路274、1ショット回路275、スイッチ276、電流源Irippleを有して構成される。
【0043】
タイマー回路272は、軽負荷検コンパレータ23からの軽負荷信号とゼロクロス検
出回路22からのゼロクロス信号とに基づき所定時間経過後に間欠動作許可信号を出力し
ゼロクロス信号の出力されない期間が所定期間継続した場合に間欠動作禁止信号を出力す
る。
【0044】
アンド回路273、インバータ18、およびアンド回路3(オンオフ制御部)は、タイマー回路272が間欠動作許可信号を出力している期間に誤差増幅信号が閾値未満となっ
た時にMOSFET8をオフさせ、タイマー回路272が間欠動作許可信号を出力している期間に誤差増幅信号が少なくとも閾値以上となった時にMOSFET8をオンさせる。
【0045】
ローパスフィルタ回路271は、時定数を調整するための調整素子を備え、第1誤差増幅信号COMP1に基づき調整素子により第2誤差増幅信号COMP2を生成する。フィルタ抵抗2711とフィルタ容量2712とスイッチ2713とオア回路2715は、調整素子を構成する。
【0046】
PWMコンパレータ17(電流比較器)は、第2誤差増幅信号COMP2とMOSFET8に流れる電流信号を比較し比較出力に基づきMOSFET8をオフさせるためのリセット信号をアンド回路274に出力する。アンド回路274は、PWMコンパレータ17からのリセット信号とタイマー回路272からの信号とのアンドを取り、1ショット回路275に出力する。1ショット回路275は、アンド回路274からの出力により1ショットパルスを生成し、スイッチ276とオア回路2715を介してスイッチ2713に出力する。
【0047】
電流源Iripple(電圧重畳回路)は、スイッチ276を介してエラーアンプ14の反転入力端子に接続されている。電流源Irippleは、タイマー回路272が間欠動作許可信号を出力している期間にPWMコンパレータ17からリセット信号が出力された時には、エラーアンプ14の反転入力端子に所定時間(1ショットパルス期間)、電圧信号を重畳する。
【0048】
ローパスフィルタ回路271は、タイマー回路272から間欠動作許可信号SKIP−OKが出力されるとスイッチ2713をオフすることにより時定数を所定の時定数よりも大きくする。さらに、タイマー回路272が間欠動作許可信号を出力している期間にPWMコンパレータ17からリセット信号が出力された時には、1ショット回路275が出力する1ショットパルスの期間だけスイッチ2713をオンすることにより時定数を所定の時定数にする。
【0049】
電流源Irippleは、所定時間経過後に電圧信号の重畳を禁止する。ローパスフィルタ回路271は、所定時間経過後にスイッチ2713をオフすることにより時定数を所定の時定数よりも大きくする。
【0050】
次に、図4のタイミングチャートを参照しながら、定常負荷時(Iout>Iskip_in)の領域動作を説明する。
【0051】
出力電圧Voutをフィードバック抵抗12とフィードバック抵抗13で分圧して、フィードバック電圧FBを生成する。フィードバック電圧FBはエラーアンプ14の反転入力端子に入力され、非反転入力端子には基準電圧Vrefが入力される。エラーアンプ14はフィードバック電圧FBと基準電圧Vrefとの第1誤差増幅信号COMP1を発生してローパスフィルタ271に出力する。
【0052】
定常負荷の状態では、タイマー回路272の出力はローレベルなので、オア回路2715を介してスイッチ2713は閉じて、ローパスフィルタ271の減衰特性は弱くなっており、第2誤差増幅信号COMP2は、第1誤差増幅信号COMP1信号とほぼ等しい電圧となり、PWMコンパレータ17の反転入力端子と、軽負荷検知コンパレータ23の反転入力端子に入力される。軽負荷検知コンパレータ23の非反転入力には軽負荷検知閾値Vsk_Loが入力され、出力電流Ioutが十分大きい場合には、COMP2>Vsk_Loとなるため、軽負荷検知コンパレータ23の出力信号SKIP1はローレベルとなる。このため、アンド回路273を介して、インバータ回路18の入力に対してローレベルのSKIP2信号を出力する。このため、間欠発振動作は禁止状態となる。
【0053】
発振器1には定電流源Ibias2が接続され、定電流源Ibias2を基にセットパルスを生成し、PWMラッチ2のセット端子に対して出力する。
【0054】
ドライブREG回路5には定電流源Ibias1が接続され、ローサイドドライブ回路20、および、逆流防止ダイオード6を介してハイサイドドライブ回路4に駆動電圧を供給する。
【0055】
PWMラッチ2がセット状態となると、アンド回路3を介して、ハイサイドドライバ4を駆動することで、ハイサイドMOSFET8をオンさせる。この時にSW端子電圧はVin近くの電圧まで上昇し、SW端子とVout端子の電圧差に応じた電流IDHがインダクタ9に流れることで、出力コンデンサ10と出力負荷11に対してエネルギー供給を行う。
【0056】
一方で、PWMコンパレータ17の非反転入力端子には、ハイサイドMOSFET8のドレイン電流IDHに比例するハイサイド電流検出信号Vtripが入力され、ハイサイドMOSFET8のオン期間に、ハイサイド電流検出信号Vtripが第2誤差増幅信号COMP2以上になると、PWMラッチ2に対してリセット信号RESETを出力する。PWMラッチ2がリセット状態となると、アンド回路3を介してハイサイドドライバ4をオフすると共に、ノアR回路19を介して、ローサイドドライバ20をオンさせる。これにより、ハイサイドMOSFET8がオンからオフに切り替わり、ローサイドMOSFET21がオフからオンに切り替わることで、回生電流IDLがローサイドMOS21のソースからドレインを通ってインダクタ9へ供給される。
【0057】
発振器1で決定する発振周期の間に、インダクタ9の回生が終了しない電流連続動作の場合は、再び、PWMラッチ2がセット状態となり、ローサイドMOSFET21がオフし、ハイサイドMOSFET8がオンする。
【0058】
以上の一連の動作を繰り返すことで、降圧チョッパ動作を行う。
【0059】
次に、定常負荷から軽負荷に移行(Iout=Iskip_in)する時の動作を図4図5を参照しながら説明する。
【0060】
Ioutが低下すると、第1誤差増幅信号COMP1および第2誤差増幅COMP2が低下するために、ハイサイドMOSFETのドレイン電流IDHのピーク値が小さくなるように制御される。軽負荷検知コンパレータ23は、第2誤差増幅信号COMP2と第1軽負荷検知閾値Vsk_Loを比較し、時刻t1において、第2誤差増幅信号COMP2が第1軽負荷検知閾値Vsk_Lo未満となると、第1軽負荷検知信号SKIP1がローからハイに切り替わり、アンド回路273と、タイマー回路272に対して軽負荷状態を示す信号を供給する。
【0061】
その後、更にIoutが低下し、インダクタ電流ILの谷電流がゼロアンペアに達すると電流不連続動作となる。この際に、SW端子電圧の極性はマイナスからプラスに切り替わる。ゼロクロス検出回路22は、図2に示すように、SW端子電圧の極性変化をコンパレータ221で検出し、SRフリップフロップ222をセット状態にする。これにより、ノア回路19とローサイドドライバ20を介して、ローサイドMOSFET21をオフさせると同時に、タイマー回路272に対してゼロクロス検出状態を示す信号を出力する。
【0062】
タイマー回路272は、時刻t2において、第1軽負荷検知信号SKIP1とゼロクロス信号ZEROがともにハイとなると、図3に示すように、アンド回路2721を介して、SRフリップフロップ2722がセット状態となり、スイッチ2723をオンさせると共に、インバータ2724を介してスイッチ2725をオフさせることで、コンデンサ2726を定電流源Idisで放電する。
【0063】
コンパレータ2727は、コンデンサ2726の電位TMと間欠発振許可第1閾値Vtm_Loを比較し、時刻t3において、コンデンサ2726の電位TMが第1閾値Vtm_Loに達する。すると、間欠発振許可信号SKIP−OK信号がローからハイに切り替わると同時に、第1閾値Vtm_Loを、第1閾値Vtm_Loよりも電圧レベルの大きい第2閾値Vtm_Hiに切り替える。これにより、間欠発振動作を許可するモードに切り替わる。この時に、軽負荷検知コンパレータ23の軽負荷検知閾値を、第1閾値Vsk_Loよりも電圧レベルの大きい第3閾値Vsk_Hiに切り替える。
【0064】
また、SKIP−OK信号がローからハイに切り替わるとオア回路2715の一方の入力はローレベルになるので、スイッチ2713は開き、他方の入力Ripple_on信号でスイッチ2713は開閉する。
【0065】
このように、アンド回路2721により軽負荷検知コンパレータ23からのSKIP1とゼロクロス検出回路22からのゼロクロス信号ZEROとのアンドをとることで軽負荷検出を行う。Vout値が比較的小さい条件では、軽負荷検知コンパレータ23で決まる軽負荷閾値レベルよりも、ゼロクロス検出回路22で決まる軽負荷閾値レベルの方が低いために、ゼロクロス検出回路22が優先して軽負荷検知閾値Iskip−inを決定することになる。この場合の軽負荷検知閾値Iskip−inは、インダクタ9のインダクタ値をL、定常発振周波数をFswとすると、
Iskip_in=Vout(Vin−Vout)/(2・L・Vin・Fsw)
で表わされ、Voutが比較的小さい条件では、Iskip−inを縦軸、Voutを横軸とした場合は、図7に示すように放物線状の特性となる。
【0066】
一方、Voutが比較的大きい領域では、Iskip−inレベルは従来の軽負荷検知コンパレータ23が優先して決定する。この様子を図示すると図7に示すようになる。従って、図6に示したVoutが小さい領域でIskip−inが大きくなる従来の問題点を解決できる。また、Voutが大きい領域でも、Iskip−inが大きくなり過ぎるのを防ぐことができ、Vout依存性の少ない軽負荷検知動作を実現することができる。
【0067】
次に、軽負荷時の間欠発振期間(Iout<Iskip_in)の動作について図4図5を参照しながら説明する。
【0068】
SKIP−OK信号がハイで間欠発振が許可の状態では、アンド回路273は、第1軽負荷検知信号SKIP1がハイの時に、第2軽負荷検知信号SKIP2にハイを出力することで、インバータ18とアンド回路3とハイサイドドライバ4を介してハイサイドMOSFET8を強制的にオフする。その後、時刻t3において、インダクタ9の回生期間が完了したことをゼロクロス検出回路22が検出し、ゼロクロス信号ZEROがローからハイに切り替わると、ノア回路19とローサイドドライバ20を介してローサイドMOSFET21をオフする。
【0069】
その後、間欠発振のスイッチ動作停止期間中に出力コンデンサ10の電荷が出力電流Ioutにより放電されるとVoutが僅かに低下し、FB端子とVref間の電位差が広がると、第1誤差増幅電圧信号COMP1が上昇するため、第2誤差増幅信号COMP2も上昇する。
【0070】
図5の時刻t4において、第2誤差増幅信号COMP2が、第3軽負荷閾値Vsk_Hi以上になると、軽負荷検知コンパレータ23は第1軽負荷検知信号SKIP1をハイからローに切り替えることで、第2軽負荷検知信号SKIP2もハイからローに切り替わり、軽負荷検知閾値はVsk_Hiよりも電圧レベルが小さく、Vsk_Loよりも大きい第2軽負荷閾値Vsk_Mdに切り替わる。この時に、インバータ18の出力がローからハイに切り替わることで、MOSFET8のスイッチ動作を開始する。
【0071】
その後、ハイサイドMOSFET8のドレイン電流IDHが上昇し、時刻t5において電流検出信号Vtripが第2誤差増幅信号COMP2に達すると、PWMコンパレータ17はPWMラッチ2に対してリセット信号を出力することでハイサイドMOSFET8をオフさせる。この時に、アンド回路274を介して1ショット回路275にもリセット信号RESET2が供給される。
【0072】
1ショット回路275では、リセット信号RESET2を受けて所定の期間(時刻t6〜t7)だけRipple_ON信号をローからハイに切り替える。これにより、スイッチ276がオンするため、定電流IrippleはFB端子に供給され、FB端子電圧は瞬間的に上昇する。さらに、このタイミングでRipple_on信号によりオア回路2715を介してスイッチ2713をオンにすることで、ローパフフィルタ271の時定数を小さくさせて減衰効果を弱める。
【0073】
FB端子電圧が急上昇すると、Vrefとの電圧差が広がるために、エラーアンプ14は、第1誤差増幅信号COMP1を瞬時に低下させ、第2誤差増幅信号COMP2もそれに追従して低下する(時刻t6〜t7)。
【0074】
第2誤差増幅信号COMP2が低下し、軽負荷検知閾値Vsk_Mdに達すると、軽負荷検知回路23は第1軽負荷検知信号SKIP1を再びローからハイに切り替えて、ハイサイドMOSFET8のスイッチ動作を停止させると同時に、軽負荷検知閾値をVsk_Hiに切り替える。
【0075】
1ショット回路275は、所定の期間(時刻t6〜t7)経過後に、Ripple_ON信号をハイからローに切り替え、スイッチ276をオフする。この際に、時刻t8〜t9において、第1誤差増幅信号COMP1にはオーバーシュートが発生して、軽負荷検知回路23が誤検出を起こす可能性がある。このため、スイッチ2713をオフにすることでローパスフィルタ271の時定数を増加させて減衰特性を高めて、第2誤差増幅信号COMP2にオーバーシュートが発生するのを防止することができる。
【0076】
その後、インダクタ9の回生期間が終了した後に、ローサイドMOSFET21のスイッチ動作を停止させる。
【0077】
以上の一連の動作を繰り返すことで間欠発振動作を行い、出力電流Ioutが小さくなるほど、間欠発振周期を長くなるように制御することで、ハイサイドMOSFET8とローサイドMOSFET21で発生するスイッチング損失を低下させて軽負荷効率を向上させる。さらに、間欠発振のオン期間終了時にFB電圧に一時的にリップルを重畳することで第2誤差増幅信号を瞬時に低下させ、ハイサイドMOSFET8が連続してスイッチ動作するのを防ぐことで、1間欠周期当たりのスイッチ回数を1回に抑える。これにより、出力電圧Voutのリップルを低く抑えることができ、また、間欠発振周期が必要以上に低くならないため、出力コンデンサ10からの音鳴りを抑制することができる。
【0078】
次に、軽負荷から定常負荷(Iout≧Iskip_out)に復帰する際の動作を、図4を参照しながら説明する。Ioutが上昇するに従い、間欠発振オフ期間中のVoutの低下時間が短くなるため、間欠発振周期は短くなる。やがて、インダクタ電流ILの谷電流値が0A以上の連続モードに移行すると、ゼロクロス信号ZEROがロー固定となるため、SRフリップフロップ2722はリセット状態となる。このため、スイッチ2725がオンし、スイッチ2723がオフとなり、コンデンサ2726の充電を開始する。コンデンサ2726の電位TMが、間欠発振許可第2閾値Vtm_Hiに達すると、コンパレータ2727が反転してSKIP−OK信号をハイからローへ切り替えると同時に、軽負荷検知閾値を第1閾値Vsk_Loに切り替える。
【0079】
このように、軽負荷検知閾値を、第1閾値Vsk_Lo、第2閾値Vsk_Md、第3閾値Vsk_Hiと三段階で切り替わる構成とし、定常発振動作から間欠動作に移行する際には、軽負荷検知コンパレータ23の軽負荷検知閾値は第1閾値Vsk_Loが選択され、間欠発振動作から定常発振動作に移行する際には、軽負荷検知コンパレータ23の軽負荷検知閾値は第1閾値Vsk_Loよりも電圧レベルの大きい第2閾値Vsk_Md又は第3閾値Vsk_Hiが選択され、ヒステリシスを発生させることにより、軽負荷検知閾値近傍の不安定動作を解消することができる。
【0080】
このように、タイマー回路272は、軽負荷検知コンパレータ23からの軽負荷信号と
ゼロクロス検出回路22からのゼロクロス信号とに基づき所定時間経過後に間欠動作許可
信号を出力しゼロクロス信号の出力されない期間が所定期間継続した場合に間欠動作禁止
信号を出力する。即ち、出力電圧が大きいときは、軽負荷検知コンパレータ23が優先さ
れて間欠動作許可信号を出力し、出力電圧が小さいときは、ゼロクロス検出回路が優先さ
れて間欠動作許可信号を出力する。このために、出力電圧が小さい条件でも、軽負荷検知
閾値を大きくせず、重負荷の領域で間欠発振動作を禁止することができる。
【0081】
また、電流源Irippleは、タイマー回路272が間欠動作許可信号を出力している期間にPWMコンパレータ17からリセット信号が出力された時には、エラーアンプ14の反転入力端子に所定時間、リップルを重畳するので、誤差増幅信号を瞬時に低下させ、ハイサイドMOSFET8が連続してスイッチ動作するのを防ぐことで、1間欠周期当たりのスイッチ回数を1回に抑える。これにより、出力電圧Voutのリップルを低く抑えることができる。
【0082】
また、タイマー回路272は、定常発振動作から間欠発振動作に移行する際に第1閾値を選択し、間欠発振動作から定常発振動作に移行する際に第2閾値又は第3閾値を選択することで、間欠発振動作に入る負荷電流と、間欠発振動作から抜ける負荷電流との間に意図的に電流差を設け、軽負荷検知閾値近傍の不安定動作を解消することができる。
【0083】
ここで、間欠発振動作での間欠発振周期が可聴域に入らないように制限するための発振休止期間制限回路30の動作について説明する。
図8は本発明の実施例のDC/DCコンバータの回路構成図である。図9は本発明の実施例のDC/DCコンバータの各部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0084】
図8に示す実施例のDC/DCコンバータは、図1に示す実施例のDC/DCコンバータに対して、発振休止期間制限回路30の詳細を加えて示したものである。なお、図1に示す構成と同一構成については、その説明を省略する。
【0085】
発振休止期間制限回路30は、DAコンバータ回路308と、DAコンバータ回路308に電圧変更の信号を出力するアップダウンカウンタ回路307と、アップダウンカウンタ回路307の入力となる信号を発生するラッチ回路306と、電流源Iclampと、基準電圧clampREFと、間欠発振周期の発振休止期間をモニタリングするコンデンサ304及びコンデンサ304の充電電流を制御するスイッチ302及びコンデンサ304の放電を制御するスイッチ303及びインバータ301と、間欠発振周期の発振休止期間をモニタリングし、発生された電圧clampと基準電圧clampREFを比較するコンパレータ305で構成されている。
なお、前述した軽負荷検知コンパレータ23の基準電圧Skip_REFは、DAコンバータ回路308で生成される出力電圧である。
【0086】
次に、図9に示すタイミングチャートを参照しながら、発振休止期間制限回路30の動作を説明する。負荷電流Ioutが低下し、時刻t0以降に、第3軽負荷閾値Vsk_Hiになる。さらに負荷電流が低下し、時刻t1以降に間欠発振動作になると軽負荷検知コンパレータ23は第1軽負荷検知信号SKIP1をハイに切り替え、第2軽負荷検知信号SKIP2もハイに切り替わる。ここで、アップダウンカウンタ回路307は定常負荷時のカウント出力をし、DAコンバータ308に入力している。DAコンバータ308は、軽負荷検知コンパレータ23の非反転端子に定常動作時の基準電圧を基にした軽負荷検知閾値Vsk_Hiを出力している。
【0087】
次に、時刻t2にて第2軽負荷検知信号SKIP2がハイに切り替わると、スイッチ30
2がオンして電流源Iclampからコンデンサ304へ充電電流が流れる。また、同時
刻にインバータ301を介してスイッチ303はオフするのでコンデンサ304の放電経
路は無くなり、コンデンサ304は定電流Iclampで充電されていく。ここで、負荷
電流が低下した状態が続き、間欠発振動作の発振休止期間が長くなると、コンデンサ30
4への充電時間も長くなる。時刻t3にて、コンデンサ304のclamp電圧がcla
mpREF電圧を超えると、コンパレータ305の出力は反転し、ローからハイの信号を
出力し、ラッチ回路306のリセット端子にリセット信号を入力する。これにより、ラッ
チ回路306の出力電圧cinはハイレベルからローレベルへ反転し、時刻t4において
もローレベルの信号を保持している。時刻t4において軽負荷検知コンパレータ23の非
反転端子電圧Vsk_Hiに対して、反転端子電圧COMP2が越えるので、ハイサイド
MOSFET8はターンオンする。と同時に時刻t4〜時刻t5にかけて、軽負荷検知コ
ンパレータ23の軽負荷検知閾値は電圧レベルの最も大きい第3閾値Vsk_Hiから第
2閾値Vsk_Mdが選択される。
【0088】
次に、cin電圧がハイレベルの時にカウントアップ、cin電圧がローレベルの時にカウントダウンする回路で構成されたアップダウンカウンタ回路307の出力coutは、クロック信号となるRESET信号のハイレベルになるタイミング時刻t5ではカウントダウンを行う。これにより、次の周期となる時刻t5〜t7にかけて、DAコンバータ308の出力電圧であるskipREFを1ビット分低下させる。また、時刻t5〜t6間の軽負荷検知コンパレータ23の軽負荷検知閾値は第2閾値Vsk_Mdから第3閾値Vsk_Hiが選択される。図9に図示したskipREFでは、時刻t4〜t5の第2閾値Vsk_Mdよりわずかに時刻t5〜t6の第3閾値Vsk_Hiが高く設定されている。
【0089】
このように、軽負荷検知閾値skipREFの絶対値は低下させられるので、COMP2信号の上限値が狭められてハイサイドMOSFET8のターンオンのタイミングが早まるので、間欠発振周期の発振休止期間を制限することができる。
また、軽負荷検知閾値skipREFの絶対値を低下させることで、ハイサイドMOSFET8のオン期間は短くなり、出力電圧Voutへのエネルギー供給能力が低下する。これにより、オフ期間のみ短く制限するのではないので制御系が安定しやすい利点がある。
【0090】
次に、時刻t8のタイミングにおいても、cin電圧がローレベルを出力しているので、アップダウンカウンタ回路307の出力coutは、時刻t8〜t10にかけて、軽負荷検知閾値skipREFを1ビット分さらに低下させる。
【0091】
次に、時刻t10のタイミングにおいては、cin電圧がハイレベルを出力しているので、アップダウンカウンタ回路307の出力coutは軽負荷検知閾値skipREFを1ビット分上昇させる。
【0092】
以降、次の第2軽負荷検知信号SKIP2がローからハイに切り替わる度に、前述の動作が繰り返され、間欠発振周期の発振休止期間の上限を制限させながら軽負荷検知閾値の絶対値を収束することが出来る。
【0093】
このように実施例のDC/DCコンバータによれば、間欠発振周期の発振休止期間をモニ
タリングし、発振休止期間に応じて軽負荷検閾値の基準値を変化させて間欠発振周期を
制御することで、間欠発振周期を可聴域に入らせず、安定に制御させることが可能になる
【0094】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための例示であって、個々の構成、組合せ等を上記のものに特定するものではない。本発明は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、スイッチング電源装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 発振器
2 SRフリップフロップ
3,24,273,274 アンド回路
4 ハイサイドドライバ
5 ドライブREG回路
6 逆流防止ダイオード
7 ブートストラップコンデンサ
8 ハイサイドMOSFET
9 インダクタ
10 出力コンデンサ
11 出力負荷
12,13 フィードバック抵抗
14 エラーアンプ
15 位相補償抵抗
16 位相補償コンデンサ
17 PWMコンパレータ
18 インバータ
19 ノア回路
20 ローサイドドライバ
21 ローサイドMOSFET
22 ゼロクロス検出回路
23 軽負荷検知コンパレータ
25,26,302,303 スイッチ
27 間欠発振動作制御回路
271 ローパスフィルタ回路
272 タイマー回路
275 1ショット回路
276,277,2713 スイッチ
2711 フィルタ抵抗
2712 フィルタ容量
2715 オア回路
30 発振休止期間制限回路
301 インバータ
304 コンデンサ
305 コンパレータ
306 ラッチ回路
307 アップダウンカウンタ回路
308 DAコンバータ回路
Iripple,Iclamp 電流源
Ibias1,Ibias2 定電流源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12