(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341464
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】電話装置及びその着信通知方法
(51)【国際特許分類】
H04Q 3/58 20060101AFI20180604BHJP
H04M 1/725 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
H04Q3/58 107
H04M1/725
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-135801(P2014-135801)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-15568(P2016-15568A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
(72)【発明者】
【氏名】石井 久雄
(72)【発明者】
【氏名】永島 哲也
【審査官】
吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−079904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24−7/26
H04M1/00
1/24−3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
99/00
H04Q3/58−3/62
H04W4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主装置と前記主装置に回線接続される電話端末とを含み、
前記電話端末は前記主装置に有線接続される親機と前記親機と無線接続される子機とを備え、
前記親機は、
スピーカ受話中に前記子機のオフフックを検出すると、送信メモリ内にある前記子機への送信待ちコマンドデータをクリアし、
通話パス情報を疑似生成して前記疑似生成した前記通話パス情報を前記子機に送信することで前記コマンドデータの送信に先行して通話パスを接続することを特徴とする電話装置。
【請求項2】
前記親機は、通話が形成された後に、前記親機の保持する前記子機に送信されるべき全コマンドデータを前記送信メモリ内に呼び出し、前記全コマンドデータを前記子機へ送信することで前記親機と前記子機の状態を共有状態とすることを特徴とする請求項1に記載の電話装置。
【請求項3】
主装置と、前記主装置に有線接続される親機と前記親機に無線接続される子機とを備える電話端末と、を含む電話装置の着信通知方法であって、
前記親機が、
スピーカ受話中に前記子機のオフフックを検出するステップと、
送信メモリ内にある前記子機への送信待ちコマンドデータをクリアするステップと、
通話パス情報を疑似生成するステップと、
前記疑似生成した前記通話パス情報を前記子機に送信することで前記コマンドデータの送信に先行して通話パスを接続するステップと、を実行することを特徴とする着信通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話装置及びその着信通知方法、特に、ビジネスホンに搭載して好適な電話装置及びその着信通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ビジネスホンは、着信が発生すると鳴動音とLKキー(回線キー)の発光によりユーザに着信を知らせる。ユーザは、そのままの状態でオフフックするか、LKキーを押下した後オフフックすることにより、その着信に応答することができる。
【0003】
一方、家庭用の一般電話機の場合、着信が発生した際に電話機自身が着信を判断してLKキーを表示して鳴動させるが、ビジネスホンの場合は、主装置からの制御信号に基づいて電話機が動作する。このことは、例えば、特許文献1に詳細に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された技術によれば、子機が主装置にオフフック情報を通知することにより、主装置が、そのオフフック情報を元にどのような動作をするのかについて指示している。着信応答の指示情報として、例えば、LCD(liquid crystal display)の表示変更、あるいは通話開始指示等、がある。
【0005】
ところで、本発明者らは、ビジネスホンの親機と子機との間の無線通信を、2.4[GHz]帯の周波数を用いるBluetooth(登録商標)から1.9GHz帯の周波数を用いるDECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)プロトコルへの移行を検討している。その理由は、Bluetooth(登録商標)の場合、例えば、無線LAN等の通信機器や電子レンジ等の家庭用機器にも多く使用されており、今後も増えることが予想されるため電波干渉が発生する恐れがあるためである。その場合、音声にノイズが重畳され、クリアな音声で通話することができない。
【0006】
しかしながら、DECTプロトコルは、比較的伝送速度が遅い無線方式であるため、DECTプロトコルをビジネスホンに適用すると、親機と子機との間の無線区間の通信速度が遅くなる。
【0007】
そして、例えば、着信に対し親機のLKキーが点灯した状態でLKキーを押下し、即座に子機をオフフックした場合、主装置側から一気に大量のコマンド(LCD制御、ランプ制御、通話パス制御、LED情報、リンガ情報等)が送出され、その大量のコマンドが親機を介して子機へと送られる。この親機から子機へのコマンドデータの送信は、コマンドデータを順番に無線送信されるが、無線通信の速度が遅いと、これらのコマンドデータの受信が完了するまでに時間がかかり、この結果、子機での通話開始が遅くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−244734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みられたものであり、着信が発生してから通話が開始されるまでの時間を短縮した電話装置及びその着信通知方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の電話装置及びその着信通知方法は、以下のような解決手段を提供する。
【0011】
(1)本発明の電話装置は、主装置と前記主装置に回線接続される電話端末とを含み、前記電話端末は前記主装置に有線接続される親機と前記親機と無線接続される子機とを備え、前記親機は、スピーカ受話中に前記子機のオフフックを検出すると、送信メモリ内にある前記子機への送信待ちコマンドデータをクリアし、通話パス情報を疑似生成して前記疑似生成した前記通話パス情報を前記子機に送信することで前記コマンドデータの送信に先行して通話パスを接続することを特徴とする。
【0012】
(2)本発明の電話装置は、(1)に記載の電話装置であって、前記親機は、通話が形成された後に、前記親機の保持する前記子機に送信されるべき全コマンドデータを前記送信メモリ内に呼び出し、前記全コマンドデータを前記子機へ送信することで前記親機と前記子機の状態を共有状態としてもよい。
【0013】
(3)本発明の別の態様に係る電話装置の着信通知方法は、主装置と、前記主装置に有線接続される親機と前記親機に無線接続される子機とを備える電話端末と、を含む電話装置の着信通知方法であって、前記親機が、スピーカ受話中に前記子機のオフフックを検出するステップと、送信メモリ内にある前記子機への送信待ちコマンドデータをクリアするステップと、通話パス情報を疑似生成するステップと、前記疑似生成した前記通話パス情報を前記子機に送信することで前記コマンドデータの送信に先行して通話パスを接続するステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、着信が発生してから通話が開始されるまでの時間を短縮した電話装置及びその着信通知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る電話装置が接続される電話システムの接続構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電話装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る電話装置の着信通知処理動作を示すシーケンス図である。
【
図4】従来の着信通知処理動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0017】
(実施形態の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る電話装置が接続される電話システムの構成図である。
図1に示すように、電話システム1は、主装置10と主装置10に回線接続される電話端末20(電話装置)と、ゲートウェイ50とにより構成される。また、電話端末20は、主装置10に有線接続される親機30(30a〜30n)と、親機30と無線接続される子機40(40a〜40n)とを備えている。複数の親機30のそれぞれは、LAN80に接続され、このLAN80を通じて主装置10に接続されている。
【0018】
ゲートウェイ50は、複数回線を介して、インターネット網60や公衆電話網70に接続されると共に、主装置10に接続されている。公衆電話網70は、例えば、ISDN(Integrated Services Digital Network)回線、専用回線などを含む。
【0019】
ゲートウェイ50は、電話端末20からの発信番号に応じて、インターネット網60、あるいは公衆電話網70に、電話システム1を接続するための機能を備える中継管理装置の役割を果たすものであり、連続音声信号とIP音声パケットの相互変換、IP音声パケットの主装置10とのやり取り、さらには、電話番号とIPアドレスとの相互変換を行う。
【0020】
主装置10は、電話システム1内におけるゲートウェイ50や複数の電話端末20の交換管理、帯域幅の割り当て、電話番号とIPアドレスの対応付けなどを行い、これに登録された複数個の電話端末20による複数の電話回線を利用した電話通信を管理する機能を有する交換管理装置の役割を果たす。
【0021】
上記した電話端末20のそれぞれは、外線電話や内線電話をかけたり受けたりすることができる、例えば、ビジネスホンである。そして、電話端末20のそれぞれは、自機に着信があったときには、鳴動することで、ユーザに着信を通知する。
【0022】
ところで、ビジネスホンの場合、着信時に子機40を取り上げた場合(オフフック)、子機40自身で通話を開始するのではなく、主装置10に対してオフフック情報を通知し、主装置10がそのオフフック情報を元に、どのような動作をするのかを指示している。例えば、LCDの表示変更や通話開始の指示である。
【0023】
このため、無線区間のデータ伝送が遅いと、通話開始の指示が子機40に届くのが遅くなり、結果として通話開始の時間が遅くなる。特に、着信中に親機30のLKキーを押下してから素早くオフフックを行うと、主装置10から大量のコマンドデータ(LED(Light Emitting Diode)情報、リンガ情報、LCD情報、通話パス情報等)を受信するため、結果的に通話パスの形成が遅くなってしまう。
【0024】
例えば、
図4に示すように、従来の電話システムによれば、主装置10は、外部から着信を検出すると(ステップS201)、親機30にコマンドデータ(LED情報(ランプ点灯)、リンガ情報(着信音を鳴らす)、LCD情報)を送信し(ステップS202)、そのコマンドデータを親機30から子機40へ送信する(ステップS202’)。そして、親機30及び子機40は、受信した情報を基にリンガ(鳴動)等によりユーザに着信を知らせる。
【0025】
ユーザは、着信に伴い、親機30に搭載されているLKキーを押下する(ステップS203)。主装置10は、LKキーの押下を検出すると、親機30に対して、通話時の状態にするため、コマンドデータ(LED情報(ランプ消灯)、リンガ情報(着信音の停止)、LCD情報、通話パス情報)を送信(ステップS204)し、スピーカ受話が可能となる。この時、親機30は、受信したコマンドデータを子機40に送信する(ステップS204’)。
【0026】
一方、子機40側でオフフックを行う(ステップS205)と、主装置10は、子機40によるオフフックを検出する(ステップS205、S206)と、子機40を通話状態にするためのコマンドデータ(LED情報(ランプ消灯)、リンガ情報(着信音の停止)、LCD情報、通話パス情報)を親機30に送信(ステップS207)し、そのコマンドデータを親機30から子機40に送信させる(ステップS207’)。その後に通話パスが張られ、通話パスの接続要求/接続応答(ステップS208、S209)により、通話状態が確立(ステップS210)し、子機での通話が可能となる。
【0027】
コマンドデータは、着信時、LKキー押下時、オフフック時と、都度、主装置10から、親機30、子機40へと送信される。子機40への送られるコマンドデータは、親機30の送信メモリに蓄積され、順次、子機40へと無線送信されるが、無線通信の速度がDECT方式のように遅い場合、コマンドデータの送信が完了するまでに時間がかかり、通話開始の指示が子機40に届くのが遅くなり、その結果、通話開始が遅れる。
【0028】
上記のように、大量のコマンドデータが子機40に送られるような場合でも、早く通話を可能にする本実施形態に係る電話端末20について以下、説明する。
図2は、本実施形態に係る電話システムの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係る電話端末20は、主装置10に接続される親機30と、親機30に無線接続される子機40とを備える。
【0029】
主装置10は、外線とのインタフェースである外線インタフェース部11と、親機30や子機40とのインタフェースである内線インタフェース部12と、通話の際の音声の伝送路やデータ通信の際のデータの伝送路を切替えるスイッチ部13と、以上の各機能部を制御する制御部14と、データの記憶を行う記憶部15と、を含み構成される。
【0030】
制御部14は、スイッチ部13を制御して、外線インタフェース部11と内線インタフェース部12との間の通話パスを接続する他、着信があった場合に、制御用のコマンドデータを生成して、親機30や子機40に対して送信する。(
図3(ステップS102参照))。また、着信後の親機30からのLKキーの押下を検出した場合に、制御用のコマンドデータを生成して、親機30や子機40に対して送信する。(
図3(ステップS104参照))。さらに、子機40からのオフフックを検出した場合に、制御用のコマンドデータを生成して、親機30や子機40に対して送信する。(
図3(ステップS110参照))。なお、記憶部15には、送受信データの他に、上記コマンドデータが割り当てられ、記憶される。
【0031】
親機30は、主装置インタフェース部31と、制御部32と、記憶部33と、DECT送受信部34と、を含み構成される。
【0032】
主装置インタフェース部31は、主装置10と親機30(制御部32)との間の通信インタフェースを担う。具体的には、主装置10との間で送受信される信号を、制御信号(コマンド)、音声信号、同期信号に分離し、あるいは組み立てて、主装置10へ、あるいは制御部32へ転送する。
【0033】
制御部32は、主装置10のコマンドデータに従って親機30自身の制御(LED、リンガ、LCD、通話パス等の制御)を実行する。さらに子機40に対して主装置10から送られてきたコマンドデータを伝達する。
【0034】
なお、記憶部33には、制御部32が実行するプログラムが格納されるプログラム領域の他、送信メモリ100が備えられており、子機40へ送信するコマンドデータが記憶される。
【0035】
DECT送受信部34は、DECT送受信部41との間での送受信を行うDECT方式に準拠した通信部である。この通信を行うために、DECT送受信部34は、無線通信を行うためのRF回路部342やTDMA方式に従った送受信信号のための変復調を行うためのTDMA変換部341等を備えている。
【0036】
子機40は、親機30と同様にDECT送受信部41、符号化/復号化部42及び制御部43を備えている。DECT送受信部41は、無線通信を行うためのRF回路部442やTDMA方式に従った送受信信号のための変復調を行うためのTDMA変換部441等を備えている。
【0037】
また、制御部43は、親機30から送られてきたコマンドデータに従って、子機40自身の制御(LED、リンガ、LCD、通話パス等の制御)を実行する。また、制御部43は、子機40がオフフック状態になった時に、そのオフフック状態を親機30を介して主装置10に知らせるためのデータの送信なども行う。
【0038】
図3は、本発明の着信通知処理動作を示すシーケンス図である。
図3に示すように、主装置10の制御部14は、外部から着信を検出すると(ステップS101)、親機30にコマンドデータ(LED情報(ランプ点灯)、リンガ情報(着信音を鳴らす)、LCD情報)を送信し(ステップS102)、そのコマンドデータを親機30から子機40へ送信する(ステップS102’)。そして、親機30及び子機40は、受信した情報を基にリンガ(鳴動)等によりユーザに着信を知らせる。
【0039】
ユーザは、着信に伴い、親機30に搭載されているLKキーを押下する(ステップS103)。主装置10の制御部14は、LKキーの押下を検出すると、親機30に対して、通話時の状態にするため、コマンドデータ(LED情報(ランプ消灯)、リンガ情報(着信音の停止)、LCD情報、通話パス情報)を送信(ステップS104)し、スピーカ受話が可能となる。この時、親機30の制御部32は、受信したコマンドデータをDECT送受信部34を介して、子機40に送信する(ステップS104’)。
【0040】
一方、子機40側でオフフックを行う(ステップS105)と、親機30と主装置10は、子機40によるオフフックを検出する(ステップS105、S106)。親機30の制御部32は、子機40からオフフックを検出すると、記憶部33の送信メモリ100内にある子機40への送信待ちコマンドデータをクリアする(ステップS107)。次に、主装置10から送信される通話パス情報を疑似生成し(ステップS108)、子機40へ疑似生成した通話パス情報を送信する(ステップS109)。その後に通話パスが張られ、通話パスの接続要求/接続応答(ステップS111、S112)により、通話状態が確立(ステップS113)する。
【0041】
一方、主装置10は、上記オフフックを検出(ステップS106)すると、それに対応したコマンドデータを送信(ステップS110)し、このコマンドデータは、親機30の記憶部33に保持される。この記憶部33に保持されているオフフックの検出に対応したコマンドデータは、通話状態確立後に、親機30の送信メモリ100に呼び出されて、全コマンドデータが子機40に送信される(ステップS114)。
【0042】
以上説明した実施形態の効果について述べる。従来方式では上位からのコマンド順に処理するため伝送速度が遅いと通話の開始も遅れてしまう。本実施形態ではオフフックの検出で主装置10からの指示より先に親機30で通話パスコマンドを疑似生成し、先行接続を行うため、通話開始が格段に早くなる。また、通話形成が最優先で行われるため、着信に対して応答が遅れない。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0044】
1 :電話システム
10 :主装置
11 :外線インタフェース部
12 :内線インタフェース部
13 :スイッチ部
14 :制御部
15 :記憶部
20 :電話端末
30 :親機
31 :主装置インタフェース部
32 :制御部
33 :記憶部
34 :DECT送受信部
40 :子機
41 :DECT送受信部
42 :符号化/復号化部
43 :制御部
50 :ゲートウェイ
60 :インターネット網
70 :公衆電話網
80 :LAN
100:送信メモリ
341:TDMA変換部
342:RF回路部
441:TDMA変換部
442:RF回路部