【実施例】
【0034】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の給水加温システム1を示す概略図である。
【0035】
本実施例の給水加温システム1は、ボイラ2の給水タンク3への給水をヒートポンプ4,5で加温できるシステムであり、ボイラ2への給水を貯留する給水タンク3と、この給水タンク3への給水を貯留する補給水タンク6と、この補給水タンク6から給水タンク3への給水を加温するヒートポンプ4,5と、このヒートポンプ4,5の熱源としての熱源水(たとえば廃温水)を貯留する熱源水タンク7とを備える。
【0036】
ボイラ2は、蒸気ボイラであり、給水タンク3からの給水を加熱して蒸気にする。ボイラ2は、典型的には、蒸気の圧力を所望に維持するように、燃焼量を調整される。また、ボイラ2は、缶体内の水位を所望に維持するように、給水タンク3からボイラ2への給水路またはボイラ2の内部に設けたポンプ8が制御される。ボイラ2からの蒸気は、各種の蒸気使用設備(図示省略)へ送られるが、蒸気使用設備からのドレン(蒸気の凝縮水)を給水タンク3へ戻してもよい。
【0037】
給水タンク3は、補給水タンク6から、ヒートポンプ4,5を介して給水路9により給水可能であると共に、ヒートポンプ4,5を介さずに補給水路10により給水可能である。給水路9に設けた給水ポンプ11と、補給水路10に設けた補給水ポンプ12との作動を制御することで、給水路9と補給水路10との内、いずれか一方または双方を介して、補給水タンク6から給水タンク3へ給水可能である。
【0038】
給水ポンプ11は、本実施例では、インバータにより回転数を制御可能とされる。給水ポンプ11の回転数を変更することで、給水路9を介した給水タンク3への給水流量を調整することができる。一方、補給水ポンプ12は、本実施例では、オンオフ制御される。
【0039】
補給水タンク6は、給水タンク3への給水を貯留する。補給水タンク6への給水として、本実施例では軟水が用いられる。すなわち、軟水器(図示省略)にて水中の硬度分を除去された軟水は、補給水タンク6に供給され貯留される。補給水タンク6の水位に基づき軟水器からの給水を制御することで、補給水タンク6の水位は所望に維持される。
【0040】
ヒートポンプは、並列に複数設置され、少なくとも低温側ヒートポンプ4と高温側ヒートポンプ5とを備える。各ヒートポンプ4,5は、蒸気圧縮式のヒートポンプである。各ヒートポンプ4,5の冷媒や出力は、同じでもよいし、異なってもよい。たとえば、各ヒートポンプ4,5は、同一冷媒であるが、高温側ヒートポンプ5の圧縮機の出力や質量流量は、低温側ヒートポンプ4より大きく構成される。
【0041】
低温側ヒートポンプ4は、低温側圧縮機13、低温側凝縮器14、低温側過冷却器15、低温側膨張弁16および低温側蒸発器17が順次環状に接続されて、冷媒を循環させる。低温側ヒートポンプ4は、低温側蒸発器17において、冷媒が外部から熱を奪って気化する一方、低温側凝縮器14および低温側過冷却器15において、冷媒が外部へ放熱して凝縮、過冷却する。これを利用して、低温側ヒートポンプ4は、低温側蒸発器17において熱源水から熱を汲み上げ、低温側過冷却器15および低温側凝縮器14において給水路9の水を加温する。
【0042】
低温側ヒートポンプ4の各構成要素を順に説明する。低温側圧縮機13は、ガス冷媒を圧縮して高温高圧にする。低温側凝縮器14は、低温側ヒートポンプ4の冷媒と給水路9の水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器であり、低温側圧縮機13からのガス冷媒を凝縮する一方、給水路9の水を加温する。低温側過冷却器15は、低温側ヒートポンプ4の冷媒と給水路9の水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器であり、低温側凝縮器14からの冷媒を過冷却する一方、給水路9の水を加温する。低温側膨張弁16は、低温側過冷却器15からの液冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させる。低温側蒸発器17は、低温側ヒートポンプ4の冷媒と熱源水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器であり、低温側膨張弁16からの冷媒を蒸発させる一方、熱源水を冷却する。
【0043】
高温側ヒートポンプ5は、高温側圧縮機18、高温側凝縮器19、高温側過冷却器20、高温側膨張弁21および高温側蒸発器22が順次環状に接続されて、冷媒を循環させる。高温側ヒートポンプ5は、高温側蒸発器22において、冷媒が外部から熱を奪って気化する一方、高温側凝縮器19および高温側過冷却器20において、冷媒が外部へ放熱して凝縮、過冷却する。これを利用して、高温側ヒートポンプ5は、高温側蒸発器22において熱源水から熱を汲み上げ、高温側過冷却器20および高温側凝縮器19において給水路9の水を加温する。
【0044】
高温側ヒートポンプ5の各構成要素を順に説明する。高温側圧縮機18は、ガス冷媒を圧縮して高温高圧にする。高温側凝縮器19は、高温側ヒートポンプ5の冷媒と給水路9の水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器であり、高温側圧縮機18からのガス冷媒を凝縮する一方、給水路9の水を加温する。高温側過冷却器20は、高温側ヒートポンプ5の冷媒と給水路9の水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器であり、高温側凝縮器19からの冷媒を過冷却する一方、給水路9の水を加温する。高温側膨張弁21は、高温側過冷却器20からの液冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させる。高温側蒸発器22は、高温側ヒートポンプ5の冷媒と熱源水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器であり、高温側膨張弁21からの冷媒を蒸発させる一方、熱源水を冷却する。
【0045】
なお、各ヒートポンプ4,5には、圧縮機13,18の入口側にアキュムレータを設置したり、圧縮機13,18の出口側に油分離器を設置したり、凝縮器14,19の出口側(凝縮器14,19と過冷却器15,20との間)に受液器を設置したりしてもよい。また、各ヒートポンプ4,5の圧縮機13,18は、本実施例では、オンオフ制御され、作動中には、回転数が一定に維持されるが、場合により、所定箇所の温度もしくは圧力または水位などに基づき、インバータにより回転数を変更させてもよい。
【0046】
熱源水タンク7は、各ヒートポンプ4,5の熱源としての熱源水を貯留する。熱源水とは、たとえば廃温水(工場などから排出される温水)である。本実施例の給水加温システム1の場合、熱源水温度が比較的低くても(たとえば30〜40℃程度であっても)、後述するように所望温度の温水を製造することができる。なお、熱源水タンク7には、熱源水の供給路23が設けられると共に、所定以上の水をあふれさせるオーバーフロー路24が設けられている。
【0047】
給水加温システム1は、さらに、給水加温用熱交換器25を備える。この給水加温用熱交換器25は、給水路9を介した給水タンク3への給水と、熱源水タンク7からの熱源水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器である。
【0048】
給水路9を介した給水タンク3への給水は、給水加温用熱交換器25、低温側過冷却器15、低温側凝縮器14、高温側過冷却器20および高温側凝縮器19に、順に通される。一方、熱源水タンク7からの熱源水は、低温側蒸発器17、高温側蒸発器22および給水加温用熱交換器25に、設定順序で直列に通されるか、一部または全部の熱交換器には並列に通される。好ましくは、熱源水タンク7からの熱源水は、各蒸発器17,22に設定順序で直列に通されるか並列に通され、これら各蒸発器17,22への熱源水の供給とは並列に、給水加温用熱交換器25に熱源水が通される。
【0049】
本実施例では、熱源水タンク7からの熱源水は、熱源供給ポンプ26を介した後、第一熱源供給路27と第二熱源供給路28とに分岐され、第一熱源供給路27の熱源水は、高温側蒸発器22および低温側蒸発器17を順に通される一方、第二熱源供給路28の熱源水は、給水加温用熱交換器25に通される。つまり、本実施例では、高温側蒸発器22と低温側蒸発器17とに熱源水が順に通されると共に、これと並行に、給水加温用熱交換器25に熱源水が通される。
【0050】
第二熱源供給路28には、開度調整可能な流量調整弁29が設けられる。この流量調整弁29の開度を調整することで、給水加温用熱交換器25への熱源水の供給流量(通水流量)を調整することができる。
【0051】
給水路9には、高温側凝縮器19の出口側に、出湯温度センサ30が設けられる。出湯温度センサ30は、高温側凝縮器19を通過後の水温を検出する。出湯温度センサ30の検出温度に基づき、給水ポンプ11が制御される。ここでは、給水ポンプ11は、出湯温度センサ30の検出温度を設定温度(たとえば75℃)に維持するようにインバータ制御される。つまり、給水路9を介した給水タンク3への給水は、出湯温度センサ30の検出温度を設定温度に維持するように、流量が調整される。但し、場合により、このような出湯温度センサ30による流量調整制御を省略することもできる。
【0052】
給水タンク3には、水位検出器31が設けられる。この水位検出器31は、その構成を特に問わないが、本実施例では、電極式水位検出器とされる。この場合、給水タンク3には、長さの異なる複数の電極棒32,33が、その下端部の高さ位置を互いに異ならせて差し込まれて保持されている。具体的には、給水停止電極棒32および給水開始電極棒33が、順に下端部の高さ位置を低くして、給水タンク3に挿入されている。さらに、破線で示すように、低温側停止電極棒34を設けてもよく、その場合、給水停止電極棒32、低温側停止電極棒34および給水開始電極棒33の順に、下端部の高さ位置を低くして、給水タンク3に挿入される。いずれにしても、各電極棒32〜34は、その下端部が水に浸かるか否かにより、下端部における水位の有無を検出する。なお、給水停止電極棒32による検出水位を給水停止水位(上限水位)、給水開始電極棒33による検出水位を給水開始水位(下限水位)、低温側停止電極棒34による検出水位を低温側停止水位ということにする。
【0053】
給水加温用熱交換器25への熱源供給路(第一熱源供給路27と第二熱源供給路28との分岐部よりも上流の共通路であるのが好ましいが、場合により前記分岐部よりも下流の第二熱源供給路28であってもよい)には、給水加温用熱交換器25への熱源水温度を検出する熱源温度センサ35が設けられる。一方、給水路9の内、給水加温用熱交換器25の出口側には、給水加温用熱交換器25の出口側水温を検出する水温センサ36が設けられる。
【0054】
各ヒートポンプ4,5(特にその圧縮機13,18)、給水ポンプ11、補給水ポンプ12、熱源供給ポンプ26、流量調整弁29、出湯温度センサ30、水位検出器31、熱源温度センサ35および水温センサ36などは、制御器(図示省略)に接続される。そして、制御器は、各センサ30,31,35,36の検出信号などに基づき、各ヒートポンプ4,5、各ポンプ11,12,26および流量調整弁29などを制御して、以下に述べる各制御を実行する。
【0055】
給水路9を介した給水タンク3への給水は、給水タンク3の水位に基づき制御される。具体的には、本実施例では、次のように制御される。いま、給水停止電極棒32が水位を検知し、給水タンク3の水位が十分にある場合(つまり給水停止水位を上回っている場合)、給水タンク3への給水は不要であるから、給水ポンプ11を停止している。給水タンク3からボイラ2への給水により、給水タンク3の水位が下がり、給水開始電極棒33が水位を検知しなくなると(つまり給水開始水位を下回った場合)、給水ポンプ11を作動させる。これにより、給水路9を介して給水タンク3に給水されるが、給水停止電極棒32が水位を検知すると、給水ポンプ11を停止する。
【0056】
給水タンク3には、給水路9を介して給水可能であると共に補給水路10を介しても給水可能であるが、給水路9を介した給水が優先されるように制御されるのが好ましい。たとえば、給水タンク3の水位を設定範囲に維持するように、上述したとおり給水路9を介した給水を制御するが、それでは給水タンク3の水位が設定範囲を維持できない場合には、補給水路10を介しても給水タンク3へ給水するのが好ましい。その場合、給水タンク3の水位検出器31は、補給水ポンプ12を発停するための水位(補給水開始水位と補給水停止水位)も検出可能に構成しておけばよい。
【0057】
給水路9を介した給水タンク3への給水中(つまり給水ポンプ11の作動中)、熱源供給ポンプ26を作動させると共に、ヒートポンプ4,5(後述するように少なくとも高温側ヒートポンプ5)を作動させる。つまり、熱源供給ポンプ26およびヒートポンプ4,5は、給水ポンプ11と連動するよう発停される。但し、ヒートポンプ4,5の起動時、まずは給水ポンプ11および熱源供給ポンプ26を作動させて、ヒートポンプ4,5への給水および熱源水の供給を確認した後、ヒートポンプ4,5を起動するのが好ましい。なお、ヒートポンプ4,5は、その圧縮機13,18の作動の有無により、運転と停止が切り替えられる。
【0058】
給水路9を介した給水タンク3への給水中、給水ポンプ11は、出湯温度センサ30の検出温度を設定温度に維持するように、回転数をインバータ制御されるのがよい。以下、この制御を、出湯温度一定制御という。
【0059】
ヒートポンプ4,5の起動時、まずは高温側ヒートポンプ5を起動し、その後、設定タイミングで低温側ヒートポンプ4を起動するのがよい。たとえば、まずは高温側ヒートポンプ5を起動し、その起動から設定時間(高温側ヒートポンプ5の運転が安定するまでの時間であり、たとえば5分)後、低温側ヒートポンプ4を起動するのがよい。その理由は、次のとおりである。
【0060】
すなわち、仮に、低温側ヒートポンプ4を先に起動し、遅れて高温側ヒートポンプ5を起動する場合、低温側ヒートポンプ4のみ運転中でも、前述した出湯温度一定制御により、出湯温度センサ30の検出温度を設定温度に維持するように給水量が調整されるので、その状態で、給水路9の下流側の高温側ヒートポンプ5をさらに起動すると、出湯温度センサ30の検出温度が設定温度を超えるおそれがある。また、比較的高温の水が高温側ヒートポンプ5に通されるので、高温側ヒートポンプ5の起動時、高温側凝縮器19や高温側過冷却器20において冷媒を所望に凝縮できず、高温側ヒートポンプ5の冷媒の圧力や温度が高まり過ぎて、高温側ヒートポンプ5をインターロック停止させるおそれもある。これに対し、高温側ヒートポンプ5を先に起動しておけば、そのような不都合を防止することができる。
【0061】
ヒートポンプ4,5を運転して、補給水タンク6から給水路9を介して給水タンク3へ給水する際、補給水タンク6からの給水は、給水加温用熱交換器25、低温側過冷却器15、低温側凝縮器14、高温側過冷却器20および高温側凝縮器19に順に通され加温される。一方、熱源水タンク7からの熱源水は、本実施例では、高温側蒸発器22と低温側蒸発器17とに順に通されると共に、これと並行に給水加温用熱交換器25に通される。各蒸発器22,17と給水加温用熱交換器25とに熱源水を直列に順に通す場合と比較して、各蒸発器22,17と給水加温用熱交換器25とに熱源水を並列に通す場合、比較的高温の熱源水を給水加温用熱交換器25に通すことができる。これにより、給水加温用熱交換器25における熱交換量を高めることができ、ヒートポンプ4,5の手前における給水の加温が図られるので、各圧縮機13,18の動力を小さくして、ヒートポンプ4,5の効率を向上することができる。さらに、各蒸発器22,17と給水加温用熱交換器25とに順に熱源水を通した場合、各蒸発器22,17が圧損要素となるが、各蒸発器22,17と給水加温用熱交換器25とに熱源水を並列に通す場合、そのような圧損要素がないというメリットもある。
【0062】
また、本実施例の給水加温システム1によれば、第一熱源供給路27を介した熱源水は、高温側ヒートポンプ5に通された後、低温側ヒートポンプ4に通される一方、給水路9を介した給水は、低温側ヒートポンプ4に通された後、高温側ヒートポンプ5に通される。このようにして、比較的高温の給水を加温するヒートポンプほど、比較的高温の熱源水を用いるので、各ヒートポンプ4,5における汲み上げ温度差を小さくして、ヒートポンプ4,5の効率を向上することができる。
【0063】
両ヒートポンプ4,5を運転して、給水路9を介した給水タンク3への給水中、設定条件を満たすと、高温側圧縮機18の運転を維持しつつ、低温側圧縮機13の運転を停止してもよい。つまり、高温側ヒートポンプ5のみを運転しつつ、給水路9を介した給水タンク3への給水を図ってもよい。
【0064】
たとえば、高温側蒸発器22への熱源水温度が低温側停止温度を超えると、前記設定条件を満たしたとして、低温側圧縮機13を停止させればよい。具体的には、熱源温度センサ35の検出温度が低温側停止温度を超えると、低温側圧縮機13を停止させればよい。その後、給水ポンプ11の作動が継続中であることを前提に、熱源温度センサ35の検出温度が低温側起動温度以下になれば、低温側圧縮機13を起動すればよい。このようにして、熱源水が比較的高温の場合には、高温側ヒートポンプ5のみで給水を所望に加温できるから、低温側ヒートポンプ4を停止させて、消費電力の削減を図ることができる。
【0065】
また、給水ポンプ11の回転数をインバータで制御しつつ、出湯温度一定制御を実施する場合において、給水ポンプ11の回転数が低温側停止値を超える(たとえば、インバータ制御による給水ポンプ11のモータの駆動周波数が予め設定された最大周波数を超える)と、前記設定条件を満たしたとして、低温側圧縮機13を停止すればよい。その後、給水ポンプ11の作動が継続中であることを前提に、給水ポンプ11の回転数が低温側起動値以下になれば、低温側圧縮機13を起動すればよい。
【0066】
出湯温度一定制御により、給水ポンプ11の回転数(周波数)を調整中、通水量(給水ポンプ11の回転数)が高くなり過ぎ、出湯温度センサ30の検出温度を設定温度に維持できないおそれがある場合には、低温側ヒートポンプ4を停止させることで、そのような不都合を防止できる。また、高温側ヒートポンプ5の冷媒圧が高くなり過ぎるのを防止できる。
【0067】
さらに、給水タンク3の水位検出器31において、前述したとおり、給水停止電極棒32および給水開始電極棒33の他に、低温側停止電極棒34を設けておくなどして、給水停止水位と給水開始水位との間(典型的には中央)で、低温側停止水位を検知可能としておき、給水タンク3の水位が低温側停止水位を上回ると、前記設定条件を満たしたとして、低温側圧縮機13を停止するようにしてもよい。この場合、給水開始電極棒33が水位を検知せず(つまり給水開始水位を下回っており)、両ヒートポンプ4,5が作動中だとして、水位上昇時、低温側停止電極棒34が水位を検知する(つまり低温側停止水位を上回る)と、まずは低温側ヒートポンプ4を停止し、さらに給水停止電極棒32が水位を検知する(つまり給水停止水位を上回る)と、高温側ヒートポンプ5も停止する。その状態から逆に、水位下降時、低温側停止電極棒34が水位を検知しなくなる(つまり低温側停止水位を下回る)と、まずは高温側ヒートポンプ5を起動し、さらに給水開始電極棒33が水位を検知しなくなる(つまり給水開始水位を下回る)と、低温側ヒートポンプ4も起動する。
【0068】
ところで、給水加温用熱交換器25への熱源水温度と、給水加温用熱交換器25の出口側水温との温度差を設定値に維持するように、給水加温用熱交換器25への熱源水の供給流量を制御するのがよい。具体的には、給水ポンプ11の作動中、水温センサ36の検出温度T1と、熱源温度センサ35の検出温度T2とを比較し、T2−T1が一定温度(たとえば1℃)になるように、流量調整弁29の開度を調整すればよい。これにより、給水加温用熱交換器25への熱源水の供給流量を最小限にできる。また、給水加温用熱交換器25への熱源水温度が、給水加温用熱交換器25の入口側水温よりも低い場合には、給水加温用熱交換器25への熱源水の供給が制限されるので、給水加温用熱交換器25に熱源水を通すと却って給水を冷却してしまう不都合が防止される。
【0069】
次に、本実施例の給水加温システム1の変形例について説明する。
図2は、
図1の給水加温システム1の変形例を示す概略図である。この給水加温システム1は、低温側ヒートポンプ4に低温側液ガス熱交換器37を設ける一方、高温側ヒートポンプ5に高温側液ガス熱交換器38を設けた点が、前記実施例と異なる。
【0070】
低温側液ガス熱交換器37は、低温側凝縮器14から低温側過冷却器15への冷媒と、低温側蒸発器17から低温側圧縮機13への冷媒とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器である。一方、高温側液ガス熱交換器38は、高温側凝縮器19から高温側過冷却器20への冷媒と、高温側蒸発器22から高温側圧縮機18への冷媒とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器である。
【0071】
仮に、各ヒートポンプ4(5)において、過冷却器15(20)から膨張弁16(21)への冷媒と、蒸発器17(22)から圧縮機13(18)への冷媒とを熱交換するよう液ガス熱交換器を設置すると、過冷却器15(20)で過冷却した後の液冷媒で、圧縮機13(18)への冷媒を加熱することになり、過熱度を確保するのが難しい。これに対し、
図2のように、各ヒートポンプ4(5)において、凝縮器14(19)から過冷却器15(20)への冷媒と、蒸発器17(22)から圧縮機13(18)への冷媒とを熱交換するよう液ガス熱交換器37(38)を設置すると、過冷却器15(20)で過冷却する前の比較的高温の冷媒(凝縮器14(19)からの冷媒であり気液二相冷媒でもよい)により、蒸発器17(22)からのガス冷媒の過熱を確保して、ヒートポンプ4(5)の効率を向上することができる。その他の構成および制御は、前記実施例と同様のため、説明を省略する。
【0072】
本発明の給水加温システム1は、前記実施例(変形例を含む)の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、複数のヒートポンプ4,5と給水加温用熱交換器25とを備え、熱源水が、各ヒートポンプ4,5の蒸発器17,22に設定順序で直列に通されるか、一部または全部の蒸発器17,22には並列に通され、これら各蒸発器17,22への熱源水の供給とは並列に、給水加温用熱交換器25に熱源水が通される一方、給水路9を介した給水タンク3への給水が、給水加温用熱交換器25に通された後、各ヒートポンプ4,5の凝縮器14,19に順に通されるのであれば、その他の構成(制御を含む)は適宜に変更可能である。たとえば、前記実施例において、各ヒートポンプ4,5の過冷却器15,20は、場合により設置を省略してもよい。
【0073】
また、前記実施例において、低温側ヒートポンプ4と高温側ヒートポンプ5との間に、第三のヒートポンプを設けてもよい。その場合、その第三のヒートポンプは、蒸発器に、たとえば、高温側ヒートポンプ5から低温側ヒートポンプ4への熱源水が通され、過冷却器および凝縮器に、たとえば、低温側ヒートポンプ4から高温側ヒートポンプ5への給水が通される。同様にして、並列に設置するヒートポンプの数は、適宜に変更可能である。
【0074】
また、前記実施例では、給水加温用熱交換器25への第二熱源供給路28に流量調整弁29を設けたが、給水加温用熱交換器25への熱源水の供給流量(あるいは後述するように第一熱源供給路27と第二熱源供給路28とへの熱源水の供給流量つまり分配割合)を調整可能であれば、その具体的構成は適宜に変更可能である。
【0075】
たとえば、前記実施例では、第一熱源供給路27との分岐後の第二熱源供給路28に流量調整弁29を設け、この流量調整弁29を熱源温度センサ35と水温センサ36の各検出温度に基づき制御したが、第二熱源供給路28に流量調整弁29を設ける代わりに、第一熱源供給路27と第二熱源供給路28との分岐部に、
図1において破線で示すように三方弁39を設けてもよい。三方弁39は、熱源供給ポンプ26からの熱源水について、第一熱源供給路27と第二熱源供給路28への分配割合を調整する。前記実施例と同様に、給水加温用熱交換器25への熱源水温度と、給水加温用熱交換器25の出口側水温との温度差を設定値に維持するように、三方弁39による分配割合を調整して、給水加温用熱交換器25への熱源水の供給流量を調整してもよい。
【0076】
また、このような三方弁39を設けた場合(あるいは前記実施例と同様に流量調整弁29を設けた場合)において、給水加温用熱交換器25への熱源水温度と、給水加温用熱交換器25の出口側水温との温度差を設定値に維持するように、給水加温用熱交換器25への熱源水の供給流量を制御することに代えて、次のように制御してもよい。すなわち、低温側蒸発器17と高温側蒸発器22とに、熱源水が設定順序で順に通され、これら各蒸発器17,22への熱源水の供給とは並列に、給水加温用熱交換器25に熱源水が通されるシステムにおいて、各蒸発器17,22を通過後の熱源水温度と、給水加温用熱交換器25を通過後の熱源水温度とが等しくなるように、各蒸発器17,22と給水加温用熱交換器25とへの熱源水の分配割合を調整してもよい。たとえば、
図1において、熱源供給ポンプ26の作動中、低温側蒸発器17の出口側の熱源水温度(A点の温度)と、給水加温用熱交換器25の出口側の熱源水温度(B点の温度)とをそれぞれ温度センサ(図示省略)で監視し、両温度が等しくなるように三方弁39などを制御すればよい。この場合、各蒸発器17,22および給水加温用熱交換器25にバランスよく熱を分配することができる。
【0077】
また、前記実施例では、給水路9を介した給水タンク3への給水流量を調整するために、給水ポンプ11をインバータ制御したが、給水ポンプ11をオンオフ制御しつつ、給水路9に設けたバルブの開度を調整してもよい。つまり、出湯温度センサ30の検出温度などに基づき給水路9を介した給水の流量を調整可能であれば、その流量調整方法は適宜に変更可能である。
【0078】
また、前記実施例では、給水ポンプ11の回転数をインバータで制御しつつ、出湯温度一定制御を実施する場合において、給水ポンプ11の回転数(周波数)が低温側停止値を超えると、設定条件を満たしたとして、低温側圧縮機13を停止させた。これに関し、給水ポンプ11をインバータ制御するのではなく、給水路9の通水流量をバルブの開度調整で行う場合、次のように制御してもよい。すなわち、そのバルブの開度が低温側停止値を超えると、前記設定条件を満たしたとして、低温側圧縮機13を停止させてもよい。その後、バルブの開度が低温側起動値以下になれば、低温側圧縮機13を起動すればよい。
【0079】
また、前記実施例では、給水タンク3への給水を貯留するために補給水タンク6を設置したが、場合により補給水タンク6の設置を省略して、給水源から直接に給水路9および補給水路10に水を通してもよい。
【0080】
また、前記実施例では、給水路9および/または補給水路10を介して、補給水タンク6から給水タンク3へ給水可能としたが、これら給水は、軟水器から直接に行ってもよい。たとえば、
図1において、給水路9および補給水路10の基端部をまとめて軟水器に接続し、給水ポンプ11の設置を省略する代わりに給水路9に設けた電動弁(モータバルブ)の開度を調整し、補給水ポンプ12の設置を省略する代わりに補給水路10に設けた電磁弁の開閉を制御すればよい。
【0081】
また、前記実施例では、ボイラ2の給水タンク3への給水をヒートポンプ4,5で加温できるシステムについて説明したが、給水タンク3の貯留水の利用先は、ボイラ2に限らず適宜に変更可能である。そして、場合により、補給水タンク6や補給水路10を省略してもよい。
【0082】
また、前記実施例では、ヒートポンプ4,5の熱源(給水加温用熱交換器25において給水を加温する流体でもある。)として熱源水を用いた例について説明したが、ヒートポンプ4,5の熱源流体として、熱源水に限らず、空気や排ガスなど各種の流体を用いることができる。
【0083】
さらに、前記実施例では、ヒートポンプ4,5の圧縮機13,18は、電気モータにより駆動されたが、圧縮機13,18の駆動源は特に問わない。たとえば、圧縮機13,18は、電気モータに代えてまたはそれに加えて、蒸気を用いて動力を起こすスチームモータ(蒸気エンジン)により駆動されたり、ガスエンジンにより駆動されたりしてもよい。その場合、スチームモータへの給蒸量を調整したり、ガスエンジンへの供給ガス量を調整したりして、圧縮機13,18の出力が調整可能である。