【実施例】
【0013】
本実施例の農作物拾い上げ機を
図1〜9に示す。図中、Aは畑、Pは農作物、1は走行機体、11は前輪、12は駆動輪、13はエンジン、14は操作部、2は拾い上げ装置、21は農作物Pを走行機体1の中央側へ掻き込む掻き込み体、22は前端部の一部を土中に埋入して掻込ベルト21で掻き込まれた農作物Pを拾い上げる拾い上げコンベヤ、23は拾い上げコンベヤ22で拾い上げられた農作物Pを持ち上げる持ち上げコンベヤ、3は無端スラットコンベヤ、4は回収容器、41は回収容器4を置く置き台である。
【0014】
図2〜7に示すように、無端スラットコンベヤ3の無端索体31はチェーンで構成され、4箇所に軸支されたスプロケット31aに矩形状に張り渡され、前方右側のスプロケット31aにエンジン13の駆動力が伝達されて平面視で反時計廻りに回動するようになっている。後方左右のスプロケット31aは、可動フレーム16と共に前後に進退して無端索体31の張り具合を調整できるようになっている(
図4参照)。無端索体31にはスラット板32を枢支するヒンジ31bが一定間隔に取り付けられ、無端索体31の直線部はカバー31cで覆われている。
【0015】
スラット板32は土はけ用の複数の開口部32aを備え、移動方向に対して後部の外周側一角に突出部32bが形成され、前端に農作物Pを強制的に送る送り片32cが垂直に形成されている。この複数のスラット板32が互いの前後端で若干重なるように且つ後続が上側となるように並べられ、それぞれが各ヒンジ31bに取り付けられて枢支されている。これらのスラット板32が四隅を移動する際、互いの前後端の外周側が離れて間隔が空くが、突出部32bによって間隔が塞がれて農作物Pが落下しないようになっている。
【0016】
スラット板32の下方には水平ガイド33が外周側と内周側それぞれに周方向に沿って設けられ、この水平ガイド33にスラット板32が自重で乗って水平の姿勢に支えられながら移動するようになっている。右側の排出位置には、略台形状(台形又は三角形)の迫り上げガイド34が設けられ、スラット板32が排出位置に来ると、迫り上げガイド34の一方の傾斜辺で内周側が徐々に迫り上がってヒンジ31bを支点に外周方向へ下向きに傾いた状態のまま移動し、排出位置を通過すると迫り上げガイド34の他方の傾斜辺によって徐々に水平の姿勢に戻るようになっている。このとき、各スラット板32は前後で重なっているから、先行のスラット板32が傾くと後続のスラット板32も引っ掛かって傾こうとし、全体が隆起するように連続的に傾く(
図6参照)。迫り上げガイド34は、未使用時に水平に倒して畳めるようになっている。また、右側の水平ガイド33は外周側と内周側ともに取り外し可能な構造となっており、内周側は迫り上げガイド34の無い水平ガイド33に交換できるようになっている(
図3参照)。
【0017】
背板35は弾性変形できる横長い板状で、前端部は内側に浅く曲げられ、スラット板32の外周側の端部に互いの前後端が重なるように且つ先行する背板35の後端が外側に位置するように枢支されている。その枢支部分には、背板35が外周方向へ傾倒する方向に付勢するスプリング35aが組み込まれている。これらの背板35が四隅から直線部へ移動する際、前端部の浅い曲げによって先行する背板35の後端と干渉しないようになっている。
【0018】
側壁体36は板状で、背板35の外側位置で且つ無端スラットコンベヤ3の前方左側の隅部から後方右側の隅部に渡って連続的に設けられており、その区間は背板35が側壁体36と接触して起立した状態で移動するようになっている。背板35が右側の排出位置に来ると、側壁体36が無いことによってスプリング35aの力で外周方向へ倒れ、傾いているスラット板32と共に農作物Pの排出シュートとなる。その倒れている背板35は、前側へ移行した後も側壁体36が無いことによって倒れた状態が維持される。前方左側の側壁体36の右側位置には、背板35を起立させて側壁体36の内側へ誘導する誘導ガイド36aが設けられている。背板35が四隅を通過する際は側壁体36に沿って弾性変形し、背板35が起立したまま四隅を円滑に移動できるようになっている。また、右側には側壁体36を取り付け可能な構造となっている(
図3参照)。
【0019】
持ち上げコンベヤ23と無端スラットコンベヤ3の前方側の間には、拾い上げた農作物Pをスラット板32に上方から投入する投入シュート24が設けられている。投入シュート24は、持ち上げコンベヤ23と干渉しないよう櫛状に且つ倒れている背板35の上方に達する長さ及び高さに形成され、倒れている背板35が投入シュート24の下方を潜って通過するようになっている(
図7参照)。
【0020】
エンジン13及び走行ミッション等の重量物は、無端スラットコンベヤ3で囲まれた中央部に配置され、重心バランスの向上及び走行機体1のコンパクト化を図っている。そのエンジン13の駆動力の伝達を
図8に示す。拾い上げ装置2及び無端スラットコンベヤ3に駆動力を伝達する伝動軸13aにはバイブロアーム37が取り付けられ、その動きによって無端スラットコンベヤ3が振動して土塊や石等を振るい落とすようになっている。また、無端スラットコンベヤ3には、無端索体31の過負荷防止用のトルクリミッター(図示は省略)を設けている。
【0021】
以下、農作物Pが玉ねぎの場合について説明する。まず、水平ガイド33の右側部分を外周側と内周側ともに取り外して内周側を迫り上げガイド34の無い水平ガイド33に交換し、右側に側壁体36を取り付ける。そして、置き台41に回収容器4を置いてエンジン13を始動し、拾い上げ装置2と無端スラットコンベヤ3を作動させて農作物拾い上げ機を畑Aに沿って走行させる。持ち上げコンベヤ22の前端部の一部が土中に埋入し、
図1に示すように、畑Aの表土上の農作物Pが左右の掻込ベルト21で走行機体1の中央側へ掻き込まれ、拾い上げコンベヤ22と持ち上げコンベヤ23で土等と共に上方へ搬送されて無端スラットコンベヤ3に投入される。土のほとんどは拾い上げコンベヤ22と持ち上げコンベヤ23による搬送中に落下する。投入位置では、背板35を投入シュート24の下方に潜らせることで投入シュート24とスラット板32の高低差が小さくなっており、投入時の農作物Pへの衝撃が軽減されて傷めることなく搬送する。
【0022】
無端スラットコンベヤ3では、投入された農作物Pがスラット板32に載って排出位置へ搬送される。農作物Pは、バイブロアーム37及び走行による振動、スラット板32の動き等によって動き回ることがあるが、立ち上がっている背板35で落下が防止される。しかも、背板35がスラット板32と共に移動しているから、背板35と摩擦することがなく、スラット板32と背板35の間に挟まれることもない。
【0023】
無端スラットコンベヤ3の側方の作業者(図示は省略)は、走行機体1の走行に合せて歩行しながら正面に搬送されてきた農作物Pを一つ一つ取り上げて葉と根をハサミで切って調製し、回収容器4に投入する。ここで、一時的に多量の農作物Pが搬送されてきて作業者の処理が間に合わずに通過させてしまうことがある。しかし、本実施例では、通過した農作物Pが周回して再度作業者の正面に搬送されるから、余裕を持って確実に調製することができ、未調製のまま回収容器5に収容されることがない。したがって、回収容器4には調製された農作物Pだけが収容され、再度調製する手間を省略できる。
【0024】
以下、農作物Pが馬鈴薯の場合について説明する。まず、内周側の水平ガイド33の右側部分を取り外して迫り上げガイド34付きの水平ガイド33に交換するとともに外周側に水平ガイド33を取り付け、右側の側壁体36を取り外す。そして、農作物拾い上げ機を走行させると、
図9に示すように、農作物Pの拾い上げと無端スラットコンベヤ3への投入が玉ねぎの場合と同様に行われる。無端スラットコンベヤ3では、農作物Pに付着又は同時に拾い上げられた土塊や石等がスラット板32の開口部32aから落下する。また、無端スラットコンベヤ3の側方の作業者は、スラット板32に未だ残っている土塊・石・根・茎・葉・腐れ物等を排除し、形状・大きさ・外観・状態等が不適格な農作物Pを選別して回収容器4に不要物が混入しないようにする。
【0025】
農作物Pが右側の排出位置に来ると、スラット板32は迫り上げガイド34によって一時的に傾き、背板35も側壁体36が無いことによってスプリング35aの力で外周方向へ倒れる。これによって排出シュートが形成され、農作物Pが右側へ滑り落ちて排出され、下方の回収容器4に収容されて収穫される。このとき、各スラット板32は全体が隆起するように連続的に傾くことで、1枚単位で傾く場合と比較して前後のスラット板32の間に隙間が空きにくくなっており、傾いたスラット板32の下面から農作物Pが落下することなく排出方向へ確実に誘導される。
【0026】
その後、スラット板32は水平の姿勢に戻り、背板35は倒れた状態のままで前側を移動して投入シュート24の下方を通過した後、左側で誘導ガイド36aによって再び起立する。
【0027】
図10に示すのは、迫り上げガイド34と背板35の起立ガイドの状態を操作レバーで切り換えができるようにした実施例の他の例である。
図10に示すように、操作レバー38aで左右にスライドできるスライド部材38と、スライド部材38の縦方向の長穴に一端が上下動可能に枢支され且つ他端が定位置に軸支された一対のリンク部材38bで構成し、各リンク部材38bに迫り上げガイド34とL字状に形成された起立ガイド39を基端部で固着している。
【0028】
図10(a)に示すように、操作レバー38aでスライド部材38を内周側へ動かすと、迫り上げガイド34と起立ガイド39が水平の姿勢になり、背板35が起立してスラット板32が水平の姿勢で排出位置を移動する。
図10(b)に示すように、操作レバー38aでスライド部材38を外周側へ動かすと、迫り上げガイド34と起立ガイド39が傾き、背板35が倒れてスラット板32が傾いた姿勢で排出位置を移動する。したがって、実施例のように部材を脱着することなく容易な操作で使い分けができる。その他、符号、構成、作用効果は実施例と同じである。