特許第6341486号(P6341486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6341486リポ多糖、ペプチドグリカン及び1,3−β−D−グルカンを検出するためのロブスター血球抽出物からの組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341486
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】リポ多糖、ペプチドグリカン及び1,3−β−D−グルカンを検出するためのロブスター血球抽出物からの組成物
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/37 20060101AFI20180604BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20180604BHJP
   C12N 9/76 20060101ALI20180604BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   C12Q1/37
   C12Q1/26
   C12N9/76
   G01N33/50 L
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-549358(P2014-549358)
(86)(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公表番号】特表2015-506679(P2015-506679A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】CU2012000009
(87)【国際公開番号】WO2013113296
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2015年9月7日
(31)【優先権主張番号】CU-2011-0243
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】CU
(73)【特許権者】
【識別番号】514163837
【氏名又は名称】セントロ デ インベスティガシオン イ デサロリョ デ メディカメントス シーアイディーイーエム
(73)【特許権者】
【識別番号】514165347
【氏名又は名称】セントロ デ インベスティガシオン マリナス
【氏名又は名称原語表記】CENTRO DE INVESTIGACIONES MARINAS
(73)【特許権者】
【識別番号】514165358
【氏名又は名称】ペルドモ モラレス、ローランド
【氏名又は名称原語表記】PERDOMO MORALES, Rolando
(73)【特許権者】
【識別番号】514165369
【氏名又は名称】モントレオ アレジョ、ヴィヴィアン
【氏名又は名称原語表記】MONTERO ALEJO, Vivian
(73)【特許権者】
【識別番号】514165370
【氏名又は名称】ペレラ ブラヴェット、エリック
【氏名又は名称原語表記】PERERA BRAVET,Erick
(73)【特許権者】
【識別番号】514165381
【氏名又は名称】カレロ カルボネリ、ジョージ エルネスト
【氏名又は名称原語表記】CALERO CARBONELL,Jorge Ernesto
(73)【特許権者】
【識別番号】514165392
【氏名又は名称】パルド ルイス、ゼニア
【氏名又は名称原語表記】PARDO RUIZ,Zenia
(73)【特許権者】
【識別番号】514165406
【氏名又は名称】ポルト ヴェルデシア、マルレーン
【氏名又は名称原語表記】PORTO VERDECIA,Marlene
(73)【特許権者】
【識別番号】514165417
【氏名又は名称】ヴェガ フルタド、ヤミール
【氏名又は名称原語表記】VEGA HURTADO,Yamile
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ペルドモ モラレス、ローランド
(72)【発明者】
【氏名】モントレオ アレジョ、ヴィヴィアン
(72)【発明者】
【氏名】ペレラ ブラヴェット、エリック
(72)【発明者】
【氏名】カレロ カルボネリ、ジョージ エルネスト
(72)【発明者】
【氏名】パルド ルイス、ゼニア
(72)【発明者】
【氏名】ポルト ヴェルデシア、マルレーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェガ フルタド、ヤミール
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第00/057719(JP,A1)
【文献】 J. Shellfish Res.,1997年,Vol.16,p.353
【文献】 Biochim. Biophys. Acta,1984年,Vol.797,pp.99-104
【文献】 Fish Shellfish Immunol.,2007年,Vol.23,pp.1187-1195
【文献】 Dev. Comp. Immunol.,1991年,Vol.15,pp.251-261
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
C12N 9/00−9/99
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体関連分子パターンのリポ多糖、ペプチドグリカン及び1,3−β−D−グルカンの全てを検出するための組成物を得る方法であって、該組成物はプロフェノールオキシダーゼ活性化系を含むロブスターの血球抽出物であり、ロブスターから血リンパを抽出し、その後に血球を分離、洗浄及び崩壊する工程を含み、前記血リンパの抽出は、スルフヒドリル基を修飾可能な試薬、メチルキサンチン誘導体、又は二価の陽イオンキレート剤と組み合わされた等張液から構成される抗凝固剤を用いて行われる、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物を得る方法であって、前記血球抽出物はザリガニ下目、イセエビ下目(イセエビ類)又はアナジャコ下目に含まれるロブスターから得る、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記血球は遠心分離又は重力によって血漿から分離され、洗浄されて0.001〜600mモルの間の濃度の塩化ナトリウムを少なくとも含む溶解緩衝液中で溶解する、方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記血球は浸透圧ショック、凍結/融解によって、撹拌若しくは手動の均質化によって、又は超音波によって溶解される、方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記組成物は5kDaのペプチダーゼ阻害剤を含まないことを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、5kDaのペプチダーゼ阻害剤を除去する方法が、分子のサイズ及び形状、親和性、免疫親和性、又は分子電荷による分離に基づく、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法によって得られた組成物を用いて、前記リポ多糖、ペプチドグリカン及び1,3−β−D−グルカンの存在を検出する方法であって、前記プロフェノールオキシダーゼ活性化酵素のペプチダーゼ活性を測定することによって検出することを特徴とする検出方法。
【請求項8】
請求項7に記載のリポ多糖、ペプチドグリカン及び1,3−β−D−グルカンを検出する検出方法であって、前記プロフェノールオキシダーゼ活性化酵素の酵素活性は、トリプシン様セリンプロテアーゼに対する発色基質又は蛍光発生基質を用いて測定される、検出方法。
【請求項9】
請求項7に記載のリポ多糖、ペプチドグリカン及び1,3−β−D−グルカンを検出する検出方法であって、前記ペプチダーゼ活性は速度論的、疑似速度論的又はエンドポイントの方法によって分光光度的に測定される、検出方法。
【請求項10】
請求項5に記載の方法によって得られた組成物を用いて、前記リポ多糖、ペプチドグリカン及び1,3−β−D−グルカンの存在を検出する方法であって、フェノールオキシダーゼ酵素の活性を測定することによって検出することを特徴とする検出方法。
【請求項11】
請求項10に記載のリポ多糖、ペプチドグリカン及び1,3−β−D−グルカンを検出する検出方法であって、前記フェノールオキシダーゼ活性はモノフェノール基質又はo−ジフェノール基質を用いて測定される、検出方法。
【請求項12】
請求項10に記載のリポ多糖、ペプチドグリカン及び1,3−β−D−グルカンを検出する検出方法であって、前記フェノールオキシダーゼ反応は速度論的、疑似速度論的又はエンドポイントの方法によって分光光度的に測定される、検出方法。
【請求項13】
請求項10に記載のリポ多糖、ペプチドグリカン及び1,3−β−D−グルカンを検出する検出方法であって、モノフェノール基質又はo−ジフェノール基質を用いた前記フェノールオキシダーゼ反応の感度は、反応混合物中に0.3〜10mモルの間の濃度の3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンを含むことによって増大される、検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に微生物及びそれらの細胞壁に関連する構造、例えばグラム陰性菌からのリポ多糖(LPS)、すなわち内毒素、グラム陰性菌及び陽性菌からのペプチドグリカン(PG)、並びに菌類及び酵母からの1,3−β−D−グルカン(BG)などの検出を伴う化学、薬剤学及び生物工学の分野に関する。本発明はまた、半導体産業において、及び臨床検査のための診断ツールとして使用されるような超純水中の微生物汚染の評価における用途を有する。
【背景技術】
【0002】
自然免疫系は、多数の細菌によって保存かつ共有される分子構造の認識を介した微生物を検出するための非常に効果的な応答機構を提供する。病原体関連分子パターン(PAMP)として知られているこれらの構造は、宿主においては見出されず、かつ微生物の生存又は病原性において必須である。最も特徴的なPAMPは中でも、とりわけ、LPS、BG及びPGである[Medzhitov and Janeway,The New England Journal of Medicine,343(5):338−344,2000(非特許文献1)]。
【0003】
内毒素は、その驚くべき生物学的能力、遍在性、従来の滅菌方法に対する耐性、及び非経口溶液を汚染する可能性の高さのために、薬剤学及び生物工学の産業において最も関連性のあるPAMP又は外因性発熱物質であるということが長年にわたって確立されてきた[Williams K.L.Endotoxin Relevance and Control Overview;in Williams,K.L.(eds).Endotoxins,Pyrogens,LAL Testing and Depyrogenation.Third edition.Healthcare Report,New York,London.2007,27−46(非特許文献2)]。さらに、内毒素は、グラム陰性菌によって引き起こされる敗血症と関連する内毒素ショックの主な原因であり、かつ自然免疫系に対してこれらの細菌の存在を示す最初の警報シグナルを構成する。LPSの血流中へのアクセスにより、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全(MOF)、ショック及び死亡など、人間の健康に重大な悪影響が生じる[Opal SM,Contrib Nephrol 167,14−24,2010(非特許文献3),Hodgson JC,J Comp Pathol 135,157−175,2006(非特許文献4)]。
【0004】
カブトガニ血球抽出成分(LAL)試験は、特に非経口薬剤及び生物工学製品の品質管理において、細菌内毒素を検出するために広く使用されている(米国特許第4107077号(特許文献1)、同第4279774号(特許文献2)、同第4322217号(特許文献3)、同第3954663号(特許文献4)、同第4038029号(特許文献5)、同第4188264号(特許文献6)、同第4510241号(特許文献7)、同第5310657号(特許文献8))。
【0005】
LAL試薬はカブトガニの血リンパ中に存在するアメーバ様細胞の抽出物から調製される。これはトリプシン様セリンペプチダーゼのカスケードから成り、C因子及びG因子それぞれを介して内毒素及び(1,3)−β−D−グルカンの存在下において活性化される。試薬はカブトガニの自然免疫系の一部であるカブトガニの凝固反応に基づくものである。同様のシステムは、これまでのところ、他の無脊椎動物種において発見されていない[Iwanaga S y Lee BL,J Biochem Mol Biol 38,128−150,2005(非特許文献5)]。
【0006】
内毒素特異的LAL試薬は、(1,3)−β−D−グルカンに対して感受性を有するG因子を分離して、LALの酵素カスケードの残りの成分を残すことにより(米国特許第5401647号(特許文献9)、同第5605806号(特許文献10)、米国特許出願公開第20030104501号(特許文献11))、又はG因子の活性化を阻害することにより(米国特許第5047353号(特許文献12)、同第5155032号(特許文献13)、同第547984号(特許文献14)、同第5702882号(特許文献15)、同第5998389号(特許文献16)、同第5179006号(特許文献17))得られる。
【0007】
カブトガニは過去3億年でほとんど進化していないために生きた化石として知られている海洋節足動物である。類似の試薬が得られる4種のカブトガニが存在する。
【0008】
タキプレウス・トリデンタツス(Tachypleus tridentatus)、タキプレウス・ギガス(Tachypleus gigas)及びカルシノスコルピウス・ロツンディカウダ(Carcinoscorpius rotundicauda)の種は、アジアのみに存在する。最後の2種は個体数が少なく、試薬の生産を持続したことがない。さらに、一般的に中国カブトガニ又は三棘(tri−spine)カブトガニとして知られているタキプレウス・トリデンタツスは、中国海岸に沿って、特に南シナ海北部及び海南島の範囲領域において、高い個体群密度を有していた。しかしながら、台湾、日本、香港、タイ、中国におけるT.トリデンタツスに関する最近の研究では、個体数はほぼ絶滅まで大幅に減少していることが示唆されている。主な原因は乱獲及び海洋汚染である。
【0009】
アジア種の個体群密度が低いために、販売されているLAL試薬は、主にアメリカカブトガニとしても知られているリムルス・ポリフェムス(Limulus polyphemus)から得られる。リムルスは北部のメイン州からユカタン半島及びメキシコ湾にわたって米国大西洋岸に生息している。最大の個体群はデラウェア湾で発見されたが、その数及び産卵活動は大幅に減少している[Widener JW and Barlow RB,Biological Bulletin(197):300−302,1999(非特許文献6)]。主な原因は、生息地の減少及びカキやウナギ釣りでの餌としての使用である[Rudloe A,Journal of Invertebrate Pathology(42):167−176,1983(非特許文献7);Botton ML,Biologist(49):193−198,2002(非特許文献8)]。LAL試薬を調製するための出血工程による死亡率は約15%の範囲であったが[Walls EA and Berkson J,Virginia Journal of Science 51(3):195−198,2000(非特許文献9)]、過去から倍増しており、その個体群の減少を加速させている。
【0010】
FAOによると、LAL試薬が高価格であり、カブトガニの分布範囲が狭く、及びそれらが性的成熟に到達するのに非常に長い時間がかかるために、カブトガニの個体数は回復率を下回って減少しやすい。4種は絶滅の危機に瀕しており、かつ国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに含まれている。
【0011】
カブトガニの個体群の現在の危機的な状況を考慮して、米国大西洋沿岸州海洋漁業委員会(ASMFC)はリムルスの釣り及び利用に関するいくつかの側面を規制している。LAL業界に関しては、検体を死亡に至らしめるように出血させることはできず、かつ72時間未満以内にマークされた捕獲場所に健康な状態で戻さなければならないことを確立した。また、LALを生産するために使用する動物の年間割当量が設定され、これらの取り扱いに関連する死亡率はこの割当量の15%を超えることができない。
【0012】
世界的に、原料供給源のリムルスからの血リンパが利用できなくなる前に、内毒素及び他の発熱物質を検出するための代替物を研究する必要性が高まってきている。個体数の減退と相まってその需要の増加が継続する一方で、LALを生産するために業界で使用できるカブトガニの年間割当量の確立により、LAL試薬を生産するためにカブトガニの捕獲及び出血の増加を維持することは不可能であることが示唆される。
【0013】
米国特許第4229541号(特許文献18)、同第5082782号(特許文献19)、同第6790659号(特許文献20)及び米国特許出願公開第20030186432号(特許文献21)では、LALを調製するためのアメーバ様細胞の天然供給源であるカブトガニ血リンパの代替案として、アメーバ様細胞を生体外培養するための戦略開発を記載している。現在までに、この方法で得られる商業用試薬、又はそれを得るためのプロジェクトは存在していない。
【0014】
一方で、新たな方法論によって、シンガポールカブトガニのカルシノスコルピウス・ロツンディカウダからの内毒素感受性C因子における組換え体のクローン化及び生産に成功し(米国特許第5712144号(特許文献22)、同第5858706号(特許文献23)、同第5985590号(特許文献24))、天然のLAL試薬と類似の手法でLPS、すなわち内毒素を検出及び定量化するためのその使用が確立されてきた(米国特許第6645724号(特許文献25))。組換えC因子と界面活性剤との組み合わせ(米国特許出願公開第20030054432号(特許文献26))、又は増加した感度及び安定性を示す製剤中の組換えC因子若しくは天然供給源から精製されて得られた組換えC因子(米国特許出願公開第20040235080号(特許文献27))の試薬製剤が特許を取得している。しかしながら、試薬中に天然に存在する他の酵素の欠如のために、これらの製剤は酵素カスケードの増幅効果により提供される感度を欠いていたが、それはより感受性のある蛍光基質を使用することによって部分的に解決された。凝固酵素(米国特許出願公開第20090208995号(特許文献28))及びG因子(米国特許出願公開第2010011266号(特許文献29))などのLALカスケードの他の成分もまた組換え生産されている。
【0015】
LAL試薬及び組換えC因子はLPSを検出できるが、PGを検出しない。しかしながら、最近の研究では、非経口使用のための製剤中、及び非発熱性でなければならない他の溶液及びデバイスにおいて、PG含有量の検出かつ制御においても緊急の必要性が示されている。PGはグラム陽性菌及びグラム陰性菌の細胞壁のよく保存された成分であり、かつ敗血症性ショックを含む、グラム陽性菌によって引き起こされる炎症反応及びその有害な健康への影響に対する主な原因である[Silhavy TJ et al.,Cold Spring Harbor perspectives in biology 2,a000414,2010(非特許文献10)]。LPSのように、PGは、炎症誘発性サイトカインの放出を誘導することができ[Verhoef J and Mattsson E,Trends in Microbiology 3:136−140,1995(非特許文献11);Teti G,Trends in Microbiology 7:100−101,1999(非特許文献12)]、発熱性であり、細菌の増殖及び死の間に環境中に放出され、かつ通常の滅菌手段に対して耐性を示す[Moesby L,European Journal of Pharmaceutical Science 35,442−446,2008(非特許文献13)]。LPSとPGとの類似性のために、双方に同じ重要性を付与することが提案されている[Myhre AE et al.,Shock 25(3):227−35,2006(非特許文献14)]。
【0016】
さらに、PGの存在から、相乗作用により[Takada H et al.,Journal of Endotoxin Research 8,337−342,2002(非特許文献15);Hadley JS et al.,Infection and Immunity,73:7613−7619,2005(非特許文献16);Wray GM,Shock,15(2):135−42,2001(非特許文献17);Shikama Y et al.,Innate Immunity,17(1):3−15,2009(非特許文献18)]、又は相加効果により[Sprong T,Journal of Leukocyte Biology,70:283−288,2001(非特許文献19)]、LPSによって誘導される炎症反応を顕著に感作することが可能である。
【0017】
カブトガニのLALカスケードと同様に、プロフェノールオキシダーゼ活性化系(ProPO系)は、無脊椎動物の体液性自然免疫応答の必須の構成要素である[Cerenius et al.,Trends Immunol.(29):263−271,2008(非特許文献20)]。バイオセンサを介してPAMPを認識し、かつプロフェノールオキシダーゼ活性化酵素(ppA)又はフェノールオキシダーゼの酵素活性を測定することにより可視的かつ定量可能な応答をもたらすproPO系の能力により、それを微生物及びそのPAMPの検出用試薬を開発するための魅力的な候補とする。
【0018】
ProPO系は、パターン認識タンパク質、ppA及びproPOを含むタンパク質の複雑な配列を含む。いくつかの節足動物において、proPO系はまだ完全に解明されていない機構を介して少量のPAMPの存在下で活性化されることが記載されている。一般には、PAMPの存在下でpro−ppAは活性となり、タンパク質分解攻撃によってプロフェノールオキシダーゼ(不活性酵素前駆体)を活性フェノールオキシダーゼに変換することが知られている。フェノールオキシダーゼは、モノフェノール及び/又はo−ジフェノールをアミンクロムに酸化し、メラニンの合成を開始する。
【0019】
米国特許第497052号(特許文献30)には、フェノールオキシダーゼ活性又はppAペプチダーゼ活性を測定することによりBG及びPGを検出するための、カイコの幼虫(SLP)の血漿から得られる試薬の開発及び使用が記載されている。それはまた、BG又はPGの特異的測定を追求した試薬修飾を含む。この発明に基づき、米国特許第5585248号(特許文献31)には、ppA活性を検出するための合成の感受性発色基質の使用が記載されている。米国特許第6274565号B1(特許文献32)では、BGによって媒介される活性化経路を阻害することによって、PGの特異的検出を可能とする試薬の修飾が保護されている。アッセイSLPは、血小板における細菌汚染の検出に特に有用であると思われる(米国特許第7598054号B2(特許文献33))。
【0020】
また、proPO系を使用して、米国特許第6987002号B2(特許文献34)及び米国特許出願公開第2002/0197662号A1(特許文献35)では、(1,3)−β−D−グルカンを検出及び定量するための、昆虫の幼虫(テネブリオ・モリトル(Tenebrio molitor)又はホロトリチア・ディオムファリア(Holotrichia diomphalia))の全血リンパから得られた試薬を記載している。
【0021】
イセエビのP.アーガス(P.argus)におけるproPO系は血球において発見され[Perdomo−Morales et al.,Fish Shellfish Immunol(23):1187−1195,2007(非特許文献21)]、かつ低濃度のPG、BG及びLPSの存在下において活性化可能である。proPO酵素前駆体の活性化に関連する少なくとも2つのペプチダーゼがあり、一方はカルシウム依存性であり、他方はそうではない。proPO系は、5kDaのペプチダーゼ阻害剤及び正味の正電荷によって調節されている。系の活性成分から阻害剤を分離することにより、実質的にPG、BG及びLPSに対する応答の感度が増大する。ロブスターのproPO系はまた、血リンパの血漿画分に局在するLPS及びBG認識タンパク質(LGBP)を含む。LGBPは、LPS及びBGに結合することにより活性化し、かつppA活性の増加により溶解物中のフェノールオキシダーゼ活性を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第4107077号明細書
【特許文献2】米国特許第4279774号明細書
【特許文献3】米国特許第4322217号明細書
【特許文献4】米国特許第3954663号明細書
【特許文献5】米国特許第4038029号明細書
【特許文献6】米国特許第4188264号明細書
【特許文献7】米国特許第4510241号明細書
【特許文献8】米国特許第5310657号明細書
【特許文献9】米国特許第5401647号明細書
【特許文献10】米国特許第5605806号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第20030104501号明細書
【特許文献12】米国特許第5047353号明細書
【特許文献13】米国特許第5155032号明細書
【特許文献14】米国特許第547984号明細書
【特許文献15】米国特許第5702882号明細書
【特許文献16】米国特許第5998389号明細書
【特許文献17】米国特許第5179006号明細書
【特許文献18】米国特許第4229541号明細書
【特許文献19】米国特許第5082782号明細書
【特許文献20】米国特許第6790659号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第20030186432号明細書
【特許文献22】米国特許第5712144号明細書
【特許文献23】米国特許第5858706号明細書
【特許文献24】米国特許第5985590号明細書
【特許文献25】米国特許第6645724号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第20030054432号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第20040235080号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第20090208995号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第2010011266号明細書
【特許文献30】米国特許第497052号明細書
【特許文献31】米国特許第5585248号明細書
【特許文献32】米国特許第6274565号B1明細書
【特許文献33】米国特許第7598054号B2明細書
【特許文献34】米国特許第6987002号B2明細書
【特許文献35】米国特許出願公開第2002/0197662号A1明細書
【非特許文献】
【0023】
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【非特許文献25】Duvic B and Soderhall K,J Biol.Chem.,265(16):9327−9332,1990
【非特許文献26】Jimenez−Vegas F et al.,Fish Shellfish Immunol 13(3):171−181,2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明者らがここで初めて提示する組成物は、ロブスターの血リンパからの血球の水性抽出物であり、以下ロブスター血球溶解物(LHL)と称する。LHL中の関心対象の活性成分はproPO系であり、組成物はLPS、PG及びBGの検出及び定量を目的とするものである。本明細書においてロブスター(lobster or lobsters)という用語は、ザリガニ下目、イセエビ下目(イセエビ類)及びアナジャコ下目、歩行亜目(長尾類)、エビ目、甲殻綱、節足動物門の範囲内に記載の種を指している。
【0025】
ロブスターはまた、一部の地域において乱獲の対象であるが、多くの国(例えば、キューバ、ブラジル、オーストラリア、米国等)では主要な漁業資源を代表する非常に豊富な種である。血リンパは通常廃棄される副産物であるので、本組成物の生産は、食料として人間が消費するためのこれらの動物の入手可能性に影響を与えない。ロブスターは、最大の甲殻類のうちの1つであり、容易に入手可能な大量の血リンパを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
LHLを調製するために、血漿凝固を防止する、しかし好ましくは、血漿凝固並びに細胞の活性化及び凝集の両方を回避する適切な抗凝固剤を用いて、血リンパを引き抜く。抗凝固剤としては、メチルキサンチン誘導体、例えばテオフィリン、テオブロミン若しくはカフェイン、若しくはこれらの塩を含む等張液、又はシステインなどのスルフヒドリル基(−SH)を修飾可能な試薬、ヨードアセトアミド及びN−エチルマレイミドを使用することができる。また、適切な緩衝液によって提供されるpH4.5−8の間を有するキレート剤を含有する溶液、例えば、変性アルセバー抗凝固剤(27mMのクエン酸ナトリウム、336mMのNaCl、115mMのグルコース、9mMのEDTA、pH7)又はクエン酸塩−EDTA抗凝固剤(0.4MのNaCl、0.1Mのグルコース、30mMのクエン酸三ナトリウム、26mMのクエン酸及び10mMのEDTA、pH4.6)も適している。変性アルセバー抗凝固剤は、血リンパ:抗凝固剤が1:1(v/v)の割合で使用されることが好ましい。
【0027】
血球を10分間4℃にて700gで遠心分離することにより血漿から分離する。血漿(上清)を廃棄し、沈降した血球を洗浄して残留血漿成分を除去する。この目的のために、血リンパ:抗凝固剤の最初の混合物に相当する体積以下の体積の抗凝固剤に血球を再懸濁し、続いて別の同一の遠心分離サイクルを行う。血球は少なくとも2回洗浄する必要がある。洗浄した血球ペレットを、好ましくは1〜10mlの間の体積の溶解緩衝液に懸濁させる。溶解緩衝液は、0.001〜600mMの間の濃度のNaCl、酵素を安定化可能である薬剤(安定剤)、及び二価陽イオンを封鎖しない適した緩衝液によってもたらされる5〜8.5の間のpHを含み得る。50mMのTris−HCl、pH7.5、450mMのNaClの溶解緩衝液が好ましい。
【0028】
血球は、一般に細胞抽出物を調製するために生化学において使用される機械的、化学的又は酵素的であり得る破壊方法の中から適切な方法を用いて溶解させる。これらの細胞の特性を考慮して、最適な破裂方法には浸透圧ショック、凍結/融解、撹拌(ボルテックス)又は手動(Dounce型及びPotter−Elvehjemem型)による均質化、及び超音波処理がある。血球ホモジネートを4℃で30分間、13000rpmで遠心分離することで、清澄化した上清、すなわちLHLを得る。
【0029】
本発明は、LPS、PG及びBGに対するLHL応答の感度を高めるための修飾を含む。この修飾はLHLに存在するペプチダーゼ阻害剤の除去又は不活性化に基づくものである。阻害剤は、分子のサイズ及び形状、電荷又は親和性に基づく分離技術によって除去することができる。好ましくは、サイズ排除、例えばゲル濾過クロマトグラフィ、限外濾過及びダイアフィルトレーションなどに基づく処置を用いる。ゲル濾過クロマトグラフィでは、10〜60kDaの間、好ましくは30kDaの排除限界を有する樹脂を使用しなければならない。クロマトグラフィ分画は、3〜60cm/時の間、好ましくは9cm/時の流速で実施し、適用する試料体積は、全カラム体積の1〜5%の間、好ましくは3%とすべきである。これらの条件下で、proPO系の残留活性タンパク質は、カラムの空隙容量に溶出する。限外濾過及びダイアフィルトレーションを使用する場合、5〜60kDaの間、好ましくは10〜40kDaの間のカットオフを有する膜を使用する。阻害剤を含まないLHLは、以下、修飾LHL(LHL−M)と称する。
【0030】
LHL及びLHL−Mの両方の試薬は、PG、BG及びLPSを検出するために使用される。この検出は、ロブスターにおけるproPO系の活性化に基づくものである(図1)。したがって、PG、BG及びLPSの検出は、活性フェノールオキシダーゼ(FO)の酵素活性又はppAのペプチダーゼ活性を測定することにより行われる(図1)。
【0031】
フェノールオキシダーゼ活性は、モノフェノール基質(例えばチラミン、L−チロシン、4−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸)又はジフェノール基質(例えばジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(L−DOPA)、ドーパミン、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、カテコール及びメチルカテコール)を用いて測定する。1.2mMのドーパミンを用いて測定することが好ましい。着色生成物の形成により、フェノールオキシダーゼ活性を視覚的又は分光光度的に測定することが可能となる。
【0032】
フェノールオキシダーゼ活性を測定するための方法の感度は、モノフェノール基質又はo−ジフェノール基質と3−メチル−2−ベンゾチアゾリンヒドラジン(MBTH)又はBesthornのヒドラゾンとを組み合わせることにより増大させることが可能である。MBTHは、対応するアミンクロムよりもはるかに大きな消光係数又はモル吸光係数を有して、フェノールオキシダーゼにより生成されるo−キノンと安定した着色付加物(MBTH−キノン)を形成する強力な求核剤である[Espin JC et al.,Eur J Biochem,267:1270−1279,2000(非特許文献22);Garcia−Molina F et al.,J.Agric.Food Chem 55:9739−9749,2007(非特許文献23)]。MBTHは、0.3〜15mM、好ましくは2〜7mMの間の最終濃度で使用される。
【0033】
BG、LPS及びPGによって誘導されるppAのペプチダーゼ活性は、トリプシン様セリンプロテアーゼに対する発色基質又は蛍光発生基質を用いて測定する。これらの基質は、一般式R−Y又はR−Arg−Lys−Yであり、式中、Yはp−ニトロアニリン(p−NA)のような発色団、又は発蛍光団、例えば7−アミド−4−メチルクマリン、ローダミン、若しくは7−アミド−4−トリフルオロメチルクマリンである。Rは保護基によりそのN末端が保護されたL若しくはDアミノ酸、又は保護基によりそのN末端が保護されたL若しくはDアミノ酸、若しくはこれらの組み合わせを含むペプチドを表す。
【0034】
LHL又はLHL−M試薬を用いたPG、LPS及びBGを検出するためのアッセイは、速度論的、擬似速度論的又はエンドポイントの方法により行われ得る。反応は従来の分光光度計及び蛍光光度計を用いて検出可能である。しかしながら、より高い試料処理能力及び試薬の節約のために、可視光、蛍光の波長を読み取るように装備された、96ウェルマイクロプレートを読み取ることが可能なマイクロプレートリーダ、又は両機能を実行可能なものを用いることが好ましい。
【0035】
速度論的アッセイは、基質を含む反応混合物の全成分を添加した直後の時間における生成物検出として定義される。擬似速度論的アッセイは、予めインキュベートした反応混合物への基質添加後に反応が測定されるものとして定義される。エンドポイントアッセイは、基質を用いた反応混合物の一定時間のインキュベーション後の反応の単一読み取りとして定義される。
【0036】
反応混合物は6〜9の間、好ましくは7.5のpH値を有さなければならず、かつ二価の陽イオンを含んでも含まなくてもよい。カルシウム、マグネシウム又はマンガンを5mMの最低濃度、好ましくは50mM含む必要がある。試験温度は室温〜45℃の間、好ましくは37℃とすべきである。
【0037】
本発明はまた、BG及びLPSに対するLHL及びLHL−Mの両方の感度を増大させるためにLGBPの使用を含む。LGBPは試薬の製剤中に含まれてもよく、又は反応混合物に後で添加してもよい。LGBPは、LPS及びBGを検出するためのアッセイにおいて、3〜200μg/ml、好ましくは50〜125μg/mlの間の濃度範囲であり得る。
【0038】
LGBPは血漿から得られ、それはまたLHL調製の豊富な副産物である。等電沈殿工程の後[Vargas−Albores F et al.,Comp Biochem Physiol B Biochem Mol Biol,116(4):453−458,1997(非特許文献24)]、LGBPは(1,3)−β−D−グルカンに結合した親水性マトリックス[Vargas−Albores F et al.,Comp Biochem Physiol B Biochem Mol Biol,116(4):453−458,1997(非特許文献24)]、免疫親和性[Duvic B and Soderhall K,J Biol.Chem.,265(16):9327−9332,1990(非特許文献25)]又はヘパリン[Jimenez−Vegas F et al.,Fish Shellfish Immunol 13(3):171−181,2002(非特許文献26)]を用いた親和性クロマトグラフィにより精製可能である。好ましくは、ヘパリンをリガンドとして使用することで、単一のクロマトグラフィ工程で大量の純粋なLGBPを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】イセエビにおけるプロフェノールオキシダーゼ活性化系(proPO系)、及びロブスター血球溶解物(LHL)を用いたリポ多糖(LPS)、ペプチドグリカン(PG)及び(1,3)−β−D−グルカン(BG)検出の原理における概略図。LGBP:リポ多糖及び(1,3)−β−D−グルカン結合タンパク質。
図2】ロブスター血球溶解物におけるフェノールオキシダーゼ活性に対するo−ジフェノール基質のドーパミン及びL−DOPAの濃度の影響。
図3】リポ多糖(LPS)、(1,3)−β−D−グルカン(BG)及びペプチドグリカン(PG)に対するLHL応答。パネルA−C:任意単位でのフェノールオキシダーゼ活性(ΔOD490nm/分)。パネルD−Fはフェノールオキシダーゼ活性と微生物誘導因子濃度との間の直線関係を示している。LPS(0.185−1850ng/ml)、BG(1.8−18000ng/ml)及びPG(0.19−19000ng/ml)。開始時間は、490nmで特定の光学密度に到達するのに必要な反応時間を意味する。
図4】フェノールオキシダーゼ反応の感度におけるMBTHの影響。左のパネル:37℃で1時間後の490nmでの光学密度(エンドポイントアッセイ)。右のパネル:MBTHが存在しない場合(対照)及び異なる濃度のMBTHが存在する場合における反応速度。
図5】セリンペプチダーゼに対する発色基質S−2222(Bz−Ile−Glu(γ−OR)−Gly−Arg−pNA−HCl)を用いたLPSに対するproPO系応答の測定。
図6】セファデックスG−50カラムでのゲル濾過クロマトグラフィによるproPO系活性成分からのプロテアーゼ阻害剤の分離。
図7】基質としてドーパミンを用いた、プロテアーゼ阻害剤を欠損したLHLのフェノールオキシダーゼ反応。0.01ng/mlLPSの感度。
図8】ヘパリン−セファロースCL−6Bでの親和性クロマトグラフィによるLGBPの精製(パネルA)。SDS−PAGE電気泳動(パネルB):分子量マーカー(レーン1)、全血漿(レーン2)、還元条件下(レーン3)及び非還元条件下(レーン4)での精製LGBP。クマシーブリリアントブルーR−250でタンパク質を染色した。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(実施例)
【実施例1】
【0041】
ロブスター血球溶解物(LHL)の調製
10mlの血リンパを、10mlの冷却抗凝固剤溶液を含む20mlの滅菌かつ発熱物質を含まない使い捨て注射器を使用して、第4歩行脚の基節から得た。使用した抗凝固剤は、27mMのクエン酸ナトリウム、336mMの塩化ナトリウム、115mMのグルコース、9mMのEDTA、pH7(1000mオスモル)から成るアルセバー変性溶液であった。血リンパ:抗凝固剤の混合物を50mlの滅菌かつ発熱物質を含まないポリプロピレン遠心管に注ぎ、10分間4℃で700gにて遠心分離した。血漿を含有する上清を廃棄した。その後、ペレット化した血球を洗浄して残留血漿成分を除去した。これを達成するために、血球ペレットを20mlの冷却抗凝固剤に懸濁させ、次いで体積を元の抗凝固剤:血リンパの体積(50ml)まで抗凝固剤を用いて上昇させ、上記のように再度遠心分離した。洗浄工程をもう一度繰り返した。洗浄した血球ペレットを、50mMのTris−HCl、450mMのNaCl、pH7.5から成る3mlの溶解緩衝液に再懸濁させ、次いで、13mm×10cmのホウケイ酸チューブに移した。血球懸濁液を、氷浴中で10秒間、20ワットの3サイクルを用いて超音波処理により溶解させた。血球ホモジネートを30分間4℃にて13000rpmで遠心分離することにより、清澄LHLを得た。
【実施例2】
【0042】
LHLにおけるフェノールオキシダーゼ反応の感度に対するドーパミン濃度の影響とL−DOPA濃度の影響との比較
溶解物(0.1mg/mlで420μl)を1mg/mlのウシトリプシン4.2mlを用いて37℃で30分間インキュベートした。この混合物の100μlを、50mMのTris−HCl、pH7.5中の種々の濃度のL−DOPA(0.3〜8mM)又はドーパミン(0.15〜9mM)150μlを含有するマイクロプレートのウェルに添加した。マイクロプレートリーダにおいて37℃で20分間、490nmでフェノールオキシダーゼ活性を速度論的に測定した。
【実施例3】
【0043】
速度論的方法によるフェノールオキシダーゼ活性の検出を介した、LHLを用いたPG、BG及びLPSの測定
LHL(12mg/ml)を、50mMのTris−HCl、pH7.5を用いて0.5mg/mlに希釈した。滅菌かつ発熱物質を含まないことが保証された96ウェル平底マイクロプレートにおいてアッセイを実施した。反応混合物は150μlの50mM Tris−HCl、pH7.5、50mM CaCl、20μlのLHL、及び50μlの活性化物質(LPS、PG又はBG)から構成された。対照は、内毒素を含まない水であった。最後に、50μlの3.75mMドーパミンを基質として添加した。ドーパミンクロム形成は、マイクロプレートリーダで37℃にて15秒ごとに読み出すことによって、1時間の間、490nmで速度論的に評価した。反応速度(ΔOD490/分)は、OD490nm対時間のプロットの直線部分から決定した。あるいは、開始時間は反応混合物が0.1の吸光度値に到達するのに必要な時間として決定した。PAMP濃度の対数に対する開始時間の対数のプロットは線形であり、かつ定量目的のために有用であった。
【実施例4】
【0044】
LHLにおけるフェノールオキシダーゼ反応の増加に対するMBTHの効果。滴定
0.8mg/mLのLHLを、50mMのTris−HCl、pH7.5を用いて0.1mg/mLに希釈した。アッセイは平底ウェルマイクロプレートにおいて実施した。反応混合物は40μlの50mM Tris−HCl、pH7.5、50mM Tris−HCl、pH7.5に溶解させた160μlの1mg/mlトリプシン、10μlのLHL及び蒸留水に溶解させた40μlのMBTHから構成された。この混合物を37℃で20分間インキュベートし、最後に50μlの3.75mMドーパミンを各ウェルに添加した。反応はマイクロプレートリーダにおいて37℃で1時間の間、15秒ごとに490nmで速度論的に読み取った。
【実施例5】
【0045】
セリンペプチダーゼに対する発色基質を用いたLPSに対するLHL応答の測定
溶解緩衝液中に塩化ナトリウムを含まない実施例1に記載した通りに得られる50μlのLHL(1mg/ml)を、150μlの50mM Tris−HCl、pH7.5緩衝液、及び50μlのLPSと合わせた。その後、50μlの0.6mM 発色基質S−2222(Bz−Ile−Glu(γ−OR)−Gly−Arg−pNA−HCl)を各ウェルに添加した。放出されたp−ニトロアニリンを37℃で1時間、405nmで速度論的に検出した。
【実施例6】
【0046】
ゲル濾過クロマトグラフィによるプロテアーゼ阻害剤の分離
予め50mMのTris−HCl、0.2MのNaCl、pH7.5で平衡化したカラムXK16/70(Vt=131.4ml)中に充填したセファデックスG−50スーパーファインでのゲル濾過クロマトグラフィを用いて、LHL中のproPO活性化系の活性成分からプロテアーゼ阻害剤を分離する。4mlの8mg/ml LHL(3%Vt)を、0.3ml/分の流速で分画した。クロマトグラフィ分画を280nmでモニタリングした。カラムの空隙容量に相当する画分を集め、F1又は修正LHL(LHL−M)と命名した。
【実施例7】
【0047】
スピンカラムによるプロテアーゼ阻害剤の分離
LHLをセファデックスG−50(1.5ml)で充填したスピンカラムで分画した。カラムを1分間1000rpmにて4回洗浄することにより、カラムを50mMのTris−HCl、450mMのNaCl、pH7.5緩衝液で平衡化した。実施例1の通りに調製した150μlのLHLをスピンカラムに適用し、1分間1000rpmで遠心分離した。溶出液を集め、LHL(F0画分とも称される)及び溶出液又は分画LHL(F1又はLHL−Mとも称される)の両方を、タンパク質濃度、トリプシンに対する阻害活性、及びフェノールオキシダーゼ活性について分析した。
【0048】
【表1】
【実施例8】
【0049】
トリプシン阻害活性を欠損したLHL、すなわちLHL−MにおけるLPSに対するフェノールオキシダーゼ反応の測定
阻害剤を含まない溶解物(修飾LHL;LHL−M)を実施例5に従って得た。50μlのLPS、150μlのTris−HCl、50mMのCaCl、pH7.5、及び20μlの0.8mg/ml溶解物(LHL−M)の反応混合物を30分間37℃でインキュベートした。最後に50μlの3.75mMドーパミンを添加し、反応の進行を37℃で1時間、490nmで速度論的に読み取った。開始時間は、0.3の光学密度に到達するのに必要な時間として算出し、その後、LPS濃度の対数に対する開始時間の対数をプロットした。
【実施例9】
【0050】
リポ多糖及びβ−1,3グルカン結合タンパク質(LGBP)の血漿からの精製
LHL調製中に得られた血漿を、4℃で20分間、5000rpmで遠心分離して清澄化した。100mlの清澄化した血漿を、8000Daのカットオフの透析膜を用いて、48時間4℃にて5Lの蒸留水に対して透析した。期間中、透析水を12時間ごとに4回変更した。透析液を4℃で20分間、5000rpmで遠心分離し、上清を捨てた。タンパク質のペレットを50mMのTris−HCl、0.2MのNaCl、pH7.5(緩衝液A)に懸濁させ、再度遠心分離して不溶性の変性タンパク質を除去した。5ml中の35mgの試料を、予め緩衝液Aで平衡化したヘパリン−セファロースCL−6Bを充填したカラムに適用した。非結合タンパク質を溶出後、カラムを緩衝液A:緩衝液B(60:40v/v)の混合物の2.5カラム体積で洗浄した。緩衝液Bは50mMのTris−HCl、1MのNaCl、pH7.5から構成された。最後に、LGBPを緩衝液A:緩衝液B(30:70v/v)の5カラム体積で溶出させた。クロマトグラフィ工程を1ml/分の流速で実施し、タンパク質画分を280nmで検出した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8