【実施例】
【0030】
次に、本発明の作用効果を、実施例及び比較例に基づいて説明する。
【0031】
実施例は、試験片の表面(沸騰表面)に、上記実施形態と同様にアークワイヤー溶射加工によってAlの金属皮膜を膜厚250μm程度形成した。
【0032】
比較例は、試験片の表面(沸騰表面)に、ウィック加工を施した。このウィック加工は、本件出願人が、市販している従来の冷却ロールと同じウィック加工である。
【0033】
実施例及び比較例の試験片の沸騰伝熱係数を、
図4に示される冷却ロールを模擬した試験装置によって測定した。
【0034】
図4において、10は沸騰容器、11は試験片、12は凝縮器、13は作動液用の熱電対、14はヒータ、15は試験片用の熱電対、16は作動液である。作動液16は、R−123の代替フロンを使用し、次のような手順でそれぞれ測定行った。
【0035】
沸騰容器10内を真空状態とし、作動液16を30〜60ml封入する。ヒータ14で試験片11をその裏面側から加熱し、試験片11の沸騰表面から作動液16を沸騰させて蒸発させながら、沸騰容器10内の圧力を正圧まで上昇させ、沸騰容器10の上部に溜まった不凝縮ガスを抜いて、沸騰容器10内を密閉する。
【0036】
その後、冷却水を循環させ、平衡状態になったところで、冷却水の入口、出口及び試験片11の温度を測定した。作動液16の深さは沸騰状態で約15mmとした。
【0037】
沸騰伝熱係数は、熱流束(ヒートフラックス)に対する沸騰伝熱係数であり、試験片11の沸騰表面の温度は、各点に設置した熱電対15の温度差により求めた。熱流束(ヒートフラックス)及び沸騰伝熱係数は以下の式(1)(2)を使用して求めた。
【0038】
q=V×Cpw×ρw×(Tw´−Tw)/A …(1)
hb=q÷(Ts−Tl) …(2)
なお、上記式(1)(2)において、qは熱流束[kcal/m
2h]、Vは冷却水量「m
3/h」、Cpwは冷却水の比熱[kcal/kg℃]、ρwは冷却水の密度[kg/m
3]、Tw´は冷却水の出口温度[℃]、Twは冷却水の入口温度[℃]、Aは作動液の沸騰伝熱面積[m
2]、hbは作動液の沸騰伝熱係数[kcal/m
2h℃]、Tsは沸騰表面温度[℃]、Tlは作動液温度[℃]である。
【0039】
上記手順により測定した結果を
図5に示す。
図5において、実線は実施例を、破線は比較例をそれぞれ示している。
【0040】
図5に示すように、実施例の試験片の沸騰伝熱係数が、比較例の試験片の沸騰伝熱係数を上回っている。
【0041】
このように、表面にアークワイヤー溶射加工によってAlの金属皮膜を膜厚250μm程度形成した実施例の試験片は、表面に、本件出願人が市販している従来の冷却ロールと同じウィック加工を施した比較例の試験片に比べて、沸騰伝熱係数が向上し、冷却効率が向上していることが分る。
【0042】
更に、試験用ロールとして、実施例及び比較例の冷却ロールを製作し、各冷却ロールについて、沸騰伝熱係数を測定した。
【0043】
実施例の冷却ロールは、円筒体の内周面に、上記実施形態と同様にアークワイヤー溶射加工によってAlの金属皮膜を膜厚250μm程度形成した。
【0044】
比較例の冷却ロールは、円筒体の内周面に、ウィック加工を施した。このウィック加工は、本件出願人が、市販している従来の冷却ロールと同じウィック加工である。
【0045】
実施例及び比較例の冷却ロールの沸騰伝熱係数を、2種類の作動液である代替フロンR−124,R−134aをそれぞれ用いて、
図6に示される試験設備で沸騰伝熱係数を測定した。
【0046】
図6において、30は実施例または比較例の冷却ロールである試験用ロール、31,32は試験用ロール30への冷却水の入口及び出口の温度をそれぞれ計測する第1,第2温度計、33は冷却水の流量を計測する流量計、34は冷却水ポンプ、35は試験用ロール30を回転駆動するモータ、37〜41は試験用ロール30の表面温度を、その軸線方向(
図6の左右方向)に沿う異なる位置でそれぞれ計測する第1〜第5表面温度計である。
【0047】
試験用ロール30は、
図7に示す加熱ヒータ36によって後述のように加熱される。この加熱ヒータ36及び上記モータ35は、
図6の制御盤42によって制御される。
【0048】
この試験設備において、モータ35によって、試験用ロール30を、64rpmで回転させ、冷却水ポンプ34によって、冷却水を、21.5m
3/hの流量で試験用ロール30内に循環させ、加熱ヒータ36によって試験用ロール30の外面を加熱する。その後、平衡状態となったところで、冷却水の入口温度及び出口温度を、第1,第2温度計31,32でそれぞれ計測した。試験用ロール30の表面温度は、第1〜第5表面温度計37〜41でそれぞれ計測し、それらの平均値とした。
【0049】
試験設備で得られた計測値に基づいて、熱流束(ヒートフラックス)及び沸騰伝熱係数を、下記の式(3)〜(7)を使用して求めた。
【0050】
H=V×(T
2−T
1)×ρw×Cpw ・・・・・・(3)
θm=[(T
0−T
1)−(T
0−T
2)]/ln[(T
0−T
1)/(T
0−T
2)] ・・・・・・(4)
U=H/(Ao×θm) ・・・・・・(5)
q=H/Ao ・・・・・・(6)
1/U=Ao/(Ai×h)+Rt ・・・・・・(7)
上記式(3)〜(7)において、T
2は冷却水の出口温度[℃]、T
1は冷却水の入口温度[℃]、T
0はロール表面温度の平均値[℃]、Uは総括伝熱係数[kcal/m
2h℃]、Aoはロール外面の伝熱面積[m
2]、Aiはロール内面の伝熱面積[m
2]、hは沸騰伝熱係数[kcal/m
2h℃]、Rtは沸騰を除いたロールの伝熱抵抗の合計であり、q、V、ρw、Cpwは、上記
図4における上記式(1)の説明と同様である。
【0051】
上記式(3)〜(5)にて、総括伝熱係数Uを算出し、上記式(7)で逆算することにより、沸騰伝熱係数hを算出した。式(7)で算出された沸騰伝熱係数hと、式(6)の熱流束qにて、
図8、
図9を作図した。
【0052】
図8は作動液がR−124の場合であり、
図9は作動液がR−134aの場合である。いずれも、実線は実施例を、破線は比較例をそれぞれ示している。
【0053】
図8及び
図9に示すように、いずれの作動液についても、実施例の試験用ロールの沸騰伝熱係数が、比較例の試験用ロールの沸騰伝熱係数を上回っており、冷却効率が向上していることが分る。