(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カキ肉をエキス抽出用液体内に収納し、カキ肉からカキ肉エキスを抽出して前記エキス抽出用液体内に送り出し、該カキ肉エキスが抽出された抽出液を撹拌して沈殿物と上澄み液とに分離し、前記沈殿物からはカキ肉エキス第1成分物質を取り出し、前記上澄み液からはカキ肉エキス第2成分物質を取り出してなり、
前記取り出したカキ肉エキス第1成分物質及びカキ肉エキス第2成分物質をゲル化剤溶液に含有させてカキ肉エキス入りゼリーを製造する、
ことを特徴とするカキ肉エキス入りゼリーの製造方法。
カキ肉をエキス抽出用液体内に収納し、カキ肉からカキ肉エキスを抽出して前記エキス抽出用液体内に送り出し、該カキ肉エキスが抽出された抽出液を濃縮し、濃縮後にエタノールを加え、該濃縮後エタノールを加えた抽出液を撹拌して沈殿物と上澄み液とに分離し、前記沈殿物からはカキ肉エキス第1成分物質を取り出し、前記上澄み液からはカキ肉エキス第2成分物質を取り出してなり、
前記取り出したカキ肉エキス第1成分物質及びカキ肉エキス第2成分物質をゲル化剤溶液に含有させてカキ肉エキス入りゼリーを製造する、
ことを特徴とするカキ肉エキス入りゼリーの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、カキ肉のエキス入り健康補助食品は、有益物質を多く含んだ極めて優れた製品であるとの認識度は日増しに高まっている。
【0003】
そして、現在では例えば多種多様な抽出法によって抽出されたカキ肉エキスに関する健康補助食品などが販売されるに至っている(特開平10−136946号公報)。
【0004】
特に、摂取不足が問題となっているミネラル成分中でもタウリン、亜鉛、セレンは人間にとって必要不可欠な微量元素であるが、失われやすく、そのため日常習慣的な適量摂取が望まれている。
【0005】
また、糖尿病は、血糖を低下させるホルモン「インスリン」の働きが弱まったり、インスリンが不足して血液中の糖分が異常に高くなる病気であるが、このインスリンが行う「血糖低下の働き」を助けているのが、亜鉛・セレンなどのミネラルである。
これらのミネラルは「インスリン作用を持つ」といわれるように、実際に糖尿病患者にこれらのミネラルを補給すると、血糖値が低下することが認められている。そしてこれら有効成分はカキ肉に多く含有されているのである。
【0006】
従って、前記有効成分を多量に含有するカキ肉のエキスの抽出に際しては、現代人の体に必要な亜鉛・セレンなどの体に優しいミネラルやビタミン、タウリン、グリコーゲン、蛋白質といった有益な物質を豊富にバランス良く含有したカキ肉エキスを効率よく抽出し、良好なカキ肉エキスを製造することが望まれ、それらの要望に沿ったカキ肉エキスの抽出製造法を本発明者は次々と発明し、特許取得してきた経緯がある。
【0007】
ところで、近年では、カキ肉にはいわゆる高い抗酸化性能を有する抗酸化物質をも多く含有していることが確認されてきており、そのことがにわかに注目を浴びることとなった。そして、本件発明者においても、本件発明者の各種研究や実験を通して前記のことを益々明確化しており、とくに高い抗酸化力を有する抗酸化物質をより多く含有したカキ肉エキスの製造方法の開発が強く要望されるに至ったのである。
【0008】
特に、本件発明者は近年、前記高い抗酸化力を持つ抗酸化物質を多く含むカキ肉部位に関する研究や高い抗酸化力を持つ抗酸化物質を多く含有するエキス抽出法の研究を行ってきており、高い抗酸化力を持つ抗酸化物質を多く含有でき、カキ肉抽出物を効率よく採取できる、すなわち高い抗酸化力を持つ抗酸化物質を多量に含有したカキ肉エキスを最適な方法で抽出でき、製造できる製造方法の発明創作活動を続けてきている。
【0009】
いわゆる活性酸素の生成は、好気性の生活に起因し、脂質、タンパク質、核酸の酸化を生じ、細胞に障害を与える。通常、生体の酸化レベルは活性酸素産生系と抗酸化物質による消去系のバランスでほぼ一定に保たれているが、薬物、放射線、虚血などの様々な要因によりこのバランスが崩れ、活性酸素産生系へ傾くのが酸化ストレスといわれている。
【0010】
この酸化ストレスの蓄積が、がん、動脈硬化性疾患、虚血/再灌流障害、慢性関節リウマチ、糖尿病、アルツハイマー病やパーキンソン病の神経障害などの様々な疾患や老化の一因であると考えられている。
【0011】
カキ、たとえばマガキ(Crassostreagigas)はウグイスガイ目イタボガキ科に属する二枚貝で、その生息地は日本を初めとして東アジア全域に及んでいる。近年では、フランスやオーストラリアでもマガキが養殖されており、世界で最も食用に供されるカキとして名高い。カキは、栄養価が高いことから古代より食用にされてきたが、前述したとおりカキ肉から抽出したカキ肉エキスには、グリコーゲンやタンパク質のほか、カルシウム、亜鉛、セレニウム、銅、マンガンなどのミネラルを多量に含むほかさらには前記高い抗酸化力を持つ抗酸化物質をも多量に含有しているのである。
【0012】
ここで、カキ肉に含まれている各種有効成分について考察してみると、カキ肉から抽出した有効成分、前記の亜鉛、セレンあるいは各種ビタミン類は、カキ肉抽出液を沈殿物と上澄み液とに分離してカキ肉エキスを抽出するする公知のカキ肉エキスの抽出方法において、沈殿物側に多く含まれていることが確認されている。
【0013】
また、前述した抗酸化物質あるいはタウリンなどは前記の沈殿物側ではなく、上方にある上澄み液内に多く含まれていることが確認されている。
【0014】
従来、前記の沈殿物は、乾燥させた後に乾燥したパウダー状となり、それを錠剤に加工して健康食品としていた。
【0015】
しかしながら、前記上澄み液内に存する有効成分、例えば抗酸化物質などを含む上澄み液は、それを濃縮した後、乾燥させようとしても乾燥させることは非常に困難であり、内部に湿気を有するペースト状になってしまっていた。
【0016】
従って、上澄み液から生成した有効成分を含む物質は、錠剤にすることができないものであった。
【0017】
よって、例えば、ペースト状に生成されたカキ肉エキスを瓶詰めにし、それをスプーンなどで取り出し、白湯などに溶かして健康飲料として飲料しているのが実際であった。
【0018】
従って、カキ肉エキスの沈殿物から取得された有効成分と上澄み液から取得された有効成分とを同時に摂取したい場合には、錠剤と、例えば白湯に溶かしたドリンクを一緒に摂取しなければならないとの課題があった。
近年では前記の沈殿物から多く採取される第1成分物質と上澄み液から多く採取される第2成分物質を多く含んだ健康食品を一緒に一括して採れないかとの要請が招来するに至ったのである。
【0019】
さらに、前記沈殿物側に多く存するカキ肉エキスについても、あるいは上澄み液側に多く存するカキ肉エキスについても、それをゲル化剤に含有してゼリーが製造できれば、特に嚥下、咀嚼の困難者についても摂取しやすくなり、もって摂取の幅が広がるとの要請も多く聞かれることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施例を説明する。
【0026】
まず、水溶液1が貯留された抽出容器2内にカキ肉エキスを抽出すべくカキ肉3を投入する。
【0027】
ここで、抽出に使用する前記水溶液1の種類については何ら限定されるものではないが、一般的な水を使用して構わない。また、この水の温度についても何ら限定されず、常温状態の水でもかまわないし、30℃ないし50℃程度の温水でもかまわない。さらに、50℃以上の熱水でもかまわない。また、前記水にエタノール5を混入してエタノール溶液を使用することもある。エタノールを混入することでカキ肉エキスのエタノール溶液内抽出が促進できる。
【0028】
抽出に際しては、前記抽出容器2内を常圧にして行う場合もあるし、抽出容器2内を密閉し、1気圧以下に減圧したり、1気圧以上に加圧したりする場合もある。
【0029】
高抗酸化力を有する、すなわち後述するORAC値の高い抗酸化物質を多量に含有する抽出法を検討、選択するためである。
【0030】
次に、所定時間、たとえば数時間の抽出時間経過後、前記抽出容器2内からカキ肉3を取り出し、取り出した後に、抽出容器2内の抽出された抽出液を濃縮し、まず第1の濃縮液4を生成する。
【0031】
この第1の濃縮液4の濃縮方法についても、各種の濃縮方法が存するが、本発明では何ら限定されるものではなく、いかなる濃縮方法でもかまわない。いわゆる低温加熱濃縮方法、減圧加熱濃縮方法でも、あるいは高温加熱濃縮方法でもかまわないものである。
【0032】
また、第1の濃縮液4についての濃縮の割合についても何ら限定されるものではなく、3分の1に濃縮する場合でも2分の1に濃縮する場合でもかまわない。
【0033】
次に、前記第1の濃縮液4にエタノール濃度が30%乃至90%程度になるよう、好ましくはエタノール濃度が70%になるようエタノール5を加え、その結果、加えられたエタノール5によって薄められた第1の濃縮液4を撹拌し、沈殿物6と第1の上澄み液7とに分離する。
【0034】
この分離方法についても、何ら限定されるものではないが、自然沈殿による自然分離法では撹拌した後、所定時間そのままの状態で待機し、自然に沈殿物6が沈殿するのを待つ。
ついで、前記沈殿物6を取り出し、ペースト状をなす沈殿物を乾燥させる。乾燥後、沈殿物6は、乾燥したパウダーとなる。最終的にこれを固形化し、健康食品などの錠剤となすのである。
【0035】
ところで、この段階での沈殿物6及び第1の上澄み液7のORAC値(抗酸化能力、活性酸素吸収能力を示す値)を測定してみると、沈殿物6の1g当たりのORAC値は、12.32μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムでしかなかった。
【0036】
また、第1の上澄み液7の1g当たりのORAC値は、66μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムであった。
【0037】
このように、後述する遠心分離する前の、特に沈殿物6の中には、高いORAC値を有する抗酸化物質が分離されていないことが理解され、さらに、第1の上澄み液7の中にも、高い値のORAC値を有する抗酸化物質が分離されて入っていないことが理解される。そして、沈殿物と上澄み液にはカキ肉エキスの異なる有効成分がいずれかにより多く含まれていることが理解できるのである。
【0038】
しかしながら、前記第1の上澄み液7を繰り返し、遠心分離、振盪、遠心分離などの工程を経ることにより、第2、第3、第4の上澄み液などを生成すると、該第2、第3、第4の上澄み液内などにORAC値の高い抗酸化物質を取り出すことが出来たのである。
【0039】
すなわち、前記第1の上澄み液7を取り出した後、これを連続遠心分離機などで遠心分離し、沈殿物6と第2の上澄み液8とに分離する。
【0040】
第2の上澄み液8を取り出した後、高いORAC値を有する抗酸化物質を含むカキ肉エキスの生成までを
図2及び
図3に示すフローチャートにより説明する。
【0041】
まず、第1の上澄み液7を遠心分離し(
図1参照)、もって沈殿物6と第2の上澄み液8とが分離した後、この第2の上澄み液8のみを取り出す(ステップ100)。
【0042】
なお、前記のエタノール5が加えられ、所定のエタノール濃度、例えばエタノール濃度70%に薄められた第1の濃縮液4については、それをはじめから連続遠心分離機に入れ、連続的に遠心分離することにより、上記沈殿物6と第1の上澄み液7とを連続的に分離し、もって大量に第1の上澄み液7を取得するよう構成してもかまわない。
【0043】
上記のようにして取得した第2の上澄み液8、例えばその量が600gであれば、この600gを濃縮し、含水率が略30%程度となる様に第2の濃縮液20を生成する(ステップ102)。
【0044】
ここで、この第2の濃縮液20の濃縮作業は、例えばロータリーエバポレータ又は減圧濃縮ニーダーなどで行うことが考えられるが、これに限定されるものではない。
【0045】
上記の濃縮作業により、第2の濃縮液20は、含水率が略30%程度となる様に濃縮され、生成された第2の濃縮液20の量は、600gから略157gとなった。そして、この際の含水率を測定したところ、含水率は33.3%程度であった。
【0046】
ここで、上記157gの第2の濃縮液20について、そのORAC値を測定した。すると、この段階であっても、そのORAC値は、290μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムとの極めて高い数値を示した。前述のように、第1の上澄み液7の1g当たりのORAC値は、66μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムでしかなかったのにである。
【0047】
次いで、この第2の濃縮液20の157gについて、エタノール濃度が溶液全体として例えば略80%程度になるよう、例えば99.99%純度のエタノール240gを加え、エタノール濃度が略80%程度の濃度となったエタノール溶液を生成する。
【0048】
すなわち、前記の第2の濃縮液20の量、157gからこのエタノール5がくわえられた溶液量として397gを生成する(ステップ104)。
【0049】
そして、このエタノール5が加えられ、エタノール濃度が略80%とされた溶液の量397gをいわゆる振盪容器(例えば濃縮用フラスコ)に入れ、該振盪容器を激しく振盪した(ステップ106)。
【0050】
ここで、当該振盪時間及び振盪回数については、何ら制限されるものではないが、手動で行う場合には、少なくとも数十回程度、例えば上下方向に強く振盪することが考えられる。
【0051】
前記振盪容器を例えば上下方向に激しく振ることにより、高い抗酸化力を持つ、すなわち、より高いORAC値の抗酸化物質を、水(比誘電率 80)より極性の低いエタノール溶液(比誘電率 24)側へ移行促進出来ると考えられる。また、高いORAC値を有する抗酸化物質の阻害物質を水側へ移行、離脱させるのを促進させるとも考えられる。
【0052】
すなわち、前記振盪容器の中で、エタノール濃度が略80%程度とされた溶液から、極性の低いエタノール部分21と極性の高い水の部分22とに上下方向に明確に分離される。
【0053】
図2のステップ108に示す様に、例えば分液ロート16の上の部分に極性の低いエタノール部分21が、そして容器の下の部分にエタノールに対して極性の高い水の部分22が移行して分離するのである。
【0054】
そして、上層に分かれる溶液は、下層の溶液に比べて、その密度、比重が小さいため、上層側に移動して分離することになる。
【0055】
ここで、上層側に分離した第3の上澄み液10は、250g、そして下層側に分離した下層分離液(沈殿物)9は、147gとなった。
【0056】
なお、有機溶媒の極性、密度、比重について説明すると、有機溶媒につき、極性の高さと密度、比重の大きさに比例関係はないと考えられるが、一般的に、抽出の際に用いられる溶媒としての水を例にとって考えると、水は極性が比較的高い溶媒であり(前述したように、比誘電率80:なお比誘電率の値は極性の高低の指標とされている)、一方、基本的に水より極性が低い、エタノール(比誘電率24)に代表されるアルコールなどの有機溶媒は、前記水に比較して密度、比重が小さいため、水よりも上層に移行して分かれることとなる。
【0057】
すなわち、抽出の際などでは、水よりも極性が低い溶媒、例えばエタノールは、下層の溶媒(水)に比べて密度、比重が小さいため、水の上層へと移行して分離されることになるのである。
【0058】
なお、極性は分子内の電気的な偏りを基準に高低が示されているものであり、水は電気的偏り、換言すれば、比誘電率が80と大きく、もって極性が高い溶媒とされる。前述したように、比誘電率の値は、極性の高低の指標とされるのである。
【0059】
ここで、上記上層に移行して分離したエタノールを含む第3の上澄み液10を濃縮し、ペースト状にする。なお、該ペースト状にした際の含水率は、35.2%であった。なお、前記含水率は略40%ないし略10%の間が好ましいと考えられる。
【0060】
そして、この含水率35.2%の濃縮されたペースト状をなす第3の上澄み液10につき、1g当たりのORAC値を測定してみると、377μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムとの極めて高いORAC値を得たのである。
【0061】
さらに、377μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムのうち、370μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムが、親水性の抗酸化力を示すORAC値であり、7μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムが、親油性の抗酸化力を示すORAC値であった。
【0062】
よって、これにより、含水率35.2%の濃縮されたペースト状をなす第3の上澄み液10内には、親水性の抗酸化物質のみならず、親油性の抗酸化物質あるいは両親媒性の抗酸化物質をも含有されていることが推測できるものとなる。
【0063】
さらに、
図3に示す様に前記第3の上澄み液10として取得された250gを、さらに連続遠心分離機24などで第4の上澄み液26と沈殿物11とに遠心分離する(ステップ110、ステップ112))。
【0064】
この遠心分離作業により、高い抗酸化力を持つ、すなわちより高いORAC値の抗酸化物質を、第4の上澄み液26側へさらに移行させるのを促進出来ると考えられる。また、高いORAC値を有する抗酸化物質の阻害物質を沈殿物11側へさらに移行、離脱促進できるとも考えられる。
【0065】
次いで、前記のように分離し、取得した第4の上澄み液26(ステップ112)を例えばロータリーエバポレータ又は減圧濃縮ニーダーなどで濃縮する(ステップ114)。
【0066】
そして、含水率34.6%程度のペーストをなす第4の上澄み液26の濃縮液を生成する。なお、この際の含水率も略10%ないし略40%の範囲が好ましい。
【0067】
そして、その第4の上澄み液26の濃縮液の1gあたりのORAC値を計測すると(ステップ116)、ORAC値として389μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムとのさらに極めて高いORAC値を得たのである。
【0068】
さらに、389μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムのうち、380μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムが、親水性の抗酸化力を示すORAC値であり、9μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムが、親油性の抗酸化力を示すORAC値であった。
【0069】
よって、この含水率34.6%程度のペーストをなす第4の上澄み液26内においても、親水性の抗酸化物質のみならず、親油性の抗酸化物質あるいは両親媒性の抗酸化物質が多く含有されていることが推測できるのである。
【0070】
ここで、前記遠心分離機24による遠心分離作業につき説明する。
【0071】
例えば、第3の上澄み液10を
図4に示す連続遠心分離機24の注入パイプ25から連続遠心分離機24内に連続的に注入できるように構成する。
【0072】
ここで、連続遠心分離機24内に所定の量の第3の上澄み液10の注入が確認され、連続遠心分離機24が稼働して、いわゆる沈殿物11と第4の上澄み液26とに連続的に分離されるものとなる。
【0073】
図4から理解されるように、収納タンク12の外周側壁13側に遠心力によって集められるのがいわゆる沈殿物11であり、それ以外、収納タンク12の上方から送出パイプ14を介して外部へ送出されるのが、いわゆる第4の上澄み液26である。
【0074】
本発明では、この第4の上澄み液26内に、極めて高い抗酸化力を有する、高いORAC値を有する親水性のみならず、親油性あるいは両親媒性抗酸化物質の含有が確認できたこと前述の通りである。
【0075】
なお、ORAC法の測定原理について若干説明すると、まず、一定の活性酸素種を発生させ、それによって分解される蛍光強度を測定し、経時的に減少する蛍光強度の曲線を描いた場合、この反応系に抗酸化物質が共存すると蛍光物質の蛍光強度の減少速度が遅延する。よって、この原理により抗酸化物質の存在が確認できるものとなるのである。
【0076】
上記の原理に基づき、
図5を参照して説明すると、検体もしくは標準物質存在下での蛍光強度の曲線下面積(AUC: Area Under the Curve)と、非存在下(ブランク)でのAUCとの差(net AUC)を算出し、前記検体のnet AUCについて、濃度既知の標準物質(Trolox)のnet AUCに対する相対値を求める。その相対値を基にTrolox濃度に換算して検体の抗酸化力とするのである(単位 μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラム)。
【0077】
すなわち、ORAC法では、まず、試料溶液、又は標準溶液(Trolox)に蛍光プローブ(Fluorescein)を添加し、ラジカル開始剤としてAAPH(2,2’-Azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride)を用いて活性酸素を発生させると、活性酸素によりFluoresceinが酸化される。
【0078】
Fluoresceinの酸化物は蛍光を有しないため、蛍光強度が経時的に減少する。試料が抗酸化力を有する場合、抗酸化物質により活性酸素が消去されFluoresceinの酸化が抑制されるため、抗酸化物質が存在しない場合(ブランク)に対してFluoresceinの蛍光強度が持続し、減少速度が遅延する。
【0079】
試料、又はTroloxとブランクの蛍光強度を縦軸、測定時間を横軸にプロットし、試料溶液、又はTroloxの蛍光強度の曲線下面積(Area Under the Curve;AUCsample、又はAUCTrolox)とブランクの曲線下面積(AUCblank)の差、即ち斜線部分の面積を算出し(それぞれをnetAUCsample、netAUCTroloxという)、標準物質のnetAUCTroloxから試料のnetAUCsampleに相当するTrolox濃度を求め、たとえば、試料1g当りのTroloxのマイクロモル数としてORAC値を算出するのである。
【0080】
従って、ORAC値の単位としては、μmole TE/g(TE:Trolox Equivalent)などが使用されることになる。
【0081】
なお、ここで、ORAC値は抗酸化力を標準物質(Trolox)の量に換算して表現するものであり、特定の抗酸化物質量を示す値ではないことに注意しなければならない。しかしながら、ORAC値が高い数値の場合には、たとえば、そのカキ肉エキスには抗酸化力が高い抗酸化物質が含有されていることが分かるのである。
【0082】
しかして、前記連続分離した本実施例において、前記第4の上澄み液26についてのORAC値を検出してみると、前述したように、389μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムとの極めて高いORAC値を得たのである。
【0083】
さらに、389μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムのうち、380μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムが、親水性の抗酸化力を示すORAC値であり、9μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムが、親油性の抗酸化力を示すORAC値であった。
【0084】
よって、この含水率34.6%程度のペーストをなす第4の上澄み液26中には、親水性の抗酸化物質のみならず、親油性の抗酸化物質あるいは両親媒性の抗酸化物質がきわめて多く含有されていることが推測できることすでに述べたとおりである。
【0085】
米国ORAC社では、各種の食品のORAC値をデータベース化している。そのグラフを
図6に示す。この
図6から理解されるように、米国ORAC社が数値の高いと認めるブルーベリーでさえ、そのORAC値は65.2μmole TE/gである。
【0086】
これに対し、本実施例における含水率34.6%程度のペースト状をなす第4の上澄み液26の1g中にはこれより約5倍以上の高い抗酸化力を有するとされる数値、389μmol TE/g:マイクロモルTrolox当量/グラムのORAC値を持つ抗酸化物質が含有されていることが分かる。
【0087】
なお、ステップ114で濃縮した第4の上澄み液26に再度エタノールを添加し(ステップ118)、本発明での連続遠心分離機24で繰り返し遠心分離を行っていけば、さらに第4の上澄み液26を分離することが出来、分離後にペースト状に濃縮した、例えば第5の上澄み液あるいは第6の上澄み液には、さらにきわめて高いORAC値を有する抗酸化物質を収集できることになる。
【0088】
以上、沈殿物と上澄み液内にはカキ肉エキスの異なる有効成分がそれぞれより多く含まれていることを説明したが、本発明では、その異なるカキ肉エキスの有効成分をより摂取しやすいゼリーとして製造したのである。すなわち、従来、沈殿物側に存するカキ肉エキスの有効成分は錠剤として摂取し、上澄み液側に存するカキ肉エキスの有効成分は、白湯などに溶いて摂取していたが、これをゼリー内に一緒に包含し、双方の有効成分を同時に、より多く摂取できるものとしたのである。
【0089】
なお、前述したように、上澄み液は、何回か連続遠心分離機によって遠心分離し、第2、あるいは第3の上澄み液を生成すれば、より抗酸化値の高い、すなわち、よりORAC値の高い抗酸化物質を生成できるが、この第2、第3の上澄み液から生成したカキ肉エキスをゼリー製造に使用することが好ましいものである。
(カキ肉エキス入りゼリーの製造方法)
【0090】
(1)まず、ゼリーを生成するためのゲル化剤につき説明すると、食品添加用のゲル化剤としては、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチンなどが挙げられる。
図7から理解されるように、前記のゲル化剤にはそれぞれ特徴がある。
本発明においてはいずれのゲル化剤を使用しても構わないし、それらを混合して使用しても構わないものである。またこれ以外のゲル化剤を使用しても構わない。
【0091】
(2)
図8、
図9にゲル化剤として寒天を使用した場合のカキ肉エキス入りゼリーの製造例を示す。
まず、寒天溶液を生成する。寒天溶液の生成に際して、水と寒天の割合は、例えば100mlの水に対して1gの寒天の割合で生成することなどが挙げられる。
ここでは、一例として、容器内の80℃のお湯50mlに対して0.5gの寒天を容器内に入れた。
なお、水温を80℃にしたが、この温度に限定されるものではない。
【0092】
(3)次いで、出来上がった寒天溶液は、例えば各々50 mlチューブごとに分けて入れ、複数本の寒天溶液入り50 mlチューブを形成するものとする。
次いで、この寒天溶液内に前述したカキ肉エキス第1成分物質、すなわち、沈殿物側に多く存するカキ肉エキスの有効成分、例えばグリコーゲンやタンパク質のほか、カルシウム、亜鉛、セレニウム、銅、マンガンなどのミネラルなど及び/またはカキ肉エキス第2成分物質、すなわち、上澄み液側に多く存するカキ肉エキスの有効成分、例えばORAC値の高い抗酸化物質やタウリンなどを入れ、寒天溶液と混ぜ合わせる。
【0093】
さらに、この複数本の50mlチューブを、例えば80℃に設定した恒温槽に入れて、温めながら、さらに寒天溶液と前記カキ肉エキスの成分を混ぜ合わせるのである。
【0094】
この際、50mlチューブ内には、
図8、
図9に示すように、
図8のNo.1では、寒天溶液が2ml、沈殿物側に多く存するカキ肉エキス第1成分物質が3g(6粒分)総量5gの場合、No.2では、寒天溶液が7ml、沈殿物側に多く存するカキ肉エキス第1成分物質が3g(6粒分)総量10gの場合、No.3では、寒天溶液が4ml、沈殿物側に多く存するカキ肉エキス第1成分物質が6g(12粒分)、総量10gの場合、No.4では、寒天溶液が9ml、沈殿物側に多く存するカキ肉エキス第1成分物質が6g(12粒分)、総量15gの場合、No.5では、寒天溶液が14ml、沈殿物側に多く存するカキ肉エキス第1成分物質が6g(12粒分)、総量20gの場合につき、それぞれ生成し、ゼリーの状態を観察、比較した。
【0095】
すると、1回に摂取するカキ肉エキス成分物質の通常量を、3g(6粒分)としたとき、該カキ肉エキス成分物質を混合する最小限度のゲル化剤溶液7ml(7g)とし、その総量をすくなくとも10gにすると、しっかりと固まり、ぷるぷるとしていることが確認できた。
【0096】
また、1回に摂取するカキ肉エキス成分物質の通常量を、6g(12粒分)としたときは、該カキ肉エキス成分物質を混合する最小限度のゲル化剤溶液14ml(14g)とし、その総量をすくなくとも20gにしなければ、しっかりと固まらないことが確認できた。
【0097】
次に、No.6に示すように、寒天溶液が3ml、上澄み液側に多く存するカキ肉エキス第2成分物質が2g、総量5gの場合、No.7に示すように、寒天溶液が8ml、上澄み液側に多く存するカキ肉エキス第2成分物質が2g、総量10gの場合、また、No.8に示すように、寒天溶液が18ml、上澄み液側に多く存するカキ肉エキス第2成分物質が2g、総量20gの場合につき、それぞれ生成し、ゼリーの状態を観察、比較した。
【0098】
すると、1回に摂取するカキ肉エキス成分物質の通常量を2gとしたとき、該カキ肉エキス成分物質を混合する最小限度のゲル化剤溶液8ml(8g)とし、その総量をすくなくとも10gにしないと、しっかりと固まり、ぷるぷるとしないことが確認できたのである。
【0099】
さらに、
図9に示すように、No.9では,寒天溶液が2.5ml、カキ肉エキス第1成分物質が1.5g(3粒分)、さらに、カキ肉エキス第2成分物質が1g、総量5gの場合、No.10では、寒天溶液が7.5ml、カキ肉エキス第1成分物質が1.5g(3粒分)、カキ肉エキス第2成分物質が1g、総量10gの場合、さらに、No.11では、寒天溶液が17.5ml、カキ肉エキス第1成分物質が1.5g(3粒分)、カキ肉エキス第2成分物質が1g、総量20gの場合について、それぞれ生成し、ゼリーの状態を観察、比較した。
【0100】
その結果、少なくとも寒天溶液が7.5ml、カキ肉エキス第1成分物質が1.5g(3粒分)、カキ肉エキス第2成分物質が1g、総量10gの場合に、生成したカキ肉エキス入りゼリーがしっかりと固まり、ぷるぷるしていることが確認できた。
なお、上記の製造例においてゲル化開始温度は、
図7に示されているように、30℃乃至40℃、ゲル化完了までは、4℃で4時間冷蔵庫で保管した。
【0101】
上記により、少なくとも総量10gのゼリー生成に当たってはその中にカキ肉エキスの成分物質が3g、総量20gのゼリー生成に当たってはその中にカキ肉エキスの成分物質が6g以内であれば、しっかりと固まったゼリーが生成できるものとなった。
【0102】
そして、このゼリーを密閉包装することにより、賞味期限を長く保つことができる。
【0103】
さらに、このカキ肉エキス入りゼリーであれば、嚥下、咀嚼の困難なお年寄りや子供にもきわめて簡単に、かつ豊富にカキ肉エキスの有効成分を摂取することができるものとなった。