【実施例1】
【0020】
図1〜9は本実施例における完成された外壁材取付金具1、
図13〜16はこの外壁材取付金具1を用いた建築物の出隅部における外壁材2の取付作業および取付構造を示している。外壁材取付金具1は、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム合金板等からなる1枚の素材金属板をプレス加工により成形してなり、該取付金具1の大部分は直角に屈曲した屈曲絞り加工部3により構成されている。
図2は、屈曲絞り加工部3の範囲を明確にするため、該屈曲絞り加工部3に網線を施した図である。
【0021】
前記屈曲絞り加工部3は、後で詳しく説明するように、まずプレス絞り加工により一方向に隆起された後、プレス曲げ加工により直角に屈曲されて形成されており、第一の部分3aと第二の部分3bとを互いに連続して有している。前記第一の部分3aは、互いに直角をなす第一の面4aおよび第二の面4b(
図14および16参照)を有する建築物の出隅部において、取付金具1が建物躯体5に直接または下地材6を介して取り付けられた際(
図13〜16参照)、第一の面4a側において建物躯体5と反対方向となる方向に隆起されている一方、第二の部分3bは第二の面4b側において建物躯体5と反対方向となる方向に隆起されている。
【0022】
前記屈曲絞り加工部3の第一の部分3aの頂面は、平面状をなしていて、出隅部の第一の面4a側において外壁材2の裏面に当接される第一の外壁材裏面当接部7aを構成している。屈曲絞り加工部3の前記第二の部分3bの頂面は、平面状をなしていて、出隅部の第二の面4b側において外壁材2の裏面に当接される第二の外壁材裏面当接部7bを構成している。
【0023】
前記屈曲絞り加工部3の第一の部分3aの周囲(第二の部分3bとの隣接部を除く周囲3方)には、第一の縁部8aが形成されており、この第一の縁部8aは全体に一平面上にあり、出隅部の第一の面4a側において建物躯体5に直接または下地材6を介して当接されるようになっている。同様にして、前記屈曲絞り加工部3の第二の部分3bの周囲(第一の部分3aとの隣接部を除く周囲3方)には、第二の縁部8bが形成されており、この第二の縁部8bは全体に一平面上にあり、出隅部の第二の面4b側において建物躯体5に直接または下地材6を介して当接されるようになっている。
【0024】
前記屈曲絞り加工部3の第一の部分3aの上部側部分には、該第一の部分3aに周囲を取り囲まれるようにして、第一の陥没部9aが形成されている。この第一の陥没部9aの底部の裏面は第一の縁部8aの裏面と同一平面上に位置し、出隅部の第一の面4a側において建物躯体5に直接または下地材6を介して当接されるようになっている。そして、第一の陥没部9aの底部には、出隅部の第一の面4a側において取付金具1を建物躯体5に直接または下地材6を介してビス留めするための第一のビス穴10aが設けられている。同様にして、屈曲絞り加工部3の第二の部分3bの上部側部分には、該第二の部分3bに周囲を取り囲まれるようにして、第二の陥没部9bが形成されている。この第二の陥没部9bの底部の裏面は第二の縁部8bの裏面と同一平面上に位置し、出隅部の第二の面4b側において建物躯体5に直接または下地材6を介して当接されるようになっている。そして、第二の陥没部9bの底部には、出隅部の第二の面4b側において取付金具1を建物躯体5に直接または下地材6を介してビス留めするための第二のビス穴10bが設けられている。
【0025】
前記屈曲絞り加工部3の第一の部分3aの下部側部分には、プレス打ち抜きおよび切り起こし加工により、矩形状の第一の窓部11aが形成されている。前記第一の窓部11aの上端側には前記切り起こし加工により、第一の外壁材係合部12aが形成されている。この第一の外壁材係合部12aは、出隅部の第一の面4a側において外壁材2の上下端部に係合されるもので、出隅部の第一の面4a側において建物躯体5と反対方向となる方向に突出する第一の前方突出片13aと、この第一の前方突出片13aの先端部から斜め上方に曲げられた第一の上方折り曲げ片14aと、第一の前方突出片13aの先端部から斜め下方に折り曲げられた第一の下方折り曲げ片15aとを有してなる。
【0026】
同様にして、前記屈曲絞り加工部3の第二の部分3bの下部側部分には、プレス打ち抜きおよび切り起こし加工により、矩形状の第二の窓部11bが形成されている。前記第二の窓部11bの上端側には前記切り起こし加工により、第二の外壁材係合部12bが形成されている。この第二の外壁材係合部12bは、出隅部の第二の面4b側において外壁材2の上下端部に係合されるもので、出隅部の第二の面4b側において建物躯体5と反対方向となる方向に突出する第二の前方突出片13bと、この第二の前方突出片13bの先端部から斜め上方に曲げられた第二の上方折り曲げ片14bと、第二の前方突出片13bの先端部から斜め下方に折り曲げられた第二の下方折り曲げ片15bとを有してなる。
【0027】
前記第一の縁部8aのうちの取付金具1の上端部において横方向に延びる部分の上方には、出隅部の第一の面4a側において建物躯体5と反対方向となる方向に突出する第一の叩き部16aが形成されている。同様にして、前記第二の縁部8bのうちの取付金具1の上端部において横方向に延びる部分の上方には、出隅部の第二の面4b側において建物躯体5と反対方向となる方向に突出する第二の叩き部16bが形成されている。
【0028】
図10〜12は、実施例1の外壁材取付金具1の製造工程において、最終的に取付金具1を直角に折り曲げる前の状態を示している。この状態では、一つの方向にのみ隆起する一方向隆起絞り加工部17がプレス絞り加工により形成されている。本実施例においては、前記一方向隆起絞り加工部17を直角にプレス折り曲げ加工することにより、前に説明した第一の部分3aと第二の部分3bとを互いに連続して有する屈曲した屈曲絞り加工部3を得ている。なお、本実施例では、第一および第二の陥没部9a,9b、第一および第二のビス穴10a,10b、第一および第二の窓部11a,11b、第一および第二の外壁材係合部12a,12b、第一および第二の叩き部16a,16b等の他の部分は、前記一方向隆起絞り加工部17を折り曲げ加工する前に加工している。また、一方向隆起絞り加工部17のうちのプレス折り曲げ加工する部分の上下端部の建物躯体5側の周縁付近には、上端側切欠き18および下端側切欠き19が予め設けられている。
【0029】
次に、この取付金具1による外壁材2の取付作業および取付構造を
図13〜16を用いて説明する。この例では、下地材6を介して建物躯体5に取付金具1を取り付けることとしている。出隅部の第一の面4aおよび第二の面4b側において、各外壁材2の上端部には、その外面側を切り欠くことにより上端側実部20が形成されている一方、外壁材2の下端部(
図15参照)には、その内面側を切り欠くことにより下端側実部21が形成されている。また、出隅部の第一の面4aおよび第二の面4b側において、各外壁材2の下端部には、下端側実部21の内面に接するようにして係合溝22が形成されている。
【0030】
外壁材2を取り付ける際には、まず
図13および14に示されるように、出隅部の第一および第二の面4a,4b側において、取付金具1の第一および第二の外壁材係合部12a,12bの下方折り曲げ片15a,15bおよび前方突出片13a,13bと第一および第二の外壁材裏面当接部7a,7bとの間に下段側の外壁材2の上端側実部20が挿入されるようにして、下段側の外壁材2の上端部に取付金具1の第一および第二の外壁材係合部12a,12bを係合し、取付金具1の第一および第二の外壁材裏面当接部7a,7bのうちの第一および第二の前方突出片13a,13bより下方の部分を下段側の外壁材2の裏面に当接する。本実施例では、取付金具1に第一および第二の叩き部16a,16bが設けられているので、これらの叩き部16a,16bを上方から金槌等で叩くことにより前記係合作業を速やかに行うことができる。
【0031】
次に、出隅部の第一および第二の面4a,4b側において、第一および第二の縁部8a,8bの裏面および陥没部9a,9bの底部を下地材6に当接した状態として、第一および第二のビス穴10a,10bを用いてビス23により、
図15および16に示されるように取付金具1を下地材6にビス留めし、取付金具1を下地材6を介して建物躯体5に取り付ける。これにより、第一および第二の縁部8a,8bの裏面および陥没部9a,9bの底部が下地材6に当接した状態で、取付金具1が下地材6に固定され、ひいてはこの取付金具1を介して下段側の外壁材2の上端部が建物躯体5に取り付けられる。
【0032】
続いて、
図15に示されるように、出隅部の第一および第二の面4a,4b側において、上段側の外壁材2の下端部の係合溝22内に取付金具1の第一および第二の上方折り曲げ片14a,14bを侵入させるとともに、上段側の外壁材2の下端部の係合溝22より裏側の部分を第一および第二の上方折り曲げ片14a,14b、第一および第二の前方突出片13a,13b並びに第一および第二の外壁材裏面当接部7a,7bの間の部分に侵入させ、上段側の外壁材2の下端部が第一および第二の前方突出片13a,13b上に載置されるようにして、上段側の外壁材2の下端部に取付金具1の第一および第二の外壁材係合部12a,12bを係合し、上段側の外壁材2の下端部を下段側の外壁材2の上端部に突き合わせる。なお、前述のように上段側の外壁材2の下端部の係合溝22より裏側の部分を第一および第二の上方折り曲げ片14a,14b、第一および第二の前方突出片13a,13b並びに第一および第二の外壁材裏面当接部7a,7bの間の部分に侵入させる際、上段側の外壁材2は、一時的に、
図15の一点鎖線で示されるように、上端側の方が下端側より建物躯体5との間隔が大きくなるように若干傾けた状態とすることができる。
【0033】
以後、同様にして順次下段側から上段側へと外壁材2を取り付けて行くことにより、出隅部において外壁材2を相じゃくり方式で互いに上下に突き合わせた状態で建物躯体5に取り付けて行くことができる(互いに突き合わされ外壁材2の上下端部間には取付金具1の第一および第二の外壁材係合部12a,12bの前方突出片13a,13bが介在されている状態となる)。
【0034】
このような取付状態において、第一および第二の前方突出片13a,13bは、外壁材2の上下端部に対向ないしは当接され、外壁材2の上下方向の移動を防止する。また、第一および第二の外壁材裏面当接部7a,7bはそれぞれ出隅部の第一および第二の面4a,4b側において外壁材2の裏面に当接され、外壁材2の建物躯体5側への移動を防止するとともに、外壁材2の裏面と下地材6ひいては建物躯体5との間に一定の間隔を確保する。
【0035】
この外壁材取付金具1においては、第一および第二の外壁材裏面当接部7a,7b、第一および第二のビス穴10a,10b並びに第一および第二の外壁材係合部12a,12bを有しているので、建築物の出隅部の第一の面4aと第二の面4bの両方に跨がって取り付けられ、1つの取付金具1で、第一の面4aと第二の面4bの両方において外壁材2を支持することができる。
【0036】
また、出隅部の第一の面4a側において建物躯体5と反対方向となる方向に隆起された第一の部分3aと出隅部の第二の面4b側において建物躯体5と反対方向となる方向に隆起された第二の部分3bとを互いに連続して有する屈曲した屈曲絞り加工部3を有しているので、取付金具1の厚さ方向のサイズを大きくしても取付金具1の剛性・強度を十分な大きさとすることができる。したがって、建物躯体5と外壁材2との間に断熱材を挿入して断熱構造とする場合や、そのように断熱構造とする場合も含めて、建物躯体5と外壁材2との間に十分な厚さの通気層を確保しようとする際に、取付金具1の剛性・強度を低下させることなく、取付金具1の厚さ方向のサイズを十分大きくして、建物躯体5と外壁材2との間に十分大きな間隔を設けることができる。
【0037】
また、互いに角度をなす2つの異なる方向に隆起する2つの部分を互いに連続して有する屈曲絞り加工部3をプレス絞り加工により一度に加工することは困難であるが、この外壁材取付金具1の製造方法においては、まず
図10〜12のように一つの方向にのみ隆起する一方向隆起絞り加工部17をプレス絞り加工により形成してから、この一方向隆起絞り加工部17を直角にプレス折り曲げ加工して屈曲絞り加工部3を形成するので、屈曲絞り加工部3を容易に製造することができる。
【0038】
また、本実施例では、一方向隆起絞り加工部17のうちのプレス折り曲げ加工する部分の上下端部の建物躯体5側の周縁付近に上端側切欠き18および下端側切欠き19を予め設けておくので、前記プレス折り曲げ加工を容易にし、ひいては屈曲絞り加工部3を一層容易に製造できる。
【0039】
なお、
図14および16では1つの外壁材2が互いに直交する2つの部分(出隅部の第一の面4a側の部分と第二の面4b側の部分)を一体的に有しているものとしているが、本発明の外壁材取付金具1は、
図17に示されるように、一方向にのみ延びる2枚の外壁材2をそれぞれ出隅部の第一の面4a側、第二の面4b側に配して互いに組み合わせて建物躯体5に取り付けることもできる。
【実施例2】
【0040】
図18〜26は本発明の実施例2における完成された外壁材取付金具1を示している。本実施例の取付金具1は実施例1の取付金具1と比較すると、厚さ方向のサイズをさらに大きくされるとともに形状を変えられているが、本質的な構成は実施例の取付金具1と同じである(実施例1の取付金具1と対応する部分は同一符号を付している)。
【0041】
図27〜29は、本実施例の外壁材取付金具1の製造工程において、最終的に取付金具1を直角に折り曲げる前の状態を示している。この状態では、実施例1の場合と同様に、一つの方向にのみ隆起する一方向隆起絞り加工部17がプレス絞り加工により形成されている。本実施例においても、一方向隆起絞り加工部17を直角に折り曲げて第一の部分3aと第二の部分3bとを互いに連続して有する屈曲した屈曲絞り加工部3を得ている。
【0042】
なお、本実施例においては、屈曲絞り加工部3の第一および第二の部分3a,3bの側面には、側方開放部24が設けられている。このような側方開放部24は、取付金具1のブランク(素材金属板)の対応する部分に外周から内部側に向かって入り込む対応する形状の凹部(金属板が存在しない部分)を予め設けておくことにより形成できる。このような側方開放部24を設けることにより、一方向隆起絞り加工部17の高さ(ひいては屈曲絞り加工部3の高さ)が高くなっても、割れ等の欠陥を生じさせることなく、容易に一方向隆起絞り加工部17を絞り加工することができるとともに、使用材料量の低減、コスト低減を図ることができ、さらには能力の小さなプレス機械も使用可能となる等の利点が得られる。
【0043】
本実施例においても、実施例1の場合と同様にして出隅部において外壁材2を建物の躯体に取り付けることができる。
【0044】
なお、前記実施例1および2では、取付金具1にビス穴10a,10bを設けて取付金具1を建物躯体5側にビス留めするようになっているが、ビス穴の代わりに取付金具1に第一および第二の釘穴を設けて建物躯体5側に釘留めしてもよいし、ビス穴と釘穴との両方を取付金具1に設けてもよい。
【0045】
また、前記実施例1および2の取付金具1は出隅用とされているが、絞り加工部を逆側に屈曲するようにすれば、入隅用とすることができる。
【0046】
また、前記実施例1および2では、第一の面4aと第二の面4bとが互いに直角をなす出隅部に適合させるため、屈曲絞り加工部3の第一の部分3aと第二の部分3bとが直角に屈曲されているが、本発明においては、第一の面と第二の面とが直角以外の角度をなすコーナー部に適合させるため、屈曲絞り加工部の第一の部分と第二の部分とが直角以外の角度をなすようにしてもよい。