(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定接点部材は、前記収容部の内部底面の中央部に設けられ前記可動接点部材と接離可能な第1固定接点部と、前記内部底面の外縁部に設けられ前記可動接点部材と常時接触する第2固定接点部と、を有し、
前記第2固定接点部は、前記内部底面の長手方向における両端側で、かつ短手方向における中央部にそれぞれ設けられ、
前記第2固定接点部の前記短手方向の両側には、前記粘着層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプッシュスイッチ。
前記被溶着部は、少なくとも前記四隅部以外の箇所において、前記ケースの前記上面の外周縁部に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプッシュスイッチ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例のような構成では、ケース911の上面に保護シート915(シート部材)を載置して、ケース911の上面の周縁部にレーザ照射する際に、保護シート915がずれて溶着が確実にできない虞があった。この虞れに対して、保護シート915とケース911との溶着固定箇所921を当接させておく専用の治具を用い、この治具で溶着固定箇所921を除いた部分の保護シート915をケース911に押し付けておくことが考えられる。しかしながら、均一に押し付けるための治具が必要となる上に、押し付けるための領域を確保しなければいけなく、極力小型化したい要望に応えられないという課題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するもので、シート部材が位置ずれなく容易にケースに溶着されたプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明のプッシュスイッチは、押圧操作により反転動作可能な可動接点部材と、該可動接点部材と接触可能な固定接点部材と、前記可動接点部材を収容し一方が開口した収容部を有するケースと、前記収容部を覆うように配置されたシート部材と、を備えたプッシュスイッチにおいて、前記ケースが前記一方側から平面視して外形が矩形状に形成され、前記ケースと前記シート部材とが前記開口に沿うように溶着された被溶着部を有し、前記ケースの前記上面の四隅部において、前記ケースと前記シート部材との間に粘着剤による粘着層が配置されて
おり、前記粘着層は、前記シート部材を粘着保持する箇所ごとに分割して設けられていることを特徴としている。
【0009】
これによれば、本発明のプッシュスイッチは、治具を用いることなくシート部材をケースに保持することができる。このため、収容部の開口に沿うシート部材とケースとの溶着を、位置ずれなく容易に行うことができる。
また、これによれば、仮に粘着剤を設ける箇所の配設位置がずれて、配置位置がずれた粘着剤がシート部材を粘着保持できなかったとしても、他の箇所の粘着剤でシート部材を粘着保持することができる。このため、レーザ照射による溶着の前に、シート部材がケースから脱落することの発生を抑制することができる。
【0012】
また、本発明のプッシュスイッチは、前記固定接点部材が、前記収容部の内部底面の中央部に設けられ前記可動接点部材と接離可能な第1固定接点部と、前記内部底面の外縁部に設けられ前記可動接点部材と常時接触する第2固定接点部と、を有し、前記第2固定接点部が、前記内部底面の長手方向における両端側で、かつ短手方向における中央部にそれぞれ設けられ、前記第2固定接点部の前記短手方向の両側には、前記粘着層が設けられていることを特徴としている。
【0013】
これによれば、ケースの長手方向の上面には被溶着部のみのスペースを確保するだけで良く、収容部の長手方向のサイズを大きくすることができる。このことにより、長手方向のサイズを大きくした可動接点部材にすることができ、良好な操作感触(操作荷重大、ストローク大)や長寿命化を図ることができる。
【0014】
また、本発明のプッシュスイッチは、前記被溶着部が、少なくとも前記四隅部以外の箇所において、前記ケースの前記上面の外周縁部に形成されていることを特徴としている。
【0015】
これによれば、収容部をより大きく確保することができる。このため、収容部の大きさをそのままでケースの外形を小さくすることや、或いは収容部を大きくして可動接点部材をより大きくすることができる。このことにより、良好な操作感触(操作荷重大、ストローク大)や動作寿命を確保したままで外形サイズを小型化することができる、或いは外形サイズをそのままに保ちながら良好な操作感触(操作荷重大、ストローク大)や長寿命化を図ることができる。
【0016】
また、本発明のプッシュスイッチは、前記粘着層が平面視して帯状に形成された帯部を有していることを特徴としている。
【0017】
これによれば、粘着層が平面視して帯状に形成されてた帯部を有しているので、粘着層が四隅部に点状(塊状)に形成されている場合と比較して、シート部材の面とより広く粘着するようになり、ケースにより確実に保持することができる。このことにより、確実に位置ずれなくシート部材とケースとの溶着を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプッシュスイッチは、治具を用いることなくシート部材をケースに保持することができる。このため、収容部の開口に沿うシート部材とケースとの溶着を、位置ずれなく容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のプッシュスイッチ101を説明する分解斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態のプッシュスイッチ101を説明する斜視図である。
図3は、本発明の第1実施形態のプッシュスイッチ101を説明する図であって、
図3(a)は、
図2に示すX2側から見た正面図であり、
図3(b)は、
図2に示すY2側から見た側面図である。
図4は、本発明の第1実施形態のプッシュスイッチ101を説明する図であって、
図2に示すZ1側からみた上面図である。なお、
図4には、四隅部に設けられた粘着層AD7とリング形状の被溶着部WD9とを破線で示している。
【0022】
本発明の第1実施形態のプッシュスイッチ101は、
図2及び
図3に示すような直方体形状の外観を呈し、
図1に示すように、押圧操作により反転動作可能な可動接点部材1と、一方が開口した収容部S2を有するケース2と、可動接点部材1と接触可能な固定接点部材3と、収容部S2を覆うように配置されたシート部材5と、ケース2とシート部材5との間に配置された粘着剤からなる粘着層AD7と、を備えて構成されている。他に、第1実施形態のプッシュスイッチ101には、可動接点部材1とシート部材5との間に配設された押し子部材8を有している。そして、プッシュスイッチ101が組み立てられた際には、可動接点部材1がケース2の収容部S2に収容され、
図4に示すように、ケース2とシート部材5とが溶着されて被溶着部WD9が形成される。
【0023】
次に、上述した各構成について詳細に説明する。
図5は、
図4におけるシート部材5と押し子部材8を省略した上面図である。
図6は、
図5における可動接点部材1を省略した上面図である。なお、
図5及び
図6には、被溶着部WD9が形成される領域を2点鎖線で囲まれた領域として示している。
図7は、シート部材5を説明する図であって、
図1に示すZ2側から見た下方斜視図である。
図8は、本発明の第1実施形態のプッシュスイッチ101を説明する図であって、
図8(a)は、
図3(a)に示すP部分の拡大図であり、
図8(b)は、
図3(b)に示すQ部分の拡大図である。
【0024】
先ず、プッシュスイッチ101の可動接点部材1は、導電性の金属板を機械加工して作製されており、
図5に示すように、平面視して、外形が略長方形状に形成されている。また、可動接点部材1は、
図1に示すように、中央部が上方(
図1に示すZ1方向)へ突出したドーム状のドーム部1dと、長手方向LD(
図5に示すY方向)の両端に形成されドーム部1dに連続した脚部1fと、から構成されている。そして、可動接点部材1は、操作者による押圧操作をドーム部1dに受けると、ドーム部1dが反転動作し、押圧が解除されると、押圧操作前の状態に戻るようになっている。また、可動接点部材1の内側面(凹面)には、固定接点部材3との電気的な接触安定性を得るために、銀めっきが施されている。なお、操作者による押圧操作は、図示しない操作部材等によって行われる。
【0025】
次に、プッシュスイッチ101のケース2は、絶縁材料の合成樹脂を用いて射出成形されており、
図4に示すように、一方(上方)側から平面視して、外形が矩形状に形成され、
図1に示すように、一方が開口した収容部S2を有する箱形形状に形成されている。そして、可動接点部材1を収容可能にしている。なお、この収容部S2は、ケース2の内部底面2bと、ケース2の外周に立設した側壁2wと、で収容部S2の空間が形成されている。
【0026】
また、
図1に示すように、収容部S2の開口側でケース2の上面側に位置している側壁2wの天面2uは、段差無く平らな形状をしており、シート部材5が載置されると、ケース2の上面(具体的には天面2u)とシート部材5の鍔部5v(後述する)の下面とが、密着するようになる。また、ケース2の四隅には、下方に凹んだ段差部2rが形成されており、この段差部2rであり一段上方に設けられた上段部に、粘着剤による粘着層AD7が配置される。また、段差部2rであり上段部より一段下方に設けられた下段部は、射出成形の際のピンが突き当てられる箇所となっている。
【0027】
また、
図4ないし
図6に示すように、ケース2の長手方向LDの両端側には、外部機器等への接続用の接続端子T3が外方に露出しており、図示はしていないが、ケース2内で固定接点部材3と接続されている。
【0028】
次に、プッシュスイッチ101の固定接点部材3は、導電性の金属材料から作製されており、
図6に示すように、収容部S2の内部底面2bの中央部に設けられた1つの第1固定接点部13と、内部底面2bの外縁部に設けられた2つの第2固定接点部23(23A、23B)と、を有して構成されている。
【0029】
また、第1固定接点部13及び第2固定接点部23は、ケース2に配設された際に、収容部S2に露出して設けられている。そして、可動接点部材1がケース2の収容部S2に配置されると、第1固定接点部13は、可動接点部材1の頂部の内側面(凹面)と対向するようになり、第2固定接点部23(23A、23B)は、可動接点部材1の脚部1fと接触するようになる。また、可動接点部材1のドーム部1dが反転動作を繰り返すことにより、第1固定接点部13は、可動接点部材1のドーム部1dの頂部と接離を繰り返すとともに、第2固定接点部23(23A、23B)は、可動接点部材1の脚部1fと接触状態が常時保たれている。なお、
図1に示すように、第1固定接点部13は、第2固定接点部23が設けられた内部底面2bより1段低い内部底面2bに設けられているので、可動接点部材1と接離する第1固定接点部13の接触面は、可動接点部材1と常接している第2固定接点部23の接触面より、低い位置、つまり下方に位置している。
【0030】
また、2つの第2固定接点部23(23A、23B)は、
図6に示すように、内部底面2bの長手方向LDにおける両端側で、かつ短手方向SDにおける中央部にそれぞれ設けられている。そして、第2固定接点部23の短手方向SDの両側には、粘着剤からなる粘着層AD7が設けられている。言い換えると、長手方向LDの両端側にそれぞれ2つずつ設けられた粘着層AD7の間に、第2固定接点部23A及び第2固定接点部23Bがそれぞれ設けられている。これにより、ケース2の四隅部に粘着層AD7の充分なスペースを確保できるとともに、ケース2の長手方向LDの上面(天面2u)には被溶着部WD9のみのスペースを確保するだけで良い。このため、収容部S2の長手方向LDのサイズを可動接点部材1のサイズに合わせたままでケース2の外形を小さくする、或いは収容部S2の長手方向LDのサイズを大きくすることで、長手方向LDのサイズを大きくした可動接点部材1を収容可能とすることができる。
【0031】
また、図示はしていないが、ケース2内において、第1固定接点部13は、接続端子T3aに接続されて一体に形成されている。同様にして、第2固定接点部23は、接続端子T3bに接続されて一体に形成されている。この接続端子T3を含む第1固定接点部13及び第2固定接点部23は、ケース2の射出成形の際にインサート成形されて、ケース2の収容部S2に臨んで配設されることとなる。
【0032】
次に、プッシュスイッチ101のシート部材5は、透光性を有する合成樹脂製のフィルムからなり、
図4に示すように、上方(
図1に示すZ1方向)側から平面視して、外形が縦長の八角形状に形成されている。また、シート部材5は、
図1及び
図7に示すように、中央部が上方へ突出したドーム状の膨出部5bと、膨出部5bの周囲に形成され膨出部5bに連続した鍔部5vと、から構成されている。そして、プッシュスイッチ101が組み立てられた際には、シート部材5は、収容部S2を覆うようにケース2の上面側に配置(載置)され、鍔部5vと天面2uとが密着し、ケース2とシート部材5とが
図4に示す被溶着部WD9の形状に溶着される。この被溶着部WD9は、
図6に示すように、四隅部以外の箇所において、収容部S2の開口に沿うように形成されているとともに、ケース2の上面側である天面2uの外周縁部に形成されている。
【0033】
また、シート部材5は、
図4に示すように、平面視して、収容部S2の開口を覆うことが可能な大きさであるとともに、ケース2の外形形状に沿うように形成されて、ケース2の外形形状の内側に収まる形状に形成されている。また、その際には、シート部材5の裏面側(
図4に示す透視面側)には、四隅の位置に粘着層AD7が位置することとなる。
【0034】
ここで、ケース2とシート部材5との溶着について簡単に説明する。先ず、シート部材5をケース2の所望の位置に載置し、粘着剤(最後には粘着層AD7になる)によって、ケース2にシート部材5を保持させる。次に、ケース2とシート部材5の間の設けられた粘着剤の部分以外の部分に、シート部材5の上方側から、被溶着部WD9が形成される領域にレーザ光を照射する。これにより、ケース2の天面2uとシート部材5の鍔部5vとの間に熱エネルギが与えられることとなり、被溶着部WD9が形成され、ケース2とシート部材5とが溶着される。最後に、残された粘着剤をそのまま粘着層AD7とするか、常温乾燥或いは熱等を加えることで粘着剤を硬化させて粘着層AD7を形成する。
【0035】
また、本発明の第1実施形態では、レーザ光を照射してケース2とシート部材5とを溶着させているので、ケース2に用いる合成樹脂は、光が透過しにくい黒色などの暗色系の材料を用い、シート部材5は、レーザ光を透過する透光性の材料を用いている。また、レーザ光の出力を調整することで、レーザ光による与える熱エネルギーを変えて、被溶着部WD9の厚さを変えることができる。つまり、レーザ光の出力を大きくすると熱エネルギーが大きくなり、被溶着部WD9の厚さは厚くなり、レーザ光の出力を小さくすると熱エネルギーが小さくなり、被溶着部WD9の厚さは薄くなる。このようにレーザ光の出力により与える熱エネルギーを調整することで、被溶着部WD9の厚さを異ならせることができる。なお、レーザ光による溶着方法を好適に用いたが、超音波溶着など、別の方法で溶着しても良い。
【0036】
以上の説明したように、粘着層AD7が配置されている四隅部以外の箇所において、被溶着部WD9のみの領域をケース2の上面(天面2u)の外周縁部に形成しているので、収容部S2をより大きく確保することができる。このため、収容部S2をそのままでケース2の外形を小さくすることや、或いは収容部S2を大きくして可動接点部材1をより大きくすることができる。このことにより、良好な操作感触(操作荷重大、ストローク大)や動作寿命を確保したままで外形サイズを小型化することができる、或いは外形サイズをそのままに保ちながら良好な操作感触(操作荷重大、ストローク大)や長寿命化を図ることができる。
【0037】
次に、プッシュスイッチ101の粘着層AD7は、粘着剤からなり、
図1に示すように、ケース2の上面側の四隅部に設けられており、
図8に示すように、ケース2とシート部材5との間に配置されている。これにより、シート部材5がケース2の収容部S2を覆うように配置された際に、治具を用いることなくシート部材5をケース2に保持することができる。このため、収容部S2の開口に沿うようにシート部材5とケース2との溶着を、位置ずれなく容易に行うことができる。
【0038】
また、粘着層AD7は、
図5及び
図6に示すように、ケース2の上面側に設けられた段差部2rの上段部に配置されているので、シート部材5がケース2に載置された際に、
図8に示すように、ケース2の上面(段差部2r)とシート部材5の鍔部5vとの空間に位置することとなる。このため、粘着層AD7がシート部材5の鍔部5vを上方側に持ち上げることなくシート部材5に粘着することとなる。このことにより、シート部材5の位置ずれを低減することができるとともに、溶着を確実に行うことができる。なお、粘着層AD7をシート部材5の裏面側に配置し、シート部材5がケース2の収容部S2を覆うように配置された際に、段差部2rの上段部に配置されるようにしても良い。
【0039】
また、粘着層AD7は、シート部材5を粘着保持する箇所ごとに分割して4箇所設けられている。このため、仮に粘着剤を設ける箇所の配設位置がずれて、配置位置がずれた粘着剤がシート部材5を粘着保持できなかったとしても、他の箇所の粘着剤でシート部材5を粘着保持することができる。このことにより、レーザ照射による溶着の前に、シート部材5がケース2から脱落することの発生を抑制することができる。
【0040】
しかも、四隅以外に粘着層AD7が存在しないので、必要な被溶着部WD9の領域を残して、四辺の部分を狭くできる。このため、収容部S2をなるべく大きくすることができ、より大きな可動接点部材1を収容することができる。また、逆に、収容部S2の大きさを保持したままでケース2の外形を小さくすることもできる。このことにより、外形サイズをそのままに保ちながら良好な操作感触(操作荷重大、ストローク大)や長寿命化を図ることができる、或いは良好な操作感触(操作荷重大、ストローク大)や動作寿命を確保したままで外形サイズを小型化することができる。
【0041】
また、粘着層AD7は、
図5及び
図6に示すように、平面視して、帯状に形成されている。このため、粘着層AD7が四隅部に点状(塊状)に形成されている場合と比較して、シート部材5(鍔部5v)の面とより広く粘着するようになり、ケース2により確実に保持することができる。このことにより、確実に位置ずれなくシート部材5とケース2との溶着を行うことができる。なお、本発明の第1実施形態では、粘着層AD7の全体の形状を帯状の形状にしたが、帯状に形成された帯部を一部有していれば良い。例えば、詳細な図示はしないが、矩形のベース部から腕状に帯部が形成されていても良いし、ケース2の天面2uにおける外周に沿って細長い形状の帯部を有していても良い。いずれの形状も帯状に形成された帯部を有していれば、上述の効果が得られる。
【0042】
最後に、プッシュスイッチ101の押し子部材8は、光が透過しにくい黒色などの暗色系の合成樹脂材からなり、
図1に示すように、半球状に形成されている。そして、押し子部材8は、
図7に示すシート部材5の膨出部5bの収納部S5に配設され、シート部材5と押し子部材8の半球面の一部とが溶着されて、押し子部材8がシート部材5に固定される。なお、この溶着は、ケース2とシート部材5と溶着と同様に、シート部材5側からのレーザ光を照射することにより行われる。また、レーザ光による溶着以外の方法、例えば、超音波溶着の方法で溶着しても良い。
【0043】
また、プッシュスイッチ101が組み立てられた際には、押し子部材8は、可動接点部材1のドーム部1dの頂部と対向する位置に配設され、操作者による押圧操作を受けて、可動接点部材1を押圧するように構成されている。この押し子部材8を有しているので、可動接点部材1の反転動作を安定して確実に行うことができる。
【0044】
以下に、プッシュスイッチ101の動作について、図面を用いないで簡単に説明する。先ず、操作前の状態においては、プッシュスイッチ101は、可動接点部材1の頂部と第1固定接点部13とは離間しているとともに、可動接点部材1の脚部1fと第2固定接点部23(23A、23B)は接触している。これにより、第1固定接点部13と第2固定接点部23とは電気的に接続されていない状態である。
【0045】
次に、操作者による押圧操作が行われると、シート部材5及び押し子部材8を介して、可動接点部材1が下方に押圧され、頂部の近傍を押圧された可動接点部材1は、下方へ撓んだ後に反転動作する。そして、頂部の裏面側が第1固定接点部13に接触するようになる。これにより、可動接点部材1と第1固定接点部13とが接触することで、可動接点部材1を介して、第1固定接点部13と第2固定接点部23とが電気的に接続される。
【0046】
次に、操作者による押圧操作が解除されると、可動接点部材1への押圧が解除され、可動接点部材1の反発力により、可動接点部材1は元のドーム形状に戻る。そして、プッシュスイッチ101は操作前の状態に戻り、第1固定接点部13と第2固定接点部23とは電気的に接続されていない状態となる。以上のように、可動接点部材1を押圧操作し、第1固定接点部13と第2固定接点部23との電気的な接続状態を切り替える(ON/OFF)ことで、プッシュスイッチ101は、スイッチとして機能する。
【0047】
以上のように構成された本発明の第1実施形態のプッシュスイッチ101における、効果について、以下に纏めて説明する。
【0048】
本発明の第1実施形態のプッシュスイッチ101は、ケース2の天面2uの四隅部において、ケース2とシート部材5との間に粘着剤による粘着層AD7が配置されているので、シート部材5がケース2の収容部S2を覆うように配置された際に、治具を用いることなくシート部材5をケース2に保持することができる。このため、収容部S2の開口に沿うようにシート部材5とケース2との溶着を、位置ずれなく容易に行うことができる。
【0049】
また、粘着層AD7がシート部材5を粘着保持する箇所ごとに分割して設けられているので、仮に粘着剤を設ける箇所の配設位置がずれて、配置位置がずれた粘着剤がシート部材5を粘着保持できなかったとしても、他の箇所の粘着剤でシート部材5を粘着保持することができる。このため、レーザ照射による溶着の前に、シート部材5がケース2から脱落することの発生を抑制することができる。
【0050】
収容部S2の内部底面2bの外縁部に設けられた第2固定接点部23が短手方向SDの両側に設けられた粘着層AD7に挟まれるような状態で配設されているので、ケース2の長手方向LDの天面2uには被溶着部WD9のみのスペースを確保するだけで良く、収容部S2の長手方向LDのサイズを大きくすることができる。このことにより、長手方向LDのサイズを大きくした可動接点部材1にすることができ、良好な操作感触(操作荷重大、ストローク大)や長寿命化を図ることができる。また、逆に、収容部S2の長手方向LDのサイズを保持したままでケース2の長手方向LDのサイズを小さくすることができ、良好な操作感触(操作荷重大、ストローク大)や動作寿命を確保したままで外形サイズを小型化することができる。
【0051】
また、粘着層AD7が配置されている四隅部以外の箇所において、被溶着部WP9のみの領域をケース2の天面2uの外周縁部に形成しているので、収容部S2をより大きく確保することができる。このため、収容部S2の大きさをそのままでケース2の外形を小さくすることや、或いは収容部S2を大きくして可動接点部材1をより大きくすることができる。このことにより、良好な操作感触(操作荷重大、ストローク大)や動作寿命を確保したままで外形サイズを小型化することができる、或いは外形サイズをそのままに保ちながら良好な操作感触(操作荷重大、ストローク大)や長寿命化を図ることができる。
【0052】
また、粘着層AD7が帯状に形成されてた帯部を有しているので、粘着層AD7が四隅部に点状(塊状)に形成されている場合と比較して、シート部材5の面とより広く粘着するようになり、ケース2により確実にシート部材5を保持することができる。このことにより、確実に位置ずれなくシート部材5とケース2との溶着を行うことができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0054】
<変形例1>
上記第1実施形態では、粘着層AD7を段差部2rの下段部を避けて上段部に設けた構成としたが、これに限るものではない。例えば、下段部が射出成形の際のピンが突き当てられる箇所である、というようなことがなければ、ケース2の四隅部の角部にそれぞれ設ける構成でも良い。
【0055】
<変形例2>
上記第1実施形態では、粘着層AD7をケース2の上面側の四隅部にそれぞれ独立して設けた構成としたが、これに限るものではなく、一部が繋がった構成でも良い。
【0056】
<変形例3>
上記第1実施形態では、第2固定接点部23を2つ設けた構成としたが、これに限るものではなく、3つ、4つと、2つ以上設けた構成でも良い。
【0057】
<変形例4>
上記第1実施形態では、被溶着部WD9はケース2の上面である天面2uの周囲の全周に渡って溶着される構成とした。しかしながら、収容部S2の内部において空気の逃げ場が無いため、プッシュスイッチ101を操作したときに、操作感触が悪くなることや、最悪、スイッチとして機能しなくなるような不具合が発生する場合も考えられる。そのような不具合が発生する場合には、必要に応じて、実質的に密閉状態(空気の出入りはできるが水分の流入は防げる程度)を保てる範囲で、被溶着部WD9の一部を途切れさせて、空気逃げを設けても良い。
【0058】
<変形例5>
上記第1実施形態では、可動接点部材1を1枚用いる構成としたが、これに限るものではなく、必要に応じて複数個重ねて用いる構成であっても良い。
【0059】
<変形例6>
上記第1実施形態では、可動接点部材1とシート部材5との間に押し子部材8を設けた構成としたが、押し子部材8を設けない構成にしても良い。このような場合でも、シート部材をケースに対して確実に溶着保持することができる。
【0060】
<変形例7>
上記第1実施形態では、ケース2に非透光性の材料、シート部材5に透光性の材料を用いる構成としたが、ケース2に透光性の材料、シート部材5をに非透光性の材料を用いる構成としても良い。この場合、レーザ光の照射は、ケース2側からシート部材5に向けて行うこととなる。また、レーザ溶着さえできれば、ケース2及びシート部材5の被溶着部近傍のみ、部分的に透光性または非透光性となるように、構成しても良い。
【0061】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。