(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341567
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】ヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
G03B 27/62 20060101AFI20180604BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
G03B27/62
H04N1/00 567Q
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-151131(P2014-151131)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-24440(P2016-24440A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】大森 正樹
【審査官】
今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−175130(JP,A)
【文献】
特開2007−178667(JP,A)
【文献】
特開2010−060719(JP,A)
【文献】
特開2012−237918(JP,A)
【文献】
特開昭60−085176(JP,A)
【文献】
実開昭62−156938(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0180972(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0152580(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 27/56−27/64
G03G 13/04、13/045、13/056、15/00
15/04−15/043、15/047、15/056
E05F 1/00−13/04、17/00
F16C 11/00−11/12
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1取付部材と第2取付部材とを回動軸を中心に開閉可能に連結したヒンジ装置であって、
前記第1取付部材が、第1位置と第2位置とに選択的に配置可能な受圧部材を有し、
前記第2取付部材が、前記受圧部材に対して接近離反するように変位可能で、ばねによって前記受圧部材に当接する向きに付勢された押圧部材を有し、
前記第1及び第2取付部材が閉じた状態で、前記受圧部材と前記押圧部材とが当接する接点における前記ばねの付勢力の作用方向が、前記受圧部材が前記第1位置にあるときは、前記回動軸の中心よりも前記第1及び第2取付部材を開く側に配向され、前記受圧部材が前記第2位置にあるときは、前記回動軸の中心を通るか第1及び第2取付部材を閉じる側に配向されるようにしたことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記第2取付部材が、前記押圧部材を前記受圧部材に対して接近離反するように変位可能に保持し、前記第1取付部材に対して前記回動軸を中心に前記第2取付部材と一体に回動自在な保持部材を有することを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記押圧部材が前記受圧部材に当接するカム面を有し、前記カム面が、前記受圧部材が前記第1位置にあるときと前記第2位置にあるときによって、前記受圧部材との接点における前記ばねの付勢力の作用方向を異なる向きに配向し、前記受圧部材が前記第1位置にあるときは、前記第1取付部材と前記保持部材との開き角度に対応して、前記ばねの付勢力を調整するように、前記押圧部材を前記受圧部材に対して接近離反させるプロフィルを有することを特徴とする請求項2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記受圧部材が前記第1位置にある場合、前記押圧部材が前記ばねの付勢力によって、前記第1取付部材と前記保持部材との開き角度が或る角度又は角度範囲にあるときは、前記受圧部材と前記回動軸とに当接し、前記第1取付部材及び前記保持部材が閉じた状態から前記開き角度が前記或る角度又は角度範囲に至るまでは、前記受圧部材にのみ当接し、前記開き角度が前記或る角度又は角度範囲を超えると、前記回動軸にのみ当接することを特徴とする請求項2又は3に記載のヒンジ装置。
【請求項5】
前記開き角度が前記或る角度又は角度範囲を超えているとき、前記受圧部材の配置を前記第1位置と前記第2位置との間で変更可能であることを特徴とする請求項4に記載のヒンジ装置。
【請求項6】
前記受圧部材が、前記第1位置と前記第2位置との間で配置を変更し得るように、取外可能な取着部材によって前記第1取付部材に固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材間を開閉可能に連結するヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ装置、スキャナー装置等の画像処理装置は、画像読取装置等の下部ユニットと、原稿圧着板や原稿自動送り装置(ADF)等の上部ユニットとを備え、下部ユニットと上部ユニットとをヒンジ装置で開閉可能に連結している。最近では、上部ユニットのADFが標準装備になってきている。ADFにより重量化した上部ユニットを開閉し易くするために、一般にヒンジ装置は圧縮コイルばねを内蔵し、そのばね力によって上部ユニットを開閉する際にその重量を軽減している。
【0003】
例えば、或るヒンジ装置は、圧縮コイルばねの付勢力が常時原稿圧着板を開く方向に作用し、原稿圧着板を閉じる際にその開き角度が或る角度以下になると、その重量が圧縮コイルばねの付勢力に勝り、原稿圧着板を閉じる向きに回転させて、原稿を原稿読取面に密着させる(例えば、特許文献1を参照)。このヒンジ装置では、原稿圧着板の開き角度によって、圧縮コイルばねの一端を受けるカムスライダーのカム面と取付部材の受圧ピンとの当接位置が移動し、それによりカムスライダーが支持部材内を摺動して圧縮コイルばねを伸縮させ、その付勢力を変化させている。
【0004】
別のヒンジ装置では、取付部材の受圧ピンを、圧縮コイルばねの伸縮方向に沿って移動可能に設けることにより、圧縮コイルばねの付勢力を調整可能にしている(例えば、特許文献2を参照)。これにより、例えば使用者が使用状況等の変化等の理由からADFを後付けで、下部ユニットに予め取り付けた上部ユニットと交換する場合にも、ヒンジ装置のばね又はヒンジ装置自体を取り外して交換する必要を無くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−178667号公報
【特許文献2】特開2011−175130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のヒンジ装置は、上部ユニットを完全に閉じた状態でも、圧縮コイルばねが常時上部ユニットを閉じる向きに作用している。ADFを備えた上部ユニットの場合、その重量に対応して、ヒンジ装置には相当強いばね力の圧縮コイルばねが使用される。そのため、ヒンジ装置が取り付けられる下部ユニット及び上部ユニットの取付部及びその周辺の装置フレーム部分には、相当大きな荷重が常時印加されている。
【0007】
近年、画像処理装置においても、装置の軽量化や低価格化の要請から、装置フレームの多くの部分が樹脂材料で形成されるようになっている。一般に、装置フレームの樹脂材料部分は、金属材料部分と比較すると、温度や湿度の環境条件に影響を受けて形状変化を起こし易い。
【0008】
ADFを標準装備した画像処理装置等の機器は、上部ユニットを下部ユニットに取り付けた状態で、遠方に輸送したり長期間に亘って保管することになる。樹脂材料は、輸送中又は保管中の環境によって、例えば船便のような高温多湿の環境下では、常温常湿環境下に比べて、その機械的強度が低下することが一般的に知られている。機器の保管中は、ヒンジ装置の取付部材を介して圧縮コイルばねから大きい荷重が継続的に印加されるために、ヒンジ装置の取付部周辺では、装置フレームの樹脂材料部分が変形する等の不具合を生じる虞がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、例えば画像処理装置等の機器の下部ユニットに上部ユニットを開閉可能に取り付けるためのヒンジ装置において、上部ユニットの開閉動作を容易にするために内蔵したばねのばね力が、機器の使用時には、従来装置と同様に開方向に付勢されるのに対し、例えば機器の輸送中や保管中の不使用時には、上部ユニットが閉じた状態で、前記ばね力が上部ユニットの開閉に作用しない中立状態又は閉方向に付勢されるように、選択的にばね力の作用を変更可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のヒンジ装置は、第1取付部材と第2取付部材とを回動軸を中心に開閉可能に連結したヒンジ装置であって、
第1取付部材が、第1位置と第2位置とに選択的に配置可能な受圧部材を有し、
第2取付部材が、受圧部材に対して接近離反するように変位可能で、ばねによって受圧部材に当接する向きに付勢された押圧部材を有し、
第1及び第2取付部材が閉じた状態で、受圧部材と押圧部材とが当接する接点におけるばねの付勢力の作用方向が、受圧部材が第1位置にあるときは、回動軸の中心よりも第1及び第2取付部材を開く側に配向され、受圧部材が第2位置にあるときは、回動軸の中心を通るか第1及び第2取付部材を閉じる側に配向されるようにしたことを特徴とする。
【0011】
このように押圧部材を付勢するばねの作用方向を配向することによって、受圧部材が第1位置にあるときは、受圧部材と押圧部材との接点におけるばねの付勢力が、第1及び第2取付部材を閉じた状態から、回動軸を中心に開く向きの回転モーメントを発生させる。従って、機器の下部ユニットに第1取付部材を取り付け、上部ユニットに第2取付部材を取り付けて使用する場合に、上部ユニットが比較的重いものであっても、従来と同様に、下部ユニットに対して上部ユニットをより簡単に開くことができる。
【0012】
これに対し、受圧部材が第2位置にあるときは、受圧部材と押圧部材との接点におけるばねの付勢力の作用方向が回動軸の中心を通る場合、回動軸の周りにばねの付勢力による回転モーメントは、第1及び第2取付部材を開閉するいずれの向きにも全く発生しない。従って、本発明のヒンジ装置で機器の下部ユニットと上部ユニットとを連結したとき、第1及び第2取付部材が取り付けられる下部及び上部ユニットの部位及びその周辺部は、ばねの付勢力による荷重を受けることがない。そのため、例えば機器の輸送時や長期保管時にその環境によって、下部及び上部ユニットのヒンジ装置取付部及びその周辺の樹脂材料部分に生じ得る変形等の不具合を未然に防止することができる。
【0013】
また、受圧部材が第2位置にあって、受圧部材と押圧部材との接点におけるばねの付勢力の作用方向が第1及び第2取付部材を閉じる側に配向されている場合、回動軸を中心に第1及び第2取付部材を閉じる向きに回転モーメントが発生する。この回転モーメントによる閉じ方向の力は、受圧部材が第1位置にあるときに第1及び第2取付部材を開く向きに作用する力より小さいので、下部及び上部ユニットのヒンジ装置取付部及びその周辺の樹脂材料部分に変形等の不具合を生じさせることはない。
【0014】
或る実施態様において、第2取付部材は、押圧部材を受圧部材に対して接近離反するように変位可能に保持し、第1取付部材に対して回動軸を中心に第2取付部材と一体に回動自在な保持部材を有する。これにより、第2取付部材を第1取付部材に対して閉じたときに、機器の上部ユニットの下部ユニットに対する位置関係を調整することができる。
【0015】
また、或る実施態様において、押圧部材は受圧部材に当接するカム面を有し、該カム面は、受圧部材が第1位置にあるときと第2位置にあるときによって、受圧部材との接点におけるばねの付勢力の作用方向を異なる向きに配向し、受圧部材が第1位置にあるときは、第1取付部材と保持部材(保持部材を有しない場合は第2取付部材)との開き角度に対応して、ばねの付勢力を調整するように、押圧部材を受圧部材に対して接近離反させるプロフィルを有する。これにより、受圧部材が第1位置にある通常の使用時において、第1取付部材と保持部材(又は第2取付部材)とを開く動作に対応して、その開方向又は閉方向にばねの付勢力を最適に作用させることができる。
【0016】
別の実施態様において、受圧部材が第1位置にある場合、押圧部材がばねの付勢力によって、第1取付部材と保持部材(保持部材を有しない場合は第2取付部材)との開き角度が或る角度又は角度範囲にあるときは、受圧部材と回動軸とに当接し、第1取付部材と保持部材(又は第2取付部材)が閉じた状態から開き角度が或る角度又は角度範囲に至るまでは、受圧部材にのみ当接し、開き角度が或る角度又は角度範囲を超えると、回動軸にのみ当接する。これにより、受圧部材が第1位置にある通常の使用時において、ばねの付勢力によって、第1取付部材と保持部材(又は第2取付部材)とを或る角度又は角度範囲で安定して開いた状態に維持することができる。また、第1取付部材と保持部材(又は第2取付部材)とを閉じた状態から開く動作では、ばねの付勢力を利用して軽く簡単にすることができ、前記或る角度又は角度範囲を超えると、ばねの付勢力が作用しない状態で、第1取付部材及び保持部材(又は第2取付部材)をフリーな状態にすることができる。
【0017】
或る実施態様において、第1取付部材と保持部材(保持部材を有しない場合は第2取付部材)との開き角度が前記或る角度又は角度範囲を超えているとき、受圧部材の配置を第1位置と前記第2位置との間で変更可能である。これにより、第1取付部材及び保持部材(又は第2取付部材)がばねの付勢力の影響を受けない状態で、受圧部材の配置変更を容易に行うことができる。
【0018】
別の実施態様において、受圧部材が、第1位置と第2位置との間で配置を変更し得るように、取外可能な取着部材によって第1取付部材に固定されている。これにより、取着部材の第1取付部材への取付位置を変えることによって、受圧部材の配置を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のヒンジ装置を使用した、ADFを開いた状態の画像処理装置の上部を示す概略斜視図。
【
図2】(a)図は本発明によるヒンジ装置の好適な実施態様において、第1及び第2取付部材が閉じた状態で、カム受け部材が第1位置にあるときの背面図、(b)図は(a)図のII−II線における縦断面図。
【
図3】(a)図は
図2のヒンジ装置において、第1及び第2取付部材が閉じた状態で、カム受け部材が第2位置にあるときの背面図、(b)図は(a)図のIII−III線における縦断面図。
【
図4】カム受け部材が第1位置にあるとき、第1及び第2取付部材が閉じた状態での圧縮コイルばねの付勢力の作用方向を説明する模式図。
【
図5】カム受け部材が第2位置にあるとき、第1及び第2取付部材が閉じた状態での圧縮コイルばねの付勢力の作用方向を説明する模式図。
【
図6】ADFが開き位置に保持されているヒンジ装置の縦断面図。
【
図7】ADFを略垂直に開いた状態のヒンジ装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しつつ、その好適な実施態様について詳細に説明する。添付図面において、同一又は類似の構成要素には、同一又は類似の参照符号を付して表すものとする。
【0021】
図1は、本発明によるヒンジ装置を使用した画像処理装置を概略的に示している。同図において、画像処理装置1は、画像読取装置2である下部ユニットと、ADF3である上部ユニットとを備える。ADF3は、画像読取装置2上面のプラテン4の上に載置される原稿を覆うことができるように、1対のヒンジ装置5,5によって画像読取装置2の上部に開閉可能に連結されている。尚、以下の説明では、ヒンジ装置5についても、画像処理装置1をADF3を開く側から見た向きを基準に、その手前側を前方、奥側を後方、両横方向を左右として説明する。
【0022】
図2(a)、(b)は、本発明の好適な実施態様であるヒンジ装置5を示している。ヒンジ装置5は、画像読取装置2に固定される第1取付部材11と、保持部材12と、ADF3に固定される第2取付部材13とを備える。後述するように、保持部材12は第1取付部材に対して第2取付部材13と一体に回動可能に、かつ第2取付部材13は保持部材12に対して可動可能に設けられる。
【0023】
第1取付部材11は、上向きに開いた断面コ字形に形成され、画像読取装置2の上部に取り付けられる底板11aと、前記底板の左右両側端から上向きに垂設された両側板11b,11bと、前記底板の後端から上向きに垂設された後板11cとを有する。後板11cには、縦に等間隔で横3列に、各列にそれぞれ同じ間隔で2つの位置決め孔14a,14b,14cが貫設されている。
【0024】
保持部材12は、下向きに開いた概ね断面コ字形に形成され、上板12aと、前記上板の左右両側端から下向きに垂設された両側板12b,12bとを有する。両側板12b,12bの下端は内向き略直角に折曲され、或る隙間を挟んで対向する縁板部12c,12cを形成している。
【0025】
第2取付部材13は、下向きに開いた概ね断面コ字形に形成され、上板13aと、前記上板の左右両側端から下向きに垂設された両側板13b,13bとを有する。両側板13b,13bの下端は外向き略直角に折曲され、取付板部13c,13cを形成している。
【0026】
保持部材12は、第1取付部材11に上から被せるように、前記保持部材の両側板12b,12bが前記第1取付部材の両側板11b,11bの直ぐ外側に位置するように配置される。第1取付部材11と保持部材12とは、それらの前記両側板の後部上端付近を貫通する水平な回動軸15によって、相互に回動自在に即ち開閉自在に連結されている。
【0027】
第2取付部材13は、保持部材12に上から被せるように、前記第2取付部材の両側板13b,13bが前記保持部材の両側板12b,12bの直ぐ外側に位置するように配置される。保持部材12と第2取付部材13とは、それらの前記両側板の前部上端付近を貫通する水平なピン部材16によって、相互に回動可能に連結されている。保持部材12に対する第2取付部材13の回動は、画像読取装置2上面のプラテン4に圧着させるADF3の水平位置を調整するために、一定の角度範囲に限定される。ADF3を開閉する動作において、第2取付部材13は、第1取付部材11に対して保持部材12と一体に回動軸15を中心に回動する。
【0028】
保持部材12の内側には、圧縮コイルばね17とスライドホルダー部材18とばね受け部材19とが保持されている。圧縮コイルばね17は、その一端をスライドホルダー部材18のばね受け18aに当接させ、かつ他端をばね受け部材19に当接させて、第1取付部材11と保持部材12との間に介装されている。スライドホルダー部材18は、保持部材12の両側板12b,12b及び縁板部12c,12cに沿って摺動可能に保持されている。ばね受け部材19は、保持部材12の両側板12b,12b間に固定された水平なストッパピン部材20によって、圧縮コイルばね17の伸長方向への移動が制限されている。
【0029】
第1取付部材11には、ピン形状のカム受け部材21が、取着部材22によって固定されている。取着部材22は、第1取付部材11の両側板11b,11bの直ぐ内側に配置される両側板22a,22aと、それらの後端を連結する垂直な後板22bとを有する。カム受け部材21は、取着部材22の前端で両側板22a,22a間を水平に固定されている。
【0030】
取着部材22は、後板22bを第1取付部材11の後板11cの前面に重ね合わせて、後方から後板11cの位置決め孔14a〜14cを通してボルト23により一体に締結される。
図2(a)、(b)では、取着部材22が、最下列の位置決め孔14a及び中間列の位置決め孔14bに固定されている。この低い位置をカム受け部材21の第1位置とする。この第1位置は、プラテン4上の原稿を交換するためにADF3を開閉する画像処理装置1の通常の使用時における配置である。
【0031】
図3(a)、(b)では、取着部材22が、最上列の位置決め孔14c及び中間列の位置決め孔14bに固定されている。この高い位置をカム受け部材21の第2位置とする。この第2位置は、例えばADF3を開閉しない画像処理装置1の輸送時(又は長期保管時)における配置である。
【0032】
このようにカム受け部材21は、高さの異なる第1位置と第2位置とに選択的に配置することができる。いずれの場合も、カム受け部材21は、
図2及び
図3に示すように、回動軸15より前方に位置するように配置する。
【0033】
スライドホルダー部材18は、その後端に、カム受け部材21が前記第1位置及び第2位置のいずれにあっても、圧縮コイルばね17の付勢力により前記カム受け部材の外周面に当接して押圧するためのカム面24を有する。カム面24のカム受け部材21外周面との接点は、第1取付部材11と保持部材12との開き角度によって高さ方向、即ち圧縮コイルばね17の伸縮方向及びカム受け部材21の軸線方向の双方に直交する向きに移動する。
【0034】
このとき、カム面24とカム受け部材21外周面との接点が圧縮コイルばね17の伸縮方向に移動すると、それに対応してスライドホルダー部材18は保持部材12内を摺動し、圧縮コイルばね17を伸長又は収縮させる。これにより、カム面24を介してカム受け部材21に印加される圧縮コイルばね17の付勢力が増減する。
【0035】
圧縮コイルばね17の付勢力は、以下に説明するように、第1取付部材11と保持部材12の開閉動作に作用する。
図4は、
図2に示すようにカム受け部材にあり、第1取付部材11と保持部材12が閉じた状態を模式的に示している。
図4において、C1はカム面24とカム受け部材21との接点、f1は接点C1における圧縮コイルばね17の付勢力Fの作用線、L1は回動軸15の中心15aと接点C1とを結ぶ基準線である。尚、付勢力Fの作用線f1は、接点C1におけるカム面24の接線T1に直交する方向を向く。
【0036】
図4に示すように、接点C1における圧縮コイルばね17の付勢力Fは、その作用線f1が基準線L1の図中下側を通過している。そのため、回動軸15の中心15aから作用線f1までの距離をdとすると、圧縮コイルばね17の付勢力Fによって、回動軸15を中心に図中の時計回りの回転モーメントM=F×dが発生する。
【0037】
回転モーメントMは、第1取付部材11と保持部材12を互いに開く向きに作用する。第1取付部材11が画像読取装置2に固定されているから、回転モーメントMは、前記画像読取装置に閉じた状態のADF3に対して常時開方向に作用する。実際には、この反力として、画像読取装置2のヒンジ装置が取り付けられる部位及びその周辺部には、第1取付部材11から常時押圧力が作用することになる。
【0038】
図5は、
図3に示すようにカム受け部材21が前記第2位置にあり、第1取付部材11と保持部材12が閉じた状態を模式的に示している。同図において、C2はカム面24とカム受け部材21との接点、f2は接点C2における圧縮コイルばね17の付勢力Fの作用線、L2は回動軸15の中心15aと接点C2とを結ぶ基準線である。同様に、作用線f2の向きは、接点C2におけるカム面24の接線T2に直交する。
【0039】
図5に示すように、接点C2における圧縮コイルばね17の付勢力Fは、その作用線f2が基準線L2と一致し、回動軸15の中心15aを通過している。この場合、回動軸15周りに、圧縮コイルばね17の付勢力Fによる回転モーメントは全く発生しない。その結果、第1取付部材11及び保持部材12は、閉じ状態において、圧縮コイルばね17の付勢力から開方向又は閉方向のいずれにも付勢されない中立状態にある。従って、画像読取装置2及びADF3は、閉じた状態にある限り、いずれも開閉方向に何ら圧縮コイルばね17から力を受けない。
【0040】
更に
図5は、
図4の場合とは逆に、カム面24とカム受け部材21との接点C3における圧縮コイルばね17の付勢力F’の作用線f3が、基準線L2の図中上側を通過する場合を想像線で示している。このとき、回動軸15の中心15aから作用線f3までの距離をd’とすると、圧縮コイルばね17の付勢力F’によって、回動軸15を中心に図中の反時計回りの回転モーメントM’=F’×d’が発生する。
【0041】
この回転モーメントM’は、第1取付部材11と保持部材12を互いに閉じる向きに作用する。第1取付部材11が画像読取装置2に固定されているから、回転モーメントM’は、前記画像読取装置に閉じた状態のADF3を更に閉じる向きに作用する。しかしながら、実際には、かかる閉じ方向の力が、ヒンジ装置5が取り付けられる画像読取装置2の部位及びその周辺部に及ぼす影響は比較的小さい。
【0042】
カム受け部材21が前記第1位置にある使用時において、第1取付部材11と保持部材12を或る開き角度まで回動すると、スライドホルダー部材18が保持部材12内を圧縮コイルばね17の伸長方向に摺動し、
図6に示すように、カム面24がカム受け部材21に加えて回動軸15の外周面にも当接して押圧する。この状態では、圧縮コイルばね17の付勢力と、ADF3の重力と、カム受け部材21及び回動軸15の外周面とカム面24間の摩擦力とが平衡しているので、第1取付部材11及び保持部材12は、外力を加えない限り、ADF3の自重で閉じたり圧縮コイルばね17の付勢力で開いたりすることなく、
図6の開き角度に保持される。
【0043】
この状態から、例えばADF3を手で押し下げることにより、第1取付部材11に対して保持部材12及び第2取付部材13を閉じる向きに外力を加えると、保持部材12及び第2取付部材13は、回動軸15を中心に閉じ方向、即ち図中時計方向に回転する。このとき、保持部材12には、圧縮コイルばね17の付勢力がカム受け部材21からの反力として開き方向に作用するので、ADF3はゆっくりと閉じられる。
【0044】
逆に、
図6の状態から、ADF3を手で押し上げると、保持部材12及び第2取付部材13は、回動軸15を中心に図中反時計方向に、
図7に示すように、略垂直に立った位置まで回転させることができる。このとき、スライドホルダー部材18は、カム面24がカム受け部材21との係合状態から離脱して、回動軸15にのみ係合しているので、圧縮コイルばね17の付勢力は、保持部材12を開く動作に全く作用しない。従って、第1取付部材11及び保持部材12は互いにフリーな状態となる。
【0045】
図7の状態において、保持部材12は、上板12aの後端に設けた係合部(図示せず)を第1取付部材11の両側板11b,11bの上部後端に設けた係止部(図示せず)に衝止させることによって、それ以上開かないように制限されている。従って、ADF3は、後方に倒れることなく、略垂直に立った状態に保持することができる。
【0046】
このとき、前記第1位置にあるカム受け部材21とカム面24との間には、垂直方向に隙間Sが画定される。この隙間Sは、
図7に想像線で示す前記第2位置にカム受け部材21を、カム面24に接触することなく、好ましくは前記カム面との間に隙間を確保しつつ配置し得る十分な大きさに設定する。
【0047】
カム受け部材21を前記第1位置から前記第2位置に移動させる場合、ボルト23を取り外して取着部材22を第1取付部材11の後板11cから取り外す。取着部材22を上方へ移動させて、前記ボルトを上側2列の位置決め孔14b,14cから通して第1取付部材11の後板11c前面に固定し直す。逆にカム受け部材21を前記第2位置から前記第1位置に移動させる場合には、同様の手順で取着部材22を第1取付部材11の後板11cから取り外し、下側2列の位置決め孔14a,14bからボルト23で固定し直せばよい。
【0048】
別の実施態様では、保持部材12を省略して、第2取付部材13を第1取付部材11に直接、回動軸15によって回動自在に連結することができる。その場合、圧縮コイルばね17、スライドホルダー部材18及びばね受け部材19は、上記実施態様と同様に第2取付部材13内に両側板13b,13bの間に保持されて、同様に動作する。プラテン4に対してADF3の水平位置を調整する機能は失われるが、上述した本発明のヒンジ装置5の作用効果に何ら変更はない。
【0049】
以上、本発明を好適な実施態様に関連して説明したが、本発明は上記実施態様に限定されるものでなく、その技術的範囲において、様々な変更又は変形を加えて実施し得ることは言うまでもない。例えば、カム受け部材21は、上記実施態様のピン形状に限定されるものでなく、様々な形態のものを使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 画像処理装置
2 画像読取装置
3 ADF
5 ヒンジ装置
11 第1取付部材
12 保持部材
13 第2取付部材
14a,14b,14c 位置決め孔
15 回動軸
16 ピン部材
17 圧縮コイルばね
18 スライドホルダー部材
19 ばね受け部材
20 ストッパピン部材
21 カム受け部材21
22 取着部材
23 ボルト
24 カム面