特許第6341636号(P6341636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341636
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20180604BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   B32B27/20 A
   E04F13/08 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-121204(P2013-121204)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-237268(P2014-237268A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】大谷 崇人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 理人
(72)【発明者】
【氏名】坂本 真人
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−085879(JP,A)
【文献】 特開平03−208635(JP,A)
【文献】 特開2003−246018(JP,A)
【文献】 国際公開第98/001296(WO,A1)
【文献】 特開平10−099780(JP,A)
【文献】 特開平07−100991(JP,A)
【文献】 実開平07−004033(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、装飾層が積層された積層体であって、
前記装飾層は、合成樹脂(A)、平均粒子径10μm以上1000μm以下の着色粒子(B)、及び平均繊維長0.1mm以上5mm以下の化学繊維(C)を含み(ただし、炭酸カルシウムを結合成分として含有するものを除く)、
前記化学繊維(C)が、半合成繊維及び合成繊維から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記半合成繊維が、アセテート繊維、トリアセテート繊維、プロミックス繊維、前記合成繊維が、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリクラール繊維から選ばれる1種または2種以上であり、
前記(A)成分100重量部に対し、前記(B)成分を100〜4000重量部、前記(C)成分を1〜100重量部を含み、
前記基材は、織布または不織布であり、厚み0.05〜1.5mmであることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記化学繊維が、親水性であることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記合成樹脂が、合成樹脂エマルションを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な積層体に関する。本発明積層体は、例えば、建築物の内外壁面等に適用する建材として使用できる。
【背景技術】
【0002】
建築物内外装等に用いる建材には、景観上の観点から美観性が求められている。近年、このような建材としては、例えば天然石をイメージしたもの等が注目されており、比較的厚みがあり、様々な凹凸パターンによって重厚感が付与されたもの等も採用されている。
このような建材としては、天然骨材や人工骨材等の着色粒子と結合材を主成分とする成形物が挙げられる。しかし、このような材料を、建築物内外装表面の曲面に対して施工した場合、折り曲げることが容易ではなかったり、また、折り曲げることができたとしても、美観性を損なう不具合を生じたりする場合がある。
【0003】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、合成樹脂繊維製織物より成る補強層(基材)に結合材と着色粒子が配合された吹き付け材(装飾性組成物)を積層し、さらに接着剤を介して表面に透明シートが成形された装飾材が記載されている。このような装飾性組成物と補強材の組み合わせは、材料の可とう性、強度等を高める有効な手段である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−347251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、比較的厚みがあり重厚感が付与された材料、例えば、着色粒子を多く含む材料等においては、単に基材を積層するだけでは、可とう性等の物性向上の点で高度な要求を満足するには不十分な場合があり、まだ改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、優れた美観性を有すると共に、可とう性、強度等に優れた積層体を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、基材上に、合成樹脂(A)、平均粒子径10μm以上500μm以下の着色粒子(B)、及び平均繊維長0.1mm以上5mm以下の化学繊維(C)を特定重量比率で含む装飾層が積層された積層体に想到し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の積層体は、下記の特徴を有するものである。
1.基材上に、装飾層が積層された積層体であって、
前記装飾層は、合成樹脂(A)、平均粒子径10μm以上1000μm以下の着色粒子(B)、及び平均繊維長0.1mm以上5mm以下の化学繊維(C)を含み(ただし、炭酸カルシウムを結合成分として含有するものを除く)、
前記化学繊維(C)が、半合成繊維及び合成繊維から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記半合成繊維が、アセテート繊維、トリアセテート繊維、プロミックス繊維、前記合成繊維が、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリクラール繊維から選ばれる1種または2種以上であり、
前記(A)成分100重量部に対し、前記(B)成分を100〜4000重量部、前記(C)成分を1〜100重量部を含み、
前記基材は、織布または不織布であり、厚み0.05〜1.5mmであることを特徴とする積層体。
2.前記化学繊維が、親水性であることを特徴とする1.記載の積層体。
3.前記合成樹脂が、合成樹脂エマルションを含むことを特徴とする1.または2.に記載の積層体。

【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体は、基材の上に、装飾層が積層されたものであり、特定の装飾層を積層することによって優れた美観性を有すると共に、優れた可とう性、強度等の物性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の積層体は、基材上に、装飾層を有するものである。この積層体は、主に建築物の内外装建材として適用できるものであり、建築物外装面(下地)に貼り付けて使用するものである。
【0012】
(基材)
本発明の基材としては、特に限定されないが、例えば、紙、合成紙、不燃紙、樹脂シート、金属シート、組布、織布、不織布等が挙げられる。これらは、必要に応じて表面処理等が施されたものであってもよい。その厚みは、0.05mm以上(より好ましく0.1〜5mm)であることが好ましい。このような範囲内であれば、強度、伸縮性等の点で好適である。
【0013】
本発明では、基材として、織布または不織布を使用することが好ましく、特に無機質繊維を含む織布または不織布を使用することが好ましい。また、織布または不織布に、これとは異種の基材を1種以上積層したもの等も好適に使用することができる。具体的には、織布または不織布に、ガラスメッシュ、ガラスクロス、セラミックペーパー、合成紙、不燃紙等の1種以上を積層したもの等も好適に使用することができる。このような織布または不織布としては、厚み0.05〜1.5mm(より好ましくは0.1〜1.2mm、さらに好ましくは0.2〜1mm)、坪量は5〜300g/m、(より好ましくは10〜250g/m、さらに好ましくは20〜200g/m)であるものが好ましい。このような基材を用いることにより、美観性に優れた積層体が得られるとともに、積層体を下地へ施工した際、積層体を安定的に支えることができる。
【0014】
(装飾層)
本発明の装飾層は、上記基材上に形成され、積層体に意匠性を付与する層である。この装飾層は、着色粒子による模様を有するものである。
【0015】
装飾層は、合成樹脂(A)(以下「(A)成分」ともいう。)、着色粒子(B)(以下「(B)成分」ともいう)、及び平均繊維長0.1〜5mmの化学繊維(C)(以下「(C)成分」ともいう)を含む装飾層用組成物により形成されるものである。
【0016】
本発明の(A)成分は、主に(B)成分を固定化する役割を担う。このような(A)成分としては、各種の合成樹脂が使用できる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース及びその誘導体等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。このような樹脂成分は、塗膜形成後に架橋反応を生じる性質を有するものであってもよい。
【0017】
(A)成分のガラス転移温度は、好ましくは−60℃〜60℃、より好ましくは−40℃〜30℃、さらに好ましくは−30℃〜20℃である。(A)成分のガラス転移温度がこのような範囲の場合、適度な可とう性を付与することが可能となる。なお、ガラス転移温度はFoxの計算式により求められる値である。
【0018】
また、本発明の合成樹脂の形態としては、水分散型、水可溶型、NAD型、溶剤可溶型、非水分散型、無溶剤型等が挙げられ、1液タイプ、2液タイプ等特に限定されず、用いることができる。本発明では特に、水分散型(合成樹脂エマルション)を含むことが好ましい。このような場合、(C)成分との相互作用により、本発明の効果を高めることができる。
【0019】
本発明の着色粒子(B)は、装飾層に模様を付与する役割を担う。(B)成分を使用することによって、粒子径の小さい一般的な着色顔料等を使用した場合と異なり、(B)成分がそれぞれ模様として視認され、優れた色調や質感が付与できる。また(B)成分は、装飾層表面に微視的な凹凸を形成し、立体的な意匠の付与にも寄与することができる。
【0020】
このような(B)成分としては、何らかの色彩を有する固体粒子であれば特に限定されず、その材質が、無機質、有機質のいずれも使用でき、天然品、人工品のいずれも使用することができる。具体的には、例えば、重質炭酸カルシウム、マイカ、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、貝殻、バライト粉、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、金属片、金属粉、ガラスビーズ、ガラス粉砕物等の無機質粒子、樹脂ビーズ(樹脂粒子)、樹脂粉砕物、ゴム類、プラスチック類、植物繊維、植物片等の有機質粒子等が挙げられる。また、これらに着色を施したものも使用することができる。これらは、1種または2種以上で使用することができる。
【0021】
(B)成分の平均粒子径は、10μm以上1000μm以下(好ましく20μm以上800μm以下、より好ましくは30μm以上500μm以下)である。このような範囲の場合、(B)成分がそれぞれ模様として視認され、優れた色調や質感が付与できる。また、本発明では、少なくとも2種以上、好ましくは3種以上の平均粒子径の粒度構成を有する(B)成分を組み合せることによって、美観性を一層高めることができる。好適な態様としては、平均粒子径53μm以上125μm未満の着色粒子と、平均粒子径125μm以上500μm未満の着色粒子との組み合わせが挙げられる。より好適な態様としては、平均粒子径53μm以上125μm未満の着色粒子と、平均粒子径125μm以上212μm未満の着色粒子と、平均粒子径212μm以上500μm未満の着色粒子との組み合わせが挙げられる。なお(B)成分の平均粒子径は、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
【0022】
(B)成分の比率は、固形分換算で、(A)成分100重量部に対し、通常100重量部以上4000重量部以下、好ましくは200重量部以上3000重量部以下、より好ましくは500重量部以上2000重量部以下である。このような比率であれば、(B)成分の質感を活かした意匠性が付与される。
【0023】
本発明の化学繊維(C)は、装飾層に可とう性を付与する役割を担う。(C)成分の平均繊維長は、0.1mm以上5mm以下、好ましくは0.3mm以上3mm以下である。このような範囲の場合、装飾層の可とう性、強度等の物性を向上させることができる。本発明における(C)成分は、有機繊維であり、例えば、レーヨン繊維、キュプラ繊維、ポリノジック繊維、テンセル繊維等の再生繊維、アセテート繊維、トリアセテート繊維、プロミックス繊維等の半合成繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリクラール繊維等の合成繊維等から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0024】
このような(C)成分は、装飾層の意匠性を阻害することなく、装飾層に可とう性及び強度を付与することができる。これらの作用機構は明らかではないが、以下のように推察される。
・上記(A)成分と(C)成分の屈折率差が小さいため、装飾層中で(C)成分は略透明な状態となるため意匠性を阻害しないと推察される。
・上記(A)成分と(C)成分の比重差が小さいため、(A)成分中に(C)成分が均一に分散されるため、効果的に可とう性及び強度を付与することができると推察される。
・有機繊維である(C)成分は、ステンレス鋼繊維やロックウール等の無機繊維と比較し伸び率(伸度)が大きいため、効果的に可とう性及び強度を付与することができると推察される。本発明では(C)成分の伸度は、好ましくは5%以上(より好ましくは7%以上)である。
【0025】
本発明では特に、(C)成分が親水性であることが好ましい。これにより、装飾層及び積層体の可とう性がより一層向上し、かつ上記(A)成分が合成樹脂エマルションを含む場合、さらに優れた効果を発揮することができる。その作用機構は明らかではないが、合成樹脂エマルション中に(C)成分が均一に分散され、形成された装飾層では、(B)成分同士を(A)成分と(C)成分が均一に存在した状態で固定化することができるためと推察される。このような親水性を有する繊維としては、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、及びアラミド繊維等が挙げられる。本発明では特に、ビニロン繊維を含むことが好ましい。なお、本発明の親水性とは、水に馴染み易く濡れ易い性質を有するものであり、公定水分率が2%を超える(好ましくは3〜10%)繊維をいう。
【0026】
(C)成分の比率は、固形分換算で、(A)成分100重量部に対し、通常1重量部以上100重量部以下、好ましくは5重量部以上50重量部以下である。このような比率であれば、優れた可とう性、強度が付与される。
【0027】
また、本発明は上記成分に加え、本発明の効果を著しく損なわない限り、必要に応じ、その他の成分を含むことができる。このような成分としては、例えば、可塑剤、光安定剤、防藻剤、抗菌剤、消臭剤、吸着剤、難燃剤、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、蛍光顔料、骨材、繊維、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。
【0028】
本発明の装飾層は、その表面に、上記(A)成分に由来する微視的な凹凸形状を有するものが好ましい。この微視的な凹凸は、(A)成分の粒子径や凝集具合等に起因するもので、好ましくは1.5mm以下(より好ましくは0.005mm以上1.2mm以下、さらに好ましくは0.01mm以上1mm以下、最も好ましくは0.02mm以上0.8mm以下)の高低差を有するものである。
【0029】
また装飾層の厚みは、目的に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは0.1mm〜5mm、より好ましくは0.2mm〜3mmである。このような範囲の場合、意匠性に優れた装飾層が得られやすい。
【0030】
(積層体の製造方法)
本発明では、上記基材の上に装飾層が積層される限り、その製造方法は特に限定されないが、例えば、以下のような製造方法が挙げられる。
(ア)基材上に、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む装飾層用組成物を塗付して装飾層を形成する方法。
(イ)型枠に、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む装飾層用組成物を流し込んだ後、基材を積層させる方法。
【0031】
上記(ア)において、装飾層用組成物を塗付する際には、例えば、スプレー、ローラー、鏝、刷毛塗り、レシプロ、コーター、流し込み等の公知の塗付方法が使用できる。ここで、装飾層用組成物の粘度を5〜100Pa・s程度に設定しておけば、目的とする積層体が容易に得られる。なお、ここに言う粘度は、BH型粘度計による20rpmにおける粘度であり、測定温度は23℃である。
【0032】
上記(イ)において、使用する型枠としては、例えばシリコン樹脂製、ウレタン樹脂製、金属製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。また、基材を積層する方法としては、例えば、
(I)型枠に装飾層用組成物を流し込み、乾燥、脱型して装飾層を成型し、その後接着剤等で基材を積層する方法、
(II)型枠に装飾層用組成物を流し込み、該装飾層用組成物が乾燥する前に基材を積層し、乾燥、脱型する方法
等が挙げられる。
また、上記(I)(II)において装飾層用組成物を流し込む際には、上記(ア)と同様の塗付方法を採用することができる。
【0033】
本発明の効果を著しく阻害しない範囲内であれば、積層体の可とう性、強度等の物性を高める目的で装飾層の中間に補強層を設けることもできる。
【0034】
補強層としては、例えば、上記基材と同様のものを使用することができる。本発明では、上記基材と異なるものを使用することが好ましく、より好ましい態様としては、基材として織布または不織布を使用し、補強層として組布を使用する態様が挙げられる。このような場合、本発明の効果をより一層高めることができる。
【0035】
また、本発明では、装飾性等を高める目的で装飾層に凹凸模様を形成したり、装飾材料を散布することもできる。装飾材料としては、例えば、有色骨材、マイカ、貝殻類、植物類、アルミナフレーク、ガラスフレーク、金属類、あるいはゴム類、プラスチック類等が挙げられる。
例えば、上記(ア)の方法で製造する場合、凹凸模様の形成や、装飾材料の散布は、装飾層用組成物が硬化する前に行えばよい。凹凸模様の形成は、こて、型押し、ローラー等を用いた方法を採用することができる。装飾材料の散布は、公知または市販の散布機等を用いることができる。また、上記(イ)の方法で製造する場合、型枠側が積層体表面となるため、凹凸模様の形成は型枠内側の形状を調整することで付与することができる。装飾材料を散布する場合、公知または市販の散布機等を用い型枠内の底面に装飾材料を散在させた後に、装飾層用組成物を流し込めばよい。
【0036】
さらに、積層体の表面保護性等を高める目的で、装飾層の上に上塗層を積層することもできる。このような上塗層は、透明性を有するもの(クリヤー層)であればよく、この場合、上記積層体の意匠性(色相)をそのまま活かすことができる。また、上塗層は、透明性を有する範囲で各種顔料が添加されたカラークリヤー層であってもよい。このような上塗層としては、公知の水性型あるいは溶剤型コーティング材の塗付によって形成することができる。
これらの塗装は、公知の塗装方法によれば良く、スプレー、コーター、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。
【0037】
本発明積層体は、主に建築物の内外装建材として適用できる。すなわち、建築物内外装面の各部位に貼り付けて仕上げを行うことができる。具体的には、住宅、マンション、学校、病院、店舗、事務所、工場、倉庫、食堂等における壁、間仕切り、扉、天井等に適用できる。このような部位を構成する下地としては、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板等が挙げられる。これら下地は、その表面に既存塗膜を有するものや、既に壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【0038】
また、本発明積層体を施工する際には、接着剤、粘着剤、粘着テープ、釘、鋲等を用いて下地に貼着すればよい。その他、ピン、ファスナー、レール等を用いて固定化することもできる。中でも、本発明の積層体は、接着剤を用いて下地に貼着することが好ましい。
【0039】
接着剤としては、特に限定されず、公知のものを使用すればよい。例えば、接着剤に用いる合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等の水可溶型、水分散型等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
また、接着剤には、施工性、仕上り性、接着強度、防火性等の各種性能を付与するために、粉体成分、中空粒子、多孔質粒子、繊維等を添加したり、必要に応じ、着色材料、体質顔料、分散剤、粘性調整剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤等の通常使用される添加剤を適宜加えることができる。
【0040】
積層体を接着剤で貼り付ける際、隣接する積層体どうしを突き合わせて貼りつけたり、積層体間に目地を設けたりすることもできる。突き合わせて貼り付ける場合、接着剤がはみ出さないようにすることが好ましい。また、目地を設ける場合、積層体を貼り付ける際の間隔は特には限定されないが、1mm〜30mm程度であればよい。このような範囲であれば、目地模様を生かした仕上げを行うことができる。また、必要に応じて目地部の接着剤をへら等で平滑処理しても良い。接着剤を硬化させる際の雰囲気温度は、適宜設定することができるが、通常は常温でよい。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0042】
(装飾層用組成物1〜9)
表1に示す配合に従い、各原料を常法により混合・攪拌することによって装飾層用組成物1〜9を製造した。なお、原料としては以下のものを使用した。
【0043】
・合成樹脂1(アクリル樹脂エマルション、固形分50重量%、ガラス転移温度0℃)
・着色粒子1:着色珪砂(黒色、平均粒子径90μm)
・着色粒子2:着色珪砂(黒色、平均粒子径160μm)
・着色粒子3:着色珪砂(黒色、平均粒子径300μm)
・化学繊維1:ビニロン繊維(平均繊維長1mm、公定水分率5.0%、伸度12〜26%)
・化学繊維2:ポリエステル繊維(平均繊維長1mm、公定水分率0.4〜0.5%、伸度28〜45%)
・無機繊維1:ステンレス鋼繊維(平均繊維長1mm、公定水分量0%、伸度1〜2%)
【0044】
(試験例1)
基材(ガラス繊維含有不織布、厚み0.3mm)上に、装飾層用組成物1を、乾燥厚みが2mmとなるようにコーターで塗付し、60℃下で60分間乾燥し、積層体1を得た。得られた積層体は、美観性に優れていた。
(評価1)
得られた積層体1を90°折り曲げた後、表面の外観を目視で評価した。その結果を表2に示す。
なお、評価基準は、「異常なし」をA、「異常が認められた」ものをCとし、A>B>Cの3段階で評価した。
【0045】
(試験例2〜9)
装飾層用組成物1を装飾層用組成物2〜9に代えた以外は、試験例1と同様の方法で、それぞれ積層体2〜9を作製した。積層体2〜9はいずれも美観性に優れるものであった。積層体9は無機繊維によりやや意匠性に劣るものであった。
得られた積層体につき、試験例1と同様の試験を行った。結果は表2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】