特許第6341656号(P6341656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341656
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】建物構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/00 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   E04B1/00 502C
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-258510(P2013-258510)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-113681(P2015-113681A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤原 浩士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 星穂
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 敦
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大堀 太志
(72)【発明者】
【氏名】池内 ▲邦▼江
(72)【発明者】
【氏名】政井 竜太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 智浩
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/127518(WO,A1)
【文献】 実開昭47−003542(JP,U)
【文献】 特開2006−090116(JP,A)
【文献】 特開2012−225005(JP,A)
【文献】 実開昭59−048914(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
E04C 2/32
E04F 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、
前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、
前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口率が、他の面部と異ならせてあり、
前記パネルは、複数の波形が並設された波形板で構成してあり、前記波形のそれぞれが前記膨出部であり、
前記パネルは、前記波形の稜線が、横配置となる遮蔽壁であり、前記一端側面部は、前記膨出部の上面であると共に、前記開口の開口率が、他の面部より大きく設定してある建物構造。
【請求項2】
建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、
前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、
前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口径が、他の面部と異ならせてあり、
前記パネルは、複数の波形が並設された波形板で構成してあり、前記波形のそれぞれが前記膨出部であり、
前記パネルは、前記波形の稜線が、横配置となる遮蔽壁であり、前記一端側面部は、前記膨出部の上面であると共に、前記開口の開口率が、他の面部より大きく設定してある建物構造。
【請求項3】
建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、
前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、
前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口率が、他の面部と異ならせてあり、
前記膨出部における頂点部分にも前記開口が設けられている建物構造。
【請求項4】
建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、
前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、
前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口径が、他の面部と異ならせてあり、
前記膨出部における頂点部分にも前記開口が設けられている建物構造。
【請求項5】
前記パネルは、複数の波形が並設された波形板で構成してあり、前記波形のそれぞれが前記膨出部である請求項又はに記載の建物構造。
【請求項6】
前記パネルは、前記波形の稜線が、横配置となる遮蔽壁であり、前記一端側面部は、前記膨出部の上面であると共に、前記開口の開口率が、他の面部より大きく設定してある請求項に記載の建物構造。
【請求項7】
建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、
前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、
前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口率が、他の面部と異ならせてあり、
前記膨出部は、ピラミッド形状に形成されている建物構造。
【請求項8】
建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、
前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、
前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口径が、他の面部と異ならせてあり、
前記膨出部は、ピラミッド形状に形成されている建物構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネル(例えば、目隠しパネルや外装パネル等)に、多数の開口を設けてある建物構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の建物構造としては、例えば、バルコニー(建物本体に相当)のフェンスとして目隠しパネル(パネルに相当)が取り付けてあるものがあり、平板に多数の貫通孔(開口)を形成したパンチングメタル等でパネルが構成され、パネルの貫通孔は、例えば、丸孔形状や、正方形形状に形成され、平板の全域に均等な分布で設けてあるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−63883号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の建物構造によれば、パネルによる目隠し効果を高める為には、開口径を小さくしたり、開口の数を少なくする必要がある。
しかしながら、開口径を小さくしたり、開口の数を少なくすると、光や外気が透過し難くなり、例えば、バルコニーにおいては、建築基準法上の屋外バルコニーとしての要件(開口率)を満たせなくなったり、パネルを通して入射する太陽光の光量が減少して、昼間でもバルコニーが暗くなってしまう。
この問題点を解消する為には、開口の開口径を大きくしたり、開口の数を増やすとことになるが、その場合は、目隠し効果が低下するという新たな問題が発生する。
即ち、パネルによる目隠し効果と、パネルを透過する透過光の光量や通風量の確保との両方を満たすことが困難であるという問題点がある。
また、パネルには、風圧等の外力が作用することがあるが、多数の開口が設けてあることによるパネルの強度低下を補う為に、パネル厚みを増加させたり、パネルの支持スパンを短くする等の対策が必要となり、結果的に設備費用が高くつくという問題点もある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、パネルによる目隠し効果と、パネルを透過する透過光の光量や通風量の確保とを、経済的に満たすことができる建物構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口率が、他の面部と異ならせてあり、前記パネルは、複数の波形が並設された波形板で構成してあり、前記波形のそれぞれが前記膨出部であり、前記パネルは、前記波形の稜線が、横配置となる遮蔽壁であり、前記一端側面部は、前記膨出部の上面であると共に、前記開口の開口率が、他の面部より大きく設定してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、パネルは、外部空間側に膨出する複数の膨出部を備えているから、パネルの断面係数や断面二次モーメント等の断面特性が、板厚の同じ平板に比べて向上するから、多数の開口を設けてあっても、充分な剛性を確保することが可能となる。
従って、パネルとしての厚みを増加したり、パネルの支持スパンを短くすることを実施しなくても、風圧等の外力に対する耐力を確保できるようになる。その結果、設備費用の増加を抑えることができ、経済性を向上させることが可能となる。
【0008】
また、上述のようなパネルに設けた膨出部の各面部を使用しながら、面部に応じて開口の開口率を異ならせてあるので、該当面部の向く方向において、パネルを透過する透過光の光量を他の面部と異ならせることができる。
【0009】
つまり、一例を挙げれば、膨出部のパネル面部として、斜め上方を向く一端側面部と、斜め下方を向く他の面部とを備えたバルコニー目隠しパネルが設けられた建物構造の場合、前記一端側面部の開口の開口率を、前記他の面部の開口の開口率より大きく設定してあれば、斜め上方からバルコニーに照射される太陽光は、前記一端側面部の開口を通してバルコニーに入射するから、バルコニーでの日射量を充分確保することができる。また、斜め下方からバルコニーに向けた視線は、前記他の面部に設けられた開口率の小さい開口によって透過し難くでき、目隠し効果を発揮することができる。
また、パネル面部のすべての開口の合計面積を、所定値以上となるように設定しておけば、建築基準法上の屋外バルコニーとしての要件を満たすための開放面積を確保することが可能となり、良好な通風性を維持した状態で、日射量の確保、目隠し、及び、外部との遮蔽を、効果的に行うことが可能になる。
【0010】
但し、膨出部のパネル面部は、斜め上方と斜め下方とを向く面部を備えて構成されるものに限るものでは無く、例えば、パネル正面に対して、右側を向く面部や、左側を向く面部や、正面を向く面部等、さまざまな構成が対象となる。従って、開口を透過する透過光も、先の一例のように下方からの視線と、上方からの太陽光に限るものではなく、例えば、一方からの(又は、一方に向けた)視線と他方からの(又は、他方に向けた)視線であったり、一方からの(又は、一方に向けた)視線と他方からの(又は、他方に向けた)照射光等、状況に応じて様々な透過光が対象となる。
従って、該当建物構造におけるパネルの用途は、バルコニーの目隠しパネルに限るものではなく、建物本体を取り巻く様々な位置に設けられるものが対象となる。
【0011】
以上のように、本発明の特徴構成によれば、パネルによる目隠し効果と、パネルを透過する透過光の光量や通風量の確保とを、経済的に満たすことができる。
【0012】
本発明の第2の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口径が、他の面部と異ならせてあり、前記パネルは、複数の波形が並設された波形板で構成してあり、前記波形のそれぞれが前記膨出部であり、前記パネルは、前記波形の稜線が、横配置となる遮蔽壁であり、前記一端側面部は、前記膨出部の上面であると共に、前記開口の開口率が、他の面部より大きく設定してあるところにある。
【0013】
本発明の第2の特徴構成によれば、パネルは、外部空間側に膨出する複数の膨出部を備えているから、パネルの断面係数や断面二次モーメント等の断面特性が、板厚の同じ平板に比べて向上するから、多数の開口を設けてあっても、充分な剛性を確保することが可能となる。
従って、パネルとしての厚みを増加したり、パネルの支持スパンを短くすることを実施しなくても、風圧等の外力に対する耐力を確保できるようになる。その結果、設備費用の増加を抑えることができ、経済性を向上させることが可能となる。
【0014】
また、上述のようなパネルに設けた膨出部の各面部を使用しながら、面部に応じて開口の開口径を異ならせてあるので、該当面部の向く方向において、パネルを透過する透過光の光量を他の面部と異ならせることができる。
【0015】
つまり、一例を挙げれば、膨出部のパネル面部として、斜め上方を向く一端側面部と、斜め下方を向く他の面部とを備えたバルコニー目隠しパネルが設けられた建物構造の場合、前記一端側面部の開口の開口径を、前記他の面部の開口の開口径より大きく設定してあれば、斜め上方からバルコニーに照射される太陽光は、前記一端側面部の開口を通してバルコニーに入射するから、バルコニーでの日射量を充分確保することができる。また、斜め下方からバルコニーに向けた視線は、前記他の面部に設けられた開口径の小さい開口によって透過し難くでき、目隠し効果を発揮することができる。
また、パネル面部のすべての開口の合計面積を、所定値以上となるように設定しておけば、建築基準法上の屋外バルコニーとしての要件を満たすための開放面積を確保することが可能となり、良好な通風性を維持した状態で、日射量の確保、目隠し、及び、外部との遮蔽を、効果的に行うことが可能になる。
【0016】
但し、膨出部のパネル面部は、斜め上方と斜め下方とを向く面部を備えて構成されるものに限るものでは無く、例えば、パネル正面に対して、右側を向く面部や、左側を向く面部や、正面を向く面部等、さまざまな構成が対象となる。従って、開口を透過する透過光も、先の一例のように下方からの視線と、上方からの太陽光に限るものではなく、例えば、一方からの(又は、一方に向けた)視線と他方からの(又は、他方に向けた)視線であったり、一方からの(又は、一方に向けた)視線と他方からの(又は、他方に向けた)照射光等、状況に応じて様々な透過光が対象となる。
従って、該当建物構造におけるパネルの用途は、バルコニーの目隠しパネルに限るものではなく、建物本体を取り巻く様々な位置に設けられるものが対象となる。
【0017】
以上のように、本発明の特徴構成によれば、パネルによる目隠し効果と、パネルを透過する透過光の光量や通風量の確保とを、経済的に満たすことができる。
【0018】
本発明の第3の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口率が、他の面部と異ならせてあり、前記膨出部における頂点部分にも前記開口が設けられているところにある。
本発明の第4の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口径が、他の面部と異ならせてあり、前記膨出部における頂点部分にも前記開口が設けられているところにある。
本発明の第の特徴構成は、前記パネルは、複数の波形が並設された波形板で構成してあり、前記波形のそれぞれが前記膨出部であるところにある。
【0019】
本発明の第の特徴構成によれば、パネルは、複数の波形が並設された波形板で構成され、波形のそれぞれが膨出部であるから、波形の波長方向での波前後面を、それぞれ膨出部のパネル面部として使用し、透過光の光量がそれぞれのパネル面部で異なるように開口を設けることができる。
パネル面部に開口を設ける上で、波形の稜線に沿う方向で、開口を画一的に形成すれば、各パネル面毎に、透過光の光量のバラツキを少なくでき、目隠し効果、及び、透過光の光量確保効果を、それぞれ安定して得ることができる。
また、波形の稜線に沿う方向で、開口の大きさ又は密度等に変化をつけた状態に設けることも可能となり、その場合は、波形板の波長方向での単純な波形の繰り返しによる単調な意匠感と、波形の稜線に沿う方向での開口の変化に富んだ意匠感との融合により、デザイン性に富んだ複雑な外観を得ることができ、建物としての美観性の向上を図ることが可能となる。
また、パネルの断面係数や断面二次モーメント等の断面特性を、パネルの全域においてバラツキの少ない状態で確保しやすくなる。
【0020】
本発明の第の特徴構成は、前記パネルは、前記波形の稜線が、横配置となる遮蔽壁であり、前記一端側面部は、前記膨出部の上面であると共に、前記開口の開口率が、他の面部より大きく設定してあるところにある。
【0021】
本発明の第の特徴構成によれば、一端側面部は、建物本体から外部空間側を向いた状態で、斜め上方を向いており、その一端側面部での開口の開口率が、他の面部より大きく設定してあるから、斜め上方から建物本体に照射される太陽光は、開口率の大きい一端側面部の開口を通して建物本体に入射し、建物本体での日射量を充分確保することができる。
また、前記他の面部は、建物本体から外部空間側を向いた状態で、斜め下方を向いており、前記他の面部での開口の開口率が、前記一端側面部より小さく設定してあるから、前記他の面部においては光が透過し難くなり、斜め下方から建物本体に向けた視線に対する目隠し効果を発揮することができる。
また、同様の効果は、例えば、複数の傾斜帯板を上下間隔を明けて配置してあるガラリ等によっても叶えることは可能であるが、その場合は、本特徴構成の建物構造に比べて、部品点数が多くなる他、複数の傾斜帯板を縦桟に取り付ける等の組立手間が掛かり、高価になりやすい問題点がある。更には、各傾斜帯板等の脱落や意に反して取り外される危険があることから、遮蔽壁としてのセキュリティー上の問題点がある。
これらの問題点は、本発明の特徴構成によれば、すべて解消することができる。
本発明の第7の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口率が、他の面部と異ならせてあり、前記膨出部は、ピラミッド形状に形成されているところにある。
本発明の第8の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口径が、他の面部と異ならせてあり、前記膨出部は、ピラミッド形状に形成されているところにある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】建物構造を示す断面図
図2】パネルを示す要部斜視図
図3】パネルを示す要部縦断面図
図4】別実施形態の建物構造を示す要部平面図
図5】別実施形態のパネルを示す一部切欠斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の建物構造の一実施形態を示すもので、複数階層を備えた建物本体1の側面にパネルPを設けてある状況を示している。
【0025】
建物本体1は、当該実施形態においては、データーセンターを例を挙げて説明するものであり、外周部には通路状のバルコニー2が、各階層毎に設けられている。
建物本体1の室内には、コンピュータ等の演算設備1a、空調設備1b等が配置されており、バルコニー2には、空調設備1bに連通接続された冷媒配管等の複数の空調用配管3が配置されている。
【0026】
空調用配管3は、バルコニー2の下部に沿わせて支持されており、バルコニー2の床面上は、自由に通行したり、メンテナンスに使用できるように空けてある。
各空調用配管3の支持は、バルコニー2の外縁位置に立設されているH形鋼製の支柱4から建物本体1側にわたって設置されたH形鋼製の梁部材5の上に、それぞれを並列させてバルコニー2の長手方向に沿う状態に載置固定することで実施されている。
【0027】
支柱4は、バルコニー2の長手方向に横間隔を空けた複数箇所に、最下層から最上層まで達する状態に立設してある。
【0028】
パネルPは、隣接する支柱4にわたって固定してあり、外部から、バルコニー2に侵入者が入れないように遮蔽壁として構成されている。
パネルPは、図2図3に示すように、複数の波形6が並設された金属製の波形板P1で構成してあり、波形6の稜線Xが横配置となる状態で支柱4に固着してある。
波形6の形状は、建物本体1側から外部空間V側に台形形状に膨出する形状を呈している。この波形6それぞれが、膨出部7を構成している。
【0029】
当該実施形態においては、膨出部7は、上述のように断面台形形状に形成されているから、パネル面部8としては、外部空間V側に下り勾配の上傾斜面部(一端側面部の一例)8Aと、上傾斜面部8Aの先端縁部から下方に屈曲した正面部(他の面部及び頂点部分の一例)8Bと、正面部8Bの下縁部から建物本体1側に下り勾配で屈曲した下傾斜面部(他の面部の一例)8Cとを備えて構成されている。
また、上下の膨出部7どうしは、連結面部9によって連結されており、この連結面部9を支柱4にネジ固定することでパネルPは固着されている。
【0030】
パネル面部8には、それぞれ多数の開口10が形成してある。
各開口10の横方向の中心部間隔は、同じ寸法となるように設定されている。
また、開口10の単体開口面積は、各パネル面部8毎に異なる値となるように設定してある。
当該実施形態においては、膨出部7を構成しているパネル面部8の内、パネルPの上端側(パネルPの一端側の一例)Paに位置している上傾斜面部8Aは、その上傾斜面部8Aに形成されている開口10Aの開口径φAが、正面部8Bに形成されている開口10Bの開口径φBや、下傾斜面部8Cに形成されている開口10Cの開口径φCより大きく設定されている。
具体的には、開口10そのものは、四角形の角を丸めた形状に形成してあり、ここでいう開口径φとは、四角形の一辺の長さ(又は四辺の平均値)を意味する。尚、開口10が円形(又は楕円形)の場合は、開口径φは、直径(又は平均径)を意味する。
従って、(該当面部の全開口面積/該当面部の全面積)で求められる開口率は、上傾斜面部8Aの開口率が、正面部8Bや下傾斜面部8Cでの開口率より大きく設定されている。
【0031】
その結果、図3に示すように、斜め上方から照射される太陽光L1は、上傾斜面部8Aの開口10Aを通してその大半がバルコニー2に照射され、バルコニー2での受光量を充分確保することができる。
また、斜め下方からの視線L2は、正面部8Bや下傾斜面部8Cの小さい開口10B,10Cによる目隠し効果によって、その大半が遮断され、建物外部から見通されにくくできる。尚、上傾斜面部8Aは、斜め下方からの視線L2に沿った方向に設けられているから、そこに形成された大きい開口10Aを視線L2が通過することがなく、目隠し効果の低下にはつながりにくい。
【0032】
当該実施形態の建物構造によれば、パネルPに多数の開口10を形成してあるにもかかわらず、波形板P1を使用してあることで、平板に比べて断面係数や断面二次モーメント等の断面特性を大きく確保することができ、外部空間Vに面したパネルP全体として充分な剛性を確保することが可能となる。
また、バルコニー2での日射量を充分確保できながら、建物外部の下方からの視線に対する目隠し効果を発揮することができる。
また、一体の波形板P1を使用したパネルPによって遮蔽壁を構成しているから、例えば、複数の部品を組み合わせて形成するガラリに比べて経済性が高い上、部品の脱落や、部品が外部から取り外される等の危険性が低く、セキュリティー上の安全性も高い。
更には、パネル面部8のすべての開口10の合計面積を、所定値以上となるように設定しておけば、建築基準法上の屋外バルコニーとしての要件を満たすための開放面積を確保することが可能となる。
【0033】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0034】
〈1〉 建物本体1は、先の実施形態で説明したデータセンターに限るものではなく、各種用途の建物が対象となり得る。
【0035】
〈2〉 パネルPは、先の実施形態で説明した建物本体1の側方に壁として設けられる構成に限るものではなく、例えば、建物本体1の上方に水平配置(又は、傾斜配置)される構成であってもよい。
従って、膨出部7を構成しているパネル面部8の内、パネルPの一端側Paとは、先の実施形態で説明した上端側に限るものではなく、例えば、下端側であったり、パネルPが水平配置の場合は、横方向での一端側であってもよい。
また、開口10の開口率(又は開口径)は、パネルの一端側に位置している一端側面部8Aが、他の面部8B,8Cより大きいことに限らず、小さいものであってもよい。
要するに、パネルPは、外部空間V側に膨出する複数の膨出部7を備え、膨出部7を構成しているパネル面部8の内、パネルPの一端側に位置している一端側面部8Aは、開口10の開口率(又は開口径)が、他の面部8B,8Cと異ならせてあればよい。
【0036】
〈3〉 開口10は、先の実施形態で説明した四角形の角を丸めた形状に限るものではなく、例えば、三角形や五角形以上の多角形であったり、円形や楕円形であったり、それらを組み合わせた形状等、特に規定されるものではない。
また、開口10そのものは、パネル面部8を貫通する貫通孔として形成されるもの以外に、開口10を透明体(例えば、透明フィルムや透明シート等)で閉塞して、空気の流通を遮断した状態で光の透過を許容できるように構成してあってもよい。
【0037】
〈4〉 パネルPは、先の実施形態で説明した膨出部7として台形形状の波形6を備えた波形板P1に限るものではなく、例えば、図4に示すように、膨出部7として丸波形状の波形を備えた波形板P2で構成してあってもよい。
また、波形の稜線Xが横配置となる設置姿勢に限るものではなく、例えば、図4に示すように、波形の稜線Xが縦配置となるように設置してあってもよい。
この実施形態においては、例えば、該当建物本体1の立地条件として、パネルPの一端側Paが、海岸や山等の景観の美しい領域K1側に位置し、パネルPの他端側Pbが、隣接家屋等の目隠しを要する領域K2側に位置するような場合に有効である。
つまり、パネル面部8の内、一端側面部8Aの開口10は、他の面部8B,8Cより開口率、及び、開口径を大きく設定してあることで、建物本体1からの視線として、領域K1の景観は、大きい開口10を通して観賞でき、且つ、領域K2からの視線は小さい開口10によって目隠しすることが可能となる。
【0038】
〈5〉 パネルPは、先の実施形態で説明した膨出部7として波形6を備えて構成してあるものに限るものではなく、例えば、図5に示すように、扁平ピラミット形状に形成してあってもよい。尚、図5の記載は、開口10を省略している。
この実施形態の場合、一例として、図に示すように、扁平ピラミット形状のパネル面部8の内、上傾斜面を形成する一端側面部8Aの開口率を、他の面部8B,8Cより大きく設定してあれば、先の実施形態と同様に、建物本体1への日射量を充分確保できながら、建物外部の下方からの視線に対する目隠し効果を発揮することができる。
【0039】
〈6〉 開口10を透過する透過光は、先の実施形態で説明した太陽光や視線に限るものではなく、例えば、建物の内部、又は、外部に設置された照明装置からの照射光であってもよい。
【0040】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 建物本体
6 波形
7 膨出部
8 パネル面部
8A 上傾斜面部(一端側面部の一例)
8B 正面部(他の面部及び頂点部分の一例)
8C 下傾斜面部(他の面部の一例)
10 開口
P パネル
Pa 上端側(パネルPの一端側の一例)
P1 波形板
P2 波形板
V 外部空間
X 稜線
図1
図2
図3
図4
図5