【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の建物構造によれば、パネルによる目隠し効果を高める為には、開口径を小さくしたり、開口の数を少なくする必要がある。
しかしながら、開口径を小さくしたり、開口の数を少なくすると、光や外気が透過し難くなり、例えば、バルコニーにおいては、建築基準法上の屋外バルコニーとしての要件(開口率)を満たせなくなったり、パネルを通して入射する太陽光の光量が減少して、昼間でもバルコニーが暗くなってしまう。
この問題点を解消する為には、開口の開口径を大きくしたり、開口の数を増やすとことになるが、その場合は、目隠し効果が低下するという新たな問題が発生する。
即ち、パネルによる目隠し効果と、パネルを透過する透過光の光量や通風量の確保との両方を満たすことが困難であるという問題点がある。
また、パネルには、風圧等の外力が作用することがあるが、多数の開口が設けてあることによるパネルの強度低下を補う為に、パネル厚みを増加させたり、パネルの支持スパンを短くする等の対策が必要となり、結果的に設備費用が高くつくという問題点もある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、パネルによる目隠し効果と、パネルを透過する透過光の光量や通風量の確保とを、経済的に満たすことができる建物構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口率が、他の面部と異ならせてあ
り、前記パネルは、複数の波形が並設された波形板で構成してあり、前記波形のそれぞれが前記膨出部であり、前記パネルは、前記波形の稜線が、横配置となる遮蔽壁であり、前記一端側面部は、前記膨出部の上面であると共に、前記開口の開口率が、他の面部より大きく設定してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、パネルは、外部空間側に膨出する複数の膨出部を備えているから、パネルの断面係数や断面二次モーメント等の断面特性が、板厚の同じ平板に比べて向上するから、多数の開口を設けてあっても、充分な剛性を確保することが可能となる。
従って、パネルとしての厚みを増加したり、パネルの支持スパンを短くすることを実施しなくても、風圧等の外力に対する耐力を確保できるようになる。その結果、設備費用の増加を抑えることができ、経済性を向上させることが可能となる。
【0008】
また、上述のようなパネルに設けた膨出部の各面部を使用しながら、面部に応じて開口の開口率を異ならせてあるので、該当面部の向く方向において、パネルを透過する透過光の光量を他の面部と異ならせることができる。
【0009】
つまり、一例を挙げれば、膨出部のパネル面部として、斜め上方を向く一端側面部と、斜め下方を向く他の面部とを備えたバルコニー目隠しパネルが設けられた建物構造の場合、前記一端側面部の開口の開口率を、前記他の面部の開口の開口率より大きく設定してあれば、斜め上方からバルコニーに照射される太陽光は、前記一端側面部の開口を通してバルコニーに入射するから、バルコニーでの日射量を充分確保することができる。また、斜め下方からバルコニーに向けた視線は、前記他の面部に設けられた開口率の小さい開口によって透過し難くでき、目隠し効果を発揮することができる。
また、パネル面部のすべての開口の合計面積を、所定値以上となるように設定しておけば、建築基準法上の屋外バルコニーとしての要件を満たすための開放面積を確保することが可能となり、良好な通風性を維持した状態で、日射量の確保、目隠し、及び、外部との遮蔽を、効果的に行うことが可能になる。
【0010】
但し、膨出部のパネル面部は、斜め上方と斜め下方とを向く面部を備えて構成されるものに限るものでは無く、例えば、パネル正面に対して、右側を向く面部や、左側を向く面部や、正面を向く面部等、さまざまな構成が対象となる。従って、開口を透過する透過光も、先の一例のように下方からの視線と、上方からの太陽光に限るものではなく、例えば、一方からの(又は、一方に向けた)視線と他方からの(又は、他方に向けた)視線であったり、一方からの(又は、一方に向けた)視線と他方からの(又は、他方に向けた)照射光等、状況に応じて様々な透過光が対象となる。
従って、該当建物構造におけるパネルの用途は、バルコニーの目隠しパネルに限るものではなく、建物本体を取り巻く様々な位置に設けられるものが対象となる。
【0011】
以上のように、本発明の特徴構成によれば、パネルによる目隠し効果と、パネルを透過する透過光の光量や通風量の確保とを、経済的に満たすことができる。
【0012】
本発明の第2の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口径が、他の面部と異ならせてあ
り、前記パネルは、複数の波形が並設された波形板で構成してあり、前記波形のそれぞれが前記膨出部であり、前記パネルは、前記波形の稜線が、横配置となる遮蔽壁であり、前記一端側面部は、前記膨出部の上面であると共に、前記開口の開口率が、他の面部より大きく設定してあるところにある。
【0013】
本発明の第2の特徴構成によれば、パネルは、外部空間側に膨出する複数の膨出部を備えているから、パネルの断面係数や断面二次モーメント等の断面特性が、板厚の同じ平板に比べて向上するから、多数の開口を設けてあっても、充分な剛性を確保することが可能となる。
従って、パネルとしての厚みを増加したり、パネルの支持スパンを短くすることを実施しなくても、風圧等の外力に対する耐力を確保できるようになる。その結果、設備費用の増加を抑えることができ、経済性を向上させることが可能となる。
【0014】
また、上述のようなパネルに設けた膨出部の各面部を使用しながら、面部に応じて開口の開口径を異ならせてあるので、該当面部の向く方向において、パネルを透過する透過光の光量を他の面部と異ならせることができる。
【0015】
つまり、一例を挙げれば、膨出部のパネル面部として、斜め上方を向く一端側面部と、斜め下方を向く他の面部とを備えたバルコニー目隠しパネルが設けられた建物構造の場合、前記一端側面部の開口の開口径を、前記他の面部の開口の開口径より大きく設定してあれば、斜め上方からバルコニーに照射される太陽光は、前記一端側面部の開口を通してバルコニーに入射するから、バルコニーでの日射量を充分確保することができる。また、斜め下方からバルコニーに向けた視線は、前記他の面部に設けられた開口径の小さい開口によって透過し難くでき、目隠し効果を発揮することができる。
また、パネル面部のすべての開口の合計面積を、所定値以上となるように設定しておけば、建築基準法上の屋外バルコニーとしての要件を満たすための開放面積を確保することが可能となり、良好な通風性を維持した状態で、日射量の確保、目隠し、及び、外部との遮蔽を、効果的に行うことが可能になる。
【0016】
但し、膨出部のパネル面部は、斜め上方と斜め下方とを向く面部を備えて構成されるものに限るものでは無く、例えば、パネル正面に対して、右側を向く面部や、左側を向く面部や、正面を向く面部等、さまざまな構成が対象となる。従って、開口を透過する透過光も、先の一例のように下方からの視線と、上方からの太陽光に限るものではなく、例えば、一方からの(又は、一方に向けた)視線と他方からの(又は、他方に向けた)視線であったり、一方からの(又は、一方に向けた)視線と他方からの(又は、他方に向けた)照射光等、状況に応じて様々な透過光が対象となる。
従って、該当建物構造におけるパネルの用途は、バルコニーの目隠しパネルに限るものではなく、建物本体を取り巻く様々な位置に設けられるものが対象となる。
【0017】
以上のように、本発明の特徴構成によれば、パネルによる目隠し効果と、パネルを透過する透過光の光量や通風量の確保とを、経済的に満たすことができる。
【0018】
本発明の第3の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口率が、他の面部と異ならせてあり、前記膨出部における頂点部分にも前記開口が設けられているところにある。
本発明の第4の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口径が、他の面部と異ならせてあり、前記膨出部における頂点部分にも前記開口が設けられているところにある。
本発明の第
5の特徴構成は、前記パネルは、複数の波形が並設された波形板で構成してあり、前記波形のそれぞれが前記膨出部であるところにある。
【0019】
本発明の第
5の特徴構成によれば、パネルは、複数の波形が並設された波形板で構成され、波形のそれぞれが膨出部であるから、波形の波長方向での波前後面を、それぞれ膨出部のパネル面部として使用し、透過光の光量がそれぞれのパネル面部で異なるように開口を設けることができる。
パネル面部に開口を設ける上で、波形の稜線に沿う方向で、開口を画一的に形成すれば、各パネル面毎に、透過光の光量のバラツキを少なくでき、目隠し効果、及び、透過光の光量確保効果を、それぞれ安定して得ることができる。
また、波形の稜線に沿う方向で、開口の大きさ又は密度等に変化をつけた状態に設けることも可能となり、その場合は、波形板の波長方向での単純な波形の繰り返しによる単調な意匠感と、波形の稜線に沿う方向での開口の変化に富んだ意匠感との融合により、デザイン性に富んだ複雑な外観を得ることができ、建物としての美観性の向上を図ることが可能となる。
また、パネルの断面係数や断面二次モーメント等の断面特性を、パネルの全域においてバラツキの少ない状態で確保しやすくなる。
【0020】
本発明の第
6の特徴構成は、前記パネルは、前記波形の稜線が、横配置となる遮蔽壁であり、前記一端側面部は、前記膨出部の上面であると共に、前記開口の開口率が、他の面部より大きく設定してあるところにある。
【0021】
本発明の第
6の特徴構成によれば、一端側面部は、建物本体から外部空間側を向いた状態で、斜め上方を向いており、その一端側面部での開口の開口率が、他の面部より大きく設定してあるから、斜め上方から建物本体に照射される太陽光は、開口率の大きい一端側面部の開口を通して建物本体に入射し、建物本体での日射量を充分確保することができる。
また、前記他の面部は、建物本体から外部空間側を向いた状態で、斜め下方を向いており、前記他の面部での開口の開口率が、前記一端側面部より小さく設定してあるから、前記他の面部においては光が透過し難くなり、斜め下方から建物本体に向けた視線に対する目隠し効果を発揮することができる。
また、同様の効果は、例えば、複数の傾斜帯板を上下間隔を明けて配置してあるガラリ等によっても叶えることは可能であるが、その場合は、本特徴構成の建物構造に比べて、部品点数が多くなる他、複数の傾斜帯板を縦桟に取り付ける等の組立手間が掛かり、高価になりやすい問題点がある。更には、各傾斜帯板等の脱落や意に反して取り外される危険があることから、遮蔽壁としてのセキュリティー上の問題点がある。
これらの問題点は、本発明の特徴構成によれば、すべて解消することができる。
本発明の第7の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口率が、他の面部と異ならせてあり、前記膨出部は、ピラミッド形状に形成されているところにある。
本発明の第8の特徴構成は、建物本体と外部空間との間に遮蔽状態に設置されたパネルに、多数の開口を設けてある建物構造であって、前記パネルは、前記外部空間側に膨出する複数の膨出部を備え、前記膨出部を構成しているパネル面部の内、前記パネルの一端側に位置している一端側面部は、前記開口の開口径が、他の面部と異ならせてあり、前記膨出部は、ピラミッド形状に形成されているところにある。