特許第6341677号(P6341677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341677
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】スラスト軸受及びタービン
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/04 20060101AFI20180604BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   F16C17/04 B
   F01D25/16 G
   F01D25/16 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-17994(P2014-17994)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-145688(P2015-145688A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】横山 真平
(72)【発明者】
【氏名】佐野 岳志
(72)【発明者】
【氏名】杼谷 直人
(72)【発明者】
【氏名】角 侑樹
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03893737(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0171616(US,A1)
【文献】 特開平03−125015(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/098003(WO,A1)
【文献】 特開2012−117608(JP,A)
【文献】 特開昭58−180815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26
F16C 33/00−33/28
F16N 1/00−99/00
F01D 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の径方向外側に突出し、前記回転軸の周方向に亘って設けられるスラストカラーに、前記回転軸の軸方向において対向するスラスト軸受であって、
前記軸方向において前記スラストカラーと対向し、前記周方向に沿って所定の隙間を空けて設けられる複数の軸受パッドと、
前記周方向に隣り合う前記軸受パッド同士の前記隙間に設けられ、前記スラストカラーと前記軸受パッドとの間に潤滑流体を供給する複数の潤滑流体供給孔が形成される潤滑流体供給ノズルと、
前記スラストカラー、前記軸受パッド及び前記潤滑流体供給ノズルを収容する軸受ケーシングと、を備え、
前記軸受ケーシングの内部が大気解放され、前記潤滑流体供給ノズルが前記スラストカラーと前記各軸受パッドとの間に前記潤滑流体を直接噴射する直接潤滑型となっており、
前記潤滑流体供給ノズルは、前記径方向外側から噴射する前記潤滑流体の供給量を、前記径方向内側から噴射する前記潤滑流体の供給量に比して多くなるように形成され、
前記潤滑流体供給ノズルは、前記径方向に所定の間隔を空けて並べて形成される複数の前記潤滑流体供給孔を有し、
複数の前記潤滑流体供給孔は、前記径方向に所定の間隔を空けて並べて一列に設けられたものが、前記周方向に複数列に並べて設けられており、
複数列の前記潤滑流体供給孔のうち、一列の前記各潤滑流体供給孔は、他の一列の隣り合う前記潤滑流体供給孔同士の間に位置するように、前記径方向に位置ずれして設けられていることを特徴とするスラスト軸受。
【請求項2】
複数の前記潤滑流体供給孔は、前記径方向に隣り合う前記潤滑流体供給孔同士の間の間隔が、前記径方向の外側に向かうにつれて狭くなることを特徴とする請求項1に記載のスラスト軸受。
【請求項3】
複数の前記潤滑流体供給孔の開口直径は、前記径方向の外側に向かうにつれて大きくなることを特徴とする請求項1に記載のスラスト軸受。
【請求項4】
前記軸受パッドに対する前記回転軸の相対的な回転方向において、前記回転方向の上流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の数は、前記回転方向の下流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の数と比べて多いことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスラスト軸受。
【請求項5】
前記軸受パッドに対する前記回転軸の相対的な回転方向において、前記回転方向の下流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の数は、前記回転方向の上流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の数と比べて多いことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスラスト軸受。
【請求項6】
前記軸受パッドに対する前記回転軸の相対的な回転方向において、前記回転方向の下流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の噴射方向と、前記回転方向の上流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の噴射方向とは、異なる方向となっていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のスラスト軸受。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のスラスト軸受を備えることを特徴とするタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の軸方向(スラスト方向)における荷重を支持するスラスト軸受及びタービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸に固定されたスラストディスク(スラストカラー)と、静止部材側の軸受パッドとの間に潤滑膜を形成して荷重を支持するスラスト軸受装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このスラスト軸受装置は、スラストディスクと軸受パッドとの間へ向けて潤滑流体を直接噴出する、直接潤滑方式となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−282692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1のような直接潤滑方式のスラスト軸受では、スラストカラーと軸受パッドとの間へ向けて、潤滑流体としての潤滑油を直接噴射することから、軸受パッドの表面は、潤滑油と空気とを含む気液二相状態となる場合がある。ここで、軸受パッドは、径方向外側の周長が径方向内側の周長よりも長くなっており、これにより、径方向外側における周速が径方向内側における周速に比して速くなることから、径方向外側において特に気液二相状態が発生し易い。
【0005】
一方で、直接潤滑方式のスラスト軸受ではなく、油浴方式のスラスト軸受がある。油浴方式のスラスト軸受は、直接潤滑方式とは異なり、軸受パッドの表面に空気が介在せず、常に潤滑油が満たされた状態となるように、潤滑油が密封されている。このため、軸受パッドの表面は、周速にかかわらず、径方向に亘って潤滑油が満たされた状態となる。
【0006】
このように、油浴方式のスラスト軸受とは異なり、直接潤滑方式のスラスト軸受において、軸受パッドの表面が気液二相状態となってしまうと、スラストカラーと軸受パッドとが摺動の熱によって、径方向外側が径方向内側よりも温度上昇し易いものとなってしまい、特に、回転軸の大型化に伴って、この傾向が顕著となる。
【0007】
そこで、本発明は、スラストカラー及び軸受パッドの間に径方向に亘って適切に潤滑流体を供給し、スラストカラー及び軸受パッドの温度上昇を抑制することができるスラスト軸受及びタービンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスラスト軸受は、回転軸の径方向外側に突出し、前記回転軸の周方向に亘って設けられるスラストカラーに、前記回転軸の軸方向において対向するスラスト軸受であって、前記軸方向において前記スラストカラーと対向し、前記周方向に沿って所定の隙間を空けて設けられる複数の軸受パッドと、前記周方向に隣り合う前記軸受パッド同士の前記隙間に設けられ、前記スラストカラーと前記軸受パッドとの間に潤滑流体を供給する複数の潤滑流体供給孔が形成される潤滑流体供給ノズルと、前記スラストカラー、前記軸受パッド及び前記潤滑流体供給ノズルを収容する軸受ケーシングと、を備え、前記軸受ケーシングの内部が大気解放され、前記潤滑流体供給ノズルが前記スラストカラーと前記各軸受パッドとの間に前記潤滑流体を直接噴射する直接潤滑型となっており、前記潤滑流体供給ノズルは、前記径方向外側へ向けて供給する前記潤滑流体の供給量を、前記径方向内側に向けて供給する前記潤滑流体の供給量に比して多くなるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、直接潤滑型のものにおいて、径方向外側に供給される潤滑流体の供給量を、径方向内側に供給される潤滑流体の供給量に比して多くすることができる。このため、気液二相状態となり易い径方向外側に向けて、潤滑流体を多く供給することで、スラストカラーと軸受パッドとの間の径方向外側において、気液二相状態を形成し難いものとし、径方向に亘って潤滑流体を適切に供給することができる。よって、スラストカラーと軸受パッドとの間の温度上昇を抑制することができ、特に、径方向内側に比して径方向外側の温度が上昇することを抑制することができる。
【0010】
また、前記潤滑流体供給ノズルは、前記径方向に所定の間隔を空けて並べて形成される複数の前記潤滑流体供給孔を有し、複数の前記潤滑流体供給孔は、前記径方向に隣り合う前記潤滑流体供給孔同士の間の間隔が、前記径方向の外側に向かうにつれて狭くなることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、径方向に隣り合う潤滑流体供給孔同士の間の間隔を調整することで、径方向における潤滑流体の供給量を調整することができる。
【0012】
また、前記潤滑流体供給ノズルは、前記径方向に所定の間隔を空けて並べて形成される複数の前記潤滑流体供給孔を有し、複数の前記潤滑流体供給孔の開口直径は、前記径方向の外側に向かうにつれて大きくなることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、潤滑流体供給孔の開口直径を調整することで、径方向における潤滑流体の供給量を調整することができる。
【0014】
また、複数の前記潤滑流体供給孔は、前記径方向に所定の間隔を空けて並べて一列に設けられたものが、前記周方向に複数列に並べて設けられており、複数列の前記潤滑流体供給孔のうち、一列の前記各潤滑流体供給孔は、他の一列の隣り合う前記潤滑流体供給孔同士の間に位置するように、前記径方向に位置ずれして設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、複数列の潤滑流体供給孔の径方向における間隔を、各列の潤滑流体供給孔の径方向における間隔に比して短いものとすることができる。このため、径方向に亘ってまんべんなく潤滑流体を供給することができることから、スラストカラーと軸受パッドとの間に潤滑流体を不足なく供給することができ、スラストカラーと軸受パッドとの間の温度上昇をより好適に抑制することができる。
【0016】
また、前記軸受パッドに対する前記回転軸の相対的な回転方向において、前記回転方向の上流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の数は、前記回転方向の下流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の数と比べて多いことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、上流側に位置する一列の潤滑流体供給孔の数を、下流側に位置する一列の潤滑流体供給孔の数よりも多くすることができる。このとき、上流側に位置する一列の潤滑流体供給孔から供給された潤滑流体は、スラストカラーと軸受パッドとの間に流入し易い。一方で、下流側に位置する一列の潤滑流体供給孔から供給された潤滑流体は、軸受パッドの周囲に流入し易い。このため、スラストカラーと軸受パッドとの間へ供給する潤滑流体の流量を多くすることができるため、スラストカラーと軸受パッドとの間の温度上昇を、より好適に抑制することができる。
【0018】
また、前記軸受パッドに対する前記回転軸の相対的な回転方向において、前記回転方向の下流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の数は、前記回転方向の上流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の数と比べて多いことが好ましい。
【0019】
この構成によれば、下流側に位置する一列の潤滑流体供給孔の数を、上流側に位置する一列の潤滑流体供給孔の数よりも多くすることができる。このとき、上流側に位置する一列の潤滑流体供給孔から供給された潤滑流体は、スラストカラーと軸受パッドとの間に流入し易い。一方で、下流側に位置する一列の潤滑流体供給孔から供給された潤滑流体は、軸受パッドの周囲に流入し易い。このため、軸受パッドの周囲に供給する潤滑流体の流量を多くすることができるため、軸受パッドの周囲の温度上昇を抑制することができる。
【0020】
また、前記回転方向の下流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の噴射方向と、前記回転方向の上流側に位置する一列の前記潤滑流体供給孔の噴射方向とは、異なる方向となっていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、回転方向の上流側及び下流側の位置に適した噴射方向とすることができるため、スラストカラーと軸受パッドとの間へ向けて潤滑流体を適切に供給することができ、スラストカラーと軸受パッドとの間の温度上昇を好適に抑制することができる。
【0022】
本発明のタービンは、上記のスラスト軸受を備えることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、スラスト軸受により回転軸の軸方向の荷重を好適に支持しつつ、回転軸を好適に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施例1のスラスト軸受周りの概略構成を示す断面図である。
図2図2は、実施例1のスラスト軸受の概略構成を示す正面図である。
図3図3は、実施例1のスラスト軸受の一部を示す斜視図である。
図4図4は、実施例1のスラスト軸受の軸受パッドにおける潤滑油の径方向における分布を示す説明図である。
図5図5は、実施例1のスラスト軸受の潤滑油供給ノズルを示す正面図である。
図6図6は、実施例2のスラスト軸受の潤滑油供給ノズルを示す正面図である。
図7図7は、実施例3のスラスト軸受の潤滑油供給ノズルを示す正面図である。
図8図8は、実施例4のスラスト軸受の潤滑油供給ノズルを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0026】
図1は、実施例1のスラスト軸受周りの概略構成を示す断面図である。図2は、実施例1のスラスト軸受の概略構成を示す正面図である。図3は、実施例1のスラスト軸受の一部を示す斜視図である。図4は、実施例1のスラスト軸受の軸受パッドにおける潤滑油の径方向における分布を示す説明図である。図5は、実施例1のスラスト軸受の潤滑油供給ノズルを示す正面図である。
【0027】
図1に示すように、実施例1に係るスラスト軸受40は、例えば、ガスタービンまたは蒸気タービン等のタービン6に設けられている。スラスト軸受40は、タービン6の回転軸であるタービンロータ20の軸方向における荷重を支持するものである。
【0028】
タービンロータ20は、その軸方向が水平方向となるように配置される。このタービンロータ20は、径方向外側に突出して設けられるスラストカラー50を含んで構成されている。スラストカラー50は、タービンロータ20の外周に周方向に亘って円環状に形成されている。
【0029】
スラストカラー50の軸方向の両側には、スラスト軸受40が一対設けられており、スラストカラー50、一対のスラスト軸受40及び後述する潤滑油供給ノズル76は、軸受ケーシング24に収容されている。スラストカラー50及び一対のスラスト軸受40は、軸受ケーシング24によって軸方向に固定されている。この軸受ケーシング24は、その内部が大気解放されている。つまり、軸受ケーシング24は、密封容器とはなっておらず、その内部に空気が流通することで、大気圧となっている。
【0030】
一対のスラスト軸受40は、スラストカラー50を挟んで、軸方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置されている。このスラスト軸受40は、軸受パッド(ティルティングパッド)70を用いた、いわゆるティルティングパッド軸受であり、また、スラストカラー50と軸受パッド70との間に潤滑油(潤滑流体)を直接噴射する直接潤滑型のものとなっている。
【0031】
次に、図1及び図2を参照して、スラスト軸受40について説明する。なお、軸方向の一方側のスラスト軸受40と、軸方向の他方側のスラスト軸受40とは、配置が異なるが、同様の構成となっているため、一方のスラスト軸受40について説明する。
【0032】
図1及び図2に示すように、スラスト軸受40は、スラストカラー50からの荷重を支持する複数の軸受パッド70と、各軸受パッド70を支持するベース74と、軸受パッド70とベース74との間に設けられるレベリング機構72と、潤滑油を供給する複数の潤滑油供給ノズル(潤滑流体供給ノズル)76と、を有する。
【0033】
複数の軸受パッド70は、スラストカラー50と軸方向に対向して設けられ、タービンロータ20の周方向に沿って所定の間隔を空けて並べて配置されている。また、各軸受パッド70は、扇状に形成されており、スラストカラー50と対向する面において、径方向外側における周長が長く、径方向内側における周長が短くなっている。スラストカラー50と各軸受パッド70との間には、潤滑油供給ノズル76から潤滑油が供給されることで潤滑油膜が形成され、この潤滑油膜によって、タービンロータ20の回転時に、スラストカラー50と各軸受パッド70との間で生じる摩擦等を低減している。各軸受パッド70は、図示しないピボットにより、レベリング機構72に対して傾斜自在に支持される。
【0034】
ベース74は、スラストカラー50から軸受パッド70を介してレベリング機構72に伝達された荷重を受け止める支持部材である。ベース74は、円環状に形成され、軸受ケーシング24に固定される。
【0035】
レベリング機構72は、複数の軸受パッド70の位置を調整し、タービンロータ20の周方向において、複数の軸受パッド70の負担荷重を均等化させるものである。
【0036】
図2に示すように、複数の潤滑油供給ノズル76は、周方向に隣り合う軸受パッド70同士の間にそれぞれ設けられている。複数の潤滑油供給ノズル76には、図示しない潤滑油供給装置から潤滑油が供給される。複数の潤滑油供給ノズル76は、スラストカラー50と軸受パッド70との間へ向けて潤滑油を供給する。複数の潤滑油供給ノズル76から供給された潤滑油は、タービンロータ20が所定の回転方向に回転することから、スラストカラー50と各軸受パッド70との間の潤滑油は、回転方向の上流側から下流側へ向かって流通する。このため、軸受パッド70の回転方向の上流側が、潤滑油が流入する入口側となり、軸受パッド70の回転方向の下流側が、潤滑油が流出する出口側となる。
【0037】
ここで、図4に示すように、タービンロータ20が所定の回転方向に回転すると、スラストカラー50と軸受パッド70との間において、径方向外側の周長は、径方向内側の周長よりも長くなっていることから、径方向外側の周速が径方向内側の周速よりも速くなるために、図4の実線で示すように、径方向外側の潤滑油が、径方向内側よりも不足し易いものとなる。このため、スラストカラー50と軸受パッド70との間には、径方向内側に比して径方向外側に気液二相状態が発生し易い。一方で、図4の仮想線(二点鎖線)で示すように、スラストカラー50と軸受パッド70との間に形成される潤滑油膜は、径方向内側から径方向外側に向かって均一に形成されることが好ましい。
【0038】
このとき、図2に示すように、軸受パッド70の内径をRとし、軸受パッド70の外径をRとする。また、軸受パッド70の内径Rにおける周速をVとし、軸受パッド70の外径Rにおける周速をVとし、回転数をNとする。さらに、図4に示すように、潤滑油膜の膜厚をhとする。この場合、軸受パッド70の外径Rにおける周速Vは、「V=2πNR」で表される。また、軸受パッド70の外径Rにおいて必要となる供給油量をqとすると、「q=πNRh」で表される。同様に、軸受パッド70の内径Rにおける周速Vは、「V=2πNR」で表される。また、軸受パッド70の内径Rにおいて必要となる供給油量をqとすると、「q=πNRh」で表される。
【0039】
ここで、上記したように、潤滑油膜の膜厚hを、径方向に亘って均一にする場合(膜厚hが同じである場合)、供給油量qと供給油量qとは、「q/q=R/R」で表される。つまり、供給油量q及び供給油量qは、外径側の供給油量qが、内径側の供給油量qに比して多くなるように、内外径比に応じた供給油量となっている。
【0040】
上記した供給油量qと供給油量qとの関係を満たすために、実施例1では、潤滑油供給ノズル76を、図3及び図5に示すように形成している。図3及び図5に示すように、各潤滑油供給ノズル76は、正面視方形状に形成されており、径方向に延在して設けられている。各潤滑油供給ノズル76には、複数の潤滑油供給孔(潤滑流体供給孔)81が形成されている。複数の潤滑油供給孔81は、同一形状となる円形開口の孔である。
【0041】
複数の潤滑油供給孔81は、径方向に沿って並べた一列となる潤滑油供給孔群82となっており、一列の潤滑油供給孔群82は、周方向に二列に並べて設けられている。二列の潤滑油供給孔群82のうち、一方の一列の潤滑油供給孔群82aが、潤滑油供給ノズル76に隣接する一方の軸受パッド70の出口側に設けられ、他方の一列の潤滑油供給孔群82bが、潤滑油供給ノズル76に隣接する他方の軸受パッド70の入口側に設けられる。換言すれば、一方の一列の潤滑油供給孔群82aが、回転方向の上流側に設けられ、他方の一列の潤滑油供給孔群82bが、回転方向の下流側に設けられる。
【0042】
この二列の潤滑油供給孔群82a、82bの潤滑油供給孔81は、それぞれ径方向に不等の間隔となっている。具体的に、上流側(出口側)の潤滑油供給孔群82aにおける複数の潤滑油供給孔81は、径方向に隣り合う潤滑油供給孔81同士の間の間隔が、径方向の外側に向かって狭くなっている。同様に、下流側(入口側)の潤滑油供給孔群82bにおける複数の潤滑油供給孔81は、径方向に隣り合う潤滑油供給孔81同士の間の間隔が、径方向の外側に向かって狭くなっている。つまり、所定の潤滑油供給孔81の径方向外側に隣り合う潤滑油供給孔81との間の間隔は狭くなっており、所定の潤滑油供給孔81の径方向内側に隣り合う潤滑油供給孔81との間の間隔は広くなっている。このため、二列の各潤滑油供給孔群82a、82bの潤滑油供給孔81は、スラストカラー50と軸受パッド70との間において、径方向外側に供給する潤滑油の供給油量が、径方向内側に供給する潤滑油の供給油量よりも多くなるように供給する。このとき、「q/q=R/R」の関係式を満足するように、潤滑油供給孔81同士の間隔が適宜調整される。
【0043】
また、潤滑油供給ノズル76に形成される複数の潤滑油供給孔81は、径方向に沿って互い違いとなる千鳥状に配置されている。具体的に、径方向において、上流側(出口側)の潤滑油供給孔群82aにおける潤滑油供給孔81は、下流側(入口側)の潤滑油供給孔群82bにおける潤滑油供給孔81同士の間に位置するように、径方向に位置ずれして設けられている。このため、潤滑油供給孔群82a及び潤滑油供給孔群82bを含む複数の潤滑油供給孔81は、径方向に隣接する潤滑油供給孔81同士の間の間隔が、各潤滑油供給孔群82a、82bの径方向に隣接する潤滑油供給孔81同士の間の間隔に比して短いものとなる。
【0044】
また、下流側(入口側)の潤滑油供給孔群82bにおける潤滑油供給孔81の数は、上流側(出口側)の潤滑油供給孔群82aにおける潤滑油供給孔81の数に比して多く形成されている。このため、下流側の潤滑油供給孔群82bは、径方向における内側及び外側の潤滑油供給孔81が、最も内側及び最も外側の位置に形成される。
【0045】
各潤滑油供給ノズル76には、複数の潤滑油供給孔81が形成される面側において、周方向の上流側に形成される上流側テーパ面85aと、周方向の下流側に形成される下流側テーパ面85bと、が設けられている。
【0046】
上流側テーパ面85aは、径方向に亘って形成され、下流側から上流側へ向かって下り斜面となっており、軸受パッド70の出口側を向いた面となっている。この上流側テーパ面85aには、上記した上流側の潤滑油供給孔群82aが設けられている。このため、上流側の潤滑油供給孔群82aは、軸受パッド70の出口側へ向かって潤滑油を直接噴射する。
【0047】
下流側テーパ面85bは、径方向に亘って形成され、上流側から下流側へ向かって下り斜面となっており、軸受パッド70の入口側を向いた面となっている。この下流側テーパ面85bには、上記した下流側の潤滑油供給孔群82bが設けられている。このため、下流側の潤滑油供給孔群82bは、軸受パッド70の入口側へ向かって潤滑油を直接噴射する。
【0048】
上記の潤滑油供給ノズル76において、複数の潤滑油供給孔81からスラストカラー50及び軸受パッド70の間へ向かって潤滑油が噴射されると、噴射された潤滑油は、タービンロータ20が回転していることから、スラストカラー50の周方向への移動に伴って、回転方向の上流側から下流側へ向かって流通する。このとき、上流側の潤滑油供給孔群82aから軸受パッド70の出口側へ向かって噴射された潤滑油は、スラストカラー50と軸受パッド70の間に流通し易くなっている。また、下流側の潤滑油供給孔群82bから軸受パッド70の入口側へ向かって噴射された潤滑油は、軸受パッド70の周囲に流通し易くなっている。そして、二列の各潤滑油供給孔群82a、82bから噴射された潤滑油は、径方向外側の供給油量が多くなり、径方向内側の供給油量が少なくなることで、図4の仮想線に示すような、径方向に亘って均一な流量にて潤滑油を供給することが可能である。
【0049】
以上のように、実施例1によれば、直接噴射型のスラスト軸受40において、径方向外側に供給される潤滑油の供給油量を、径方向内側に供給される潤滑油の供給油量に比して多くすることができる。このため、気液二相状態となり易い径方向外側に向けて、潤滑油を多く供給することで、スラストカラー50と軸受パッド70との間の径方向外側において、気液二相状態を形成し難いものとし、径方向に亘って潤滑油を適切に供給することができる。よって、スラストカラー50と軸受パッド70との間の温度上昇を抑制することができ、特に、径方向内側に比して径方向外側の温度が上昇することを抑制することができる。
【0050】
また、実施例1によれば、潤滑油供給ノズル76に形成される複数の潤滑油供給孔81を、二列の潤滑油供給孔群82とし、一方の一列の潤滑油供給孔群82aと他方の一列の潤滑油供給孔群82bとを径方向に位置ずれさせて千鳥状とすることができる。このため、潤滑油供給ノズル76に形成される複数の潤滑油供給孔81の径方向の間隔を、各潤滑油供給孔群82a、82bにおける径方向の間隔に比して短いものとすることができる。このため、径方向に亘ってまんべんなく潤滑油を供給することができることから、スラストカラー50と軸受パッド70との間に潤滑油を不足なく供給することができ、スラストカラー50と軸受パッド70との間の温度上昇を、簡易な構成で抑制することができる。
【0051】
また、実施例1によれば、下流側(入口側)に位置する一列の潤滑油供給孔群82bの数を、上流側(出口側)に位置する一列の潤滑油供給孔群82aの数よりも多くすることができる。このとき、上流側に位置する一列の潤滑油供給孔群82aから供給された潤滑油は、スラストカラー50と軸受パッド70との間に流入し易い。一方で、下流側に位置する一列の潤滑油供給孔群82bから供給された潤滑油は、軸受パッド70の周囲に流入し易い。このため、軸受パッド70の周囲に供給する潤滑油の供給油量を多くすることができるため、軸受パッド70の周囲の温度上昇を抑制することができる。
【0052】
また、実施例1によれば、上流側(出口側)に位置する一列の潤滑油供給孔群82aの噴射方向を、軸受パッド70の出口側へ向かう方向とすることができ、下流側(入口側)に位置する一列の潤滑油供給孔群82bの噴射方向を、軸受パッド70の入口側へ向かう方向とすることができる。このように、上流側の潤滑油供給孔群82aの噴射方向と、下流側の潤滑油供給孔群82bの噴射方向とを異なる方向とすることで、潤滑油供給孔群82a及び潤滑油供給孔群82bが形成される位置に適した噴射方向とすることができる。このため、スラストカラー50と軸受パッド70との間へ向けて潤滑油を適切に供給することができ、スラストカラー50と軸受パッド70との間の温度上昇を好適に抑制することができる。
【0053】
また、実施例1によれば、温度上昇の抑制を図ることが可能なスラスト軸受40を、タービン6に適用することができるため、タービンロータ20の回転負荷による耐性を向上させつつ、タービンロータ20を好適に回転させることができる。
【0054】
なお、実施例1では、潤滑油供給ノズル76に形成される複数の潤滑油供給孔81を、二列の潤滑油供給孔群82a、82bとしたが、この構成に限定されず、単列であってもよいし、3列以上であってもよい。
【0055】
また、実施例1では、下流側の潤滑油供給孔群82bの数を、上流側の潤滑油供給孔群82aの数よりも多くしたが、上流側の潤滑油供給孔群82aの数を、下流側の潤滑油供給孔群82bの数よりも多くしてもよい。この構成によれば、スラストカラー50と軸受パッド70との間へ供給する潤滑油の供給油量を多くすることができるため、スラストカラー50と軸受パッド70との間の温度上昇を、より好適に抑制することができる。
【実施例2】
【0056】
次に、図6を参照して、実施例2に係るスラスト軸受100について説明する。図6は、実施例2のスラスト軸受の潤滑油供給ノズルを示す正面図である。なお、実施例2では、重複した記載を避けるべく、実施例1と異なる部分について説明すると共に、実施例1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。実施例1では、潤滑油供給孔群82a及び潤滑油供給孔群82bを千鳥状に配置したが、実施例2では、潤滑油供給孔群82a及び潤滑油供給孔群82bを格子状に配置している。
【0057】
図6に示すように、実施例2に係るスラスト軸受100において、二列の潤滑油供給孔群82a、82bの潤滑油供給孔81は、径方向に隣り合う潤滑油供給孔81同士の間の間隔が、径方向の外側に向かって狭くなっている。また、上流側の潤滑油供給孔群82aにおける潤滑油供給孔81と、下流側の潤滑油供給孔群82bにおける潤滑油供給孔81とは、径方向において同じ位置となっている。つまり、上流側の潤滑油供給孔群82aにおける潤滑油供給孔81と、下流側の潤滑油供給孔群82bにおける潤滑油供給孔81とは、回転方向において重複する。
【0058】
以上のように、実施例2であっても、直接噴射型のスラスト軸受100において、径方向外側に供給される潤滑油の供給油量を、径方向内側に供給される潤滑油の供給油量に比して多くすることができる。このため、気液二相状態となり易い径方向外側に向けて、潤滑油を多く供給することで、スラストカラー50と軸受パッド70との間の径方向外側において、気液二相状態を形成し難いものとし、径方向に亘って潤滑油を適切に供給することができる。よって、スラストカラー50と軸受パッド70との間の温度上昇を抑制することができる。
【実施例3】
【0059】
次に、図7を参照して、実施例3に係るスラスト軸受110について説明する。図7は、実施例3のスラスト軸受の潤滑油供給ノズルを示す正面図である。なお、実施例3でも、重複した記載を避けるべく、実施例1及び2と異なる部分について説明すると共に、実施例1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。実施例1では、径方向に隣り合う潤滑油供給孔81同士の間の間隔を、径方向の外側に向かって狭くしたが、実施例3では、複数の潤滑油供給孔81の開口の形状が径方向において異なる形状となっている。
【0060】
図7に示すように、実施例3に係るスラスト軸受110において、二列の潤滑油供給孔群82a、82bの潤滑油供給孔81は、格子状に配置されている。また、二列の各潤滑油供給孔群82a、82bの潤滑油供給孔81の開口面積は、径方向の外側に向かうにつれて大きくなっている。具体的に、各潤滑油供給孔81は、円形開口の孔となっていることから、上流側(出口側)の潤滑油供給孔群82aにおける複数の潤滑油供給孔81は、径方向の外側に向かうにつれて、開口直径が大きくなっている。同様に、下流側(入口側)の潤滑油供給孔群82bにおける複数の潤滑油供給孔81は、径方向の外側に向かうにつれて、開口直径が大きくなっている。つまり、所定の潤滑油供給孔81の開口直径は、径方向外側に隣り合う潤滑油供給孔81の開口直径に比して小さくなる一方で、径方向内側に隣り合う潤滑油供給孔81の開口直径に比して大きくなる。このとき、「q/q=R/R」の関係式を満足するように、潤滑油供給孔81の開口直径の大きさが適宜調整される。
【0061】
以上のように、実施例3においても、直接噴射型のスラスト軸受110において、径方向外側に供給される潤滑油の供給油量を、径方向内側に供給される潤滑油の供給油量に比して多くすることができる。このため、気液二相状態となり易い径方向外側に向けて、潤滑油を多く供給することで、スラストカラー50と軸受パッド70との間の径方向外側において、気液二相状態を形成し難いものとし、径方向に亘って潤滑油を適切に供給することができる。よって、スラストカラー50と軸受パッド70との間の温度上昇を抑制することができる。
【実施例4】
【0062】
次に、図8を参照して、実施例4に係るスラスト軸受120について説明する。図8は、実施例4のスラスト軸受の潤滑油供給ノズルを示す正面図である。なお、実施例4でも、重複した記載を避けるべく、実施例1から3と異なる部分について説明すると共に、実施例1から3と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。実施例3では、潤滑油供給孔群82a及び潤滑油供給孔群82bを格子状に配置したが、実施例4では、潤滑油供給孔群82a及び潤滑油供給孔群82bを千鳥状に配置している。
【0063】
図8に示すように、実施例4に係るスラスト軸受120において、二列の各潤滑油供給孔群82a、82bの潤滑油供給孔81の開口直径は、径方向の外側に向かうにつれて大きくなっている。また、上流側の潤滑油供給孔群82aにおける潤滑油供給孔81は、下流側の潤滑油供給孔群82bにおける潤滑油供給孔81同士の間に位置するように、径方向に位置ずれして設けられている。このため、潤滑油供給孔群82a及び潤滑油供給孔群82bを含む複数の潤滑油供給孔81は、径方向に隣接する潤滑油供給孔81同士の間の間隔が、各潤滑油供給孔群82a、82bの径方向に隣接する潤滑油供給孔81同士の間の間隔に比して短いものとなる。
【0064】
以上のように、実施例4によれば、直接噴射型のスラスト軸受120において、二列の潤滑油供給孔群82a、82bにおける複数の潤滑油供給孔81を千鳥状に配置することができる。このため、潤滑油供給ノズル76に形成される複数の潤滑油供給孔81の径方向の間隔を、各潤滑油供給孔群82a、82bにおける径方向の間隔に比して短いものとすることができる。このため、径方向に亘ってまんべんなく潤滑油を供給することができることから、スラストカラー50と軸受パッド70との間に潤滑油を不足なく供給することができ、スラストカラー50と軸受パッド70との間の温度上昇を、簡易な構成で抑制することができる。
【0065】
なお、実施例1から実施例4は、適宜組み合わせが可能である。例えば、実施例1における、径方向に隣り合う潤滑油供給孔81同士の間の間隔が、径方向の外側に向かって狭くなる構成に、実施例3における、潤滑油供給孔81の開口直径が、径方向の外側に向かうにつれて大きくなる構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
6 タービン
20 タービンロータ
24 軸受ケーシング
40 スラスト軸受
50 スラストカラー
70 軸受パッド
72 レベリング機構
74 ベース
76 潤滑油供給ノズル
81 潤滑油供給孔
82 潤滑油供給孔群
82a 上流側の潤滑油供給孔群
82b 下流側の潤滑油供給孔群
85a 上流側テーパ面
85b 下流側テーパ面
100 スラスト軸受(実施例2)
110 スラスト軸受(実施例3)
120 スラスト軸受(実施例4)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8