特許第6341680号(P6341680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341680
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】集束イオン・ビームの低kV強化
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20180604BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20180604BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20180604BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20180604BHJP
   H01J 37/18 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   H01J37/317 D
   H01J37/28 Z
   H01J37/147 D
   H01J37/09 A
   H01J37/18
【請求項の数】61
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-23442(P2014-23442)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2014-165174(P2014-165174A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2017年2月8日
(31)【優先権主張番号】13/779,142
(32)【優先日】2013年2月27日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501419107
【氏名又は名称】エフ・イ−・アイ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】モスタファ・マーゾウス
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−017103(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0215802(US,A1)
【文献】 特開2000−133185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/317
H01J 37/09
H01J 37/147
H01J 37/18
H01J 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットに使用する1次イオン・ビームの源と、
ブースタ管が接地される第1のモードと前記ブースタ管が負の高電圧にバイアスされる第2のモードの2つのモードを有するブースタ管を有し、前記ブースタ管が、第1のレンズの電極、第2のレンズの電極、および1つまたは複数の静電偏向器を有する集束イオン・ビーム・カラムと、
を備え、前記1つまたは複数の静電偏向器の電圧は、前記ブースタ管のバイアス電圧に対して変更され、前記ブースタ管が、前記第1および第2のレンズのそれぞれの要素の全てではなく少なくとも1つと、ビーム画定絞りと、偏向器とを含む、装置。
【請求項2】
前記集束イオン・ビーム・カラムが、前記1次イオン・ビームの源と前記ブースタ管の間に少なくとも1つのレンズを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記集束イオン・ビーム・カラムが、前記ブースタ管と前記ターゲットの間に少なくとも1つのレンズを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ブースタ管が、ビーム電流測定用のファラデー・カップを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記負の高電圧が0kVから−5kVの間である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記負の高電圧が−1kVから−3kVの間である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
集束イオン・ビームを使用してターゲットを画像化および処理する方法であって、
イオン・ビーム・カラムに沿ってターゲットに向かって移動するイオンを含む前記集束イオン・ビームを生成するステップであって、前記イオン・ビーム・カラムは、それぞれが複数のレンズ要素からなる2つのレンズを含む、ステップと、
前記集束イオン・ビームを導いて、ブースタ管が接地される第1のモードと前記ブースタ管が負の高電圧にバイアスされる第2のモードの2つのモードを有するブースタ管を含む前記イオン・ビーム・カラムの一部を通過させるステップと
を有し、前記イオン・ビーム・カラムの一部が、前記2つのレンズのそれぞれの複数のレンズ要素の全てではなく少なくとも1つと、ビーム画定絞りと、偏向器とを含む、方法。
【請求項8】
前記負の高電圧が0kVから−5kVの間である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記負の高電圧が−1kVから−3kVの間である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
負の高電圧にバイアスされた前記イオン・ビーム・カラムの一部内でファラデー・カップを使用することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ブースタ管が、ビーム画定絞り、カラム分離弁およびビーム・ブランカをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記1つまたは複数の静電偏向器が、1つまたは複数の静電走査偏向器を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記1つまたは複数の静電走査偏向器が、走査八極子を備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
負の高電圧モジュールをさらに備え、前記ブースタ管が、前記負の高電圧モジュールを使用して前記負の高電圧にバイアスされる、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記ブースタ管および前記第1のレンズの電極、前記第2のレンズの電極、ならびに前記ブースタ管の前記1つまたは複数の静電偏向器が、グランド電位から電気的に絶縁されている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
ターゲットに使用する1次イオン・ビームの源と、
ブースタ管が接地される第1のモードと前記ブースタ管が負の高電圧にバイアスされる第2のモードの2つのモードを有するブースタ管を有し、前記ブースタ管が、第1のレンズの電極、第2のレンズの電極、および静電偏向器を備え、前記ブースタ管が、前記第1および第2のレンズのそれぞれの要素の全てではなく少なくとも1つを含む、集束イオン・ビーム・カラムと、
負の高電圧モジュールと、
を備え、前記ブースタ管が、前記負の高電圧モジュールを使用して前記負の高電圧にバイアスされる、装置。
【請求項17】
前記ブースタ管は、前記イオン・ビーム・カラムの構成要素をカプセル封入する管からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記ブースタ管は、前記イオン・ビーム・カラムの構成要素からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
荷電粒子の源と、
前記荷電粒子を荷電粒子ビームに集束するよう構成される荷電粒子ビーム集束カラムであって、ターゲットの表面にわたって前記荷電粒子ビームを走査するよう構成される静電走査偏向器と、第1のレンズの電極と、第2のレンズの電極とを、前記荷電粒子ビーム集束カラムの中間部分の構成要素が備え、前記中間部分が前記第1および第2のレンズのそれぞれの要素の全てではなく少なくとも1つを含む、荷電粒子ビーム集束カラムと、
前記構成要素に、グランドに対する浮動バイアス電圧を印加することにより前記表面の前記荷電粒子ビームのスポット・サイズを低減させるように構成される電圧モジュールと、
を備え、前記構成要素の前記浮動バイアス電圧が、前記構成要素内部の前記荷電粒子ビームの運動エネルギーを増加させ、それによって収差およびクーロン相互作用を低減させ、
前記浮動バイアス電圧が接地される第1のモードと、前記浮動バイアス電圧が負の高電圧に設定される第2のモードの2つのモードを有する、荷電粒子ビーム・システム。
【請求項20】
前記電圧モジュールは、前記中間部分と前記ターゲットとの間の電位差を増すことにより前記荷電粒子ビームのスポット・サイズを低減させるように構成される、請求項19に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項21】
前記荷電粒子の源から延びて前記荷電粒子ビーム集束カラムの全長を通過する光軸をさらに備え、前記荷電粒子ビーム集束カラムが、前記光軸に沿って、前記静電走査偏向器の下流に配置されたレンズをさらに備える、請求項19に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項22】
前記荷電粒子ビーム集束カラムが集束イオン・ビーム・カラムであり、前記荷電粒子ビームが集束イオン・ビームであり、前記浮動バイアス電圧が負電圧を含む、請求項19に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項23】
前記浮動バイアス電圧が、0kVと−5kVの間の負電圧を含む、請求項22に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項24】
前記浮動バイアス電圧が、−1kVから−3kVまでの範囲にある、請求項23に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項25】
前記静電走査偏向器が、走査八極子を含む、請求項22に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項26】
前記荷電粒子の源が電子源を含む、請求項19に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項27】
荷電粒子の源と、
前記源からの前記荷電粒子を含む荷電粒子ビームをターゲット上に導くよう構成される荷電粒子ビーム・カラムであって、前記ターゲットの表面にわたって前記荷電粒子ビームを走査するよう構成される静電走査偏向器と、第1のレンズの電極と、第2のレンズの電極とを含むブースタ管を、前記荷電粒子ビーム・カラムの中間部分が備え、前記ブースタ管が前記第1および第2のレンズのそれぞれの要素の全てではなく少なくとも1つを含む、荷電粒子ビーム・カラムと、
前記荷電粒子ビームが、前記源から前記ターゲットまで延びる光軸に沿って、前記荷電粒子ビーム・カラムの全長を通過し、前記ブースタ管に、グランドに対する浮動バイアス電圧を印加することにより、前記荷電粒子ビームのスポット・サイズを低減させるように構成される電圧モジュールと、
を備え、前記ブースタ管の前記浮動バイアス電圧が、前記ブースタ管内部の前記荷電粒子ビームの運動エネルギーを増加させ、それによって収差およびクーロン相互作用を低減させ、
前記浮動バイアス電圧が接地される第1のモードと、前記浮動バイアス電圧が負の高電圧に設定される第2のモードの2つのモードを有する、荷電粒子ビーム・システム。
【請求項28】
前記荷電粒子ビームが前記表面においてよりも前記中間部分の内部においてより高い運動エネルギーで移動するよう、前記ブースタ管に、グランドに対する浮動バイアス電圧を印加することにより前記表面の前記荷電粒子ビームのスポット・サイズを低減させるように、前記電圧モジュールが構成される、請求項27に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項29】
前記荷電粒子ビーム・カラムが、前記源から前記ターゲットまで延びる光軸に沿って、前記静電走査偏向器の下流に配置されたレンズをさらに備える、請求項27に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項30】
前記荷電粒子ビーム・カラムが集束イオン・ビーム・カラムであり、前記荷電粒子ビームが集束イオン・ビームであり、前記浮動バイアス電圧を前記ブースタ管に印加することが負電圧を前記ブースタ管に印加することを含む、請求項27に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項31】
前記ブースタ管は前記荷電粒子ビーム・カラムの中間構成要素をカプセル封入し、前記静電走査偏向器は前記中間構成要素の1つである、請求項27に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項32】
前記ブースタ管が前記中間構成要素をグランド電位から電気的に絶縁する、請求項31に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項33】
前記ブースタ管の材料が前記中間構成要素をグランド電位から電気的に絶縁する、請求項32に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項34】
前記ブースタ管および前記荷電粒子ビーム・カラムの他の構成要素がグランド電位から電気的に絶縁されている、請求項29に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項35】
前記ブースタ管は、前記荷電粒子ビーム・カラムの構成要素からなる、請求項27に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項36】
荷電粒子ビームを使用してターゲットを画像化および/または処理する方法であって、
荷電粒子の源からターゲットに向かって延びる荷電粒子ビーム・カラムの光軸に沿って荷電粒子ビームを導くステップと、
前記荷電粒子ビーム・カラムの中間部分の構成要素に、グランドに対する浮動バイアス電圧を印加することにより、前記ターゲット上の前記荷電粒子ビームのスポット・サイズを低減させるステップであって、前記構成要素が、前記ターゲットの表面にわたって前記荷電粒子ビームを走査するよう構成される静電走査偏向器と、第1のレンズの電極と、第2のレンズの電極とを備え、前記中間部分が前記第1および第2のレンズのそれぞれの要素の全てではなく少なくとも1つを含む、ステップと
を含み、前記構成要素の前記浮動バイアス電圧が、前記中間部分内部の前記荷電粒子ビームの運動エネルギーを増加させ、それによって収差およびクーロン相互作用を低減させ、
荷電粒子ビーム・システムが、前記浮動バイアス電圧が接地される第1のモードと、前記浮動バイアス電圧が負の高電圧に設定される第2のモードの2つのモードを有する、方法。
【請求項37】
前記荷電粒子ビーム・カラムは、前記光軸に沿って、前記静電走査偏向器の下流に配置されたレンズを備えており、前記静電走査偏向器と前記レンズを通過させて前記荷電粒子ビームを導くステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記荷電粒子ビーム・カラムが集束イオン・ビーム・カラムを含み、前記荷電粒子ビームが集束イオン・ビームであり、前記浮動バイアス電圧が0kVと−5kVの間の負電圧を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記浮動バイアス電圧が、−1kVから−3kVまでの範囲にある、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
荷電粒子の源と、
荷電粒子ビームを集束し前記源からターゲットまで延びる光軸に沿って導くよう構成される荷電粒子ビーム・カラムであって、中間部分、前記ターゲットの表面の複数の点に前記荷電粒子ビームを導くよう構成される前記中間部分に位置する静電走査偏向器、および前記光軸に沿って前記静電走査偏向器の下流に配置されたレンズを備え、前記中間部分が前記レンズの要素の全てではなく少なくとも1つを含む、荷電粒子ビーム・カラムと、
前記中間部分に、グランドに対する浮動バイアス電圧を印加することにより前記中間部分と前記ターゲットの間の電位差を増すよう構成される電圧モジュールであって、前記電位差を増すことが、前記ターゲット上の前記ビームのスポット・サイズを低減させる電圧モジュールと、
を備え、前記中間部分の前記浮動バイアス電圧が前記中間部分内部の前記荷電粒子ビームの前記運動エネルギーを増加させ、それによって収差およびクーロン相互作用を低減させ、
前記中間部分の電圧が接地される第1のモードと、前記中間部分の電圧が負の高電圧に設定される第2のモードの2つのモードを有する、荷電粒子ビーム・システム。
【請求項41】
荷電粒子の源と、
荷電粒子を荷電粒子ビームに集束するよう構成される荷電粒子ビーム集束カラムであって、前記荷電粒子ビーム集束カラムの中間部分の構成要素が、ターゲットの表面にわたって前記荷電粒子ビームを走査するよう構成される静電走査偏向器と、第1のレンズの電極と、第2のレンズの電極とを備え、前記中間部分が前記第1および第2のレンズのそれぞれの要素の全てではなく少なくとも1つを含む、荷電粒子ビーム集束カラムと、
前記荷電粒子ビームを前記表面においてよりも前記中間部分の内部においてより高い運動エネルギーで移動させるよう、前記構成要素に、グランドに対する浮動バイアス電圧を印加するように構成される電圧モジュールと、
を備え、前記構成要素が、前記静電走査偏向器を包囲するブースタ管を含み、
前記構成要素の前記浮動バイアス電圧が、前記中間部分内部の前記荷電粒子ビームの前記運動エネルギーを増加させ、それによって収差およびクーロン相互作用を低減させ、
前記バイアス電圧が接地される第1のモードと、前記バイアス電圧が負の高電圧に設定される第2のモードの2つのモードを有する、荷電粒子ビーム・システム。
【請求項42】
前記浮動バイアス電圧は、前記中間部分と前記ターゲットとの間の電位差を増す浮動バイアス電圧である、請求項41に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項43】
前記荷電粒子の源から延びて前記荷電粒子ビーム集束カラムの全長を通過する光軸をさらに備え、前記荷電粒子ビーム集束カラムが、前記光軸に沿って、前記静電走査偏向器の下流に配置されたレンズをさらに備える、請求項41に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項44】
前記荷電粒子ビーム集束カラムが集束イオン・ビーム・カラムであり、前記荷電粒子ビームが集束イオン・ビームであり、前記浮動バイアス電圧が負電圧を含む、請求項41に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項45】
前記浮動バイアス電圧が、−1kVから−3kVの間の負電圧を含む、請求項44に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項46】
前記静電走査偏向器が、走査八極子を含む、請求項44に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項47】
前記浮動バイアス電圧がグランド電位に対して正電圧を含む、請求項41に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項48】
前記荷電粒子の源が電子の源を含む、請求項41に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項49】
荷電粒子の源と、
前記源からの前記荷電粒子を含む荷電粒子ビームをターゲット上に導くよう構成される荷電粒子ビーム・カラムであって、前記ターゲットの表面にわたって前記荷電粒子ビームを走査するよう構成される静電走査偏向器と、第1のレンズの電極と、第2のレンズの電極とを含むブースタ管を、前記荷電粒子ビーム・カラムの中間部分が備え、前記ブースタ管が、前記第1および第2のレンズのそれぞれの要素の全てではなく少なくとも1つを含む、荷電粒子ビーム・カラムと、
前記荷電粒子ビームが、前記源から前記ターゲットまで延びる光軸に沿って、前記荷電粒子カラムの全長を通過し、前記荷電粒子ビームを、前記ターゲットにおいてよりも前記中間部分の内部においてより高い運動エネルギーで移動させるよう、前記ブースタ管に、グランドに対する浮動バイアス電圧を印加するように構成される電圧モジュールと、
を備え、前記ブースタ管が前記静電走査偏向器を包囲し、
前記構成要素の前記浮動バイアス電圧が前記中間部分内部の前記荷電粒子ビームの前記運動エネルギーを増加させ、それによって収差およびクーロン相互作用を低減させ、
前記浮動バイアス電圧が接地される第1のモードと、前記浮動バイアス電圧が負の高電圧に設定される第2のモードの2つのモードを有する、荷電粒子ビーム・システム。
【請求項50】
前記荷電粒子ビーム・カラムが、前記光軸に沿って、前記静電走査偏向器の下流に配置されたレンズをさらに備える、請求項49に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項51】
前記荷電粒子ビーム・カラムが、集束イオン・ビーム・カラムであり、前記荷電粒子ビームが集束イオン・ビームであり、前記浮動バイアス電圧を前記ブースタ管に印加することが負電圧を前記ブースタ管に印加することを含む、請求項49に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項52】
前記ブースタ管は前記荷電粒子ビーム・カラムの中間構成要素をカプセル封入し、前記静電走査偏向器は前記中間構成要素の1つである、請求項49に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項53】
前記ブースタ管が前記中間構成要素をグランド電位から電気的に絶縁する、請求項52に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項54】
前記ブースタ管の材料が前記中間構成要素をグランド電位から電気的に絶縁する、請求項53に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項55】
前記ブースタ管および前記荷電粒子ビーム・カラムの他の構成要素がグランド電位から電気的に絶縁されている、請求項49に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項56】
荷電粒子ビームを使用してターゲットを画像化および/または処理する方法であって、
荷電粒子の源からターゲットに向かって延びる荷電粒子ビーム・カラムの光軸に沿って荷電粒子ビームを導くステップと、
前記荷電粒子ビームを、前記ターゲットにおいてよりも前記荷電粒子ビーム・カラムの中間部分の内部においてより高い運動エネルギーで移動させるよう、前記中間部分の構成要素に、グランドに対する浮動バイアス電圧を印加するステップであって、前記構成要素が、前記ターゲットの表面にわたって前記荷電粒子ビームを走査するよう構成される静電走査偏向器と、第1のレンズの電極と、第2のレンズの電極とを備え、前記中間部分が前記第1および第2のレンズのそれぞれの要素の全てではなく少なくとも1つを含む、ステップと、
を含み、前記構成要素が、前記静電走査偏向器を包囲するブースタ管を含み、
前記構成要素の前記浮動バイアス電圧が前記中間部分内部の前記荷電粒子ビームの前記運動エネルギーを増加させ、それによって収差およびクーロン相互作用を低減させ、
荷電粒子ビーム・システムが、前記浮動バイアス電圧が接地される第1のモードと、前記浮動バイアス電圧が負の高電圧に設定される第2のモードの2つのモードを有する、方法。
【請求項57】
前記荷電粒子ビーム・カラムの前記中間部分の前記構成要素に前記浮動バイアス電圧を印加するステップが、前記荷電粒子ビームを、前記ターゲットの前記表面においてよりも前記中間部分の内部においてより高い運動エネルギーで移動させる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記荷電粒子ビーム・カラムは、前記光軸に沿って、前記静電走査偏向器の下流に配置されたレンズを備えており、前記静電走査偏向器と前記レンズを通過させて前記荷電粒子ビームを導くステップをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記荷電粒子ビーム・カラムが集束イオン・ビーム・カラムを含み、前記荷電粒子ビームが集束イオン・ビームであり、前記浮動バイアス電圧が0kVと−5kVの間の負電圧を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記浮動バイアス電圧がグランド電位に対して正電圧を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
荷電粒子の源と、
荷電粒子ビームを集束し前記源からターゲットまで延びる経路に沿って導くよう構成される荷電粒子ビーム・カラムであって、中間部分、前記ターゲットの表面の複数の点に前記荷電粒子ビームを導くよう構成される前記中間部分に位置する静電走査偏向器、および前記経路に沿って前記静電走査偏向器の下流に配置されたレンズを備え、前記中間部分が前記レンズの要素の全てではなく少なくとも1つを含む、荷電粒子ビーム・カラムと、
前記中間部分と前記ターゲットの間の電位差を増すよう、前記中間部分に、グランドに対する浮動バイアス電圧を印加するように構成され、前記荷電粒子ビームを、前記表面においてよりも前記中間部分の内部においてより高い運動エネルギーで移動させる、電圧モジュールと、
を備え、前記中間部分が、前記静電走査偏向器を包囲するブースタ管を含み、
前記中間部分の前記浮動バイアス電圧が前記中間部分内部の前記荷電粒子ビームの前記運動エネルギーを増加させ、それによって収差およびクーロン相互作用を低減させ、
前記浮動バイアス電圧が接地される第1のモードと、前記浮動バイアス電圧が負の高電圧に設定される第2のモードの2つのモードを有する、荷電粒子ビーム・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオン・ビーム・システムなどの荷電粒子ビーム・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
集束イオン・ビーム・システムは、加工物またはターゲットに荷電粒子を導いて、加工物を処理しまたは加工物の画像を形成する。荷電粒子ビーム・システムは、例えば集積回路製造および他のナノテクノロジ処理において使用されている。荷電粒子ビーム・システムは一般に、粒子源、ビーム・ブランカ(beam blanker)、加速レンズ、集束光学部品および偏向光学部品を含む。
【0003】
高分解能の集束イオン・ビーム(FIB)は、顕微鏡観察、リソグラフィ、マイクロ機械加工(イオン・ミリングおよび材料付着)、ドーパント注入などのさまざまな作業に対して有用であることが分かっている。長年にわたり、気相電界イオン化(gas−phase field ionization)、プラズマおよび液体金属を含むいくつかのイオン源が、集束イオン・ビーム用途向けに開発されてきた。これまでに開発された全てのイオン源の中では液体金属イオン源(LMIS)が最も有用であることが分かっており、LMISは現在、最も広範囲に使用されている。液体金属イオン源の有用性は基本的に、10nm程度のスポット・サイズを有する集束イオン・ビームを生成し、同時に1pAから10pAの範囲の電流を維持することを可能にするその非常に高い輝度に由来する。これらの特性は、現状技術のある範囲のナノテクノロジ作業を実行するのに必要な分解能およびイオン電流を集束イオン・ビームに与える。
【0004】
広範囲に使用されているにもかかわらず、既存のイオン源は、より広い用途およびより高い分解能に向けての進展を妨げる限界を有する。ターゲットにおける入射エネルギーが5keVよりも大きい高入射エネルギーの集束イオン・ビームの使用は、加工物に対する重大な損傷を引き起こしうる。しかしながら、低入射エネルギーのビームを使用すると、薄い薄片(ラメラ、lamella)を製作するのに必要なスポット・サイズ性能が低下する。
【0005】
したがって、低keVの入射エネルギーを有する集束イオン・ビームでありながら有効なスポット・サイズを生み出す集束イオン・ビームを提供する改良されたシステムおよび方法が求められている。低keVにおいて改良された集束イオン・ビームは、低C対物レンズまたは切換え可能な4極/5極レンズによって達成することができる。
【0006】
陰極レンズ(cathode lens)は界浸比(immersion ratio)が大きいほど強力になる。軸上収差係数は、界浸比kの増大とともに大幅に低下する。例えば、低入射エネルギーでの分解能に大きな影響を有する色収差係数Cは界浸比kにほぼ反比例する。これは、ビームの減速が使用されない場合に見られる、低ビーム・エネルギーでのビーム直径の劣化に対する部分的な補償につながる。しかし、低C対物レンズおよび切換え可能な4極/5極レンズを使用したときの性能の向上は非常に小さく、極めて薄いレンズを画像化し製作するのには不十分である。
【0007】
さらに、結果として生じるビームのエネルギー幅を大きくすることなく源からのイオンを加速することは難しい。イオン源の空間的広がりが大きいほど、イオンを一点に集束させることが難しくなる。プローブ・サイズをより小さくし、このようなシステムが理論上生み出しうる分解能を達成するためには、システムの改良が必要である。
【0008】
集束光学部品は、ターゲットの表面のスポットまたは予め決められた形状にビームを焦束させる。集束光学部品は一般に、コンデンサ・レンズ(condenser lens)と対物レンズの組合せを含む。このレンズは、静電レンズ、磁気レンズまたは静電レンズと磁気レンズのさまざまな組合せとすることができる。光学レンズと同様に、荷電粒子レンズも、粒子が鮮明な像を結ぶことを妨げる収差を有する。この収差は、レンズの中心を通過する荷電粒子に対して最小であり、レンズの中心からの距離が増大するにつれて大きくなる。したがって、荷電粒子ビームは、レンズの中心のすぐ近くを通過することが望ましい。「ビーム相互作用(beam interaction)」と呼ばれる1つのタイプの収差は、ビーム中の全ての粒子が同じ電荷を有し、互いに反発するために生じる。粒子が互いに接近すればするほど反発力は大きくなる。粒子は一般に対物レンズを通過した後に収束するため、対物レンズを加工物のできるだけ近くに配置して、粒子が高密度のビームに集束している時間を短くすることが望ましい。対物レンズと加工物の間の距離は「作動距離(working distance)」と呼ばれる。
【0009】
偏向光学部品は、加工物の表面の「ドエル点(dwell point)」または「画素(pixel)」と呼ばれる点にビームを導く。ビームは例えば、ラスタ・パターンもしくは蛇行パターンで導くことができ、または個々の点に向かって任意の順序で導くこともできる。ビームは一般に、「ドエル期間(dwell period)」と呼ばれる指定された期間の間、一点に留まって、指定された「照射量(dose)」の荷電粒子を送達し、次いで次のドエル点に偏向される。ドエル期間の持続時間は、「ドエル時間(dwell time)」または「画素レート(pixel rate)」と呼ばれる。(より適切には、画素「レート」は、1秒あたりに走査される画素の数を指し、この用語は、ビームがそれぞれの画素に留まる時間を示す目的にも使用される。)
偏向光学部品は磁気光学部品または静電光学部品とすることができる。集束イオン・ビーム・システムではこの偏向光学部品が一般に静電光学部品である。集束イオン・ビーム用の静電偏向器は一般に八極子(octupole)である。すなわち、それぞれの偏向器が、円周に沿って配置された8つのプレートを含む。これらの8つのプレートに異なる電圧を印加して、光軸から遠ざかるさまざまな方向にビームを偏向させる。
【0010】
対物レンズの下に偏向器を置いた場合、ビームは対物レンズの中心を通過して、収差を最小化することができる。このような構成は例えば、本発明の譲受人であるFEI Companyによって販売されているVisION Systemで使用されている。しかしながら、対物レンズの下に偏向器を置くと作動距離が大きくなり、それによってビーム収差が増大する。
【0011】
作動距離を最小化するために、対物レンズの上に偏向器を置くことができる。しかしながら、対物レンズの上に偏向器があると、ビームを偏向させたときに、ビームがレンズの中心から遠ざかり、それによってある種の収差が増大する。この問題を解決するため、多くの集束イオン・ビーム・システムは2段偏向器を使用する。
【0012】
極めて薄い薄片を処理するのに必要な最適なスポット・サイズを、ターゲットへの入射エネルギーを大きくすることなしに達成することができる集束イオン・ビームが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、従来の集束イオン・ビーム・スポット・サイズよりも大幅に向上したスポット・サイズを低kVを使用して形成する方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、FIBカラムの中間部分を負の高電圧にバイアスして、カラムの中間部分内において、最終的なビーム・エネルギーよりも高い電位でビームが移動することを可能にする。FIBカラムの中間部分を負の高電圧にバイアスすることは、収差およびクーロン相互作用を低減させるのに役立つ。その結果、低kVにおけるスポット・サイズが大幅に向上する。
【0015】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり広く概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するために他の構造を変更しまたは設計するベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0016】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】一般的な集束イオン・ビーム・システムの略断面図である。
図1B】接地された中間部分を含む一般的な集束イオン・ビーム・システムを示す図である。
図2】ブースタ管(booster tube)を有する集束イオン・ビームの略断面図である。
図3A】ブースタ管を有するシステムとブースタ管のないシステムのプローブ・サイズとプローブ電流の関係を示すグラフである。
図3B】ブースタ管を有するシステムとブースタ管のないシステムのプローブ・サイズとプローブ電流の関係を示すグラフである。
図3C】ブースタ管を有するシステムとブースタ管のないシステムのプローブ・サイズとプローブ電流の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、集束イオン・ビーム・カラムの中間部分を負の高電圧にバイアスすることによって、集束イオン・ビームが生み出すスポット・サイズを大幅に向上させる。本発明は、極めて薄い薄片を製作するときに特に有用である。
【0019】
図2は、電子源102を有する本発明の実施形態に基づく集束イオン・ビーム・カラム101を示す。電子源102の光軸は、集束イオン・ビーム・カラム101の全長に沿って延び、ターゲット106まで導かれる。集束イオン・ビーム・カラム101は、2つのレンズ系104、105を備える。レンズ系104は、3つの電極110、111および112からなる。レンズ系105は、3つの電極113、114および115からなる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、集束イオン・ビーム・カラム101の中間部分がブースタ管120からなる。このブースタ管は、集束イオン・ビーム・カラム101の中間部分の構成要素をカプセル封入する管からなることができる。ブースタ管120の管は、チタン合金など、管の中の構成要素をグランド電位から電気的に絶縁することを可能にするさまざまな材料からなることができる。ブースタ管120が、物理的な管からなる必要は必ずしもない。ブースタ管120が、集束イオン・ビーム・カラム101の中間部分を構成し、中間部分をより高い電圧レベルにセットすることができるシステムを指すこともある。図2では、ブースタ管120が、レンズ112、ビーム画定絞り(beam defining aperture)(BDA)130、カラム分離弁(Column Isolation Valve)(CIV)132の差動排気絞り(Differential Pumping Aperture)(DPA)131、ステアリング極(steering pole)133、ブランキング・プレート(blanking plate)およびファラデー・カップ(Faraday cup)134、走査八極子(scan octopole)135およびレンズ113からなる。
【0021】
用語ビーム画定絞り(BDA)は通常、穴または絞りだけでなく円板形の要素自体をも記述するために使用される。BDAの絞りはかなり小さく、元のビームの小さな部分だけがこの絞りを通り抜けてターゲット106に達することができる。DPA131は、カラム内に置かれ、真空室とカラムとで真空レベルが異なる装置の動作を可能にする。CIV132は、室の真空が失われた場合にイオン源と集束カラム装置とを閉め切り、イオン源および集束カラム装置を保護するために存在することができる。ビーム・ブランカは、ビームをブランキングして、加工物にイオンが当たらないようにする選択肢を与える。任意選択のファラデー・カップ134を使用してイオン・ビーム電流を測定することができる。集束イオン・ビームは、走査プレート135によってターゲット106の表面を走査される。
【0022】
先行技術の集束イオン・ビーム・カラムでは一般に、集束イオン・ビーム・カラム101の中間部分が0Vのグランド電位に接続される。先行技術の集束イオン・ビーム・カラムが図1Aに示されており、このカラムにはブースタ管が存在しない。さらに図1Bに示されているように、従来のシステムは、対物レンズ、偏向器などの集束イオン・ビーム・カラムの構成要素を有し、それらの構成要素は接地される。
【0023】
本発明の実施形態によれば、ブースタ管120を負の高電圧にバイアスして、最終的なビーム・エネルギーよりも高い電位でビームが移動することを可能にする。ブースタ管120および構成要素は、グランドから電気的に絶縁されていなければならない。ブースタ管120は、レンズ系104の最後のレンズ112、BDA130、DPA131、CIV132、ステアリング極133、ブランキング・プレートおよびファラデー・カップ134、走査八極子135およびレンズ系105の最初のレンズ113を、一般にグランド電位に電圧がセットされる従来のシステムよりも高い電圧にセットすることを可能にする。
【0024】
ブースタ管120を使用すると、ターゲット106上の最終的なスポット・サイズが小さくなる。電気を帯びたイオンは互いに反発し、焦束イオン・ビーム・カラム101に沿って移動するときにビーム軸に対して垂直な速度成分を獲得する。焦束イオン・ビーム管101の中間部分内の電圧を高くすることによって、イオンのエネルギー幅はより小さくなり、その結果、ターゲット106における最終的な分解能がより高くなる。
【0025】
集束イオン・ビームの大部分の用途では、イオンを数keVにまで加速させる必要がある。従来の静電電極を使用してイオンを長い距離にわたって加速させるときには、場の均一性を保証するために、それらの電極の面積が、それらの電極間の距離の2乗程度である必要がある。レンズによって、イオンを、ビーム経路に沿ってターゲットの前で集束させる場合には(いわゆる「クロスオーバ」)、イオン間のクーロン力によってイオン・ビームの質が低下し、その結果、ビームを再集束させときにスポット・サイズが再び大きくなる。集束イオン・ビームの中間部分をより高い電圧にバイアスすることにより、このシステムは、望ましくないクロスオーバ効果およびクーロン力を低減させ、それによってターゲット106におけるスポット・サイズを大幅に向上させる。
【0026】
本発明の実施形態はこれらの問題に対処し、ブースタ管120を使用することによって高分解能のビームを生成する。エネルギーが大きいほどターゲット106の損傷は大きくなる。入射エネルギーのエネルギー・レベルを低下させることが好ましい。これらのそれぞれの図に示されているように、ブースタ管120に印加する電圧をより高くすることによってスポット・サイズは大幅に向上する。
【0027】
図3A、3Bおよび3Cは、さまざまなブースタ管エネルギー・レベルにおけるプローブ・サイズとプローブ電流の関係を示す。示されているように、それぞれの場合において、ブースタ管の使用は、ターゲットにおけるスポット・サイズを大幅に低減させている。ブースタ管120は、負の高電圧モジュール140によって負の高電圧にバイアスされる。このような負の高電圧モジュールは、Spellman HVPSなどのように当業界で知られている。本発明の実施形態によれば、1kVにバイアスされた負の高電圧モジュールなどの負の高電圧にセットされたブースタ管を使用した、0.5keV入射エネルギーなどの低入射エネルギー・システムの使用方法が開示される。このようなシステムは、ターゲットに対する損傷を最小限に抑え、同時に、使用可能なスポット・サイズを提供する。そのため、ブースタ管120は、低いエネルギー、すなわち5kVよりも小さいエネルギーでの使用を可能にする。
【0028】
集束イオン・ビーム・カラム101は、ビーム・エネルギーに応じた2つのモードで使用することができる。第1のモードは高kVモードであり、このモードでは、入射エネルギーが5kVよりも大きく、ブースタ管が接地される。第2のモードでは、カラムが、入射エネルギーが一般に5kVよりも小さい低kVモードで動作し、ブースタ管120が、適切な電圧にバイアスされる。この適切な電圧は、バイアス電圧に直接に固定され、またはバイアス電圧において浮動する。この集束イオン・ビーム・カラムは、これらの異なるモードを考慮し、それらのモードに基づくアライメント手順に従う。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、装置は、ターゲットに使用する1次イオン・ビームの源と、負の高電圧にバイアスされたブースタ管を有し、このブースタ管が、第1のレンズの電極、第2のレンズの電極および1つまたは複数の静電走査偏向器を備え、この偏向器電極がブースタ管バイアス負電圧に関係づけられた集束イオン・ビーム・カラムとを備える。
【0030】
いくつかの実施形態では、集束イオン・ビーム・カラムが、1次イオン・ビームの源とブースタ管の間に少なくとも1つのレンズを含む。いくつかの実施形態では、集束イオン・ビーム・カラムが、ブースタ管とターゲットの間に少なくとも1つのレンズを含む。いくつかの実施形態では、ブースタ管が、ビーム電流測定用のファラデー・カップを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、ブースタ管が、2つのモード、すなわち接地することができる第1のモードと、ブースタ管が負の高電圧にバイアスされた第2のモードとを有する。いくつかの実施形態では、負の高電圧が5kVよりも小さい。いくつかの実施形態では、負の高電圧が1kVから3kVの間である。いくつかの実施形態では、この装置が、ビーム画定絞り、カラム分離弁およびビーム・ブランカをさらに備える。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、集束イオン・ビームを使用してターゲットを画像化および処理する方法は、イオン・カラムに沿ってターゲットに向かって移動するイオンを含む集束イオン・ビームを生成するステップと、この集束イオン・ビームを導いて、少なくとも1つのレンズ、ビーム画定絞りおよび負の高電圧にバイアスされた走査八極子を通過させるステップと、この集束イオン・ビームによってターゲット上にスポット・サイズを生み出すステップであり、負の高電圧によってスポット・サイズが小さくなるステップとを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、負の高電圧が5kVよりも小さい。いくつかの実施形態では、負の高電圧が1kVから3kVの間である。いくつかの実施形態では、この方法が、ターゲットを画像化するためにブースタ管内でファラデー・カップを使用することをさらに含む。いくつかの実施形態では、走査八極子が集束イオン・ビームを偏向させる。
【0034】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0035】
101 集束イオン・ビーム・カラム
102 電子源
104 レンズ系
105 レンズ系
106 ターゲット
120 ブースタ管
130 ビーム画定絞り(BDA)
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C