(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態のシリコクロムの製造方法を説明する。
図1は、本実施形態のシリコクロムの製造方法の工程図を示す。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のシリコクロムの製造方法の原料は、カーボンを含有するフェロクロム合金、シリコン源、及び造滓材である。カーボンを含有するフェロクロム合金としては、高炭素フェロクロム11(FCrH)を使用する。シリコン源としては、金属シリコン12(MSi)及びフェロシリコン13(FSi)を使用する。造滓材としては、石灰14及び珪石15を使用する。
【0012】
まず、これらの原料を説明する。高炭素フェロクロム11は、カーボン含有量が3質量%より大きいフェロクロム合金であり、クロム鉱石をカーボンで還元することにより得られる。この実施形態では、表1に示すように、カーボン含有量が8.2質量%の高炭素フェロクロムを使用する。
【0013】
本実施形態のシリコクロム21の製造方法は、原料としてカーボン含有量が8.2質量%の高炭素フェロクロム11を用い、最終的にはカーボン含有量が0.05質量%以下、望ましくは0.02%未満の極低炭素のシリコクロム21を得るという画期的なものである。
【0014】
高炭素フェロクロム11の替わりにカーボン含有量が3質量%以下の中炭素フェロクロム、又はカーボン含有量が0.1〜0.2質量%以下の低炭素フェロクロムを使用することもできる。ただし、高炭素フェロクロム11が最も廉価であること、本実施形態のシリコクロムの製造方法が高炭素フェロクロム11を使用しても極低炭素のシリコクロム21が得られる技術であることを考慮すると、高炭素フェロクロム11を使用することが望ましい。
【0015】
金属シリコン12及びフェロシリコン13は、シリコクロム21のシリコン源として使用される。フェロシリコン13は、金属シリコン12に比べて、比重が重く、電気炉内で溶け易い。ただし、フェロシリコン13だけでは、鉄分が高いので、シリコクロム21のクロム分が低下する。このため、金属シリコン12とフェロシリコン13を併用する。金属シリコン12及びフェロシリコン13の成分は、表1のとおりである。
【0017】
石灰14及び珪石15は、造滓材として使用される。石灰14及び珪石15の両方を使用することで、低融点で流動性があり、かつ電気炉内で溶け易いスラグS−1が得られる。スラグS−1の流動性を高めることで、スラグS−1中に炭化珪素(SiC)を浮上させ易くなる。
【0018】
以下に本実施形態のシリコクロムの製造方法を説明する。本実施形態のシリコクロムの製造方法は、まず、高炭素フェロクロム11、金属シリコン12、フェロシリコン13、石灰14及び珪石15を電気炉16に装入し、これらを電気炉16内で溶解させて、シリコクロムの金属溶湯からなる1次メタルM−1と1次スラグS−1とを生成させる(工程1)。電気炉16の電極に通電すると、電極から発生するアークによって1次メタルM−1及び1次スラグS−1が撹拌される。
【0019】
次に、電気炉16に金属シリコン12´及びフェロシリコン13´を追加で装入し、これらを電気炉16で溶解させて、2次メタルM−2と2次スラグS−2を生成させる(工程2)。金属シリコン12´及びフェロシリコン13´は、メタルM−2中のシリコン含有量が15質量%以上、望ましくは40質量%以上になるように、追加される。工程1と工程2において、二回に分けて金属シリコン12,12´及びフェロシリコン13,13´を電気炉16に装入するのは、これらを溶け易くするためである。
【0020】
工程1及び工程2において、メタルM−1,M−2中のシリコンの濃度が高くなればなるほど、メタルM−1,M−2中のカーボンがシリコンと反応してSiCが形成され、SiCがメタル中に析出する。SiCはメタルM−1,M−2よりも比重が軽いので、メタルM−1,M−2からスラグS−1,S−2中に浮上する。
【0021】
次に、2次スラグS−2はカーボンで汚染されたスラグになっているので、2次スラグS−2を電気炉16から取鍋17に排出する(工程3)。
図1の工程3における(高C)は2次スラグS−2中のカーボン含有量が高いことを意味する。
【0022】
次に、新たに造滓材として、石灰14´及び珪石15´を電気炉16に添加して溶解し、3次メタルM−3及び3次スラグS−3を生成させる(工程4)。そして、電気炉16の電極への通電を停止して、一定時間3次メタルM−3及び3次スラグS−3を静置させる。すると、3次メタルM−3中に残留しているSiCが比重差によって3次スラグS−3中に浮上する。スラグ組成はSiCの移行を促進するための流動性確保のため、CaO/SiO
2=0.5〜2.0が望ましい。
【0023】
最後に、工程4において脱炭が行われた3次メタルM−3及び3次スラグS−3を鋳型18に鋳込む(工程5)。鋳型18に鋳込まれた3次メタルM−3のカーボン含有量は、0.02質量%未満であり、極低炭素のシリコクロムが得られる。
【0024】
図2は、メタル中のシリコン含有量とカーボン含有量の相関関係を示すグラフである。
図2に示すように、当初の高炭素フェロクロム11のカーボン含有量が約7.5%である。メタル中のシリコン含有量が徐々に大きくなり、15質量%を超えると、メタル中にSiCが形成され始める。このSiCが比重差によってメタル中からスラグ中に浮上し、脱炭が行われる。すなわち、[C](メタル中のカーボン)が[C in SiC](メタル中のSiCのカーボン)に変化し、(C in SiC)(スラグ中のSiCのカーボン)に移行する。このように、メタル中のカーボンがSiCになり、スラグ中に移行することにより脱炭が行われる。
【0025】
なお、
図2の [ΣC]は、メタル中のトータルのカーボンを意味し、[ΣC]=[固溶C](メタル中の固溶カーボン)+[SiC](メタル中のSiC)の関係がある。また、スラグ中のSiCは、時間の経過と共に燃焼してCOガスとなってスラグから抜けていくので、末期のスラグでは、(C in SiC)も減少する。
【0026】
図3は、メタルの温度が[固溶C](メタル中の固溶カーボン)に与える影響を示すグラフである。メタルの温度がT1からT2に下がると、メタル中の[固溶C]が低くなる。メタルを撹拌すると、メタル中の[固溶C]はより低くなる。本実施形態では、メタル中の[固溶C]を低減するために、
図1の工程1,2,4におけるメタルの温度を1500℃以上1700℃以下の低い値に設定する。
【0027】
表2は、メタルの温度とメタル中の[固溶C]との関係を示す。表2のメタルは、シリコン含有量が50質量%、クロム含有量が30質量%、残部が鉄のシリコクロムである。メタルの温度を1500℃以上1700℃以下の低い値に設定すれば、メタル中の[固溶C]を0.002〜0.004質量%の低い水準にすることができる。
【0029】
図4は、メタル中のクロム含有量がメタル中の[固溶C]に与える影響を示すグラフである。クロムは鉄に比べて炭化物形成能が大きいので、メタル中のクロム含有量が高いとメタル中の[固溶C]は高くなる。ただし、メタル中のシリコン含有量が高くなると、メタル中の[固溶C]の差は少なくなる。このため、メタル中のシリコン含有量が高い方が望ましい。
【0030】
図5は、SiCのサイズとSiCの浮上速度との関係を示すグラフである。SiCの浮上速度は、下記の数式1のストークスの定理によって算出することができる。
【0031】
【数1】
r:粒子半径(Dp=2r)
y:流体粘度[g/cm3]
ρ:メタル密度
ρi:スラグ密度
【0032】
数式1によれば、スラグの流体粘度を低くすれば、SiCの浮上速度を高めることができる。このため、
図1の工程1,2,4において、造滓材の原料として、石灰及び珪石を用い、低融点かつ低粘度のスラグを生成させる。
【0033】
電子線マイクロアナライザ(EPMA: Electron Probe Micro Analyzer)でSiCの粒子半径を測定したところ、10μm以下であることが推定された。数式1からSiCの浮上は2cm/min以下と算出された。
図1の工程4において出湯前に3次メタルM−3及び3次スラグS−3を静置させる時間は、3次メタルM−3の厚み/SiCの浮上速度から算出することができる。静置させる間は、電気炉16の電極に通電しない。
【実施例1】
【0034】
図1の工程図に従って試験炉にてシリコクロム21を製造した。まず、原料の高炭素フェロクロム11、金属シリコン12、フェロシリコン13、石灰14、珪石15を試験炉に装入し、これらを溶解し、1次メタルM−1と1次スラグS−1を生成した(
図1の工程1)。原料の配合例は、表3のとおりである。このときの1次メタルM−1中の[Si]=41質量%であった。
【0035】
【表3】
【0036】
次に、金属シリコン12´、フェロシリコン13´を試験炉に追装し、2次メタルM−2と2次スラグS−2を生成した(
図1の工程2参照)。追装した金属シリコン12´、フェロシリコン13´の配合例は、表4のとおりである。このときの2次メタルM−2中の[Si]=45質量%であった。
【0037】
【表4】
【0038】
次に、試験炉の2次スラグS−2を排出し(
図1の工程3)、新たに石灰14´及び珪石15´を追装して、3次メタルM−3と3次スラグS−3を生成した(
図1の工程4)。追装した石灰14´及び珪石15´の配合例は、表5のとおりである。
【0039】
【表5】
【0040】
最後に、試験炉の3次メタルM−3と3次スラグS−3を鋳型18に鋳込んで、シリコクロム21を得た(
図1の工程5)。得られたシリコクロム21の組成は表6のとおりであった。シリコクロム21中のカーボン含有量は0.006質量%まで低減し、リン含有量は0.028質量%まで低減した。
【0041】
【表6】
【0042】
図6は、実施例のメタル中のカーボン含有量の変遷を示すグラフである。
図6に示すように、原料の高炭素フェロクロム11中には、カーボンが8.2質量%存在した。1次メタルM−1と1次スラグS−1を生成し、1次メタルM−1中のシリコン含有量を41質量%まで増加させる(
図1の工程1)ことで、1次メタル中のカーボン含有量が1.3質量%まで低減した。次に、2次メタルM−2と2次スラグS−2を生成し、2次メタルM−2中のシリコン含有量を45質量%まで増加させる(
図2の工程2)ことで、2次メタルM−2中のカーボン含有量が0.58質量%まで低減した。2次スラグS−2を排出した後(
図1の工程3)、3次メタルM−3と3次スラグS−3を生成し(
図1の工程4)、3次メタルM−3と3次スラグS−3を鋳込んだ(
図1の工程5)。鋳込んだ3次メタルM−3中のカーボン含有量は0.006質量%まで低減した。
【0043】
図7は、実施例のスラグ中のカーボン含有量の変遷を示すグラフである。
図7に示すように、1次スラグS−1中のカーボン含有量は0.13質量%であったが、2次スラグS−2中のカーボン含有量は0.45質量%まで増加した。2次メタルM−2中のSiCが2次スラグ中に移行することがわかった。2次スラグS−2を除去しているので、3次スラグS−3中のカーボン含有量は0.13質量%であった。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に具現化可能である。
【0045】
上記実施形態では、
図1の工程3において電気炉から2次スラグを排出し、
図1の工程4において新たな3次スラグを生成しているが、
図1の工程3における2次メタル中のカーボン含有量も十分に低下しているから、
図1の工程3における2次メタル及び2次スラグを鋳型に鋳込み、シリコクロムを得ることもできる。
【0046】
上記実施形態では、
図1の工程2において金属シリコン及びフェロシリコンを電気炉に追装しているが、金属シリコン及びフェロシリコンを溶解させることができれば、
図1の工程1において、追装分の金属シリコン及びフェロシリコンを含めたトータルの金属シリコン及びフェロシリコンを装入することもできる。
【0047】
炉には、原料を溶解させることができれば、電気炉以外の溶解炉を用いることができる。
【0048】
上記実施形態のシリコクロムの製造方法は一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な形態に変更することができる。