特許第6341716号(P6341716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341716
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/02 20060101AFI20180604BHJP
   F02P 23/04 20060101ALI20180604BHJP
   F02P 3/01 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   F02D13/02 J
   F02D13/02 D
   F02P23/04 B
   F02P3/01 A
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-64330(P2014-64330)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-187393(P2015-187393A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】島 祐太
【審査官】 比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−121462(JP,A)
【文献】 特開2009−036068(JP,A)
【文献】 特開2009−036123(JP,A)
【文献】 特開2007−141785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D13/00 −28/00
F02D41/00 −45/00
F02P 1/00 − 3/12
F02P 7/00 −17/12
F02P 5/145− 5/155
F02P19/00 −23/04
G01M15/00 −15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気バルブを吸気下死点よりも早いタイミングで閉弁可能であるとともに、点火プラグの中心電極と接地電極との間に発生する火花放電と気筒の燃焼室内に臨むアンテナを介して燃焼室内に放射される電界とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し燃料に着火するアクティブ点火を実行可能な内燃機関であって、
アクセル開度が所定以下の低負荷領域において、吸気バルブの閉弁タイミングを吸気下死点よりも早めながら点火プラグの電極間の火花放電に加えてアンテナを介して燃焼室内に電界を放射するアクティブ点火を実行する一方、低負荷領域以外の運転領域において、吸気バルブの閉弁タイミングを吸気下死点よりも早めつつもアクティブ点火を実行せず火花放電のみによる点火を実行する内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な火花点火式内燃機関に実装されている点火装置では、イグナイタが消弧した際に点火コイルに発生する高電圧を点火プラグの中心電極に印加することで、点火プラグの中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起し、点火する。
【0003】
近時では、気筒の燃焼室内にある混合気に確実に着火させ、安定した火炎を得ることができるようにするために、高周波発振器が出力する高周波またはマグネトロンが出力するマイクロ波を燃焼室内に放射する「アクティブ点火(アクティブ着火)」法が試みられている(例えば、下記特許文献1を参照)。アクティブ点火法によれば、中心電極と接地電極との間の空間に高周波電界またはマイクロ波電界が形成され、この電界中で発生したプラズマが成長して、火炎伝搬燃焼の始まりとなる大きな火炎核を生成することができる。
【0004】
また、気筒の吸気行程において吸気バルブを吸気下死点のタイミングよりも早く閉じることで、実効的に圧縮行程のストローク長を膨張行程のストローク長よりも短くし、ミラーサイクル(アトキンソンサイクル)を実現することが知られている(例えば、下記特許文献2を参照)。実膨張比を実圧縮比よりも大きくとるミラーサイクルは、実膨張比と実圧縮比とが概ね等しいオットーサイクルと比較して、ポンピングロスを低減しながら排熱量を減少させて熱効率を高めることができる点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−029128号公報
【特許文献2】特開2009−036121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アクセル開度が小さい低負荷の運転領域では、スロットルバルブの下流における吸気圧が小さく(即ち、吸気負圧が大きく)なり、気筒に充填される吸気量も少なくなる。このような条件の下で、吸気バルブを閉じるタイミングを吸気下死点よりも早くすると、吸気下死点にて筒内温度(気筒の燃焼室内温度)が氷点下まで低下する。さすれば、気化していた混合気中の燃料が液化してしまい、着火燃焼の安定性が損なわれる。
【0007】
従前のミラーサイクル機関では、低負荷領域において吸気バルブの早閉じを実施しないようにして、混合気中の燃料の液化を回避している。しかしながら、吸気バルブの閉止タイミングを遅らせると、ポンピングロスが増大する上、ミラーサイクルからオットーサイクルに近くなるために熱効率の向上の効果が失われる。
【0008】
本発明は、吸気バルブを吸気下死点よりも早いタイミングで閉弁してミラーサイクルを実現する内燃機関の、低負荷領域での燃費性能の向上を図ることを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、吸気バルブを吸気下死点よりも早いタイミングで閉弁可能であるとともに、点火プラグの中心電極と接地電極との間に発生する火花放電と気筒の燃焼室内に臨むアンテナを介して燃焼室内に放射される電界とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し燃料に着火するアクティブ点火を実行可能な内燃機関であって、アクセル開度が所定以下の低負荷領域において、吸気バルブの閉弁タイミングを吸気下死点よりも早めながら点火プラグの電極間の火花放電に加えてアンテナを介して燃焼室内に電界を放射するアクティブ点火を実行する一方、低負荷領域以外の運転領域において、吸気バルブの閉弁タイミングを吸気下死点よりも早めつつもアクティブ点火を実行せず火花放電のみによる点火を実行する内燃機関を構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸気バルブを吸気下死点よりも早いタイミングで閉弁してミラーサイクルを実現する内燃機関の低負荷領域での燃費性能の向上を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の内燃機関の概略構成を示す図。
図2】同実施形態の内燃機関の点火系の回路図。
図3】同実施形態の内燃機関の点火系に付随する電界発生装置の構成を説明する図。
図4】同電界発生装置の要素であるHブリッジの回路図。
図5】同実施形態の内燃機関に付帯する可変バルブタイミング機構を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態の内燃機関は、気筒1の吸気ポートに対して燃料を噴射するポート噴射式の4ストロークガソリンエンジンであり、複数の気筒1(例えば、三気筒エンジン。図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1には、その吸気ポートに臨む位置に、燃料を噴射するインジェクタ11を設置している。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。
【0013】
図2に、点火系の電気回路を示している。点火コイル14は、点火プラグ12に印加するべき火花放電用の高電圧を供給するものであり、半導体スイッチング素子であるイグナイタ13とともに、コイルケースに一体的に内蔵される。内燃機関の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0からの点火信号iをイグナイタ13が受けると、まずイグナイタ13が点弧して点火コイル14の一次側に電流が流れ、その直後の点火タイミングでイグナイタ13が消弧してこの電流が遮断される。すると、自己誘導作用が起こり、点火コイル14の一次側に高電圧が発生する。そして、一次側と二次側とは磁気回路及び磁束を共有するので、二次側にさらに高い誘導電圧が発生する。この誘導電圧が点火プラグ12の中心電極に印加され、中心電極と接地電極との間で火花放電が生じる。
【0014】
本実施形態の内燃機関では、その点火系に気筒1の燃焼室内に電界を発生させる電界発生装置6を付設している。この電界発生装置6は、燃焼室内でプラズマを生成する目的で高周波を発生させるものである。電界発生装置6の具体例としては、高周波の交流電圧を出力する交流電圧発生回路や、高周波の脈流電圧を出力する脈流電圧発生回路等を挙げることができる。
【0015】
図3及び図4に示すように、電界発生装置6は、車載のバッテリを電源とし、低圧直流を高圧交流に変換する回路を含む。具体的には、バッテリが提供する約12Vの直流電圧を100V〜500Vに昇圧するDC−DCコンバータ61と、DC−DCコンバータ61が出力する直流電圧を利用して交流の高周波を出力する交流発振器たる高周波発生回路62と、高周波発生回路62が出力する交流の高周波をさらに高い電圧に昇圧する昇圧トランス63とを構成要素とする。
【0016】
DC−DCコンバータ61は、ECU0からの指令lを受けて、高周波発生回路62に印加する直流の駆動電圧の大きさを変化させることができ、ひいては、昇圧トランス63の下流における高周波電圧の振幅を変化させることができる。昇圧トランス63の下流における高周波電圧は、周波数が200kHz〜3000kHz程度、振幅が3kVp−p〜10kVp−p程度であることが好ましい。
【0017】
本実施形態において、高周波発生回路62は、DC−DCコンバータ61が出力する直流電圧を交流電圧に変換するHブリッジ回路である。図4に、このHブリッジ回路の構成例を示している。
【0018】
電界発生装置6の出力端には、第一ダイオード64及び第二ダイオード65を介設する。第一ダイオード64は、カソードが昇圧トランス63の二次側巻線の信号ラインに接続し、アノードが点火コイル14との結節点であるミキサ66に接続している。第二ダイオード65は、アノードが昇圧トランス63の二次側巻線のグランドラインに接続し、カソードが接地している。これら第一ダイオード64及び第二ダイオード65は、昇圧トランス63の下流において交流の高周波を半波整流して脈流化するとともに、点火タイミングにおいて点火コイル14の二次側から流れ込む負の高圧パルス電流を遮る役割を担う。
【0019】
因みに、電界発生装置6として脈流電圧発生回路を採用する場合、当該脈流電圧発生回路は周期的に電圧が変化する直流電圧を発生させるものであればよく、その波形も任意であってよい。ここに言う脈流電圧は、基準電圧(0Vであることがある)から一定周期で一定電圧まで変動するパルス電圧や、交流電圧に直流バイアスを加味した電圧等を含む。
【0020】
電界発生装置6が発生させる高周波の脈流電圧は、ミキサ66を介して点火プラグ12の中心電極に印加する。つまり、気筒1の燃焼室内に臨む点火プラグ12の中心電極を、電界を放射するアンテナとする。これにより、燃焼室内における、点火プラグ12の中心電極と接地電極との間の空間に、高周波電界が形成される。そして、高周波電界中で火花放電を行うことによりプラズマが発生し、このプラズマが火炎伝搬燃焼の始まりとなる大きなラジカルプラズマ火炎核を生成する。
【0021】
上記は、火花放電による電子の流れ及び火花放電によって生じたイオンやラジカルが、電界の影響を受け振動、蛇行することで行路長が長くなり、周囲の水分子や窒素分子と衝突する回数が飛躍的に増加することによるものである。イオンやラジカルの衝突を受けた水分子や窒素分子は、OHラジカルやNラジカルになるとともに、イオンやラジカルの衝突を受けた周囲の気体も電離した状態、即ちプラズマ状態となることで、飛躍的に混合気への着火領域が大きくなり、火炎核も大きくなるのである。この結果、火花放電のみによる二次元的な着火から三次元的な着火に増幅され、燃焼が燃焼室内に急速に伝播、高い燃焼速度で拡大することとなる。
【0022】
アクティブ点火を実行する場合の、点火プラグ12の中心電極に高周波を印加するタイミングは、通常、火花放電開始と略同時、火花放電開始直前、または火花放電開始直後である。
【0023】
勿論、本実施形態の内燃機関は、アクティブ点火ではない従来型の火花点火、即ち点火プラグ12の中心電極からの高周波電界の放射を伴わない火花放電によって混合気に着火することもできる。安定的に着火して燃焼させることが容易な(燃焼不良に陥りにくい)状況下では、従来型の火花点火を実行することとして電力消費を抑制することが考えられる。
【0024】
内燃機関の気筒1に吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
【0025】
気筒1から排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
【0026】
外部EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置2は、いわゆる高圧ループEGRを実現するものであり、排気通路4における触媒41の上流側と吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流側とを連通するEGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における排気マニホルド42またはその下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所、具体的にはサージタンク33に接続している。
【0027】
図5に示すように、本実施形態の内燃機関では、クランクスプロケット71、吸気側スプロケット72及び排気側スプロケット73にタイミングチェーン74を巻き掛け、このタイミングチェーン74により、クランクシャフトからもたらされる回転駆動力を吸気側スプロケット72を介して吸気カムシャフトに、排気側スプロケット73を介して排気カムシャフトに、それぞれ伝達している。
【0028】
その上で、吸気側スプロケット72と吸気カムシャフトとの間に、可変バルブタイミング(Variable Valve Timing)機構8を介設している。本実施形態におけるVVT機構8は、クランクシャフトに対する吸気カムシャフトの回転位相を変化させることにより吸気バルブの開閉タイミングを変化させるものである。
【0029】
VVT機構8のハウジング81は、吸気側スプロケット72に固着しており、吸気側スプロケット72とハウジング81とは一体となってクランクシャフトに同期して回転する。これに対し、吸気カムシャフトの一端部に固着したロータ82は、ハウジング81内に収納され、吸気側スプロケット72及びハウジング81に対して相対的に回動することが可能である。ハウジング81の内部には、作動液が流出入する複数の流体室が形成され、各流体室は、ロータ82の外周部に成形されたベーン821によって進角室812と遅角室811とに区画される。
【0030】
VVT機構8の液圧(特に、油圧)回路には、オイルパン831内に蓄えられた作動液が液圧ポンプ832より供給される。液圧ポンプ832は、内燃機関からの動力で駆動される。液圧ポンプ832とVVT機構8との間には、切換制御弁であるOCV(Oil Control Valve)9を設けている。作動液の流量及び方向をこのOCV9を介して操作することで、オイルパン831から汲み上げた作動液を進角室812または遅角室811に選択的に供給することができる。さすれば、ハウジング81がロータ82に対して相対回動し、吸気バルブの開閉タイミングを進角または遅角させることができる。
【0031】
OCV9は、いわゆる電磁式の四方向スプール弁である。スプール96は、ソレノイド97によって駆動する。即ち、制御信号nとしてソレノイド97に入力するパルス電流(または、電圧)のデューティ比に応じて、スプール96の進退の距離が変化する。
【0032】
制御信号nのデューティ比が比較的大きい場合には、液圧ポンプ832から吐出される作動液圧がAポート92を通じて進角室812に供給される一方、既に遅角室811に貯留していた作動液がBポート93を通じてオイルパン831に向けて流下することとなり、進角室812の容積が拡大、遅角室811の容積が縮小するようにベーン821及びロータ82が回動する。結果、吸気カムシャフトの回転位相、換言すれば吸気カムシャフトのクランクシャフトに対する変位角が進角して、吸気バルブのバルブタイミングが進角化する。
【0033】
逆に、制御信号nのデューティ比が比較的小さい場合には、液圧ポンプ832から吐出される作動液圧がBポート93を通じて遅角室811に供給される一方、既に進角室812に貯留していた作動液がAポート92を通じてオイルパン831に向けて流下することとなり、遅角室811の容積が拡大、進角室812の容積が縮小するようにベーン821及びロータ82が回動する。結果、吸気カムシャフトのクランクシャフトに対する変位角が遅角して、吸気バルブのバルブタイミングが遅角化する。
【0034】
内燃機関の運転制御を司るECU0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
【0035】
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、ブレーキペダルの踏込量を検出するブレーキスイッチまたはマスタシリンダ圧センサから出力されるブレーキ踏量信号d、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号e、内燃機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号f、吸気カムシャフトまたは排気カムシャフトの複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号g、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号h等が入力される。
【0036】
出力インタフェースからは、点火プラグ12に付随するイグナイタ13に対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、DC−DCコンバータ61に対して当該DC−DCコンバータ61が出力する駆動電圧の大きさを指令する電圧指令信号l、EGRバルブ23に対して開度操作信号m、OCV9に対して制御信号n等を出力する。
【0037】
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に充填される吸気量を推算する。そして、それらエンジン回転数及び吸気量等に基づき、要求される燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング、燃焼室内に高周波電界を印加するか否かやその電界の強度、要求EGR率(または、EGR量)、吸気バルブの開閉タイミング等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、l、m、nを出力インタフェースを介して印加する。
【0038】
本実施形態の内燃機関では、VVT機構6を介して各気筒1の吸気行程における吸気バルブの閉弁タイミングを吸気下死点よりも一定以上進角させる早閉じ制御を実施することにより、実効的に圧縮行程のストローク長を膨張行程のストローク長よりも短くするミラーサイクルを具現することが可能である。
【0039】
しかして、本実施形態におけるECU0は、アクセル開度が所定以下である極低負荷の運転領域において、吸気バルブの閉弁タイミングを吸気下死点よりも早める早閉じ制御を実施しながら、上述したアクティブ点火を実行する。
【0040】
これにより、気筒1の吸気下死点における筒内温度が氷点下まで低下し、当該気筒1に充填された混合気中の気化燃料が凝結して液化するようなことが起こったとしても、アクティブ点火を通じて混合気に確実に着火してこれを燃焼させることができる。従って、低負荷領域においても吸気バルブの早閉じ制御を実施することが許容され、ポンピングロスの低減及びミラーサイクルによる熱機関変換効率の向上の効果を享受できるようになって、燃費性能の良化に資する。
【0041】
本実施形態では、吸気バルブを吸気下死点よりも早いタイミングで閉弁可能であるとともに、点火プラグ12の中心電極と接地電極との間に発生する火花放電と気筒1の燃焼室内に臨むアンテナ(点火プラグ12の中心電極)を介して燃焼室内に放射される電界とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し燃料に着火するアクティブ点火を実行可能な内燃機関であって、アクセル開度が所定以下の低負荷領域において、吸気バルブの閉弁タイミングを吸気下死点よりも早めながらアクティブ点火を実行する内燃機関を構成した。
【0042】
本実施形態によれば、低負荷領域においても吸気バルブの早閉じ制御を実施してミラーサイクルを実現し、燃費性能の向上を図ることが可能となる。
【0043】
また、混合気の燃焼の安定性が低下する低負荷領域等を除く平常時は火花放電のみによる点火を行うようにし、低負荷領域に限って早閉じ制御とともにアクティブ点火による混合気の着火燃焼を遂行する態様をとることもできる。この場合には、燃焼室内への電界放射による電力消費を削減できる。
【0044】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、気筒1の燃焼室内に電界を印加するための電界発生装置6は、高周波の交流電圧を印加する交流電圧発生回路や、高周波の脈流電圧を印加する脈流電圧発生回路に限定されない。電界発生装置6としてマイクロ波を出力するマグネトロン等を採用し、気筒1の燃焼室内にマイクロ波電界を印加してアクティブ点火を実行するものとしてもよい。
【0045】
上記実施形態では、点火プラグ12の中心電極を電界放射用のアンテナとしていたが、点火プラグ12とは別体のアンテナを気筒1に設け、これを介して気筒1の燃焼室内に高周波電界またはマイクロ波電界を放射してもよい。
【0046】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、車両等に搭載される内燃機関として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
0…制御装置(ECU)
1…気筒
12…点火プラグ、アンテナ
6…電界発生装置
図1
図2
図3
図4
図5