(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341718
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】循環型給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24D 17/00 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
F24D17/00 N
F24D17/00 P
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-64473(P2014-64473)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-187511(P2015-187511A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】弓削 良祐
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−260749(JP,A)
【文献】
特開平08−178327(JP,A)
【文献】
特開昭62−268927(JP,A)
【文献】
特開平02−259363(JP,A)
【文献】
特開2006−112648(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0090560(US,A1)
【文献】
特開平08−178326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 17/00
F24H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを燃焼させるバーナーと、内部を通過する湯水を前記バーナーが生成した燃焼排ガスで加熱する熱交換器と、該熱交換器に上水を供給する給水配管と、該熱交換器で生成された湯水を出湯栓に向けて給湯する給湯配管と、該給湯配管と前記出湯栓とを接続する給湯通路の途中で分岐した還流通路に接続されて、該還流通路内の湯水を前記給水配管に還流させる還流配管と、前記熱交換器と前記給湯配管と前記給湯通路と前記還流通路と前記還流配管と前記給水配管とによって形成される循環経路内の湯水を循環させる循環ポンプとを備えた循環型給湯装置において、
前記還流通路または前記還流配管の少なくとも一方には、前記循環経路内を循環する湯水の流れに対する抵抗の大きさを変更可能な抵抗部が設けられている
ことを特徴とする循環型給湯装置。
【請求項2】
燃料ガスを燃焼させるバーナーと、内部を通過する湯水を前記バーナーが生成した燃焼排ガスで加熱する熱交換器と、該熱交換器に上水を供給する給水配管と、該熱交換器で生成された湯水を出湯栓に向けて給湯する給湯配管と、該給湯配管と前記出湯栓とを接続する給湯通路の途中で分岐した還流通路に接続されて、該還流通路内の湯水を前記給水配管に還流させる還流配管と、前記熱交換器と前記給湯配管と前記給湯通路と前記還流通路と前記還流配管と前記給水配管とによって形成される循環経路内の湯水を循環させる循環ポンプとを備えた循環型給湯装置において、
前記還流通路または前記還流配管の少なくとも一方には、前記循環経路内を循環する湯水の流れに対する抵抗部が設けられており、
前記循環ポンプの動作を制御すると共に、前記循環ポンプの動作中に該循環ポンプの負荷が減少したことを検出すると該循環ポンプを停止させる制御部を備える
ことを特徴とする循環型給湯装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の循環型給湯装置において、
前記循環ポンプは、前記還流通路または前記還流配管の何れかに設けられており、
前記抵抗部は、前記循環ポンプよりも下流側で、且つ前記還流配管が前記給水配管に合流する位置までの間に設けられている
ことを特徴とする循環型給湯装置。
【請求項4】
請求項1に記載の循環型給湯装置において、
前記循環ポンプの動作を制御する制御部と、
前記熱交換器に流入する湯水の流量を検出する流量センサーと
を備え、
前記制御部は、前記循環ポンプの動作中に前記流量センサーで検出した前記流量が増加したことを検出すると該循環ポンプを停止させる
ことを特徴とする循環型給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯停止時に給湯通路内の湯水を熱交換器に循環させることにより、給湯通路内の湯水を適温に維持する機能を有する循環型給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器で加熱した湯水を、給湯通路を介して給湯カランなどから出湯する給湯装置は広く使用されている。この給湯装置では、給湯の停止中に給湯通路内の湯水が冷えてしまうことを避けるために、給湯カランの手前側から給湯通路内の湯水を熱交換器に還流させる還流通路を形成して、循環ポンプを用いて湯水を循環させることも行われている。このような還流通路を備える給湯装置(循環型給湯装置)は、給湯停止中に給湯通路内の湯水を循環させて熱交換器で温めておくことができるので、給湯カランなどを開いた時に直ちに温かい湯水を出湯することができる。
【0003】
また、給湯カランなどから出湯を開始した後は、熱交換器で生成された熱い湯水が供給されるので、循環ポンプで湯水を循環させなくても給湯通路内の湯水が冷めることはない。従って、循環ポンプを駆動することによる電力消費を抑制する観点や、循環ポンプの耐久性を向上させる観点などから、出湯を開始した後は循環ポンプの動作を停止することが望ましい。
【0004】
そこで、熱交換器を通過する湯水の流量と、還流通路から還流される湯水の流量とを計測し、これらの流量差が大きくなった場合には、出湯が開始されたものと判断して循環ポンプを停止させる技術が提案されている(特許文献1)。あるいは、給湯カランから出湯すると、その分だけの水が水道配管から補給されて湯水の温度が低下するので、この温度低下が検出された場合には、出湯が開始されたものと判断して循環ポンプを停止させる技術も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−263403号公報
【特許文献2】特許第3605816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した提案の技術は、新たなセンサーを追加する必要があるために構造が複雑となり、それでいながら十分な検出精度を確保することが難しいという問題があった。例えば、上記の特許文献1の技術では、還流する湯水の流量を検出する流量センサーが新たに必要となる。それでいながら、2つのセンサーの流量差を求める必要があるため、センサー間の特性のバラツキの影響を受け易く、十分な検出精度を確保することが難しい。また、上記の特許文献2の技術では、例えば夏場などのように水道水の温度が温かくなると、出湯時の温度低下が小さくなるので検出精度が低下する。少しでも検出精度を上げるために温度の検出位置を最適化しようとすると、既存の温度センサーとは別に専用の温度センサーを追加する必要が生じて構造が複雑となってしまう。
【0007】
この発明は従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、出湯開始を簡単な構造で且つ精度良く検出して、循環ポンプを停止することが可能な循環型給湯装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の
第1の循環型給湯装置は次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスを燃焼させるバーナーと、内部を通過する湯水を前記バーナーが生成した燃焼排ガスで加熱する熱交換器と、該熱交換器に上水を供給する給水配管と、該熱交換器で生成された湯水を出湯栓に向けて給湯する給湯配管と、該給湯配管と前記出湯栓とを接続する給湯通路の途中で分岐した還流通路に接続されて、該還流通路内の湯水を前記給水配管に還流させる還流配管と、前記熱交換器と前記給湯配管と前記給湯通路と前記還流通路と前記還流配管と前記給水配管とによって形成される循環経路内の湯水を循環させる循環ポンプとを備えた循環型給湯装置において、
前記還流通路または前記還流配管の少なくとも一方には、前記循環経路内を循環する湯水の流れに対する
抵抗の大きさを変更可能な抵抗部が設けられている
ことを特徴とする。
【0009】
かかる本発明の
第1の循環型給湯装置においては、出湯栓から出湯していない間も、循環ポンプを動作させることによって、熱交換器から給湯配管および給湯通路を経て出湯栓に供給される湯水を、還流通路から還流配管および給水配管を介して熱交換器に還流させることができる。そして、循環ポンプを動作させたまま出湯栓から出湯を開始すると、還流通路および還流配管を通って還流する湯水の流量が減少する。ここで、詳細なメカニズムについては後述するが、還流通路または還流配管の少なくとも一方に抵抗部を設けておけば、還流通路および還流配管から還流する湯水の流量が減少したことによる循環ポンプの負荷や、熱交換器を流れる湯水の流量が大きく変化するようになる。従って、これを検出すれば、新たなセンサーなどを追加しなくても、出湯栓での出湯開始を精度良く検出して、循環ポンプの動作を停止させることが可能となる。
加えて、循環経路内を循環する湯水の流れに対する抵抗の大きさを変更可能となっているので、循環型給湯装置と出湯栓との間の配管状態の違いによる影響を、抵抗部の抵抗の大きさを調整することによって抑制することができる。その結果、配管状態の影響を受けることなく、出湯栓での出湯開始を精度良く検出して循環ポンプを停止させることが可能となる。
【0010】
また、上述した
課題を解決するために、本発明の第2の循環型給湯装置は次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスを燃焼させるバーナーと、内部を通過する湯水を前記バーナーが生成した燃焼排ガスで加熱する熱交換器と、該熱交換器に上水を供給する給水配管と、該熱交換器で生成された湯水を出湯栓に向けて給湯する給湯配管と、該給湯配管と前記出湯栓とを接続する給湯通路の途中で分岐した還流通路に接続されて、該還流通路内の湯水を前記給水配管に還流させる還流配管と、前記熱交換器と前記給湯配管と前記給湯通路と前記還流通路と前記還流配管と前記給水配管とによって形成される循環経路内の湯水を循環させる循環ポンプとを備えた循環型給湯装置において、
前記還流通路または前記還流配管の少なくとも一方には、前記循環経路内を循環する湯水の流れに対する抵抗部が設けられており、
前記循環ポンプの動作を制御すると共に、前記循環ポンプの動作中に該循環ポンプの負荷が減少したことを検出すると該循環ポンプを停止させる制御部を備える
ことを特徴とする。
【0011】
かかる本発明の第2の循環型給湯装置においても、上述した第1の循環型給湯装置と同様に、出湯栓から出湯していない間も循環ポンプを動作させて、熱交換器から出湯栓に供給される湯水を、熱交換器に還流させることができる。そして、循環ポンプを動作させたまま出湯栓から出湯を開始すると、熱交換器に還流する湯水の流量が減少する。従って、上述した第1の循環型給湯装置と同様に、還流通路または還流配管の少なくとも一方に抵抗部を設けておけば、還流通路および還流配管から還流する湯水の流量が減少したことによる循環ポンプの負荷が大きく変化する。そこで、この循環ポンプの負荷の減少を、循環ポンプの動作を制御する制御部で検出するようにして、循環ポンプの動作中に負荷が厳守したことを検出した場合には、循環ポンプを停止させる。こうすれば、抵抗部を追加するだけで、何ら新たなセンサーなどを追加することなく、出湯栓での出湯開始を精度良く検出して循環ポンプを停止させることが可能となる。
【0012】
また、上述した本発明の第1の循環型給湯装置においては、還流通路または還流配管の何れかに循環ポンプを設け、抵抗部は、循環ポンプよりも下流側で、且つ還流配管が給水配管に合流する位置までの間に設けることとしてもよい。
【0013】
還流通路または還流配管の何れかに循環ポンプを設けておけば、出湯栓から湯水を出湯させる際に循環ポンプが抵抗となることがない。また、抵抗部を、循環ポンプよりも下流側で、且つ還流配管が給水配管に合流する位置までの間に設けておけば、抵抗部についても、出湯栓から湯水を出湯させる際の抵抗となることがない。加えて、循環ポンプの下流側に抵抗部を設けることで、抵抗部での抵抗によって循環ポンプが負圧となりにくくなるので、循環ポンプの性能を十分に発揮させることが容易となる。
【0016】
また、上述した本発明の循環型給湯装置においては、循環ポンプの動作を制御する制御部と、熱交換器に流入する湯水の流量を検出する流量センサーとを備え、循環ポンプの動作中に流量が増加したことが検出された場合には、循環ポンプを停止させることとしてもよい。
【0017】
給湯装置には、熱交換器に流入する湯水の流量を検出する流量センサーが設けられており、流量センサーの出力は制御部に入力されている。従って、こうすれば、抵抗部を追加するだけで、何ら新たなセンサーなどを追加することなく、出湯栓での出湯開始を精度良く検出して循環ポンプを停止させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施例の循環型給湯装置10を備えた給湯システム1の全体構成を示した説明図である。
【
図2】本実施例の循環型給湯装置10が出湯の開始を検出する原理を示した説明図である。
【
図3】本実施例の循環型給湯装置10が出湯の開始を検出して循環ポンプを停止する処理のフローチャートである。
【
図4】循環型給湯装置10から出湯栓30までの配管状態の違いを抑制する効果についての説明図である。
【
図5】抵抗の大きさを変更可能な変形例の抵抗部24についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施例の循環型給湯装置10を備える給湯システム1の全体構成を示した説明図である。図示されるように循環型給湯装置10は、ガス配管5から供給された燃料ガスを燃焼させるバーナー11と、バーナー11に向けて燃焼用空気を供給する燃焼ファン12と、バーナー11で発生した燃焼排ガスとの間で熱交換する熱交換器13と、図示しない水道配管から熱交換器13に上水を供給する給水配管4と、熱交換器13で加熱された湯水を出湯するための給湯配管20とを備えている。
【0020】
給湯配管20は、循環型給湯装置10の外部で給湯通路31に接続されて、給湯通路31を介して出湯栓30に接続されている。出湯栓30としては、給湯カランや、給湯シャワーなどとすることができる。また、出湯栓30は複数設けることもできる。給湯通路31からは、出湯栓30の直ぐ手前の分岐点33で還流通路32が分岐しており、分岐した還流通路32の他端は、循環型給湯装置10の外部で還流配管21に接続されている。そして、この還流配管21は循環ポンプ22を介して給水配管4に接続されている。従って、熱交換器13と、給湯配管20と、給湯通路31と、還流通路32と、還流配管21と、給水配管4とは、循環経路を形成している。更に、循環ポンプ22と給水配管4との間には、給水配管4から循環ポンプ22の方向に向かって上水が逆流することを防止するための逆止弁25が設けられている。このため、循環ポンプ22を動作させることによって、循環経路内の湯水を一方向に(図示した例では反時計回りに)循環させることができる。
【0021】
また、本実施例の循環型給湯装置10では、循環ポンプ22から、還流配管21と給水配管4とが合流する合流点23までの間に、湯水の流れに対して抵抗となる抵抗部24が設けられている。本実施例では、抵抗部24としてオリフィスが設けられているものとして説明するが、湯水の流れに対して抵抗となるのであれば、オリフィスに限らず、例えば目の細かい金網や、ファイバーなどのメッシュ、細管などを用いることも可能である。本実施例の循環型給湯装置10では、このような抵抗部24を設けることで、出湯栓30で出湯が開始されたことを直ちに検出することが可能となる。この理由については、後ほど詳しく説明する。
【0022】
尚、本実施例では、循環ポンプ22および抵抗部24は、還流配管21の途中(すなわち循環型給湯装置10の内部)に設けられているものとして説明するが、還流通路32の途中(すなわち循環型給湯装置10の外部)に設けることもできる。また、本実施例では、循環ポンプ22の下流側に抵抗部24が設けられているものとして説明するが、後述するメカニズムからすれば、循環ポンプ22の上流側に抵抗部24を設けることも可能である。
【0023】
更に、本実施例の循環型給湯装置10においても、従来の一般的な循環型給湯装置と同様に、給水配管4の途中には、熱交換器13に供給される上水や還流した湯水の流量を計測する流量センサー7や、これら湯水の流量を制御する流量制御弁6や、熱交換器13に供給される湯水の温度を検出する温度センサー8や、熱交換器13から流出する湯水の温度を検出する温度センサー9なども設けられている。流量センサー7や、温度センサー8,9からの出力は制御部50に入力されており、制御部50は、流量制御弁6や、循環ポンプ22の動作を制御する。
【0024】
図2は、本実施例の循環型給湯装置10が、出湯栓30から出湯が開始されたことを検出する原理についての説明図である。
図2(a)には、出湯栓30から出湯されていない状態が示されており、
図2(b)には、出湯栓30からの出湯が開始された直後の状態が示されている。尚、
図2では、図示が煩雑となることを避けるために、説明に関係が薄い部分については破線で表示したり、表示を省略したりしてある。
【0025】
図2(a)に示されるように、出湯栓30から出湯していない場合は、循環ポンプ22が動作しており、このため図中に斜線を付した矢印で示したように、循環経路内の湯水は、熱交換器13から出て、給湯配管20、給湯通路31、還流通路32、還流配管21、給水配管4を経由して、熱交換器13へと循環する。当然、湯水が循環する際には流路抵抗が発生するので、循環ポンプ22には、流路抵抗に相当する負荷が掛かることになる。また、本実施例の循環型給湯装置10では、還流配管21(あるいは還流通路32)の途中に抵抗部24が設けられているので、その分だけ、循環ポンプ22に掛かる負荷も大きくなる。尚、出湯栓30を開いていない間は水の出口が存在しないので、給水配管4から新たな水道水が供給されることはない。しかし、水道配管(図示は省略)からの水圧は、循環経路全体に加わった状態となっている。
【0026】
この状態から出湯栓30を開くと、その瞬間に出湯栓30から湯水が流出する。また、出湯栓30を開いた直後では、まだ循環ポンプ22は動作している。このため、
図2(b)中に斜線を付した矢印で示したように、出湯栓30の手前の分岐点33からは、還流通路32、還流配管21を介して給水配管4に湯水が還流する。但し、出湯栓30からは湯水が流出しているので、分岐点33から還流する湯水の流量は、湯水が流出する前の状態(
図2(a)参照)よりは小さくなる。更に、出湯栓30からの流出の有無に拘わらず、循環経路内の湯水の総量は変わらないので、出湯栓30から流出した流量と同じだけの新たな水が給水配管4から供給される。
図2(b)に白抜きで示した矢印は、給水配管4から新たな水が供給される様子を表している。従って、流量センサー7で計測される湯水の流量は、還流配管21から還流する湯水の流量に、給水配管4から供給される新たな水の流量を加えた流量となる。そして、この流量の湯水が熱交換器13で加熱された後、給湯配管20および給湯通路31を介して出湯栓30へと給湯されることになる。
【0027】
ここで、出湯開始前の状態を示す
図2(a)と、出湯開始直後の状態を示す
図2(b)とを比較すると、
図2(a)では全ての湯水が全ての循環経路内を循環しているのに対して、
図2(b)では、出湯栓30から出湯しなかった湯水が給水配管4に還流しているに過ぎない。すなわち、出湯栓30から出湯した分の湯水は、還流通路32から還流配管21を介して給水配管4へと還流させる必要がないので、その間の流路抵抗に相当する分だけ循環ポンプ22の負荷が軽減されている。従って、出湯栓30から出湯を開始した直後から、循環ポンプ22の負荷が減少することになる。特に、本実施例の循環型給湯装置10では、還流通路32あるいは還流配管21に抵抗部24が設けられているので、湯水が還流通路32および還流配管21を還流しなくても良いことによる負荷の減少が大きくなる。
【0028】
また、流量センサー7で検出される湯水の流量も変化する。すなわち、
図2(a)では、流量センサー7で検出される湯水の流量は、循環ポンプ22が循環させる湯水の流量と等しい。しかし、
図2(b)では、循環ポンプ22を通過する湯水の流量に、給水配管4から供給される水道水の流量(従って、出湯栓30から流出する湯水の流量)を加えた流量となる。従って、出湯栓30で出湯を開始すると、その直後から、流量センサー7で検出される湯水の流量が増加することになる。加えて、循環ポンプ22の負荷が減少するということは、循環ポンプ22にとって湯水を圧送し易くなることに他ならないから、負荷の減少に伴って循環ポンプ22が圧送する湯水の流量は増加する。すなわち、
図2(b)で循環ポンプ22を通過する湯水の流量は、
図2(a)で循環ポンプ22を通過する湯水の流量から、出湯栓30で流出する湯水の流量を減算した値よりも大きくなる。このため、出湯栓30で出湯開始した時に、流量センサー7で検出される流量の増加量は更に大きくなる。
【0029】
以上のことから、循環ポンプ22の動作中は、循環ポンプ22の負荷あるいは流量センサー7の出力を監視することで、出湯栓30での出湯開始を直ちに検出することができる。本実施例の循環型給湯装置10では、このようなメカニズムに着目して、循環ポンプ22の動作を停止させる。
【0030】
図3は、本実施例の循環型給湯装置10が、出湯栓30での出湯開始を検出して循環ポンプ22の動作を停止する処理のフローチャートである。この処理は、制御部50が循環ポンプ22を動作させた後に開始する処理である。
【0031】
図示されるように循環ポンプ停止処理では、流量センサー7で検出された流量が増加したか否かを判断する(S10)。流量が増加していない場合は(S10:no)、循環ポンプ22の負荷が減少したか否かを判断する(S11)。循環ポンプ22の負荷は、種々の方法で検出することができる。例えば、循環ポンプ22の負荷と駆動電流とはほぼ比例関係にあるので、循環ポンプ22の駆動電流の低下を検出することによって負荷の減少を検出することができる。あるいは、負荷が急に減少すれば循環ポンプ22の回転速度が増加するので、回転速度の増加を検出することによって循環ポンプ22の負荷の減少を検出することもできる。
【0032】
循環ポンプ22の負荷が減少していない場合は(S11:no)、処理の先頭に戻って再び、流量センサー7の流量が増加したか否かを判断する(S10)。このような操作を繰り返しているうちに、流量センサー7の流量が増加したか(S10:yes)、あるいは循環ポンプ22の負荷が減少した場合は(S11:yes)、出湯栓30から出湯が開始されたものと判断できるので、循環ポンプ22の動作を停止させて(S12)、
図3の循環ポンプ停止処理を終了する。尚、ここでは説明の都合上から、流量センサー7の流量、および循環ポンプ22の負荷の何れも監視しておき、流量の増加または負荷の減少の何れかが検出された場合に、循環ポンプ22を停止させるものとして説明したが、何れか一方を監視するだけでも良い。
【0033】
このように本実施例の循環型給湯装置10では、還流通路32あるいは還流配管21に抵抗部24を設けるだけで、新たなセンサーを設けることなく出湯栓30の出湯開始を検出して循環ポンプ22を停止させることができる。また、循環ポンプ22は制御部50によって制御されているので、循環ポンプ22の負荷を検出する場合でも、新たなセンサーを設けることなく出湯栓30の出湯開始を検出することができる。
【0034】
また、
図1あるいは
図2に例示したように、抵抗部24を循環ポンプ22の下流側に設けておけば、上流側に抵抗部24を設けた場合に比べて循環ポンプ22が負圧となりにくいので、循環ポンプ22の性能が低下する虞も抑制できる。
【0035】
加えて、抵抗部24は、還流通路32または還流配管21に設ければよく、給水配管4や、給湯配管20、給湯通路31に設ける必要はないので、出湯栓30からの出湯を開始して循環ポンプ22を停止させた後は、抵抗部24が湯水の抵抗となることはない。このため、抵抗部24は比較的大きな値の抵抗とすることができる。通常、循環ポンプ22で循環させる湯水の流量は、出湯栓30から出湯していない間に循環経路内の湯水を適温に保つことができる程度の比較的少ない流量に設定されているので、出湯栓30で出湯を開始した時に、循環ポンプ22の負荷が大きくは減少しないことも起こり得る。しかし、抵抗部24を比較的大きな値の抵抗としておけば、出湯栓30での出湯開始に伴う循環ポンプ22の負荷を大きく減少させることができるので、出湯開始を精度良く検出することが可能となる。
【0036】
更に、抵抗部24での抵抗を比較的大きな値としておけば、循環型給湯装置10から出湯栓30までの配管経路あるいは配管長の違いによる影響を受けずに、出湯栓30での出湯開始を精度良く検出することもできる。例えば、
図4には、循環型給湯装置10から遠くの出湯栓30に給湯する場合が例示されている。このような場合、循環型給湯装置10から出湯栓30までの給湯通路31および還流通路32が長くなり、途中の曲がりも多くなるので、配管部分での抵抗が大きくなる。このため、同じように出湯栓30で出湯を開始しても、
図1あるいは
図2に例示した場合と、
図4に例示した場合とでは、循環ポンプ22の負荷の減少量や、流量センサー7での流量の増加量が変わってしまい、このことは、出湯開始を精度良く検出する際の障害となる。
【0037】
これに対して、抵抗部24での抵抗を比較的大きな値としておけば、循環経路全体の抵抗の中で、循環型給湯装置10から出湯栓30までの配管部分の抵抗が占める割合を小さくすることができる。このため、配管状態の違いによる影響を受け難くなって、出湯開始を精度良く検出することが可能となる。
【0038】
上述した実施例では、抵抗部24は抵抗の値が固定されているものとして説明した。しかし、抵抗部24での抵抗の値を変更可能としても良い。例えば、
図5(a)に例示したように、複数の部材24aで還流配管21の通路を絞ることによって抵抗部24を形成し、部材24aの一部を可動式とすることによって、抵抗部24の抵抗の値を変更可能としても良い。あるいは、
図5(b)に例示したように、還流配管21の通路に邪魔板24bを設けることによって抵抗部24を形成し、この邪魔板24bを回転可能とすることによって、抵抗部24の抵抗の値を変更可能としても良い。
【0039】
こうすれば、循環型給湯装置10から出湯栓30までの配管部分での抵抗の違いに応じて、抵抗部24での抵抗を適切に調整することにより、配管状態の影響を受けることなく、出湯栓30での出湯開始を精度良く検出して、循環ポンプ22を停止させることが可能となる。
【0040】
以上、本実施例の循環型給湯装置10について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上述した実施例では、抵抗部24は一箇所に設けられているものとして説明したが、還流通路32あるいは還流配管21の複数箇所に抵抗部24を設けても構わない。
【符号の説明】
【0041】
1…給湯システム、 4…給水配管、 5…ガス配管、
6…流量制御弁、 7…流量センサー、 8,9…温度センサー、
10…循環型給湯装置、 11…バーナー、 12…燃焼ファン、
13…熱交換器、 20…給湯配管、 21…還流配管、
22…循環ポンプ、 24…抵抗部、 25…逆止弁、
30…出湯栓、 31…給湯通路、 32…還流通路、
50…制御部。