特許第6341723号(P6341723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝ホクト電子株式会社の特許一覧

特許6341723サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ
<>
  • 特許6341723-サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ 図000002
  • 特許6341723-サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ 図000003
  • 特許6341723-サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ 図000004
  • 特許6341723-サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ 図000005
  • 特許6341723-サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ 図000006
  • 特許6341723-サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ 図000007
  • 特許6341723-サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ 図000008
  • 特許6341723-サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ 図000009
  • 特許6341723-サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341723
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   B41J2/335 101B
   B41J2/335 101E
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-70929(P2014-70929)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-189231(P2015-189231A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113322
【氏名又は名称】東芝ホクト電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(74)【代理人】
【識別番号】100081732
【弁理士】
【氏名又は名称】大胡 典夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 好英
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−047774(JP,A)
【文献】 特開2012−061778(JP,A)
【文献】 特開平02−231153(JP,A)
【文献】 特開平04−244862(JP,A)
【文献】 米国特許第06133929(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド基板に主走査方向に間隔を隔てて複数個設けられ、主走査方向に平行な中央部と当該中央部の両端から主走査方向と直交する副走査方向に延びる2本の側部とでなるコの字型の発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体の2本の側部のうちの一方の側部の先端部分に接続される個別電極と、
前記発熱抵抗体の2本の側部のうちの他方の先端部分に接続される共通電極と、
前記発熱抵抗体の個別電極及び共通電極が接続されている側とは反対側に、間隔を隔てて設けられた放熱部と
を具備し、
前記ヘッド基板は、
支持基板と、当該支持基板上に形成される保温層と、当該保温層上に積層され、前記発熱抵抗体を形成する抵抗体層と、当該抵抗体層上に積層され、前記個別電極及び共通電極を形成する導電帯層と、前記保温層上に、前記発熱抵抗体、前記個別電極及び共通電極を覆うようにして形成される保護層とでなり、
前記放熱部は、
前記抵抗体層と同一の素材でなる層と前記導電帯層と同一の素材でなる層とを積層したものでなり、前記保温層と前記保護層との間に介在する
ことを特徴とする折り返し型のサーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記発熱抵抗体の上方に、前記保護層を間に挟んで、前記発熱抵抗体からの熱が伝わるドット単位の大きさでなる熱伝導性膜を設けた
ことを特徴とする請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記発熱抵抗体から前記熱伝導性膜までの間隔が、前記発熱抵抗体から前記放熱部までの間隔よりも短い
ことを特徴とする請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記熱伝導性膜は、前記保護層に埋設されている
ことを特徴とする請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記放熱部は、主走査方向の一端に位置する発熱抵抗体の個別電極及び共通電極が接続されている側とは反対側から、他端に位置する発熱抵抗体の個別電極及び共通電極が接続されている側とは反対側まで延びている
ことを特徴とする請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドを有する
サーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録デバイスであるサーマルプリントヘッド及びこれを有するサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、ビデオプリンタ、イメージャ、シールプリンタなどの出力用デバイスとして注目されている。サーマルプリントヘッドは、基板上に配置された発熱抵抗体を発熱させることにより、感熱紙や製版フィルム、印画紙、メディアなどに記録を行うものであり、低騒音、低ランニングコストなどの利点を持つ為、様々な開発が行われている。
【0003】
一般的なサーマルプリントヘッドは、放熱基板と、放熱基板に取り付けられた発熱体板と、発熱体板と同じ側で放熱基板に取り付けられた回路基板とを有している。この発熱体板の放熱基板が取り付けられた面とは反対側の面に設けられる帯状に延びる発熱領域には、複数の発熱抵抗体が所定の間隔で直線状に配列されている。また、回路基板には、発熱抵抗体を駆動する駆動回路の一部となる駆動ICなどの電気部品が搭載されている。
【0004】
このようなサーマルプリントヘッドを用いたプリンタは、一般的に、所定の弾性を持つ材料で円筒状に形成されたプラテンローラを備えている。このプラテンローラは、発熱抵抗体が配列された主走査方向を軸として、その側面が支持基板上の発熱領域に接するように配置され、その軸を中心に回転可能に設けられる。プラテンローラの回転によって、プラテンローラと発熱領域の間に挿入された媒体は、主走査方向に垂直な副走査方向に移動する。プラテンローラによって媒体を発熱領域に押し付けつつ、その媒体を副走査方向に移動させ、発熱抵抗の発熱パターンを媒体の移動とともに変化させることにより、所望の画像を媒体上に形成する。
【0005】
また、サーマルプリントヘッドには、たとえば、発熱抵抗体の一端側に個別電極を接続すると共に他端側に共通電極を接続して発熱抵抗体が1つの画素を描くシングル型と、2つの発熱抵抗体を折り返し電極で直列に接続して、そのうちの一方の発熱抵抗体の一端側に個別電極を接続すると共に他方の発熱抵抗体の一端側に共通電極を接続して2つの発熱抵抗体で1つの画素を描く折り返し型とがある(たとえば特許文献1参照)。尚、ここでは、個別電極と共通電極とが、発熱抵抗体から見て同じ側に設けられているものを折り返し型とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−61778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シングル型のサーマルプリントヘッドは、発熱抵抗体の他端側(すなわちヘッド基板の端部側)に、主走査方向に延び、各発熱抵抗体の共通電極と繋がる1本の電極(この電極も共通電極の一部と言える)を設ける必要があり、この共通電極による電圧効果(所謂コモンドロップ)によって、画質劣化が生じてしまうという問題があった。これに対して、折り返し型のサーマルプリントヘッドは、シングル型のようにヘッド基板の端部側に主走査方向に延びる共通電極を設けなくてもよく、シングル型と比べて、コモンドロップによる画質劣化を抑えることができるので、画質を重視する用途などでの利用に適している。
【0008】
一方で、折り返し型のサーマルプリントヘッドは、1つの画素を描く発熱抵抗体が2つに分割されていて、その間に隙間があることから、シングル型と比べて熱が拡散してしまい、発熱領域のピーク温度が低下する。この為、シングル型と比べて、効率及びレスポンスが劣ってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、折り返し型のサーマルプリントヘッドで効率及びレスポンスを向上させることことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明の一実施の形態に係る折り返し型のサーマルプリントヘッドは、ヘッド基板に主走査方向に間隔を隔てて複数個設けられ、主走査方向に平行な中央部と当該中央部の両端から主走査方向と直交する副走査方向に延びる2本の側部とでなるコの字型の発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体の2本の側部のうちの一方の側部の先端部分に接続される個別電極と、前記発熱抵抗体の2本の側部のうちの他方の先端部分に接続される共通電極と、前記発熱抵抗体の個別電極及び共通電極が接続されている側とは反対側に、間隔を隔てて設けられた放熱部とを具備し、前記ヘッド基板は、支持基板と、当該支持基板上に形成される保温層と、当該保温層上に積層され、前記発熱抵抗体を形成する抵抗体層と、当該抵抗体層上に積層され、前記個別電極及び共通電極を形成する導電帯層と、前記保温層上に、前記発熱抵抗体、前記個別電極及び共通電極を覆うようにして形成される保護層とでなり、前記放熱部は、前記抵抗体層と同一の素材でなる層と前記導電帯層と同一の素材でなる層とを積層したものでなり、前記保温層と前記保護層との間に介在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来の折り返し型の一対の発熱抵抗体を繋げたようなコの字型の発熱抵抗体を設けたことで、従来の折り返し型と比べて発熱領域のピーク温度を高くすることができ、そのうえで、発熱抵抗体と間隔を隔てて放熱部を設けたことで、発熱抵抗体により発生した熱を逃がすことができる。かくして、折り返し型のサーマルプリントヘッドで効率及びレスポンスを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るサーマルプリントヘッドの斜視図である。
図2】本発明に係るサーマルプリンタの部分断面図である。
図3】本発明に係るサーマルプリントヘッドのヘッド基板の部分断面図である。
図4】本発明に係るサーマルプリントヘッドのヘッド基板の配線パターンを示す平面図である。
図5】本発明に係るサーマルプリントヘッドの発熱抵抗体の形状を示す平面図である。
図6】本発明に係るサーマルプリントヘッドのヘッド基板の部分断面図及び高熱伝導性膜上の温度分布を示す図である。
図7】従来のシングル型の配線パターン及び折り返し型の配線パターンと、それぞれの温度分布を示す図である。
図8】本発明に係るサーマルプリントヘッドの放熱部の大きさの変形例を示す平面図である。
図9】本発明に係るサーマルプリントヘッドの高熱伝導性膜の位置の変形例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るサーマルプリンタ及びサーマルプリントヘッドの実施の形態を、図面を参照して説明する。尚、この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれに限定されない。
【0014】
まず、図1及び図2に、本実施の形態のサーマルプリンタ及びサーマルプリントヘッドの構成を示す。図1は、サーマルプリントヘッドの斜視図であり、図2は、サーマルプリンタの部分断面図である。尚、図1では、矢印Aの方向が主走査方向、矢印Bの方向が副走査方向を表している。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10は、放熱基板20、ヘッド基板30、回路基板40を有している。ヘッド基板30及び回路基板40は、放熱基板20の同一面上に載置されている。ヘッド基板30は、感熱記録媒体P(図2参照)の進行方向である副走査方向の下流側に設けられ、回路基板40は、副走査方向の上流側に設けられている。
【0016】
放熱基板20は、例えば、Al(アルミニウム)などの金属からなり、副走査方向と直交する主走査方向に延びている。この放熱基板20は、ヘッド基板30からの熱をサーマルプリントヘッド10の外部に放つようになっている。
【0017】
ヘッド基板30は、放熱基板20上に載置されていて、主走査方向に延びている。さらに、ヘッド基板30の上面には、主走査方向に延びる略帯状の発熱領域31が形成されている。この発熱領域31は、熱伝導性膜としての高熱伝導性膜32と、配線パターン33(図2参照)によって形成されている。
【0018】
回路基板40は、放熱基板20上に載置されていて、ヘッド基板30と並行して主走査方向に延びている。回路基板40には、接続回路(図示せず)が形成されている。また、回路基板40の上面には、駆動用IC41(図2参照)が実装されている。駆動用IC41は、発熱領域31の発熱を制御する。発熱領域31に所定の発熱パターンを形成する為の制御信号や駆動電力は、回路基板40の端部に実装されたコネクタ42を介して回路基板40に入力される。
【0019】
図2に示すように、ヘッド基板30の発熱領域31を形成する配線パターン33と、回路基板40の駆動用IC41とは、例えば、ボンディングワイヤ50によって電気的に接続されている。また、回路基板40の駆動用IC41と回路基板40の接続回路(図示せず)は、例えば、ボンディングワイヤ51によって電気的に接続されている。さらに、これら駆動用IC41とボンディングワイヤ50及び51は、ヘッド基板30の上面と回路基板40の上面とをまたぐように塗布形成されるエポキシ系樹脂からなる封止体52によって封止されている。
【0020】
サーマルプリンタは、このようなサーマルプリントヘッド10とともに、プラテンローラ60を有している。プラテンローラ60は、所定の弾性を持つ材料からなり、円筒状に形成されている。プラテンローラ60は、主走査方向に延びた軸61を中心に回転可能に支持されていて、外周面62がサーマルプリントヘッド10の発熱領域31に接するように設置されている。
【0021】
サーマルプリンタは、使用時に、プラテンローラ60と発熱領域31との間に、感熱紙などの感熱記録媒体Pが挿入される。サーマルプリンタは、プラテンローラ60を回転させることによって、感熱記録媒体Pを発熱領域31に押し付けながら副走査方向に移動させる。くわえて、サーマルプリンタは、感熱記録媒体Pの移動にともなって、発熱領域31の発熱パターンを変化させることによって、所望の画像を感熱記録媒体P上に形成する。
【0022】
ここで、サーマルプリントヘッド10のヘッド基板30について、図3及び図4を用いてさらに詳しく説明する。図3は、ヘッド基板30の部分断面図であり、図4は、ヘッド基板30の配線パターン33を示す平面図である。尚、図4では、矢印Aの方向が主走査方向を表し、矢印Bの方向が副走査方向を表している。
【0023】
ヘッド基板30は、図3に示すように、例えば、厚さ1mm程度の耐熱ガラスやアルミナ、シリカ、マグネシアなどのセラミックスの電気絶縁性材料からなる支持基板34と、支持基板34の上面に形成される厚さ40μm程度の耐熱ガラスなどからなるグレーズ層(保温層)35とを有している。グレーズ層35の上面には、Ta(タンタル)などがドーピングされたSiOの薄膜からなる抵抗体層36が積層され、さらにこの抵抗体層36上には、導電帯層37が積層され、これら抵抗体層36と導電帯層37が、SiOやSiONなどからなる保護層38で覆われている。
【0024】
さらに、この保護層38の上面の所定箇所には、熱伝導性及び耐磨耗性に優れた炭素、ニッケル、クロム、チタン、タングステンまたはこれらを主成分とした合金、あるいはこれらの金属や合金の積層体である高熱伝導性膜32が被着されている。高熱伝導性膜32は、厚さが例えば0.01μm〜0.5μm程度の薄膜となっている。
【0025】
また、ヘッド基板30上には、抵抗体層36と導電帯層37とによって、複数の配線パターン33が形成されている。
【0026】
各配線パターン33は、図4及び図5に示すように、主走査方向に平行な中央部70Aと当該中央部70Aの両端部から主走査方向と直交する副走査方向の上流側に延びる2本の側部70B、70Cとでなるコの字型の発熱抵抗体70と、発熱抵抗体70の一方の側部70Bの先端部に接続される個別電極71と、他方の側部70Cの先端部に接続される共通電極72とを有している。尚、この配線パターン33も、発熱抵抗体70から見て個別電極71と共通電極72とが同じ側にある為、折り返し型と言える。
【0027】
ヘッド基板30上には、このような配線パターン33が、主走査方向に所定の間隔を隔てて複数個設けられている。尚、グレーズ層35に突条(図示せず)を設け、この突条部分に発熱抵抗体70を形成するようにしてもよい。
【0028】
発熱抵抗体70は、図3にも示すように、抵抗体層36の導電帯層37が形成されてない部分である。この発熱抵抗体70は、解像度を300dpiとすると、主走査方向の長さ(これを幅とする)が、例えば76.5μmでなり、副走査方向の長さ(これを単に長さとする)が、例えば100μmとなっている。
【0029】
また、発熱抵抗体70は、2本の側部70B、70Cとの間に形成される隙間の長さが、例えば10μmとなっている。つまり、発熱抵抗体70は、隙間の長さが、全体の長さの半分以下でなり、隙間の最奥部が、ちょうど発熱抵抗体70の中心部に向けて位置し発熱抵抗体の発熱を最適に設定できるようになっている。
【0030】
個別電極71及び共通電極72は、それぞれ導電帯層37により形成されている。個別電極71及び共通電極72は、それぞれ副走査方向に直線状に延びていて、副走査方向の上流側の端部(すなわち発熱抵抗体70と接続されている端部とは逆側の端部)に設けられた電極パッドにボンディングワイヤ50(図2参照)が接続されている。
【0031】
さらに、各配線パターン33の発熱抵抗体70の副走査方向の下流側、すなわち個別電極71及び共通電極72が接続されている側の反体側には、所定の間隔Wを隔てて、四角形状の放熱部73が形成されている。この放熱部73は、図3に示すように、抵抗体層36とアルミニウムなどの金属でなる導電帯層37とでなり、ヘッド基板30の副走査方向の下流側の端面近傍まで延びている。
【0032】
この放熱部73も、配線パターン33と同様、主走査方向に所定の間隔を隔てて複数個設けられている。この放熱部73は、従来の配線パターンに設けられていた折り返し電極の代わりに、発熱抵抗体70から発生する熱を、副走査方向の下流側に逃がす役割を果たす。
【0033】
さらに、図3及び図6に示すように、ヘッド基板30の最上層には、発熱抵抗体70と対向する位置(すなわち発熱抵抗体70の上層)に高熱伝導性膜32が形成されている。この高熱伝導性膜32は、幅も長さも、例えば76.5μmの正方形となっている。つまり、高熱伝導性膜32は、その幅が発熱抵抗体70の幅と等しく、その長さが発熱抵抗体70の長さよりもわずかに短くなっている。
【0034】
この高熱伝導性膜32は、その中心が、発熱抵抗体70の中心と重なるようにして保護層38上に形成されている。また、発熱抵抗体70から高熱伝導性膜32までの間隔Hは、例えば、4〜10μmとなっている。尚、発熱抵抗体70から放熱部73までの間隔Wは、少なくともこの間隔Hより大きな値となっている。これは、発熱抵抗体70から発生した熱が、放熱部73に多く逃げてしまい、高熱伝導性膜32に伝わり難くすることを防ぐ為である。
【0035】
高熱伝導性膜32は、感熱記録媒体Pの記録面に接触する部分であり、発熱抵抗体70からの熱が保護層38を介して伝わることによって発熱する。そして、その発熱量が印刷可能値に達することで、感熱記録媒体Pの記録面にドットを形成するようになっている。
【0036】
つまり、この高熱伝導性膜32の形状及び大きさによって、感熱記録媒体Pに描かれるドットの形状及び大きさが変わる。ゆえに、高熱伝導性膜32の形状及び大きさは、感熱記録媒体Pに描かれるドットが所望の形状及び大きさとなるように決められている。
【0037】
このように、ヘッド基板30の最上層には、発熱抵抗体70と同程度の大きさでなる複数の高熱伝導性膜32が、その下に位置する複数の発熱抵抗体70と対向する位置に設けられていて、これら複数の高熱伝導性膜32と、複数の発熱抵抗体70とで発熱領域31が形成されている。
【0038】
ヘッド基板30は、このような構成でなり、駆動用IC41によって、配線パターン33の個別電極71と共通電極72との間に電圧が印加されると、コの字型の発熱抵抗体70が発熱する。そして、この熱が高熱伝導性膜32に伝わって高熱伝導性膜32が発熱することで、感熱記録媒体Pに1画素を出力する。
【0039】
ここで、本実施の形態のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例について説明する。まず、セラミック又はシリコンなどの絶縁性材料からなる支持基板34を用意して、その上面に、保温層として蓄熱性を有するグレーズ層35をスクリーン印刷などによって塗布して焼成する。その後、グレーズ層35上の全面に、スパッタリング法などによって抵抗体層36を成膜して、さらにこの抵抗体層36上に、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、クロム、チタン、タングステン又はこれらを主成分とした合金、あるいはこれらの金属や合金の積層体である導電帯層37をスパッタリングなどによって被着する。
【0040】
次に、この導電帯層37の全面に、フォトレジスト膜を塗布した後、このフォトレジスト膜上に、第1のマスクパターンをセットする。その後、この第1のマスクパターンをマスクとして、フォトレジスト膜を露光手段によって露光して、これを現像することで、第1のマスクパターンをフォトレジスト膜に転写して第1のレジストパターンを形成する。その後、この第1のレジストパターンをエッチングマスクとして、導電帯層37をリン酸などによってウエットエッチングする。これにより、導電帯層37が所定の形状にパターニングされる。
【0041】
つづいて、残存した導電帯層37上の全面に、第2のマスクパターンをセットする。この第2のマスクパターンは、発熱抵抗体70の形状を決める為のパターンである。その後、この第2のマスクパターンをマスクとして、第1のレジストパターンを露光手段によって露光して、これを現像することで、第2のマスクパターンをフォトレジスト膜に転写して第2のレジストパターンを形成する。その後、この第2のレジストパターンをエッチングマスクとして、抵抗体層36をケミカルドライエッチング(CDE)や反応性イオンエッチング(RIE)などによりドライエッチングする。これにより、抵抗体層36が所定の形状にパターニングされる。
【0042】
このようにして、導電帯層37及び抵抗体層36が所定の形状にパターニングされることで、発熱抵抗体70、個別電極71、共通電極72及び放熱部73が形成される。その後、導電帯層37及び抵抗体層36と、露出したグレーズ層35とを覆うように、SiOやSiONなどの耐酸化性と耐磨耗性とを有する保護層38を積層する。
【0043】
次に、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法などによる例えばシャドーマスクを用いた選択的な成膜、あるいはフォトエングレービングプロセスを通して、保護層38上の所定位置に、所定サイズの高熱伝導性膜32を形成する。
【0044】
そして、高熱伝導性膜32までが形成された板を、ダイシングなどによって板厚方向に切断して、複数のヘッド基板30に分割する。
【0045】
このようにして形成されたヘッド基板30を、回路基板40と共に放熱基板20に載置する。またヘッド基板30と回路基板40とをボンディングワイヤ50、51で結線して、さらにボンディングワイヤ50、51による結線部分を樹脂で封止することにより、サーマルプリントヘッド10が製造される。
【0046】
ここで、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10の構成によって得られる効果について説明する。まず、その効果を明確にする為に、比較対象となる従来のシングル型の配線パターンと、従来の折り返し型の配線パターンについて、図7を用いて説明する。
【0047】
図7(A)に示すように、シングル型の配線パターン100は、発熱抵抗体101と、発熱抵抗体101の副走査方向の上流側の端部に接続される個別電極102と、発熱抵抗体101の副走査方向の下流側の端部に接続される共通電極103とでなる。
【0048】
一方、図7(B)に示すように、折り返し型の配線パターン110は、主走査方向に所定の間隔を隔てて設けられる一対の発熱抵抗体111と、一対の発熱抵抗体111の各々の副走査方向の下流側の端部を接続する折り返し電極112と、一対の発熱抵抗体111のうちの一方の副走査方向の上流側の端部に接続される個別電極113と、一対の発熱抵抗体111のうちの他方の副走査方向の上流側の端部に接続される共通電極114とでなる。
【0049】
これに対して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10の配線パターン33は、図5及び図6に示したように、折り返し型の配線パターン110の一対の発熱抵抗体111を主走査方向に繋げたような、コの字型の発熱抵抗体70と、発熱抵抗体70の2本の側部70B、70Cのうちの一方の副走査方向の上流側の端部に接続される個別電極71と、2本の側部70B、70Cのうちの他方の副走査方向の上流側の端部に接続される共通電極72とでなる。
【0050】
さらに、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10では、配線パターン33の発熱抵抗体70の副走査方向の下流側に、所定の間隔Wを隔てて、放熱部73を形成するようにした。
【0051】
このように、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10では、従来の折り返し型の配線パターン110の一対の発熱抵抗体111を繋げたようなコの字型の発熱抵抗体70を設けたことで、従来の折り返し型の配線パターン110のように画素を描く発熱抵抗体が2つに分割されていて、その間に隙間があるような場合と比較して、熱の拡散を抑制することができ、発熱抵抗体70のピーク温度を高くすることができる。
【0052】
つまり、発熱抵抗体70のピーク温度を、従来の折り返し型よりも高くして、シングル型並とすることができる。
【0053】
そのうえで、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10では、配線パターン33の発熱抵抗体70の副走査方向の下流側に、所定の間隔Wを隔てて、放熱部73を設けたことで、発熱抵抗体70から発生した熱を、発熱領域31にとどまらせずに、この放熱部73に逃がすことができる。
【0054】
さらに、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10は、所謂折り返し型である為、シングル型のようにヘッド基板の端部側に主走査方向に延びる共通電極を設けなくてもよく、シングル型と比べて、コモンドロップによる画質劣化を抑えることができる。
【0055】
このように、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10では、折り返し型である為、コモンドロップによる画質劣化を抑えることができ、さらに、従来の折り返し型と比べて、発熱抵抗体70の温度ピークを高くすることができると共に、発熱抵抗体70の熱を放熱部73に逃がすことができるので、効率及びレスポンスを向上させることができる。
【0056】
また、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10は、発熱抵抗体70をコの字型としたことで、図6に示すように、発熱抵抗体70の2本の側部70B、70Cの隙間の最奥部付近(すなわち中心部)の領域が発熱の基点となるようになっている。
【0057】
こうすることで、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10は、例えば、図7(A)に示すシングル型のように発熱抵抗体101の中心の1点のみが発熱の基点となる場合と比べて、発熱抵抗体70の中心部と周辺部との温度差を小さくすることができ、1ドットを発熱させるのに必要な電力を少なくすることができる。
【0058】
くわえて、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10は、保護層38上の、発熱抵抗体70と対向する位置に、四角形の高熱伝導性膜32を設けて、この高熱伝導性膜32に、発熱抵抗体70からの熱を伝えて発熱させるようにした。
【0059】
これにより、従来の高熱伝導性膜32を有していないサーマルプリントヘッドでは、図7に示すように、ドットごとの熱分布が、発熱抵抗体の中心温度と周辺温度との温度差が大きい丸みを帯びたものとなってしまうのに対して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10では、図6に示すように、ドットごとの熱分布を、より四角形に近く中心温度と周辺温度との温度差が小さい平らなものとすることができ、この結果として、従来のサーマルプリントヘッドと比べて1ドット当たりの発熱エリアを広くすることができる。
【0060】
このように、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10では、高熱伝導性膜32を設けたことにより、1ドットを発熱させるのに必要な電力を少なくすることができるとともに、1ドット当たりの発熱エリアを広くすることができるので、従来と比して、より少ない電力で印画することができる。
【0061】
また、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10では、コの字型の発熱抵抗体70の熱を四角形の高熱電導性膜32に伝えて、これを発熱させることで、感熱記録媒体Pにドットを形成するようにしたことにより、熱電導性膜32の熱分布を容易に平坦化することができると共に、コンパクトな正方形ドットを容易に形成することができる。
【0062】
さらに、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10では、配線パターン33の発熱抵抗体70の副走査方向の下流側に、所定の間隔Wを隔てて、抵抗体層36と導電帯層37とを積層してなる放熱部73を設けるようにしたが、この放熱部73は、発熱抵抗体70から発生した熱を逃がす役割の他に、グレーズ層35と保護層38との接着力を高める役割も果たしている。
【0063】
実際、図3に示したように、グレーズ層35の上には、直接、保護層38が積層される部分と、抵抗体層36を介して保護層38が積層される部分と、抵抗体層36と導電帯層37とを介して保護層38が積層される部分が存在する。このうち、グレーズ層35の上に直接、保護層38がスパッタなどで積層される部分は、他の部分と比べて、グレーズ層35の材質と保護層38の材質との関係から接着力が弱い。
【0064】
ゆえに、例えば、発熱抵抗体70よりも副走査方向の下流側に抵抗体層36及び導電帯層37が全く存在しなければ、ヘッド基板30の副走査方向の下流側の端部で、グレーズ層35と保護層38とが剥離し易くなってしまう。
【0065】
これに対して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10では、ヘッド基板30の端部近傍のグレーズ層35と保護層38との間に、抵抗体層36と導電帯層37とを積層してなる放熱部73が設けられていて、この放熱部73がグレーズ層35と保護層38との接着剤のように機能することにより、ヘッド基板30の端部でグレーズ層35と保護層38とが剥離してしまうことを防ぐようにもなっている。
【0066】
尚、本実施の形態では、各発熱抵抗体70の副走査方向の下流側に、それぞれ放熱部73を設けるようにした。つまり、発熱抵抗体70ごとに1個ずつ放熱部73を設けるようにしたが、これに限らず、例えば、図8(A)及び(B)に示すように、放熱部73の全てを主走査方向に繋げて、全ての発熱抵抗体に対して1個の放熱部73を設けるようにしてもよいし、放熱部を2個ずつ、もしくは3個ずつ繋げて、2個の発熱抵抗体70に対して1個の放熱部73を設けたり、3個の発熱抵抗体70に対して1個の放熱部73を設けたりしてもよい。放熱部73の面積を大きくすれば、その分、放熱効果が高まるので、全ての発熱抵抗体70に対して1個の放熱部73を設けるようにすれば、放熱効果が最も高くなる。
【0067】
また、上述した実施の形態では、保護層38の上に高熱伝導性膜32を設けるようにしたが、これに限らず、例えば、図9に示すように、保護層38の上面と、高熱伝導性膜32の上面とが同一面となるように、もしくはほぼ同一面となるように、高熱伝導性膜32を保護層38に埋設するようにしてもよい。
【0068】
この場合、例えば、所定の厚さでなる保護層38を形成して、その上に、高熱伝導性膜32を形成した後、高熱伝導性膜32の周りに、高熱伝導性膜32と同じ厚さ、もしくはほぼ同じ厚さの保護層38をさらに形成するようにすればよい。
【0069】
また、上述した実施の形態では、高熱伝導性膜32の幅を発熱抵抗体70の幅と等しくするとともに、高熱伝導性膜32の長さを発熱抵抗体70の長さよりも短くして、さらに発熱抵抗体70の中心に高熱伝導性膜32の中心が重なるようにして、高熱伝導性膜32を保護層38の上に設けるようにした。
【0070】
これに限らず、例えば、高熱伝導性膜32の幅を発熱抵抗体70の幅よりも大きくしたり小さくしたりしてもよく、また、高熱伝導性膜32の長さを発熱抵抗体70の長さよりと等しくしたり長くしたりしてもよく、さらに、高熱伝導性膜32の中心を、発熱抵抗体70の中心から副走査方向の上流側にずらしたり、下流側にずらしたりしてもよい。
【0071】
実際、例えば、サーマルプリントヘッド10の用途を、フォト用(写真画像の印刷)とする場合には、副走査方向に隣接するドットの隙間が狭くなるように、高熱伝導性膜32の幅を、発熱抵抗体70の幅よりも大きくする。このとき、ドットが正方形となるよう、高熱伝導性膜32の長さを幅と等しくすることが望ましい。
【0072】
また、例えば、サーマルプリントヘッド10の用途を、製版フィルムへの出力とする場合には、副走査方向に隣接するドットの隙間が広くなるように、高熱伝導性膜32の幅を、発熱抵抗体70の幅と等しくする。このとき、ドットが正方形となるよう、高熱伝導性膜32の長さを幅と等しくすることが望ましい。
【0073】
さらに、上述した実施の形態のサーマルプリントヘッド10の構成は、一例であり、同様の機能を有する構成であれば、上述した実施の形態の構成とは異なる構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10……サーマルプリントヘッド、20……放熱基板、30……ヘッド基板、31……発熱領域、32……高熱伝導性膜、33、100、110……配線パターン、34……支持基板、35…グレーズ層、36……抵抗体層、37……導電帯層、38……保護層、70、101、111……発熱抵抗体、71、102、113……個別電極、72、103、114……共通電極、73……放熱部、P……記録媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9