特許第6341766号(P6341766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341766
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20180604BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180604BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20180604BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180604BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20180604BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20180604BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20180604BHJP
   A61K 8/45 20060101ALI20180604BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61Q19/00
   A61K8/41
   A61K8/37
   A61K8/49
   A61K8/89
   A61K8/39
   A61K8/45
   A61K8/86
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-118745(P2014-118745)
(22)【出願日】2014年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-231959(P2015-231959A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】湯山 暁
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−193172(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0206793(US,A1)
【文献】 塗料の研究,日本,関西ペイント,2010年10月,No.152,p.41-46,添加剤の溶解性パラメータに関する考察,URL,www.kansai.co.jp/rd/token/152/08.pdf
【文献】 プラスチック・データブック,日本,株式会社工業調査会,1999年12月 1日,初版第1刷,p.189-190
【文献】 花王のエステル製品,2011年 1月,p.3,各種エステル類のSP値掲載,URL,http://chemical.kao.com/jp/pdf/catalog/Ester_1101.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)次の一般式(1)
【化1】
(式中、R1及びR2は同一又は異なって、炭素数12〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R3及びR4は同一又は異なって、炭素数1〜3の炭化水素基を示し、X-は、塩形成陰イオンを示す)
で表されるカチオン界面活性剤 1質量%を超え3質量%以下、
(B)HLB10〜15の非イオン界面活性剤、
(C)SP値が15.5〜18.5であり、25℃で液状のエステル油及びエーテル油から選ばれる油剤 0.5〜9質量%、
(D)高級アルコール 0.1〜2質量%、
(E)SP値が23〜30であり、ナイルレッド、下記式(2)で表されるスピロエーテル、フラバノン、フラボン及びアピゲニンから選ばれる1種又は2種以上の化合物 0.00001〜0.003質量%
【化2】
(式中、波線は当該結合状態がZ又はEのいずれでもよいことを示す。なお、ZはZusammenの略称、EはEntgegennの略称であり、幾何異性体であることを表す)
(F)水
を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比(A)/(B)が、2.3〜36である皮膚化粧料。
【請求項2】
成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)が、1.0〜18である請求項1記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
さらに、(G)ジメチルポリシロキサンを含有する請求項1又は2記載の皮膚化粧料。
【請求項4】
さらに、(H)架橋型メチルポリシロキサンを含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚化粧料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の皮膚化粧料を、肌に塗布し伸ばすスキンケアのための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚化粧料には、美白作用、消炎作用等を発揮する種々の有効成分を配合し、経皮吸収させることにより、その効果を得ることが行われている。しかしながら、有効成分を単に化粧料に配合するのみでは、十分に経皮吸収されず、その成分本来の効果を得ることは困難である。
一方、水中油型乳化化粧料では、油溶性の成分を安定に乳化して配合することが課題であり、種々の検討がなされている。例えば、特許文献1〜3には、カチオン界面活性剤を用いて乳化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−217616号公報
【特許文献2】特開2006−36763号公報
【特許文献3】特開2007−112808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、カチオン界面活性剤を用いると、得られる組成物が硬くなり、肌の上で広がりにくく、塗布時に密着感がなく、塗布後の肌のなめらかさなど、使用感に課題があることを見出した。なお、塗布時の密着感とは、マッサージを行っているときに、指が肌に吸い付くような感じであり、また、指を肌から垂直に離したときに、肌が指に追随する感じがあることを示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定のカチオン界面活性剤と、非イオン界面活性剤、特定の油剤及び高級アルコールとを特定の割合で組み合わせて用いることにより、安定性に優れ、有効成分の経皮吸収効果を向上させると共に、使用感の良好な皮膚化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)次の一般式(1)
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R1及びR2は同一又は異なって、炭素数12〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R3及びR4は同一又は異なって、炭素数1〜3の炭化水素基を示し、X-は、塩形成陰イオンを示す)
で表されるカチオン界面活性剤 1質量%を超え3質量%以下、
(B)HLB10〜15の非イオン界面活性剤、
(C)SP値が15.5〜18.5であり、25℃で液状のエステル油及びエーテル油から選ばれる油剤 0.5〜9質量%、
(D)高級アルコール 0.1〜2質量%、
(E)SP値が23〜30である化合物 0.00001〜0.003質量%、
(F)水
を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比(A)/(B)が、2.3〜36である皮膚化粧料に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚化粧料は、油溶性成分の浸透性が向上し、使用感に優れるとともに、安定性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いる成分(A)のカチオン界面活性剤は、前記一般式(1)で表されるものであり、油溶性成分の浸透性を向上させることができる。
式(1)中、R1及びR2で示される炭化水素基としては、直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が挙げられる。R1及びR2で示される炭化水素基の炭素数は、後述する成分(E)の浸透性の向上と乳化物の安定性を向上させる点から、炭素数12〜22であり、炭素数12〜18が好ましく、炭素数16〜18がさらに好ましい。
また、R3及びR4で示される炭素数1〜3の炭化水素基としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
さらに、塩形成陰イオンとしては、ハロゲンイオン、リン酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、モノアルキル硫酸イオン等が挙げられ、後述する成分(E)の浸透性の向上と乳化物の安定性を向上させる点から、ハロゲンイオンが好ましく、塩素イオンがより好ましい。
【0011】
カチオン界面活性剤の具体例としては、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジアラキルジメチルアンモニウム、塩化ジベヘニルジメチルアンモニウム等が挙げられる。これらのうち、皮膚に対する親和性を有する点から、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが好ましい。また、これらの市販品としては、塩化ジセチルジメチルアンモニウムとして、VARISOFT 432 PPG(エボニック社)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムとして、VARISOFT TA 100(EVONIK エボニック社)等が挙げられる。
【0012】
成分(A)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、含有量は、後述する成分(E)の浸透性の向上、塗布時の化粧料の広がり及密着感の向上、乳化組成物の安定性を向上させる点から、全組成中に1質量%を超え3質量%以下であり、1.1〜2.6質量%が好ましく、塗布時の化粧料の広がり及び塗布時の化粧料の密着感を向上させる点から、1.4質量%以上がより好ましく、化粧料が塗布後の肌へ浸透する感じ、塗布後の肌のなめらかさを向上させる点から、2.2質量%以下がより好ましい。
【0013】
本発明で用いる成分(B)の非イオン界面活性剤は、塗布時の化粧料の広がりを向上させることができ、HLB10〜15のものであり、HLB11〜14.5が好ましく、HLB12.5〜14のものがより好ましい。
【0014】
ここで、HLB(親水性−親油性のバランス〈Hydrophilic-Lypophilic Balance〉)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、非イオン界面活性剤については、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。
2種以上の非イオン界面活性剤から構成される混合界面活性剤のHLBは、次のようにして求められる。混合界面活性剤のHLBは、各非イオン界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて相加算平均したものである。
【0015】
混合HLB=Σ(HLBx×Wx)/ΣWx
HLBxは、非イオン界面活性剤XのHLB値を示す。
Wxは、HLBxの値を有する非イオン界面活性剤Xの質量(g)を示す。
【0016】
成分(B)の非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロースエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0017】
これらのうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル基の炭素数は、保存安定性を向上させる点から、炭素数16〜20が好ましく、16〜18がより好ましい。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル基は、保存安定性を向上させる点から、分岐鎖で飽和したものが好ましい。
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイド基は、保存安定性を向上させる点から、平均モル数は、10〜25が好ましく、10〜20がより好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(20)2−ヘキシルデシルエーテル等を使うことができる。
【0018】
成分(B)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、含有量は、成分(A)を含むカチオン界面活性剤と組み合わせた場合の塗布時の化粧料の広がり、塗布時の化粧料の密着感、塗布後の肌のなめらかさを向上させる点から、全組成中に0.01〜0.9質量%が好ましく、0.03〜0.8質量%がより好ましく、化粧料の広がり、塗布後の肌のなめらかさを向上させる点から、0.09質量%以上がさらに好ましく、化粧料が塗布後の肌へ浸透する感じを向上させる点から、0.45質量%以下が好ましい。
【0019】
本発明の皮膚化粧料において、成分(A)と(B)の質量比(A)/(B)は、浸透性、化粧料の塗布時の広がりが向上させる点から、2.3〜36であり、3〜24が好ましく、化粧料が塗布後の肌へ浸透する感じを向上させる点から、4以上がより好ましく、塗布時の化粧料の広がり、塗布後の肌のなめらかさを向上させる点から15以下が好ましい。
【0020】
本発明で用いる成分(C)の油剤は、油溶性成分の浸透性を向上させる点から、SP値が15.5〜18.5のものであり、浸透性と系の安定性を向上させる点から、15.8〜18.2のものがより好ましく、16.0〜17.0がさらに好ましい。
ここで、SP値とは、溶解度パラメーターδであって、液体の分子凝集エネルギーEと分子容Vからδ=(E/V)1/2(J/cm3)で与えられる物質定数である。SP値は、各種方法で求められるが、本発明においては、Fedorsの方法(J.BRANDRUP著「POLYMER HANDBOOK 4th 」JHON WILEY & SONS,INC 1999年発行、VII685〜686項に示されるパラメーター)及びコンピューターソフトMolecular modeling Pro(Norgwyn Montgomery Software Inc.)を用いて求めた。
【0021】
また、成分(C)の油剤は、25℃で液状のエステル油及びエーテル油から選ばれるものである。かかる油剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば、制限されずに使用することができる。
かかる油剤としては、例えば、リンゴ酸ジイソステアリル(SP値:18.17)、乳酸オクチルドデシル(SP値:18.53)、イソノナン酸イソノニル(SP値:16.44)、イソノナン酸イソトリデシル(SP値:16.56)、ミリスチン酸オクチルドデシル(SP値:16.74)、パルミチン酸イソプロピル(SP値:16.75)、イソステアリン酸イソプロピル(SP値:16.63)、ステアリン酸ブチル(SP値:16.74)、ミリスチン酸ミリスチル(SP値:16.75)、ミリスチン酸イソプロピル(SP値:17.0)、ミリスチン酸オクチルドデシル(SP値:16.74)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(SP値:18.15)、トリカプロイン、2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、メドフォ−ム油、オリーブ油(SP値:16.3)等のエステル油;セチル−1,3-ジメチルブチルエーテル(SP値:16.57)、セチルイソブチルエーテル(SP値:16.83)、ジオクチルエーテル(SP値:16.85)等のエーテル油が挙げられる。
【0022】
成分(C)の油剤としては、油溶性成分の浸透性と系の安定性を向上させる点から、オリーブ油、セチル−1,3−ジメチルブチルエーテル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等が好ましく、オリーブ油、セチル−1,3−ジメチルブチルエーテルがより好ましい。
【0023】
成分(C)は、1種又は2種以上を用いることができ、後述する成分(E)の浸透性の向上と使用感を向上させる点から、含有量は、全組成中に0.5〜9質量%であり、1〜7.8質量%が好ましく、化粧料が塗布後の肌へ浸透する感じを向上させる点から、2.0質量%以上が好ましく、浸透性、化粧料が塗布後の肌へ浸透する感じを向上させる点から、7.0質量%以下が好ましい。
【0024】
また、本発明の皮膚化粧料において、成分(A)と(C)の質量比(A)/(C)は、
浸透性の点から、0.1〜2.3が好ましく、0.15〜1.3がより好ましく、浸透性、化粧料が塗布後の肌へ浸透する感じを向上させる点から0.25以上がより好ましく、化粧料が塗布後の肌へ浸透する感じを向上させる点から0.8以下がより好ましい。
【0025】
成分(D)の高級アルコールは、炭素数12〜22の高級アルコールが好ましく、炭素数14〜18の高級アルコールがより好ましく、油溶性成分の浸透性を向上させることができる。
成分(D)の高級アルコールは、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、保存安定性を向上させる点から、直鎖の飽和した炭化水素基が好ましい。
成分(D)としては、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。これらのうち、セチルアルコール、ステアリルアルコールが好ましく、保存安定性の点から、セチルアルコールとステアリルアルコールを組み合わせて含有することが好ましい。
また、セチルアルコールとステアリルアルコールを組み合わせて含有する場合、セチルアルコールに対するステアリルアルコールの質量比((セチルアルコール)/(ステアリルアルコール)は、保存安定性を向上させる点から、4/6〜8/2が好ましく、5/5〜7/3がより好ましい。
【0026】
成分(D)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、油溶性の成分の浸透性と塗布時の密着感、塗布後の肌のなめらかさを向上させる点から、含有量は、全組成中に0.1〜2質量%であり、0.14〜1.7質量%が好ましく、塗布時の化粧料の密着感、化粧料が塗布後の肌へ浸透する感じ、塗布後の肌のなめらかさを向上させる点から、0.25質量%以上がより好ましく、塗布時の化粧料の広がりを向上させる点から、1.4質量%以下が好ましい。
【0027】
また、本発明の皮膚化粧料において、成分(A)と(D)の質量比(A)/(D)は、成分(E)の浸透性を向上させる点から、1.0〜18が好ましく、1.1〜12がより好ましく、塗布時の化粧料の広がりを向上させる点から、1.5以上がさらに好ましく、塗布時の化粧料の密着感、化粧料が塗布後の肌へ浸透する感じ、塗布後の肌のなめらかさを向上させる点から、8.0以下がさらに好ましい。
【0028】
成分(E)は、SP値が23〜30である化合物であり、浸透性の点から、SP値が23〜24のものが好ましい。
成分(E)としては、美白剤、消炎剤、血行促進剤等の有用成分が挙げられる。本発明においては、成分(A)〜(D)を特定の割合で組み合わせて用いることにより、これらの有用成分の浸透性を向上させることができる。
なお、成分(E)のSP値は、成分(C)と同様の方法で求められる。
【0029】
かかるSP値を有する化合物としては、例えば、ナイルレッド(SP値=23.6)、下記式(2)で表されるスピロエーテル(SP値=23.64)、フラバノン(SP値=24.49)、フラボン(SP値=25.2)、アピゲニン(SP値=29.4)などが挙げられる。
【0030】
【化2】
【0031】
(式中、波線は当該結合状態がZ又はEのいずれでもよいことを示す。なお、ZはZusammenの略称、EはEntgegennの略称であり、幾何異性体であることを表す)
成分(E)としては、美白剤が好ましい。また、成分としては、上記式(2)で表されるスピロエーテル、ナイルレッド、アピゲニンがより好ましく、スピロエーテル、ナイルレッドがさらに好ましい。
本発明において、成分(E)は、皮膚に浸透されるためには、成分(A)〜(D)、(F)の混合物に混合されていれば良く、成分(C)中に分散、溶解していても良く、また、成分(F)中に分散されていても良い。
【0032】
また、成分(E)の含有量は、浸透性を考慮すれば、多い程良いが、全組成中に0.00001〜0.003質量%であり、0.0001〜0.001質量%が好ましい。
【0033】
成分(F)の水の含有量は、皮膚上での感触のみずみずしさの点から、全組成中に30〜95質量%が好ましく、45〜90質量%がより好ましい。
【0034】
本発明の皮膚化粧料は、さらに、(G)ジメチルポリシロキサンを含有することができ、塗布時のベタツキを抑制し、塗布時のなめらかさを向上させることができる。
成分(G)のジメチルポリシロキサンとしては、25℃における粘度が、2〜10mm2/sのものが好ましく、5〜7mm2/sのものがより好ましい。
成分(G)ジメチルポリシロキサンとしては、例えば、KF−96L-2cs(2mm2/s)、KF−96A-5cs(5mm2/s)、KF−96A-6cs(6mm2/s)、KF−96A-10cs(10mm2/s)(いずれも信越化学工業社製)等を用いることができる。
【0035】
成分(G)は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、塗布時の化粧料の広がりやすさ、浸透する感じを向上させる点から、全組成中に0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましく、0.8〜1.5質量%が更に好ましい。
【0036】
本発明の皮膚化粧料は、さらに、(H)架橋型メチルポリシロキサンを含有することができ、塗布後の肌のなめらかさを向上させることができる。
架橋型メチルポリシロキサンは、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(INCI名)であり、常法に従って製造することができる。架橋型メチルポリシロキサンは、水や、アルコール、油剤等に不溶性のシリコーン粉体で、数平均粒径が1〜30μmのものが好ましく、2〜6μmのものがより好ましい。
【0037】
成分(H)は、粉体として配合してもよい。例えば、KM9729(数平均粒子径2μm、信越化学工業社);トレフィルE−506c、トレフィルE−508(いずれも数平均粒子径3μm、東レ・ダウコーニング社)などが挙げられる。また、各種の溶媒に界面活性剤等を用いて分散させた分散液として配合することもできる。このような分散液としては、例えば、シリコーンBY29−119、シリコーンBY29−129(いずれも数平均粒子径4μm、有効分63%、溶媒:水、東レ・ダウコーニング社)等の市販品を用いることができる。
【0038】
成分(H)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、含有量は、塗布後の肌のなめらかさを向上させる点から、全組成中に1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましく、3〜6質量%が更に好ましい。
【0039】
本発明の皮膚化粧料は、さらに、(I)セラミド及びセラミド類似化合物から選ばれる1種以上の化合物を含有することができ、安定性をより向上させることができる。
セラミドとしては、動植物から抽出、精製されたもの、微生物学的方法又は科学的方法によって合成されたものが含まれる。例えば、次の一般式(3)で表されるアミド誘導体が挙げられる。
【0040】
【化3】
【0041】
(式中、R5は、1以上の水酸基が置換していてもよい炭素数8〜50の直鎖若しくは分岐鎖の飽和若しくは不飽和の炭化水素基、又はR7−COO−R8−(R7は炭素数8〜30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基、R8は1以上の水酸基が置換していてもよい炭素数8〜40の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基)で表される基を示し、R6は、1以上の水酸基が置換していてもよい炭素数8〜50の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す)
【0042】
具体的には、Robson K.J. et al., J. Lipid Res.,35,2060(1994)や、Wertz P.W. et al., J. Lipid Res.,24,759(1983)等に記載されているタイプI〜VIIのセラミドが含まれる。
市販されているセラミドとしては、セラミドIII、セラミドIIIB、セラミドIIIA、セラミドIV、フィトセラミドI(以上、デグサ社)、セラミドII(セダーマ社)、セラミドTIC−001(高砂香料社)等を用いることができる。
【0043】
一方、セラミド類似化合物としては、例えば次の一般式(4)で表わされるアミド誘導体が挙げられる。
【0044】
【化4】
【0045】
(式中、R9は炭素数9〜25の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R10は炭素数10〜26の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す)
【0046】
一般式(4)で表されるアミド誘導体は、特開昭62-228048号公報、特開昭63-228048号公報等に記載された方法により製造することができる。また、具体的には、N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミドが挙げられ、スフィンゴリピッド E(花王社製)等を使用することができる。
【0047】
成分(I)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、安定性を向上させる点から、含有量は、全組成中に、1〜3質量%が好ましく、1.5〜2.5質量%がより好ましく、1.7〜2.3質量%が更に好ましい。
【0048】
本発明の皮膚化粧料は、更に、多価アルコールを含有することができる。成分(E)などの分散剤として機能するだけでなく、保湿効果を付与することができる。
多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられ、成分(E)の分散性を向上する点から、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましく、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、がより好ましい。
多価アルコールは、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、分散剤及び使用感の点から、全組成中に0.1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましい。
【0049】
本発明の皮膚化粧料は、前記成分以外の剤であって、通常の化粧料に用いられるその他の成分を含有することができる。例えば、前記以外の油性成分、前記以外の非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、低級アルコール、水溶性高分子、酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、紫外線吸収剤、粉体、香料、色材などが挙げられる。
【0050】
本発明の皮膚化粧料は、25℃における粘度が、塗布時の化粧料の広がりやすさの点から、800〜14000mPa・sであるのが好ましく、900〜13000mPa・sがより好ましく、1000〜11000mPa・sがさらに好ましい。測定は、B型粘度計(東機産業社製、TVB−10型)を用い、粘度200〜20000mPa・sのものは、ローターNo.3、6rpm、1分の条件で測定した。
【0051】
本発明の皮膚化粧料は、以下のいずれかの方法で水中油型乳化化粧料を製造することができる。
(製造方法1)
工程1:成分(A)〜(E)を含む油相成分と、成分(F)を含む水相成分とを、それぞれ下記温度Tで加熱混合する工程。
工程2:工程1で得られた、加熱された油相成分と、水相成分とを、下記温度Tで加熱混合して、混合物1を得る工程。
工程3:工程2で得られた混合物1を、10〜35℃に冷却する工程。
温度条件T:T1を超えT1+10℃以下
T1:油相成分中最も融点の高い成分の融点
【0052】
(製造方法2)
工程1:成分(A)〜(D)を含む油相成分と、成分(F)を含む水相成分とを、それぞれ製造方法1記載の温度Tで加熱混合する工程。
工程2:工程1で得られた、加熱された油相成分と、水相成分とを、製造方法1記載の温度Tで加熱混合して、混合物1を得る工程。
工程3:工程2で得られた混合物1を、10〜35℃に冷却し、成分(E)を混合し、均一にするする工程。
なお、成分(E)の安定性を考慮した場合、製造方法2で行うことが好ましい。
【0053】
本発明の皮膚化粧料は、例えば、化粧下地、日焼け止め化粧料、ローション、クリーム、乳液、化粧水等の皮膚化粧料として適用することができる。
本発明の皮膚化粧料を用いて、スキンケアを行う場合、本発明の皮膚化粧料を肌に塗布し、薄く伸ばすことができる。このようにすることで、化粧料中の有効成分を肌に浸透させることができる。
【実施例】
【0054】
実施例1〜10、比較例1〜4
表1に示す組成の水中油型乳化化粧料を製造し、粘度を測定するとともに、浸透性、保存安定性、塗布時の化粧料の広がり、塗布時の密着感、化粧料が塗布後の肌へ浸透する感じ及び塗布後の肌のなめらかさを評価した。結果を表1に併せて示す。
【0055】
(製造方法)
成分(A)〜(E)を混合し、80℃に加熱し、撹拌して均一にした。この混合液に、80℃に加熱した成分(F)を加え、撹拌し均一にした。この後、撹拌しながら25℃まで冷却し、水中油型乳化化粧料を得た。
【0056】
(評価方法)
(1)粘度:
B型粘度計(東機産業社製、TVB−10型)を用い、粘度200〜20000mPa・sのものは、ローターNo.3、6rpm、1分の条件で測定した。なお、200mPa・s未満となったものは、ローターNo.1、60rpm、1分の条件で測定した。いずれも製造してから1時間後に、25℃で測定した。
【0057】
(2)浸透性:
(i)豚皮(ランドレース♀、10cm×10cm)を洗顔料で洗浄(ソフィーナ ボーテ ミルク洗顔料(花王社製)を0.5gとり、水道水2.5gで希釈し、泡立ててから豚皮の表面側を10秒間マッサージし、水道水ですすぐ)した後、水分を拭きとり、アセトン/エーテル(1/1)の混液に皮膚表面を3分間浸した。
(ii)豚皮をフランツ拡散セルに挟み込み、豚側の表面側に評価物質(ナイルレッド)を配合した各化粧料を0.4mL/cm2となるように滴下し、30℃の環境下にて、16時間遮光して静置した。
(iii)豚皮表面を、(i)と同様に洗浄し、塗布した化粧料を除去し、バイオプシパンチ(8mmΦ)で皮膚をくり抜き、1.5mLの抽出溶媒に浸し、超音波で10分間処理することにより、豚皮中に浸透した評価物質(ナイルレッド)を抽出して定量した。評価物質を定量するためのHPLC条件は下記の通りである。
【0058】
(ナイルレッド分析条件)
抽出溶媒:55%エタノール
カラム:GLサイエンス inertsil ODS3(5μm:4.0×150mm)
溶離液:アセトニトリル/メタノール(=9/1)
流速:1.0mL/min
温度:40℃
検出:Ex:550nm Em:650nm
分析時間:10min
インジェクション量:10μL
なお、ナイルレッドの浸透量は、比較例1の値を1とし、その相対値を結果として記載した。
【0059】
(3)保存安定性:
各化粧料をガラス瓶(マイティバイアル、No.7、マルエム社製)に、ガラスの内壁に対し、高さ2.5cmに充填し、25℃で14日保存した後、外観を目視により観察し、分離の有無を評価した。均一で分離のないものを0(cm)とし、分離したものは、分離した割合を底面からの高さ(cm)で示した。
【0060】
(4)塗布時の化粧料の広がり:
専門パネラー3名により、各化粧料0.1gを手の甲にとり、人差し指、中指、薬指の3本の指で、直径5cmの円を描くように1秒間に1回転の早さで10秒間マッサージし、そのときの延び広がる感じについて、以下の基準で評価した。結果は、3名の合計点数で示した。
5:とても均一に延び広がる。
4:均一に延び広がる。
3:やや均一に延び広がる。
2:あまり均一に延び広がらない。
1:全く均一に延び広がらない。
【0061】
(5)塗布時の化粧料の密着感:
専門パネラー3名により、各化粧料0.1gを手の甲にとり、差し指、中指、薬指の3本の指で、直径5cmの円を描くように1秒間に1回転の早さで10秒間マッサージし、塗布中の密着感について、以下の基準で評価した。なお、密着感とは、マッサージを行っているときに、指が肌に吸い付くような感じであり、また、指を肌から垂直に離したときに、肌が指に追随する感じがあることを示す。結果は、3名の合計点数で示した。
5:とても密着感がある。
4:密着感がある。
3:やや密着感がある。
2:あまり密着感がない
1:全く密着感がない
【0062】
(6)化粧料が塗布後の肌へ浸透する感じ:
専門パネラー3名により、各化粧料0.1gを手の甲にとり、人差し指、中指、薬指の3本の指で、直径5cmの円を描くように1秒間に1回転の早さでマッサージし、10秒後に化粧料が肌へ浸透した感じについて以下の基準で評価した。なお、浸透した感じとは、マッサージ中に化粧料がなくなる感じを示す。結果は、3名の合計点数で示した。
5:とても浸透した感じがある。
4:浸透した感じがある。
3:浸透した感じをやや感じる。
2:浸透した感じがあまりない。
1:浸透した感じが全くない。
【0063】
(7)塗布後の肌のなめらかさ:
専門パネラー3名により、各化粧料0.1gを手の甲にとり、人差し指、中指、薬指の3本の指で、直径5cmの円を描くように1秒間に1回転の早さで10秒間マッサージし、その後、30秒後の肌を触り、肌のなめらかさについて以下の基準で評価した。結果は、3名の合計点数で示した。
5:とてもなめらかである。
4:なめらかである。
3:ややなめらかである。
2:あまりなめらかでない。
1:全くあまりなめらかでない
【0064】
【表1】