特許第6341779号(P6341779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6341779エッジ位置検査装置及びその装置を用いたレーザ溶接機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341779
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】エッジ位置検査装置及びその装置を用いたレーザ溶接機
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20180604BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20180604BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20180604BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20180604BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20180604BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   G06T7/00 610Z
   G06T1/00 305C
   B23K26/00 M
   B23K26/02 A
   B23K26/21 J
   G01B11/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-141587(P2014-141587)
(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公開番号】特開2016-18446(P2016-18446A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 稔正
(72)【発明者】
【氏名】山根 義昭
【審査官】 ▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−029434(JP,A)
【文献】 特開2000−263266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00 − 7/90
B23K 26/00 − 26/324
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの金属部材の重合部分において一方の金属部材のエッジが含まれる領域を撮影するカメラと、
該カメラに接続され、当該カメラによる撮影画像を基に上記エッジの位置を検出するエッジ検出手段とを備え、
該エッジ検出手段は、上記撮影画像の所定位置から上記エッジと交差する方向に連続する各画素の輝度を順に演算して輝度値R(x=1…N:xは画素番号)を複数の画素列V(y=1…N:yは画素列番号)でそれぞれ取得する輝度値演算部と、
上記各画素列Vにおいて、画素番号x−n(nは所定の自然数)の輝度値Rx−nから輝度値Rへの変化量Cをそれぞれ演算する輝度変化量演算部と、
上記各画素列Vにおいて、以下に示す式(1)
輝度値R<設定値T (1)
を満たすか、又は、以下に示す式(2),(3)
輝度値R≧設定値T、変化量C<設定値P (2)
輝度値R≧設定値T、変化量C>設定値P (3)
のいずれか1つを満たす画素番号xの画素を上記エッジに対応するエッジ対応画素Eとして抽出するエッジ画素抽出部と、
該エッジ画素抽出部により抽出した各エッジ対応画素E、又は当該複数のエッジ対応画素Eを平滑化処理して得た値E’が設定値Q<E<設定値Q、又は設定値Q<E’<設定値Qを満たすとエッジが正しい位置にあると判定する一方、上記設定値Q<E<設定値Q、又は設定値Q<E’<設定値Qを満たさないとエッジが正しい位置にないと判定するエッジ位置判定部とを備えていることを特徴とするエッジ位置検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエッジ位置検査装置と、
光を増幅させてレーザ光を得るレーザ発振器、及び該レーザ発振器で得られたレーザ光を上記エッジに向けて照射可能な加工ヘッドを有する接合手段と、
上記両金属部材及び上記加工ヘッドの少なくとも一方を相手方に対して移動させることにより上記加工ヘッドから照射するレーザ光を上記エッジの延長方向に沿って移動させるレーザ光移動手段と、
上記エッジ位置検査装置、接合手段及びレーザ光移動手段に接続され、当該エッジ位置検査装置、接合手段及びレーザ光移動手段を制御する制御手段とを備え、
該制御手段は、上記エッジ位置検査装置によって上記エッジが正しい位置にあるという検査結果が出た場合、上記接合手段及び上記レーザ光移動手段に作動信号を出力して上記両金属部材及び上記加工ヘッドの少なくとも一方を移動させながら上記エッジにレーザ光を照射してレーザ溶接による接合を開始する一方、上記エッジ位置検査装置によって上記エッジが正しい位置にないという検査結果が出た場合、上記接合手段及び上記レーザ光移動手段に停止信号を出力するよう構成されていることを特徴とするレーザ溶接機。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ溶接機において、
上記エッジ検出手段は、上記演算した複数のエッジ対応画素Eにおいてエッジ延長方向と交差する方向のばらつきに対する平均位置μを算出する平均位置算出部を有し、
上記制御手段は、レーザ溶接による接合を開始する際、上記接合手段に作動信号を出力して上記平均位置μに向かって上記加工ヘッドからレーザ光を照射させることを特徴とするレーザ溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの金属部材の重合部分における一方の金属部材のエッジが正しい位置にあるか否かを検査するエッジ位置検査装置、及びその装置を用いたレーザ溶接機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両には、燃料タンクに燃料を給油する際の通路となる燃料給油管が設けられ、該燃料給油管は、一端が燃料タンクに接続される長い円筒状の給油管本体と、該給油管本体の他端に接続される短筒状のリテーナとを備えている。そして、上記給油管本体の他端側にリテーナを内嵌合させるとともに上記給油管本体の他端側のエッジに向かってレーザ光を照射することにより、上記給油管本体と上記リテーナとをレーザ溶接により接合して燃料給油管にするのが一般的になりつつある。
【0003】
ところで、レーザ溶接におけるレーザ光の照射径は非常に小さいので、レーザ光の照射位置に対して給油管本体のエッジが当該エッジの延長方向と交差する方向にミリ単位でずれてしまうと、給油管本体とリテーナとの間においてレーザ溶接による溶け込みが浅くなってしまい、接合不良になることが知られている。
【0004】
これを回避するために、例えば、特許文献1に開示されているようなエッジ検出装置を用いて予めレーザ光の照射位置に対してエッジが正しい位置にあるか否かを検査した上でレーザ溶接を実施することにより、溶接不良の発生を抑制するといったことが考えられる。
【0005】
特許文献1のエッジ検出装置は、プリント基板における絶縁体表面に形成された配線の幅寸法を検査するためのものであり、プリント基板において配線が含まれる領域を撮影するカメラと、該カメラに接続され、当該カメラによる撮影画像を基にエッジの位置を検出するエッジ検出部とを備えている。該エッジ検出部は、上記撮影画像における各画素の輝度値を演算するとともに、エッジに対応する画素の輝度値を抽出してエッジの位置を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−8619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のエッジ検出装置は、反射率が大きく異なる2つの部分(絶縁体部分、配線部分)の中間値に近い反射率の画素をエッジに対応する画素として抽出するようになっているので、誤検出が少ない。
【0008】
しかし、重なり合った2つの金属部材が撮影対象物の場合には、各金属部材の反射率に差が生じ難いので、両金属部材の重合部分におけるエッジを特許文献1の如き装置で検出しようとすると、誤検出が多くなってしまうおそれがある。また、得られる撮影画像における各画素の輝度値が金属部材表面における色調のばらつきや汚れ、或いは、エッジのバリの影響によってばらついてしまい、誤検出が多くなるおそれもある。したがって、間違えて抽出した各画素によってエッジの位置が正しいか否かを判定することになってしまう。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、2つの金属部材における重合部分のエッジの位置が正しい位置にあるか否かを正確に検査できるエッジ位置検査装置、及びその装置を用いたレーザ溶接機を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、撮影画像においてエッジに対応する画素を抽出する際、撮影画像におけるエッジの延長方向と交差する方向に順に並ぶ各画素において輝度値の変化を見るようにしたことを特徴とする。
【0011】
すなわち、第1の発明では、2つの金属部材の重合部分において一方の金属部材のエッジが含まれる領域を撮影するカメラと、該カメラに接続され、当該カメラによる撮影画像を基に上記エッジの位置を検出するエッジ検出手段とを備え、該エッジ検出手段は、上記撮影画像の所定位置から上記エッジと交差する方向に連続する各画素の輝度を順に演算して輝度値R(x=1…N:xは画素番号)を複数の画素列V(y=1…N:yは画素列番号)でそれぞれ取得する輝度値演算部と、上記各画素列Vにおいて、画素番号x−n(nは所定の自然数)の輝度値Rx−nから輝度値Rへの変化量Cをそれぞれ演算する輝度変化量演算部と、上記各画素列Vにおいて、以下に示す式(1)輝度値R<設定値Tを満たすか、又は、以下に示す式(2)輝度値R≧設定値T、変化量C<設定値P(3)輝度値R≧設定値T、変化量C>設定値Pのいずれか1つを満たす画素番号xの画素を上記エッジに対応するエッジ対応画素Eとして抽出するエッジ画素抽出部と、該エッジ画素抽出部により抽出した各エッジ対応画素E、又は当該複数のエッジ対応画素Eを平滑化処理して得た値E’が設定値Q<E<設定値Q、又は設定値Q<E’<設定値Qを満たすとエッジが正しい位置にあると判定する一方、上記設定値Q<E<設定値Q、又は設定値Q<E’<設定値Qを満たさないとエッジが正しい位置にないと判定するエッジ位置判定部とを備えていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1の発明に記載のエッジ位置検査装置と、光を増幅させてレーザ光を得るレーザ発振器、及び該レーザ発振器で得られたレーザ光を上記エッジに向けて照射可能な加工ヘッドを有する接合手段と、上記両金属部材及び上記加工ヘッドの少なくとも一方を相手方に対して移動させることにより上記加工ヘッドから照射するレーザ光を上記エッジの延長方向に沿って移動させるレーザ光移動手段と、上記エッジ位置検査装置、接合手段及びレーザ光移動手段に接続され、当該エッジ位置検査装置、接合手段及びレーザ光移動手段を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、上記エッジ位置検査装置によって上記エッジが正しい位置にあるという検査結果が出た場合、上記接合手段及び上記レーザ光移動手段に作動信号を出力して上記両金属部材及び上記加工ヘッドの少なくとも一方を移動させながら上記エッジにレーザ光を照射してレーザ溶接による接合を開始する一方、上記エッジ位置検査装置によって上記エッジが正しい位置にないという検査結果が出た場合、上記接合手段及び上記レーザ光移動手段に停止信号を出力するよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、上記エッジ検出手段は、上記演算した複数のエッジ対応画素Eにおいてエッジ延長方向と交差する方向のばらつきに対する平均位置μを算出する平均位置算出部を有し、上記制御手段は、レーザ溶接による接合を開始する際、上記接合手段に作動信号を出力して上記平均位置μに向かって上記加工ヘッドからレーザ光を照射させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、両金属部材を重合させると一方の金属部材のエッジによって他方の金属部材表面に影が出来るので、当該影が出来た領域はその他の領域より反射率が低くなる。したがって、予め設定した設定値Tより低い輝度値Rを見つけることで当該輝度値Rに対応する画素をエッジに対応する画素であるとして抽出することができる。また、両金属部材表面における撮影領域の色調のばらつきによって撮影画像の全画素の輝度値が上がり、設定値Tより低い輝度値Rを見つけることが出来なくなるような場合においても、エッジの延長方向と交差する方向に並ぶ各画素の輝度値Rの変化量Cが予め設定した設定値Pより大きく下がるか否かを見るので、撮影画像の全画素の輝度値が上昇変化した場合においても確実にエッジに対応する画素を抽出することができる。さらに、バリによってエッジの反射率が異常に上昇することでエッジ周りの各画素の輝度値が上がり、設定値Tより低い輝度値Rを見つけることが出来なくなるような場合においても、エッジの延長方向と交差する方向に並ぶ各画素の輝度値Rの変化量Cが予め設定した設定値Pより大きく上がるか否かを見るので、バリの影響で撮影画像におけるエッジ周りの画素の輝度値が低くならない場合においても、確実にエッジに対応する画素を抽出することができる。このように、金属部材表面における撮影領域の色調のばらつきやバリといった外乱要因があってもエッジに対応する画素を間違って抽出してしまうといったことを防ぐことができるので、エッジが正しい位置にあるか否かというのを正しく検査することができる。
【0015】
第2の発明では、両金属部材の重合部分における一方の金属部材のエッジがレーザ光の照射位置に対してエッジの延長方向と交差する方向にずれない状態でレーザ溶接を行えるようになるので、両金属部材をレーザ溶接による接合で確実に繋ぐことができる。また、エッジが正しい位置にない場合、レーザ溶接による両金属部材の接合を行わないので、不良品が出るのを減らすことができて材料コストが嵩まない。
【0016】
第3の発明では、エッジに対してエッジの延長方向にレーザ光を移動させた際、レーザ光のエッジへの照射位置がエッジの全領域に亘って最もバランスの良い位置になるので、両金属部材におけるエッジの全領域に亘る部分において溶け込み領域が広くなり、両金属部材間の溶け込み不良を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るレーザ溶接機で組み立てられた燃料給油管と、燃料給油管が接続される燃料タンク及び給油口を旋蓋する給油キャップの斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るレーザ溶接機の概略構成図である。
図3】本発明の実施形態にかかる仮組立管におけるエッジを含む領域を撮影して得た撮影画像を示す概略図である。
図4】撮影画像の所定位置からエッジと交差する方向に連続する各画素の輝度を順に演算して得た結果を示すグラフであり、(a)は、通常の状態の結果を、(b)は、仮組立管の表面における撮影領域の色調のばらつきによって撮影画像の全画素の輝度値が上がった状態の結果を、(c)は、エッジにバリがある場合の結果をそれぞれ示す。
図5】仮組立管におけるエッジの複数個所においてそれぞれエッジ対応画素を抽出した結果を示すグラフである。
図6図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ溶接を行う直前の状態を示す。
図7図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ溶接を開始した直後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料給油管1を示す。該燃料給油管1は、車両の燃料タンク11に対して燃料を給油する際の通路となるものであり、一端が上記燃料タンク11に接続され、且つ、他端が拡径された略円形筒状の給油管本体2(金属部材)と、該給油管本体2の拡径部分に接続された略円形短筒状のリテーナ3(金属部材)とを備え、上記給油管本体2の他端側に上記リテーナ3を内嵌合させるとともに、上記給油管本体2と上記リテーナ3との重合部分において上記給油管本体2のエッジ2b部分を上記リテーナ3の外周面にレーザ溶接による接合で繋ぐことで上記燃料給油管1が組み立てられている。尚、上記給油管本体2及び上記リテーナ3の外周面及び内周面には、それぞれ亜鉛メッキ層2a,3aが形成され、図6,7では便宜上、亜鉛メッキ層2a,3aの厚みを誇張して記載している。
【0020】
上記リテーナ3の一端側は、図2に示すように、端部に向かうにつれて緩やかに縮径する形状をなす一方、上記リテーナ3の他端は、上記燃料給油管1の給油口3bを構成している。
【0021】
上記リテーナ3の他端側内周面には、給油キャップ12の雄螺旋部12aと螺合する雌螺旋部3cが一条形成され、上記給油口3bは、上記給油キャップ12で開閉可能に施蓋されるとともに、図示しない給油ガンのノズルが挿入されるようになっている。
【0022】
上記燃料給油管1は、本発明の実施形態に係るエッジ位置検査装置10を備えたレーザ溶接機20で組み立てられている。
【0023】
該レーザ溶接機20は、図2に示すように、上記給油管本体2の他端側に上記リテーナ3の一端側を内嵌合させた仮組立管1aを支持する回転治具6(レーザ光移動手段)を備えている。
【0024】
該回転治具6は、箱形の治具本体6aを備え、該治具本体6a内部には、回転軸心を水平方向に向けたサーボモータ6bが設けられている。
【0025】
該サーボモータ6bの出力軸には、上記治具本体6aから側方に略水平に延びる回転軸6cが取り付けられ、該回転軸6cは、上記サーボモータ6bの回転駆動に連動して回転するようになっている。
【0026】
上記回転軸6cの外周面には、上記雌螺旋部3cに螺合可能な雄螺旋部6dが形成され、該雄螺旋部6dを上記仮組立管1aの上記雌螺旋部3cに螺合させた状態で上記サーボモータ6bを回転駆動させると、上記回転軸6cが回転して上記仮組立管1aが当該仮組立管1aの重合部分の筒中心線(水平軸)周りに回転するようになっている。
【0027】
上記回転治具6における回転軸心方向と交差する方向の一側方には、光を増幅させてレーザ光Lzを得るレーザ発振器7bと、該レーザ発振器7bで得られたレーザ光Lzを上記エッジ2bに向かって照射するための加工ヘッド7aと、上記レーザ発振器7bと上記加工ヘッド7aとの間に配索され、レーザ光Lzを伝送する光ファイバーケーブル7cと、上記加工ヘッド7aをスライド移動させる電動シリンダ8とが設けられ、上記加工ヘッド7a、レーザ発振器7b、光ファイバーケーブル7c及び電動シリンダ8で本発明の接合手段7を構成している。
【0028】
上記加工ヘッド7aの内部には、集光レンズ(図示せず)の位置を変更可能なレンズ位置変更機構7dが設けられ、該レンズ位置変更機構7dでレンズ位置をずらすことによりレーザ光Lzのフォーカス位置を変更するようになっている。
【0029】
上記電動シリンダ8は、上記加工ヘッド7aを上記回転治具6の回転軸心方向にスライド移動させることが可能であり、上記加工ヘッド7aをスライド移動させることで上記回転治具6に支持された仮組立管1aに対して照射するレーザ光Lzの照射位置を仮組立管1aの筒中心線方向に変更できるようになっている。
【0030】
そして、上記回転治具6は、上記電動シリンダ8により上記加工ヘッド7aを上記回転治具6の回転軸心方向にスライド移動させてレーザ光Lzの焦点がエッジ2bに合うようにした状態において上記仮組立管1aを回転させることにより、上記加工ヘッド7aから照射するレーザ光Lzを上記エッジ2bの延長方向に沿って移動させるようになっている。
【0031】
上記回転治具6における回転軸心方向と交差する方向の他側方には、上記給油管本体2及び上記リテーナ3における上記エッジ2bが含まれる領域を撮影可能な撮影ユニット9が設けられている。
【0032】
該撮影ユニット9は、ボックス形状のユニット本体9aと、該ユニット本体9aの回転治具6側中央に設けられたCCDカメラ9bと、該CCDカメラ9b周りに設けられ、上記仮組立管1aのエッジ2b周りに光を照射する複数のLED光源9cとを備え、上記回転治具6で上記仮組立管1aを回転させながら上記エッジ2bが含まれる領域を連続撮影するようになっている。
【0033】
上記CCDカメラ9bには、該CCDカメラ9bによる撮影画像Pを基に上記エッジ2bの位置を検出する電子計算機4(エッジ検出手段)が接続され、上記エッジ位置検査装置10は、上記電子計算機4と上記CCDカメラ9bとで構成されている。
【0034】
上記電子計算機4は、図2及び図3に示すように、上記撮影画像Pの所定位置から上記エッジと交差する方向に連続する各画素の輝度を順に演算して輝度値R(x=1…N:xは画素番号)を複数の画素列V(y=1…N:yは画素列番号)でそれぞれ取得する輝度値演算部4aを有している。
【0035】
また、上記電子計算機4は、図4に示すように、上記各画素列Vにおいて、画素番号x−n(nは所定の自然数)の輝度値Rx−nから輝度値Rへの変化量Cをそれぞれ演算する輝度変化量演算部4bを有している。
【0036】
さらに、電子計算機4は、上記各画素列Vにおいて、以下に示す式(1)
輝度値R<設定値T (1)
を満たすか、又は、以下に示す式(2),(3)
輝度値R≧設定値T、変化量C<設定値P (2)
輝度値R≧設定値T、変化量C>設定値P (3)
のいずれか1つ満たす画素番号xの画素を上記エッジに対応するエッジ対応画素Eとして抽出するエッジ画素抽出部4cを有している。
【0037】
それに加えて、電子計算機4は、図5に示すように、抽出した各エッジ対応画素Eのうち隣り合うエッジ対応画素Eに対する差が異常に大きいエッジ対応画素Eは、異常データとして削除する(図5の各g部参照)エッジ位置判定部4dを有し、該エッジ位置判定部4dは、異常データを除いた残りの各エッジ対応画素Eを移動平均化法で平滑化処理して得た値E’が設定値Q<E’<設定値Qを満たすとエッジが正しい位置にあると判定する一方、上記設定値Q<E’<設定値Qを満たさないとエッジ2bが正しい位置にないと判定するようになっている。尚、設定値Q及びQは、レーザ光Lzの照射位置に対するエッジ2bの位置がエッジ2bの延長方向と交差する方向にずれても接合不良とならない任意の位置に対応する値である。
【0038】
そして、電子計算機4は、上記演算した複数のエッジ対応画素Eにおいてエッジ延長方向と交差する方向のばらつきに対する平均位置μを算出する平均位置算出部4eを有している。
【0039】
上記エッジ位置検査装置10、上記回転治具6、上記レーザ発振器7b及び上記電動シリンダ8には、当該各機器を制御する制御盤14(制御手段)が接続されている。
【0040】
該制御盤14は、上記エッジ位置検査装置10によって上記エッジ2bが正しい位置にあるという検査結果が出た場合、上記回転治具6に作動信号を出力して上記仮組立管1aを回転させるとともに、上記電動シリンダ8に作動信号を出力して上記加工ヘッド7aをスライド移動させることでレーザ光Lzの照射位置を上記平均位置μに合わせ、且つ、上記レーザ発振器7bに作動信号を出力して当該平均位置μ(エッジ2b)に向かって上記加工ヘッド7aからレーザ光Lzを連続照射させてレーザ溶接による接合を開始するようになっている。
【0041】
一方、上記制御盤14は、上記エッジ位置検査装置10によって上記エッジ2bが正しい位置にないという検査結果が出た場合、上記レーザ発振器7b及び上記回転治具6に停止信号を出力して接合作業を終了させるよう構成されている。
【0042】
次に、上記レーザ溶接機20による上記燃料給油管1の組み立てについて説明する。
【0043】
まず、作業者は、リテーナ3の一端側を給油管本体2の他端側に内嵌合させて仮組立管1aにするとともに、該仮組立管1aにおけるリテーナ3の雌螺旋部3cに回転治具6における回転軸6cの雄螺旋部6dを螺合させて上記仮組立管1aを上記回転治具6にセットする。すると、図6に示すように、加工ヘッド7aのレーザ光Lzが上記仮組立管1aにおける給油管本体2のエッジ2bを斜め上方から照射する位置になる。
【0044】
次に、作業者は、図示しない溶接開始ボタンを押す。すると、制御盤14は、回転治具6及び撮影ユニット9に作動信号を出力し、その信号に基づいて上記回転治具6は仮組立管1aを1回転させ、且つ、上記CCDカメラ9bは、上記仮組立管1aにおけるエッジ2bを含む領域を連続撮影する。
【0045】
次いで、輝度値演算部4aは、撮影画像Pの所定位置から上記エッジ2bと交差する方向に連続する各画素の輝度を順に演算して輝度値R(x=1…N:xは画素番号)を複数の画素列V(y=1…N:yは画素列番号)でそれぞれ取得する。例えば、図3に示すように、撮影画像Pにおいてエッジ2bの延長方向に4つずつ飛ばした位置の各画素列Vの各画素xの輝度値Rを演算する。
【0046】
さらに、輝度変化量演算部4bは、各画素列Vにおいて、画素番号x−n(nは所定の自然数)の輝度値Rx−nから輝度値Rへの変化量Cをそれぞれ演算する。
【0047】
その後、エッジ画素抽出部4cは、各画素列Vにおいて、以下に示す式(1)
輝度値R<設定値T (1)
を満たすか、又は、以下に示す式(2),(3)
輝度値R≧設定値T、変化量C<設定値P (2)
輝度値R≧設定値T、変化量C>設定値P (3)
のいずれか1つを満たす画素番号xの画素を上記エッジ2bに対応するエッジ対応画素E(yは自然数)として抽出する。
【0048】
図4(a)は、仮組立管1aの表面の撮影領域における反射率が全体的に低い状態で、且つ、エッジ2bにバリがない状態においてCCDカメラ9bで撮影した撮影画像Pの所定の画素列Vについて各画素xの輝度値Rを演算した結果のグラフである。通常、給油管本体2の他端側にリテーナ3を内嵌合させるとエッジ2bによってリテーナ3の表面に影ができるので、当該影が出来た領域はその他の領域より反射率が低くなる。そして、エッジ2bに対応する画素X10の輝度値R10は、設定値Tより低い領域に位置する。したがって、予め設定した設定値Tより低い輝度値Rを見つけることで当該輝度値Rに対応する画素をエッジ2bに対応する画素Eであるとして抽出することができる。
【0049】
また、図4(b)は、色調の変化により仮組立管1aの表面の撮影領域における反射率が全体的に高い状態で、且つ、エッジ2bにバリがない状態においてCCDカメラ9bで撮影した撮影画像Pの所定の画素列Vについて各画素xの輝度値Rを演算した結果のグラフである。仮組立管1a表面の撮影領域において反射率が高くなると、撮影画像の全画素の輝度値Rが上がってしまい、上述の如き設定値Tより低い領域の輝度値Rを見つけることでエッジ2bに対応する画素X10を見つけるといったことが出来なくなる。このような場合においても、エッジ2bに対応する画素X10の輝度値R10が画素Xの輝度値Rに比べて大きく下がっていることに着目して、各画素の輝度値Rの変化量Cが予め設定した設定値Pより大きく下がる結果となっているか否かというように、エッジ2bに対応する画素X10の輝度値R10とその他の領域の画素の輝度値とを相対評価することでエッジ2bに対応する画素Xを抽出するようになっている。したがって、撮影画像の全画素の輝度値が上昇変化した場合においても確実にエッジ2bに対応する画素Eを抽出することができる。
【0050】
さらに、図4(c)は、仮組立管1aの表面の撮影領域における反射率が全体的に低い状態で、且つ、エッジ2bにバリがある状態においてCCDカメラ9bで撮影した撮影画像Pの所定の画素列Vについて各画素xの輝度値Rを演算した結果のグラフである。通常、エッジ2bにバリがあるとその部分だけ反射率が異常に高くなるので、エッジ2bに対応する画素X10の輝度値R10が上がってしまい、設定値Tより低い領域に位置しなくなる。このような場合においても、エッジ2bに対応する画素X10の輝度値R10がその他の領域の画素Xの輝度値Rより大きく上がっていることに着目して、各画素の輝度値Rの変化量Cが予め設定した設定値Pより大きく上がる結果となっているか否かというように、エッジ2bに対応する画素X10の輝度値R10とその他の領域の画素の輝度値とを相対評価することでエッジ2bに対応する画素Xを抽出するようになっている。したがって、バリの影響で撮影画像Pにおけるエッジ2b周りの画素の輝度値が低くならない場合においても、確実にエッジ2bに対応する画素を抽出することができる。
【0051】
しかる後、エッジ位置判定部4dは、図5に示すように、抽出した各エッジ対応画素Eのうち隣り合うエッジ対応画素Eの差が異常に大きいエッジ対応画素Eをそれぞれ異常データとして削除する(図5の各g部参照)とともに、残りの各エッジ対応画素Eを移動平均化法で平滑化処理してエッジ対応画素E’を得る。
【0052】
さらに、エッジ位置判定部4dは、エッジ対応画素E’が設定値Q<E’<設定値Qを満たすとエッジ2bが正しい位置であると判定する一方、上記設定値Q<E’<設定値Qを満たさないとエッジ2bが正しい位置でないと判定する。
【0053】
また、平均位置算出部4eは、演算した複数のエッジ対応画素E’においてエッジ2bの延長方向と交差する方向のばらつきに対する平均位置μを算出する。
【0054】
そして、上記エッジ位置判定部4dによって上記エッジ2bが正しい位置にあるという検査結果が出た場合、制御盤14は、上記回転治具6に作動信号を出力して上記仮組立管1aを回転させるとともに、上記電動シリンダ8に作動信号を出力して上記加工ヘッド7aをスライド移動させることでレーザ光Lzの照射位置を平均位置μに合わせる。さらに、上記制御盤14は、上記レーザ発振器7bに作動信号を出力して平均位置μに向かって加工ヘッド7aからレーザ光Lzを連続照射し、エッジ2b及びリテーナ3の表面を溶融させるとともに凝固させて環状接合部Wを形成することで燃料給油管1を得る。
【0055】
一方、上記エッジ位置判定部4dによって上記エッジ2bが正しい位置でないという検査結果が出た場合、上記レーザ発振器7b及び上記回転治具6に停止信号を出力して接合作業を終了させる。
【0056】
以上より、本発明の実施形態によると、給油管本体2やリテーナ3の表面における撮影領域の色調のばらつきやバリといった外乱要因があってもエッジ2bに対応する画素を間違って抽出してしまうといったことを防ぐことができるので、エッジ2bが正しい位置にあるか否かというのを正しく検査することができる。
【0057】
また、仮組立管1aの重合部分における給油管本体2のエッジ2bがレーザ光Lzの照射位置に対してエッジ2bの延長方向と交差する方向にずれない状態でレーザ溶接を行えるようになるので、給油管本体2とリテーナ3とをレーザ溶接による接合で確実に繋ぐことができる。また、エッジ2bが正しい位置にない場合、レーザ溶接によって給油管本体2とリテーナ3との接合を行わないので、不良品が出るのを減らすことができて材料コストが嵩まない。
【0058】
さらに、レーザ光Lzを平均位置μに向かって照射するので、エッジ2bに対してエッジ2bの延長方向にレーザ光Lzを移動させた際、レーザ光Lzのエッジ2bへの照射位置がエッジ2bの全領域に亘って最もバランスの良い位置になり、仮組立管1aにおけるエッジ2bの全領域に亘る部分において溶け込み領域が広くなり、給油管本体2とリテーナ3との間の溶け込み不良を確実に防ぐことができる。
【0059】
尚、本発明の実施形態では、エッジ画素抽出部4cにより抽出した各エッジ対応画素Eを平滑化処理して得た値E’が設定値Q<E’<設定値Qを満たすか否かでエッジ2bが正しい位置にあるか否かを判定しているが、平滑化処理する前の値Eを用いて設定値Q<E<設定値Qを満たすか否かでエッジ2bの位置が正しいか否かを判定するようにしてもよい。
【0060】
また、本発明の実施形態では、撮影ユニット9においてCCDカメラ9bを用いているがCMOSカメラを用いて撮影を行ってもよい。
【0061】
また、本発明の実施形態では、給油管本体2の他端側にリテーナ3を内嵌合してその重合部分を環状接合部Wで繋いで燃料給油管1を組み立てる場合について説明したが、リテーナ3を給油管本体2の他端側に外嵌合してその重合部分を環状接合部Wで繋いで燃料給油管1を組み立てるような場合においても上記レーザ溶接機20を用いることができる。
【0062】
また、本発明の実施形態では、CCDカメラ9bで仮組立管1aのエッジ2bを含む領域を連続撮影しているが、連続撮影が必須ではなく、仮組立管1aのエッジ2bを含む領域をエッジ2bの延出方向に所定の間隔をあけて撮影するようにしてもよいし、仮組立管1aのエッジ2bを含む領域における特定箇所のみを撮影するようにしてもよい。
【0063】
また、本発明の実施形態では、回転治具6で仮組立管1aを回転させることにより加工ヘッド7aから照射するレーザ光Lzをエッジ2bの延長方向に沿って移動させているが、仮組立管1aに対して加工ヘッド7aを移動させることによりレーザ光Lzをエッジ2bの延長方向に沿って移動させてもよく、仮組立管1a及び加工ヘッド7aの少なくとも一方を相手方に対して移動させることによりレーザ光Lzをエッジ2bの延長方向に沿って移動させればよい。
【0064】
また、本発明の実施形態では、エッジ位置検査装置10をレーザ溶接機20に適用したが、その他の機器にも使用できる。
【0065】
また、本発明の実施形態では、レーザ溶接機20を燃料給油管1の組み立てに使用したが、例えば、2つの金属板を重ね合わせてその重合部分のエッジ周りをレーザ溶接によって接合する際においても使用できる。
【0066】
また、本発明の実施形態では、撮影画像Pにおいてエッジ2bの延長方向に4つずつ飛ばした位置の各画素列Vの各画素xの輝度値Rを演算してエッジ2bの位置検出に用いているが、これに限らず、例えば、エッジ2bの延長方向において1つずつ隣り合う位置の各画素列Vの各画素xの輝度値Rをそれぞれ演算してエッジ2bの位置検出に用いてもよいし、エッジ2bの延長方向に隣り合う複数の画素列Vにおける各画素xの輝度値Rを平均化した輝度値R’をエッジ2bの位置検出に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、2つの金属部材の重合部分における一方の金属部材のエッジが正しい位置にあるか否かを検査するエッジ位置検査装置、及びその装置を用いたレーザ溶接機に適している。
【符号の説明】
【0068】
2 給油管本体(金属部材)
2b エッジ
3 リテーナ(金属部材)
4 電子計算機(エッジ検査手段)
4a 輝度値演算部
4b 輝度変化量演算部
4c エッジ画素抽出部
4d エッジ位置判定部
4e 平均位置算出部
6 回転治具(レーザ光移動手段)
7 接合手段
7a 加工ヘッド
7b レーザ発振器
9b CCDカメラ
10 エッジ位置検査装置
14 制御盤(制御手段)
20 レーザ溶接機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7