(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マルチコアファイバの前記端部と前記複数のシングルモードファイバの前記端部にはそれぞれ屈折率分布型レンズが設けられている、請求項1に記載の光ファイバ接続器。
前記相対位置を定めるステップでは、前記複数のシングルモードファイバのうちの一のファイバと当該一のファイバに対応する前記マルチコアファイバのコアとの光結合効率に基づいて、前記第1のサブ基板と前記第2のサブ基板の相対位置を定める、請求項6に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような複数のレンズを用いた空間光学系では、各レンズ間のアライメント(調芯)が必要であるため、調芯箇所が多く、光ファイバ接続器の製造に手間がかかる。また、例えば赤色(R)、緑色(G)および青色(B)のレーザ光の合波器として使用するためには、光ファイバ接続器の一層の小型化が求められるが、特許文献1のようなレンズ系では小型化に限界がある。また、非特許文献1,2のようなコネクタによる接続方式では、量産性に向かない特殊加工をシングルモードファイバに施す必要があるため、光ファイバ接続器の製造コストを抑えることが難しい。
【0006】
そこで、本発明は、本構成を有しない場合と比べてファイバ間の調芯工程が簡略化されかつ小型化した、マルチコアファイバと複数のシングルモードファイバの接続器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光ファイバ接続器は、実装基板と、同一平面上に配列した複数のコアを含むマルチコアファイバと、マルチコアファイバの端部を固定し、実装基板上に接合される第1のサブ基板と、少なくともマルチコアファイバの同一平面上の複数のコアと同じ本数を含む複数のシングルモードファイバと、複数のシングルモードファイバの端部を固定し、実装基板上に接合される第2のサブ基板とを有し、マルチコアファイバの同一平面上の複数のコアとその複数のコアに対応する本数の複数のシングルモードファイバとがそれぞれ光結合するように、第1のサブ基板と第2のサブ基板の相対位置が定められていることを特徴とする。
【0008】
上記の光ファイバ接続器では、マルチコアファイバの端部と複数のシングルモードファイバの端部にはそれぞれ屈折率分布型レンズが設けられていることが好ましい。
上記の光ファイバ接続器では、第2のサブ基板は、隣接する2本のシングルモードファイバの端部が、マルチコアファイバの同一平面上の複数のコアから複数のビームが出射されたときの当該複数のビームの広がり角に対応する大きさの角をなすように、複数のシングルモードファイバの端部を固定することが好ましい。
上記の光ファイバ接続器では、複数のシングルモードファイバは、赤色、緑色および青色のレーザ光をそれぞれ導波する3本のシングルモードファイバであり、マルチコアファイバの同一平面上の複数のコアは3本のコアであり、当該3本のコアにより赤色、緑色および青色のレーザ光をそれぞれ導波することが好ましい。
上記の光ファイバ接続器では、第1のサブ基板は、同一平面上の複数のコアが実装基板の上面に平行に配列するようにマルチコアファイバの端部を固定することが好ましい。
【0009】
また、本発明の光モジュールは、実装基板と、同一平面上に配列した複数のコアを含むマルチコアファイバと、マルチコアファイバの端部を固定し、実装基板上に接合される第1のサブ基板と、少なくともマルチコアファイバの同一平面上の複数のコアと同じ本数を含む複数のシングルモードファイバと、複数のシングルモードファイバの端部を固定し、実装基板上に接合される第2のサブ基板と、マルチコアファイバおよび複数のシングルモードファイバが導波する赤色、緑色および青色のレーザ光を発光する光源部とを有し、マルチコアファイバの同一平面上の複数のコアとその複数のコアに対応する本数の複数のシングルモードファイバとがそれぞれ光結合するように、第1のサブ基板と第2のサブ基板の相対位置が定められていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の光ファイバ接続器の製造方法は、同一平面上に配列した複数のコアを含むマルチコアファイバの端部を第1のサブ基板に固定し、少なくともマルチコアファイバの同一平面上の複数のコアと同じ本数を含む複数のシングルモードファイバの端部を第2のサブ基板に固定し、第1のサブ基板と第2のサブ基板を実装基板上に配置し、マルチコアファイバの同一平面上の複数のコアとその複数のコアに対応する本数の複数のシングルモードファイバとがそれぞれ光結合するように、第1のサブ基板と第2のサブ基板の相対位置を定め、相対位置が定められた第1のサブ基板と第2のサブ基板を実装基板上に接合するステップを有することを特徴とする。
上記の製造方法の相対位置を定めるステップでは、複数のシングルモードファイバのうちの一のファイバと当該一のファイバに対応するマルチコアファイバのコアとの光結合効率に基づいて、第1のサブ基板と第2のサブ基板の相対位置を定めることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本構成を有しない場合と比べてファイバ間の調芯工程が簡略化されかつ小型化した、マルチコアファイバと複数のシングルモードファイバの接続器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、光ファイバ接続器とその製造方法、およびその光ファイバ接続器を用いた光モジュールについて説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0014】
図1は、光モジュール1の斜視図である。
図2(A)〜
図2(C)は、それぞれ、光モジュール1の上面図および側面図、ならびにサブ基板23の裏面図である。光モジュール1は、互いに別体となっているカラーコンバイナ2と光源部5を有するマルチコアファイバモジュールである。光モジュール1は、例えばレーザプロジェクタやファイバスキャナなどの光源に用いられる。
【0015】
カラーコンバイナ2は、光ファイバ接続器の一例であり、マルチコアファイバ3と3本のシングルモードファイバ(シングルコアファイバ)4とを光学的に接続する。シングルモードファイバ4は、光源部5が発光した赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色レーザ光をそれぞれ導波し、カラーコンバイナ2の一端に接続された出射端部から各色レーザ光を出射する。その各色レーザ光は、カラーコンバイナ2の他端に接続されたマルチコアファイバ3の入射端部に入射する。以下では、RGBの各色レーザ光を導波するシングルモードファイバ4のことを、それぞれ「Rファイバ4R」、「Gファイバ4G」、「Bファイバ4B」ともいう。
【0016】
カラーコンバイナ2は、実装基板21と、サブ基板22と、サブ基板23とを有する。
図2(A)では、サブ基板22,23などの各サブ基板の内部も破線により示している。
【0017】
図2(A)に示すように、マルチコアファイバ3の入射端部と3本のシングルモードファイバ4の出射端部には、屈折率分布型レンズの一例として、GI(グレーデッドインデックス)レンズ30,40がそれぞれ設けられている。カラーコンバイナ2は、シングルモードファイバ4の出射端部(GIレンズ40の端部)とマルチコアファイバ3の入射端部(GIレンズ30の端部)との間の空間210で、コリメータレンズや集光レンズなどのレンズを介さずに、両者のファイバを直接光結合させる。また、カラーコンバイナ2は、3本のシングルモードファイバ4から出射されたRGBの各色レーザ光を合波する合波器としても機能する。マルチコアファイバ3は、カラーコンバイナ2により合波され入射端部に入射した各色レーザ光をそれぞれ異なるコアで導波し、その各色レーザ光は、例えば、投射光学系を介してスクリーン上に投射される。
【0018】
実装基板21は、代表的な大きさとして一辺の長さが2〜5mm程度の大きさを有するシリコン製の基板であり、Siプラットフォームとも呼ばれる。実装基板21上には、両者のファイバが効率よく光結合するように相対位置が調整された2つのサブ基板22,23を用いて、GIレンズ30,40付きのマルチコアファイバ3およびシングルモードファイバ4がそれぞれ実装される。
図1および
図2(A)に示すように、実装基板21の上面においてサブ基板22,23が接合される部分と、サブ基板22とサブ基板23の間は、マルチコアファイバ3とシングルモードファイバ4の高さを調整し、GIレンズ40からのコリメート光を空間で導波できる逃げを形成するための溝部211が形成されている。溝部211の深さは、実装基板21上で一定である。また、溝部211の幅は、サブ基板22が接合される部分ではマルチコアファイバ3に合わせた同じ大きさであるが、GIレンズ30の端部からサブ基板23側に向かうにつれて、次第に広くなる。
【0019】
サブ基板22は、マルチコアファイバ3の入射端部を収容するための溝部221がドライエッチングにより中央に形成された「コ」の字型の基板である。サブ基板22には、例えばシリコン基板またはガラス基板が用いられる。サブ基板22は、第1のサブ基板の一例であり、マルチコアファイバ3の入射端部を実装基板21上に固定する。
【0020】
サブ基板23は、シングルモードファイバ4の出射端部をそれぞれ収容するための3本の溝部231がドライエッチングにより中央に形成された基板である。サブ基板23には、例えばシリコン基板またはガラス基板が用いられる。サブ基板23は、第2のサブ基板の一例であり、隣接する2本のシングルモードファイバ4の端部が予め定められた大きさの角をなすように、シングルモードファイバ4の出射端部を実装基板21上に固定する。
【0021】
図2(C)に示すように、3本の溝部231は、サブ基板23の下面中央を横切る溝部231Gと、溝部231Gに関して互いに対称な溝部231R,231Bとで構成される。溝部231R,231G,231Bには、Rファイバ4R、Gファイバ4G,Bファイバ4Bの出射端部がそれぞれ収容される。溝部231R,231Bは、
図2(C)に示すサブ基板23の左端では、溝部231Gが設けられている中央付近に近付き、サブ基板23の右端に行くにつれて溝部231Gから遠ざかるように、溝部231Gに対して斜め方向に形成される。溝部231R,231Gがなす角θと溝部231G,231Bがなす角θは同じであり、溝部231R,231G,231Bの深さと幅もそれぞれ同じである。
【0022】
また、実装基板21の上面においてサブ基板22,23が接合される部分には、それぞれ溝部221,231に向かい合う部分を挟んだ両側に、実装基板21とサブ基板22,23とを表面活性化接合するためのマイクロバンプが形成されている。
図2(A)では、マイクロバンプが形成された領域を符号212,213で示している。このマイクロバンプは、例えば金(Au)などの金属材料で構成された、数μm程度の大きさの多数の小突起である。
【0023】
また、サブ基板22,23には、実装基板21との接合面(図示された状態での下面)上に、例えば金(Au)により、表面活性化接合用の金属膜222,232がそれぞれ形成されている。金属膜222,232は、
図2(A)においてマイクロバンプが形成された領域212,213と重ねて表示されている。実装基板21の上面のマイクロバンプとサブ基板22,23の下面の金属膜は、接合前にAr(アルゴン)プラズマによって洗浄されて、それぞれの表面が活性化される。サブ基板22,23を実装基板21の上に載せてそれぞれに常温で荷重を加えると、マイクロバンプと金属膜がそれぞれ接触し、マイクロバンプがつぶれることにより、マイクロバンプの金属原子と金属膜の金属原子が相互に相手方に拡散する。これにより、サブ基板22,23は、原子間の凝着力を利用して、実装基板21の上面に表面活性化接合される。
【0024】
表面活性化接合は加熱を要しないことから、熱膨張係数差の残留応力による各素子の位置ずれが発生しにくく、接合物を高精度に位置決めして実装することができる。また、例えば絶縁体上シリコンのストッパ層を使用することにより、溝部221,231の深さは、サブ基板22,23が実装基板21に接合されたときに実装基板21の上面に対して予め定められた高さにマルチコアファイバ3とシングルモードファイバ4の各コアが位置するように、厳密に制御されている。これにより、垂直方向に関して、マルチコアファイバ3とシングルモードファイバ4とは厳密に調芯される。
【0025】
図3は、マルチコアファイバ3の断面図である。
図3では、マルチコアファイバ3の長手方向に垂直な断面を模式的に示している。マルチコアファイバ3は、一例として、7本のコア31と、各コア31の周囲を覆うクラッド32と、クラッド32を覆う樹脂製の被覆33とを有する。例えば、各コア31の直径は数μm程度、隣接するコア31の間隔d1は20〜30μm程度であり、クラッド32の直径は80μm程度である。
【0026】
マルチコアファイバ3では、7本のコア31のうち、実装基板21の上面に対して水平に並ぶ3本のコア31のみが使用され、その3本のコア31が3本のシングルモードファイバ4にそれぞれ光結合される。この3本のコア31は、
図3において破線Aと重なるコアである。すなわち、マルチコアファイバ3は、同一平面上に配列した3本のコア31を用いて、RGBの各色レーザ光をそれぞれ導波する。これらの3本のコア31のことを、以下ではそれぞれ「コア31R,31G,31B」ともいう。マルチコアファイバ3の入射端部は、破線Aと重なる3本のコア31R,31G,31Bが実装基板21の上面に平行に配列するように、サブ基板22により固定される。
【0027】
図4は、カラーコンバイナ2の構造を説明するための図である。
図4では、カラーコンバイナ2の上面図を示している。
図4に示すように、実装基板21の面内にx,y軸をとり、実装基板21の面に垂直な方向にz軸をとる。
【0028】
上記の通り、カラーコンバイナ2で固定されるマルチコアファイバ3の入射端部と複数のシングルモードファイバ4の出射端部には、それぞれGIレンズ30,40が設けられる。GIレンズ30,40に用いるマルチモードファイバとしては、NA(開口数)の値が例えば0.44などの比較的高いものを使用する。GIレンズ30の先端とGIレンズ40の先端との間隔L1は、例えば1400μm程度である。また、例えば、GIレンズ30,40の直径d2,d3は125μm程度、長さL2,L3は600μm程度である。このGIレンズ30,40の長さは、GIレンズの屈折率分布や屈折率の大きさによって最適化する必要がある。GIレンズ40の長さは、各シングルモードファイバ4のコアからGIレンズ40に結合し空間210への放出ビームをコリメートするように選ばれる。また、GIレンズ30の長さは、このコリメート光がマルチコアファイバ3の各コア31に高効率に集光・結合するように選ばれる。レンズ系による光ファイバ接続器の場合には少なくとも20mm角程度の大きさが必要であるが、カラーコンバイナ2は、全体を2〜3mm角程度の大きさに小型化することが可能である。
【0029】
図4では、マルチコアファイバ3とシングルモードファイバ4の間で光結合される3本のビーム60も、模式的に示している。マルチコアファイバ3とシングルモードファイバ4のどちらが出射側であっても同様であるため、ここでは、マルチコアファイバ3の3本のコア31R,31G,31Bの端部から3本のビーム60が出射されたものとして説明する。GIレンズ30の長さL2を調整しておけば、各ビーム60は、GIレンズ30によりコリメートされ、概略平行光としてGIレンズ30から出射される。また、各ビーム60を出射するマルチコアファイバ3の3本のコア31R,31G,31Bがy方向にずれていることに起因して、両端のコア31R,31Bからのビーム60は、GIレンズ30から出射された後に、中央のコア31Gからのビーム60に対して斜めの方向に進む。3本のビーム60はそれぞれコリメートされているため、各ビーム60の延長線上にGIレンズ40としてGIレンズ30と同じものを配置すれば、各ビーム60は、GIレンズ40を通り抜けた後に、各シングルモードファイバ4のコアで1点に集束する。
【0030】
上記の寸法・仕様でカラーコンバイナ2を構成した場合には、中央のGIレンズ40に対して両端のGIレンズ40がなす角θは、ともに6°程度が最適である。この角度θは、シングルモードファイバ4のクラッド径およびGIレンズ40の径で決まる隣接するシングルモードファイバ4同士の最小コアピッチよりも、GIレンズ40の端部での各ビーム60の間隔が大きくなるように、決定される。また、この角度θは、マルチコアファイバ3とシングルモードファイバ4の間の空間部分のコリメート距離(間隔L1)も考慮して決定される。角度θの最適値は、光結合に使用されるマルチコアファイバ3のコア間隔やGIレンズ30の仕様によって異なる。例えば、カラーコンバイナ2では、GIレンズ30,40を構成するマルチモードファイバのNAを0.44と比較的大きなものを使用し、コア間隔は約23μmとする。このとき、空間210からGIレンズ30に異なる角度で入射した3つのコリメート光は、GIレンズ30の作用により角度・位置変換されるため、マルチコアファイバ3の異なる3つのコア31の位置にそれぞれ結合される。
【0031】
なお、3つのGIレンズ40がなす角θがこの値からずれると、各ビーム60が入射側のファイバのコア位置に収束しなくなるため、光結合効率が急激に低下する。すなわち、この光学系では、角度誤差がファイバ間の光結合効率に大きく影響する。一方、x,y方向の平行移動に伴うずれに対しては、空間ビームをコリメート(平行化)しているため、位置ずれの許容範囲を比較的大きくできる。しかしながら、角度ずれを小さくするために、サブ基板23の製造時には、ドライエッチングにより各溝部231の向きをサブミクロンオーダの高精度で制御し、角度θを高精度に維持した構造とすることが可能である。
【0032】
以上のことから、カラーコンバイナ2では、サブ基板23の溝部231R,231Gがなす角と溝部231G,231Bがなす角をともにθ=6°とする。この角θは、マルチコアファイバ3の3本のコア31R,31G,31Bから複数のビーム60が出射されたときの、当該複数のビーム60の広がり角に対応する大きさの角である。そして、各シングルモードファイバ4は、マルチコアファイバ3側の各GIレンズ40の端部が同一円周上に載るようにサブ基板23に固定される。
【0033】
これにより、3本のシングルモードファイバ4は、その端部におけるGIレンズ40のなす角が精度よく一定に保たれたまま、サブ基板23と一体になって移動可能になる。したがって、例えば、複数のシングルモードファイバ4のうち中央に位置するGファイバ4Gについて、対応するマルチコアファイバ3の中央のコア31Gとの間で調芯を行えば、残りのRファイバ4RとBファイバ4Bについても、自動的に調芯されることになる。そこで、カラーコンバイナ2では、Gファイバ4Gとそれに対応するマルチコアファイバ3の中央のコア31Gとの間でアクティブアライメントを行い、両者の光結合効率に基づいて、サブ基板22,23の相対位置を定める。このようにして、複数のシングルモードファイバ4とそれらに対応するマルチコアファイバ3の複数のコア31R,31G,31Bとをそれぞれ光結合させる。
【0034】
カラーコンバイナ2では、GIレンズを用いたSiプラットフォーム型のデバイスとすることにより、調芯の自由度を減らすことが可能である。複数のレンズを用いた空間光学系による光ファイバ接続器の場合には、x,y,z方向の自由度に加えて回転の自由度もあるが、カラーコンバイナ2では、実装基板21の上面が参照平面となるので、回転の自由度とz方向の自由度はなくなる。したがって、カラーコンバイナ2の調芯工程では、x,y方向だけについて調芯を行えばよい。
【0035】
また、カラーコンバイナ2では、前述したようにマルチコアファイバ3とシングルモードファイバ4の間の空間210において各ビーム60がコリメートしているため、x,y方向については、位置ずれに対する許容誤差(トレランス)が比較的大きい。すなわち、各ビーム60は概略平行光であるため、x方向については、各ファイバ(GIレンズ30,40)の相対位置が多少ずれても、光結合効率の変動は少ない。また、各ビーム60はy方向に広がっているので、y方向についても、集束ビームをアライメントする場合とは異なり、各ファイバ(GIレンズ30,40)の相対位置が多少ずれても、光結合効率の変動は少ない。このため、Siプラットフォームにより、フラット型の光ファイバ接続器を容易に製造することが可能である。
【0036】
図5は、カラーコンバイナ2の製造工程の例を示したフロー図である。
【0037】
まず、高NAのGIレンズ(コリメータ)30が先端に予め接続された可視光用のマルチコアファイバ3と、マルチコアファイバ3を固定するための溝部221が予め形成されたサブ基板22(第1のサブ基板)を用意しておく。また、同様に、高NAのGIレンズ(コリメータ)40が先端に予め接続された可視光用の3本のシングルモードファイバ4と、シングルモードファイバ4をそれぞれ固定するための溝部231が予め形成されたサブ基板23(第2のサブ基板)も用意しておく。サブ基板23には、溝部231として、一方の端部で中央付近に近付き、互いにθ=6°の角をなす3本の溝部231R,231G,231Bを予め形成しておく。
【0038】
そして、GIレンズ30付きのマルチコアファイバ3の端部を、サブ基板22の溝部221に固定する(ステップS1)。また、GIレンズ40付きの3本のシングルモードファイバ4の端部を、サブ基板23の溝部231にそれぞれ固定する(ステップS2)。そして、サブ基板22とサブ基板23を実装基板21上に配置する(ステップS3)。
【0039】
続いて、3本のシングルモードファイバ4のうち中央に位置するGファイバ4Gと、Gファイバ4Gに対応するマルチコアファイバ3の中央のコア31Gとの間でアクティブアライメントを行って、サブ基板22とサブ基板23の相対位置を定める(ステップS4)。その際は、例えば、サブ基板22を実装基板21上に固定し、制御部、光検出器および移動機構を有する図示しない調芯装置を使用して、マルチコアファイバ3の中央のコア31GとGファイバ4Gとの間の光結合効率に基づきサブ基板23の位置を調整する。具体的には、例えば、光源部5を発光させてGファイバ4Gからレーザ光を出射させ、調芯装置の制御部が、フォトダイオードなどの光検出器を用いて、マルチコアファイバ3の中央のコア31Gに結合されるレーザ光の強度に応じた出力電圧をモニタする。そして、調芯装置の制御部が、移動機構を用いてサブ基板23の位置をx,y方向にサブミクロンオーダで微調整しながら、光検出器の出力電圧が最大となるときのサブ基板23の位置を決定する。なお、上記とは逆に、先にサブ基板23を実装基板21上に固定し、サブ基板22の位置を調整してもよい。
【0040】
最後に、相対位置が定められたサブ基板22,23に荷重を加えて、これらのサブ基板を表面活性化接合により実装基板21上に接合する(ステップS5)。以上で、カラーコンバイナ2の製造工程は終了する。
【0041】
再び
図1、
図2(A)および
図2(B)を参照して、光源部5について説明する。光源部5は、実装基板51と、レーザ素子52と、サブ基板53と、ドライバIC54とを有する。光源部5は、3本のシングルモードファイバ4およびマルチコアファイバ3が導波する赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色レーザ光を発光する。
【0042】
実装基板51は、その上面にレーザ素子52、サブ基板53およびドライバIC54が実装されるシリコン製の基板である。実装基板51には上面から底面に貫通するシリコン貫通電極が設けられており、実装される各素子の配線は、その貫通電極により実装基板51の裏面に引き回されている。実装基板51は、図示しない回路基板の上に搭載され、その回路基板から、貫通電極を通してレーザ素子52とドライバIC54に電気信号が供給される。
【0043】
レーザ素子52は、RGBの各色レーザ光をそれぞれ発光する3個のレーザダイオードである。
図2(A)では、3個のレーザ素子52を、発光色のRGBで区別して、それぞれ「レーザ素子52R,52G,52B」と示している。レーザ素子52は、半田実装などでドライバIC54が実装された後に、表面活性化接合で実装基板51の上面に実装される。また、レーザ素子52は、放熱特性を改善し実装基板51の表面を基準面として高精度に位置決めするために、活性層が実装基板51側に位置するように、フェイスダウン(ジャンクションダウン)で実装される。
【0044】
サブ基板53は、サブ基板22と同様の「コ」の字型のシリコン基板またはガラス基板であり、集束用のGIレンズを先端に設けたシングルモードファイバ4の入射端部(レーザ素子52側の端部)を固定する。集束用のGIレンズは省略することが可能であるが、直接結合(Butt Coupling)の場合には、シングルモードファイバ4の端面とレーザ素子52の端面とをμオーダで近接させる必要があるため、GIレンズを用いて空間を空け、調芯の許容値を拡げることが望ましい。光源部5には、3本のシングルモードファイバ4にそれぞれ対応する3個のサブ基板53が設けられている。
【0045】
なお、レーザ素子52と対応するシングルモードファイバ4の間でも、カラーコンバイナ2とは独立に、アクティブアライメントが行われる。その際は、レーザ素子52R,52G,52Bのそれぞれについて、対応するシングルモードファイバ4に結合される光強度に基づき、実装基板51上におけるサブ基板53の位置が個別に調整される。そして、各サブ基板53は、アクティブアライメントにより定められた位置で、表面活性化接合により実装基板51の上面に接合される。
【0046】
ドライバIC54は、レーザ素子52を駆動する機構であり、光源部5の制御部として機能する。ドライバIC54は、デジタルインタフェースを実装していることが好ましく、制御部としてCPUやメモリなどのコア部分を含んでいればなおよい。ドライバIC54は、実装基板51上に半田で実装される。
【0047】
図6は、光モジュール1Aの斜視図である。
図7(A)および
図7(B)は、それぞれ、光モジュール1Aの上面図および側面図である。光モジュール1Aは、同一基板上に搭載されたカラーコンバイナ2Aと光源部5Aを有するマルチコアファイバモジュールである。
【0048】
光モジュール1Aの構成は、光モジュール1の実装基板21と実装基板51が一体の実装基板21Aになったことを除いて光モジュール1の構成と同様であるため、重複する説明を省略する。実装基板21Aは、実装基板21,51と同様のシリコン製の基板であり、光モジュール1A内で共通のSiプラットフォームとなる。このように、カラーコンバイナと光源部を同じSiプラットフォーム上に一体で搭載してもよい。
【0049】
図8は、光モジュール1Bの斜視図である。
図9(A)〜
図9(C)は、それぞれ、光モジュール1Bの上面図および側面図、ならびにサブ基板23Bの裏面図である。光モジュール1Bも、光モジュール1Aと同様に、同一基板上に搭載されたカラーコンバイナ2Bと光源部5Bを有するマルチコアファイバモジュールである。
【0050】
光モジュール1Bの構成も光モジュール1の構成と同様であるため、光モジュール1と異なる部分のみを以下で説明する。まず、光モジュール1Bでも、光モジュール1Aと同様に、光モジュール1の実装基板21,51が一体の実装基板21Bになっている。実装基板21Bは、実装基板21,51と同様のシリコン製の基板であり、光モジュール1B内で共通のSiプラットフォームとなる。
【0051】
また、光モジュール1Bでは、光モジュール1のサブ基板23,53が一体のサブ基板23Bになっている。
図9(C)に示すように、サブ基板23Bには、サブ基板23と同様に、一方の端部で中央付近に近付き、互いにθ=6°の角をなす3本の溝部231R’,231G’,231B’が形成されている。光モジュール1Bでは、これらの溝部により、光源部5Bにおいても、各シングルモードファイバ4の入射端部が互いにθ=6°の角をなすように配置される。このため、光モジュール1Bでは、両端のレーザ素子52R,52Bも、各シングルモードファイバ4の設置角度に合わせて、中央のレーザ素子52Gに対して斜めに配置される。
【0052】
なお、光モジュール1Bの場合、レーザ素子52とシングルモードファイバ4の間の調芯は、3つの光源について同時に行われる。例えば、光モジュール1の場合と同様にしてサブ基板22に対するサブ基板23Bの位置が定められたときに、各レーザ素子52と対応するシングルモードファイバ4の間の光結合効率が最大になるように、各レーザ素子52のx、y方向の位置がそれぞれ調整される。そして、それぞれ定められた位置において、サブ基板22,23Bと各レーザ素子52は、実装基板21B上に表面活性化接合される。この場合も、調芯を容易とするために、シングルモードファイバ4の端面には集束用のGIレンズを接続して、レーザ素子52との間に空間を設け、間隔を空ける構造とすることが望ましい。
【0053】
以上説明したカラーコンバイナ2,2A,2Bでは、Siプラットフォーム型のデバイスとして構成することにより、例えば複数のレンズを用いた空間光学系による光ファイバ接続器と比べて、調芯が必要な箇所が少なくなるため、調芯工程が簡略化される。また、カラーコンバイナ2,2A,2Bにより、従来のものより小型化したRGBレーザ光の合波器が提供される。カラーコンバイナ2,2A,2Bを用いた光モジュール1,1A,1Bは、例えばレーザプロジェクタやファイバスキャナなどの光源として応用可能である。
【0054】
なお、上記した光モジュール1,1A,1Bでは、いずれもシングルモードファイバ4側に光源部5があるが、例えばマルチコアに対応した発光点を持つマルチエミッタ型のレーザ素子を光源に使用すれば、マルチコアファイバ3の側に光源部があってもよい。すなわち、カラーコンバイナ2,2A,2Bでは、マルチコアファイバ3とシングルモードファイバ4の間で、入射側と出射側が逆になってもよい。
【0055】
また、シングルモードファイバの本数は、3本に限らず、何本でもよい。例えば、RGBの各色レーザ光を導波するファイバが色ごとに多重化されていてもよいし、RGB用のファイバに加えて赤外線などの他の波長の光を導波するファイバがあってもよい。あるいは、複数のシングルモードファイバで同じ波長(同色)の光を導波してもよい。また、シングルモードファイバの本数は、マルチコアファイバの同一平面上に配列したコアの総数と異なっていてもよいし、マルチコアファイバについては、同一平面上に配列した複数のコアのうちの一部のみを使用してもよい。それらの場合でも、光結合に使用するマルチコアファイバの同一平面上の複数のコアとそれらに対応する本数のシングルモードファイバとを2つのサブ基板によりそれぞれ横一列に並べて固定して、両者を同様に光結合させることが可能である。