(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341790
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】コア落下防止装置及びコアドリルによる穿孔システム
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
B28D1/14
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-154438(P2014-154438)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-30408(P2016-30408A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】593110580
【氏名又は名称】株式会社シブヤ
(73)【特許権者】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ
(72)【発明者】
【氏名】浦本 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】原 真司
(72)【発明者】
【氏名】安立 陽
(72)【発明者】
【氏名】稲生 尚敏
(72)【発明者】
【氏名】砂川 高寛
【審査官】
石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−071580(JP,U)
【文献】
特開平11−179720(JP,A)
【文献】
特開2008−201075(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3170938(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
B23B 51/04
E21B 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアドリルを用いた穿孔作業により形成されたコアの落下防止のためのコア落下防止装置であって、
水平に展開して前記コアを保持する棒状又は板状のリフターと、
前記リフターを回動可能な状態で支持するバーと、
前記バーを上下動可能な状態で収容し、水平となったリフターの幅より小径で、水平となったリフターの高さより大径の筒体であるリフターケースと、
前記リフターケース下端に取付けられたビットと、を備え、
前記リフターケースは、展開するリフターが通過可能なスリットを側面に有し、
前記リフターは、前記バーの前記リフターケースに対する相対位置に応じて水平状態と垂直状態が切替え可能となっているコア落下防止装置。
【請求項2】
バーが上方にあるとき、リフターが垂直の状態でリフターケースに収容されており、
バーが上方から下方に下降するのに伴い、リフターがリフターケースのスリットの端面と当接することで、リフターが回動して水平になるようになっており、
リフターが水平となったとき、リフターの底面が前記スリットの端面に係止されて展開状態を維持するようになっている請求項1記載のコア落下防止装置。
【請求項3】
リフターは、無負荷時に垂直となるように規定された形状を有し、バーに回動自在に支持されている請求項1又は請求項2記載のコア落下防止装置。
【請求項4】
バーが、リフターが水平状態となる位置よりも更に下方に下降可能となっていると共に、
リフターケースのスリットの端面の内側角部が面取り加工されており、
リフターの底面が前記面取り加工された面に係止されることで、リフターが傾斜した状態を保持することができる請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコア落下防止装置。
【請求項5】
バーを挿入して保持するホルダーを備えると共に、前記バーの上端に係止部を備え、
前記ホルダー上端と前記係止部との間に弾性体が設置された請求項1〜請求項4のいずれかに記載のコア落下防止装置。
【請求項6】
リフター端部に傾斜を有し、前記傾斜がリフターケースのスリットの端面により係止されることによりリフターが傾斜した状態を保持する請求項1〜請求項5のいずれかに記載のコア落下防止装置。
【請求項7】
バーを挿入して保持するホルダーを備えると共に、前記バーの前記ホルダーの下端付近の位置に係止部材を備え、
前記ホルダー下端と前記係止部材との間に弾性体が設置された請求項1〜請求項6のいずれかに記載のコア落下防止装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載のコア落下防止装置を備えるコアドリルによる穿孔システムであって、
請求項1〜請求項7のいずれかに記載のコア落下防止装置、及び、前記コア落下防止装置のリフターケースを回転させる第1のモーターと、
被加工物を穿孔するためのコアドリル、及び、前記コアドリルを回転させる第2のモーターと、を備え、
前記コア落下防止装置のバーが前記コアドリルの中心軸と重なるように配置された穿孔システム。
【請求項9】
第1のモーターは第2のモーターと逆方向に回転可能となっている請求項8記載の穿孔システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアドリルによる穿孔作業の際に使用される装置であって、穿孔により発生するコアの落下を防止するためのコア落下防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物や石材等の穿孔作業に従来からコアドリルが使用されている。コアドリルは円筒形状の台座の先端部にダイヤモンド等の硬質砥粒を含むチップが取り付けられた切削工具であり、コンクリート等の被加工物に回転させながら押圧することで円形の孔が形成される。
【0003】
コアドリルによる穿孔作業では、作業の進行に伴い、コアドリルの内部にくり抜かれた残片(コア)が生じる。穿孔作業においては、このコアの処理が問題になることがある。例えば、コンクリート管を穿孔する場合のように被加工物の下に空間がある場合、コアドリルが被加工物を貫通したときコアが落下することとなる。コアの落下・破損は、作業環境を乱雑にするだけでなく安全性確保にも支障を生じさせることから、発生したコアは落下する前に回収することが望ましい。
【0004】
コアドリルのコア落下防止のために、例えば、特許文献1記載のコア落下防止装置(アダプタ)が知られている。このコア落下防止アダプタは、コアドリル(コアビット)の中心軸上に位置する棒体からなるセンターシャフトと、センターシャフトの先端に回動可能に固定された棒状又は板状のハンガーとで構成される。このコア落下防止アダプタを使用する穿孔作業では、予め被加工物にガイドとなる小孔を空けておく。そして、落下防止アダプタのセンターシャフトをコアドリルに取付け固定し、ハンガーをセンターシャフト先端となす角度が最小となるようにして折り畳み小孔に入れる。以上の作業順を経て穿孔作業を開始する。コアドリルが対象物を貫通すると、センターシャフトとハンガーは小孔から突出し、ハンガーはコアビットの回転による遠心力によってセンターシャフトに対して略直角になる。この状態でコアビットを抜くと、ハンガーの両端側が小孔に引っ掛かり切削コアが落下することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3170938号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなコア落下防止アダプタは、構造が簡易でありながら生成したコアを確実にキャッチしてコア落下を抑制できる。しかし、上記で説明したように、このコア落下防止アダプタを使用する場合、コアドリルによる穿孔作業前に予めアダプタのガイドとなる小孔を空けておく必要があり、作業効率への影響が懸念される。また、このコア落下防止アダプタは、ハンガーを展開してコアを引っ掛けた後容易に解除することができず、手作業による解除が必要となる。これでは穿孔作業中に解除が必要となった場合の対応が困難となる。
【0007】
本発明は、上記のような背景のもとなされたものであり、コアドリルによる穿孔作業で生じるコアの落下を防止するための装置であって、穿孔作業前の孔空け作業がなくても機能し得るものを提供する。また、そのコア落下防止機構について、任意のタイミングで設定・解除可能であり自動化も可能なものを備える装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、コアドリルを用いた穿孔作業により形成されたコアの落下防止のためのコア落下防止装置であって、水平に展開して前記コアを保持する棒状又は板状のリフターと、前記リフターを回動可能な状態で支持するバーと、前記バーを上下動可能な状態で収容し、水平となったリフターの幅より小径で、水平となったリフターの高さより大径の筒体であるリフターケースと、前記リフターケース下端に取付けられたビットと、を備え、前記リフターケースは、展開するリフターが通過可能なスリットを側面に有し、前記リフターは、前記バーの前記リフターケースに対する相対位置に応じて水平状態と垂直状態が切替え可能となっているコア落下防止装置である。
【0009】
本発明に係るコア落下防止装置は、それ自体で被加工物への穿孔を可能とするためのビットを備える。これにより、コアドリルによる穿孔作業前に予め孔空け作業を行う必要がなく作業効率を高めることができる。本発明に係るコア落下防止装置は、コアドリルによる穿孔作業に連動しその進行状況に応じて孔を形成することができる。
【0010】
そして、本発明に係るコア落下防止装置は、リフターケースに収納されるリフターでコアを支持してコア落下を防止するが、このリフターはリフターを支持するバーのリフターケースに対する相対位置に応じて水平状態(コアを支持するための展開状態)と垂直状態(リフターケースへの収納状態)が切替え可能となっている。即ち、リフターはバーの上下動に応じて開閉するものであり、展開状態の設定及び解除を外部から任意に行うことができる。このバー位置の操作による展開状態の設定及び解除は、モーター等による自動化も可能であり、これは作業効率の向上にも繋がる。
【0011】
ここで、本発明に係るコア落下防止装置の主要な部材であるリフター、バー、リフターケースについての好適な構成について説明する。コアを保持するリフターは棒状又は板状であり、バーにピン等で回動可能な状態で支持されている。回動の方向に制限はない。リフターを支持するバーはリフターケースに挿入され上下動可能となっている。
【0012】
リフターケースは、リフターが展開して水平状態となったときのリフターの幅より小径で、リフターの高さより大径の筒体とする。また、リフターケースは、展開するリフターが通過可能なスリットを側面に有する。好適には、バーが上方にあるとき、リフターが垂直に立った状態でリフターケースに収容され、バーの下降に伴い展開するするリフターがリフターケースのスリットの端面と当接することで、リフターが水平になるようになっており、リフターが水平となったときにリフターの底面がスリット端面で係止されて展開状態を維持するようになっている。この展開状態において、水平となったリフターがコアを保持するが、このときリフターとリフターケースとの接触面でコアによる荷重を受け止めることとなる。リフターとバーとの支持部(ピン等)が荷重を受けることにはならないため、安定した保持が可能となる。
【0013】
リフターの展開状態の設定及び解除を任意に行うため、バーに支持されたリフターは、無負荷時に水平状態又は垂直状態のいずれかで安定するような形状、取り付け状態にあることが好ましい。特に好ましくは、リフターの形状規定により無負荷時のリフターの状態を調整することである。例えば、リフターの形状規定により重心位置を調整することで、無負荷時にリフターが垂直となるようにすることができる。これによりバーの上下動によりリフターの状態を自由に設定することができる。尚、リフターの形状を調整する手段の他、バネ等によりリフターを垂直状態とすることもできる。但し、リフターの形状規定による対処の方が不具体発生の可能性の少ない方法といえる。
【0014】
ここで、バーのリフターケース内における上下位置について見ると、リフターの展開状態における位置(下位置)とリフター収納状態における位置(上位置)との間でバーは上下動するのが基本となる。本発明では、リフターケースのスリットの端面形状、又は、リフターの形状の少なくともいずれかを調整することで、バーのリフターケース内における上下位置を変更しつつ、リフターが傾斜した状態で展開することができる。リフターが傾斜した状態を保持することで、端面が斜めになったコアに対応可能となる。
【0015】
即ち、リフターケースのスリットの端面の内側角部を面取り加工することで、バーはリフターが水平状態となる位置よりも更に下方に下降可能となる。そして、リフターの底面が前記面取り加工された面に係止されることで、リフターを傾斜させつつ展開することができる。また、リフターの形状調整として、リフター端部に傾斜を形成し、この傾斜がリフターケースのスリットの端面により係止されることでもリフターを傾斜させつつ展開することができる。
【0016】
尚、本発明に係るコア落下防止装置では、バーの保持手段となるホルダーを備えることが好ましく、このホルダーを上下動させることでリフターが保持したコアを引き上げるようになっているのが好ましい。このとき、バーの上端に係止部を備えホルダー上端と係止部との間に弾性体が設置された状態でバーがホルダーで保持されているものが好ましい。また、バーのホルダーの下端付近に係止部材を備え、ホルダー下端と係止部材との間に弾性体が設置された状態でバーがホルダーで保持されているものが好ましい。これらの弾性体は、リフターがコア保持により受ける荷重を吸収するダンパーとして作用する。この荷重の吸収作用は、上記のようにリフターを傾斜させつつ展開する場合において、リフターの傾斜方向に応じて上下いずれかの弾性体が圧縮して急激な回転を抑制する。
【0017】
以上説明した本発明に係るコア落下防止装置は、従来のコアドリルによる穿孔システムと組み合わせ可能であり、これによりコアの落下防止を考慮しつつ効率的に穿孔作業ができる穿孔システムを構築することができる。即ち、本発明に係るコアドリルによる穿孔システムは、上記のコア落下防止装置及びそのリフターケースを回転させる第1のモーターと、被加工物を穿孔するためのコアドリル、及び、前記コアドリルを回転させる第2のモーターと、を備え、前記コア落下
防止装置のバーが前記コアドリルの中心軸と重なるように配置された穿孔システムである。
【0018】
この穿孔システムでは、コア落下防止装置及びそのリフターケースを回転させる第1のモーターと、穿孔のためのコアドリルを回転させる第2のモーターを備える。リフターケースとコアドリルを一つのモーターで駆動させようとすると、ビットの周速が合わないため一方の穿孔速度の低下、ビットの目つぶれが起こる可能性がある。独立した2つのモーターを備えることで、適正な周速で穿孔作業が可能となる。
【0019】
また、第1のモーターは、第2のモーターと逆方向に回転可能となっているものが好ましい。コアドリルが回転しているときにコア落下防止装置に接触した場合、コア落下防止装置が外れるのを防止するためである。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した本発明に係るコア落下防止装置は、それ自体に穿孔機能を具備させたことで、コア回収のための孔空け作業を効率的に行うことができる。また、コア落下防止機構について、任意のタイミングで設定・解除可能であり自動化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係るコア落下防止装置及びこれを備えた穿孔システムの構成を示す図。
【
図2】コア落下防止装置の構成を詳細に説明する断面図。
【
図3】コア落下防止装置のバーからリフターケース付近を拡大する図。
【
図5】本実施形態に係る穿孔システムによる穿孔方法の一例について説明する図。
【
図6】コアの端面が傾斜(右上がり)する場合のリフターの動作を説明する図。
【
図7】コアの端面が傾斜(右下がり)する場合のリフターの動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施態様を説明する。
図1は、本実施形態に係るコア落下防止装置及びこれを備えた穿孔システムの構成を示すものである。
図1において、穿孔システム1は、コア落下防止装置10を備えるコア落下防止ユニット100と、コアドリル20を備えるコアドリルユニット200とで構成される。各ユニットは、被加工物Wに対して固定された支柱Pに上下動可能な状態で固定・支持されている。
【0023】
コア落下防止ユニット100は、コア落下防止装置10とこれを回転させるために接続された第1モーターM1で構成され、上下方向への送りブロックB1で支柱Pに接続されている。コアドリルユニット200は、コアドリル20とこれを回転駆動する第2モーターM2とで構成され、上下方向への送りモーターを内蔵するブロックB2で支柱Pに接続されている。
【0024】
図2は、コア落下防止装置10の構成を詳細に説明する断面図である。コア落下防止装置10は、バー11とリフター12とリフターケース13を備える。バー11は分割可能な組み立て式であり現場の状況に合わせて長さ調整できる。リフターケース13の下端には、小径ビット15が取付けられる。
【0025】
そして、円筒状のホルダー14にバー11が内挿されている。また、リフターケース13はチューブTを介してコア落下防止装置10の本体に固定されている。バー11はチューブT内で上下動する。バー11の上端部は幅広加工されて係止部S1を形成している。また、ホルダー14の下部にはバー11より径の大きい筒体であるストッパS2が取付けられている。ホルダー14と係止部S1との間及びホルダー14とストッパS2との間には弾性体であるバネSP1、SP2が取付けられている。ホルダー14は、リフター用モーターM3と接続されており、モーターM3によりホルダー14を介してバー11の上下動作を行い、リフター12の展開・収納を操作する。
【0026】
ここで、本実施形態に係るコア落下防止装置におけるリフターの展開機構について説明する。
図3は、コア落下防止装置のバー11からリフターケース13付近を拡大したものである。リフター12は、鉄製の板材であり垂直時の寸法が幅22mm長さ99mm(端部〜端部の最大長さ)である。バー11は直径16mmの鉄製の丸棒であり、ピン16でリフター12を支持する。リフター12はピン16を回転軸として回動可能となっている。
【0027】
ここで、本実施形態のリフター12は、その端部A、Bに関して、端部A付近に重心が位置するように形状及び寸法調整されている。これにより無負荷のとき、端部Aを下方としてリフター12が垂直となるようになっている。リフター12の垂直状態は可逆的であり、荷重をかけて回転・展開させても除荷することで自動的に垂直状態に戻るようになっている。また、リフター12の端部Aは、スロープが形成されている。このスロープは、後述するようにリフター12の展開に必要な形状である。更に、リフター12の端部Bには、傾斜部Zが形成されている。この傾斜部の作用についても後述する。
【0028】
リフターケース13は、垂直状態のリフター12を収容可能な筒体である。その側面には、展開するリフター12が通過可能なスリットslが形成されている。そして、スリットslの下端面は、後述するように展開したリフター12を係止部として作用する。また、スリットslの端面内側の角部は面取り加工されており斜面Mを有する。
【0029】
このリフター12の展開機構について説明すると、
図4(a)がリフター12の収納状態を示す。リフター12は垂直となっており、リフターケース13からはみ出すことなく収納されている。バー11は上方にある。ここからバー11を下降させることでリフター12も下降する。そして、リフター12の端部Aのスロープがリフターケース13のスリット端面(Y部)に当接し(
図4(b))、更に下降を継続するとリフター12が展開する(
図4(c))。このリフター12が水平に展開した状態においては、リフター12の底面がスリットの端面に当接している(
図4(d))。そのため、リフター12がコアを保持するとき。荷重はこの当接した面で受けることになり、ピン16に荷重がかからないようになっている。
【0030】
以上の動作とは逆にバー11を上昇させると、リフター12は重心移動することで垂直状態になろうとして収納されることとなる。
【0031】
次に、本実施形態に係る穿孔システムによる穿孔方法及びコア回収方法の一例について説明する。
図5(a)のように、被加工物Wに支柱Pを位置決め固定し、ここにコア落下防止ユニット100とコアドリルユニット200とをセットする。このとき、コア落下防止装置のバー11がコアドリルの中心軸と重なるように配置する。
【0032】
各機器のセット後、コアドリルによる穿孔を開始する。まず、コアドリルユニット200のモーターM2を駆動してコアドリル20を回転駆動する。そして、穿孔箇所に給水しながら、ブロックB2の送りモーターを駆動してコアドリル20を降下して穿孔を行う。そして、被加工物Wの厚さに対して8割〜9割程度の深さまでコアドリル20による穿孔を行う(
図5(b))
【0033】
コアドリルにより目標深さまで穿孔した後、一旦、ブロックB2の送りモーターを停止し、更に、コアドリルのモーターM2も停止する。そして、コア落下防止ユニット100による穿孔を行う。コア落下防止装置のモーターM1を駆動して小径ビット15を回転駆動する。そして、穿孔位置に給水しながら、ブロックB1の送りモーターを駆動してコア落下防止ユニット100を降下して穿孔を行う。コア落下防止装置10の小径ビット15による穿孔は、被加工物Wを貫通するまで行う。貫通が確認された後、ブロックB1の送りモーターを停止し、更に、コア落下防止装置10のモーターM1を停止する。
【0034】
そして、コア落下防止装置10のリフター12を展開してコア落下防止態勢をとる。コア落下防止装置10のリフター用モーターM3を駆動してバー11を下方に降下させる。上記した機構によりリフター12が展開する。その後、ブロックB1の送りモーターを駆動させ、リフター12が被加工物Wと接触するまでコア落下防止ユニット100を上昇させる。接触したらブロックB1の送りモーターを停止する。
【0035】
コア落下の防止の準備ができた後残りの穿孔を行う。上記と同じ手順でコアドリル20による穿孔を再開し、コアドリル20が貫通するまで穿孔作業を行う。コアドリル20が貫通することでコアCが形成され、リフター12がこれを保持する。その後、ブロックB1、ブロックB2のそれぞれの送りモーター駆動し、コアCとコアドリル20を引き上げて回収する。
【0036】
以上で穿孔作業が完了するが、上記したコア落下防止装置10の動作は加工対象物Wの下面が平坦な場合のものである。本実施形態におけるコア落下防止装置10は、加工対象物Wの下面が傾斜した場合にも対応可能である。
【0037】
図6は加工対象物Wの下面が右上がりの傾斜を有する場合のコア落下防止装置10の動作を説明するものである。基本的な作業手順は、上記のコアCの下面が平坦な場合と同じであり、コアドリル20にてある程度穿孔作業を行った後、コア落下防止装置10の小径ビット15による穿孔作業を行う。コア落下防止装置10が加工対象物Wを貫通したら、バー11の操作によりリフター12を展開し上昇させる(
図6(a))。
【0038】
リフター12が上昇するとき、傾斜したコアCの端面は、まず、リフター12の端部B側(
図6における左側)に当接する(
図6(b))。リフター12の上昇を継続すると、リフター12はコアCの端面の傾斜に沿うように回動する(
図6(c))。そして、コアC端面の角度とリフター12の傾斜角度が合致したとき、コアCが引き出し可能となる。このとき、リフター12の底面から端部Bの傾斜Zの間のいずれかの部位と、リフターケース13のスリット端面(Y部)とが当接した状態となる(
図6(d))。その後、コアCの引き上げを行うときには、ピン16(バー11)のリフターケース13に対する相対位置が上昇しホルダー14との間に設置されたバネSP2が縮む(
図6(e))。コアCの荷重は、リフター12とリフターケース13のスリット端面(Y部)との当接部にかかっており、ピン16が荷重を受けることはなく破損のおそれはない。また、コアC引き上げの際に振動が生じてバー11が上下動しても、バネSP2がその変位を吸収しダメージを低減することができる。
【0039】
一方、
図7は加工対象物Wの下面が右下がりの傾斜を有する場合のコア落下防止装置10の動作を説明するものである。ここでも基本的な作業手順は、上記と同様である。コア落下防止装置10の小径ビット15による穿孔作業により、コア落下防止装置10が加工対象物Wを貫通したら、バー11の操作によりリフター12を展開し上昇させる(
図7(a))。
【0040】
この場合は、リフター12が上昇すると、傾斜したコアCの端面は、まず、リフター12の端部A側(
図7における右側)に当接する(
図7(b))。リフター12の上昇を継続すると、リフター12はコアCの端面の傾斜に沿うように回動する(
図7(c))。ここで、リフターケース13のスリット端面の内側の角部は面取り加工されており、斜面Mを有する。コアC端面の角度とリフター12の傾斜角度が合致したとき、リフター12の底面と、リフターケース13のスリット端面の角部から斜面の間のいずれかの部位とが当接する(
図7(d))。更に引き上げることで、ピン16(バー12)のリフターケースに対する相対位置が下降し、ホルダー14との間に設置されたバネSP1が縮む(
図7(e))。この段階からコアCが引き出し可能となり、リフター12の底面とリフターケース13のスリット端面との当接部で荷重を受けることとなり、ピン16が荷重を受けることはなく破損のおそれはない。また、コアC引き上げの際に振動が生じてバー11が上下動しても、バネSP1がその変位を吸収しダメージを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るコア落下防止装置用いることで、コアドリルによる穿孔作業を効率的に行うことができる。このコア落下防止機構は、任意のタイミングで設定・解除可能であり自動化や遠隔操作にも対応できる。
【符号の説明】
【0042】
1 穿孔システム
100 コア落下防止ユニット
10 コア落下防止装置
11 バー
12 リフター
13 リフターケース
14 円筒状ホルダー
15 小径ビット
16 ピン
S1 係止部
S2 ストッパ
T チューブ
Z 傾斜部
M 斜面
sl スリット
200 コアドリルユニット
20 コアドリル
被加工物W
支柱P
M1 第1モーター(小径ビット駆動用モーター)
M2 第2モーター(コアドリル駆動用モーター)
M3 リフター用モーター
B1、B2 ブロック