特許第6341793号(P6341793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6341793-金属酸化物触媒及び脱臭材 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341793
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】金属酸化物触媒及び脱臭材
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/187 20060101AFI20180604BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20180604BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20180604BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   B01J27/187 M
   B01D53/86 110
   A61L9/00 C
   A61L9/01 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-158596(P2014-158596)
(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公開番号】特開2016-34620(P2016-34620A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】503386517
【氏名又は名称】神鋼アクテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090158
【弁理士】
【氏名又は名称】藤巻 正憲
(72)【発明者】
【氏名】荒井 喜代志
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−104845(JP,A)
【文献】 特開昭56−129058(JP,A)
【文献】 特開平09−019489(JP,A)
【文献】 特開平10−249197(JP,A)
【文献】 特開平05−138044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/86−53/90
B01D53/94−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱臭材用金属酸化物触媒であって、マンガン酸化物をMnO換算値で50乃至80質量%、銅酸化物をCuO換算値で5乃至20質量%、鉄酸化物をFe換算値で5乃至20質量%、燐化合物をP換算値で0.1乃至5質量%含有することを特徴とする金属酸化物触媒。
【請求項2】
前記燐化合物は、燐酸マンガン、燐酸ビスマス、燐酸亜鉛、及び燐酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種の燐化合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物触媒。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の金属酸化物触媒を使用した脱臭材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内のたばこ臭、生ゴミ臭、トイレ臭、冷蔵庫等に存在する硫化水素臭、並びに、メルカプタン類、アミン類及びアルデヒド類等に起因する臭気の除去に使用する金属酸化物触媒及びそれを使用した脱臭材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たばこ臭、生ゴミ臭、トイレ臭、及び冷蔵庫臭等の脱臭には、活性炭及びゼオライト等の吸着剤が使用されている。しかし、活性炭及びゼオライトは、その細孔が臭気成分で満たされると、脱臭効果が消失し、脱臭材の交換頻度が増えるという問題点がある。そこで、従来、脱臭材の長寿命化のために、マンガン酸化物に燐酸塩化合物を担持させた触媒を含む脱臭材が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に記載された脱臭材は、基材としてのマンガン酸化物に、ルテニウム化合物を担持してなる触媒を含む。また、前記基材は、銅マンガン複合酸化物,鉄マンガン複合酸化物、活性炭又はゼオライトを含むものである。そして、この脱臭材の触媒は、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒド等の低級アルデヒド類を高性能で除去できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−104845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された触媒は、マンガン酸化物基材にルテニウム化合物を担持させたものであり、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒド等のアルデヒド類の分解に有効なものであり、メチルメルカプタン及び硫化水素等の種々の臭気を脱臭するためには、マンガン酸化物に燐酸化合物を担持した触媒と、銅マンガン複合酸化物,鉄マンガン複合酸化物,活性炭及びゼオライトといった他の触媒及び吸着材とのブレンドが必要になり、その製造方法も煩雑となるという問題点がある。また、特許文献1の実施例によれば、マンガン酸化物にBET比表面積が200m/g以上のものが好適とされており、使用可能のマンガン酸化物も限定される。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、BET比表面積が200m/g以上のマンガン酸化物との共存がなくても、長寿命で低コストであると共に、多様な悪臭成分を効率的に除去することができる金属酸化物触媒及びそれを使用した脱臭材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る金属酸化物触媒は、脱臭材用金属酸化物触媒であって、マンガン酸化物をMnO換算値で50乃至80質量%、銅酸化物をCuO換算値で5乃至20質量%、鉄酸化物をFe換算値で5乃至20質量%、燐化合物をP換算値で0.1乃至5質量%含有することを特徴とする。
【0008】
この金属酸化物触媒において、前記燐化合物は、例えば、燐酸マンガン、燐酸ビスマス、燐酸亜鉛、及び燐酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種の燐化合物である。
【0009】
また、本発明に係る脱臭材は、上記本発明に係る金属酸化物触媒を使用したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】脱臭性能評価装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。本願発明者が前記課題を解決するために、鋭意実験研究を重ねた結果、金属酸化物触媒として、マンガン酸化物をMnO換算で50乃至80質量%、銅酸化物をCuO換算で5乃至20質量%、鉄酸化物をFe2O3換算で5乃至20質量%、燐化合物をP換算で0.1乃至5質量%含有するものとすることにより、脱臭性能が向上すると共に、長寿命化を図ることができ、本発明の課題を解決できることを見出した。本発明の金属酸化物触媒は、粉状のまま使用することができるが、ペレット状又はハニカム状等の成形体にして使用することが好適である。又は、本発明においては、上記組成の金属酸化物触媒を、担持体に被着させるか、若しくは、金属酸化物触媒に公知のバインダを適量配合し、均一に混練した後、押出成形することにより、脱臭材を構成することも可能である。この脱臭材は、本発明に係る金属酸化物触媒の臭気成分分解作用を利用して、臭気を除去するものである。
【0012】
次に、本発明に係る金属酸化物触媒を構成する成分の添加理由及び組成限定理由について説明する。
【0013】
「マンガン酸化物:MnO換算値で50乃至80質量%」
マンガン酸化物は、脱臭性能を向上させる成分であり、特に、マンガン酸化物を、銅酸化物、鉄酸化物及び燐化合物と共存させることにより、脱臭性能が著しく向上する。金属酸化物触媒中のマンガン酸化物がMnO換算値で50質量%未満であると、十分な脱臭効果を得ることができない。一方、マンガン酸化物がMnO換算値で80質量%を超えると、金属酸化物触媒が担持体から剥離しやすくなるという問題点がある。従って、金属酸化物触媒全質量に対するマンガン酸化物の量は、MnO換算値で50乃至80質量%とする。
【0014】
この金属酸化物触媒を担持する担持体は、例えば、金属製又はセラミック製である。金属製の担持体としては、例えば、金属製発泡フォーム、ワイヤメッシュ、ハニカム焼結体又はアルミニウム展張ハニカム等が使用され、また、セラミック製の担持体としては、例えば、セラミック発泡フォーム多孔体、ハニカム焼結体又はセラミック繊維ペーパーコルゲートハニカム等が使用される。なお、この担持体は、ハニカム構造体であることが好ましい。担持体をハニカム構造体とすることにより、脱臭フィルタの圧力損失を低減させると共に、担持体の表面積が増加し、担持される触媒の量が増えるため、大風量の排気を短時間で処理することができる。
【0015】
また、担持体がハニカム構造体である場合、このハニカム構造体は、ハニカムを貫通する孔であるセル数が、80乃至500cpsiであることが好ましい。このcpsi(cell per square inch)は、1平方インチあたりのセル数を示す単位である。セル数が、80cpsiを下回ると、孔の大きさが大きくなるため、排気中の臭気が、触媒によって酸化分解されることなく、脱臭フィルタを通過してしまうので、十分な脱臭性能が得られない。また、セル数が、500cpsiを上回ると、孔の大きさが小さくなるため、排気に含まれる油煙等がハニカムに付着して、ハニカムの孔を塞ぐことにより、目詰まりが発生する。更に好ましくは、ハニカム構造体は、セル数が、120乃至350cpsiであるものであり、これにより、更に、性能が高く、目詰まりも起こさない脱臭フィルタを得ることができる。
【0016】
「銅酸化物:CuO換算値で5乃至20質量%」
銅酸化物は脱臭性能を向上させる成分であり、前述のごとく、銅酸化物をマンガン酸化物、鉄酸化物及び燐化合物と共存させることにより、脱臭性能が著しく向上する。金属酸化物触媒中の銅酸化物がCuO換算値で5質量%未満であると、十分な脱臭効果を得ることができない。一方、銅酸化物がCuO換算値で20質量%を超えると、ホルムアルデヒドに対する脱臭効果が阻害され、ホルムアルデヒドの脱臭性能が低下する。従って、金属酸化物触媒全質量に対する銅酸化物の量は、CuO換算値で、5乃至20質量%とする。
【0017】
「鉄酸化物:Fe換算値で5乃至20質量%」
鉄酸化物は脱臭性能を向上させる成分であり、前述のごとく、鉄酸化物をマンガン酸化物、銅酸化物及び燐化合物と共存させることにより、脱臭性能が著しく向上する。金属酸化物触媒中の鉄酸化物がFe換算値で5質量%未満であると、十分な脱臭効果を得ることができない。一方、鉄酸化物がFe換算値で20質量%を超えると、メチルメルカプタンに対する脱臭効果が阻害され、メチルメルカプタンを含む悪臭の脱臭性能が低下する。従って、金属酸化物触媒全質量に対する鉄酸化物の量は、Fe換算値で、5乃至20質量%とする。
【0018】
「燐化合物:P換算値で0.1乃至5質量%」
燐化合物は、固体酸として、塩基性物質の脱臭性能を向上させる成分である。燐化合物をマンガン酸化物、銅酸化物及び鉄酸化物と共存させることにより、脱臭性能が著しく向上する。金属酸化物触媒中の燐化合物がP換算値で0.1質量%未満であると、特に、電子供与性基であるメチル基を持つメチルメルカプタン、アセトアルデヒドはその吸着による活性化に対して、触媒の酸性が求められるため、脱臭性能が低下する。また、金属酸化物触媒中の燐化合物がP換算値で0.1質量%未満であると、塩基性物質であるトリメチルアミンに対する脱臭効果が低下する。一方、金属酸化物触媒中の燐化合物がP換算値で5質量%を超えると、触媒成分と反応して非活性な物質に変化するので、脱臭効果が低下する。従って、金属酸化物触媒全質量に対する燐化合物の量は、P換算値で、0.1乃至5質量%とする。なお、燐化合物としては、燐酸、燐酸マンガン、燐酸ビスマス、燐酸亜鉛及び燐酸アルミニウムがある。
【0019】
なお、本実施形態の金属酸化物触媒を、担持体に担持させるため、本実施形態では、水を分散媒として無機バインダを用いることができる。この無機バインダは、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、セリアゾル及びジルコニアゾルからなる群から選択された1種又は2種以上である。無機バインダを使用して、触媒を担持体に担持させることにより、脱臭フィルタの耐熱性能及び脱臭性能を向上させることができる。
【0020】
本発明においては、金属酸化物触媒として優れた脱臭性能を有するマンガン酸化物に対し、銅酸化物を適量含有して、特にホルムアルデヒドに対する脱臭性能を分担させ、鉄酸化物を適量含有して、特にメチルメルカプタンに対する脱臭性能を分担させ、更に、燐化合物を適量添加して、特に、メチルメルカプタン、アセトアルデヒド及びトリメチルアミン等の塩基性物質の脱臭性能を向上させる。よって、本発明においては、実質的に、上記4種の物質のみで、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒド等のアルデヒド類のほか、メチルメルカプタン及び硫化水素等の多様な臭気を脱臭することができる。このため、本発明においては、BET比表面積が200m/g以上のマンガン酸化物も不要である。更に、本発明においては、活性炭及びゼオライト等の吸着材を使用しなくても良いため、ハニカム細孔に吸着物質が詰まることによる寿命低下も問題にならない。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の金属酸化物触媒の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して、本発明の効果について説明する。
【0022】
(第1試験例)
本発明の実施例・比較例の金属酸化物触媒は、マンガン、銅、燐の水溶性塩の混合溶液及び燐酸化合物(A液)と、過マンガンカリウム、アルカリ化合物の混合溶液(B液)をゆっくりと混合し、撹拌して得た沈殿物を2時間放置した後、ろ過し、洗浄し、乾燥した後、空気雰囲気下で焼成することにより、得ることができる。なお、沈殿物の生成には、A液にB液を滴下しても良いし、A液及びB液を同時に滴下しても良い。マンガン、銅、及び鉄の塩としては、硝酸塩、硫酸塩等を使用することが好ましく、アルカリ化合物としては、ナトリウム、カリウム等の水酸化物又は炭酸塩を使用することが好ましい。
【0023】
このようにして得られた金属酸化物触媒の化学組成を分析した。各化学成分の分析に際して、前処理として、試料を80℃で1時間乾燥処理した後、各成分の濃度を分析した。MnOは、ビスマス酸ナトリウム酸化過マンガン酸カリウム測定法により、その濃度を測定した。CuO及びFeは、ICP(誘導結合プラズマ、Inductively Coupled Plasma)法により、その濃度を測定した。またPは、モリブドりん酸青吸光光度法(JIS G 1214附属書1)により、その濃度を測定した。
【0024】
次いで、実施例・比較例の金属酸化物触媒について、脱臭性能を評価した。これらの評価方法は以下のとおりである。先ず、脱臭性能については、2〜3mm程度に顆粒成型した金属酸化物触媒を試料として、図1に示す脱臭性能評価装置により、評価した。この評価装置においては、コンプレッサ1及び悪臭用標準ガスボンベ2から供給されるガスは、マスクフローコントローラ3によって、所定濃度及びSV(空間速度:Space Velocity)に調整された後、相互に混合されて、その混合ガスの一部が、三方コック5から試料7内に供給されるように配置されている。なお、コンプレッサ1から供給されるガスは、一旦、湿度調整用水4内を通過して湿度調整された後、標準ガスと混合される。また、試料7の入口側には、入口濃度測定用サンプリング口6が設けられ、試料7の出口側には、出口濃度測定用サンプリング口8が設けられており、試料7に供給される混合ガスの各臭気成分及び試料7から排出されるガスの各臭気成分の濃度が測定されるようになっている。但し、ホルムアルデヒドについては、結晶を加熱気化し、所定濃度となるように調整した。
【0025】
このように構成された脱臭性能評価装置を使用して、試料7の入口と出口において、ガスクロマトグラフにより、入口悪臭濃度Ci(ppm)及び出口悪臭濃度Co(ppm)を測定した。この場合に、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンについては、入口悪臭濃度Ciは10ppm、SVは150,000hr−1、通気時間は1時間、装置2内の温度は室温、湿度は約60%RHとした。また、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒドについては、入口悪臭濃度Ciは2ppmとし、それ以外の条件は前述と同様とした。空間速度SVは、単位触媒容積に対して、単位時間に通過する悪臭ガスの容積のことであり、脱臭性能の評価条件の一つであって、下記数式1によって、算出することができる。
【0026】
【数1】
【0027】
本実施例では、直径が12mmで、厚さが10mmのサイズに充填した金属酸化物触媒に対して、2.8リットル/分の流量で悪臭ガスを所定の通気時間流し、所定の通気時間経過後の試料7の脱臭性能を、下記数式2により算出した。
【0028】
【数2】
【0029】
なお、悪臭ガスとしては、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンについては、これらの混合ガスを使用し、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドについては、各単独ガスを使用した。硫化水素及びメチルメルカプタンについては、脱臭性能が90%以上を良好とし、トリメチルアミン及びホルムアルデヒドについては、脱臭性能が50%以上を良好とし、アセトアルデヒドについては、脱臭性能が30%以上を良好とした。
【0030】
このようにして、金属酸化物触媒の化学成分を分析した結果を下記表1に示し、更に、脱臭性能を評価した結果を下記表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
表1に示すように、比較例14は、MnOの含有量が本発明の範囲より少ないので、表2に示すように、全ての悪臭成分に対する脱臭性能が低いものであった。また、比較例15は、MnOの含有量が本発明の範囲を超えているので、金属酸化物触媒を担持体に担持させた場合に、剥離が多く発生した。比較例16は、CuOの含有量が本発明の範囲より少ないので、全ての悪臭成分に対する脱臭性能が低いものであった。また、比較例17は、CuOの含有量が本発明の範囲を超えているので、ホルムアルデヒドに対する脱臭性能が低いものであった。比較例18は、Feの含有量が本発明の範囲より少ないので、全ての悪臭成分に対する脱臭性能が低いものであった。また、比較例19は、Feの含有量が本発明の範囲を超えているので、メチルメルカプタンに対する脱臭性能が低いものであった。比較例20は、Pの含有量が本発明の範囲より少ないので、メチルメルカプタン、トリメチルアミン及びアセトアルデヒドの悪臭成分に対する脱臭性能が低いものであった。また、比較例21は、Pの含有量が本発明の範囲を超えているので、全ての悪臭成分に対する脱臭性能が低いものであった。
【0034】
これに対し、本発明の実施例1〜13は、本発明の範囲内であるため、全ての成分に対する脱臭性能が優れたものであった。
【0035】
(第2試験例)
次に、ハニカム形状の脱臭材における脱臭性能を試験した結果について説明する。実施例3の金属酸化物触媒と、比較例20の金属酸化物触媒とを使用して、夫々実施例22及び比較例23のハニカム状の脱臭材を製作し、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンに対する脱臭性能を測定した。その脱臭性能の評価結果を下記表3に示す。性能評価は、ハニカム状試料を切断加工し、第1試験例と同様の方法で行った。なお、ハニカム状脱臭材は、以下のようにして製作した。先ず、10gの金属酸化物触媒に対し、バインダ成分として、シリカゾル12.4g及び適量の水を加え、スラリーとした。このスラリーに活性炭、アタパルジャイト、セピオライト及び活性アルミナで構成されるハニカム基材を含浸させ、エアブローで乾燥し、脱臭材を作成した。このとき、ハニカム基材上の固形分担持量は2.1g/個であった。また、ハニカム基材の外形は、長さ40mm、幅40mm、厚さ30mmであり、セル数は、400セル/inであった。
【0036】
【表3】
【0037】
この表3に示すように、実施例3の金属酸化物触媒をハニカム基材に担持させた実施例22は、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンの全ての悪臭成分に対する脱臭性能が、比較例23(比較例20の金属酸化物触媒をハニカム基材に担持させたもの)よりも格段に優れていた。
【0038】
次に、下記表4に示す実施例24及び比較例25について説明する。実施例24は、実施例3にて得られた金属酸化物触媒を15部及び活性炭を30部に対し、アタパルジャイト、セピオライト及び活性アルミナを配合し、これに、メチルメトロース等の水溶性有機バインダを加え、均一に混練した後、400セル/inのハニカム状に押出成形し、乾燥し、焼成して、外形が、長さ及び幅が40mm、厚さが30mmの脱臭材を作成したものである。比較例25は比較例20にて得られた金属酸化物触媒から、上述のようにして脱臭材を作成した。
【0039】
【表4】
【0040】
この表4に示すように、本発明の実施例24は、実施例3よりも若干脱臭性能が低下するものの、十分な脱臭性能を保持しているのに対し、比較例25は脱臭性能が低いものであった。
【0041】
(第3試験例)
次に、コルゲート形状の脱臭材における脱臭性能を試験した結果について説明する。実施例3の金属酸化物触媒を使用してコルゲート状脱臭材とした実施例26と、比較例20の金属酸化物触媒を使用してコルゲート状脱臭材とした比較例27とについて、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの脱臭性能を評価した。その結果を下記表5に示す。なお、コルゲート状脱臭材は、以下のようにして作成した。先ず、10gの金属酸化物触媒に対し、バインダ成分として、シリカゾル12.4g及び適量の水を加え、スラリーとした。このスラリーに、セル数が350セル/inのセラミック製コルゲート基材を含浸させ、エアブローで乾燥し、脱臭材を作成した。このとき、コルゲート基材上の固形分担持量は0.22g/ccであった。
【0042】
【表5】
【0043】
この表5に示すように、実施例3の金属酸化物触媒をコルゲート基材に担持させた実施例26は、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの全ての悪臭成分に対する脱臭性能が、比較例27(比較例20の金属酸化物触媒をコルゲート基材に担持させたもの)よりも格段に優れていた。
【符号の説明】
【0044】
1:コンプレッサ
2:悪臭用標準ガスボンベ
3:マスフローコントローラ
4:湿度調整用水
5:三方コック
6:入口濃度測定用サンプリング口
7:試料
8:出口濃度測定用サンプリング口
図1