【実施例】
【0021】
以下、本発明の金属酸化物触媒の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して、本発明の効果について説明する。
【0022】
(第1試験例)
本発明の実施例・比較例の金属酸化物触媒は、マンガン、銅、燐の水溶性塩の混合溶液及び燐酸化合物(A液)と、過マンガンカリウム、アルカリ化合物の混合溶液(B液)をゆっくりと混合し、撹拌して得た沈殿物を2時間放置した後、ろ過し、洗浄し、乾燥した後、空気雰囲気下で焼成することにより、得ることができる。なお、沈殿物の生成には、A液にB液を滴下しても良いし、A液及びB液を同時に滴下しても良い。マンガン、銅、及び鉄の塩としては、硝酸塩、硫酸塩等を使用することが好ましく、アルカリ化合物としては、ナトリウム、カリウム等の水酸化物又は炭酸塩を使用することが好ましい。
【0023】
このようにして得られた金属酸化物触媒の化学組成を分析した。各化学成分の分析に際して、前処理として、試料を80℃で1時間乾燥処理した後、各成分の濃度を分析した。MnO
2は、ビスマス酸ナトリウム酸化過マンガン酸カリウム測定法により、その濃度を測定した。CuO及びFe
2O
3は、ICP(誘導結合プラズマ、Inductively Coupled Plasma)法により、その濃度を測定した。またPは、モリブドりん酸青吸光光度法(JIS G 1214附属書1)により、その濃度を測定した。
【0024】
次いで、実施例・比較例の金属酸化物触媒について、脱臭性能を評価した。これらの評価方法は以下のとおりである。先ず、脱臭性能については、2〜3mm程度に顆粒成型した金属酸化物触媒を試料として、
図1に示す脱臭性能評価装置により、評価した。この評価装置においては、コンプレッサ1及び悪臭用標準ガスボンベ2から供給されるガスは、マスクフローコントローラ3によって、所定濃度及びSV(空間速度:Space Velocity)に調整された後、相互に混合されて、その混合ガスの一部が、三方コック5から試料7内に供給されるように配置されている。なお、コンプレッサ1から供給されるガスは、一旦、湿度調整用水4内を通過して湿度調整された後、標準ガスと混合される。また、試料7の入口側には、入口濃度測定用サンプリング口6が設けられ、試料7の出口側には、出口濃度測定用サンプリング口8が設けられており、試料7に供給される混合ガスの各臭気成分及び試料7から排出されるガスの各臭気成分の濃度が測定されるようになっている。但し、ホルムアルデヒドについては、結晶を加熱気化し、所定濃度となるように調整した。
【0025】
このように構成された脱臭性能評価装置を使用して、試料7の入口と出口において、ガスクロマトグラフにより、入口悪臭濃度Ci(ppm)及び出口悪臭濃度Co(ppm)を測定した。この場合に、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンについては、入口悪臭濃度Ciは10ppm、SVは150,000hr
−1、通気時間は1時間、装置2内の温度は室温、湿度は約60%RHとした。また、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒドについては、入口悪臭濃度Ciは2ppmとし、それ以外の条件は前述と同様とした。空間速度SVは、単位触媒容積に対して、単位時間に通過する悪臭ガスの容積のことであり、脱臭性能の評価条件の一つであって、下記数式1によって、算出することができる。
【0026】
【数1】
【0027】
本実施例では、直径が12mmで、厚さが10mmのサイズに充填した金属酸化物触媒に対して、2.8リットル/分の流量で悪臭ガスを所定の通気時間流し、所定の通気時間経過後の試料7の脱臭性能を、下記数式2により算出した。
【0028】
【数2】
【0029】
なお、悪臭ガスとしては、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンについては、これらの混合ガスを使用し、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドについては、各単独ガスを使用した。硫化水素及びメチルメルカプタンについては、脱臭性能が90%以上を良好とし、トリメチルアミン及びホルムアルデヒドについては、脱臭性能が50%以上を良好とし、アセトアルデヒドについては、脱臭性能が30%以上を良好とした。
【0030】
このようにして、金属酸化物触媒の化学成分を分析した結果を下記表1に示し、更に、脱臭性能を評価した結果を下記表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
表1に示すように、比較例14は、MnO
2の含有量が本発明の範囲より少ないので、表2に示すように、全ての悪臭成分に対する脱臭性能が低いものであった。また、比較例15は、MnO
2の含有量が本発明の範囲を超えているので、金属酸化物触媒を担持体に担持させた場合に、剥離が多く発生した。比較例16は、CuOの含有量が本発明の範囲より少ないので、全ての悪臭成分に対する脱臭性能が低いものであった。また、比較例17は、CuOの含有量が本発明の範囲を超えているので、ホルムアルデヒドに対する脱臭性能が低いものであった。比較例18は、Fe
2O
3の含有量が本発明の範囲より少ないので、全ての悪臭成分に対する脱臭性能が低いものであった。また、比較例19は、Fe
2O
3の含有量が本発明の範囲を超えているので、メチルメルカプタンに対する脱臭性能が低いものであった。比較例20は、Pの含有量が本発明の範囲より少ないので、メチルメルカプタン、トリメチルアミン及びアセトアルデヒドの悪臭成分に対する脱臭性能が低いものであった。また、比較例21は、Pの含有量が本発明の範囲を超えているので、全ての悪臭成分に対する脱臭性能が低いものであった。
【0034】
これに対し、本発明の実施例1〜13は、本発明の範囲内であるため、全ての成分に対する脱臭性能が優れたものであった。
【0035】
(第2試験例)
次に、ハニカム形状の脱臭材における脱臭性能を試験した結果について説明する。実施例3の金属酸化物触媒と、比較例20の金属酸化物触媒とを使用して、夫々実施例22及び比較例23のハニカム状の脱臭材を製作し、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンに対する脱臭性能を測定した。その脱臭性能の評価結果を下記表3に示す。性能評価は、ハニカム状試料を切断加工し、第1試験例と同様の方法で行った。なお、ハニカム状脱臭材は、以下のようにして製作した。先ず、10gの金属酸化物触媒に対し、バインダ成分として、シリカゾル12.4g及び適量の水を加え、スラリーとした。このスラリーに活性炭、アタパルジャイト、セピオライト及び活性アルミナで構成されるハニカム基材を含浸させ、エアブローで乾燥し、脱臭材を作成した。このとき、ハニカム基材上の固形分担持量は2.1g/個であった。また、ハニカム基材の外形は、長さ40mm、幅40mm、厚さ30mmであり、セル数は、400セル/in
2であった。
【0036】
【表3】
【0037】
この表3に示すように、実施例3の金属酸化物触媒をハニカム基材に担持させた実施例22は、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンの全ての悪臭成分に対する脱臭性能が、比較例23(比較例20の金属酸化物触媒をハニカム基材に担持させたもの)よりも格段に優れていた。
【0038】
次に、下記表4に示す実施例24及び比較例25について説明する。実施例24は、実施例3にて得られた金属酸化物触媒を15部及び活性炭を30部に対し、アタパルジャイト、セピオライト及び活性アルミナを配合し、これに、メチルメトロース等の水溶性有機バインダを加え、均一に混練した後、400セル/in
2のハニカム状に押出成形し、乾燥し、焼成して、外形が、長さ及び幅が40mm、厚さが30mmの脱臭材を作成したものである。比較例25は比較例20にて得られた金属酸化物触媒から、上述のようにして脱臭材を作成した。
【0039】
【表4】
【0040】
この表4に示すように、本発明の実施例24は、実施例3よりも若干脱臭性能が低下するものの、十分な脱臭性能を保持しているのに対し、比較例25は脱臭性能が低いものであった。
【0041】
(第3試験例)
次に、コルゲート形状の脱臭材における脱臭性能を試験した結果について説明する。実施例3の金属酸化物触媒を使用してコルゲート状脱臭材とした実施例26と、比較例20の金属酸化物触媒を使用してコルゲート状脱臭材とした比較例27とについて、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの脱臭性能を評価した。その結果を下記表5に示す。なお、コルゲート状脱臭材は、以下のようにして作成した。先ず、10gの金属酸化物触媒に対し、バインダ成分として、シリカゾル12.4g及び適量の水を加え、スラリーとした。このスラリーに、セル数が350セル/in
2のセラミック製コルゲート基材を含浸させ、エアブローで乾燥し、脱臭材を作成した。このとき、コルゲート基材上の固形分担持量は0.22g/ccであった。
【0042】
【表5】
【0043】
この表5に示すように、実施例3の金属酸化物触媒をコルゲート基材に担持させた実施例26は、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの全ての悪臭成分に対する脱臭性能が、比較例27(比較例20の金属酸化物触媒をコルゲート基材に担持させたもの)よりも格段に優れていた。