(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
寒天と、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と、並びにノニオン性界面活性剤とを含む口腔用組成物をスプレー容器に収容してなる、口腔内の乾燥を抑制するための口腔用製剤。
アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子の配合量が、組成物の重量を基準にして、0.01〜1.0質量%である、請求項1〜3のいずれか1項記載の口腔用製剤。
【背景技術】
【0002】
体調、加齢や薬剤の摂取などにより唾液の分泌量が減少し、口腔内の乾燥を訴える人が増えている。口腔内が乾燥すると、口腔内で雑菌が繁殖し、口臭の原因となる。また、口腔内で増殖した細菌を誤嚥することで、誤嚥性肺炎が引き起こされる可能性もある。
口腔内の乾燥が軽度の場合には、頻繁に水分を摂取する、飴をなめるなどの対処によって、口腔内の乾燥を防ぐことが可能である。しかし、日常生活において、頻繁に水分を摂取することは困難である。また、頻繁に飴をなめた場合は、う蝕が発生しやすいという問題もある。
【0003】
上記問題を解消するために、例えば、口腔を保湿するためのジェルが開発されている。口腔保湿用ジェルは、手指やスポンジ等を使用して口腔内に塗布する必要があり、手軽に使用するには至っていない。
【0004】
口腔保湿用ジェルの他に、口腔内の湿潤保持性を目的として、寒天を含有した歯磨組成物が開示されている(特許文献1)。また、疎水性軟膏基剤に、水溶性高分子、薬物および軽質無水ケイ酸を含み、塗布する態様で使用される口腔用組成物が開示されている(特許文献2)。その他に、薬効成分と、ジェランガムや水溶性高分子を含み、口腔内の所定部位での薬効成分の滞留性を目的とし、マウスウオッシュやマウススプレーの態様で使用される口腔用組成物が開示されている(特許文献3〜4)。さらに、口腔内の乾燥を改善し、噴霧性に優れた口腔用スプレーも開示されている(特許文献5)。
【0005】
しかしながら、特許文献1の歯磨組成物は、口腔内に適用する際に歯ブラシ等を使用する必要があり、歯磨き後の洗浄によって、歯磨組成物が口腔内に残存せず、口腔内にある程度の時間組成物を残存させることによって、口腔内を保湿し乾燥を抑制する態様とは異なる。また、口腔内に塗布する態様で使用される口腔用組成物は、無水ケイ酸等の粉体を含んでおり、スプレーの使用により噴霧する際に粉体が詰まり、スプレーする態様には適さないという問題がある。さらに、特許文献3〜5の口腔用組成物のように、マウスウオッシュやマウススプレーの態様で使用される口腔用組成物であっても、口腔用組成物の粘度が200mPa・s以下であり、粘度が低く、口腔内への付着性が低いため、口腔内に長くとどまることができず、乾燥を十分に抑制することができない場合がある。また、粘度が200mPa・s以上にすると、スプレーで噴霧しても、口腔用組成物が口腔内全体に霧状に広がって供給されず、口腔内の乾燥の抑制が十分ではない問題もある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、口腔内の乾燥を抑制し、スプレーの使用により口腔内全体に噴霧状に供給することができる口腔用組成物であって、寒天と、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と、並びにノニオン性界面活性剤とを含むことを特徴とするものである。
【0011】
口腔内への付着性を改善するために、組成物に増粘剤を含有させることが考えられる。このような増粘剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、ヒドロキシエチルセルロースまたはその塩、ジェランガム、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、寒天等の水溶性高分子が挙げられる。
しかしながら、これらの増粘剤の1種類を口腔用組成物に含有させただけでは、スプレーを使用した場合であっても組成物の粘度によって、口腔用組成物が霧状に広がらず、直線状に液が出る場合があった。
【0012】
増粘剤の中でも、寒天を含有する口腔用組成物は、スプレーを使用した場合に比較的広範囲に霧状となることが知見できた。しかしながら、寒天は離水を促進しやすく、口腔用組成物に寒天を含有させた場合は、口腔用組成物の保存安定性が十分ではない場合がある。
【0013】
本発明の口腔用組成物は、寒天と、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子とを含むことによって、口腔内での付着性を改善し、保管時にも離水を抑制して、保存安定性が良好となることを見出した。さらに、本発明の口腔用組成物は、寒天と、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と共に、ノニオン性界面活性剤を含むことによって、スプレーを使用した際に、口腔用組成物の噴霧状態が改善され、口腔内全体に拡散できることを見出した。
【0014】
本発明の口腔用組成物は、25℃の粘度が好ましくは450〜15000mPa・s、より好ましくは500〜12000mPa・s、さらに好ましくは1000〜11000mPa・s、特に好ましくは1500〜10500mPa・sである。本発明の口腔用組成物は、25℃の粘度が比較的高い場合であっても、スプレーの使用により口腔内全体に噴霧状に拡散させることができ乾燥した口腔内をすばやく潤すことができる。さらに本発明の口腔用組成物は、25℃の粘度が比較的高いので、スプレーの使用により噴霧した口腔用組成物が口腔内に付着し、比較的長く滞留することによって口腔内の乾燥を抑制することができる。
【0015】
本発明の口腔用組成物に使用し得る寒天は、医薬品・食品・化粧品原料として市販されている、粉末状、顆粒状又はフレーク状のものであってもよい。そのような寒天として、例えば、伊那食品工業株式会社製の伊那寒天CS、伊那寒天CSG、ウルトラ寒天AX−100、ウルトラ寒天イーナなどが挙げられる。特に、スプレーの使用による噴霧状態を改善するために、ウルトラ寒天AX−100、ウルトラ寒天イーナを好適に使用することができる。寒天の性状は、特に制限されないが、寒天成分のゲル状態でのゼリー強度が1.5%寒天濃度で10〜250g/cm
2であることが好ましい。このような寒天は、特許第3023244号に開示されている。
【0016】
寒天の配合量は、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と、並びにノニオン性界面活性剤と共に、組成物の25℃の粘度が450〜15000mPa・sとなるような量であれば特に限定されるものではない。寒天の配合量は、スプレーした際の噴霧状態の拡散性、組成物の離水の抑制、及び口腔内における組成物の付着性の点から、組成物の重量を基準にして、0.2〜1.2質量%であることが好ましい。寒天の配合量は、組成物の重量を基準にして、より好ましくは0.3〜1.0質量%、さらに好ましくは0.4〜0.8質量%である。
【0017】
本発明の口腔用組成物に使用し得る、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子は、医薬品・食品・化粧品原料として市販されているものであればよい。そのようなアルギン酸ナトリウムとしては、特に限定されないが、1質量%で、20℃、BL型粘度計により測定した粘度が、50〜1200mPa・sのアルギン酸ナトリウムが挙げられる。アルギン酸ナトリウムは、1質量%で、20℃、BL型回転粘度計により測定した粘度が、好ましくは100〜1000mPa・s、より好ましくは100〜800mPa・s、さらに好ましくは100〜600mPa・sである。
【0018】
本発明の口腔用組成物に使用し得る、カルボキシメチルセルロースナトリウムとしては、特に限定されないが、エーテル化度(重合度)が好ましくは0.45〜2.0、より好ましくは0.5〜0.8のカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。また、カルボキシメチルセルロースナトリウムは、1質量%で、25℃、BL型粘度計により測定した粘度が好ましくは20〜1500mPa・s、より好ましくは100〜1000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。
【0019】
ジェランガムは、直鎖状のヘテロ多糖類であり、通常、グルコース、グルクロン酸、グルコース及びラムノースの4つの糖に由来する繰り返し単位から構成されている。本発明の口腔用組成物に使用し得る、ジェランガムは、1質量%で、20℃、BL型粘度計により測定した粘度が好ましくは5000〜20000mPa・s、より好ましくは8000〜15000mPa・sのジェランガムが挙げられる。
【0020】
アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子の配合量は、寒天及びノニオン性界面活性剤と共に、組成物の25℃の粘度が450〜15000mPa・sとなるような量であれば特に限定されるものではない。アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子の配合量は、スプレーした際の噴霧状態の改善、及び口腔内における組成物の付着性の点から、組成物の重量を基準にして、0.01〜1.0質量%であることが好ましい。アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子の配合量は、組成物の重量を基準にして、より好ましくは0.03〜0.8質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%、特に好ましくは0.05〜0.4質量%である。
【0021】
本発明の口腔用組成物に使用し得るノニオン性界面活性剤は、医薬品・食品・化粧品原料として市販されているものであってもよい。ノニオン性界面活性剤は、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリル酸デカグリセリル、ミリスチン酸デカグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、マルチトース脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸エタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。中でも、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステルが好ましく、特に、食品用である、グリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
【0022】
ノニオン性界面活性剤の配合量は、寒天と、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と共に、組成物の25℃の粘度が450〜15000mPa・sとなるような量であれば特に限定されるものではない。ノニオン性界面活性剤の配合量は、スプレーした際の噴霧状態の改善、及び組成物の離水の抑制の点から、組成物の重量を基準にして、0.01〜1.5質量%であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤の配合量は、組成物の重量を基準にして、より好ましくは0.03〜1.2質量%、さらに好ましくは0.05〜1.0質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%、最も好ましくは0.1〜0.3質量%である。
【0023】
本発明の口腔用組成物は、湿潤剤が配合されていてもよい。湿潤剤は、医薬品・食品・化粧品に使用し得るものであれば、特に限定されない。湿潤剤は、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコールが挙げられる。中でも、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが好ましい。これらの湿潤剤は、1種又は2種以上の組み合わせを適宜選択して配合することが好ましい。
【0024】
湿潤剤の配合量は、寒天と、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子、並びにノニオン性界面活性剤を含む組成物の25℃の粘度が450〜15000mPa・sとなるような量であれば特に限定されるものではない。湿潤剤の配合量は、口腔内をすばやく潤し、口腔内の乾燥を抑制する点から、組成物の重量を基準にして、2〜20質量%が好ましい。湿潤剤の配合量は、組成物の重量を基準にして、より好ましくは5〜15質量%である。
【0025】
本発明の口腔用組成物は、矯味剤が配合されていてもよい。矯味剤としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、ハチミツ、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、キシリトール、イノシトール、D−ソルビトール、D−マンニトール、ラフィノース、ラクチュロース、ラクチトール、エリスリトール、還元パラチノース、パラチノース、パラチニット、アセスルファムK、マルトース、又はマルチトールなどが挙げられる。中でも、キシリトール、エリスリトール、マルチトールなどの糖アルコールが好ましい。これらの1種又は2種以上の組み合わせを適宜選択して配合すればよい。
【0026】
本発明の口腔用組成物は、保湿剤が配合されていてもよい。保湿剤もまた、医薬品・食品・化粧品に使用し得るものであれば特に限定されない。保湿剤としては、アミノ酸又はその塩、ピロリドンカルボン酸、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸、トレハロース、コラーゲン、ポリクオタニウム類、チャエキスなどの天然エキス成分などが挙げられる。これらの1種又は2種以上の組み合わせを適宜選択して配合すればよい。
【0027】
本発明の口腔用組成物は、pH調整剤が配合されていてもよい。本発明の口腔用組成物は、口腔内で使用するものであるため、そのpHは5.5〜8.0の範囲であるのが好ましい。本発明の組成物に使用し得るpH調整剤としては、食品に使用し得るものであれば、特に限定されず、例えば、リン酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、あるいはクエン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、酒石酸、酢酸又はこれらの塩などが挙げられる。これらの1種又は2種以上の組み合わせを適宜選択して配合すればよい。
【0028】
本発明の口腔用組成物は残余に水を含む。
本発明の口腔用組成物は、さらに香料、防腐剤、着色料などの添加剤を、該組成物の水分供給能、粘度を損なわない範囲において配合してもよい。また、本発明の口腔用組成物には、口腔の乾燥状態やそれに伴う疾患の治療及び予防効果を期待して、抗菌剤、ビタミン剤などの活性成分を添加してもよい。香料、防腐剤、着色料、抗菌剤、ビタミン剤などは、医薬品・食品・化粧品に使用し得るものであれば特に限定されない。
【0029】
香料としては、l−メントール、ペパーミント、スペアミント又はフルーツ香料などが挙げられる。香料は、唾液分泌を刺激するという利点も有する。着色料としては、天然又は合成の色素、例えば、食用タール系色素、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、ベニバナ色素などが挙げられる。これらの1種又は2種以上の組み合わせを適宜選択すればよい。
【0030】
防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、イソプロピルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベンなどのパラベン(パラオキシ安息香酸エステル)類、エタノールなどのアルコール類、フェノキシエタノール、あるいはソルビン酸、安息香酸、デヒドロ酢酸、プロピオン酸又はこれらの塩などが挙げられる。これらの1種又は2種以上の組み合わせを適宜選択して配合すればよい。
【0031】
着色料としては、天然又は合成の色素、例えば、食用タール系色素、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、ベニバナ色素、銅クロロフィリンナトリウムなどが挙げられる。これらの1種又は2種以上の組み合わせを適宜選択して配合することができる。
【0032】
抗菌剤としては、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、亜鉛化合物又はトリクロサンなどが挙げられる。これらの1種又は2種以上の組み合わせを適宜選択すればよい。
【0033】
ビタミン剤としては、レチノイン酸、β−カロテンなどのビタミンA類、パントテン酸又はその塩類、ナイアシン、ビオチンなどのビタミンB類、アスコルビン酸又はその塩類、誘導体などのビタミンC類、α−トコフェロールなどのビタミンE類、葉酸などが挙げられる。これらの1種又は2種以上の組み合わせを適宜選択すればよい。
香料、防腐剤、着色剤、抗菌剤、ビタミン剤などの各成分の口腔用組成物への配合量は、特に制限されないが、組成物の重量を基準として、一般的に0.001〜5.0質量%の範囲が適当であり、より好ましくは、0.01〜1.0質量%の範囲である。
【0034】
本発明の口腔用組成物は、液体又は液状の口腔用組成物がスプレー容器に収容され、容器の備えたポンプディスペンサーなどの噴霧機構を有するスプレー部から口腔内に噴霧して適用される口腔用製剤であることが好ましい。スプレー容器は、口腔用組成物を収容する容器と、噴霧機構を有するスプレー部とを有するものであれば、特に限定されない。スプレー容器は、一般的にスプレー部が容器本体の開口部に装着され、スプレー部の噴霧機構を作動する噴霧ボタンを押圧することによって、容器内の液状物が噴霧される。
【0035】
口腔用組成物を収容するスプレー容器は、容器の形状、スプレー部の噴霧機構、噴口孔径又は形状などは特に限定されず、一般に使用されているものであれば、自由に使用することができ、市販品のスプレー容器を使用してもよい。口腔用組成物が噴霧されるスプレー部は、特に限定されないが、スプレー部の噴口孔径(直径)が0.1〜1mm、特に0.3〜0.8mmが好適である。スプレー部のワンプッシュの噴霧量が、0.01〜0.5mL、特に0.05〜0.5mLであることが好ましい。容器は、特に限定されないが、開口直径が1.0〜5.0cmであることが好ましい。容器の高さは、40〜120mm、特に50〜100mmであることが好ましい。容器の収容量は5〜100mL、特に5〜50mLであることが好ましい。スプレー容器は、材質等も一般に使用されているものであれば、自由に使用することができる。一般的には、スプレー部の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール等を使用できる。また、容器の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等を使用できる。
【実施例】
【0036】
本発明を以下の例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、それらに限定されるものではない。
【0037】
〔実施例1〜20及び比較例1〜15〕
実施例1〜20は、下記の表1〜2に示す組成を有する口腔用組成物を調製した。比較例1〜15は、下記の表3〜4に示す組成を有する口腔用組成物を調製した。表1〜4に示す各組成の配合量の数値の単位は、質量(g)である。表1〜4に示す各組成は、以下のものを使用した。口腔用組成物は、表1〜4に示す各成分に、全量が100gとなるように精製水を加えて製造した。実施例1〜20の口腔用組成物のpHは5.5〜7.0の範囲であった。比較例1〜15の口腔用組成物のpHもまた5.5〜7.0の範囲であった。
ノニオン性界面活性剤:グリセリン脂肪酸エステル(ミリスチン酸ポリグリセリル−10:ミリスチン酸デカグリセリル)(商品名:サンソフトQ−14YC、太陽化学社製)
ノニオン性界面活性剤:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG−50水添ヒマシ油)(商品名:アクチノールHC−50、松本油脂製薬社製)
寒天:寒天(商品名:ウルトラ寒天AX−100、伊那食品工業社製)
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa):カルボキシメチルセルロースナトリウム(エーテル化度0.6〜0.7、25℃、BL型粘度計(60回転)で1質量%の粘度が350〜500mPa・s)(商品名:セロゲンF−SH、第一工業製薬社製)
アルギン酸ナトリウム:アルギン酸ナトリウム(20℃、BL型粘度計で1質量%の粘度が300〜400mPa・s)(商品名:ダックアルギンNSPM、キッコーマンバイオケミファ社製)
ジェランガム:ジェランガム(20℃、BL型粘度計で1質量%の粘度が8000〜1500mPa・s)(商品名:ケルコゲル、CPケルコ社製)
キサンタンガム:キサンタンガム(25℃、BL型粘度計で1質量%の粘度が900〜2000mPa・s)(商品名:エコーガムT、DSP五協フード&ケミカル社製)
グリセリン:食品添加物用グリセリン(グリセリン:95質量%以上)(阪本薬品工業社製)
水:精製水
【0038】
実施例1〜20及び比較例1〜15の口腔用組成物は、以下の試験を行った。各試験の結果は、表1〜4に記載した。
〔粘度測定法〕
粘度は、B型粘度計BL(東京計器社製)を用いて、25℃にて測定した。
【0039】
〔離水試験〕
検体(口腔用組成物)を2000rpm、2分間遠心した後、ジェルと液体の2層に分かれているか否かを目視で確認し、評価した。2層に分かれていたものを×とし、2層に分かれていないものを○とした。
【0040】
〔付着性試験〕
検体(口腔用組成物)40mLを、スプレー容器(スプレーコマ:SC−03、ポリプロピレン製、噴口孔径6.0〜8.0mm、ワンプッシュ噴霧量0.06〜0.08mL、ポンプ部:M−75−05、容器:H03−050ポリエチレン製、高さ:99.2mm、収容量:50mL、(三谷バルブ社製))に収容し、スプレー容器のスプレー部の噴口から1cm離間して、垂直に立てたプラスチック板(ポリスチレン製)にスプレー部をワンプッシュして噴霧し、噴霧した検体の垂れる程度を目視で確認し、評価した。プラスチック板に噴霧した検体がすぐに流れおちる場合は×、若干垂れるがプラスチック板に付着している場合は△、全く垂れない場合は○とした。
【0041】
〔噴霧性試験〕
検体(口腔用組成物)40mLを、スプレー容器(スプレーコマ:SC−03、ポリプロピレン製、噴口孔径6.0〜8.0mm、ワンプッシュ噴霧量0.06〜0.08mL、ポンプ部:M−75−05、容器:H03−050ポリエチレン製、高さ:99.2mm、収容量:50mL、(三谷バルブ社製))に収容し、スプレー容器のスプレー部の噴口から5cm離間して、垂直に立てたプラスチック板(ポリスチレン製)にスプレー部をワンプッシュして噴霧し、プラスチック板に付着した検体の半径を測定した。試験のばらつきを考慮して、3回試験を行い、各試験の半径の平均値について評価した。プラスチック板に付着した検体の半径の平均値が60mm未満の場合を×とし、60mm以上65mm未満の場合を△とし、65mm以上を○とした。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
〔結果の考察〕
表1〜2に示すように、実施例1〜20の口腔用組成物は、寒天と、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と、並びにノニオン性界面活性剤とを含むことによって、離水がなく、スプレーの使用により、ワンプッシュの噴霧で半径が60〜65mmに広がり、口腔内全体に拡散して供給することができ、付着性が高く、口腔内に付着して、比較的長く滞留できることが確認できた。
一方、表3〜4の比較例1〜15に示すように、寒天と、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と、並びにノニオン性界面活性剤とのうち、いずれかを含まない口腔用組成物は、離水性、付着性、噴霧の広がりのいずれか又は複数が劣る結果となった。